説明

固形状調味料

【課題】シート状やブロック状に成形して使用量に応じた持ち運びが可能であり、サンドイッチやピザ等の各種食品に利用可能な、利便性及び作業性に優れた固形状調味料を提供する。更に本発明では、室温での製造条件でも製造可能な固形状マヨネーズ様調味料等の固形状調味料であって、柔軟性及び伸展性にも優れた固形状調味料を提供する。
【解決手段】馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリンを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形状調味料に関する。詳細には、マヨネーズ様調味料やゴマだれ様調味料等の調味料を固形化した調味料に関し、例えばシート状に成形してサンドイッチやピザ等の食品に利用可能な、利便性及び作業性に優れた固形状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から汎用されているマヨネーズや、ケチャップ、ゴマだれ等の各種調味料は流動状の形態を有し、容器から絞り出したり、ガラス容器から注いで使用されるものが大半である。これら調味料は流動状であり、食品への塗布が容易である、サラダ等の食品になじみやすい等の利点を有する一方、一回の使用に応じた量の持ち運びが困難である、流動状であるために用途が制限されてしまう、サンドイッチ等の各種食品に塗布した際に水分が移行しやすい等の問題を抱えており、これら調味料をシート状やブロック状といった固形状に成型する試みがなされてきた。
【0003】
例えば、部分加水分解処理を行った大豆たん白をたん白質換算で2.5〜10.0%含有する固形マヨネーズ様食品(特許文献1)、ゼラチンとくず粉を配合した水溶液と、マヨネーズ主体とを練合したことを特徴とする固形状マヨネーズ(特許文献2)、乳化物中に加熱型生澱粉を添加し、静置固化させたことを特徴とする固形状マヨネーズ(特許文献3)等が開示されている。また、特許文献4には、ゾル化温度以上の混合処理温度でサンドイッチ用具材にゲル化剤を混合し、当該ゲル化剤含有具材をケーシングフィルムに密封充填し、冷却して具材をチューブ状にゲル化させることを特徴とする冷温保存可能なサンドイッチ用スプレッド固形物が開示されており、ゼラチン、植物ガム或いは寒天等のゲル化剤を使用できることが開示されている。
【0004】
しかし、マヨネーズやマヨネーズ様調味料の各種調味料は水分含量が少ない上、室温での製造工程で製造されるため、従来のゲル化剤や澱粉を用いて固形状に成型することが困難であった。例えば、従来のゲル化剤を用いて固形状マヨネーズ様調味料の製造を試みると、ゲル化剤を含有した水溶液を加熱溶解後、冷却した時点で溶液がゲル化してしまい、卵や油といった他の原材料を添加、混合すること自体が困難であった。また、増粘剤や従来の澱粉を使用した場合であっても、マヨネーズ様調味料自体の水分含量が少ないため、製造時にマヨネーズ様調味料が極めて高粘度となり、作業性が著しく低下するなどの問題を抱えていた。実際、特許文献3に開示されている乳化食品は70〜95℃の加熱を必須要件とし、常温で製造される現状のマヨネーズの製造ラインでは製造することができない。また、特許文献4に開示されている技術もゾル化温度以上の混合処理温度でサンドイッチ用具材にゲル化剤を混合する必要があり、常温の製造ラインで製造することは困難であった。また、特許文献1では大豆タンパク質でマヨネーズを固形化しているが、マヨネーズ自体が酸性であるため、大豆タンパク質で固形化すると、経時的にゲルが固くなり商品価値が著しく低下するといった課題を抱えていた。一方、特許文献2に開示されているゼラチンは、ゲル化剤の中でもゲル化までに時間がかかるため、固形状調味料に使用可能な素材である。しかし、耐熱性に劣るため、例えばピザ等の焼成食品にゼラチンを用いて製造した固形状調味料を用いた場合に溶解して流れ出てしまう、また、夏場など気温が高い場合、輸送中に溶けてしまう等の不具合があった。
【0005】
