説明

固形燃料

【課題】使用目的に応じて火力や燃焼時間等を調節することができ、エネルギーの浪費を防止することができ、しかも取扱いが容易な固形燃料を提供する。
【解決手段】可燃性材料からなる外筒部2と、可燃性材料からなり、外筒部2内に挿脱可能として嵌合した中筒部3と、可燃性材料からなり、中筒部3内に挿脱可能として嵌合した芯部4とを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、練炭その他の固形燃料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、練炭は、七輪用の燃料としてだけでなく、屋外でのバーベキュー用等として広く使用されるようになってきている。
また、練炭以外にも、例えば、メタノールにゲル化剤として酢酸カルシウムまたは脂肪酸ナトリウムなどを加えて製造したアルコール系や、パラフィン系等の卓上用の固形燃料や、バイオマスを使用したタブレット型の固形燃料等も普及している。
【0003】
練炭には、円柱状とした練炭本体の外周面に、軸線方向を向く凹条を設け、この凹条を、練炭本体を収容する練炭保持筒の内面に設けた突条に係合させることにより、練炭保持筒内への収容時の位置決めを図るようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−98842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような従来の練炭その他の固形燃料においては、小型のタブレット型や豆炭等を除いては、使用目的に応じて火力や燃焼時間等を調節しうるものは少なく、必要以上に燃料を燃焼し、エネルギーを浪費している傾向がある。
【0006】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑みてなされたもので、使用目的に応じて火力や燃焼時間等を調節することができ、エネルギーの浪費を防止することができ、しかも取扱いが容易な固形燃料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)可燃性材料からなる外筒部と、可燃性材料からなり、前記外筒部内に挿脱可能として嵌合した中筒部と、可燃性材料からなり、前記中筒部内に挿脱可能として嵌合した芯部とを備えるものとする。
【0008】
このような構成とすると、使用目的に応じて火力や燃焼時間等を調節することができ、エネルギーの浪費を防止することができる。
例えば、少量の湯を沸かすだけの場合には、芯部のみを他部から抜き出して使用し、バーベキューや大量の調理を行う場合には、外筒部と中筒部と芯部とを、互いに入れ子式に嵌合したままの状態で使用し、その中間的な火力を使用したい場合には、中筒部単独で、または中筒部内に芯部を嵌合した状態で使用することにより、過剰なエネルギー消費を抑制することができる。
また、外筒部と中筒部と芯部とを、互いに入れ子式に嵌合した状態で、さらには、同一形状のものを複数段積み重ねた状態で搬送することができ、使用時には、その中の必要なもののみを取り出せばよいので、取扱いが便利である。
【0009】
(2)上記(1)項において、中筒部を、互いに挿脱可能とした内外多重のものとする。
【0010】
このような構成とすると、火力調節を4段階以上とすることができる。
【0011】
(3)上記(1)または(2)項において、芯部または中筒部の外形の横断面を非円形とし、それが嵌合される中筒部または外筒部の内面形状を、前記外形に補形をなす形状とする。
【0012】
このような構成とすると、芯部は中筒部に対して、または中筒部は外筒部に対して位置決めして嵌合される。したがって、後述するような通気用縦孔を芯部や中筒部に設けた場合、外筒部に対するそれらの通気用縦孔の位置が一定に定まるので、構造および形状を同一とした複数の固形燃料を位置決めして上下に積み重ねたとき、それらの通気用縦孔が整合し、そのままの状態でそれらを燃焼させた際、通気用縦孔が位置ずれして、通気が遮断され、燃焼効率が低下する等のおそれを防止することができる。
【0013】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、外筒部、中筒部、および芯部のいずれか1または複数のものに、軸線方向を向く1または複数の通気用縦孔を設ける。
【0014】
このような構成とすると、固形燃料の燃焼時に、燃焼用空気が通気用縦孔を通って内部に供給され、燃焼効率を高めることができる。
