説明

固形状香料組成物

【課題】経時安定性、使用時の滑らかさといった使用性に優れ、香りの持続性、香り立ちのバランスの良好な固形状香料組成物を提供すること。
【解決手段】 次の成分(a)〜(d);(a)香料成分、(b)ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン樹脂、無水ケイ酸から選ばれる1種または2種以上の粉体であり、かつ吸油量が16ml/100g以上であり、平均粒子径が1〜30μmである粉体を0.1〜20質量%、(c)油ゲル化剤、(d)液体油、を含有することを特徴とする固形状香料組成物を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料と、特定の吸油量を有する粉体と、油ゲル化剤と液体油とを含有する固形状香料組成物に関し、詳しくは、経時安定性、使用時の滑らかさといった使用性にも優れ、香りの持続性、香り立ちのバランスの良好な固形状香料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、肌に塗布する香料組成物においては、香料とアルコールを主成分とする液状の香水、オーデコロンや、香料と粉体を主成分とするフレグランスパウダー、香料と油剤を主成分とする固形状の練り香水が知られている。固形化された練香水は、携帯に便利であるという特性を有し、皿流し込みタイプやスティックタイプのものが用いられている。また、固形状の香料組成物は、配合する香料成分と固形状にする油との相溶性が悪く、発汗し、経時安定性上問題のあるものや、油のべたつきがあり使用感の悪いものがあった。これらを解消するために固形状の香料組成物にポリメチルシルセスキオキサン等の球状シリコーン樹脂粉末を配合する技術(例えば、特許文献1、2参照)が知られている。また、香りの持続性向上のために、多孔質微粒子に香料を吸着させるだけでは持続性は得られないため、一旦香料を二酸化珪素やシェラック等の透明性物質に内包させ、さらに、多孔質シリカ等に担持させる技術(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−176639号公報
【特許文献2】特開平9−263525号公報
【特許文献3】特開2003−286196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、経時安定性を向上させるために、粉体を多く配合すると、粉っぽさが出て使用時の滑らかさが低下する場合があった。また、溶融充填成形時の流動性が悪くなり、表面の滑らかさがなくなる場合があった。また、あまり強く担持されると、香料組成物であるのに香り立ちが悪く、そのバランスも悪くなる場合があった。特に、シトラス系香料やグリーン系香料の香りの持続性や香り立ちのバランスを良くすることは困難であった。
このため、経時安定性に優れ、また、使用時の滑らかさといった使用性に優れ、さらには、香りの持続性、香り立ちのバランスの良好な固形状香料組成物開発が望まれてきた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記実情に鑑み、本発明者らは鋭意研究を行った結果、吸油量が16ml/100g以上であり、平均粒子径が1〜30μmの粉体を用いることにより経時安定性に優れ、また、使用時の滑らかさといった使用性に優れ、さらには、香りの持続性、香り立ちのバランスが良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は次の成分(a)〜(d);
(a)香料成分
(b)ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン樹脂、無水ケイ酸から選ばれる1種または2種以上の粉体であり、かつ吸油量が16ml/100g以上であり、平均粒子径が1〜30μmである粉体を0.1〜20質量%
(c)油ゲル化剤
(d)液体油
を含有することにより、経時安定性、使用時の滑らかさといった使用性にも優れ、香りの持続性、香り立ちのバランスの良好な固形状香料組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の固形状香料組成物は経時安定性、使用時の滑らかさといった使用性に優れ、香りの持続性、香り立ちのバランスの良好なものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる成分(a)の香料成分としては、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、天然香料、合成香料、またはこれらを組み合わせた調合香料等が挙げられ、目的に応じてこれらの1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
成分(a)の香料成分の香調としては、シトラス系香料成分、グリーン系香料成分、フルーティ系香料成分、フローラル系香料成分、ムスキー系香料成分、ウッディ系香料成分、スウィート系香料成分等が挙げられる。これらを更に発展させたシトラスグリーン系やグリーンハーバル系等の香料成分も挙げられる。
【0009】
