説明

固形物の分散方法

【課題】市販の水性製品に対して、該製品の組成を変えずに、特には乳化剤を使用せずに、疎水性固形物を混合することができる固形物の分散方法の提供。
【解決手段】本発明の固形物の分散方法は、20℃、1,020hPaにおける、水100質量部に対する溶解量が1質量部以下である固形物の分散方法であって、水性配合物中に、少なくとも1種の自己乳化型オルガノポリシロキサン(A)を混合し、次いで固形物(B)を混合する工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水への固形物の分散方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疎水性粒子は容易に水に均一分散せず、特に乳化剤を使用して分散させるが、乳化剤は後の使用時に支障をきたすのが一般的である。
【0003】
特許文献1には、塩基性窒素含有Si−C結合基を有するオルガノポリシロキサンの有機酸又は無機酸との塩と、疎水性固形物との配合物が水に対して自己分散することが開示されている。該配合物は、疎水性固形物をオルガノポリシロキサン配合物と混合することで得られる。得られた混合物を水で希釈すると、疎水性固形物が微細な分散体状に分布した均一な分散体が生じる。
【0004】
前記特許文献1にはまた、前記配合物、或いはそれを水で希釈して得られる水性分散体を表面処理に使用することが可能であることが開示されている。これに関して、各用途に対する配合物としては、前記特許文献1に記載のものだけが使われているが、記載されている該各用途に対して、前記特許文献1に記載のものでは完全に再現することができない、或いは得られない長所を有する通常の市販品も存在する。しかし、前記特許文献1に記載の配合物には特有の利点がある。また、該配合物の主要な分画は、常にオルガノポリシロキサン混合物であり粒子ではないため、前記特許文献1に記載の実施例1によれば、例えば7%を越える量の疎水性焼成シリカ(WACKER HDK(R) H18)を、前記特許文献1のオルガノポリシロキサン配合物(A)に混合することは不可能である。これは、配合物の粘性が急激に上昇し、技術的に適切な条件ではもはや処理不可能となるためである。
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0609524B1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術を改良することを目的とし、特には、市販の水性製品に対して、該製品の組成を変えずに、特には乳化剤を使用せずに、疎水性固形物を混合することを可能とする非常に汎用な方法を開発することを目的とする。疎水性固形物の選択上の大部分の問題が、そのメーカー自身によるものである程度に、本方法は広範囲に適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 20℃、1,020hPaにおける、水100質量部に対する溶解量が1質量部以下である固形物の分散方法であって、
水性配合物中に、少なくとも1種の自己乳化型オルガノポリシロキサン(A)を混合し、次いで固形物(B)を混合する工程を含むことを特徴とする固形物の分散方法である。
<2> 自己乳化型オルガノポリシロキサン(A)に加えて、有機シリコン化合物の質量に対して0〜0.5質量%の塩基性窒素を含む有機シリコン化合物(C)を混合する前記<1>に記載の固形物の分散方法である。
<3> 自己乳化型オルガノポリシロキサン(A)が、オルガノポリシロキサンの質量に対して少なくとも0.5質量%の塩基性窒素を含むSiC結合基を有するオルガノポリシロキサンと、有機酸及び無機酸のいずれかとの塩を含む前記<1>から<2>のいずれかに記載の固形物の分散方法である。
<4> オルガノポリシロキサンの質量に対して少なくとも0.5質量%の塩基性窒素を含むSiC結合基を有するオルガノポリシロキサンが、下記一般式(I)で表される化合物である前記<3>に記載の固形物の分散方法である。
(OR)SiO(4−a−b−c)/2 一般式(I)
前記一般式(I)中、Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び塩基性窒素を有さない一価のSiC結合有機基のいずれかを表し、Rは、同一であってもよいし、異なっていてもよく、塩基性窒素を有する一価のSiC結合有機基を表し、Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び一価の有機基のいずれかを表し、aは、0、1、2、及び3のいずれかであり、bは、0、1、2、及び3のいずれかであり、cは、0、1、2、及び3のいずれかである。但し、a、b、及びcの合計は3以下であり、R1の存在量は、オルガノポリシロキサン一分子当たり塩基性窒素に対して0.5質量%よりも大きい。
