説明

固形描画材

【目的】 比重が6.0以上金属粉顔料とワックスと沸点が20〜150℃の石油系炭化水素よりなる固形描画材において、表面に気泡による凹凸が少ない固形描画材を提供する。
【構成】 比重が6.0以上の金属粉顔料と、ワックスと、沸点が20〜150℃の石油系炭化水素とより少なくともなる固形描画材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真ちゅうなどの金属粉を使用したメタリック色で、外観に気泡による凹凸がない、クレヨン等の固形描画材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔料と、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス及び/又はカルナウバワックス、木ロウ、ミツロウといった植物系や動物性のワックスと、必要に応じてワセリン、スピンドル油、マシン油などの鉱物油とよりなる、いわゆるクレヨン、パスと呼ばれる固形描画材が知られている。これらを混ぜ合わせたものを加熱溶解し、型に流し込んだ後冷却し取り出して製造している。
【0003】
この固形描画材の製造中に細かい気泡が入り込むと、表面に気泡による凹凸が出来、外観が悪くなる等の問題点が発生する為、消泡剤を添加することが知られている。
特許文献1には、シリコン系などの消泡剤について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−502927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固形描画材は顔料とワックス等を混合し、加熱溶解し型に流し込むなどして製造する。ここで使用するワックスは、複雑な混合物であり、加熱して溶解し流動性を持たせた場合、内部に気泡を抱き込む場合がある。固形描画材の顔料に金属粉を使用した場合、金属粉自体の比重が大きいと同時に、ワックスが金属粉表面に貼りつく為、流動性を悪くする為、内部に入り込んだ気泡の排出を阻害する。それにより、表面に気泡による凹凸が出来、外観が悪くなる等の問題点が発生する。
ここでシリコン系消泡剤を使用したとしても、加熱したワックスと金属粉の混合物中では、流動性を良くすることが出来ず、混入した気泡を破泡するには十分な効果をもたらすことが出来ない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、比重が6.0以上の金属粉顔料と、ワックスと、沸点が20〜150℃の石油系炭化水素とより少なくともなる固形描画材を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0007】
比重が6.0以上の金属粉顔料とワックスを使用した固形描画材に、沸点が20〜150℃の石油系炭化水素を配合することにより、金属粉の表面に石油系炭化水素が付着することで金属粉とワックスの滑りが良くなるので、加熱溶解した固形描画材の流動性が良くなり、製造時に内部に混入した気泡の排出を容易にする為、気泡による凹凸などの外観が悪くなる問題が発生しないと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で使用するも比重が6.0以上の金属粉顔料としては、真ちゅう粉、銅粉(比重8.96)、ニッケル粉(比重7.95)、ステンレス粉(7.6〜8.1)、スズ粉(比重7.29)、亜鉛粉(比重7.14)、金粉(比重19.32)、銀粉(比重10.49)等がある。
真ちゅうは、銅と亜鉛の合金であり、具体的には、E5(比重8.8)、E7(比重8.6)、4L5(比重8.8)、4L7(比重8.6)、No.5000(比重8.8)、No.7000(比重8.6)(以上、福田金属箔粉工業株式会社製)が挙げられる。
これらの金属粉は、単独もしくは2種以上混合して使用しても良く、通常公知の有機顔料や無機顔料を混合して使用しても良い。