更に、固形状調味料に求められる物性として柔軟性や伸展性が挙げられる。例えば、パン等の食品の形状にフィットしてのせるため、また各種食品に折り込む際には柔軟性が求められる。しかし、従来の固形状調味料は柔軟性が低いため、例えばシート状に成形して折りたたんだ際に生地が折れてしまうといった課題を抱えていた。更に、特許文献2等に開示されているゼラチンを使用した固形状調味料は柔軟性が低く、例えばマーガリンのように各種食品に均一に塗布することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭60−22898号公報
【特許文献2】特公昭61−48903号公報
【特許文献3】特開2003−310206号公報
【特許文献4】特開平05−153940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では上記問題点に鑑み、シート状やブロック状に成形して使用量に応じた持ち運びが可能な上、サンドイッチやピザ等の食品に利用可能な、利便性及び作業性に優れた固形状調味料を提供することを目的とする。更に本発明は、室温での製造条件でも製造可能な固形状マヨネーズ様調味料等の固形状調味料であって、柔軟性及び伸展性にも優れた固形状調味料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記問題点に鑑みて鋭意研究を重ねていたところ、馬鈴薯を由来原料とし、DEが2〜5であるデキストリンを用いることにより、室温での製造条件でも製造可能であり、シート状やブロック状に成形可能な固形状調味料を調製できることを見出して本発明に至った。
【0009】
本発明は、以下の態様を有する固形状調味料に関する;
項1.馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリンを含有することを特徴とする、固形状調味料。
項2.20℃で測定した際のゲル強度が0.35N/cm以上である、項1に記載の固形状調味料。
項3.更にカラギナン、キサンタンガム、グァーガム、ゼラチン及びα化澱粉からなる群から選ばれる1種以上を含有する、項1又は2に記載の固形状調味料。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、シート状やブロック状に成形して使用量に応じた持ち運びが可能であり、サンドイッチやピザ等の各種食品に利用可能な、利便性及び作業性に優れた固形状調味料を提供できる。更に本発明では、室温での製造条件でも製造可能な固形状マヨネーズ様調味料等の固形状調味料であって、柔軟性及び伸展性にも優れた固形状調味料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1のシート状マヨネーズ様調味料(デキストリン単独使用)の柔軟性に関する結果を示す。
【図2】実施例1のシート状マヨネーズ様調味料(デキストリン単独使用)の伸展性に関する結果を示す。
【図3】実施例5のシート状マヨネーズ様調味料(デキストリン+カラギナン併用区)の柔軟性に関する結果を示す。
【図4】実施例5のシート状マヨネーズ様調味料(デキストリン+カラギナン併用区)の伸展性に関する結果を示す。
【図5】比較例4のシート状マヨネーズ様調味料(ゼラチン使用区)の伸展性に関する結果を示す。
【図6】実施例2のシート状マヨネーズ様調味料(デキストリン使用区)を100℃で10分間加熱した前後の様子を示す。
【図7】比較例4のシート状マヨネーズ様調味料(ゼラチン使用区)を100℃で10分間加熱した前後の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の固形状調味料は、馬鈴薯由来であり、DEが2〜5のデキストリンを含有することを特徴とする。
【0013】
本発明で用いるデキストリンは馬鈴薯由来の澱粉から得られるデキストリンであることを特徴とする。馬鈴薯以外の澱粉から得られるデキストリンを用いた場合は、例えDEが2〜5の範囲内であるデキストリンを用いた場合であっても、マヨネーズ様調味料等の調味料自体を固化することができない、また固化しても脆い食感となってしまう。
【0014】
本発明で用いるデキストリンはDEが2〜5、好ましくは3〜4の範囲である。馬鈴薯由来であり、前記DE値を有するデキストリンを用いることにより、室温下でも製造可能な固形状調味料を提供することができる。更に、本発明で使用するデキストリンはゲル化までの時間が長いため、容器に充填する際の作業性にも優れている。更に、上記デキストリンを用いることにより、伸展性にも優れた固形状調味料を調製することができる。
