説明

固形棒状リムーバーおよび化粧製品

【課題】目の縁,眉,唇などの線状や細幅等のポイントメイク落とし効果に優れ、使用時や使用後にべたつきのない固形棒状リムーバーおよびペンシル形化粧製品を提供する。
【解決手段】デカメチルシクロペンタシロキサンのようなシリコーン系油分およびイソドデカンのような炭化水素系油分から選ばれる一種または二種以上の揮発性油分を含む液状油分を60〜83質量%配合する。また、揮発性油分の配合量は固形棒状リムーバー全量中、15〜50質量%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形棒状リムーバーに関し、さらに詳しくは、目の縁、眉、唇などのポイントメイクの局部的な化粧落としに使用できるようにリムーバーを棒状の芯材に固化成形したリムーバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の化粧落とし用のリムーバーはクリーム状にて容器に充填されていて、手の指にとって化粧落としをしようとする個所をこすり、化粧落とししてきたものである。
かかる化粧落としは目の縁,眉,唇などの線状や細幅のポイントメイクの化粧落としには不向きであると共に、容器に入ったリムーバーは重く、かさばって携帯に不便であるという欠点があった。
そこで近年、エステル系油分を多く配合したペンシル状のリムーバーが開発されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−29437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のリムーバーは、リムーバー効果はあるが、使用後べたつくという問題があり、使用性の点で満足できるものではなかった。
そこで本発明は、リムーバー効果に優れ、使用時や使用後にべたつきのない固形棒状リムーバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、シリコーン系油分および炭化水素系油分から選ばれる一種または二種以上の揮発性油分を含む液状油分を60〜83質量%配合したことを特徴とする固形棒状リムーバーである。
【0006】
また本発明は、上記固形棒状リムーバーが、シャープペンシル形収納容器に繰り出し可能に収納されていることを特徴とする化粧製品である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の固形棒状リムーバーは、目の縁,眉,唇などの線状や細幅のポイントメイク落とし効果や、ポイントメイクの修正のための局部的なメイク落とし効果に優れ、かつ使用時や使用後にべたつきがなく、すっきりとした使用感を有するものである。
また、本発明の化粧製品によれば、上記固形棒状リムーバーをシャープペンシル形収納容器に繰り出し可能に収納したことで、目の縁,眉,唇などの線状や細幅のポイントメイクの化粧落としや、局部的に小さくはみ出したメイク部分の化粧落としを、他のメイク部分を落とすことなく簡易な方法で行うことができ、使用性に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の最良の実施の形態について説明する。
(液状油分)
本発明においては、揮発性油分を含む液状油分を特定量用いることによって、使用時や使用後のべたつきがない固形棒状リムーバーが得られる。
本発明で用いられる液状油分のうち揮発性油分は、シリコーン系油分および炭化水素系油分から選ばれる一種または二種以上である。
シリコーン系の揮発性油分としては、例えばデカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ポリジメチルシロキサン等が挙げられるが、特にデカメチルシクロペンタシロキサンが好ましい。
炭化水素系の揮発性油分としては、例えばイソドデカンや、イソヘキサデカン等が挙げられるが、特にイソドデカンが好ましい。
揮発性油分として特に好ましいのは、デカメチルシクロペンタシロキサン、またはデカメチルシクロペンタシロキサンとイソドデカンの併用である。
【0009】
揮発性油分以外の液状油分としては、トリエチルヘキサノイン、リンゴ酸ジイソステアリル、2−エチルヘキサン酸セチル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソステアリルアルコールリンゴ酸ジエステル、トリメチロールプロパントリイソオクタノエート、イソオクタン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトライソオクタノエート、パルミチン酸オクチル、クエン酸アセチルトリブチル、ジメチルポリシロキサン(6〜5000cs)、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0010】
揮発性油分を含む液状油分の配合量は、固形棒状リムーバー全量中、60〜83質量%であり、好ましくは、65〜78質量%である。液状油分の配合量が60質量%未満では結果的に半固形〜固形油分が多くなり、硬くなる。また液状油分の配合量が83質量%を超えると、柔らかくなりすぎる。
【0011】
また揮発性油分の配合量は、固形棒状リムーバー全量中、15〜50質量%が好ましく、より好ましくは、20〜40質量%である。揮発性油分の配合量が15質量%未満ではべたつきがあり、使用性が満足できるものとはならない。揮発性油分の配合量が50質量%を超えると、経時や使用中における揮発性油分の揮散により芯がやせて芯抜けがおこりやすくなる。
【0012】
本発明においては、上記必須成分としての液状油分のほか、半固形〜固形油分を用いることができる。
半固形油分としては、例えば、トリラノリン脂肪酸グリセリル、軟質ラノリン脂肪酸、分岐またはヒドロキシル化した脂肪酸コレステリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル(ヘキサオキシステアリン酸ジペンタエリトリット等)、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリド、乳酸ミリスチル、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、オレイン酸フィトステリル、テトラ(べヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル等が挙げられる。
【0013】
固形油分としては、例えば、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックスとマイクロクリスタリンワックスの混合ワックス、セレシンワックス、固形パラフィンワックス、カルナバロウ、キャンデリラロウ、硬化ヒマシ油、モクロウ、ベヘニン酸、コメヌカロウ、トリステアリン、酢酸ステアリン酸スクロース等が挙げられる。
【0014】
本発明においては、上記必須成分以外に必要に応じ、顔料、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、香料、薬剤、溶剤等を本発明の効果を損なわない質的、量的条件下で使用することが可能である。またシリカ等の粉末を配合してスクラブ剤としてもよい。スクラブ剤とすることで、メイク落とし効果はより高められる。
【0015】
本発明の固形棒状リムーバーの形態としては、削って用いるエンピツ形またはシャープペンシル形が挙げられる。中でも、繰出しするシャープペンシル形の固形棒状リムーバーが使いやすい。
特に本発明によれば、芯状の固形棒状リムーバーが、シャープペンシル形収納容器に繰り出し可能に収納された化粧製品も提供される。
【実施例】
【0016】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
実施例の説明に先立ち本発明で用いた効果試験方法について説明する。
【0017】
(1)べたつきのなさの評価試験
使用時および使用後のべたつきのなさについて、パネル10名による使用テストを行い、パネル各人が下記評価にて7段階に評価し、各試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出して下記4段階判定基準により判定した。
【0018】
6:非常に良い
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
0:非常に悪い
【0019】
(4段階判定基準)
5.2以上 :◎(非常に良好)
3.2以上5.2未満:○(良好)
1.2以上3.2未満:△(どちらともいえない〜やや不良)
1.2未満 :×(不良)
【0020】
(2)硬さの評価試験
硬さについて、パネル10名による使用テストを行い、パネル各人が下記評価にて3段階に評価し、各試料のパネル全員の評点合計から、その平均点を算出し、下記3段階判定基準により判定した。
0:非常に硬い、もしくは非常に軟らかい。
1:やや硬い、もしくはやや軟らかい。
2:ちょうどよい。
(3段階判定基準)
1.5以上 :○(良好)
1以上1.5未満:△(どちらともいえない)
1未満 :×(不良)
【0021】
実施例1〜3、比較例1(ペンシル形リムーバー)
次の表1に記載する油分を100℃で融解、混合し、脱気後90℃にて金型に流し込み成形した。芯体のサイズは、3φ(mm)とした。この芯体を繰出し芯としてシャープペンシル形の繰出し器に挿入してペンシル形リムーバーとした。
【0022】
得られた実施例1〜3、比較例1の固形棒状リムーバーのべたつきのなさについて、上記した基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
表1から、揮発性油分を含む液状油分を用いた実施例1〜3は、用いていない比較例1に比べて、べたつきのなさに優れていることが分かる。
【0025】
実施例4〜6(ペンシル形リムーバー)
次の表2に記載する材料を用いて上記と同様にしてペンシル形リムーバーを調製した。
得られた実施例4〜6の固形棒状リムーバーの硬さについて、上記した基準で評価した。その結果を表2に示す。
【0026】
【表2】

