説明

固形物を注入するためのデバイス

【課題】容易に直感的にかつ安全に操作することができ、しかもコスト効率が良く簡素な構造を有する固形物注入用デバイスを提供する。
【解決手段】ハウジング100と、カニューレ220に対して接続された、固形物500を保持するための注入器本体200と、この注入器本体200内およびカニューレ220内で変位可能な一次プランジャ230と、ハウジング100内で変位可能な二次プランジャ300とを備える。デバイス1は力伝達機構を備えるが、これは二次プランジャ300と注入器本体200および/またはカニューレ220との間で作用でき、遠位方向への二次プランジャ300の動作は近位方向への注入器本体200および/またはカニューレ220の変位を引き起こすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトまたは動物の体内に固形物を注入するためのデバイスに関し、当該デバイスは、ハウジングと、固形物を保持するための注入器本体であって、カニューレに連結された注入器本体と、注入器本体内でかつカニューレ内で変位可能な一次プランジャと、ハウジング内で変位可能な二次プランジャとを具備してなる。
【背景技術】
【0002】
固形物の注入は長期投薬(デポー剤注入)のための一般的な方法である。このために、デポー剤が体内に配置され、そしてそれは、所定の期間にわたって、理想的には一定かつ連続的に体に薬剤を分与する。長期投薬の典型的な用途は、痛みの治療、避妊目的のホルモン治療などである。さらに、固形物の注入はまた、チップ、たとえばマイクロプロセッサあるいは記憶チップの皮下注入に関連して実施される。
【0003】
固形物は、通常、それをプランジャによって体内に位置させられたカニューレ内で保持し、プランジャが適所に留まった状態でカニューレを引き抜き、これによって体内に固形物を残すことで、注入されている。
【0004】
特許文献1は、固形または半固形インプラントの筋肉内あるいは皮下注入のためのそうした注入デバイスを示している。当該デバイスは、メインボディ(これに対して中空針が連結される)と、メインボディ内に同心的に配置されかつ中空針を取り囲む第2のボディと、プランジャ(これは中空針内に同心的に挿入できる)とを具備してなる。プランジャは第2のボディ内でブロックできる。使用中、メインボディは下方にガイドされ、この結果、中空針は皮膚を貫くが、プランジャは同時に一緒に移動させられる。人差し指および中指でメインボディを把持し、それを近位方向に引き戻しながら、親指によって皮膚に対して第2のボディが押し付けられ、この結果、メインボディは、中空針と共に、但しプランジャを伴わずに、第2のボディに沿って上方に移動させられる。中空針が体の外に移動させられると、プランジャはメインボディに掛止され、そして体の外に移動させられる。
【0005】
固形物を注入するための公知のデバイスの欠点は、その操作が非直感的である、ということである。さらに詳しくは、一般に、プランジャを挿入し、プランジャを伴わずにカニューレを引き抜き、プランジャを引き戻すなど、数多くのさまざまな操作を実施する必要がある。これは、そうしたデバイスの不慣れなユーザーにとって、かなりの難題である。さらに、そうしたデバイスの不適切な扱いは、カニューレの挿入によって生じる痛みに加えて、注入を受けるヒトあるいは動物に対して、さらなる痛みを引き起こし得る。
【0006】
今日に至るまで、ユーザーは、カニューレが体内に挿入された後に、そして固形物がカニューレ内に位置させられた後にプランジャを適所にて、しっかりと保持し、そしてカニューレを同時に引き抜く必要があった。こうした動作の実施は、デバイスが近位移動に関するストッパーを持たないので問題が多くかつ困難であるが、このストッパーは、注入器本体および/またはカニューレと同時に一次プランジャが引き抜かれるのを阻止し、この結果、固形物は、ある状況下では、その予測されるスペースには残らない。これは、ただ、ユーザーが体に対して適所でプランジャをしっかりと保持するという事実によって阻止される。だが、ヒトあるいは動物は、通常、注入の間、じっとしていることはない。組織内に固形物を注入するという慣れない処置は、しばしば、ヒトを緊張させ、おそらくは、たじろぎ、あるいは身震いなどの非自制動作を引き起こす。さらに、ヒトあるいは動物はまた、特に、穿刺場所の局部麻酔が省略される場合には、カニューレが皮膚の下に挿入されるときに痛みを感じるが、これは非自制動作のさらなる理由である。こうした非自制動作は注入の間、ユーザーにとっての問題を引き起こす。というのは、プランジャと平行にかつ同期して体の動きを反映させる必要があり、しかも同時にカニューレを引き抜く必要があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0209903号明細書(S.C.R.A.S)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、固形物を注入するための冒頭で述べた技術分野の一部であって、しかも容易に直感的にかつ安全に操作することができ、そしてさらにはコスト効率が良く簡素な構造を有するデバイスを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は請求項1に記載の特徴によって達成される。本発明によれば、デバイスは力伝達機構を具備してなるが、これは、二次プランジャと注入器本体および/またはカニューレとの間で作用することができ、遠位方向への二次プランジャの動作は、近位方向への注入器本体および/またはカニューレの変位を引き起こすことができる。
【0010】
以下では、「遠位」との語句は体に向かう方向を意味し、かつ、「近位」との語句はそれとは反対の、すなわち体から遠ざかる方向を意味する。デバイスに関して、この二つの方向はそれぞれ、長手方向軸線に対して平行であると理解されるべきであり、長手方向軸線は、たとえば、ハウジング、注入器本体、カニューレによって、あるいは二つのプランジャの一方によって規定できる。特に断らない限り、「遠位」および「近位」との方向は、一次プランジャの長手方向軸線と平行であると理解すべきである。デバイスの使用中、カニューレは、少なくとも時々、遠位方向に、ハウジングから突出する。
【0011】
カニューレが体内に導かれ固形物が一次プランジャによってカニューレ内に配置された後、注入器本体および/またはカニューレは、通常、固形物が体内に残るように一次プランジャが体に対して適所にて固定された状態で引き抜かれる。二次プランジャと注入器本体との間の力伝達機構は、それを用いて、二次プランジャを遠位方向にスライドさせることによって、注入器本体および/またはカニューレを近位方向に変位させることができるデバイスを形成する。これは、デバイスの特に人間工学的操作を実現する。というのは、カニューレが体内にあるとき、さらに詳しくは、カニューレがハウジング上のストッパーまで完全に体内にある場合、体の非自制動作は、遠位方向への軽微な圧力によって、特に二次プランジャを挿入することによって、労力を要さずに吸収でき、こうして固形物の所望のポジションを維持できる。さらに、これによって、二次プランジャの人間工学的でかつ直感的に好ましい遠位移動によって、カニューレの引き抜きが可能となる。
【0012】
ハウジングは、好ましくは、特に近位領域に、保持要素を具備してなる。これによって、デバイスを既存の注入器のように、すなわち、保持要素を人差し指および中指によってガイドすることによって、そして、プランジャ、特に二次プランジャを親指によってガイドすることによって、保持することが可能となる。保持要素は、半径方向外側に突出する、二つの対向する要素として、あるいは包囲環状体として設計できる。当業者にとって、そうした保持要素を人間工学的様式で具現化するためのその他のオプションは自明である。
【0013】
デバイスは、好ましくは、ラック・ピニオンギアを具備してなる。ラック・ピニオンギアは、二次プランジャの遠位移動が注入器本体および/またはカニューレの近位移動に変換可能であり、そして、これが力伝達機構の可能性のある実施をもたらすように、デバイス内に組み込むことができる。その利点は、注入器本体および/またはカニューレを引き抜くために、デバイスの要素を遠位方向にガイドすることを要さずに(これは、ユーザーにとって不慣れなものである)、既存の注入器のようにデバイスを操作できるということである。これは、注入器本体(および/またはカニューレ)と二次プランジャとの間の相対移動を特に簡素な様式で実現することを可能とするが、これは、特に、歯付きラックおよびギアホイールはコスト効率よくかつ簡単に製造可能であり、しかも容易に組み込むことができるからである。さらに、ラック・ピニオンギアは、二次プランジャおよび注入器本体および/またはカニューレの動きが確定されることを保証するが、この結果、デバイスの働きはさらに簡素化され、そして故障がさらに起き難くなる。
【0014】
あるいは、力伝達を異なる方法で実現することによって、ラック・ピニオンギアを省略することも可能である(以下参照)。
【0015】
力伝達機構は、好ましくは、ラック・ピニオンギアとして具現化されるが、これは、第1の歯付きラック、第2の歯付きラックおよびギアホイールを具備してなり、
a)ギアホイールは、それが自由に回転できるように、ハウジング内に設けられており、
b)第1の歯付きラックは注入器本体と連結されており、
c)第2の歯付きラックは二次プランジャと連結されており、
d)ギアホイールは第1および第2の歯付きラックと相互作用する。
【0016】
このために、第1の歯付きラックおよび注入器本体および/または第2の歯付きラックおよび二次プランジャはそれぞれ一体構造を有することができる。これによって、デバイスの、コスト効率が良く、しかも簡素な構造が実現される。ギアホイールは、好ましくは、個々の要素として、別個に製造される。実例として、ギアホイールはピンに設けられるが、これはハウジングに対して固定的に連結され、たとえば、ピンにギアホイールを取り付けるためのクリップオンのための備えがなされてもよいが、これは当業者にとっては周知である。デバイスの簡素な構造を実現し続けるために、ピンはまた、好ましくは、ハウジングに対して一体的に連結可能である。
【0017】
力伝達機構はまた、これに代えて、異なる構造を有することができる。実例として、ギアホイールおよび歯付きラックの代わりに無歯ホイールのための備えをなすこともでき、この無歯ホイールは、摩擦によって、二次プランジャおよび注入器本体の適切な領域と相互作用できるが、無歯ホイールと対応する領域との間で、ある程度の面圧が保証される必要がある。さらに、撓み要素を介した注入器本体および/またはカニューレの二次プランジャに対する連結はまた、力伝達機構として機能できる。このために、撓み要素はハウジングの近位領域に設けることが、そしてそれに対して連結することができる。ピンあるいはローラーを、撓みのために、デバイスの長手方向に対して直角に設けることができる。動きを伝達するために、ネジ、ワイヤ、バンドなどが使用されてもよく、これは、第1の端部において注入器本体あるいはカニューレに対して、そして第2の端部に置いて二次プランジャに連結され、そしてピンあるいはローラーを中心として近位方向に撓ませられる。最後に、カニューレはまたスプリングを用いて引き戻すことができるが、スプリングが緊張させられたとき、カニューレは、ハウジングから突出し、そしてスプリングが自然状態に戻るとき、部分的にしか、さらに詳しくは全く、ハウジングから突出しない。このスプリングは、二次プランジャが挿入されたとき緊張させられ、カニューレを引き戻すために自然状態に戻され、したがって力伝達機構のためのさらなるオプションを構成する。そうした引き戻しの間、任意選択で、その中での静止摩擦に打ち勝った後、カニューレが過度に急速に体から引き抜かれるのを抑えるための制限手段が適所に存在するべきである。このために、ブレーキのための備えをなすことができるが、これを用いて、引き戻し速度を制御できる。実例として、弾性要素(これは、ハウジングに側方に配置され、そして指で圧力が加えられたときに注入器本体をクランプできる)は、そうしたブレーキの好適な手段である。当業者にはまた、カニューレの近位引き抜きの簡単な手段を具現化するための、さらなるオプションは自明である。