<5> 有機シリコン化合物(C)が、下記一般式(III)で表される単位から成る化合物を含む前記<2>から<4>のいずれかに記載の固形物の分散方法である。
(OR)SiO(4−d−e)/2 一般式(III)
前記一般式(III)中、Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び一価のSiC結合有機基のいずれかを表し、Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び一価の有機基のいずれかを表し、dは、0、1、2、3、及び4のいずれかであり、eは、0、1、2、3、及び4のいずれかである。但し、d及びeの合計は4以下であり、塩基性窒素の含有量は、各有機シリコン化合物の質量に対して0.5〜4質量%である。
<6> 固形物(B)が、フィラー、顔料、殺生剤、及び紫外線吸収性固形物からなる群から選択される固形物を含む前記<1>から<5>のいずれかに記載の固形物の分散方法である。
<7> 得られた分散液が、コーティング及び浸漬の少なくともいずれかに使用される前記<1>から<6>のいずれかに記載の固形物の分散方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決でき、市販の水性製品に対して、該製品の組成を変えずに、特には乳化剤を使用せずに、疎水性固形物を混合することを可能とする非常に汎用な固形物の分散方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、20℃、1,020hPaにおいて、水100質量部に対する溶解量が1質量部以下である固形物を分散させる方法であって、水性配合物中へ、少なくとも自己乳化型オルガノポリシロキサン(A)を混合し、次いで固形物(B)を混合する工程を含む方法を提供する。
【0010】
本明細書において「自己分散性」とは、本発明の組成物が、分散体の製造に通常使用される機械的エネルギーを使用せずに、単に水中に添加・混合するだけで自然に安定した希釈水溶液を生成することをいう。
【0011】
本明細書において数量と共に使用される「塩基性窒素」は、元素として計算された窒素である。
【0012】
前記(A)の他に、有機シリコン化合物の質量に対して0〜0.5質量%の塩基性窒素を含む有機シリコン化合物(C)が存在するのが好ましい。
【0013】
前記自己乳化型オルガノポリシロキサン(A)は、オルガノポリシロキサンの質量に対して少なくとも0.5質量%の塩基性窒素を含むSiC結合基を有するオルガノポリシロキサンと、有機酸又は無機酸との塩を含むのが好ましい。
【0014】
本発明の方法に使用される水性配合物は、オルガノポリシロキサン配合物が安定して混合できる配合物全てである。
【0015】
前記水性配合物は、好ましくは下記の性質や用途を付与するものである。例えば、塗膜材料、浸漬システムや、それらを用いた支持体上への塗膜、被覆材の形成といった用途、並びに、消泡、流量促進、疎水化、親水化、フィラー及び顔料の分散・湿潤、支持体の湿潤、表面平滑性の促進、付着耐性・滑り耐性の低下等の性質である。
【0016】
オルガノポリシロキサンの質量に対して少なくとも0.5質量%の塩基性窒素を含むSiC結合基を有する前記オルガノポリシロキサンとしては、下記一般式(I)で表されるものであるのが好ましい。
(OR)SiO(4−a−b−c)/2 一般式(I)
前記式(I)中、Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び塩基性窒素を有さない一価のSiC結合有機基のいずれかを表し、Rは、同一であってもよいし、異なっていてもよく、塩基性窒素を有する一価のSiC結合有機基を表し、Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び一価の有機基のいずれかを表し、aは、0、1、2、及び3のいずれかであり、bは、0、1、2、及び3のいずれかであり、cは、0、1、2、及び3のいずれかである。但し、a、b、及びcの合計は3以下であり、R1の存在量は、オルガノポリシロキサン一分子当たり塩基性窒素に対して0.5質量%よりも大きい。
【0017】