【0015】
DEとは、一般には澱粉の分解程度を示す指標であり、澱粉を加水分解したときに生成するデキストリンおよびぶどう糖や麦芽糖等の還元糖の割合を示すものである。全ての還元糖をぶどう糖(dextrose)の量に換算し、その割合を全体の乾燥固形分に対する重量%で表わしたものである。このDEが大きい程、還元糖の含有量が多くデキストリンが少なく、逆にDEが小さい程、還元糖の含有量が少なくデキストリンが多いことを意味する。本発明ではDEが2〜5であるデキストリンを用いることを特徴とするが、DEが2未満であるデキストリンを用いた場合は、製造ライン上でゲル化が起こる可能性が高い上、例えゲル化しなかった場合であっても作業中の粘度が高く、作業性が極めて劣ってしまう。一方、DEが5より大きいデキストリンを用いた場合も、調味料を固形状に成形できないもしくは強度が弱く、キューブ状やシート状に加工することができない。
【0016】
馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリン(以下、「本発明のデキストリン」ともいう)は、常法に従って調製することが可能である。具体的には、馬鈴薯澱粉を含有した溶液にアミラーゼ等の酵素を作用させ、馬鈴薯澱粉を加水分解し、分解の程度がDE2〜5の範囲内で酵素を失活させることにより調製することが可能である。
【0017】
本発明の固形状調味料とは、通常は液状若しくは流動状で提供される各種調味料をシート状やブロック状といった各種固形状に成形した調味料をいい、具体的には、マヨネーズ様調味料、ケチャップ様調味料、ごまだれ、焼肉のタレ等のタレ様調味料など、各種調味料を挙げることができる。特に、高粘度の流動体であるマヨネーズ様調味料は、従来より固形状への成形が試みられてきたが、従来のゲル化剤を用いて固形状マヨネーズ様調味料の製造を試みると、ゲル化剤を含有した水溶液を加熱溶解後、冷却した時点で溶液がゲル化してしまい、卵や油といった他の原材料を添加、混合すること自体が困難であった。また、増粘剤や従来の澱粉を使用した場合であっても、マヨネーズ様調味料自体の水分含量が少ないため、製造時にマヨネーズ様調味料が極めて高粘度となり、作業性が著しく低下するなどの問題を抱えていた。また、ゲル化剤の中でもゲル化までに時間がかかるゼラチンは、固形状調味料に使用可能な素材であるが耐熱性に劣るため、例えばピザ等の焼成食品にゼラチンを用いて製造した固形状調味料を用いた場合に溶解してしまう。また、ゼラチンを用いて製造された固形状調味料は伸展性がないため、マーガリンのように食品に均一に塗布することができない、更にはゼラチン特有の臭いが食味に影響を与えてしまう等の不具合があり、商品価値の高い固形状調味料を提供することはできなかった。
【0018】
一方、馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリンを用いることにより、従来のマヨネーズを製造するラインと同様の、常温での製造ラインを用いて、ブロック状やシート状といった各種固形状のマヨネーズ様調味料を製造することが可能となった。また、従来の固形状調味料は特許文献4に開示されているように、調味料自体を調製後に各種ゲル化剤を添加、固形化する必要もあったが、本発明では、固形状調味料の製造工程中で本発明のデキストリンを溶解させることが可能であり、更には製造時に調味料が高粘度、ゲル化することもないため、作業効率にも極めて優れている。加えて、本発明のデキストリンを用いることにより、マヨネーズ等の酸性食品であっても徐々にゲル強度が固くなることもなく、安定した物性を付与できる上、伸展性にも優れた固形状調味料を調製することが可能となった。
【0019】