【0018】
本デバイスは、好ましくは、第1のロッキングデバイスを具備してなるが、これによって、二次プランジャは、ハウジング内での軸方向変位可能性に関してブロックできる。カニューレが、好ましくは、最初に体内に挿入され、そして続いては、固形物が、一次プランジャによってカニューレ内に誘導される。いったん固形物が、カニューレ内で、特にハウジングから突出するカニューレの領域内で実現されたポジションを呈すると、第1のロックデバイスはロック解除され、これによって二次プランジャの挿入が可能となる。これは、二次プランジャの意図しない変位を阻止し、さらに詳しくは、これは、注入器本体および/またはカニューレが、固形物がカニューレ内に配置される前に引き戻されるのを阻止する。これは、一次プランジャが十分に前進させられていないが二次プランジャがそれにもかかわらず作動させることができる場合、一次プランジャおよび固形物が遠位に変位させられかつカニューレが同時に近位に変位させられ、この結果、通常は丸みのある固形物が体内に押し込まれ、注入を受けるヒトあるいは動物に激しい傷みを引き起こすリスクがあるからである。第1のロッキングデバイスは、好ましくは、ハウジングに連結された弾性要素と、二次プランジャのリセスとを具備してなるが、弾性要素はリセスと係合可能である。弾性要素は、好ましくは、弛緩状態ではリセスと係合し、かつ、それがリセスから移動させられるべきである場合、力がその上に作用させられる必要がある。
【0019】
これに代えて、第1のロッキングデバイスは異なる構造を有することもでき、あるいは第1のロッキングデバイスは完全に省略することができる。後者の場合には、一次プランジャが遠位方向に完全に挿入された後で、二次プランジャはただハウジング内に遠位方向に挿入されるべきであることを保証するためにユーザーは注意を払う必要がある。
【0020】
第1のロッキングデバイスは、好ましくは、一次プランジャによって、特に一次プランジャの遠位変位によって非作動化することができる。ロッキングデバイスは、好ましくは、一次プランジャの完全な遠位変位後、すなわち固形物がカニューレ内に配置された後、非作動化させられる。これによって、デバイスの特に簡単な操作が実現される。これは、一次プランジャが、好ましくは、二次プランジャが作動させられる前に、遠位方向に注入器本体を経て、そしてカニューレ内に完全に変位させられるからである。これは、カニューレは、固形物がその中に配置された後でのみ引き抜かれるべきであるからである。したがって、ある観点での第1のデバイスの非作動化は、自動的に、好ましい処置を順に連係させ、それゆえ注入器本体および/またはカニューレは、固形物が導入される前に誤って引き抜かれることはない。このために、一次プランジャのプランジャヘッドは、好ましくは、それが二次プランジャのリセスから弾性要素を持ち上げるために使用できるように設計される。
【0021】
第1のロッキングデバイスはまた、これに代えて、異なる様式で非作動化することができる。実例として、カニューレ内に一次プランジャが固形物を移送した後で、手で直接、非作動化を実行することができる。非作動化は、たとえば、半径方向に挿入できるバーによって、あるいは当業者にとって周知のその他の方式で実現できる。
【0022】
デバイスは、好ましくは、第1のエネルギー蓄積体を具備してなるが、第1のエネルギー蓄積体からのエネルギーは、一次プランジャの遠位変位のために使用できる。これによって、エネルギー蓄積体を作動させることは別として自身がエネルギーを消費することを要さずに、特に簡単な様式で、ユーザーはカニューレ内に固形物を配置することができる。さらに、ユーザーは固形物のカニューレ内での位置を調整できないが、これは、使用中のある不確かさにつながり得る。一次プランジャを作動させるための第1のエネルギー蓄積体の具現化は、カニューレ内への固形物の自動装填を実現し、これはユーザーから上述した不確かさを取り除くことができる。これは、固形物は、通常、カニューレが体内に導入された後に、カニューレ内に位置させられるからである。したがって、第1のエネルギー蓄積体の使用はまた有利である。というのは、固形物はこれによって比較的素早くカニューレ内に位置させることができ、この結果、注入継続時間、さらに詳しくは、カニューレが体内に存在する時間を削減できる。これは、注入を受けるヒトあるいは動物にとって明確な譲歩である。言うまでも無く、デバイスはまた、カニューレが体内に挿入される前に一次プランジャの遠位変位のために備えることができる。この場合にカニューレから固形物が落下するのを阻止するために、エネルギー蓄積体のエネルギー放出の能力は、固形物が過度に加速されないように適切に選択でき、かつ/または、カニューレの内壁と固形物とは、摩擦の結果として固形物がカニューレから出て行くのを阻止するのに十分な摩擦が存在するように互いに適合されるべきである。
【0023】
これに代えて、第1のエネルギー蓄積体を省略することもできる。この場合、一次プランジャは手で操作される。
【0024】
第1のエネルギー蓄積体は、好ましくは、特に遠位方向に一次プランジャを変位させるための第1のスプリングを具備してなり、第1のスプリングは、さらに詳しくは、ヘリカルスプリングとして具現化される。第1のエネルギー蓄積体としてスプリングを使用する利点は、スプリングの種類の選択によって所要の能力を最適化できることである。さらに、これはまた、非線形力/距離特性を備えたスプリングの選択のオプションをもたらす。これは、固形物の変位が始まるときに、静止摩擦力に打ち勝つ必要がある場合に有利となり得る。好ましくはヘリカルスプリングが、さらに好ましくはヘリカル圧縮スプリングが使用される。というのは、これらはさまざまな種類のものが市販されており、したがって、コスト効率よく入手できるからである。
【0025】
これに代えて、エネルギー蓄積体の異なる実施形態のための備えがなされてもよい。実例として、一次プランジャとハウジングとの間の弾性緊張手段のための備えがなされてもよく、これは、たとえば、引っ張りスプリング、弾性バンドなどとして具現化できる。当業者は、多様な公知の代替物を、ヘリカルスプリングに関してさえ、利用可能である。実例として、幾何学的配置に依存して、円錐スプリングを用いることが有利であるかもしれない。
【0026】
一次プランジャは好ましくは二次プランジャ内でガイドされる。これによって、今度は、デバイスの簡素な構造が実現される。このために、二次プランジャは、好ましくは、中空体として、さらに詳しくは、一端側が実質的に閉塞された中空シリンダーとして設計される。一次プランジャは、長尺なロッド形状セクション(これは、注入器本体およびカニューレを経てガイドできる)と、近位端部における接触領域(これは、たとえばディスク状構造を有し、かつ、二次プランジャの長手方向軸線と直交するように配置できる)とを有する。二次プランジャは内壁に軸方向溝を有することができるが、この溝は、一次プランジャに対する当該二次プランジャの回転を阻止するために、一次プランジャの接触領域の対応する突出要素と相互作用する。
【0027】
これに代えて、一次および二次プランジャはまた、ハウジング内で互いに並んでガイドできる。接触領域はディスク状構造を有する必要はないが、ただ、第1のスプリングによって一次プランジャに力を加えるのに適したものとなるように設計される必要がある(以下参照)。実例として、一次プランジャが近位端部に孔を有していれば十分であろうが、それを経て、第1のスプリングの遠位端部は突出でき、これはまた、第1のスプリングからの力伝達を保証する。この場合、一次プランジャは、好ましくは、二次プランジャに対して捩れないように保護される。
【0028】
第1のスプリングは、好ましくは、この第1のスプリングからのスプリング力によって一次プランジャが二次プランジャから軸方向に変位可能であるように、二次プランジャ内に配置される。第1のスプリングは二次プランジャのキャビティ内へとガイドでき、そして、スプリングが上述した様式で二次プランジャと一次プランジャの接触領域との間でクランプされ、そして緊張させることができるように、一次プランジャが、続いて、キャビティ内へと挿入される。したがって、一次プランジャの変位のために必要な全スプリング経路は二次プランジャ内に収容でき、この結果、デバイスの省スペース設計が実現される。
【0029】
これに代えて、一次プランジャは二次プランジャと共に挿入されてもよく、この結果、第1のスプリングを省略できる。このために、力伝達機構は、好ましくは、それが非作動化可能であるように設計される。実例として、これは、二次プランジャの軸方向の捩れによって実現でき、その間、第2の歯付きラックはギアホイールと係合しない。ここで、二次プランジャは軸方向に変位させられ、その結果、一次プランジャは、同時に、注入器本体を経てカニューレ内へと変位させられる。二次プランジャは、続いて、一次プランジャが適所において固定された状態で引き戻され、そして、その第2の歯付きラックが再びギアホイールと係合するように軸方向に回転させられる。このために、さらに、溝および突出要素による強制ガイドのための備えをなすことができる。最後に、一次プランジャはまた、一次プランジャのプランジャヘッドが、少なくとも固形物が変位しなければならない距離に対応する距離だけ、近位方向に二次プランジャから突出するように、より長尺な形状を有することができる。したがって、一次プランジャは、まず、遠位方向にハウジング内に手で押し込むことができ、固形物は、これによって、カニューレ内に位置させることができ、そして二次プランジャは、続いて、第1のプランジャが適所にて固定された状態で、カニューレを引き抜くために作動させることができる。
【0030】
本デバイスは、好ましくは、第2のロッキングデバイスを具備し、これによって、特に第1のスプリングが緊張させられているとき、一次プランジャを第2のプランジャに対してロックできる。第2のデバイスは、第2のロッキングデバイスを非作動化することで、自然状態に戻り、第2のプランジャから第1のプランジャを誘導する。ロッキングデバイスは、好ましくは、半径方向に作用可能な弾性要素を具備してなるが、これは、第2のプランジャと、特に一体に具現化される。弾性要素は第1の突出要素を具備してなるが、これは、軸方向内側に突出し、かつ、ロッキングデバイスが機能している場合に一次プランジャの接触領域と接触する。第1のスプリングが緊張状態である場合、一次プランジャの接触領域は突出要素に対して近位にあり、したがってそれと相互作用する。スプリングが自然状態に戻るとき、突出要素は、一次プランジャの接触領域の後方で、近位に存在する。
【0031】
さらなる好ましい実施形態では、一次プランジャは、軸方向であってかつ近位方向に向けられたラッチング要素に連結されるが、これは、二次プランジャ内の遠位に配された開口内に掛止可能であり、かつ、作動要素によってロック解除可能である。これは、特に簡素な第2のロッキングデバイスを提供する。ラッチング要素は、それらが半径方向に回動できるように設計することができ、半径方向の回動は作動要素によってもたらすことができる。
【0032】
当業者にとって、さらなる好適なロッキングデバイスの多様性は自明であり、これらはまた本発明にとって好適である。実例として、第1の突出要素はまた、プランジャの接触領域とではなく、スプリングと相互作用することができる。一次プランジャが手で操作される場合、第2のロッキングデバイスもまた省略することができる。
【0033】
二次プランジャは、好ましくは、作動要素を具備してなり、これによって、第2のロッキングデバイスを手動でロック解除することができる。したがって、作動要素は、それが弾性要素と相互作用するように、さらに詳しくは、それが第1の突出要素を半径方向外側に押しやることができるように設計される。