前記Rは、置換又は無置換の炭素数1〜20の炭化水素基を有するのが好ましく、炭素数1〜8の炭化水素基がより好ましく、メチル基及びイソオクチル基が特に好ましい。
【0018】
更に、水素原子が結合した各々のシリコン原子に対して、炭化水素基、より好ましくはメチル基が結合しているのが好ましい。
【0019】
前記Rの例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基等のヘキシル基、n−ヘプチル基等のヘプチル基、n−オクチル基及びイソオクチル基(例えば、2,2,4−トリメチルペンチル基)等のオクチル基、n−ノニル基等のノニル基、n−デシル基等のデシル基、n−ドデシル基等のドデシル基、n−オクタデシル基等のオクタデシル基、等のアルキル基;ビニル基、アリル基、n−5−ヘキセニル基、4−ビニルシクロヘキシル基、3−ノルボネニル基等のアルケニル基;シクロペンチル基、シクロへキシル基、4−エチルシクロへキシル基、シクロヘプチル基、ノルボニル基、メチルシクロへキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基;o−、m−、p−トリル基、キシリル基、エチルフェニル基等のアルカリール基;ベンジル基、α−フェニルエチル基、β−フェニルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0020】
置換型炭化水素基Rの例としては、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3−ブロモプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、5,5,5,4,4,3,3−ヘプタフルオロペンチル基、並びにクロロフェニル基、ジクロロフェニル基、トリフルオロトリル基等のハロゲン化炭化水素基;2−メルカプトエチル基、3−メルカプトプロピル基等のメルカプトアルキル基;2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基等のシアノアルキル基;3−アクリロイルオキシプロピル基、3−メタアクリロイルオキシプロピル基等のアクリロイルアルキル基;ヒドロキシプロピル基、下記式で表される基等のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
【化1】

【0021】
前記Rは、下記一般式(II)で表される基を有するのが好ましい。
NR− 一般式(II)
前記一般式(II)中、Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、又は無置換若しくはアミノ基で置換された一価の炭化水素基を表し、Rは、二価の炭化水素基を表す。
【0022】
前記Rの例としては、前記Rに対して挙げられた前記炭化水素基と、アミノアルキル基等の、アミノ基、特にはアミノエチル基で置換された炭化水素基が挙げられる。
【0023】
前記一般式(II)で表される基中、各窒素原子には、少なくとも一つの水素原子が結合しているのが好ましい。
【0024】
前記Rは、炭素数1〜10の二価の炭化水素基を有するのが好ましく、炭素数1〜4がより好ましく、n−プロピレン基が更に好ましい。
【0025】
前記Rの例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、シクロへキシレン基、オクタデシレン基、フェニレン基、ブチニレン基が挙げられる。
【0026】
前記Rの例としては、HN(CH、HN(CHNH(CH、HN(CHNH(CH、HN(CH、HCNH(CH、CNH(CH、HCNH(CH、CNH(CH、HN(CH、HN(CH、H(NHCHCH、CNH(CHNH(CH、cyclo−C11NH(CH、cyclo−C11NH(CH、(CHN(CH、(CHN(CH、(CN(CH、(CN(CHが挙げられる。
【0027】
前記Rは、HN(CH、及びHN(CHNH(CHを有するのが好ましく、特に、HN(CHNH(CHが好ましい。
【0028】
更に、前記Rは、ピペリジル基等の環状アミン基も有していてもよい。
前記Rは、水素原子及び炭素数1〜4のアルキル基を有するのが好ましく、特にメチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
【0029】
前記Rの例としては、前記Rのアルキル基の例全てが挙げられる。aの平均値は、0〜2であり、0〜1.8が好ましい。bの平均値は、0.1〜0.6であり、0.15〜0.30が好ましい。cの平均値は、0〜0.8であり、0.01〜0.6が好ましい。