【0015】
(5)上記(4)項において、外筒部、中筒部、および芯部のいずれか1または複数のものに、通気用縦孔と連通し、かつ軸線と直交する方向を向いて、それらの外側面に開口する1または複数の通気用横孔を設ける。
【0016】
このような構成とすると、固形燃料の燃焼時に、燃焼用空気が、通気用横孔を通って、通気用縦孔に導入され、燃焼効率をさらに高めることができる。
【0017】
(6)上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、外筒部、中筒部、および芯部のいずれか1または複数のものの上面と下面とに、構造および形状を同一とした複数の固形燃料を上下に積み重ねたとき、上下に対向する面間において互いに係合するようにした位置決め用の凸部と凹部とを設ける。
【0018】
このような構成とすると、構造および形状を同一とした複数の固形燃料を上下に積み重ねたとき、上下に隣接する固形燃料の相互の位置決めがなされ、例えば、上記(4)項におけるような通気用縦孔を各固形燃料に設けた場合、上下に隣接する固形燃料の各通気用縦孔が互いに整合し、そのままの状態でそれらを燃焼させた際、通気用縦孔が位置ずれして、通気が遮断され、燃焼効率が低下する等のおそれを防止することができる。
【0019】
(7)上記(1)〜(6)項のいずれかにおいて、外筒部の内面とそれに対向する中筒部の外面、または中筒部の内面とそれに対向する芯部の外面を、互いに接触することにより、その内側のものが自重により落下しない程度に保持しうる摩擦力が得られるようにした摩擦面とする。
【0020】
このような構成とすると、外筒部を持ち上げたとき、その内側の中筒部と芯部とがともに持ち上がり、また中筒部を持ち上げたとき、その内側の芯部がともに持ち上がるので、持ち運びに便利である。
【0021】
(8)上記(1)〜(7)項のいずれかにおいて、外筒部の内面とそれに対向する中筒部の外面との間、または中筒部の内面とそれに対向する芯部の外面との間に、外筒部に対する中筒部、または中筒部に対する芯部の上方への移動は許容するが、下方への移動は阻止するようにした落ち止め手段を設ける。
【0022】
このような構成とすると、外筒部を持ち上げたとき、その内側の中筒部がともに持ち上がり、また中筒部を持ち上げたとき、その内側の芯部がともに持ち上がるので、持ち運びに便利である。
【0023】
(9)上記(8)項において、落ち止め手段が、外筒部の下端部内面に設けた内向き凸部と、それに係合するように、中筒部の下端部外面に設けた凹部、または中筒部の下端部内面に設けた内向き凸部と、それに係合するように、芯部の下端部外面に設けた凹部を備えるものとする。
【0024】
このような構成とすると、落ち止め手段の構成を簡素化しうるとともに、外筒部に対する中筒部の落下、および中筒部に対する芯部の落下を確実に防止することができる。
【0025】
(10)上記(1)〜(9)項のいずれかにおいて、外筒部、中筒部、および芯部を、粉炭と粘着材とを混合して加圧成形したものにより構成し、練炭とする。
【0026】
このような構成とすると、練炭の用途を従来のものより広げることができ、練炭をより普及させることができる。
【0027】
(11) 可燃性材料からなる外筒部と、可燃性材料からなり、かつ前記外筒部内に挿脱可能として嵌合した芯部とを備えるものとする。
【0028】
このような構成とすると、使用目的に応じて火力や燃焼時間等を調節することができ、エネルギーの浪費を防止することができる。
例えば、少量の湯を沸かすだけの場合には、芯部のみを外筒部から抜き出して使用し、バーベキューや大量の調理を行う場合には、外筒部と芯部とを、互いに入れ子式に嵌合したままの状態で使用し、その中間的な火力を使用したい場合には、外筒部単独で使用することにより、過剰なエネルギー消費を抑制することができる。
また、外筒部と芯部とを、互いに入れ子式に嵌合した状態で、さらには、同一形状のものを複数段積み重ねた状態で搬送することができ、使用時には、その中の必要なもののみを取り出せばよいので、取扱いが便利である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、使用目的に応じて火力や燃焼時間等を調節することができ、エネルギーの浪費を防止することができ、しかも取扱いが容易な固形燃料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の固形燃料の第1の実施形態を複数個積み重ねたときの斜視図である。
