説明

固形洗浄組成物

【課題】本発明の解決すべき課題は、脂肪酸石鹸系固形洗浄組成物において、その透明感とともに泡質の改善を図ることにある。
【解決手段】 脂肪酸石鹸を主成分とする固形洗浄組成物であって、ポリオキシアルキレンフィトステロールを含むことを特徴とする洗浄組成物。
(ここで、ポリオキシアルキレン基はエチレンオキサイド残基が20〜35モル、プロピレンオキサイド残基が0〜10モルで構成される)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形洗浄組成物、特に脂肪酸石鹸を主成分とする組成物の透明感及び泡質の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
透明固形洗浄組成物は高級感を与え、商品価値が高いところから、特に洗顔用石鹸などに用いられている。
ところで、従来の透明固形洗浄組成物は、脂肪酸石鹸を基剤とし、ショ糖、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールなどのサッカライド類またはポリオール類を透明化剤として使用し、枠ねり法あるいは機械ねり法により製造しているのが通例である。
【0003】
このようにして製造された透明固形洗浄組成物の透明化の構造的メカニズムは、可視光線に対して光学的に不連続な大きさである不透明固形洗浄組成物の繊維状微結晶群が、主として繊維軸に対して直角方向に分断されて、それが可視光線の波長以下に微細化されて固形洗浄組成物が透明化しているものと考えられる。
【0004】
しかしながら、このような透明化の機構で得られた透明固形洗浄組成物では、未だ透明性が十分でなく、また泡のクリーミーさに欠け、特に使用感が重要となる洗顔用石鹸としては改善の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−256296
【特許文献2】特開平7−62388
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は脂肪酸石鹸系固形洗浄組成物において、その透明感及び泡質を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、脂肪酸石鹸と共存する界面活性剤の検討を進めた結果、脂肪酸石鹸とともに特定の両性界面活性剤及びフィトステロール系界面活性剤を用いることにより、透明感及び泡質の改善が図られることを見いだし、本発明を完成するにいたった。
すなわち本発明にかかる脂肪酸石鹸を主成分とする固形洗浄組成物は、
ポリオキシアルキレンフィトステロールを含むことを特徴とする。
(ここで、ポリオキシアルキレン基はエチレンオキサイド残基が20〜35モル、プロピレンオキサイド残基が0〜10モルで構成される)。
【0008】
以下、本発明の構成について詳述する。
[脂肪酸石鹸]
本発明の固形洗浄組成物で使用される、脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩における脂肪酸としては、炭素原子数が好ましくは8〜20、より好ましくは12〜18の、飽和または不飽和の脂肪酸であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。具体例としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等や、それらの混合物である牛脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸等が挙げられる。
【0009】
脂肪酸ナトリウムの具体例としては、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、イソステアリン酸ナトリウム、牛脂脂肪酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、パーム核油脂肪酸ナトリウム等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、2つ以上を混合して使用してもよい。上記の脂肪酸ナトリウムの中でも、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、イソステアリン酸ナトリウムが好適に使用できる。
【0010】
脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩の具体例としては、ラウリン酸ナトリウム/カリウム、ミリスチン酸ナトリウム/カリウム、パルミチン酸ナトリウム/カリウム、ステアリン酸ナトリウム/カリウム、オレイン酸ナトリウム/カリウム、イソステアリン酸ナトリウム/カリウム、牛脂脂肪酸ナトリウム/カリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム/カリウム、パーム核油脂肪酸ナトリウム/カリウム等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、2つ以上を混合して使用してもよい。上記の脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩の中でも、ラウリン酸ナトリウム/カリウム、ミリスチン酸ナトリウム/カリウム、パルミチン酸ナトリウム/カリウム、ステアリン酸ナトリウム/カリウム、オレイン酸ナトリウム/カリウム、イソステアリン酸ナトリウム/カリウムが好適に使用できる。
【0011】
本発明の固形洗浄組成物における、脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩の含有量は、20〜60質量%、特に25〜35質量%であることが好ましい。この含有量が20質量%未満であると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。逆に、60質量%を超えると、透明性が低下したり、使用後につっぱり感が生じるおそれがある。
【0012】
また、脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩においては、その塩を構成するナトリウムとカリウムとのモル比(ナトリウム/カリウム比)が、10/0(即ち、脂肪酸ナトリウム)〜7/3、特に9/1〜8/2であることが好ましい。このナトリウム/カリウム比が7/3を超えてカリウムの割合が多くなると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。また、硬度が低下したり、使用時の溶け減りが大きくなったり、高温多湿の条件下で発汗が生じたり、使用途中に表面が白濁化するおそれがある。
【0013】
[ポリオキシアルキレンフィトステロール]
本発明において好適に用いられるポリオキシアルキレンフィトステロールにおいて、ポリオキシアルキレン基は20〜35モルのエチレンオキサイド残基、0〜10モルのプロピレンオキサイド残基を含む。
また、フィトステロール残基の起源は特に限定されるものではないが、好ましくは大豆である。
【0014】
特に好ましくは、(POE)30フィトステロール、(POE)30(POP)7フィトステロールなどが挙げられる。
ポリオキシアルキレンフィトステロールの配合量は、1.0〜13.0質量%が好ましい。1.0質量%未満では透明感、泡質の改善効果が十分ではなく、また13.0質量%を超えて配合すると摩擦溶解度が上昇し、溶け減りが大きくなる傾向にある。
【0015】
[両性界面活性剤]
本発明にかかる固形洗浄組成物は、透明性、使用感及び泡立ち性のさらなる改善を図るため、以下の両性界面活性剤を含むことが好適である。
【0016】
本発明の固形洗浄組成物で使用され得る両性界面活性剤としては、下記化学式(A)〜(C)で表される両性界面活性剤が挙げられる。
【0017】
【化1】