【0030】
前記一般式(I)で表される単位から成るオルガノポリシロキサンの例としては、25℃における粘度が6〜7mm/sであり、アミン価が2.15である、テトラエチルシリケートとN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとの反応生成物(シロキサンi);25℃における粘度が20〜50mm/sであり、アミン価が2.7〜3.2である、α−ωジヒドロキシジメチルポリシロキサンとN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとの反応生成物(シロキサンii);25℃における粘度が60mm/sであり、アミン価が2.15である、CHSi(OC0.81.1とN-(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとの反応生成物(シロキサンiii)が挙げられるが、(シロキサンii)及び(シロキサンiii)が好ましく、特に(シロキサンii)が好ましい。前記アミン価は、1gの物質の中和に要する1N HClのミリリットル数である。
【0031】
前記一般式(I)で表される単位から成るオルガノポリシロキサンの粘度は、25℃において6〜60mm/sであるのが好ましい。
【0032】
前記一般式(I)で表される単位から成るオルガノポリシロキサンは、例えば、アミノ基含有シランと塩基性窒素を有さないオルガノポリシロキサンとの平衡及び/又は縮合等の公知の方法を用いて合成することができる。
【0033】
本発明の組成物の成分(A)の合成に使用可能な前記有機酸又は無機酸は、同じ酸であってもよく、塩基性窒素含有SiC結合基を有するオルガノポリシロキサンと有機酸又は無機酸との塩の形成に従来より使用可能である。このような酸の好ましい例としては、塩酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸、リン酸水素ジエチルが挙げられ、酢酸及びプロピオン酸が好ましく、酢酸が特に好ましい。
【0034】
本発明の組成物の前記成分(A)として使用可能な化合物は既知であり、該化合物の例としては、例えば米国特許第4,661,551号明細書を参照することができる。
【0035】
前記成分(A)として使用される前記オルガノポリシロキサン塩は、1種単独の塩であってもよいし、少なくとも2種の塩の混合物であってもよい。
【0036】
本発明に使用される前記疎水性固形物(B)、即ち20℃、1,020hPaにおいて水100質量部に対する溶解量が1質量部以下である固形物は、20℃、1,020hPaにおいて固体であり、フィラー、顔料、殺生剤、及び紫外線吸収性固形物であるのが好ましいが、単独又は成分(C)との混合物として前記条件下で前記成分(A)100質量部に対して50質量部を超えて溶解する有機シリコン化合物ではないのが好ましい。
【0037】
疎水性フィラーの好適な例としては、非補強型フィラー、即ち水晶、珪藻土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライト、ベントナイト等のモンモリロナイト、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛及び/又はそれらの混合酸化物等の金属酸化物粉末、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、窒化シリコン、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ガラス粉末、高分子粉末等のBET表面積が最大50m/gであるフィラーが挙げられ、好ましくは強化型フィラー、即ち焼成シリカ、沈降シリカ、ファーネス・ブラック、アセチレン・ブラック等のカーボンブラック、高BET表面積の混合シリコン・アルミニウム酸化物等のBET表面積が50m/gを超えるフィラー、並びに、アスベスト及び高分子繊維等の繊維性フィラー挙げられる。上記フィラーは、例えば、オルガノシラン及び/又はオルガノシロキサンと処理することによって、或いは水酸基をアルコキシ基にエーテル化することによって疎水化されていてもよい。
【0038】