通常公知の有機顔料、無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ボーンブラック、アニリンブラック、鉄黒、黄土、水和酸化鉄、弁柄、アルミ、ハンザエロー−10G、同5G、同3G、同4、同GR、同A、同G、ベンジジンイエロー、パーマネントイエローNCG、キノリンイエロー、スーダン1、パーマネントオレンジ2G、インダスレンブリリアントオレンジGK、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジHL、ピラゾリンオレンジTMP、ペリノンオレンジ、DPPオレンジ、パーマネントブラウンFG、パラブラウン、パーマネントレッド4R、ファイヤーレッド、ブリリアントカーミンBS、ピラゾロンレッド、キナクリドンレッド、ボルドー5B、チオインジゴレッド、ナフソールカーミンHR、ナフソールレッドF5RK、ナフソールレッドF3RK−70、パーマネントレッドFGR、パーマネントカーミンFB、パーマネントレッド2B、ブリリアントカーミン6B、ペリレンバーミリオン、ペリレンレッド、DPPレッド、ファストバイオレットB、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、アルカリブルーレーキ、銅フタロシアニンブルー、インジゴ、インダスレンブルー、アシッドグリーンレーキ、銅フタロシアニングリーン等がある。また、上記の有機顔料を炭酸カルシウムなどの表面に付着させた複合顔料を用いても良い。市販品として、ブルー#2400(銅フタロシアニンブルーと炭酸カルシウムとシリカとジオキシンバイオレットとアルミニウムシリケートから成る複合顔料)、ブルー#2500(銅フタロシアニンブルーと炭酸カルシウムとアルミナシリケートとナフトールカーミンHRから成る複合顔料)、ビリジアングリンP(銅フタロシアニングリーン、銅フタロシアニンブルー、ハンザイエロー10G、炭酸カルシウム、カオリン、シリカから成る複合顔料)、FS/NR 418(銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、炭酸カルシウム、アルミニウムシリケートから成る複合顔料)(以上、野間化学工業(株)製)、NSB A−25(銅フタロシアニンブルー、炭酸カルシウムから成る複合顔料)(以上大日精化工業(株)製)が挙げられる。
その使用量は、固形描画材全量に対して0.1重量%〜50重量%が好ましい。
【0009】
ワックスは、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、ミツロウ、木ロウ、モンタンワックスなど従来固形描画材に用いられている動・植物系ワックス、石油系ワックスといった天然ワックスや合成ワックスを挙げることができ、その使用量は固形描画材全量に対して10重量%〜40重量%が好ましい。
【0010】
沸点が20〜150℃の石油系炭化水素は、気泡を防止する為に用いられ、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−ヘプタン、イソヘキサン、n−オクタン、ベンゼン、キシレン、トルエン、工業用ガソリン、石油エーテル、石油ベンジン等があげられ、工業用ガソリンとして、具体的には、ホワイトガソリン(JX日鉱日石エネルギー(株))があり、固形描画材に対し、0.1重量%〜5.0重量%が好ましい。
【0011】
上記各成分以外にも必要に応じて種々の成分を配合することもできる。
流動パラフィン、スピンドル油、マシン油、ワセリンなど従来固形描画材に用いられている動・植物系オイル、石油系オイル、合成オイルを固形描画材全量に対して1重量%〜40重量%用いたり、増量剤若しくは充填剤として、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、硫酸バリウム、タルク等を用いたり、滑剤や界面活性剤を用いることが出来る。
【0012】
本発明の固形描画材は、上記各成分を加熱撹拌混合し、また必要に応じてニーダー、ロールミル等の混練機で混練し、これを溶融状態で型に流し込み、冷却固化して得ることが出来る。ただし、沸点が20〜150℃の石油系炭化水素は、加熱撹拌混合時や混練時、型に流し込む時等に後から添加しても良い。
【実施例】
【0013】
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0014】
(実施例1)
ジステアリルケトン(花王ワックスT−1、花王(株)製) 14.6重量部
130度パラフィン 17.7重量部
マイクロワックス(融点70℃) 2.1重量部
トリアシルグリセリン 22.9重量部
黄色ワセリン 5.2重量部
E5(真ちゅう、福田金属箔粉工業(株)製) 18.8重量部
No.5000(真ちゅう、福田金属箔粉工業(株)製) 18.8重量部
ホワイトガソリン(工業用ガソリン、JX日鉱日石エネルギー(株)製)
0.5重量部
上記成分を加熱溶解しニーダーで60分練り混ぜ、型に流し込んだ後、冷却し金色のクレヨンを得た。