【0018】
[式中、R1は、炭素原子数7〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、nおよびmは、同一または相異なって、1〜3の整数を表し、Zは、水素原子または(CH2pCOOY(ここで、pは1〜3の整数であり、Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属または有機アミンである。)を表す。]、
【0019】
【化2】

【0020】
[式中、R2は、炭素原子数7〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、R3およびR4は、同一または相異なって、低級アルキル基を表し、Aは、低級アルキレン基を表す。]、および
【0021】
【化3】

【0022】
[式中、R5は、炭素原子数8〜22のアルキル基またはアルケニル基を表し、R6およびR7は、同一または相異なって、低級アルキル基を表す。]。
【0023】
化学式(A)において、R1の「炭素原子数7〜21のアルキル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは7〜17である。また、R1の「炭素原子数7〜21のアルケニル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは7〜17である。また、Yの「アルカリ金属」としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、「アルカリ土類金属」としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられ、「有機アミン」としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0024】
化学式(A)で表される両性界面活性剤の具体例としては、イミダゾリニウムベタイン型、例えば、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(ラウリン酸より合成されたもの、以下、便宜上「ラウロイルイミダゾリニウムベタイン」ともいう)、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(ステアリン酸より合成されたもの)、ヤシ油脂肪酸より合成された2−アルキルまたはアルケニル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(R1がC7〜C17の混合物、以下、便宜上、「ココイルイミダゾリニウムベタイン」ともいう)等が挙げられる。
【0025】
化学式(B)において、R2の「炭素原子数7〜21のアルキル基」および「炭素原子数7〜21のアルケニル基」は、化学式(A)のR1と同様である。また、R3、R4の「低級アルキル基」は、直鎖状または分岐鎖状の、好ましくは炭素原子数が1〜3のアルキル基である。さらに、Aの「低級アルキレン基」は、直鎖状または分岐鎖状の、好ましくは炭素原子数が3〜5のアルキレン基である。
【0026】
化学式(B)で表される両性界面活性剤(アミドアルキルベタイン型)の具体例としては、アミドプロピルベタイン型、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(R2がC7〜C17の混合物)等が挙げられる。
【0027】
化学式(C)において、R5の「炭素原子数8〜22のアルキル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは8〜18である。また、R5の「炭素原子数8〜22のアルケニル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは8〜18である。さらに、R6、R7の「低級アルキル基」は、化学式(B)のR3、R4と同様である。
【0028】
化学式(C)で表される両性界面活性剤(アルキルベタイン型)の具体例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸より合成されたアルキルまたはアルケニルジメチルアミノ酢酸ベタイン(R5がC8〜C18の混合物)等が挙げられる。
【0029】
本発明においては、上記化学式(A)〜(C)で表される両性界面活性剤からなる群より少なくとも1つが選択されて使用される。複数使用する場合、上記化学式(A)で表される両性界面活性剤を複数使用しても、上記化学式(B)で表される両性界面活性剤を複数使用しても、上記化学式(C)で表される両性界面活性剤を複数使用してもよい。
【0030】
上記の両性界面活性剤の中でも、上記化学式(A)で表される両性界面活性剤のうちのイミダゾリニウムベタイン型、特にココイルイミダゾリニウムベタインが特に好適に使用される。
【0031】
本発明の固形洗浄組成物においては、上記の両性界面活性剤を配合することにより、脂肪酸石鹸(脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩)と両性界面活性剤が複合塩を形成し、透明性が向上し、また硬度が向上して溶け減り度合いが低くなる等の作用が発揮される。
【0032】
本発明の固形洗浄組成物における上記の両性界面活性剤の含有量は、2〜10質量%、特に4〜8質量%が好ましい。この含有量が2質量%未満であると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。また、硬度が低下したり、使用時の溶け減りが大きくなるおそれがある。さらに、透明性も低下するおそれがある。逆に、10質量%を超えると、使用後にベタツキ感を生じ、また、長期保存すると表面が褐色に変質して商品価値を損なうおそれがある。
[ノニオン界面活性剤]
【0033】
本発明の固形洗浄組成物には、さらにノニオン界面活性剤を配合してもよい。使用され得るノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POEともいう)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン2−オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、プロピレンオキシドエチレンオキシド共重合ブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン変性シリコン(例えば、ポリオキシエチレンアルキル変性ジメチルシリコン)、ポリオキシエチレングリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレンアルキルグルコシド等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0034】
本発明の固形洗浄組成物においては、ノニオン界面活性剤を配合することにより、透明性が向上する作用が発揮される。
【0035】
本発明の固形洗浄組成物におけるノニオン界面活性剤の含有量は、2〜15質量%、特に6〜12質量%が好ましい。この含有量が2質量%未満であると、透明性が低下したり、使用後につっぱり感が生じるおそれがある。逆に、15質量%を超えると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。また、硬度が低下したり、使用時の溶け減りが大きくなるおそれがある。さらに、使用後にベタツキ感が生じるおそれがある。
【0036】
[ヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤]
本発明にかかる固形洗浄組成物にはヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤を添加することが好適であり、泡立ちの改善が認められる。
本発明において好適なヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤は下記構造(D)を有する。
【0037】
【化4】