【0027】
実施例4〜6は、固形油分量を増減して液状油分の配合量を変化させたもので、実施例4は液状油分の下限値での配合であるため、若干硬くなっている。また実施例6は液状油分の上限値での使用であるため、若干軟らかくなっている。
これに対し、実施例5は、適度な硬さのものとなっている。
【0028】
以下に、本発明のリムーバーペンシルの処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0029】
処方例1(ペンシル形リムーバー)
ポリエチレンワックス 15.0 質量%
マイクロクリスタリンワックス 7.0
キャンデリラロウ 5.0
酢酸ステアリン酸スクロース 10.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 20.0
イソドデカン 15.0
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 20.0
トリエチルヘキサノイン 残余
トコフェロール 0.05
【0030】
(製造方法)
油分を100℃で融解、混合し、脱気後90℃にて金型に流し込み成形する。
【0031】
処方例2(ペンシル形リムーバー(スクラブ剤入り))
ヒドロキシステアリン酸 10.0 質量%
パラフィンワックス 10.2
マイクロクリスタリンワックス 0.8
デカメチルシクロペンタシロキサン 37.0
エチルヘキサン酸セチル 10.0
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 10.0
メチルポリシロキサン 10.0
トリエチルヘキサノイン 残余
トコフェロール 0.05
シリカ(球状) 5.0
【0032】
(製造方法)
油分を100℃で融解、混合した後、粉末を加えて攪拌混合を行い、脱気後90℃にて金型に流し込み成形する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン系油分および炭化水素系油分から選ばれる一種または二種以上の揮発性油分を含む液状油分を60〜83質量%配合したことを特徴とする固形棒状リムーバー。
【請求項2】
シリコーン系油分および炭化水素系油分から選ばれる一種または二種以上の揮発性油分の配合量が、固形棒状リムーバー全量中、15〜50質量%であることを特徴とする請求項1に記載の固形棒状リムーバー。
【請求項3】
揮発性油分がデカメチルシクロペンタシロキサンおよびイソパラフィンから選ばれる一種または二種であることを特徴とする請求項1に記載の固形棒状リムーバー。
【請求項4】
請求項1に記載の固形棒状リムーバーが、シャープペンシル形収納容器に繰り出し可能に収納されていることを特徴とする化粧製品。

【公開番号】特開2011−132153(P2011−132153A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291842(P2009−291842)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】