成分(a)の香料成分がシトラス系香料成分の場合、使用される香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、リモネン、レモン油、オレンジ油、ビターオレンジ油、スイートオレンジ油、グレープフルーツ油、ベルガモット油、マンダリン油、ライム油、シトラール、n−オクタナール(アルデヒドC−8)、n−ノネナール(アルデヒドC−9)、デカナール(アルデヒドC−10)、ウンデカナール(アルデヒドC−11)、α−ダマスコン、β−ダマスコン、γ−ダマスコン、δ−ダマスコン、α−テルピネオール等が挙げられ、中でも、リモネン、レモン油、オレンジ油、グレープフルーツ油等が好ましい。目的に応じてこれらの1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0010】
成分(a)の香料成分がグリーン系香料成分の場合、使用される香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、シス−3−ヘキセノール、ガルバナム油、スターアニス油、セージ油、バイオレットリーフ油、ローズマリー油、バジル油、ラバンジン油、ラベンダー油、ローレル油、カシスベース345、酢酸スチラリル、酢酸シス−3−ヘキセニル、サリチル酸シス−3−ヘキセニル、5−メチル−3−ヘプタノンオキシム、ローズオキサイド等が挙げられ、中でも、シス−3−ヘキセノール、ガルバナム油が好ましい。目的に応じてこれらの1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0011】
成分(a)の香料成分がフルーティ系香料成分の場合、使用される香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、γ−ウンデカラクトン、α−ダマスコン、β−ダマスコン、γ−ダマスコン、δ−ダマスコン、γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、ラズベリーケトン等が挙げられる。目的に応じてこれらの1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0012】
成分(a)の香料成分がフローラル系香料成分の場合、使用される香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ローズ油、ジャスミンアブソリュート、リナロール、エチルリナロール、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、シクラメンアルデヒド、イランイラン油、カミツレ油、ゼラニウム油、タジェート油、ネロリ油、酢酸ベンジル、イソイースーパー、クマリン、ヘリオトロピン、オリス油、パチュリ油、α−アミルシンナミックアルデヒド、シトロネロール、ゲラニオール、ジヒドロジャスモン酸メチル(=へディオン)、ヒドロキシシトロネラール、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド(=リラール)、β−フェニルエチルアルコール、p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド(=リリアール)、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、メチルイソオイゲノール、メチルヨノン、α−ヨノン、β−ヨノン等が挙げられる。目的に応じてこれらの1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0013】
成分(a)の香料成分がムスキー系香料成分の場合、使用される香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、特に限定されるものではなく、エチレンブラシレート、アンブレットリド、インドール、11−オキサヘキサデカノリド(Musk R−1)、アンブレットシード油、オークモスアブソリュート、オリバナム油等が挙げられる。目的に応じてこれらの1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0014】
成分(a)の香料成分がウッディ系香料成分の場合、使用される香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、アンブロキサン、イソカンフィルシクロヘキサノール(=Sandela)、カシュメラン、グリサルバ、酢酸グアヤック、酢酸ベチベリル、サンタロール、サンダロール、セドロールメチルエーテル(=セドランバー)、バンガロール(=バクダノール)、アンブレットシード油、オークモスアブソリュート、オリバナム油、グアヤックウッド油、サンダルウッド油、セダーウッド油、ヒノキ油、ベチパー油等が挙げられる。目的に応じてこれらの1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0015】
成分(a)の香料成分がスウィート系香料成分の場合、使用される香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチルバニリン、エチルマルトール、バニリン、マルトール、ラズベリーケトン、オークモスアブソリュート、トンカビーンズアブソリュート、バルサムトルー、バルサムペルー、ベンゾイン等が挙げられる。目的に応じてこれらの1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0016】
成分(a)の香料成分としては、この中でも、香りの持続性や香り立ちのバランスを良好にすることが困難なシトラス系香料成分やグリーン系香料成分において顕著な効果が得られるため好ましい。更には、リモネンを含有しているシトラス系香料成分や、シス−3−ヘキセノールを含有しているグリーン系香料成分において効果が顕著に表れる。
