説明

固形燃料燃焼装置の灰除去手段

【課題】 固形燃料燃焼装置の灰除去手段において、攪拌翼が燃焼部に介入することなく待機して熱による変形や劣化の防止と、燃焼皿のスリットを通過する燃焼風が攪拌翼による影響を受けないように構成すると共に、燃焼中の中央部の灰をすばやく除去して、中央部の燃焼状態を良好に、そして燃焼皿全体に供給される燃料を中央方向に移動させることによって、少量の燃料供給での着火と少量燃焼での燃焼の継続を可能とする灰除去手段を提供する。
【解決手段】 灰除去手段に設ける攪拌翼を隣り合う攪拌翼から徐々に角度をずらしながら、回転体の断面視180°以内に配置して、灰除去手段の待機時において、攪拌翼は燃焼皿のスリットに介入することなく位置して設けられると共に、回転体の回転方向を変更して燃焼皿内の固形燃料や固着した灰を希望する位置に移動できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間伐材や流木、木質建築廃材などを粉砕、圧縮加工してペレット状に成型した固形燃料を燃焼燃料とし、燃焼の攪拌及び燃焼灰の除去装置を備える固形燃料燃焼装置の灰除去手段に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境保護対策の機運が益々高まっており、その一つとして環境への影響が比較的少ない代替燃料の開発と利用が急速に増えつつある。そこで近年、環境問題に有効とされているバイオマス燃料の開発が活発化していることは周知である。特に、今まで焼却処分されていた間伐材や流木、そして木質系の建築廃材等を、一定の粒の形状に圧縮成型し固形燃料にして、燃焼装置、暖房機等に利用され始めている。
【0003】
固形燃料は燃焼後に灰となり、その量は燃料の種類によって異なるが、燃料皿に灰が堆積することによって燃焼用の空気の流通が阻害されて燃焼状態が不安定となる場合があるので、特開2004−270980公報(特許文献1)、特開2005−201575公報(特許文献2)や特開2006−266546公報(特許文献3)のように、灰を強制的に除去して安定した燃焼状態を維持するための装置が公知となっている。
【0004】
特許文献1においては、燃焼部の底部の火格子の長穴にそって往復しながら火床を掻き崩す棒状可動体を備えて燃焼後の灰を除去する装置が記されている。また特許文献2では、複数の穴を設けた円形の燃焼部の底部に水平に回転して掻き落とす翼を備えて強制的に灰の除去を行なう装置が、さらに特許文献3では、燃焼皿の底面に設けた複数のスリットを垂直方向に回転する複数の翼によって燃焼後の灰やクリンカを機外に排出する構成が記されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−270980公報
【特許文献2】特開2005−201575公報
【特許文献3】特開2006−266546公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の特許文献1の様に棒状の可動体が常に燃焼部内にあるため、高温の熱に晒され変形やガラス質の付着が発生し、また酸化による劣化も早いという不具合がある。また特許文献2の様に複数の穴を設けた円形の燃焼部の底部に水平に回転する掻き落し羽根を備えているが、燃焼部の底部に設けた穴が固形化した灰等が目詰まりし易く、また燃焼空気の流通を妨げ燃焼が不安定になり易く更に燃焼熱により羽根の変形や劣化が進み易く、長期間の機能の安定を保ち難い。そして特許文献3においては、底面にスリットを設けた燃焼皿の下側に攪拌翼を備えた回転軸を設けて燃焼皿の底面のスリットを通って回転させる構成であるが、攪拌翼が燃焼皿内にある状態で停止すると固形燃料の充填に支障を来し、燃焼が不安定となり、燃焼用空気の流通を妨げ、着火時にはヒータ付近を通る着火用の空気流が不均一となり着火不良が発生し、また灰が落ち難く熱による攪拌翼の変形や腐食が早いという不具合が発生している。