【図2】同じく、1個の固形燃料の分解斜視図である。
【図3】同じく、平面図である。
【図4】図3におけるIV−IV線縦断正面図である。
【図5】本発明の固形燃料の第2の実施形態の一部を破断して示す分解斜視図である。
【図6】本発明の固形燃料の第3の実施形態の斜視図である。
【図7】本発明の固形燃料の第4の実施形態の平面図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜図4は、本発明の固形燃料の第1の実施形態を示す。
この固形燃料1は、可燃性材料からなる外筒部2と、可燃性材料からなり、外筒部2内に挿脱可能として嵌合した中筒部3と、可燃性材料からなり、中筒部3内に挿脱可能として嵌合した芯部4とを備えている。
【0032】
外筒部2、中筒部3、および芯部4は、それぞれ可燃性材料である粉炭と粘着材とを混合して加圧成形したものにより構成されており、それぞれが単独でも、また互いに入れ子状に嵌合した状態でも、練炭として使用することができる。
【0033】
外筒部2の外形の横断面は円形としてあるが、中筒部3の外周面には、軸線と平行の上下方向を向く5条の凸条5が互いに円周方向に等間隔に設けられており、外筒部2の内面には、各凸条5と補形をなす5条の凹条6が設けられている。
このように、中筒部3の外形の横断面を非円形とし、それが嵌合される外筒部2の内面形状を、中筒部3の外形と補形をなす形状としてあるので、それらを互いに嵌合することによって、中筒部3は外筒部2に対して位置決めされるようになっている。
【0034】
芯部4の外周面には、軸線と平行の上下方向を向く2条の山形の凸条7が互いに円周方向に等間隔に設けられており、中筒部3の内面には、各凸条7と補形をなす2条の凹条8が設けられている。
このように、芯部4の外形の横断面を非円形とし、それが嵌合される中筒部3の内面形状を、芯部4の外形と補形をなす形状としてあるので、それらを互いに嵌合することによって、芯部4は中筒部3に対して位置決めされるようになっている。
【0035】
なお、芯部4の外形の横断面および中筒部3の内面の横断面を、互いに補形をなす単なる円形とすることもある。
その理由は、芯部4においては、後述する通気用縦孔9が中央に設けられているので、芯部4が中筒部3内において相対的に回転したとしても、通気用縦孔9の位置が変わることはなく、中筒部3に対する芯部4の回転方向の位置決めを図る必要がないからである。また、その場合には、芯部4の上下面に設けられる後述する位置決め用の凹部11および凸部12も省略して実施することもある。
【0036】
中筒部3の内面とそれに対向する芯部4の外面は、互いに接触することにより、その内側の芯部4が自重により落下しない程度に保持しうる摩擦力が得られるようにした摩擦面とし、また外筒部2の内面とそれに対向する中筒部3の外面は、互いに接触することにより、その内側のもの、すなわち中筒部3と芯部4が自重により落下しない程度に保持しうる摩擦力が得られるようにした摩擦面としてある。
このようにすると、外筒部2を持ち上げたとき、その内側の中筒部3と芯部4とがともに持ち上がり、また中筒部3を持ち上げたとき、その内側の芯部4がともに持ち上がるので、持ち運びに便利である。
【0037】
芯部4の中央と、中筒部3における各凸条5の内側と、外筒部2における互いに隣接する1対の凹条6、6間の外側の部分とには、軸線と平行の上下方向を向く通気用縦孔9がそれぞれ設けられている。
【0038】
また、芯部4と中筒部3と外筒部2とのそれぞれの下端には、通気用縦孔9と連通し、かつ軸線と直交する方向を向いて、それらの外側面に開口する凹溝状の通気用横孔10が設けられている。
芯部4においては、3個の通気用横孔10が、中央の通気用横孔10から放射状に3方向に延出するように配設されており、中筒部3と外筒部2とにおいては、各通気用横孔10は、各通気用縦孔9から外側方を向くように、すなわち芯部4の中心軸線から離心方向を向くように配設されている。
【0039】
芯部4と中筒部3と外筒部2とに通気用縦孔9や通気用横孔10を設けたことにより、それらの燃焼時に、燃焼用空気が通気用縦孔9や通気用横孔10を通って、練炭の内部に供給され、燃焼効率を高めることができる。
【0040】
外筒部2および中筒部3の上面には、5個の位置決め用の凹部11が、5個の通気用縦孔9の円周方向の中間にそれぞれ位置するようにして設けられ、また芯部4の上面には、3個の位置決め用の凹部11が、中央の通気用縦孔9を中心とする同一円周上において円周方向に等間隔をなすようにしてそれぞれ設けられている。