顔料の例としては、チョーク、オークル、アンバー、緑土等の土壌顔料、二酸化チタン、クロム黄、鉛丹、亜鉛黄、亜鉛緑、カドミウムレッド、コバルトブルー等の鉱物性顔料、及びセピア、カッセルブラウン、インディゴ、アゾ顔料、アントラキノノイド顔料、インディゴイド顔料、ジオキサジン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、アルカリブルー顔料等の有機顔料が好適に挙げられ、上記無機顔料の多くがフィラーとしても機能し、また上記フィラーの多くが無機顔料としても機能する。
【0039】
疎水性殺生剤の例としては、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、及びベンズイミドゾール誘導体等の殺藻剤が挙げられる。
【0040】
紫外線吸収性固形物の例としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、透明の鉄顔料が挙げられる。
【0041】
前記固形物(B)として本発明の組成物は、表面積が約140m/gである疎水性の高分散性焼成シリカを含むのが好ましく、揮発性シリコン化合物を火炎加水分解処理した後、オルガノシランで疎水化することにより得られる。
【0042】
本発明の組成物は、成分(A)1質量部に対して、疎水性固形物(B)を0.1〜15質量部含有するのが好ましく、0.5〜2質量部含有するのがより好ましい。
【0043】
前記固形物(B)としては1種単独でも、少なくとも2種の混合物としても使用可能である。
【0044】
必要に応じて使用される前記有機シリコン化合物(C)は、下記一般式(III)で表される単位から成ること化合物を含むのが好ましい。
(OR)SiO(4−d−e)/2 一般式(III)
前記一般式(III)中、Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び一価のSiC結合有機基のいずれかを表し、Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び一価の有機基のいずれかを表し、dは、0、1、2、3、及び4のいずれかであり、eは、0、1、2、3、及び4のいずれかである。但し、d及びeの合計は4以下であり、塩基性窒素の含有量は、各有機シリコン化合物の質量に対して0.5〜4質量%である。
【0045】
前記Rの例としては、前記Rに対して挙げられたもの、及びアミノ基で置換された炭化水素基が挙げられ、炭素数1〜8の炭化水素基が好ましく、メチル基及びイソオクチル基が特に好ましい。
【0046】
前記Rの例としては、前記Rに対して挙げられたものが挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0047】
前記一般式(III)で表される単位から成る有機シリコン化合物は、シランを有していてもよい(即ち、dとeとの合計が4である)。
【0048】
前記一般式(III)で表される単位から成る有機シリコン化合物はまた、オルガノポリシロキサンを有していてもよい(即ち、d及びeの合計が3以下である)。
【0049】
前記一般式(III)で表されるシランの例としては、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0050】
前記一般式(III)で表される単位から成るオルガノポリシロキサンの例としては、メチルエトキシポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、イソオクチルメトキシポリシロキサンが挙げられる。
【0051】
前記一般式(III)で表される単位から成るオルガノポリシロキサンの粘度は、25℃において、5〜2,000mm/sが好ましく、10〜500mm/sがより好ましい。
【0052】
所望により使用される前記有機シリコン化合物(C)は、シラン及び低分子量シロキサンを有するのが好ましく、シランを有するのがより好ましい。
【0053】
前記一般式(III)で表される単位から成る有機シリコン化合物の合成方法は、広く知られている。
【0054】
有機シリコン化合物(C)を本発明の組成物の調製に使用する場合、その使用量としては、前記成分(A)1質量部に対して0.5〜15質量部が好ましく、1〜3質量部がより好ましい。
【0055】
本発明の組成物は、前記成分(C)を含むのが好ましく、前記有機シリコン化合物(C)を使用した場合、1種単独でも、少なくとも2種の混合物として使用してもよい。
【0056】
本発明の組成物は更に、保存剤、分散剤、有機溶剤等のその他の成分を含んでいてもよい。しかし、本発明の組成物は、有機溶剤が存在しないか、或いは存在しても、前記成分(A)及び任意の前記成分(C)の総量に対して10質量%以下の量であるのが好ましい。