【0034】
作動要素は、好ましくは、二次プランジャの近位端部に配置され、さらに詳しくは、プッシュボタンとして具現化される。このために、第2のロッキング要素は、好ましくは、第2の突出要素を備えた弾性要素を有するが、これは、軸方向に対して斜め領域を有する。第2の突出要素は、好ましくは、スプリングが緊張させられたとき一次プランジャの接触領域に対して近位に配置される。第2のロッキングデバイスはピンによってロック解除できるが、これは、斜め領域の方向に軸方向に変位でき、そして特に作動要素に対して連結される。ピンが遠位方向に変位させられるとき、それは、弾性要素の第2の突出要素の斜め領域に当接し、それを半径方向外側に押しやる。第1のスプリングは、続いて、自然状態に戻り、カニューレ内に注入器本体を経て一次プランジャをガイドする。ピンは好ましくは、一端が閉塞されたシリンダーに連結されるが、これは、それがシリンダーのベースに嵌りかつそれに対して好ましくは直角に連結されるように、二次プランジャの近位端部の上でガイドされることが可能であり、二次プランジャは対応する開口を有し、それを経てピンが突出できる。
【0035】
これに代えて、二次ロッキングデバイスはまた、カニューレを体内に挿入した結果としての遠隔作用によって非作動化することができる。このために、軸方向に変位可能な要素をハウジングの遠位端部に、さらに詳しくはハウジングベースに設けることができ、この要素は第2のロッキングデバイスと相互作用できる。さらに、作動要素はまた、二次プランジャの側方に設けることができる。このために、弾性要素は、たとえば、ロッドのように具現化でき、そして回転動作がそれに圧力を加えることによって実現できるように、二次プランジャに対して中央で連結でき、この結果、第1の突出要素は半径方向外側にガイドできる。もちろん、作動要素のその他の好適な実施形態は当業者にとって自明である。
【0036】
本デバイスは好ましくはスリーブを具備してなるが、これは、軸方向に変位可能な様式でハウジングの遠位端部に設けられ、かつ、第1の状態では、実質的にハウジング内に配置され、そして第2の状態では、少なくとも部分的にハウジングから突出する。一次プランジャの遠位端部は、通常、注入後には汚染され、すなわち組織が残るか、あるいは血液などの体液が一次プランジャに付着することがある。ハウジングの遠位端部に変位可能なスリーブを設けた結果、ハウジングから突出する一次プランジャの端部は被覆することができ、それゆえユーザー、注入を受けるヒトあるいは動物および第三者が汚染された領域と接触することはなくなり、さらに詳しくは、病原菌などに感染することはなくなる。さらに、これはまた、物体あるいは載置面が汚染されるのを抑止できる。注入後、スリーブは、好ましくは、第2の状態で存在する。だが、それはまた、注入直前まで第2の状態であってもよく、こうしてカニューレが保護され、そして望ましくない負傷もまた、こうして防止される。固形物が注入された後、ハウジングの遠位端部を越えて突出するのは一次プランジャのみである。
【0037】
これに代えて、スリーブはまた、それが軸方向に変位可能であるように、ハウジングの外側に設けることができる。
【0038】
スリーブは、好ましくは、実質的に一端が閉塞されたシリンダーとして、さらに詳しくは中空シリンダーとして設計される。シリンダーのベースには開口が存在するが、この開口は、カニューレが通過できる程度に十分に大きなものである。スリーブは、さらに、軸方向に向けられた切り込みを有するが、これによって、スリーブは、それが軸方向に変位可能であるようにハウジング内でガイドされる。
【0039】
スリーブの代わりに、ハウジングの遠位端部上に配置可能な、したがってカニューレあるいはユーザーおよび第三者を保護する保護キャップのための備えがなされてもよい。この保護キャップは、デバイスが使用される前に取り外され、そして使用後に交換することができる。これに代えて、変位可能なスリーブを省略することもできる。
【0040】
デバイスは、好ましくは、第2のエネルギー蓄積体を具備してなり、この第2のエネルギー蓄積体からのエネルギーは、スリーブの遠位方向への変位のために使用できる。第2のエネルギー蓄積体は、好ましくは、一次プランジャが体から引き抜かれる前に作動させられ、そして一次プランジャが体から引き抜かれている間にスリーブは体に対して押し付けられる。これは、一次プランジャの引き抜きの間、既に細菌汚染を阻止する。
【0041】
これに代えて、スリーブはまた、それが手で操作できるように設計することが可能である。このために、スリーブはまた、スリーブを把持し、そして変位させることができるように、ハウジングの外側に、軸方向に変位可能な様式で設けることができる。ラッチングのための備えがさらになされてもよく、これによって、スリーブは第1の状態および第2の状態で掛止できる。
【0042】
ある状態、さらに詳しくは、デバイスが使用された後では、カニューレは、好ましくは、ハウジング内に完全に位置させられ、一次プランジャは遠位方向に突出すると共にスリーブはハウジングから部分的に突出し、そしてスリーブは、ハウジングから突出する一次プランジャの部分を完全に覆う。この結果、ユーザーおよび注入を受けるヒトあるいは動物は、カニューレの尖端による負傷から、そして細菌汚染から保護される。
【0043】
第2のエネルギー蓄積体は、好ましくは、第2のスプリングを具備してなるが、これは、ハウジングとスリーブとの間で作用でき、かつ、特に第2の状態では緊張させられる。第2のスプリングは、好ましくは、注入器本体および/またはカニューレが完全に引き戻されるまで緊張させられる。第2のスプリングが自然状態に戻る間、一次プランジャの遠位端部は、通常、依然として体の中にある。第2のスプリングは、その後、まず、スリーブを体に対して押し付ける。第2のスプリングの助けによってハウジングからスリーブを誘導できるようにハウジングと体との間に十分なスペースが形成されるのは、デバイスが、さらに詳しくは一次プランジャが体から外されたときだけである。したがってデバイスの汚染領域は、一次プランジャが体から取り外されている間、常に、こうして遮蔽され、固形物の安全な注入が可能となる。特に手で作動させることが可能なスリーブと比べて、ユーザーは、これによって、カニューレの部位あるいは一次スリーブの汚染された端部を手で扱う必要がなくなる。
【0044】
これに代えて、異なる第2のエネルギー蓄積体のための備えをなすことができる。実例として、それは、弾性バンドなどの伸縮可能な弾性要素によって具現化できる。最後に、第2のエネルギー蓄積体はまた省略されてもよく、この場合、スリーブは手で操作される。だが、この場合、ユーザーは、それが使用された後、デバイスの遠位端部の領域によって汚染される可能性があることに留意する必要がある。
【0045】
第2のスプリングは、好ましくは、ヘリカルスプリングとして設計される。ヘリカルスプリングの利点は、簡単かつコスト効率の良い様式でデバイス内に設置できることである。
【0046】
これに代えて、当業者には公知のその他のスプリング、たとえば円錐スプリングを使用することもでき、さらに詳しくは、スプリングの形状は、ハウジングあるいはスリーブに適合させることができる。
【0047】
デバイスは、好ましくは、第3のロッキングデバイスを具備してなるが、これによって、スリーブは、軸方向の変位可能性に関して、ハウジング内でロックすることができる。このために、スリーブは、近位外側領域に、半径方向に突出する弾性要素を具備してなるが、当該要素は、ハウジングにおける対応するリセス内に掛止できる。要素の弾性を発現するために、スリーブは、少なくとも僅かな弾力性を有する素材から具現化でき、この結果、弾性要素はスリーブと一体に設計できる。これによって、コスト効率に優れた生産が可能となる。
【0048】
これに代えて、スリーブはまた、カニューレが完全にスリーブによって覆われかつ力が加えられたとき、さらに詳しくはそれが体に対して押し付けられたときに近位方向に引き抜かれるだけであるように、スプリングによって、基本状態において、さらに前進させることができ、この結果、第3のロッキングデバイスは省略できる。だが、これは、カニューレの挿入を、さらに詳しくは体表面に直交しないカニューレの挿入を、より困難なものとする。穿刺場所は、スリーブのために正確に突き止めることはできない。さらに、カニューレの非直交挿入の場合、半径方向の力がスリーブに加えられ、その結果、スリーブは捩れることがある。
【0049】
第3のロッキングデバイスは好ましくは第1の状態ではロック解除でき、しかも、特に第2の状態ではロック解除できない。第3のロッキングデバイスは、好ましくは、第1の状態ではロック解除でき、それゆえスリーブは、第2のエネルギー蓄積体によって、特に第2のスプリングによって、一次プランジャおよび/またはカニューレが覆われるように、遠位方向に変位できる。注入が完了した後、スリーブがただ前方にガイドされる場合、前進状態のスリーブが第3のロッキングデバイスによって、特に、それが簡単な手法でロック解除できないように不可逆的にロックされることが有利である。これは、汚染のリスクを低減する。というのは、不適切な扱いによって、誤って、スリーブが引き戻され、汚染領域がむき出しになることがないからである。スリーブの設計に依存して、それはまたデバイスの再使用を防止できる。このためにスリーブは、二次プランジャが引き戻された後にカニューレがスリーブから突出できないように十分に長尺なものとすることができる。ノンリターンバルブのような弾性フラップをスリーブの開口に設けることも考えられ、このフラップは、カニューレあるいはプランジャによって使用中はスプリング力に抗して開放状態で維持され、そして、スリーブが一次プランジャを越えて突出させられた後に閉じる。
【0050】
これに代えて、特にデバイスが何度も使用される場合、第3のロッキングデバイスはまた、それが第2の状態ではロックできないように設計することができる。スリーブが、基準として、第2の状態にある場合、第3のロッキングデバイスはまた、単に、第2の状態で、ロック可能かつロック解除可能であってもよい。最後に、第3のロッキングデバイスは完全に省略することもできる。
【0051】
第3のロッキングデバイスは、好ましくは、それが二次プランジャによって非作動化できるように設計される。これは有利である。といのは、ユーザーは積極的にあるいは意識的にそれを非作動化する必要はなく、したがって、それを非作動化し忘れることもないからである。第3のロッキングデバイスは、好ましくは、第2のプランジャが完全に挿入されたときに非作動化される。なぜなら、特に、この状態では、カニューレが完全に引き戻され、そして注入が、いわば完了しているからである。第2のエネルギー蓄積体からスリーブに大きな力が作用しない場合、第3のロッキングデバイスはまた、この前に既に非作動化されてもよい。だが、第3のロッキングデバイスは、好ましくは、体内へカニューレが導入されるや否や非作動化される。
【0052】
スリーブは、近位領域に、少なくとも一つの外側に向けられた要素を具備してなるが、当該要素はまた、それがスリーブを取り囲むように設けられてもよい。当該要素の遠位領域は側面を備え、これはスリーブ上で直角をなしており、したがって、ハウジングの対応するリセスあるいは半径方向内側に向けられた要素と相互作用できる。当該要素の近位領域は斜面を有するが、これは遠位方向に半径方向外側に向かう。二次プランジャは、それが、斜面と相互作用でき、かつ、スリーブの外側に向けられた要素を、特に溝から、あるいは半径方向内側に向けられたハウジングの要素との係合状態から、半径方向内側に押しやることができるように設計される。スリーブは、続いて、第2のスプリングによって、遠位方向に変位させることができる。
【0053】
体内へのカニューレの挿入の直後に非作動化がなされるべき場合には、たとえばデバイスのハウジングの遠位領域に、さらに詳しくはハウジングの体と接触する領域に、あるいはスリーブ自体に、作動要素のための備えをなすことができる。
【0054】