【0041】
外筒部2、中筒部3、および芯部4の下面には、それらの上面における各凹部11と対応するように、位置決め用の凸部12がそれぞれ設けられている。
各凹部11と凸部12は、互いに補形をなす球面としてあるが、その他の形状としてもよい。
【0042】
各凹部11と凸部12からなる位置決め手段を設けたことにより、外筒部2、中筒部3、および芯部4を互いに入れ子状に嵌合してなる、構造および形状を同一とした複数の固形燃料1を、図1に示すように上下に多段状に積み重ねたとき、各段の固形燃料1の上面における各凹部11に、その上段の固形燃料1の下面における各凸部12が嵌合することにより、上下に隣接する固形燃料1の相互の位置決めがなされ、上下に隣接する固形燃料1、1の各通気用縦孔9が互いに整合し、そのままの状態でそれらを燃焼させた際、通気用縦孔9が位置ずれして、通気が遮断されたり、絞られたりして、燃焼効率が低下する等のおそれを防止することができる。
【0043】
第1の実施形態においては、以上のような構成としてあるので、使用目的に応じて火力や燃焼時間等を調節することができ、エネルギーの浪費を防止することができる。
例えば、少量の湯を沸かすだけの場合には、芯部4のみを他部から抜き出して使用し、バーベキューや大量の調理を行う場合には、外筒部2と中筒部3と芯部4とを、互いに入れ子式に嵌合したままの状態で使用し、その中間的な火力を使用したい場合には、中筒部3単独で、もしくは中筒部3内に芯部4を嵌合した状態で、または外筒部2単独で、もしくはそれと芯部4とを組み合わせて使用することにより、過剰なエネルギー消費を抑制することができる。
【0044】
また、外筒部2と中筒部3と芯部4とを、互いに入れ子式に嵌合した状態で、さらには、そのように各部を入れ子式に嵌合した同一構造同一形状の複数の固形燃料1を、互いに積み重ねた状態で搬送することができ、使用時には、その中の必要なもののみを取り出せばよいので、取扱いが便利である。
【0045】
図5は、本発明の固形燃料の第2の実施形態を示す。なお、第1の実施形態におけるのと同一または類似の部材には、同一の符号をもって図示するに止め、それらについての詳細な説明は省略する(図6に示す本発明の第3の実施形態、並びに図7および図8に示す本発明の第4の実施形態においても同様とする)。
【0046】
この実施形態においては、ほぼ円筒形とした外筒部2の内面と、それに対向するほぼ円筒形とした中筒部3の外面との間、および中筒部3の内面と、それに対向するほぼ円柱状とした芯部4の外面との間に、外筒部2に対する中筒部3、および中筒部3に対する芯部4の上方への移動は許容するが、下方への移動は阻止するようにした落ち止め手段13、14を設けてある。
【0047】
図5に示す例では、落ち止め手段13は、外筒部2の下端部内面に設けた複数個の内向き凸部15と、それに係合するように、中筒部3の下端部外面に設けた複数個の凹部16とを備えるものとしてある。
また、落ち止め手段14は、芯部4の上端部外周面に設けた複数個の外向き凸部17と、それに係合するように、中筒部3の上端部内面に設けた複数個の凹部18とを備えるものとしてある。
【0048】
このような落ち止め手段13、14を設けることにより、外筒部2に対する中筒部3、および中筒部3に対する芯部4の上方への移動は許容されるが、下方への移動は阻止され、外筒部2を持ち上げたとき、その内側の中筒部3がともに持ち上がり、また中筒部3を持ち上げたとき、その内側の芯部4がともに持ち上がるので、持ち運びに便利である。
【0049】
また、落ち止め手段13を、内向き凸部15と凹部16とを備えるものとするとし、落ち止め手段14を、外向き凸部17と凹部18とを備えるものとすることによって、落ち止め手段13、14の構成を簡素化しうるとともに、外筒部2に対する中筒部3の落下、および中筒部3に対する芯部4の落下を確実に防止することができる。
【0050】
さらに、この落ち止め手段13、14は、内向き凸部15が凹部16と、外向き凸部17が凹部18と、それぞれ係合することにより、外筒部2に対する中筒部3、および中筒部3に対する芯部4の回転方向の位置決めをも図ることができるようになっている。すなわち、落ち止め兼位置決め手段となっている。
【0051】
なお、図示は省略するが、落ち止め手段13を、落ち止め手段14と同様に、中筒部3の上端部外周面に設けた複数個の外向き凸部と、それに係合するように、外筒部2の上端部内面に設けた複数個の凹部18とを備えるものとしたり、落ち止め手段14を、落ち止め手段13と同様に、中筒部3の下端部内面に設けた複数個の内向き凸部と、それに係合するように、芯部4の下端部外面に設けた複数個の凹部とを備えるものとしたりしてもよい。