【0007】
そして複数の攪拌翼が同時にスリットを通過するため、それぞれの攪拌翼に燃料が同時に接触してその回転を阻害するので、攪拌翼を回転駆動させるための駆動源のロック現象が発生しやすく、それを防止するため必要以上のトルクを発生する駆動装置の採用によって構造を複雑に、そしてコストの上昇をまねいている。
【0008】
前記文献のように燃焼部の上方から滑らせるか落下させながら燃焼部(燃焼皿)に固形燃料を供給すると、燃焼部(燃焼皿)の全域や、あまり燃料の供給を行ないたくない隅を含む燃焼皿全面に供給されるため、希望する一部の場所だけで少量燃焼を行なうことが難しく、燃焼熱を必要としない場合においても、燃焼の維持のために過剰な燃料供給を行なうこととなってしまう。
【0009】
また、中央部の燃焼が早く、おのずと灰の発生量も中央部が多くなるのは当然であるため、中央部で発生した灰によって中央の燃料量が減り、その周囲だけが燃える現象も発生する。特に癒しの効果等で炎の形も重要な要素を占める木質ペレットを燃焼燃料としたペレットストーブにおいては、炎の形状を良好にするために、中央部分で燃えて細くそして高く揺らぐ炎の形状の美しさを強調させる必要があり、中央部分の灰をすばやく除去することも重要な要素となっている。
【0010】
そして、点火時には着火しやすいように、燃焼皿内の点火装置の付近に多くの燃料を配置する必要があるが、点火装置付近に燃料を多く堆積させようとしても、落下の衝撃で燃焼皿内全体に燃料が供給されるため着火直後に過大燃焼を招き、効率的な燃焼を行なうことが出来ない状態であった。
【0011】
そこで本発明では、燃焼皿の下側に攪拌翼を備えた回転軸を設けて、燃焼皿のスリットを攪拌翼が介入させる灰除去手段において、灰除去手段の待機時であっては、攪拌翼が燃焼皿のスリット内に介入しない位置で待機し、燃焼皿内に供給される燃料が攪拌翼に接触することなく供給され、そして攪拌翼が燃焼熱による変形や劣化を防止して、灰除去手段の耐久性を向上させると共に、スリットを通過する燃焼風が攪拌翼によって抑制されないように構成することを目的とするものである。
【0012】
さらに、燃焼中の中央部の灰をすばやく除去して、中央部の燃焼状態を良好に、そして燃焼皿全体に供給される燃料を中央方向に移動させることによって、少量の燃料供給での着火と、少量燃焼の継続を可能とする固形燃料燃焼装置の灰除去手段の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、請求項1ないし請求項6記載の固形燃料燃焼装置の灰除去手段を提案するものである。
【0014】
即ち、請求項1記載の固形燃料燃焼装置の灰除去手段は、固形燃料燃焼装置は、スリットを所定間隔に複数配置し、固形燃料が堆積する上面が開放された箱状又は器状の燃焼皿と、その上方の燃焼空間からなる燃焼室と、燃焼後の燃焼室の燃焼風を機外に排出するための排風部を備えて、外気が燃焼皿のスリットを通過するように構成した燃焼部を備え、前記燃焼皿のスリットを、回転軸とその外周面の複数の凸状攪拌翼からなる攪拌軸の攪拌翼が介入して、燃焼皿内の固形燃料を攪拌しながら、燃焼皿内に滞留する燃焼後の灰等をスリットから落下するように構成した固形燃料燃焼装置の灰除去手段であって、前記攪拌軸の複数の攪拌翼は、回転軸への配置角度を規則的にそれぞれ変更して、回転軸の半周以内に配列したことを特徴とするものである。
【0015】