注入器本体は、好ましくは、注入前に、固形物を保持するための保持デバイスを具備してなる。本デバイスは、通常、輸送中あるいはカニューレが体内に挿入される前に振動にさらされるが、その結果、固形物が注入器本体から滑り出すことがある。保持デバイスを形成することによって、固形物は、デバイスが使用される前に、さらに詳しくは一次プランジャが変位させられる前に、注入器本体内に留まる。このために、注入器本体は、たとえば、内側に突出する弾性ラグを具備してなることができる。さらに、保持デバイスは。少なくとも一つの長尺なセクションとして設計でき、これは、近位端部を介して、軸方向に注入器本体に対して弾性的に連結され、さらに詳しくは、それは、一体的に連結されるか、あるいはクリップオン接続によって連結され、かつ、近位にそして遠位領域において注入器本体の内部内に内側に突出するラグを有することができる。固形物は、ラグ間に配置されても、あるいは一つ以上のラグによってクランプされてもよい。保持デバイスは、一次プランジャが近位に配置されたラグと相互作用することによって非作動化され、その結果、遠位ラグは長尺なセクションの上で半径方向外側にガイドされる。固形物を保持するラグから近位方向に間隔が置かれた、さらなるラグを、保持デバイスを非作動化するために設けることができ、このさらなるラグは、一次プランジャによって半径方向外側に押しやられる。
【0055】
これに代えて、注入器本体は、断面制限部を有するだけでもよく、そうすることで、固形物はそこで摩擦によって結合した状態で保持される。断面制限部はまた、半径方向に弾力性を有する要素によって具現化できる。最後に、保持デバイスは省略されてもよい。この場合、デバイスがカニューレ用のキャップを備えることが有利であり、このキャップは固形物の早すぎる飛び出しを抑止できる。実例として、これは、簡単なキャップによって、あるいはカニューレ内に挿入されたピンによって具現化できる。だが、この場合、キャップが取り外された後、カニューレが下方に向けられないように注意を払う必要がある。なぜなら、さもなければ、これによって固形物がデバイスから落下する可能性があるからである。
【0056】
本デバイスは、好ましくは、舌部を、さらに詳しくは、ハウジングに連結された刃形金属から形成されかつ注入器本体と係合する舌部を具備してなる。これは、注入器本体が遠位方向に変位可能となるのを阻止できる。その利点は、カニューレはまた、それがそこから引き抜かれている間、これによって体内に戻るように変位できなくなるということである。さらに、舌部の実施形態は有利である。というのは、これによって、無ラッチ遠位引き抜き制限部を実現できるからである。これは特に有利である。なぜなら、デバイスのユーザーは、連続的に二次プランジャを挿入できるからである。移動方向をブロックするためのこのデバイスの実施形態は、ケーブルストラップのそれと同様に設計できる。さらに好ましい実施形態では、本デバイスは舌部を具備してなり、これは、遠位方向に半径方向外側に回動させられ、かつ、二次プランジャの歯付きラックと係合し、その結果、二次プランジャの近位変位を阻止できる。この例では、舌部は、金属およびプラスチックの両方からあるいは他の素材から構成できるが、後者は、好ましくは、少なくとも僅かに弾性を有する。これによって生じるノイズは、ユーザーに、デバイスがしっかりと機能している感覚をもたらす。これは、さらに詳しくは、特に簡素な構造によってラッチング引き抜き制限部をもたらす。
【0057】
舌部は、これに代えて、二次プランジャと相互作用することもできる。舌部はまた、二次プランジャに連結されかつ注入器本体と相互作用してもよく、あるいはその逆であってもよい。さらに、舌部はまた、注入器本体の歯付きラックと相互作用してもよく、この場合、舌部は、近位方向への注入器本体の対応する移動をブロックするために、近位方向に半径方向内側に回動した状態で配置されるであろう。最後に、ギアホイールはまた、それが一方向にのみ回転できるように設計することができ、この場合、ギアホイールは、たとえば、機械式時計仕掛けから公知の、ラチェットホイールとして設計できる。
【0058】
カニューレ、第1および第2のスプリングは、好ましくは、スチールからなるが、プラスチックを使用することも可能である。実例として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネートあるいは当業者には周知のその他のプラスチックを、デバイスの残りの部分のために使用でき、さらに詳しくは、異なるプラスチックを異なる部品のために使用することもできる。
【0059】
デバイスのために任意の寸法を選択でき、かつ、特に、固形物に適合させることができる。貫入深さは、カニューレ長さを選択することによって調整可能である。
【0060】
以下、本発明に基づくデバイスの実施形態を用いた固形物を注入するための実施可能な手順について、段階を追って説明する。
1.第1のステップでは、保護キャップ(存在する場合)がカニューレから取り外され、続いて、カニューレが、注入を受けるヒトあるいは動物の体内に挿入される。
2.カニューレが挿入されると、二次プランジャの近位領域における作動要素が作動させられ、その結果として、
a.第2のロッキングデバイスがロック解除され、そしてその結果として、
b.第1のスプリングが自然状態に戻り、これによって
c.一次プランジャは、第1のスプリングのスプリング力の結果として、注入器本体からカニューレ内に固形物を移送し、この結果、
d.一次プランジャはカニューレ内に少なくとも部分的に留まり、そして固形物は完全にハウジングの外側に留まり、
e.第1のロッキングデバイスは非作動化される。
3.二次プランジャが、続いて、遠位方向に変位させられ、その結果として、
a.一次プランジャが適所において固定的に留まった状態で、注入器本体および/またはカニューレは近位方向に変位させられ、それゆえカニューレは、さらに詳しくは完全に、注入器本体内へと引き戻され、かつ
b.第3のロッキングデバイスはロック解除され、その結果、
c.第2のスプリングは自然状態に戻り、そしてスリーブは遠位方向にハウジングから部分的に変位させられ、さらに詳しくは、体と接触状態となる。
4.最後に、注入器が体から取り外され、さらに詳しくは、体から引き抜かれるのは二次プランジャのみである。同時に、これが、スリーブを、第2のスプリングによって、ハウジングから突出するプランジャの部分を完全に越えて押しやり、この結果、スリーブは引っ掛かる。
【0061】
デバイスは、さらなる好ましい実施形態ではスリーブを持たない。にもかかわらず、安全な使用を、さらに詳しくは、デバイスが使用された後の安全なハンドリングを保証することを可能とするために、デバイスは、以下で説明するように構成することができる。
【0062】
ある状態、さらに詳しくは、デバイスが使用された後では、カニューレおよび一次プランジャの遠位端部は、好ましくは、ハウジング内に完全に位置させられる。これによって、デバイスの特に安全な使用が保証される。なぜなら、使用後の細菌汚染が、これによってほとんど回避できるからである。特に、これによって、使用後にプランジャの遠位端部を取り囲むスリーブを備えた上記実施形態に代わる実施形態が実現される。カニューレおよび一次プランジャはまた、好ましくは、力伝達機構によって退避させられる。
【0063】
特に、たとえば上記スリーブのための準備がなされる場合には、カニューレおよび一次プランジャの退避はまた、変形例では、省略することができる。
【0064】
(二次プランジャが部分的に挿入された)第2の状態では、カニューレは部分的に近位方向に引き戻され、それゆえ固形物はカニューレ内で保持されておらず、かつ、一次プランジャは少なくともせいぜいカニューレによって部分的に保持されており、あるいは第3の状態において、二次プランジャが完全に挿入されたとき、さらに詳しくはデバイスが使用された後、一次プランジャおよびカニューレは第1の状態に対して一緒に引き戻される。プランジャおよびカニューレは好ましくは順次引き戻される。固形物は、第1の状態では、カニューレ内に配置される。次のステップでは、カニューレは、二次プランジャの遠位挿入によって力伝達機構を介して引き抜かれ、一方、一次プランジャは適所にて固定されたままであり、この結果、第2の状態に達する。続いて、カニューレおよび一次プランジャは、最後に、第3の状態で、一次プランジャの遠位端部およびカニューレがハウジング内に完全に位置させられるまで、二次プランジャの連続挿入によって同時に引き戻される。
【0065】
カニューレは、変形例においては、固形物がカニューレ内に置かれた後直ちに、ハウジング内に完全に退避させることができる。
【0066】
一次プランジャは、好ましくは、近位端部にプランジャヘッドを具備するが、プランジャヘッドは第1の状態、二次プランジャが挿入される前にスプリングが自然状態に戻るとき、注入器本体から離間させられており、そして注入器本体は、第2の状態では、プランジャヘッドに当接する。したがって、カニューレあるいは一次プランジャの特に簡単な連続的引き戻しが実現される。第1のスプリングが自然状態に戻った後、一次プランジャは、ストッパーによって、遠位方向へのさらなる変位が阻止される。これは有利である。というのは、これは第1のスプリングが完全に自然状態に戻る必要がないことを意味し、この結果、一次プランジャの再現可能な端部ポジションがデバイスのいかなる姿勢(水平、垂直上向きあるいは下向きなど)においても保証できるからである。実例として、ストッパーは、第1のロッキングデバイスによって具現化できる。この状態では、すなわち二次プランジャが挿入されるまでは、プランジャヘッドは注入器本体から離間している。二次プランジャが挿入されると、それはまず一次プランジャに沿って前進する。注入器本体がプランジャヘッドに当接するや否や、カニューレは、それがもはや固形物を取り囲んでいない程度まで引き戻される。一次プランジャの遠位端部は、好ましくは、この状態では、カニューレによって実質的に同一平面をなすように取り囲まれ、一次プランジャはまた、カニューレを越えて遠位方向に突出できる。二次プランジャがさらに挿入される場合、注入器本体は、プランジャヘッドを介して近位方向に一次プランジャを押し戻し、すなわち、カニューレおよび一次プランジャは近位方向に一緒に変位させられる。二次プランジャが完全に挿入されたとき、カニューレおよび一次プランジャの遠位端部は、ハウジング内に完全に位置させられる。この状態では、デバイスは、実質的にリスクを伴わずに取り扱うことができる。
【0067】
変形例では、順次的な引き抜きが異なる方法で実施できる。一次プランジャはまた、注入器本体のための横方向ストッパーを備えることができる。この目的のためのさらなるオプションは当業者にとって自明である。
【0068】
一次プランジャは、好ましくは、第1の、近位セクションおよび第2の、遠位セクションを具備し、第1のセクションは第2のセクションよりも大きな直径を有する。これによってまた、非常に小さな寸法、さらに詳しくは直径を有する固形物を、デバイスの安定性を損なうことなく投与することが可能となる。小さな直径を備えた第2のセクションは、重力あるいはその他の加速度(ユーザーなどによる素早い旋回動作)の結果としての第2のセクションの撓みによってデバイスの機能が悪影響を受けないように、セクション内でガイドできる。第2の部分が十分に剛性の高い構造を有する場合、たとえばそれが非弾性素材からなる場合、ガイドは省略できる。特に注入器本体の内部内に突出するラグを備えた長尺な要素を具備してなる保持デバイスに関して、半径方向外側に押しやられるラグと接する領域が十分に安定な構造を有することが有利である。この場合、長尺な要素は、好ましくは、三つのラグを具備してなり、二つの遠位に配置されたラグは固形物を保持し、かつ、近位方向に間隔が置かれた第3のラグは、一次プランジャの、第1の、より安定なセクションと相互作用する。したがって、注入器本体は、薬剤チャンバー内およびカニューレ内においてのみ、第2のセクションの外径に対応する内径を有するだけでよい。固形物を保持する二つのラグの近位方向背後で、注入器本体は、第1のセクションの外径に対応する内径を有することができる。