本発明でいう「固形状」とは手で持ち運び可能なゲル強度を有するものをいう。中でも本発明の固形状調味料は20℃で測定した際のゲル強度が0.35N/cm以上、好ましくはゲル強度が0.7N/cm以上であることが好ましい。当該ゲル強度は、デキストリンを溶解した調味料を5℃で24時間以上冷却して調味料を固化させた後、テクスチャーアナライザーを用い、直径12.7mmの円柱プランジャーを使用して表面より4mm押し込んだ際の応力値である。当該ゲル強度に応じてシート状やブロック状といった各種形状に成形することが可能であり、シート状調味料は、サラダやパン類にトッピングする調味料として利用可能である。
一方でゲル強度が2.0N/cm以上と高いゲル強度を有する固形状調味料は、例えば粉チーズのように摩りおろすことにより、粉マヨネーズ等として使用することも可能である。一方、ゲル強度が0.35N/cmより低いと、強度が低いため、手で持ち運ぶことが困難である。また、従来のマヨネーズ、マヨネーズ様調味料、ケチャップやケチャップ様調味料等の各種調味料は高粘度を有するものの流動体であるため、容器に充填しなければ持ち運びもできず、ゲル強度が極めて低く、正確に測定すること自体が困難である点で本発明の固形状調味料と相違する。
【0020】
本発明では、馬鈴薯を由来原料とするDEが2〜5のデキストリンの中でも、更に以下の性質(a)を有するデキストリンを用いることが好ましい。
(a)25℃の蒸留水で調製したデキストリン30質量%水溶液を、25℃で5分間静置
した時の粘度が100mPa・s以下である。
DEが2〜5のデキストリンの中でも上記性質(a)を有するデキストリンを用いることにより、澱粉特有の臭いやざらつきもなく、風味に優れる固形状調味料を調製することができる。(a)の粘度は、25℃の蒸留水で調製したデキストリンの30質量%水溶液を25℃で5分間静置した後、25℃条件下で、BL型回転粘度計(ローターNo.2)を用いて回転数12rpmで1分間測定することによって求めることができる。当該粘度の下限は、制限されないが、通常20mPa・sを挙げることができる。(a)の粘度として、好ましくは20〜100mPa・s、より好ましくは30〜70mPa・sである。馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリンについて、粘度(a)が100mPa・s以下であるかどうかは、いずれも前述する方法に従って30質量%水溶液を調製して、測定することができる。
【0021】
固形状調味料に対する前記デキストリンの添加量は、求められる形態によっても異なるが、好適な添加量として、具体的には固形状調味料中の水1質量部に対し、前記デキストリンが0.15質量部以上、好ましくは0.2〜1.5質量部更に好ましくは0.4〜1.5%質量部を挙げることができる。ここで、水とは、固形状調味料中に存在する水分含量であり、具体的には固形状調味料からデキストリン、多糖類、澱粉、砂糖、食塩、グルタミン酸ナトリウム、卵黄などの固形分及び油分を除いた値である。
【0022】
本発明では、馬鈴薯由来でありDE2〜5であるデキストリンに加えて、キサンタンガムを併用することが好ましい。キサンタンガムを併用することにより、固形状調味料の保型性及び乳化安定性を向上させることが可能である。本発明で用いるキサンタンガムは、微生物が産生する発酵多糖類であり、β−1,4−D−グルカンの主鎖骨格に、D−マンノース、D−グルクロン酸、D−マンノースからなる側鎖が結合したアニオン性の多糖類である。主鎖に結合したD−マンノースのC6位はアセチル化されている場合がある。また、末端のD−マンノースはピルビン酸とアセタールで結合している場合がある。商業的に入手可能なキサンタンガム製品として、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「サンエース[商標]」などを挙げることができる。
【0023】
本発明では、また、馬鈴薯由来でありDE2〜5であるデキストリンに加えて、カラギナン、グァーガム、ゼラチン、α化澱粉、タラガム、タマリンドシードガム、HMペクチン、LMペクチン、アラビアガム、ガティガム、カラヤガム、寒天、ジェランガム、カードラン、プルラン、大豆多糖類、発酵セルロース、微結晶セルロース、セルロース誘導体、サイリウムシードガム及びグルコマンナンからなる群から選ばれる1種以上を併用することが好ましい。これら多糖類を、好ましくは固形状調味料中の水1質量部に対し、0.01質量部以上用いることにより、固形状調味料に柔軟性と伸展性を付与することが可能である。