【0017】
成分(a)の香料成分の含有量は、本発明の固形状香料組成物中3〜30質量%(以下、単に「%」と示す)が好ましく、更に5〜20%が好ましい。成分(a)の含有量が3%未満であると良好な香りの演出や香りの持続性が得られない場合があり、また30%を超えると、経時安定性を損なったり、塗布時の使用感が悪くなる場合がある。
【0018】
成分(b)の粉体は、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン樹脂、無水ケイ酸から選ばれる1種または2種以上の粉体であり、吸油量は16ml/100g以上であり、平均粒子径は1〜30μmのものである。形状は、球状、板状、針状、異形状、不定形状等下記の吸油量と平均粒径を持つものであれば特に限定されず、通常化粧料に用いられる粉体であれば使用することができるが、不定形や球形もしくは球形に近いコンペイ糖形状のものが好ましい。また、成分(b)の粉体はその1種または2種以上を用いることができる。
成分(b)の粉体は、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン樹脂、無水ケイ酸から選ばれるものであるが、シリコーン樹脂は、ポリメチルシルセスキオキサンやジメチルシリコーン架橋弾性体を微粒子化したものが挙げられる。この中でもポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0019】
本発明において吸油量は吸収量測定装置S410D(あさひ総研社製)により油を流動パラフィンとして測定した値である。前記吸油量が16ml/100g未満であると経時安定性が悪くなるため好ましくない。前記吸油量の上限値は、特に限定されないが、概ね、100ml/100g程度であり、16〜50ml/100gの範囲内であると、経時安定性、使用性、香りの持続性、香り立ちのバランスに特に優れた固形状香料組成物が得られるため好ましい。100ml/100gを超えると溶融充填成形時の流動性が悪くなり、表面の滑らかさがなくなる場合がある。
【0020】
本発明において平均粒子径は透過型電子顕微鏡(JEOL社製)を用いて測定した値である。すなわち、粒子100個について目視で粒子径を計測し、その平均の値である。前記平均粒子径は、1μm未満であると、伸び広がりが重くなり、30μmを超えると肌上でざらつきを感じるため好ましくない。
このような粉体として、例えば、ポリメタクリル酸メチル粉体(吸油量46.8ml/100g、平均粒子径10μm)、ポリエチレンテレフタレート(吸油量16.6ml/100g、平均粒子径7μm)、シリコーン樹脂(ポリメチルシルセスキオキサン)(吸油量16.1ml/100g、平均粒子径5μm)、無水ケイ酸(吸油量19.8ml/100g、平均粒子径12μm)を挙げる事ができる。
【0021】
本発明において成分(b)の粉体の含有量は、本発明の固形状香料組成物中0.1〜20%であり、0.5〜15%が好ましい。成分(b)の含有量が0.1%未満であると経時安定性が悪くなり、また20%を超えると、使用時の滑らかさが得られない。
【0022】
本発明に用いられる成分(c)の油ゲル化剤としては、通常化粧料に用いられるもので、油性成分を固化ないしゲル化できるものであれば特に限定されるものではないが、固形油や多糖脂肪酸エステルが挙げられる。固形油としては、炭化水素油、ロウ、硬化油、高級脂肪酸、樹脂、高級アルコール、シリコーンワックス等が使用できる。具体的には、例えば、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ミツロウ、モクロウ、ゲイロウ、ポリエチレンワックス、モンタンワックス、硬化ヒマシ油、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベへニン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ステアロキシ変性オルガノポリシロキサンからなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることができ、融点が35〜110℃である固形油は形状保持や経時安定性の点で好ましく、65〜90℃のものが特に好ましい。
【0023】
成分(c)の油ゲル化剤である多糖脂肪酸エステルは、特に限定されず、通常化粧料に用いられるものであればいずれのもの使用することができる。多糖とはデキストリン、イヌリン等が挙げられる。
また脂肪酸とはパルミチン酸、ステアリン酸など炭素数16〜18の高級脂肪酸が好ましい。多糖脂肪酸エステルとして例えば、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン等のデキストリン脂肪酸エステル、ステアリン酸イヌリン等のイヌリン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらを1種または2種以上を用いることができ、このうちパルミチン酸デキストリンが経時安定性や、使用性面から最も好ましい。市販品としては、例えば、レオパールKL2、レオパールMKL2、レオパールISK2(いずれも千葉製粉社製)等を用いることができる。
【0024】
成分(c)の油ゲル化剤の含有量は、本発明の固形状香料組成物中5〜35%が好ましく、更に10〜30%が好ましい。成分(c)の含有量がこの範囲であると、形状保持能や塗布時の使用感の点で好ましい。
【0025】