【0069】
変形例においては、特に、たとえば、保持デバイスの安定性および機能性が保証できる程度に固形物が十分に大きな寸法を有する場合には、一次プランジャの上記実施形態もまた省略することができる。
【0070】
注入器本体は、好ましくは、固形物取り込みの領域に半径方向孔を有する。これは、デバイスに固形物が装填されている間、固形物用の固形物節約型固定オプションを実現する。固形物は、それが保持デバイスの長尺なセクションのラグによって保持されるまで、半径方向孔を用いた吸引によって配置された後、適所にて保持できる。さらに、これは、デバイスの製造中あるいはその後に、固形物の存在を点検するためのオプションを提供する。
【0071】
半径方向孔はまた、変形例においては、省略できる。固形物の存在についての点検は、たとえば、透明構造を備えた注入器本体によって、あるいは注入器本体内の窓によって可能とすることができる。
【0072】
本発明のさらに有利な実施形態および特徴の組み合わせは、以下の詳細な説明ならびに特許請求の範囲の記載全体から明らかとなる。
【0073】
図面は、代表的実施形態を説明するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に基づくデバイスの第1実施形態の長手方向軸線に沿った概略断面図である。
【図2】カニューレが体内に挿入された状態での図1と同様の図である。
【図3】作動要素が作動させられた状態での図2に続く図である。
【図4】二次プランジャが挿入された状態での図3に続く図である。
【図5】注入が完了した状態での図4に続く図である。
【図6】カニューレが体内に挿入された状態での、本発明に基づくデバイスの第2実施形態の長手方向軸線に沿った概略断面図である。
【図7】作動要素が作動させられた状態での図6に続く図である。
【図8】二次プランジャが挿入された状態での図7に続く図である。
【図9】注入が完了した状態での図8に続く図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
各図において、同じ部材には概して同じ参照符号を付している。
【0076】
図1ないし図5は本発明に基づくデバイスの第1実施形態を示し、かつ、図6ないし図9は本発明に基づくデバイスの第2実施形態を示している。以下、第1実施形態について、まず説明する。
【0077】
図1は、使用前の状態で、本発明に基づくデバイス1の第1実施形態の長手方向軸線に沿った概略断面を示している。
【0078】
デバイス1はハウジング100を具備してなるが、これは、一方側で閉塞された、近位方向に向けられた開口を備えた、中空シリンダーとして設計されている。デバイス1はさらに、一次プランジャ230と注入器本体200とを具備してなるが、この中で、固形物500が、特にデバイス1が使用される前に、保持デバイスによって保持される。注入器本体200はカニューレ220に固定的に連結されているが、一次プランジャ230は、注入器本体200を通って軸方向に、そしてカニューレ220内へと軸方向に変位することができる。注入器本体200およびカニューレ220は、軸方向に変位可能な様式で、ハウジング100内に一緒に設けられている。さらに、デバイス1は二次プランジャ300を具備してなるが、これは、軸方向に変位可能な様式でハウジング100内に同様に設けられており、かつ、実質的に、一方側で閉塞された、遠位方向に向けられた開口を備えた、中空シリンダーとして具現化されている。一次プランジャ230は、それが軸方向に変位可能であるように二次プランジャ300内に設けられている。最後に、デバイス1はスリーブ400を具備してなるが、これは、ハウジング100の遠位領域内に、軸方向に変位可能な様式で設けられている。スリーブ400もまた、実質的に一方側で閉塞された、近位方向に向けられた開口を備えた、中空シリンダーとして設計されている。
【0079】
開口の領域において、ハウジング100は二つの保持要素101を具備してなるが、これは、デバイス1の長手方向軸線に対して直角に外側に突出しており、そして、さらに詳しくは、人差し指および中指によって把持することができる。
【0080】
ハウジング100のハウジングベース110において、ハウジング100は中央円形カニューレ開口111を具備してなるが、カニューレ220は、これを経て突出することができる。さらに、複数の円弧状スリットが、ハウジングベース110上のスリット開口112として具現化されており、かつ、カニューレ開口111を取り囲んでおり、このスリットによって、それぞれ、スリーブ400のスリーブクラッド401の一つのスリーブクラッドセグメントは軸方向に変位可能な様式で保持される。
【0081】
壁の内側において、ハウジング100のハウジングクラッド120は、ハウジングベース110の領域において三つの離間した突出要素121〜123を取り囲んでおり、これは、第3のロッキングデバイス420の一部であり(以下参照)、かつ、軸方向に一列に配置されている。これら突出要素121〜123はクサビ形状を有し、ハウジングベース110に最も近い突出要素121の斜面は遠位配向を有する。隣接するクサビ形状突出要素122は、ハウジングの長手方向軸線に対して直交する平面内で第1の要素121に対して鏡像をなしており、そしてハウジングベース110から最も遠い最後のクサビ形状突出要素123は今度は突出要素121と同じように方向付けられている。ハウジングの長手方向軸線と直交する断面に関して、突出要素121〜123はカム形状を有する。
【0082】
さらに、ハウジング100はギアホイール130を具備してなるが、これは、ハウジング100の長さに関して軸方向に測定したとき、概ね中央に設けられており、かつ、ハウジング100の断面に関して、それがハウジング100上で回転できるように、外部に向かって平行な方向に注入器本体200の注入器本体直径の概ね半分だけ中心からオフセットして設けられている。
【0083】
さらに、舌部が、ギアホイール130に対して遠位で、かつ、軸方向にその下方に連結されているが、この舌部は、ギアホイール130に対して半径方向内側に僅かにオフセットしており、かつ、遠位方向に、注入器本体200と概ね45°の角度をなしている。舌部114は、好ましくは、刃形金属、特にスチールから形成され、そして注入器本体200は近位方向に変位できるが注入器本体200の遠位方向の変位は阻止されるように、スプリング僅かに弾力性を有する領域によって注入器本体200と相互作用する。舌部114は、好ましくは、(歯付きラックとして具現化された領域とではなく)注入器本体200の滑らかな領域と相互作用し、それゆえ二次プランジャ300は連続的に挿入することができる。
【0084】
さらに、ロッキング要素351は、第1のロッキングデバイス350の一部として、ハウジング100に連結されており、このロッキング要素は、スプリング力に抗して実質的に半径方向に回動できるよう設計されている。ロッキング要素351は、軸方向に向けられた長尺なセクションとして具現化されており、かつ、本実施形態では、ハウジング100と一体で具現化されている。ロッキング要素351は遠位領域においてハウジング100に固定的に連結されており、かつ、近位領域において、それは半径方向に突出する要素を有し、かつ、近位端部において、斜面を有するが、それは、遠位方向に一次プランジャ230と概ね45°の角度をなしている。
【0085】
その側面に、注入器本体200は第1の歯付きラック210(明確には示していない)を具備してなるが、これは、軸方向に向けられており、かつ、第1の状態では、近位端部上でギアホイール130と係合する。さらに、それは、固形物500を保持するための、欧州特許第09 405 186.9号(Forteq Nidau AG)から公知の保持デバイスを具備してなる。このために、注入器本体200は長尺な要素240を有するが、これは、注入器本体200に対して弾性的に近位で連結されており、かつ、U字形リセスとして、注入器本体と一体で具現化されている。長尺な要素240は、注入器本体の内部内へと半径方向に突出するラグ241,242を有し、一方のラグ241は遠位に配置され、かつ、他方のラグ242は、少なくとも固形物500の長さだけ離れて近位方向に配置され、これによって固形物500はラグ241,242間で保持できる。保持デバイスを非作動化するために、近位配置されたラグ242は一次プランジャ230によって半径方向外側に押しやられ、このとき、遠位配置されたラグ241は長尺なセクション240によって半径方向外側に同時に押しやられ、こうして注入器本体200の内部は固形物500のために開放される。
【0086】
二次プランジャ300は、実質的に、一方側が閉塞されたシリンダーとして設計され、シリンダー開口は遠位に配置されており、そして遠位領域は、さらに、シリンダークラッドセグメント形状リセスを有する。その近位の実質的に閉塞された端部において、二次プランジャ300は、ピン開口301を、そして近位端部の領域において側方に、第2のロッキングデバイス330を有するが、これは、弾性要素331を具備してなる。本実施形態では、弾性要素331は二次プランジャ300におけるU字形リセスとして設計されており、かつ、それに近位で連結されており、しかも二つの内側に突出する要素332,333を有するが、これらは軸方向に離間しており、近位に配置された要素333はクサビ形状構造および近位方向の斜面を有する。ハウジングの長手方向軸線と直交する断面において、要素332,333はカム形状構造を有する。弾性要素331は、それが半径方向外側に撓むことができるように設計されている。
【0087】
二次プランジャ300はさらに、作動要素340を具備してなるが、これは、実質的に、一方側が閉塞されたシリンダーとして形成されており、かつ、シリンダーシェルと平行に、シリンダーベースに連結されたピン341を有する。作動要素340は二次プランジャ300の近位端部上に配置され、ピン341はピン開口301によってガイドされ、そして第1の状態では、要素333に対して近位方向に軸方向に配置され、さらに詳しくは、作動要素340は、第1の状態では、完全に挿入されない。保持要素101が人差し指と中指とによって把持された状態で、作動要素340は、通常は、親指によって、すなわち親指を人差し指および中指の方向に動かし、これによって遠位方向に二次プランジャ300を変位させることによって作動させられる。
【0088】
遠位領域から、二次プランジャ300は、内壁に軸方向に向けられた第2の歯付きラック310を備えるが、この歯付きラックは、さらに詳しくは、二次プランジャ300と一体に具現化されており、かつ、ハウジング100のギアホイール1300と相互作用することができる。第1の状態では、第2の歯付きラック310の遠位領域はギアホイール130と係合する。したがって、二次プランジャ300の動きは注入器本体200のそれと結び付けられ、二次プランジャ300の遠位移動は、こうして形成されるラック・ピニオンギアによって、注入器本体200の近位移動へと変換され、そして逆向き移動は舌部114によって阻止される。
【0089】
二次プランジャ300内でガイドされる一次プランジャ230は、その近位端部に開口232を備えたディスク形状プランジャヘッド231を有する。プランジャヘッド231の直径は、実質的に、第2のプランジャ300の内径と一致する。プランジャヘッド231および二次プランジャ300は第1のスプリング320を取り囲むが、これは、第1の状態では、緊張している。この第1のスプリング320はヘリカルスプリングとして形成され、かつ、スチールからなる。プランジャヘッド231は二次プランジャ300の要素332,333間で保持され、さらに詳しくは、緊張した第1のスプリング320によって、遠位方向に要素332に対して力が加えられる。
【0090】