【0024】
なお、上記多糖類及び/又は澱粉の中でも、カラギナン、ゼラチン、α化澱粉、LMペクチン、寒天、ジェランガム、カードラン及びグルコマンナンからなる群から選ばれる1種以上をデキストリンと併用する場合は、固形状調味料中の水1質量部に対し、0.1質量部以上、好ましくは0.1〜1.4質量部、更に好ましくは0.15〜1.0質量部のデキストリンを用いることが好ましい。
【0025】
上記多糖類の中でも、馬鈴薯由来でありDE2〜5であるデキストリンに加え、特に好ましくはカラギナンを併用することにより、固形状調味料の柔軟性及び伸展性を格段に向上させることが可能である。
【0026】
本発明で使用するカラギナンは、水と混合し、必要により攪拌することにより、水に完全に溶解する性質を有する水溶性のものが好ましい。水溶性のカラギナンとしては、好適には下記(1)〜(3)の少なくとも一つの性質を有するものを挙げることができる。より好ましくは下記(1)〜(3)の少なくとも二つの性質を有するもの、特に好ましくは(1)〜(3)の全ての性質を有する水溶性のカラギナンである。
【0027】
(1)50℃以下の水に溶解する。
本発明で使用する好適なカラギナンは、50℃以下の水に完全に溶解する水溶性のカラギナンである。より好ましくは5〜40℃、さらに好ましくは5〜30℃の水に溶解するカラギナンである。従来公知の汎用カラギナンは、通常60℃以上に加温しなければ水に溶解しないものである点で、上記のカラギナンと相違する。水への溶解方法は特に制限されないが、必要により泡立て器などの任意の攪拌手段を用いて攪拌することによって、水に溶解させてもよい。
【0028】
(2)その1.5質量%水溶液が25℃条件下でゲル化しない。
本発明で使用する好適なカラギナンは、その1.5質量%水溶液が25℃条件下でゲル化しない水溶性のカラギナンである。より好ましくは、その1.8質量%水溶液が25℃条件下でゲル化しない水溶性カラギナンであり、さらに好ましくはその2.5質量%水溶液が25℃条件下でゲル化しない水溶性カラギナンである。従来公知の汎用カラギナンは、その1.5質量%水溶液が25℃条件下でゲル化する特性を有している点で、上記のカラギナンと相違する。
【0029】
ここでゲル化の有無は、25℃における粘度を測定することによって評価することができる。具体的には、測定対象物(カラギナンの1.5〜2.5重量%水溶液)の粘度を、25℃条件下でBL型回転粘度計(ローターNo.2)((株)トキメック製)を用いて回転数12rpmで1分間測定した場合、粘度が4000mPa・s以下であるか否かで判断することができる。この場合、粘度が4000mPa・s以下である場合はゲル化していないと判断することができ、粘度がこれより大きい場合にはゲル化していると判断される。好ましい水溶性カラギナンは、上記条件で測定したときの粘度が1500mPa・s以下のものである。
【0030】
(3)カルシウムイオンを含み、その割合が0より多く0.1重量%以下である。
本発明で使用する好適なカラギナンは、カルシウムイオンを含んでおり、その割合が0より多く0.1重量%以下の水溶性カラギナンである。より好ましくは0より多く0.05重量%以下の割合でカルシウムイオンを含む水溶性カラギナンである。
【0031】
なお、上記(1)〜(3)の性質を有する水溶性のカラギナンは、商業的に入手できるものであり、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のイオタカラギナン製剤「ゲルリッチ[商標]No.3」を挙げることができる。
【0032】
馬鈴薯由来でありDE2〜5であるデキストリンに対する、当該カラギナンの添加量としては、デキストリン1質量部に対し0.002〜0.2質量部、好ましくは0.01〜0.1質量部となるように添加することが好ましい。
【0033】