本発明に用いられる成分(d)の液体油は通常化粧料原料として許容されるものであれば特に制約なく使用することができ、動物油、植物油、合成油等の起源や不揮発性油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等を使用することができる。具体的には、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテンの炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ポリグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、トリオクタン酸グリセリル(トリ2−エチルへキサン酸グリセリル)、リンゴ酸ジイソステアリル、ホホバ油等のエステル類、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、液状ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類が挙げられる。
成分(d)の液体油の含有量は、本発明の固形状香料組成物中15〜70%が好ましく、更に20〜50%が好ましい。成分(c)の含有量がこの範囲であると、特に使用感の点で好ましい。
【0026】
本発明の固形状香料組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記必須成分以外の各種成分、例えば、成分(b)以外の粉体、界面活性剤、紫外線吸収剤、保湿剤、水性成分、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、水溶性高分子、皮膜形成剤、褪色防止剤、消泡剤などを各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0027】
本発明において成分(b)以外で、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに粉体を配合することにより、調色、塗布時の感触調整ができる。ここで用いる粉体としては、球状、板状、針状等の形状や煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、あるいは多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等を使用することがでる。具体的な粉体としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、スメクタイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆合成金雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、二酸化チタン被覆ガラス末等の光輝性粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末等の樹脂積層末のラメ剤、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等を例示することができる。なお、これら粉体は、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施してあっても良い。
【0028】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であれば特に制約はなく、非イオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が使用される。更に、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系等の紫外線吸収剤や、4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられ、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられる。
【0029】
更にまた、水性成分はモイスチャー効果を付与する目的で用いることができ、水及び水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。
また更に、酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等が、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等が、防腐剤としては、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等がそれぞれ挙げられる。
【0030】
本発明の固形状香料組成物とは、液状、半固形状、又は固形状の油剤や油溶性化合物である油性成分を連続相とする実質的に水を含有しない固形状のもので、練り香水、フレグランススティック等として使用することができる。
以下、実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
実施例1〜6及び比較例1〜4:固形状香料組成物(練り香水)
下記表1に示す組成の固形状香料組成物を下記の製法で調製し、経時安定性、使用感、香りについて下記の方法により評価した。その結果も併せて表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
*1:吸油量46.8ml/100g、平均粒子径10μm