【0038】
(式中、Rは炭素原子数4〜34の飽和又は不飽和の炭化水素基を表し;X、Xのいずれか一方は−CHCOOMを表し、他方は水素原子を表し;Mは水素原子、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウム、低級アルカノールアミンカチオン、低級アルキルアミンカチオン、又は塩基性アミノ酸カチオンを表す。)
【0039】
式中、Rは芳香族炭化水素、直鎖状又は分岐状脂肪族炭化水素のいずれでもよいが、脂肪族炭化水素、特にアルキル基、アルケニル基が好ましい。例えば、ブチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルウンデシル基、2−デシルテトラデシル基、2−ウンデシルヘキサデシル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基等が好ましい例として挙げられ、中でもデシル基、ドデシル基が界面活性能力の面で優れている。
【0040】
また、式中、X、Xのいずれか一方は−CHCOOMで表されるが、Mとしては、水素原子、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0041】
具体的には、上記(A)ヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤のうち、ドデカン−1,2−ジオールのいずれかのOH基のHが−CHCOONaで置換されたドデカン−1,2−ジオール・酢酸エーテルナトリウムが本発明で最も好ましい。
なお、本発明においてヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤は、泡立ちを改善する観点から1〜30質量%、好ましくは5〜25質量%配合することができる。
【0042】
[キレート剤]
また、本発明にかかる洗浄組成物に、キレート剤を添加することが好適である。
【0043】
また、本発明において好適に用いられるキレート剤としては、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩が挙げられ、さらに好ましくは、ヒドロキシエタンジホスホン酸である。配合量としては、0.001〜1.0質量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%である。ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩の配合量が0.001質量%より少ない場合は、キレート効果が不十分となり、経時で黄変等の不都合を生じ、1.0質量%より多いと皮膚への刺激が強くなり、好ましくない。
【0044】
本発明の固形洗浄組成物には、上記した作用を損なわない範囲内で、次のような成分を任意に配合することができる。この任意成分としては、トリクロロカルバニリド、ヒノキチオール等の殺菌剤;マルチトール、ソルビトール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、砂糖、ピロリドンカルボン酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ポリオキシエチレンアルキルグルコシドエーテル等の保湿剤;油分;香料;色素;エデト酸3ナトリウム2水和物等のキレート剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;グリチルリチン酸ジカリウム、オオバコエキス、レシチン、サポニン、アロエ、オオバク、カミツレ等の天然抽出物;非イオン性、カチオン性あるいはアニオン性の水溶性高分子;乳酸エステル等の使用性向上剤;アルキルエーテルカルボン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ジナトリウム、アルキルイセチオン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、アシルメチルタウリン、アシルグルタミン酸ナトリウム、アシルサルコシン酸ナトリウム等の起泡性向上剤;等である。
【0045】
本発明の固形洗浄組成物の製造方法については、上記した各成分の混合物に枠練り法、機械練り法等の一般的な方法を適用することができる。
また、本発明の固形洗浄組成物は、基本的に透明であるが、顔料等の配合により透明性が低下したものも含まれる。
【発明の効果】
【0046】
以上説明したように本発明にかかる透明固形洗浄組成物によれば、脂肪酸石鹸と共に特定の両性界面活性剤及びポリオキシアルキレンフィトステロールを用いることにより、透明性及び泡質の改善を図ることが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明者らは脂肪酸石鹸系透明固形洗浄組成物の泡立ち性改善を検討するため、次のような基本処方を用いて検討を行った。なお、配合量は質量%で示す。
【0048】
【表1】