スリーブ400(これは、それが軸方向に変位可能であるようにハウジング内に設けられ、かつ、実質的に一方側で閉塞された中空シリンダーとして具現化されている)は、スリーブ400のスリーブベース402に、カニューレ220用のカニューレ開口403を有する。スリーブクラッド401は切り込み(認識できない)を有するが、これは、ハウジング100のスリーブ開口112に対応するよう設計されており、そして軸方向に変位可能な様式で、ハウジングのスリーブ開口112内でガイドされる。ハウジング100は、半径方向内側に突出する保持要素113(図4および図5において認識できる)を有するが、これは、スリーブクラッド401の切り込みを経て、スリーブ400の内部内に突出する。第1の状態では、スリーブベース402の内面はハウジングベース101の外面に接する。第2のスプリング410(第1の状態では緊張している)は、近位領域においては、ハウジング100の保持要素113によって保持され、かつ、遠位領域においては、スリーブ400の保持要素405によって保持される。第2のスプリング410はヘリカルスプリングとして形成され、かつ、スチールからなる。外側では、スリーブクラッド401は、矩形状アタッチメントを用いてクサビ形状突出要素404に連結されており、突出要素404の斜面は近位方向に向けられている。
【0091】
以下の段落では、固形物を注入するためのデバイス1の使用法について、図1ないし図5を用いて、詳しく説明する。
【0092】
使用前、デバイス1は、図1に示す状態にある。
【0093】
図2は、特に作動要素340が作動させられる前の、固形物を注入する際の第1のステップとして、カニューレ220が体600内に挿入された後の、図1に続く、本発明に基づくデバイス1の実施形態の概略図である。
【0094】
デバイス1は、ここでは、人差し指および中指を用いて、保持要素101を使って、ユーザーによって把持されており、そして、親指は、初めは押圧力を伴わずに、作動要素340上に載せられている。
【0095】
図3は、作動要素340が作動させられた後の、図2に続く概略図である。親指によって遠位方向に作動要素340が作動させられると、これによってピン341は遠位方向に変位させられ、そして要素333の斜面に当接し、これによってロッキング要素331は半径方向外側に曲げられる。それに連結された要素332はまた、半径方向外側に押しやられ、この結果、要素332は、もはや、一次プランジャ230のプランジャヘッド231とは係合しなくなる。したがって、一次プランジャ230の経路は遠位方向に開放される。第1のスプリング320は続いて自然状態に戻り、この結果、一次プランジャ230は、遠位方向に、二次プランジャ300に対して変位させられる。
【0096】
注入器本体200内において、一次プランジャ230の遠位端部はまず第1のラグに到達し、そしてそれを半径方向外側に押しやる。これに接続された、長尺なセクション240は、したがってラグ241もまた、半径方向外側に押しやられ、この結果、固形物500の経路が開放される。その後、依然として部分的に緊張させられた第1のスプリング320によって駆動されて、一次プランジャ230は、その遠位端部によって、固形物500を捕らえ、そしてカニューレ220内へと、さらに詳しくはハウジング100の外部に位置させられたカニューレ220の部分内へと当該固形物を案内する。固形物とハウジングとの、あるいはスリーブ400のカニューレ開口403との間の間隔は、実質的に、体600内での固形物500の予測される移植深さに対応する。
【0097】
したがって、この状態では、カニューレ220のかなりの部分は体600内に存在し、一次プランジャ230の遠位部分はカニューレ220内に、したがって体600内に存在し、そして固形物500は、一次プランジャ230の遠位端部の前方で体600内に存在する。
【0098】
一次プランジャ230の完全な挿入と同時に、プランジャヘッド231は、第1のロッキングデバイス350のロッキング要素351と接触する。特に、プランジャヘッド231の開口232はロッキング要素351の斜面を半径方向内側に押しやり、この結果、ロッキング要素351の突出要素(当該要素は半径方向外側に突出し、かつ、二次プランジャのリセス352内に予め配置される)は、半径方向内側にかつ上記リセス352から持ち上げられる。したがって、第1のロッキングデバイス350はロック解除され、それゆえ二次プランジャ300はハウジング100内で軸方向に変位できる。二次プランジャ300は、今度は、親指によって加えられる作動要素340への圧力によって挿入される。
【0099】
作動要素340に加えられる圧力によって遠位方向に二次プランジャ300がハウジング100内に挿入された場合、注入器本体200の、したがってカニューレ220の近位移動は、第1および第2の歯付きラック210,310を介して同時にもたらされるが、これはギアホイール130を介して結合されており、同時に、一次プランジャ230は適所において固定されたままである。この結果、カニューレ220は固形物500およびハウジング100から突出する一次プランジャ230の部分を越えて引き戻され、こうして固形物1500は外部に残され、そして最終的に、一次プランジャ230の部位のみがハウジングから突出する。
【0100】
図4は、二次プランジャ300の挿入後の、図3に続く概略図である。二次プランジャ300が作動要素340を作動させることによって挿入されるとき、第1のスプリング320は再圧縮される。カニューレ220が固形物500を越えて、そして一次プランジャ230の遠位部分を越えて引き抜かれる間、固形物500および一次プランジャ230の遠位部分は体600の中に留まる。一次プランジャ230によって固形物500が体600の中で保持されている間、それは適所にて固定される。
【0101】
二次プランジャ300が第1のスプリング320によって、それが解放された際に、近位方向に変位できないように、舌部114のための備えがなされるが、これは、注入器本体200の側面上に弾性的に作用し、こうして、近位方向の力が二次プランジャ300に加えられた際に注入器本体200と共に捩れ、それによって二次プランジャ300が体600内に戻るのが阻止され、あるいは、体内に戻るカニューレ220の遠位方向の変位が阻止される。
【0102】
二次プランジャ300が完全に挿入されたとき、それは、スリーブ400の突出要素404をシリンダークラッドセグメント形状リセスの領域と接触させ、これによって、突出要素404は半径方向内側に押しやられ、これによってハウジング100の突出要素123の上に持ち上げられる。このよって第3のロッキングデバイス420はロック解除され、この結果、第2のスプリング410は自然状態に戻ることができ、したがってスリーブ400はハウジング100から、さらに詳しくはハウジング100から突出する一次プランジャ230の領域を越えて突出できる。だが、この状態では、ハウジング100から突出する一次プランジャ230の領域は、依然として、体600内に存在し、この結果、スリーブ400は、初めに、第2のスプリング410によって体600に対して押し付けられ、したがって完全に突出することはできない。
【0103】
図5は、注入が実施された後の、図4に続く概略図である。第3のロック解除デバイス420がロック解除された後、デバイスは注意深く体600から引き出され、さらに詳しくは、固形物500が体内に留まった状態で、一次プランジャ230の遠位部分は体600から引き出される。同時に、第2のスプリング410は完全に自然状態に戻ることができ、したがってスリーブ400は、ハウジング100から、そして一次プランジャ230を越えて移動させることができる。その間、スリーブ400の突出要素404はハウジング100の次の突出要素122に達し、当該要素のクサビ形状構造の結果としてスプリング力によって当該突出要素122の上で持ち上げられ、そして突出要素122および121間で、さらに詳しくは不可逆的に留まる。この状態では、ハウジング100から突出する一次プランジャ230の部位は、スリーブ400によって完全に覆われ、これによって、起こり得る汚染を阻止できる。
【0104】
カニューレ220、第1のスプリング320および第2のスプリング410は、金属から、さらに詳しくはスチールからなる。デバイス1の残りの部分は、プラスチック、たとえばポリメチルメタクリレート(PMMA)あるいはポリカーボネートからなる。当業者にとって、デバイス1の個々の部品のために使用可能な、さらなる好適な素材は自明である。実例として、第1および第2のスプリング320,410はまたプラスチックから形成できる。
【0105】
保持要素101はまた、ハウジングを取り囲む円形ディスクとして、あるいは当業者には周知のさらなる保持要素101として設計できる。特に、保持要素101の人間工学的に適合された形状のための備えがなされてもよい。
【0106】
突出要素121〜123および/または歯付きラック210,310はまた、包囲構造を有していてもよい。突出要素121〜123および/または歯付きラック210,310の包囲構造によって、デバイスを、ハウジング、二次プランジャ、スリーブおよび注入本体の互いに対する回転に抗するようなものとすることができる。
【0107】
舌部114はまた、ギアホイール130と、あるいは二次プランジャ300と相互作用できる。
【0108】
図6ないし図9は、本体に基づくデバイスの第2実施形態を示している。
【0109】
第2実施形態に基づくデバイス1001はハウジング1100を具備してなるが、これは実質的に第1実施形態と同様に設計されている。デバイス1001はさらに、一次プランジャ1230および注入器本体1200を具備してなるが、この中で、特にデバイス1001が使用される前に、固形物1500は保持デバイスによって保持される。注入器本体1200はカニューレ1220に対して固定的に接続されるが、一次プランジャ230は、注入器本体1200を経て、カニューレ1220内へと、軸方向に変位させることができる。注入器本体1200およびカニューレ1220は、軸方向に変位可能な様式でハウジング1100内に一緒に設けられる。さらに、デバイス1は二次プランジャ1300を具備してなるが、これは、軸方向に変位可能な様式でハウジング1100内に同様に設けられ、かつ、実質的に、遠位方向に向けられた開口を備える、一方側が閉塞された中空シリンダーとして具現化される。一次プランジャ1230は、それが軸方向に変位可能であるように、二次プランジャ1300内に設けられる。
【0110】
開口の領域において、ハウジング1100は二つの保持要素1101を具備してなるが、これは、デバイス1001の長手方向軸線に対して直角に外側に突出し、さらに詳しくは、人差し指および中指で把持することができる。ハウジング1100のハウジングベース1110において、それは、中央の、円形カニューレ開口1111を具備してなり、それを経てカニューレ1220が突出できる。
【0111】
さらに、ハウジング1100はギアホイール1130を具備してなるが、これは、ハウジング1100の長さに軸方向に測定したとき、概ね中央に設けられており、かつ、ハウジング1100の断面に関しては、それがハウジング1100上で回転できるように、外側に向かって平行な方向に注入器本体1200の注入器本体直径の概ね半分だけ、中心からオフセットして設けられている。
【0112】
さらに、舌部1114は、ギアホイール1130の近位側背後でハウジング1100に対して連結されるが、この舌部は、遠位方向に半径方向外側に回動させられ、そして第2の歯付きラック1310と係合し、これによって、二次プランジャ1300の近位方向変位が間接的に抑止される。舌部1114は、少なくとも僅かに弾力性を有するプラスチックからなる。
【0113】