請求項2記載の固形燃料燃焼装置の灰除去手段は、請求項1記載の固形燃料燃焼装置の灰除去手段において、攪拌軸の攪拌翼の配列は、燃焼皿の中央部からスリット内に介入し、回転軸の回転に伴って燃焼皿の両端方向へ徐々に攪拌翼がスリットを介入するように攪拌翼の配置角度を徐々にずらしながら配列し、燃焼中又は燃焼前の固形燃料、燃焼後の灰を、燃焼皿の中央から両端方向に攪拌しながら移動させるようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
請求項3記載の固形燃料燃焼装置の灰除去手段は、請求項1又は請求項2記載の固形燃料燃焼装置の灰除去手段において、攪拌軸の攪拌翼の配列は、燃焼皿の両端部から攪拌翼がスリット内に介入し、回転軸の回転に伴って燃焼皿の中央方向へ徐々に攪拌翼がスリットに介入するように攪拌翼の配置角度を徐々にずらしながら配列し、燃焼中又は燃焼前の固形燃料、燃焼後の灰を燃焼皿の両端から中央方向に攪拌しながら移動するようにしたことを特徴とするものである。
【0017】
請求項4記載の固形燃料燃焼装置の灰除去手段は、請求項1、2又は3記載の固形燃料燃焼装置において、燃焼皿のスリットは、その底面となる平面スリットと、底面から立ち上がった側面スリットに繋がって配置され、攪拌軸の回転軸の回転によって攪拌翼は、平面スリットと一面の側面スリット、又は平面スリットと二面の側面スリットを介入するように構成したことを特徴とするものである。
【0018】
請求項5記載の固形燃料燃焼装置の灰除去手段は、請求項1、2、3又は4記載の固形燃料燃焼装置の灰除去手段において、攪拌軸は、固形燃料燃焼装置の点火動作時、燃焼中又は消火動作中の設定された稼動時間以外の待機状態においては、それぞれの攪拌軸の攪拌翼がスリット内に介入することなく、そして各スリットを通過する燃焼風の抵抗にならない位置に配置して待機することを特徴とするものである。
【0019】
請求項6記載の固形燃料燃焼装置の灰除去手段は、請求項1、2、3、4又は5記載の固形燃料燃焼装置の灰除去手段において、燃焼皿の側部又は底部にヒータを隣接配置して、ヒータ付近を通過する空気を過熱し、その加熱風を一部分のスリットから、又はスリットを備えない燃焼皿の一面に加熱風が通風しやすいよう孔を配置して、燃焼皿内の固形燃料に加熱風を通風して点火するよう構成した点火装置を備えた固形燃料燃焼装置であって、点火時には、それぞれの攪拌翼はスリット内に介入することなく、点火装置付近を通過する加熱風の風量と風向を変えることの無い位置に配置して待機することを特徴とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
燃焼皿の下側に攪拌翼を備えた回転軸を設けて、燃焼皿のスリットを攪拌翼が介入させる灰除去手段において、灰除去手段の待機時であっては、攪拌翼が燃焼皿のスリット内に介入しない位置で待機しているので、燃焼皿内に供給される燃料が攪拌翼の位置の影響を受けることなく供給することが出来る。そして攪拌翼がその付近を通過する外気によって冷却されるので、燃焼熱による変形や劣化を防止して、灰除去手段の耐久性を向上させると共に、高耐熱・高耐久の素材を必要としないので灰除去手段装置自体のコスト低減を可能とし、さらにスリットに攪拌翼が介入した位置で待機していないので、スリットを通過する燃焼風は風向や風量の変化することなく、均一に燃料の燃焼を行なうことが出来る。
【0021】
さらに、攪拌翼が中央部分を基点としてその左右方向に徐々にその角度を変更しながら配置されているので、燃焼皿内に攪拌翼の中央部が先に介入するように回転させることによって、燃焼中央部分の灰をスリットから落下させながらスリットから落下しない固体灰を左右方向に徐々に移動させて、中央部の燃焼状態を良好に保つことが出来る。
【0022】
そして前記回転方向と逆方向に攪拌翼を回転させて、攪拌翼を燃焼皿の外方向から中央方向の順に燃焼皿内に介入させることによって、燃焼皿内全体に供給される固形燃料を中央方向に移動させることが出来るので、少量の燃料供給での着火を可能とすることができる。通常着火時には着火しやすいように多くの燃料が供給されるので、着火直後の燃料量が多すぎる不具合が発生しやすいが、本発明を利用することによって、少量での着火とその直後の少量燃焼も可能とするものである。