本発明の固形状調味料は、例えば、常温もしくは加温した水溶液に本発明のデキストリンを添加、溶解した後、各種調味料の原料を添加、混合し、必要に応じて均質化処理等を行い、容器に充填後、殺菌して常温もしくは冷蔵等で冷却することにより製造することができる。また、固形状調味料がマヨネーズ様調味料であれば、常温の水に馬鈴薯由来でDE2〜5のデキストリンを添加して乳化機等で攪拌後、砂糖、卵黄、醸造酢、レモン果汁等の各種原材料を添加して攪拌後、油を少しずつ添加して乳化処理を行う。その後、コロイドミルまたはホモジナイザーで乳化処理して、容器に充填後、常温若しくは冷蔵保存することにより固形状のマヨネーズ様調味料を製造することができる。なお、容器に充填する際に、シート又はブロックの型に乳化物を充填し、常温若しくは冷蔵保存することにより、上記形状の固形状調味料を調製することができる。
なお、本発明のデキストリンを用いることにより、常温での製造ライン上でマヨネーズ様調味料等の各種調味料を製造することが可能であるが、加熱溶解の工程を用いて固形状調味料を調製することも可能である。
【0034】
また、本発明のデキストリンに加えて、キサンタンガム、カラギナン、グァーガム、ゼラチン、α化澱粉、タラガム、タマリンドシードガム、ペクチン、アラビアガム、ガティガム、カラヤガム、寒天、ジェランガム、カードラン、プルラン、大豆多糖類、発酵セルロース、微結晶セルロース、セルロース誘導体、サイリウムシードガム及びグルコマンナンからなる群から選ばれる1種以上を併用する際は、デキストリンと同時に添加することにより、固形状調味料を調製することができる。
【0035】
特に、本発明の固形状調味料は加熱溶解工程を経ることなく固形状調味料を製造できるという利点を有するため、加熱溶解工程を経ない通常のマヨネーズ様調味料等の製造ラインを変更することなく、固形状のマヨネーズ様調味料を製造することが可能となった。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは、「質量部」、「%」は「質量%」を意味するものとする。文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
【0037】
実験例1 シート状マヨネーズ様調味料の調製(1)
表1及び表2に示す処方に従ってシート状マヨネーズ様調味料を調製した。詳細には、20℃の水にデキストリン、キサンタンガム、各種多糖類及び澱粉を添加してTKロボミキサーで攪拌し、砂糖、食塩及びグルタミン酸ナトリウムを加えて更に5分間攪拌した。卵黄を加えて3分間攪拌後、醸造酢、リンゴ酢、レモン透明果汁を加え、サラダ油を少しずつ加えた後、5分間攪拌し、コロイドミルにて乳化し、バットに充填し、24時間冷蔵保存(5℃)することによりシート状マヨネーズ様調味料を調製した。
【0038】
【表1】

【0039】
注1)サンエース※*を使用した。
【0040】
【表2】

注2)馬鈴薯由来、DE3.8、粘度55mPa・sのデキストリンを使用した。
注3)馬鈴薯由来、DE3.2、粘度235mPa・sのデキストリンを使用した。
注4)馬鈴薯由来、DE6.3のデキストリンを使用した。
注5)コーン由来、DE4. 0のデキストリンを使用した。
注6)ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉をα化したものを使用した。
注7)ゲルリッチ※No.3*を使用した。
注8)ビストップ※D−20*を使用した。
注9)ゼラチンNO.1*を使用した。
【0041】
調製された各々のマヨネーズ様調味料について、ゲル強度、柔軟性及び伸展性について評価した。結果を表3に示す。また、実施例1及び実施例5については柔軟性及び伸展性を評価した際の結果を図1〜4に、比較例4の伸展性を評価した際の結果を図5に示す。
<評価方法>
ゲル強度は以下の条件に従って測定した。
テクスチャーアナライザーを使用して20℃で測定。
(Stable Micro Systems 社製「TA.TX plus」)
(直径12.7mm 円柱プランジャーを使用、表面より4mm押し込んだ際の強度を測定)
柔軟性:調製したシート状マヨネーズ様調味料を3回折り曲げた後の様子を評価した。
柔軟性が高い順に5段階で評価した。5(柔軟性が高く、3回折り曲げた後も折れることなくしなやかである)>4>3>2>1(柔軟性が低く、少しでも曲げることによって折れる)
伸展性:調製したシート状マヨネーズ様調味料をアルミホイルの上に置き、ヘラで押し伸ばした際の様子を評価した。伸展性が高い順に5段階で評価した。