まず、本発明者らは各種成分を添加し、透明性と泡質に与える影響について検討を行った。結果を次の表2に示す。
【0049】
【表2】

ポリオキシアルキレンフィトステロール:(POE)30(POP)7フィトステロール
ポリオキシエチレン30モル硬化ヒマシ油:HLB11
ポリオキシエチレンセチルエーテル HLB13.8
【0050】
なお、起泡力に関しては、ミキサー法泡立て機を用いて測定した。すなわち石鹸濃度
1%水溶液(人口硬水70ppm、温度25℃)を作成し、20秒間攪拌後の泡の高さを測定する。
【0051】
また、摩擦溶解度に関しては、JISK−3304に準じて測定した。すなわち、40℃に調整した水道水で濡らしたフィルム面上に一定重量の試料片(断面15mm×20mm)を載せ、このフィルムを回転し10分間摩擦溶解させる。摩擦溶解前後の重量より、次式により一定面積当たりの摩擦溶解度を求めた。
摩擦溶解度(%)=(前重量−後重量)×100/3
【0052】
また、硬度は、レオメーター(不動工業社製)にて石鹸表面より深度10mmまで針を圧入した際の最大応力にて示した。
前記表2より明らかなように、泡立ち改善に汎用されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いた場合も、クリーミーさに欠ける。また、ポリオキシエチレンセチルエーテル、あるいはグリセリンを用いた場合には、起泡力は若干改善されるが、クリーミー感には欠けるままである。
【0053】
これに対し、ポリオキシアルキレンフィトステロールを用いた場合には、切断時外観はやや黄色みを帯び、しかも泡量(起泡力)も特に顕著には改善されないが、4週間後には透明感が大きく改善され、しかも泡質もクリーミーで極めて良好であった。
次に本発明者らは、ポリオキシアルキレンフィトステロールの各配合量について検討を行った。結果を表3に示す。
【0054】
【表3】

【0055】
上記表3より明らかなように、ポリオキシアルキレンフィトステロールの配合量は試験領域全般で良好な結果を示したが、0.5質量%では泡質及び透明感改善がやや不十分であり、一方15.0質量%となるとやや4週間後外観に黄味が残るようになる。次の表4試験例3−4で(POE)30フィトステロール12.5質量%配合でも良好な結果が示されているように、ポリオキシアルキレンフィトステロールの配合量は1〜13質量%が特に好ましいことが理解される。
【0056】
【表4】


上記表4より明らかなように、同様の傾向は(POE)30フィトステロール、(POE)20フィトステロール及びその混合物にも認められる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸石鹸を主成分とする固形洗浄組成物であって、
ポリオキシアルキレンフィトステロールを含むことを特徴とする洗浄組成物。
(ここで、ポリオキシアルキレン基はエチレンオキサイド残基が20〜35モル、プロピレンオキサイド残基が0〜10モルで構成される)。
【請求項2】
請求項1記載の組成物において、さらに
下記の化学式(A)〜(C)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1つの両性界面活性剤と、
ノニオン界面活性剤と、を含有することを特徴とする固形洗浄組成物。
【化1】


[式中、R1は、炭素原子数7〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、nおよびmは、同一または相異なって、1〜3の整数を表し、Zは、水素原子または(CH2pCOOY(ここで、pは1〜3の整数であり、Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属または有機アミンである。)を表す。]、
【化2】


[式中、R2は、炭素原子数7〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、R3およびR4は、同一または相異なって、低級アルキル基を表し、Aは、低級アルキレン基を表す。]、および
【化3】


[式中、R5は、炭素原子数8〜22のアルキル基またはアルケニル基を表し、R6およびR7は、同一または相異なって、低級アルキル基を表す。]。
【請求項3】
請求項1または2記載の組成物において、ポリオキシアルキレンフィトステロールは1.0〜13.0質量%配合されていることを特徴とする固形洗浄組成物。
【請求項4】
請求項2または3記載の固形洗浄組成物において 脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩が20〜40重量%、両性界面活性剤が2〜10重量%であることを特徴とする固形洗浄組成物。



【公開番号】特開2011−178834(P2011−178834A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42229(P2010−42229)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(593170702)株式会社ピーアンドピーエフ (27)
【Fターム(参考)】