【0023】
また、攪拌翼が同時にスリットに介入することなく、それぞれの攪拌翼が時間差を持ってスリットを通過するので、攪拌翼の駆動源を高トルコ仕様のものを採用する必要がなく、低電力・低コストの駆動源(モータ)を採用し、構造も簡単で低コストな灰除去手段の提案を可能としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態例として、木質ペレット燃料を使用したペレットストーブについて以下の説明を行なう。
【0025】
図1には、固形燃料燃焼装置の例として、木質ペレット燃料を使用したペレットストーブの側面断面図。図2には木質ペレットストーブの灰除去手段部分を示す断面斜視図。図3には木質ペレットストーブの灰除去手段の攪拌軸の部分斜視図。図4には燃焼皿と攪拌軸の配置状態を示す図、図5は点火装置と燃焼皿、攪拌軸の配置関係を示す部分断面図である。
【0026】
図1において、1は固形燃料燃焼装置を例示する木質ペレットストーブである。αは木質ペレットであって木質ペレットストーブ1内には木質ペレットαが燃焼する燃焼室2と、その中間部から上方の熱交換部3が配置されている。熱交換部3の上方には燃焼風排気口7が設けられていて燃焼風が排風部6へ流通させている。燃焼室2には隣接して燃料タンク4を備え、燃料タンク4から燃焼室2へ木質ペレットαを供給する燃料供給手段5が燃料タンク4に密接して配置されている。図1に示す燃料タンク4は木質ペレットストーブ1の上端までの空間を有していて、木質ペレットストーブ1の上面が扉となって燃料タンク4内に木質ペレットαが投入できる構成であると良い(図示せず)。
【0027】
燃料タンク4の下端は燃料供給手段5の入口に向かってその底面を傾斜し、燃料供給手段5のスクリューコンベア8の投入口に木質ペレットαが漏れなく投入できるようになっている。スクリューコンベアの上端には燃焼室2内へ木質ペレットαを投入するための投入シュート9と、投入シュート9内に外気を通風させるための外気取り入れ口となる通気口10が設けてあり、この通気口10は投入シュート9の途中に設けられていてもよい。尚スクリューコンベア8の動力はモータ11の回転によって得られる。
【0028】
燃焼室2と燃料タンク4との間には外気が流通する冷却空間22があって、燃焼室2で発生する熱を燃料タンク4や燃料供給手段5に伝熱しないようになっている。
【0029】
燃焼室2の下方には、燃焼部12を有し、その燃焼部12には投入シュート9より落下した木質ペレットαが堆積燃焼する複数のスリット23を備える燃焼皿13が配置されている。燃焼皿13の後面には長細の筒内にヒータ14を備えて、長細内を通過する風をヒータ14によって高温(約250℃以上)に過熱し、その空気を木質ペレットαに当てることによって着火する構造の点火装置15が備えられている。
【0030】
燃焼皿13のスリット23は投入された木質ペレットαが落下しない開口幅を保って、燃焼皿13の底面と側面の前後か左右のどちらかの方向に対し、繋がって長細状に設けられている。
【0031】
燃焼皿13の下方には、燃焼皿13上に浮遊又は固着してしまった固体灰を除去するための灰除去手段30が設けられていて、自然に燃焼皿13から落下する燃焼後の灰や、灰除去手段30で強制的に燃焼皿13内から除去された灰が堆積する灰回収容器16が灰除去手段30の下方で燃焼皿13の設置面を覆う範囲で設けられている。
【0032】
燃焼室2の中間部から上部にかけて燃焼室2を前後に縦断する熱交換部3は、複数の放熱管17からなり、外気を圧送ファン18で放熱管17内に強制的に供給し、熱交換をして温風吹き出し口19から温風を機外に供給する。