【0057】
またこのとき、本発明の方法において前記組成物中に実質的に含まれないのが好ましい乳化剤の20℃、外気圧(即ち900〜1,100hPa)における水に対する溶解度は、通常、均質混合状態又はミセル状態において1質量%超過である。
【0058】
本発明の方法に係わる前記組成物は、このような界面活性剤を、該界面活性剤の水相における臨界ミセル濃度の最大0.1倍未満、好ましくは0.01倍未満、より好ましくは0.001未満、特に好ましくは0.0001未満の最大濃度で含むことが可能であるが、これは、本発明のエマルジョンの総量に対する界面活性剤濃度で10質量%未満、好ましくは2質量%未満、より好ましくは1質量%未満、特には0質量%に相当する濃度である。
【0059】
本方法は原理上、前記オルガノポリシロキサン配合物が安定して混合可能な全ての配合物に対して使用可能であるが、シロキサンの性質及び疎水性固形物から予想される性質のため、主な用途分野は、強力な疎水化が役割を果たす領域である。このような分野としては主に、外装、道路、橋等の無機物建設材料(例えば屋根板、レンガ、強化型又は非強化型コンクリート、石膏、スラグブロック、石灰砂ブロック)、及び木の疎水化、更に、織物、皮、例えば腐食制御のため金属類、紙、カードボードの疎水化処理がある。本発明の方法はまた、ペンキ、石膏、光沢剤等の水で希釈可能な配合物の製造に特に好適に使用される。
【0060】
疎水化処理に加え、本発明の方法は金属の腐食制御に使用される配合物や、下記の性質の操作に使用される配合物に使用することも可能である。例えば、伝導性及び電気抵抗の制御、配合物の流動性の制御、物体、又は濡れた若しくは硬化したフィルの光沢の制御、耐候性の上昇、耐薬品性の上昇、遮光安定性の上昇、白色化の減少、静電摩擦及び滑り摩擦の上昇又は減少、付着性の促進、フィラー及び顔料の濡れ性、分散性制御、レオロジー制御、可撓性、引っかき抵抗性、弾力性、伸展性、曲げ性、引っ張り挙動、反発挙動、硬度、密度、引裂き抵抗、圧縮永久歪み、温度挙動、膨張率、耐摩擦性等の機械的性質、及び、熱伝導率、可燃性、ガス透過性、耐水蒸気性、耐熱気性、耐化学薬品性、耐放射線性、滅菌性等のその他の性質の制御、誘電損率、絶縁破壊性抵抗、誘電率、耐クリープ電流性、耐光アーク性、表面抵抗、比絶縁破壊抵抗等の電気的性質の制御、が挙げられる。
【0061】
上記記載の性質を操作するために本発明の方法が使用可能な用途の例としては、塗膜材料、浸漬システムや、それらを用いて、支持体、好ましくは例えば金属製支持体、ガラス製支持体、木製支持体、鉱物性支持体、織物作製用の合成繊維及び天然繊維、カーペット、フロア被覆物、若しくは繊維から作製可能な製品、或いは革製品、フィルムやシート等のプラスチック上への塗膜、被覆材の形成といった用途、並びに、消泡、流量促進、疎水化、親水化、フィラー及び顔料の分散・湿潤、支持体の湿潤、表面平滑性の促進、付着耐性・滑り耐性の低下等の用途が挙げられる。本発明の方法は弾性化合物に適用可能である。この点において、利用の目的としては、透明性、耐熱性、黄色化傾向、及び/又は耐候性の制御といった、他の性質の強化・改善でもよい。
【0062】
本発明の方法によれば、オルガノポリシロキサンよりも疎水性粒子を多く対象の配合物に混合するように、該粒子のオルガノポリシロキサン組成物に対する比率を制御することもでき、以下、実施例にて示す。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
―A.塩基性窒素含有オルガノポリシロキサン(シロキサンA)の合成―
攪拌器、滴下ロート、還流冷却器を取り付けた1Lの3口フラスコ中で、4gのメタノールに溶解した水酸化カリウム0.2gと平均分子量約4,000g/molのα−ωジヒドロキシジメチルポリシロキサン500gとの混合物を、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン150gと攪拌混合し、還流しながら6時間沸騰加熱した。次いで、30℃に冷却した後、10%塩酸を2.5ml加えた。140℃まで加熱して、最後にメタノールを蒸留除去し、得られたオルガノポリシロキサンから塩化カリウムを濾過により除去した。オルガノポリシロキサンの粘度/分子量は、50mm/sであり、その質量に対して2.9質量%の塩基性窒素を含んでいた。
【0065】