【0015】
(実施例2)
ジステアリルケトン(花王ワックスT−1、花王(株)製) 14.6重量部
130度パラフィン 17.7重量部
マイクロワックス(融点70℃) 2.1重量部
トリアシルグリセリン 22.9重量部
黄色ワセリン 5.2重量部
4L5(真ちゅう、福田金属箔粉工業(株)製) 18.8重量部
4L7(真ちゅう、福田金属箔粉工業(株)製) 18.8重量部
上記成分を加熱溶解しニーダーで60分練り混ぜ、型に流し込みながら、ホワイトガソリン(工業用ガソリン、JX日鉱日石エネルギー(株)製)1.0重量部を霧吹きで噴霧しながら混入させ、冷却し金色のクレヨンを得た。
【0016】
(実施例3)
ジステアリルケトン(花王ワックスT−1、花王(株)製) 18.4重量部
130度パラフィン 26.3重量部
トリアシルグリセリン 31.6重量部
黄色ワセリン 2.6重量部
E7(真ちゅう、福田金属箔粉工業(株)製) 10.5重量部
No.7000(真ちゅう、福田金属箔粉工業(株)製) 10.5重量部
上記成分を加熱溶解しニーダーで60分練り混ぜ、型に流し込みながら、石油エーテル(関東化学(株)製)0.5重量部と石油ベンジン(関東化学(株)製)0.5重量部を混合したものを霧吹きで噴霧しながら混入させ、冷却し金色のクレヨンを得た。
【0017】
(実施例4)
ジステアリルケトン(花王ワックスT−1、花王(株)製) 14.6重量部
130度パラフィン 17.7重量部
マイクロワックス(融点70℃) 2.1重量部
トリアシルグリセリン 22.9重量部
黄色ワセリン 5.2重量部
4L5(真ちゅう、福田金属箔粉工業(株)製) 18.8重量部
4L7(真ちゅう、福田金属箔粉工業(株)製) 18.8重量部
n−ヘキサン 2.0重量部
n−ペンタン 1.5重量部
n−ヘプタン 0.5重量部
上記成分を加熱溶解しニーダーで60分練り混ぜ、型に流し込んだ後、冷却し金色のクレヨンを得た。
【0018】
(実施例5)
ジステアリルケトン(花王ワックスT−1、花王(株)製) 14.6重量部
130度パラフィン 17.7重量部
マイクロワックス(融点70℃) 2.1重量部
トリアシルグリセリン 22.9重量部
黄色ワセリン 5.2重量部
C3(銅粉、福田金属箔粉工業(株)製) 37.6重量部
n−ヘキサン 1.0重量部
イソヘキサン 0.3重量部
n−オクタン 0.2重量部
上記成分を加熱溶解しニーダーで60分練り混ぜ、型に流し込んだ後、冷却し銅色のクレヨンを得た。
【0019】
(実施例6)
ジステアリルケトン(花王ワックスT−1、花王(株)製) 18.4重量部
130度パラフィン 26.3重量部
トリアシルグリセリン 31.6重量部
黄色ワセリン 2.6重量部
AgC−A(銀粉、福田金属箔粉工業(株)製) 21.0重量部
上記成分を加熱溶解しニーダーで60分練り混ぜ、型に流し込みながら、ベンゼン3.0重量部を霧吹きで噴霧しながら混入させ、冷却し銀色のクレヨンを得た。
【0020】
(比較例1)
実施例2の金色のクレヨン製造時に、ホワイトガソリン1.0重量部を噴霧しない他は、同様になして金色のクレヨンを得た。
【0021】
(比較例2)
実施例1の金色のクレヨンから、ホワイトガソリン0.5重量部を、KF−96(シリコン消泡剤、信越化学工業(株)製)0.5重量部に替えた他は同様になして金色のクレヨンを得た。
【0022】
(比較例3)
実施例5の銅色のクレヨンから、n−ヘキサン0.2重量部、イソヘキサン0.2重量部、n-オクタン0.1重量部を抜いたほかは同様になして銅色のクレヨンを得た。
【0023】
上記実施例1〜6、比較例1〜3により得たクレヨン外観についての結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
外観
固形描画材の外観を目視で確認した。凹凸が無いものを「○」、凹凸が認められるものを「×」とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重が6.0以上の金属粉顔料と、ワックスと、沸点が20〜150℃の石油系炭化水素とより少なくともなる固形描画材。

【公開番号】特開2013−71992(P2013−71992A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211697(P2011−211697)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】