【0033】
排風部6の吸引ファン20の吸引作用によって、燃焼風排気口7から燃焼室2内の燃焼風を吸引し、排気ダクト21から機外に燃焼風を排気している。なお、燃焼風に乗って排風部6に達する比重の軽い灰が機外に飛散しないように排風部6にはサイクロン等の集塵装置を設けて集塵し、集塵装置を通過した燃焼風を排気ダクト21から機外に排出する構成であると良い(図示せず)。
【0034】
吸引ファン20の動作によって外気が直接又は冷却空間22を経由して燃焼部12のスリット23及び点火装置15の細長筒内を、そして投入シュート9を通過して燃焼室2内に達する。燃料タンク4からスクリューコンベア8を経由して燃焼室2の燃焼皿13上に供給された木質ペレットαは、点火装置15によって着火し、スリット23からの通風を受け、木質ペレットαは燃焼を開始する。その後この燃焼風は熱交換部3で熱交換され燃焼風排気口7から吸引ファン20を通過し、排気ダクト21から機外に排出される。
【0035】
運転開始と共にヒータ14に通電し、通電が規定時間経過後に予熱完了と判断してモータ11を稼動させて燃焼皿13上に燃料供給を行なう。そして設定時間経過後に吸引ファン20を起動させ、燃焼皿13上に木質ペレットαを設定量供給する。温度センサで排気される燃焼風の温度が設定温度(40℃)到達時に燃焼と検知したものとみなし、圧送ファン18を稼動させる共に、設定の間隔と設定の時間の範囲でモータ11に通電し、燃焼燃料の供給を定期的に行ない、その後、温度センサの温度が設定温度より下降しなければ安定燃焼と判断して、ヒータ14への通電を停止する。
【実施例1】
【0036】
図2は燃焼室2の下方の燃焼部12の詳細を示した図であって、24は燃焼室2の内壁、25は燃焼室2の後壁、26は前壁(図1)である。燃焼室2と灰回収容器16の設置空間を仕切るための仕切り板27が設けられていて、仕切り板27の開口した部分に燃焼箱28を配置し、燃焼箱28の上面から燃焼皿13が落としこまれている。
【0037】
燃焼皿13は底面と左右面、前後面の5面からなる上面が開口した箱形状であって、燃焼箱28の上面開口部に落としこまれているだけであるので、着脱が容易であり、燃焼皿13と燃焼箱28の掃除が出来るようになっている。
【0038】
燃焼皿13のスリット23は、その底面の水平面と、底面に対して立ち上がった面の前面又は後面若しくはその両方に繋がって設けられている。そして燃焼皿13の下方で燃焼箱28の内部を貫くように灰除去手段30が設けられている(図2)。
【0039】
図3に示すように、この灰除去手段30は回転軸31に複数の攪拌翼32を備えた攪拌軸33と、その一端に配置したモータ34と他端のカムプレート35から形成されている(図2)。攪拌軸33は薄板状の攪拌翼32が、燃焼皿13のスリット23の側面に接触することなく燃焼皿13の内部に介入する位置で、燃焼皿13の底面と回転軸31は隙間を持って配置され、燃焼箱28内に攪拌翼32が全て収納するように攪拌軸33が配置されている。さらに回転軸31が燃焼室2の左右の内壁24を貫通し、モータ34とカムプレート35は燃焼室2外に配置されている。
【0040】
回転軸31に配置された攪拌翼32は、図3に示すように隣り合う攪拌翼32の設置角度を回転軸31の断面視で徐々にずらしながら、そして全ての攪拌翼32が180度以内に配置されている。
【0041】
攪拌翼32はスリット23の数と同数設けられ、両端の攪拌翼a41は回転軸31の断面視で同角度に配置して両端から徐々に配置角度を変更し、中央の攪拌翼b42は攪拌翼a41から回転角度180度の位置に固定されている。
【0042】