上記Aで合成したアミノシロキサン20g、酢酸3g、イソオクチルトリメトキシシラン47g、疎水性高分散性焼成シリカ(「HDK H 2000」;ワッカーケミー社製)30gを混合して、チンダル現象を僅かに示す均質混合液を得た。これを水に加えると自然に自己分散が起こり、疎水性シリカが非常に微細な分散体状に水中に分布した。このようにして得られた10%希釈水溶液は、室温で6ヶ月以上安定しており、透過型電子顕微鏡による疎水性シリカの粒子サイズは、約10〜20nmであった。
【0066】
(実施例2)
―B.塩基性窒素含有オルガノポリシロキサン(シロキサンB)の合成―
攪拌器、滴下ロート、還流冷却器を取り付けた1Lの3口フラスコ中で、4gのメタノールに溶解した水酸化カリウム0.2gと平均分子量約600g/mol、粘度約20mm/sの実験式CHSi(OC0.81.1で表されるオルガノポリシロキサン500gとの混合物を、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン150gと攪拌混合し、還流しながら6時間沸騰加熱した。次いで30℃に冷却した後、10%塩酸を2.5ml加えた。140℃まで加熱して、最後にメタノールを蒸留除去し、得られたオルガノポリシロキサンから塩化カリウムを濾過により除去した。オルガノポリシロキサンの粘度は、50mm/s、分子量は約1,800、その質量に対して2.9質量%の塩基性窒素を含んでいた。
【0067】
上記Bで合成したアミノシロキサン25g、プロピオン酸5g、プロピルトリメトキシシラン65g、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾールを含む紫外線安定化剤(「Tinuvin 320」;チバガイギー社製)5gを混合して、チンダル現象を僅かに示す均質混合液を得た。これを水に加えると自然に自己分散が起こり、疎水性光保護剤が非常に微細な分散体状に水中に分布した。このようにして得られた10%希釈水溶液は、室温で6ヶ月以上安定しており、透過型電子顕微鏡による疎水性光保護剤の粒子サイズは、約10〜50nmであった。
【0068】
(実施例3)
―オルガノポリシロキサン混合物(A)を使用した水性ポリアクリレート配合物への疎水性焼成シリカの混合―
カルボキシ基アンモニア中和型(carboxy−functional andammonia−neutralized)ポリアクリレートの20質量%分散水溶液(自己乳化型;固形分で0.2質量%のドデシル硫酸ナトリウムを添加して分散安定性を向上し、ポリアクリレートの粒子サイズ=100nm未満に調節)135gをオルガノポリシロキサン混合物(A)15gと混合し、パドル・スターラーで均質混合した後、焼成シリカ(WACKER HDK(R) H18)9.9gを溶解装置で攪拌(2,000rpm)しながら添加した。前記HDKを全て添加した後、攪拌を5分間続けたところ、ペーストが得られ、水で希釈すると焼成シリカが微細な分散体状に均質に分布した移動性の良い水性配合物が形成された。
【0069】
(比較例1)
―オルガノポリシロキサン混合物(A)を使用しない水性ポリアクリレート配合物への疎水性焼成シリカの混合―
カルボキシ基アンモニア中和型(carboxy−functional andammonia−neutralized)ポリアクリレートの20質量%分散水溶液(自己乳化型;固形分で0.2質量%のドデシル硫酸ナトリウムを添加して分散安定性を向上し、ポリアクリレートの粒子サイズ=100nm未満に調節)100gを焼成シリカ(WACKER HDK(R) H18)6.6gを溶解装置で攪拌(2,000rpm)しながら混合した。前記HDKを全て添加した後、更に15分間分散を試みたが分散できず、焼成シリカを水相に混合することはできなかった。
【0070】
(実施例4)
―オルガノポリシロキサン混合物(A)を使用した水性ポリアクリレート配合物への疎水性焼成シリカの混合―
カルボキシ基アンモニア中和型(carboxy−functional andammonia−neutralized)ポリアクリレートの20質量%分散水溶液(自己乳化型;固形分で0.2質量%のドデシル硫酸ナトリウムを添加して分散安定性を向上し、ポリアクリレートの粒子サイズ=100nm未満に調節)135gをオルガノポリシロキサン混合物(A)2gと混合し、パドル・スターラーで均質混合した後、焼成シリカ(WACKER HDK(R) H18)12.0gを溶解装置で攪拌(2,000rpm)しながら添加した。HDKを全て添加した後、攪拌を5分間続けたところ、ペーストが得られ、水で希釈すると焼成シリカが微細な分散体状に均質に分布した移動性の良い水性配合物が形成された。
【0071】
(比較例2)