【0052】
図6は、本発明の第3の実施形態を示す。
この実施形態においては、固形燃料1は、ほぼ正方形の角筒状とした可燃性材料からなる外筒部19と、可燃性材料からなり、かつ外筒部19内に挿脱可能として嵌合した角柱状の芯部20とを備えている。
【0053】
芯部20の中央には、1個の通気用縦孔9が、また外筒部19における各辺の内側には、それぞれ2個の通気用縦孔9、9が設けられている。
【0054】
芯部20は、外筒部19内に遊嵌されているだけで、第1の実施形態におけるように、対向面を摩擦面としたり、第2の実施形態におけるように、内向き凸部15や外向き凸部17を凹部16、18に係合させるようにした相互係合手段等は何ら設けてはいない。
【0055】
このような単純な構成であっても、使用目的に応じて火力や燃焼時間等を調節することができ、エネルギーの浪費を防止することができるという基本的な効果は奏することができる。
すなわち、少量の湯を沸かすだけの場合には、芯部20のみを外筒部19から抜き出して使用し、バーベキューや大量の調理を行う場合には、外筒部19と芯部20とを、互いに入れ子式に嵌合したままの状態で使用し、その中間的な火力を使用したい場合には、外筒部19単独で使用することにより、過剰なエネルギー消費を抑制することができる。
【0056】
販売時や搬送時等においては、芯部20が外筒部19から落下しないように、例えば、芯部20を外筒部19内に嵌合した状態で、その上下面と一側面とを、側面視コ字状に折曲した1枚の台紙により挟んで袋詰めしたり、芯部20を外筒部19内に嵌合した状態で、複数の固形燃料1を、上下左右に並べて段ボール箱等内に収容したりしておくのがよい。
【0057】
図7および図8は、本発明の第4の実施形態を示す。
この実施形態においては、外筒部2、中筒部3、および芯部4の外面の横断面形状を、相似形のほぼ正六角形とするとともに、外筒部2および中筒部3の内面の横断面形状も、相似形のほぼ正六角形としてある。
【0058】
外筒部2および中筒部3の内面下部には、上面がそれらの正六角形の中心に向かって下向き傾斜する傾斜面21a、22aをなす内向き凸部21、22が、全周に亘って設けられている。
それらに対向する中筒部3および芯部4の外面下部には、正六角形の中心に向かって下向き傾斜する傾斜面23、24が形成され、中筒部3および芯部4の下端部は先細り状となっている。
【0059】
外筒部2内に中筒部3を嵌合したり、中筒部3内に芯部4を嵌合したりしたときは、中筒部3および芯部4の下端部の傾斜面23、24が、外筒部2の内向き凸部21の傾斜面21aおよび中筒部3の内向き凸部22の傾斜面22aに当接して、外筒部2に対する中筒部3、および中筒部3に対する芯部4の下降は阻止されるようになっている。
【0060】
しかし、この固形燃料1の各部2、3、4を互いに嵌合した状態で、上下を反転させることにより、外筒部2に対して中筒部3を、また中筒部3に対して芯部4を、容易に取り出すことができる。
【0061】
このように、第4の実施形態においては、傾斜面21a、22aを有する内向き凸部21、22と、それに対向する傾斜面23、24とによって、外筒部2に対する中筒部3、および中筒部3に対する芯部4の上方への移動は許容するが、下方への移動は阻止するようにした落ち止め手段13、14が形成されている。
また、中筒部3の外面形状を、外筒部2の内面形状と補形をなすようにし、芯部4のの外面形状を、中筒部3の内面形状と補形をなすようにすることによって、外筒部2に対する中筒部3、および中筒部3に対する芯部4の回転方向の位置決めを図っている。
【0062】
なお、第4の実施形態においては、内向き凸部21、22を、上面が傾斜面21a、22aをなす断面三角形としてあるが、これを、図5に示す内向き凸部15のように、断面四角形とし、それに対向する中筒部3および芯部4の外面下部には、その断面四角形とした内向き凸部21、22と補形をなす凹入段部を設けるようにしてもよい。
【0063】
また、図5に示す外向き突部17と凹部18との関係のように、芯部4の上端部の外周面に、断面三角形または四角形の外向き突部を全周に亘って設け、それに対向する中筒部3の上端部内周面に、この外向き突部と補形をなす傾斜面または凹入段部を設けてもよい。