攪拌軸33の一端に備えられたカムプレート35の外周面の一部には、平坦面36が設けられている。この平坦面36を感知するセンサ37によって、攪拌軸33を一定の場所で停止できるようになっており、図4及び図5のように攪拌翼32が燃焼皿13のスリット23内に介入しない位置で停止するように制御されている。
【0043】
モータ34は図2及び図4に示すE方向回転とF方向回転の左右方向の回転を可能としていて、E方向に回転する場合には燃焼皿13の中央のスリット13に攪拌翼b42が先に介入し、徐々に両側面の攪拌翼32がスリット13内に介入していく方向で攪拌軸33が回転するので、燃焼皿13内の木質ペレットαや固形状態の炭や灰が燃焼皿13の中央部分から両端の方向にその位置を徐々移動していくことを可能とする。
【0044】
また、F方向に回転すると攪拌翼a41からそれぞれの攪拌翼が順次スリット13内に介入していくので、この回転を継続することによって燃焼皿13内の木質ペレットαや固形状態の炭や灰は燃焼皿の端側から中央部に徐々にその位置を変更していくようになっている。
【0045】
燃料供給手段5の稼動によって、燃料タンク4内の木質ペレットαはスクリューコンベア8を上昇し、投入シュート9から燃焼室2内の燃焼部12である燃焼皿13に供給される。燃焼皿13内に定量供給されて燃焼供給手段5は停止するが、燃焼皿13内に供給された木質ペレットαは、落下の衝撃から燃焼皿13のいたるところに分散している。図2に示すように点火装置15は燃焼皿13の中央部分に位置しているが、木質ペレットαに点火するためには点火装置15の通風孔38を塞ぐ範囲に木質ペレットαを充填する必要があるので、おのずと燃焼皿13内に供給される木質ペレットαの量が必要以上となって、着火直後に必要以上に多い燃焼量となる場合があり、安全上の問題が懸念される。そこで、投入シュート9から燃焼皿13内に木質ペレットαを供給しながら又は供給の直後に灰除去手段30を稼動させて攪拌軸33をFの回転方向、即ち両端の攪拌翼a41から燃焼皿13のスリット23に介入するように回転させることによって、燃焼皿13の両端方向に供給された木質ペレットαを燃焼皿13の中央付近に集めることを可能として、点火装置15の通気孔38を覆うように木質ペレットαを堆積させ着火を可能としている。点火装置15付近だけに燃焼燃料を集めて着火することが出来るので、燃焼直後から少量燃焼を可能とし、希望する燃料量への早急な調節と安全性の向上を可能としている。
【0046】
着火後の連続燃焼中においても、上記着火直後のように攪拌翼a41からスリット23に介入する方向、即ちFの方向に攪拌軸33が定期的に回転するように構成すると、投入シュート9から落下しながら燃焼皿13に供給され、落下の衝撃で燃焼皿内全域に広がった燃焼燃料を中央部だけに集積できるので、極めて少量での燃焼を燃焼皿の中央部分で可能とする燃焼の形態を作り出すことが出来る。
【0047】
燃焼燃料として供給される木質ペレットαの種類によっては、燃焼後に固体状となってスリット23から落下しづらい物がある。特に木の皮から形成されるバークペレットにおいては、燃焼後にクリンカ状態になりやすく、燃焼皿13内に留まってスリット23を通過しようとする燃焼風を妨げることによって燃焼を抑制し、燃焼燃料を燃焼皿13に供給しても、供給量に見合った燃焼状態を維持できなかったり、燃焼皿内での均等な燃焼を行なえないことから煙の発生が生じる場合がある。
【0048】
特に、木質ペレットストーブはその炎の形状を重視し、中央部に集中した炎を作り出す必要があるため、燃焼皿内の各場所で炎が立ち上がったり消えたりを繰り返す現象は好ましくない。
【0049】
そこで連続燃焼中において、攪拌翼b42からスリット23に介入する方向、即ちE方向に攪拌軸33が定期的に回転するように構成すると、燃焼皿13の中央部で発生するクリンカや燃焼後の固体状の固着した灰を燃焼皿13の中央部分から左右両端に移動させることを可能として、燃焼皿13の中央部分のスリット23を塞ぐ要因が除去され、中央部のスリット23の通気性を良好にすることで、中央部の安定した燃焼を可能とすることができる。