―最大量の焼成シリカ(WACKER HDK(R) H18)のオルガノポリシロキサン混合物(A)への分散―
オルガノポリシロキサン混合物(A)20gを焼成シリカ(WACKER HDK(R) H18)1.2gと混合し、溶解装置で均質分散(2,000rpm)したところ、焼成シリカがこれ以上混合できないペーストが得られた。実施例4で使用したオルガノポリシロキサン(A)の量に基づいて計算したおよそ同量の焼成シリカ(WACKER HDK(R) H18)でさえも、この方法では混合することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の固形物の分散方法は、塗膜材料、浸漬システムや、それらを用いて、支持体、好ましくは例えば金属製支持体、ガラス製支持体、木製支持体、鉱物性支持体、織物作製用の合成繊維及び天然繊維、カーペット、フロア被覆物、若しくは繊維から作製可能な製品、或いは革製品、フィルムやシート等のプラスチック上への塗膜、被覆材の形成などに好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃、1,020hPaにおける、水100質量部に対する溶解量が1質量部以下である固形物の分散方法であって、
水性配合物中に、少なくとも1種の自己乳化型オルガノポリシロキサン(A)を混合し、次いで固形物(B)を混合する工程を含むことを特徴とする固形物の分散方法。
【請求項2】
自己乳化型オルガノポリシロキサン(A)に加えて、有機シリコン化合物の質量に対して0〜0.5質量%の塩基性窒素を含む有機シリコン化合物(C)を混合する請求項1に記載の固形物の分散方法。
【請求項3】
自己乳化型オルガノポリシロキサン(A)が、オルガノポリシロキサンの質量に対して少なくとも0.5質量%の塩基性窒素を含むSiC結合基を有するオルガノポリシロキサンと、有機酸及び無機酸のいずれかとの塩を含む請求項1から2のいずれかに記載の固形物の分散方法。
【請求項4】
オルガノポリシロキサンの質量に対して少なくとも0.5質量%の塩基性窒素を含むSiC結合基を有するオルガノポリシロキサンが、下記一般式(I)で表される化合物である請求項3に記載の固形物の分散方法。
(OR)SiO(4−a−b−c)/2 一般式(I)
前記一般式(I)中、Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び塩基性窒素を有さない一価のSiC結合有機基のいずれかを表し、Rは、同一であってもよいし、異なっていてもよく、塩基性窒素を有する一価のSiC結合有機基を表し、Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び一価の有機基のいずれかを表し、aは、0、1、2、及び3のいずれかであり、bは、0、1、2、及び3のいずれかであり、cは、0、1、2、及び3のいずれかである。但し、a、b、及びcの合計は3以下であり、R1の存在量は、オルガノポリシロキサン一分子当たり塩基性窒素に対して0.5質量%よりも大きい。
【請求項5】
有機シリコン化合物(C)が、下記一般式(III)で表される単位から成る化合物を含む請求項2から4のいずれかに記載の固形物の分散方法。
(OR)SiO(4−d−e)/2 一般式(III)
前記一般式(III)中、Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び一価のSiC結合有機基のいずれかを表し、Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び一価の有機基のいずれかを表し、dは、0、1、2、3、及び4のいずれかであり、eは、0、1、2、3、及び4のいずれかである。但し、d及びeの合計は4以下であり、塩基性窒素の含有量は、各有機シリコン化合物の質量に対して0.5〜4質量%である。
【請求項6】
固形物(B)が、フィラー、顔料、殺生剤、及び紫外線吸収性固形物からなる群から選択される固形物を含む請求項1から5のいずれかに記載の固形物の分散方法。
【請求項7】
得られた分散液が、コーティング及び浸漬の少なくともいずれかに使用される請求項1から6のいずれかに記載の固形物の分散方法。

【公開番号】特開2008−93660(P2008−93660A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261257(P2007−261257)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】