5(均一に押し伸ばすことができる)>4>3>2>1(切れてしまい、押し伸ばしても均一に伸ばすことが出来ない。)
【0042】
【表3】

【0043】
デキストリンとして、馬鈴薯由来でDE2〜5のデキストリンを用いることにより、使用量に応じた持ち運びが可能であり、サンドイッチ等の食品に添付可能なシート状マヨネーズ様調味料を調製することができた(実施例1〜7)。更に、当該デキストリンに加えて加工澱粉、カラギナン及びグァーガム、特にカラギナンを併用することにより、実施例1と同程度のゲル強度にも関わらず、柔軟性及び伸展性に極めて優れたシート状マヨネーズ様調味料となった(実施例4〜6)。また、当該デキストリンに加えてゼラチンを併用することにより、シート状マヨネーズ様調味料の口溶けを改善することができ、滑らかな口溶けのシート状マヨネーズ様調味料となった(実施例7)。一方、実施例2及び3のシート状マヨネーズは柔軟性及び伸展性が低かったが、当該ゲル強度を有するマヨネーズ様調味料(2.4N/cm以上)は、例えば摩りおろすなどの加工が可能であり、粉マヨネーズ等として使用することが可能である。
【0044】
一方、馬鈴薯由来のデキストリンであってもDEが5より大きいデキストリンを用いた場合は、ゲル強度が低く、手で持ち上げた際にシート状を保つことができず、手で持ち運べることすらできなかった(比較例1)。更には、比較例1のマヨネーズ様調味料は柔軟性も乏しいものであった。同様にして、DEが2〜5のデキストリンであっても馬鈴薯以外の由来澱粉であるデキストリンを用いた場合、例えばワキシーコーンスターチでは、マヨネーズ様調味料自体が固まらなかった(比較例2)。また、従来技術である加工澱粉を用いた場合(比較例3)は、マヨネーズ様調味料調製時の粘度が高すぎる一方で、最終物はシート状に成形できないほどゲル強度が弱く、添加量の増加を試みたが、シート状に成形できる程度の添加量を添加すると澱粉を水に溶かし込むことができなかった。同様にして、従来技術であるゼラチンを用いたマヨネーズ様調味料もゲル強度が極めて弱く、また、伸展性も全くなかった(比較例4)。更に、ゼラチンの添加量を増加させてシート状調味料を調製したが、伸展性は全くなく、取り扱いに欠けるシート状マヨネーズであった。
【0045】
実験例2 水分移行試験
実施例1で調製したシート状マヨネーズ様調味料を用いてサンドイッチを調製した。詳細には、実施例1のシート状マヨネーズ様調味料をパンに挟み、サンドイッチを調製した。48時間経過後、サンドイッチの様子を確認したところ、実施例1のシート状マヨネーズはパンにはさんでも、ほとんど水分移行が起こらなかった。一方、比較例として、実施例1で使用したデキストリン1を5%用いて半固形状のマヨネーズ様調味料(通常のマヨネーズと同程度の流動性を有する)を調製し、当該半固形状マヨネーズ様調味料をパンに塗布してサンドイッチを調製したが、水分移行が起こり、パンがしんなりとして、パン本来の食感を損なうサンドイッチとなってしまった。
【0046】
実験例3 耐熱性試験
実施例2で調製したシート状マヨネーズ様調味料を用いて耐熱性を試験した。詳細には、実施例2で調製したシート状マヨネーズをオーブンで100℃で10分間加熱し、加熱後の状態を確認した。一方、比較例としてゼラチンを用いた比較例4のシート状マヨネーズも同様にして耐熱性試験を行った。実施例2で調製したシート状マヨネーズは100℃で10分間加熱後もマヨネーズ様調味料が流れ出すこともなかったが(図6)、ゼラチンを用いた比較例4のシート状マヨネーズは加熱によりシート状マヨネーズが溶解し、元の形状を保つことができなかった(図7)。
【0047】
実施例8 ブロック状マヨネーズ様調味料の調製
表4の処方に従ってブロック状マヨネーズ様調味料を調製した。詳細には、20℃のイオン交換水にデキストリン及びキサンタンガムを添加してTKロボミキサーで攪拌し、砂糖、食塩及びグルタミン酸ナトリウムを加えて更に5分間攪拌した。卵黄を加えて3分間攪拌後、醸造酢、リンゴ酢、レモン透明果汁を加え、サラダ油を少しずつ加えた後、5分間攪拌し、コロイドミルにて乳化し、バットに充填し、5℃で冷蔵保存した。冷蔵一日後、バットから取り出し、賽の目状にカットすることにより、ブロック状マヨネーズ様調味料を調製した。