さらに、ロッキング要素1351は、第1のロッキングデバイス1350の一部として、ハウジング1100に連結されているが、このロッキングデバイスは、それがスプリング力に抗して実質的に半径方向に回動できるように設計されている。ロッキング要素1351は、軸方向に向けられた長尺なセクションとして具現化されており、かつ、本実施形態では、ハウジング100と一体で具現化されている。ロッキング要素1351は、遠位領域において、ハウジング1100に対して固定的に連結されており、かつ、近位領域において、それは半径方向に突出する要素を有し、かつ、近位端部において、斜面を有するが、これは、遠位方向に一次プランジャ230と約45°の角度をなす。二次プランジャ1300は、これによって、遠位方向にロックできる。
【0114】
その側面において、注入器本体1200は第1の歯付きラック1210(明確には示していない)を具備してなるが、これは、遠位方向に向けられており、かつ、第1の状態では、近位端部の上でギアホイール1130と係合する。さらに、それは、固形物1500を保持するための欧州特許第09 405 186.9号(Forteq Nidau AG)から公知の保持デバイスを具備する。このために、注入器本体1200は長尺な要素1240を有するが、これは、クリップオン接続によって弾性的に注入器本体1200に対して近位で接続される。長尺な要素1240は、注入器本体1200の内部内に半径方向に突出するラグ1241,1242を有し、一方のラグ1241は遠位に配置され、かつ、他方のラグ1242は少なくとも固形物1500の長さだけ離間して近位方向に配置され、それゆえ、固形物1500はラグ1241,1242間で保持できる。さらに、近位ラグ1242から近位に離間して、第3のラグ1243が存在し、これは、半径方向内側に突出し、かつ、長尺な要素1240に連結されている。さらに半径方向孔1201(これは注入器本体1200の内部内に突出する)が、二つの遠位ラグ1241および1242間の領域に設けられている。これは、デバイスが備える真空源によって、固形物1500を適所で保持するために使用でき、あるいは固形物の存在を適切なプローブによって点検できる。二つの遠位に配置されたラグ1241および1242の前方における注入器本体1200の内径は、遠位に配置されたラグ1241および1242間の注入器本体1200の内径よりも大きなものである(さらに詳しくは以下参照)。大きさに関して、カニューレ1220は、実質的に、同じ内径を有し、かつ、固形物1500は、遠位に配置されたラグ1241および1242間の領域において、実質的に注入器本体1200の内径と同じ外径を有する。
【0115】
保持デバイスを非作動化するために、近位に配置されたラグ1243は一次プランジャ1230によって半径方向外側に押しやられ、この際、遠位に配置されたラグ1241および1242は、同時に、長尺なセクション1240を介して半径方向外側に押しやられ、したがって注入器本体1200の内部は固形物1500のために開放される。
【0116】
一次プランジャは長尺な部位を具備してなるが、これは第1のセクション1234および第2のセクション1235を具備してなり、これは第1のセクションに対して遠位に配置されており、第1のセクション1234は第2のセクショ1235よりも大きな直径を有する。第1のセクション1234と第2のセクション1235との間の移行領域は円錐形状を有し、円錐の斜面はラグ1243用の当接領域として機能する。
【0117】
二次プランジャ1300は、実質的に、一方側が閉塞されたシリンダーとして設計されており、シリンダー開口は遠位に配置されている。その近位の、実質的に閉塞された端部に、二次プランジャ1300は、二次ロッキングデバイス1330の一部として、軸方向にかつ中央に配置されたラッチング要素開口1301を有する(以下、参照)。
【0118】
二次プランジャ1300はさらに作動要素1340を具備してなるが、これは、実質的に、中間面1341を備えた、一方側が閉塞された、シリンダーとして設計されている。第2のロッキングデバイス1330のさらなる部分として、中間面1341はロック解除開口1342を有するが、これは、ラッチング要素開口1301に対して同軸状に配置されており、かつ、同じ直径を有する。作動要素1340は、二次プランジャ1300の近位端部上に配置されている。
【0119】
二次プランジャ1300内でガイドされた一次プランジャ1230は、その近位端部に、プランジャヘッド1231を有する。プランジャヘッド1231の直径は、実質的に、二次プランジャ1300の内径と一致し、そして、中央であってかつ遠位に、第1のセクション1234を保持するための内腔を有する。さらに、プランジャヘッド1231は、二つの軸方向であってかつ近位に配置されたラッチング要素1232を具備してなるが、これは、プランジャヘッド1231の長手方向軸線の近傍で離間して配置されており、かつ、半径方向に弾力性のある構造を有する。ラッチング要素1232は、半径方向外側に突出するラグを有するが、これは、近位方向に内側に傾斜する斜面を有する。第2のロッキングデバイス1330がロックされたとき、ラッチング要素1232はラッチング要素開口1301を経て突出し、ラッチング要素開口1301の縁部領域は遠位でラグをアンダーカットしている。プランジャヘッド1231および二次プランジャ1300は第1のスプリング1320を取り囲んでいるが、これは、第2のロッキングデバイス1330がロックされた第1の状態では緊張させられる。この第1のスプリング1320はヘリカルスプリングとして具現化されており、かつ、スチールからなる。作動要素1340がこの時点で作動させられると、ラッチング要素1232は、ロック解除開口1342によって半径方向内側に回動させられ、この結果、ラグはもはや、ラッチング要素開口1301によってアンダーカットされなくなる。これは、第2のロッキングデバイス1330をロック解除し、そしてラッチング要素1232は、第1のスプリング1320が自然状態に戻る結果、ラッチング要素開口1301によってガイドされる。プランジャヘッド1231はさらに、軸方向の、周縁の、そして遠位に配置されたロック解除ピン1233を有するが、これによって、第1のロッキングデバイス1350をロック解除することができる。プランジャヘッド1231が遠位に変位させられた場合、ロック解除ピン1233は、ロッキング要素1351の斜面と接触状態となり、それを半径方向内側に押しやる。この結果、二次プランジャ1300は、もはや、ロッキング要素1351によって遠位方向にはブロックされなくなり、この結果、第1のロッキングデバイス1350はロック解除される。ロッキング要素1351は、同時に、一次プランジャ1230用の遠位ストッパーとして機能する。
【0120】
遠位部位から、二次プランジャ1300は、内壁に軸方向に向けられた第2の歯付きラック1310を備えるが、この歯付きラックは、特に、二次プランジャ1300と一体で具現化されており、かつ、ハウジング1100のギアホール1130と相互作用することができる。第1の状態では、デバイス1001の使用に先立って、第2の歯付きラック1310の遠位部位はギアホイール1130と係合する。したがって、二次プランジャ1300の動きは注入器本体1200のそれと結合され、二次プランジャ1300の遠位移動は、これによって形成されるラック・ピニオンギアを介して、注入器本体1200の近位移動へと変換され、そして逆方向の移動は舌部1114によって阻止される。
【0121】
以下の段落では、固形物を注入するためのデバイス1001の使用法について、図6ないし図9を用いて、さらに詳しく説明する。
【0122】
図6は、特に作動要素1340が作動させられる前の固形物1500を注入する際の第1ステップとして、カニューレ1200が体1600内に挿入された後の、図6に続く、本発明に基づくデバイス1001の一実施形態の概略図である。
【0123】
デバイス1001は、ここでは、ユーザーによって、保持要素1101を使って、人差し指および中指を用いて把持されており、そして親指は、初めは押圧力を伴わずに、作動要素1340上に置かれる。
【0124】
図7は、作動要素1340が作動させられた後の、図6に続く概略図である。親指で遠位方向に作動要素1340を作動させることによって、ラッチング要素1232は、ロック解除開口1342を経て半径方向内側に回動させられ、この結果、第2のロッキングデバイス1330はロック解除される。したがって、一次プランジャ1230の経路は遠位方向に開放され、この結果、第1のスプリング1320は自然状態に戻り、この結果、一次プランジャ1230は、遠位方向に、二次プランジャ1300に対して変位させられる。
【0125】
注入器本体1200内において、一次プランジャ1230の遠位端部は、まず、第3のラグ1243に達し、そして、第1のセクション1234と第2のセクション1235との間の斜面によって、それを半径方向外側に押しやる。これに連結された、長尺なセクション1240は、したがってラグ1241および1242もまた、半径方向外側に押しやられ、この結果、固形物1500の経路は開放される。続いて、依然として部分的に緊張した第1のスプリング1320によって、一次プランジャ1230は、二次セクション1235の遠位端部によって固形物1500を捉え、そしてカニューレ1220内に、さらに詳しくは、ハウジング1100の外側に位置させられたカニューレ1220の部分内へと固形物を誘導する。固形物1500とハウジング1100との間の間隔は、実質的に、体1600内における固形物1500の予測される移植深さと一致する。
【0126】
したがって、この状態では、カニューレ1220のかなりの部位は体1600の中にあり、一次プランジャ1230の遠位部位はカニューレ1220の中に、したがってやはり体1600の中にあり、そして固形物1500は、一次プランジャ1230の遠位端部の前方で、体1600内に存在する。
【0127】
一次プランジャ1230の完全な挿入と同時に、プランジャヘッド1231は、ロック解除ピン1233を備えた第1のロッキングデバイス1350のロッキング要素1351と接触し、ロッキング要素1351の斜面は半径方向内側に押しやられる。したがって、第1のロッキングデバイス1350はロック解除され、それゆえ二次プランジャ1300はハウジング1100内で軸方向に変位できる。この状態では、注入器本体1200はプランジャヘッド1231から離間している。一次プランジャ1230は、近位方向には、僅かに緊張したスプリング1320によって、そして遠位方向には、ロッキング要素1351によってブロックされており、したがってそれは、両側においてブロックされている。
【0128】
作動要素1340に加えられる圧力によって遠位方向に二次プランジャ1300がハウジング1100内に挿入された場合、注入器本体1200の、したがってカニューレ1220の、一次プランジャ1230に沿ったプランジャヘッド1231の方向における、近位移動は、第1および第2の歯付きラック1210,1310を介して同時にもたらされるが、これはギアホイール1130を介して結合されており、同時に、一次プランジャ1230は適所において固定されたままである。この結果、カニューレ1220は固形物1500およびハウジング1000から突出する一次プランジャ1230の部分を越えて引き戻され、こうして固形物1500は外部に残される。
【0129】
図8は、二次プランジャ1300の部分的挿入後の図7に続く概略図である。カニューレ1220の遠位端部は、一次プランジャ1230の遠位端部と概ね面一である。この状態では、注入器本体1200はプランジャヘッド1231と接触する。遠位方向への作動要素1340の作動によって二次プランジャ1300がさらに挿入されるとき、一次プランジャ1230は、プランジャヘッド1231を介して、かつ、注入器本体1200を経てハウジング1100内へと、したがってカニューレ1220と共に、近位方向に変位させられ、その結果として、第1のスプリング1320は部分的に再圧縮される。
【0130】
二次プランジャ1300が、それが解放されたとき、第1のスプリング1320によって近位方向に変位できないように、舌部1114が備わるが、これは第2の歯付きラック1310と相互作用し、それによって二次プランジャ1300が本体1600内に戻るのを阻止するか、あるいは体内へ戻るようにカニューレ1220が遠位変位するのを阻止する。