*2:吸油量16.6ml/100g、平均粒子径7μm
*3:吸油量16.1ml/100g、平均粒子径5μm
*4:吸油量19.8ml/100g、平均粒子径12μm
*5:マツモトマイクロスフェアーM-101(松本油脂製薬社製)(吸油量14.5ml/100g、平均粒子径10μm)
*6:トスパール2000B(モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン社製)(吸油量10ml/100g、平均粒子径8μm)
*7:シス−3−ヘキセノール1%、ガルバナム油1%、ラベンダー油10%、ゲラニオール30%、リリアール15%、カシュメラン5%を含有するグリーンフローラルタイプの香料成分
【0034】
(製法)
A.成分(1)〜(10)を80℃に加熱し均一に混合する。
B.Aに(11)を添加して均一に混合する。
C.Bを減圧下にて脱泡後、80℃で容器に充填し冷却して練り香水を得た。
【0035】
(評価方法)
下記評価項目について各々下記方法により評価を行った。
イ.経時安定性
ロ.使用時の滑らかさ
ハ.香りの持続性
ニ.香り立ちのバランス
【0036】
(イ.経時安定性)
イの経時安定性について、前記実施例及び比較例の固形状香料組成物を40℃の恒温槽に入れて、1ヶ月後の外観の状態を肉眼にて観察し、調製時の状態との変化(表面への油浮き、表面の滑らかさ)の有無を判定した。
判定 : 評 価
◎ : 変化なし
○ : ほぼ変化なし
△ : やや変化あり
× : 著しく変化あり
【0037】
(ロ.使用時の滑らかさ)
ロの使用時の滑らかさについては、各試料について専門パネル20名により使用テストを行い、パネル各人に各試料を使用してもらい、「滑らかさ」について、下記評価基準に従って5段階評価し評点を付け、試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
(評価基準)
評価結果 :評点
非常に良好 :5点
良好 :4点
普通 :3点
やや不良 :2点
不良 :1点
判定基準:
評点の平均点 :評価
4.5以上 :◎
3.5以上4.5未満:○
1.5以上3.5未満:△
1.5未満 :×
【0038】
(ハ.香りの持続性、ニ.香り立ちのバランス)
各試料を、15cm×2cmの匂い紙に0.05gずつ塗布し、25℃に放置し、4時間後の香りについて香りの専門パネル7名により、香りの持続性、香り立ちのバランスについて、下記の各々の評価基準に従って5段階評価し評点を付け、試料ごとにパネル全員の評点合計から平均値を算出し、下記4段階の判定基準により判定した。尚、通常トップノートは約30分香りが持続し、ミドルノートは約2〜3時間香りが持続するため、4時間後の香りの評価を行いその持続性と、香り立ちのバランスを評価した。
【0039】
(ハ.香りの持続性)
(評価基準)
評価結果 :評点
非常に香り立ちがよい:5点
香り立ちがよい :4点
普通 :3点
香り立ちが悪い :2点
非常に香り立ちが悪い:1点
(判定基準)
評点の平均点 :評価
4.5以上 :◎
3.5以上4.5未満:○
1.5以上3.5未満:△
1.5未満 :×
【0040】
(ニ.香り立ちのバランス)
(評価基準)
評価結果 :評点
非常にバランスがよい:5点
バランスがよい :4点
普通 :3点
バランスが悪い :2点
非常にバランスが悪い:1点
判定基準:
評点の平均点 :評価
4.5以上 :◎
3.5以上4.5未満:○
1.5以上3.5未満:△
1.5未満 :×
【0041】
表1の結果から明らかなように、本発明に係わる実施例1〜6の練り香水は経時安定性および使用時の滑らかさといった使用感、香りの持続性、香り立ちのバランスが良好な特性を有していた。球状多孔質のポリメタクリル酸メチル粉体を用いた実施例1及び不定形のポリエチレンテレフタレートを用いた実施例2は特に優れていた。
これに対して成分(b)の吸油量が16ml/100g未満のポリメタクリル酸メチルを用いた比較例1では経時で表面に油浮きが見られ、香りの持続性に劣り、グリーン系の香調が極端に弱く、香り立ちのバランスが劣るものであった。また、成分(b)の吸油量が16ml/100g未満のポリメチルシルセスキオキサンを用いた比較例2では、経時で表面に油浮きが見られ、香りの持続性、香り立ちのバランスに劣るものであった。また、成分(b)を配合しない比較例3では経時で表面に油浮きが見られ、香りの持続性に劣り、グリーン系の香調、フローラル系の香調が弱く、香り立ちのバランスに劣るものであった。また成分(b)の配合量が過剰な比較例4は充填成形時の表面の滑らかさ、使用時の滑らかさに劣り、香り立ちのバランスも劣るものであった。
【0042】
実施例7〜11:固形状香料組成物(練り香水)
下記表2に示す組成の固形状香料組成物を下記の製法で調製し、経時安定性、使用感、香りについて実施例1〜6で使用した方法と同様に評価した。その結果も併せて表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
*8:レオパールKL2(千葉製粉社製)
【0045】
(製法)
A.成分(1)〜(6)を90℃に加熱し均一に混合する。
B.Aに(7)を添加して均一に混合する。
C.Bを減圧下にて脱泡後、80℃で容器に充填し冷却して練り香水を得た。
【0046】
表2の結果から明らかなように、成分(c)の油ゲル化剤が多糖脂肪酸エステルであるパルミチン酸デキストリンを用いた実施例7〜11の練り香水についても、経時安定性および使用時の滑らかさといった使用感、香りの持続性、香り立ちのバランスが良好な特性を有していた。