【0050】
灰除去手段30は、それに設けられたセンサ37がカムプレート35の平坦面36を検知することによって、攪拌軸33の位置を検知することが出来るので、灰除去手段30が稼動していない待ち状態において図4・図5が示すように各攪拌翼32・41・42がスリット23に介入しない位置で待機するようになっている。
【0051】
灰除去手段30が稼動していない通常の燃焼状態を表す図4のように、燃焼皿13の各スリットに攪拌翼が介入していないので、各スリットの開口面積はそれぞれが一定であって、各スリットを通過する燃焼風の風速・風量も均一に行なうことが出来るため燃焼皿内の燃焼を均一に実施することが出来る。また、図5に示す点火装置15の通気孔38を吸引されるヒータ14で過熱された吸引風も、燃焼皿の各スリットを攪拌翼が介入することが無い状態で点火動作が行なわれることによって、常に一定の点火に適した加熱風を通気孔38から木質ペレットαに供給することが出来る。
【0052】
さらに攪拌翼は、燃焼部位に停止することなく、そして燃焼皿13から若干の距離を取りながら外気39によって冷却されながら待機しているので、耐熱性を必要とする素材を必ずしも使用する必要が無く、コストに優れまた加工しやすい素材で灰除去手段30を構成することを可能とすると共に、複数の攪拌翼が同時にスリットに介入すること無く、時間差をもって徐々にそれぞれがスリットに介入して木質ペレット燃料と接触するので、攪拌翼の回転を阻害しようとする抵抗を一度に受ける事が無く、攪拌翼の駆動源を高トルク仕様即ち高価格・高消費電力の駆動源(モータ)を選択する必要が無い。
【0053】
以上のように、燃焼燃料となる木質ペレットαの種類や特性、また燃焼部への投入の方式等によって攪拌翼の回転方向を変更すること、例えば着火時にはF方向に回転させて、燃焼皿に供給された燃料を中央部分に収集して着火を行い、その後の連続燃焼中の定期的に投入される燃料の投入時の直前にE方向に回転させて中央部の固着灰を速やかに移動させ、燃料投入直後には中央部に燃料が集まるようF方向に回転させるなど、その燃料の特性に合わせた回転方向の変更を行なうことによって効率よく、また良好な炎を作り出すことを可能とする燃焼装置の灰除去手段を提供することが出来るものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
固体燃料を利用する燃焼器において、灰を速やかに除去するため回転体に攪拌翼を備えて構成した排除去装置では、攪拌翼とその回転体との取り付け位置を徐々に変更した配置に設置することにより、固形燃料や燃焼後の固着灰を希望する位置に攪拌して灰を除去しながら、移動させるための装置としても利用することの出来る灰除去手段を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】木質ペレット燃料を使用したペレットストーブの側面断面図である。
【図2】木質ペレットストーブの灰除去手段部分を示す断面斜視図である。
【図3】木質ペレットストーブの灰除去手段の攪拌軸の部分斜視図である。
【図4】燃焼皿と攪拌軸の配置状態を示す図である。
【図5】点火装置と燃焼皿、攪拌軸の配置関係を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 木質ペレットストーブ
2 燃焼室
3 熱交換部
4 燃料タンク
5 燃料供給手段
6 排風部
7 燃焼風排気口
8 スクリューコンベア
9 投入シュート
10 通気口
11 モータ
12 燃焼部
13 燃焼皿
14 ヒータ
15 点火装置
16 灰回収容器