【0131】
図9は、注入が実施された後の、図8に続く概略図であるが、カニューレ1220および一次プランジャ1230の遠位領域は、ハウジング1100内に完全に収まっている。
【0132】
カニューレ1220および第1のスプリング1320は、金属から、さらに詳しくはスチールからなる。デバイス1001の残りの部品は、プラスチック、たとえばポリメチルメタクリレート(PMMA)あるいはポリカーボネートからなる。当業者にとって、デバイス1001の個々の部品のために使用できる、さらなる好適な素材は自明である。実例として、第1のスプリング1320はまたプラスチックから形成できる。
【0133】
保持要素1101はまた、ハウジングを取り囲む円形ディスクとして、あるいは当業者には公知のさらなる保持要素1101として形成可能である。特に、保持要素1101の人間工学的に適合された形状のための備えがなされてもよい。
【0134】
総じて、本発明は固形物を注入するためのデバイスを改善するが、これは、極めて容易に取り扱うことができ、しかも不慣れなユーザーによって、努力を要さずに、しかも直感的に使用可能であることに留意されたい。
【符号の説明】
【0135】
1;1000 固形物を注入するためのデバイス
100;1100 ハウジング
101;1101 保持要素
110;1110 ハウジングベース
111 カニューレ開口
112 スリーブ開口
113 保持要素
114;1114 舌部
120;1120 ハウジングクラッド
121〜123 突出要素
130;1130 ギアホイール
200;1200 注入器本体
1201 半径方向孔
210;1210 第1の歯付きラック
220;1220 カニューレ
230;1230 一次プランジャ
231;1231 プランジャヘッド
232 開口
1232 ラッチング要素
1233 ロック解除ピン
1234 第1のセクション
1235 第2のセクション
240;1240 長尺なセクション
241,242;1241〜1243 ラグ
300;1300 二次プランジャ
301 ピン開口
1301 ラッチング要素開口
310;1310 第2の歯付きラック
320;1320 第1のスプリング
330;1330 第2のロッキングデバイス
331 弾性要素
332 要素
333 要素
340;1340 作動要素
341 ピン
1341 中間面
1342 ロック解除開口
350;1350 第1のロッキングデバイス
351;1351 ロッキング要素
352 リセス
400 スリーブ
401 スリーブクラッド
402 スリーブベース
403 カニューレ開口
404 突出要素
405 保持要素
410 第2のスプリング
420 第3のロッキングデバイス
500;1500 固形物
600;1600 体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトあるいは動物の体(600;1600)内に固形物(500;1500)を注入するためのデバイス(1;1001)、特に固形薬物を注入するための注入器であって、
a)ハウジング(100;1100)と、
b)カニューレ(220;1220)に接続された、前記固形物(500;1500)を保持するための注入器本体(200;1200)と、
c)一次プランジャ(230;1230)であって、前記注入器本体(200;1200)内で、かつ、前記カニューレ(220;1220)内で、変位させることが可能な一次プランジャ(230;1230)と、
d)二次プランジャ(300;1300)であって、前記ハウジング(100;1100)内で変位させることが可能な二次プランジャ(300;1300)と、を具備してなり、
e)かつ、力伝達機構であって、前記二次プランジャ(300;1300)と、前記注入器本体(200;1200)および/または前記カニューレ(200;1220)との間で作用することができる力伝達機構を具備してなり、
f)遠位方向への前記二次プランジャ(300;1300)の動作は、近位方向への前記注入器本体(200;1200)および/または前記カニューレ(220;1220)の変位をもたらすことができ、
g)前記デバイス(1;1001)は、第1のエネルギー蓄積体を具備してなり、前記第1のエネルギー蓄積体からのエネルギーは、前記一次プランジャ(230;1230)の遠位方向への変位のために使用可能であることを特徴とするデバイス(1;1001)。
【請求項2】
前記力伝達機構は、ラック・ピニオンギアを具備してなることを特徴とする請求項1に記載のデバイス(1;1001)。
【請求項3】
前記力伝達機構は、ラック・ピニオンギアとして具現化されており、このラック・ピニオンギアは、第1の歯付きラック(210;1210)と、第2の歯付きラック(310;1310)と、ギアホイール(130;1130)と、を具備してなり、
a)前記ギアホイール(130;1130)は、前記ハウジング(100;1100)内に、それが自由に回転できるように設けられており、
b)前記第1の歯付きラック(210;1210)は、前記注入器本体(200;1200)に連結されており、
c)前記第2の歯付きラック(310;1310)は、前記第2のプランジャ(300;1300)に連結されており、
d)前記ギアホイール(130;1130)は、前記第1および第2の歯付きラック(210,310;1210,1310)と相互作用するようになっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のデバイス(1;1001)。
【請求項4】
第1のロッキングデバイス(350;1350)を具備してなり、このデバイスを用いることで、前記第2のプランジャ(300;1300)は、前記ハウジング(100;1100)内での軸方向変位可能性に関して、ブロックできるようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のデバイス(1;1001)。
【請求項5】
前記第1のロッキングデバイス(350;1350)は、前記一次プランジャ(230;1230)によって、さらに具体的には、前記一次プランジャ(230;1230)の遠位方向の変位によって、非作動化することが可能となっていることを特徴とする請求項4に記載のデバイス(1;1001)。
【請求項6】
前記第1のエネルギー蓄積体は、特に遠位方向に前記一次プランジャ(230;1230)を変位させるための第1のスプリング(320;1320)を具備してなり、前記第1のスプリング(320;1320)は、さらに具体的には、ヘリカルスプリングとして具現化されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のデバイス(1;1001)。
【請求項7】
前記一次プランジャ(230;1230)は、前記二次プランジャ(300;1300)内でガイドされることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のデバイス(1;1001)。
【請求項8】
前記第1のスプリング(320;1320)は、前記一次プランジャ(230;1230)が前記第1のスプリング(320;1320)からのスプリング力によって前記第2のプランジャ(300;1300)から軸方向に変位可能であるように、前記二次プランジャ(300;1300)内に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のデバイス(1;1001)。
【請求項9】
第2のロッキングデバイス(330;1330)を具備してなり、このデバイスによって、前記一次プランジャ(230;1230)は、特に、前記第1のスプリング(320;1320)が緊張させられた場合に、前記二次プランジャ(300;1300)に対してロック可能となっていることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載のデバイス(1;1001)。
【請求項10】
前記二次プランジャ(300;1300)は作動要素(340;1340)を具備してなり、この要素によって、前記第2のロッキングデバイス(330;1330)は手動でロック可能となっており、前記作動要素(340;1340)は、特に、前記二次プランジャ(300;1300)の近位端部に配置されており、かつ、好ましくはブッシュボタンとして具現化されていることを特徴とする請求項9に記載のデバイス(1;1001)。
【請求項11】
前記一次プランジャ(1230)は、軸方向であってかつ近位方向に向けられたラッチング要素(1232)に連結されており、この要素は、前記二次プランジャ(1300)内で遠位に配された開口内に掛止可能であり、かつ、前記作動要素(1340)によってロック解除可能であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載のデバイス(1001)。
【請求項12】
前記注入器本体(200;1200)は、注入前に、前記固形物(500;1500)を保持するための保持デバイスを具備してなることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のデバイス(1;1001)。
【請求項13】
ある状態においては、さらに詳しくは前記デバイス(1001)が使用された後では、前記カニューレ(1220)および前記一次プランジャ(1230)の遠位端部は、前記ハウジング(1100)内に完全に位置させられることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載のデバイス(1001)。
【請求項14】
前記二次プランジャ(1300)が部分的に挿入された第2の状態では、前記カニューレ(1220)が近位方向に引き込まれ、それゆえ前記固形物(1500)は前記カニューレ(1220)内で保持されず、かつ、前記一次プランジャ(1230)は前記カニューレ(1220)によって、せいぜい部分的にしか保持されず、あるいは、前記二次プランジャ(1300)が完全に挿入された第3の状態では、さらに詳しくは前記デバイス(1001)が使用された後では、前記一次プランジャ(1300)および前記カニューレ(1220)は前記第1の状態に対して一緒に引き抜かれることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載のデバイス(1001)。
【請求項15】
前記一次プランジャ(1230)は、近位端部に、プランジャヘッド(1231)を具備してなり、前記プランジャヘッド(1231)は、前記スプリング(1320)が前記二次プランジャ(1300)が挿入される前に自然状態に戻る場合に第1の状態では、前記注入器本体(1200)から離間させられ、かつ、前記注入器本体(1200)は、前記第2の状態では、前記プランジャヘッド(1231)と接触することを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載のデバイス(1001)。
【請求項16】
前記一次プランジャ(1230)は、第1の、近位セクション(1234)および第2の、遠位セクション(1235)を具備してなり、前記第1のセクション(1234)は、前記第2のセクション(1235)よりも大きな直径を有することを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載のデバイス(1001)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−125724(P2011−125724A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−284370(P2010−284370)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(510282815)フォルテック・ニーダウ・アーゲー (3)
【Fターム(参考)】