【0047】
実施例12:練り香水
(成分) (%)
1.エチレンプロピレンコポリマー(融点:90℃) 10
2.マイクロクリスタリンワックス(融点:78℃) 5
3.キャンデリラロウ(融点:70℃) 8
4.流動パラフィン 25
5.2−エチルへキサン酸セチル 30
6.ワセリン 9
7.ポリメタクリル酸メチル*1 3
8.香料成分(シトラスフローラルタイプ)*9 10
*9:リモネン、レモン油、オレンジ油、リナロール、シトロネロールの香料を主体とするシトラスフローラルタイプの香料成分
【0048】
(製法)
A.成分(1)〜(7)を95℃に加熱し、均一に混合する。
B.Aに(8)を添加して均一に混合する。
C.Bを減圧下にて脱泡後、90℃で容器に充填し冷却して練り香水を得た。
以上のようにして得られた練香水を、経時安定性、使用感、香りについて実施例1〜6で使用した方法と同様に評価した結果、経時安定性および使用感、香りの持続性、香り立ちのバランスに優れたものであった。
【0049】
実施例13:フレグランススティック
(成分) (%)
1.エチレンプロピレンコポリマー(融点:90℃) 12
2.セレシン(融点:87℃) 5
3.パラフィンワックス(融点:69℃) 5
4.ワセリン 5
5.トリイソステアリン酸ジグリセリル 30
6.流動パラフィン 23
7.ポリエチレンテレフタレート*2 10
8.香料成分(フルーティフローラルタイプ)*10 10
*10:γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、酢酸ベンジル、ヘディオンの香料を主体とするフルーティフローラルタイプの香料成分
【0050】
(製法)
A.成分(1)〜(7)を95℃に加熱し、均一に混合する。
B.Aに(8)を添加して均一に混合する。
C.Bを減圧下にて脱泡後、90℃で容器に充填し冷却してフレグランススティックを得た。
以上のようにして得られたフレグランススティックを、経時安定性、使用感、香りについて実施例1〜6で使用した方法と同様に評価した結果、経時安定性および使用感、香りの持続性、香り立ちのバランスに優れたものであった。
【0051】
実施例14:練り香水
(成分) (%)
1.ステアリン酸イヌリン*11 4.0
2.(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン*12 10.5
3.ジメチコン*13 10.0
4.デカメチルシクロペンタシロキサン 5.0
5.トリイソステアリン酸ジグリセリル 30.0
6.オリーブ油 5.0
7.無水ケイ酸*4 15.0
8.香料成分(ハーバルグリーンタイプ)*14 20.0
9.赤色226 0.5
*11:レオパールISK2(千葉製粉社製)
*12:レオパールTT2(千葉製粉社製)
*13:SH200C FLUID 6CS(東レ・ダウコーニング社製)
*14:シス−3−ヘキセノール、ラベンダー油、ローズマリー油、セージ油の香料を主体とするハーバルグリーンタイプの香料成分
【0052】
(製法)
A.成分(1)〜(7)を90℃に加熱し、均一に混合する。
B.Aに(8)、(9)を添加して均一に混合する。
C.Bを減圧下にて脱泡後、80℃で容器に充填し冷却して練り香水を得た。
以上のようにして得られた練香水を、経時安定性、使用感、香りについて実施例1〜6で使用した方法と同様に評価した結果、経時安定性および使用感、香りの持続性、香り立ちのバランスに優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(d);
(a)香料成分
(b)ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン樹脂、無水ケイ酸から選ばれる1種または2種以上の粉体であり、かつ吸油量が16ml/100g以上であり、平均粒子径が1〜30μmである粉体を0.1〜20質量%
(c)油ゲル化剤
(d)液体油
を含有することを特徴とする固形状香料組成物。
【請求項2】
成分(c)の油ゲル化剤が融点35〜110℃である固形油であることを特徴とする請求項1記載の固形状香料組成物。
【請求項3】
成分(c)の油ゲル化剤が多糖脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1記載の固形状香料組成物。
【請求項4】
成分(a)の香料成分がシトラス系香料成分及び/またはグリーン系香料成分を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固形状香料組成物。
【請求項5】
成分(a)の香料成分がリモネンを含有するシトラス系香料成分であることを特徴とする請求項4記載の固形状香料組成物。
【請求項6】
成分(a)の香料成分がシス−3−ヘキセノールを含有するグリーン系香料成分であることを特徴とする請求項4記載の固形状香料組成物。
【請求項7】
成分(a)香料成分の含有量が固形状香料組成物中3〜30質量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の固形状香料組成物。

【公開番号】特開2010−235746(P2010−235746A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84750(P2009−84750)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】