【0048】
【表4】

【0049】
得られたブロック状マヨネーズ様調味料は、3.5N/cmのゲル強度を有し、ナチュラルチーズのような硬さを有し、切断等の加工性にも優れたマヨネーズ様調味料であった。そのため、当該マヨネーズ様調味料をすりおろし器で摩り下ろすことにより従来のマヨネーズ様調味料にはなかった、粉マヨネーズ様調味料も提供することが可能となった。例えば、当該粉マヨネーズ様調味料は、例えばパスタやサラダの上にのせて食するなど、従来にないマヨネーズ様調味料の喫食方法を提供することができる。
【0050】
実施例9〜10 シート状マヨネーズ様調味料の調製(2)
表5の処方に従ってシート状マヨネーズ様調味料を調製した。詳細には、20℃のイオン交換水にデキストリン、キサンタンガム、加工澱粉及び必要に応じてLMペクチン、グァーガムを添加してTKロボミキサーで攪拌し、砂糖、食塩及びグルタミン酸ナトリウムを加えて更に5分間攪拌した。卵黄を加えて3分間攪拌後、醸造酢、リンゴ酢、レモン透明果汁を加え、サラダ油を少しずつ加えた後、5分間攪拌し、コロイドミルにて乳化し、容器(バット)に充填し、5℃で24時間冷蔵保存することによりシート状マヨネーズ様調味料(実施例9:ノンオイル、実施例10:油50%)を調製した。
【0051】
【表5】

【0052】
注10)馬鈴薯由来、DE3.5、粘度69mPa・sのデキストリンを使用した。
【0053】
実施例9及び10のシート状マヨネーズ様調味料は、使用量に応じた持ち運びが可能であり、サンドイッチ等の食品に添付可能なシート状マヨネーズ様調味料を調製することができた。更には、実施例9及び10のシート状マヨネーズは伸展性、柔軟性及び耐熱性にも優れ、各種食品に応用可能なシート状マヨネーズであった。
【0054】
実施例11 シート状ゴマだれ様調味料の調製
表6の処方に従ってシート状ゴマだれ様調味料を調製した。詳細には、80℃の水にデキストリン、キサンタンガム、加工澱粉、カラギナン及びゼラチンを添加し、10分間撹拌した。残りの原料を加えて更に3分間撹拌後、ホモミキサーにて均質化処理を行った(6000rpm、5分間)。90℃まで加熱後、バットに充填後、5℃で24時間冷蔵保存することによりシート状ゴマだれ様調味料を調製した。一方、比較として本発明のデキストリンの代わりにゼラチンを用いて、実施例11と同様にシート状ゴマだれ様調味料を調製した。結果を表7に示す。なお、伸展性及び柔軟性の評価は実験例1と同様の評価基準で行った。また、耐熱性の評価はシート状ゴマだれ様調味料を100℃で10分間加熱後、様子を確認した。
【0055】
【表6】

【0056】
注11)馬鈴薯由来、DE4.2、粘度50mPa・sのデキストリンを使用した。
【0057】
【表7】

【0058】
実施例11のシート状ゴマだれ様調味料は、シートの形状を保つ十分な保型性を有し、使用量に応じて手で持ち運び可能な固形調味料であり、更に柔軟性、伸展性に優れた固形状調味料であった。一方、デキストリンの代わりにゼラチンを用いたゴマだれ様調味料は、ゲル強度が弱く、シートの原形を留めることすらできなかった(比較例5)。
【産業上の利用可能性】
【0059】
シート状やブロック状に成形して使用量に応じた持ち運びが可能であり、サンドイッチやピザ等の各種食品に利用可能な、利便性及び作業性に優れた固形状調味料を提供できる。更に本発明では、室温での製造条件でも製造可能な固形状マヨネーズ様調味料等の固形状調味料であって、柔軟性及び伸展性にも優れた固形状調味料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリンを含有することを特徴とする、固形状調味料。
【請求項2】
20℃で測定した際のゲル強度が0.35N/cm2以上である、請求項1に記載の固形状調味料。
【請求項3】
更にカラギナン、キサンタンガム、グァーガム、ゼラチン及びα化澱粉からなる群から選ばれる1種以上を含有する、請求項1又は2に記載の固形状調味料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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