17 放熱管
18 圧送ファン
19 温風吹き出し口
20 吸引ファン
21 排気ダクト
22 冷却空間
23 スリット
24 内壁
25 後壁
26 前壁
27 仕切り板
28 燃焼箱
30 灰除去手段
31 回転軸
32 攪拌翼
33 攪拌軸
34 モータ
35 カムプレート
36 平坦面
37 センサ
38 通風孔
39 外気
41 攪拌翼a
42 攪拌翼b
α 木質ペレット




【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形燃料燃焼装置は、スリットを所定間隔に複数配置し、固形燃料が堆積する上面が開放された箱状又は器状の燃焼皿と、その上方の燃焼空間からなる燃焼室と、燃焼後の燃焼室の燃焼風を機外に排出するための排風部を備えて、外気が燃焼皿のスリットを通過するように構成した燃焼部を備え、
前記燃焼皿のスリットを、回転軸とその外周面の複数の凸状攪拌翼からなる攪拌軸の攪拌翼が介入して、燃焼皿内の固形燃料を攪拌しながら、燃焼皿内に滞留する燃焼後の灰等をスリットから落下するように構成した固形燃料燃焼装置の灰除去手段であって、
前記攪拌軸の複数の攪拌翼は、回転軸への配置角度を規則的にそれぞれ変更して、回転軸の半周以内に配列したことを特徴とする固形燃料燃焼装置の灰除去手段。
【請求項2】
攪拌軸の攪拌翼の配列は、燃焼皿の中央部からスリット内に介入し、回転軸の回転に伴って燃焼皿の両端方向へ徐々に攪拌翼がスリットを介入するように攪拌翼の配置角度を徐々にずらしながら配列し、
燃焼中又は燃焼前の固形燃料、燃焼後の灰を、燃焼皿の中央から両端方向に攪拌しながら移動させるようにしたことを特徴とする、請求項1記載の固形燃料燃焼装置の灰除去手段。
【請求項3】
攪拌軸の攪拌翼の配列は、燃焼皿の両端部から攪拌翼がスリット内に介入し、回転軸の回転に伴って燃焼皿の中央方向へ徐々に攪拌翼がスリットに介入するように攪拌翼の配置角度を徐々にずらしながら配列し、
燃焼中又は燃焼前の固形燃料、燃焼後の灰を燃焼皿の両端から中央方向に攪拌しながら移動するようにしたことを特徴とする、請求項1記載の固形燃料燃焼装置の灰除去手段。
【請求項4】
燃焼皿のスリットは、その底面となる平面スリットと、底面から立ち上がった側面スリットに繋がって配置され、
攪拌軸の回転軸の回転によって攪拌翼は、平面スリットと一面の側面スリット、
又は平面スリットと二面の側面スリットを介入するように構成したことを特徴とする、請求項1、2又は3記載の固形燃料燃焼装置の灰除去手段。
【請求項5】
攪拌軸は、固形燃料燃焼装置の点火動作時、燃焼中又は消火動作中の設定された稼動時間以外の待機状態においては、
それぞれの攪拌軸の攪拌翼がスリット内に介入することなく、そして各スリットを通過する燃焼風の抵抗にならない位置に配置して待機することを特徴とする、請求項1、2、3又は4記載の固形燃料燃焼装置の灰除去手段。
【請求項6】
燃焼皿の側部又は底部にヒータを隣接配置して、ヒータ付近を通過する空気を過熱し、その加熱風を一部分のスリットから、又はスリットを備えない燃焼皿の一面に加熱風が通風しやすいよう孔を配置して、燃焼皿内の固形燃料に加熱風を通風して点火するよう構成した点火装置を備えた固形燃料燃焼装置であって、
点火時には、それぞれの攪拌翼はスリット内に介入することなく、点火装置付近を通過する加熱風の風量と風向を変えることの無い位置に配置して待機することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の固形燃料燃焼装置の灰除去手段。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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