【0064】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱することなく、例えば、次のような幾多の変形した態様での実施が可能である。
(1) 第1の実施形態における中筒部3を、互いに挿脱可能とした内外多重のものとする。
このような構成とすると、火力調節を4段階以上とすることができる。
(2) 固形燃料1における各部2、3、4、19、20の材料を、上記のような粉炭と粘着材とを混合したものだけでなく、背景技術において記載してあるような、メタノールにゲル化剤として酢酸カルシウムまたは脂肪酸ナトリウムなどを加えて製造したアルコール系のもの、パラフィン系のもの、バイオマス系のもの等とする。
(3) 各部2、3、4、19、20の外形や内面の横断面形状を、円形だけでなく、多角形、楕円形、その他の非円形とする。
(4) 各部2、3、4、19、20を互いに位置決めして嵌合した際、各部2、3、4、19、20の通気用横孔10が、放射状をなして互いに連通するようにする。
このようにすると、各部2、3、4、19、20を互いに嵌合したまま燃焼させる場合に、各通気用縦孔9への燃焼空気の導入が促進される。
(5) 各部2、3、4、19、20の上下方向の中間部に、通気用縦孔9に連通し、かつ外側面に開口する横孔を穿設する。
【符号の説明】
【0065】
1 固形燃料
2 外筒部
3 中筒部
4 芯部
5 凸条
6 凹条
7 凸条
8 凹条
9 通気用縦孔
10 通気用横孔
11 凹部
12 凸部
13、14 落ち止め手段
15 内向き凸部
16 凹部
17 外向き凸部
18 凹部
19 外筒部
20 芯部
21、22 内向き凸部
21a、22a 傾斜面
23、24 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性材料からなる外筒部と、
可燃性材料からなり、前記外筒部内に挿脱可能として嵌合した中筒部と、
可燃性材料からなり、前記中筒部内に挿脱可能として嵌合した芯部
とを備えることを特徴とする固形燃料。
【請求項2】
中筒部を、互いに挿脱可能とした内外多重のものとした請求項1記載の固形燃料。
【請求項3】
芯部または中筒部の外形の横断面を非円形とし、それが嵌合される中筒部または外筒部の内面形状を、前記外形に補形をなす形状とした請求項1または2記載の固形燃料。
【請求項4】
外筒部、中筒部、および芯部のいずれか1または複数のものに、軸線方向を向く1または複数の通気用縦孔を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の固形燃料。
【請求項5】
外筒部、中筒部、および芯部のいずれか1または複数のものに、通気用縦孔と連通し、かつ軸線と直交する方向を向いて、それらの外側面に開口する1または複数の通気用横孔を設けた請求項4記載の固形燃料。
【請求項6】
外筒部、中筒部、および芯部のいずれか1または複数のものの上面と下面とに、構造および形状を同一とした複数の固形燃料を上下に積み重ねたとき、上下に対向する面間において互いに係合するようにした位置決め用の凸部と凹部とを設けた請求項1〜5のいずれかに記載の固形燃料。
【請求項7】
外筒部の内面とそれに対向する中筒部の外面、または中筒部の内面とそれに対向する芯部の外面を、互いに接触することにより、その内側のものが自重により落下しない程度に保持しうる摩擦力が得られるようにした摩擦面とした請求項1〜6のいずれかに記載の固形燃料。
【請求項8】
外筒部の内面とそれに対向する中筒部の外面との間、または中筒部の内面とそれに対向する芯部の外面との間に、外筒部に対する中筒部、または中筒部に対する芯部の上方への移動は許容するが、下方への移動は阻止するようにした落ち止め手段を設けた請求項1〜7のいずれかに記載の固形燃料。
【請求項9】
落ち止め手段が、外筒部の下端部内面に設けた内向き凸部と、それに係合するように、中筒部の下端部外面に設けた凹部、または中筒部の下端部内面に設けた内向き凸部と、それに係合するように、芯部の下端部外面に設けた凹部を備えている請求項8記載の固形燃料。
【請求項10】
外筒部、中筒部、および芯部を、粉炭と粘着材とを混合して加圧成形したものにより構成し、練炭とした請求項1〜9のいずれかに記載の固形燃料。
【請求項11】
可燃性材料からなる外筒部と、
可燃性材料からなり、かつ前記外筒部内に挿脱可能として嵌合した芯部
とを備えることを特徴とする固形燃料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate