固形癌の再発予測のための試験方法および再発予防剤
【課題】固形癌、特に乳癌の初期ステージまたは再発の診断に有用な、癌幹細胞マーカー遺伝子、かかるマーカー遺伝子を利用した固形癌の初発または再発の診断ツールの提供、ならびにかかるマーカー遺伝子を分子標的とし、癌幹細胞を標的とした固形癌の初発または再発の予防または治療薬の提供。
【解決手段】固形癌の初発または再発を予測するための試験方法であって、被験対象から採取した生体試料における固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現レベルを、当該遺伝子の転写産物または翻訳産物を対象として測定する工程を含む方法、ならびに固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現または活性を抑制し得る物質を含む、固形癌の初発または再発の予防または治療剤。固形癌幹細胞マーカー遺伝子は、明細書中に定義した通りである。
【解決手段】固形癌の初発または再発を予測するための試験方法であって、被験対象から採取した生体試料における固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現レベルを、当該遺伝子の転写産物または翻訳産物を対象として測定する工程を含む方法、ならびに固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現または活性を抑制し得る物質を含む、固形癌の初発または再発の予防または治療剤。固形癌幹細胞マーカー遺伝子は、明細書中に定義した通りである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形癌、特に乳癌の再発予測のための試験方法および再発予防剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腫瘍は、バラエティーに富んだ生物学的特性をもった不均一な細胞集団の機能的階層に組織されていることが広く受け入れられており、蓄積した証拠は、不均一な腫瘍細胞のごく小さな割合である腫瘍開始細胞(TIC)または癌幹細胞が腫瘍においてその他の細胞よりも腫瘍形成を維持する能力を保有することを示唆している。TICは腫瘍が発生する組織中の正常な幹細胞と共通の特徴を有することが提唱されている。すなわち、TICは自己複製し、同時に、高分化した状態に達するまで強力に増殖する分化した娘細胞を産生する。他方、TICと正常幹細胞との間には明らかな相違点も存在する。すなわち、後者はホメオスタシスの密接な制御の中にあり、成人の組織においてそれを取り囲んで維持する微小環境である幹細胞ニッチ中で受動的に保護されている。しかしながら、前者は腫瘍形成に活発に寄与しているはずである。TICの概念は、癌生物学に大きなインパクトを与え、癌治療の再考察を喚起するものである。他方、TICがどのように腫瘍形成を促進させるかという分子メカニズムは不明のままである。
【0003】
幹細胞生物学の前進とともに、血液学的悪性腫瘍におけるTICは、10年前に最初に同定された。続いて、乳癌を含む多くの固形腫瘍がTIC集団を含むことが報告された。ヒト乳癌における細胞表面マーカーCD24-/lowCD44highの発現で特徴付けられる集団が、同じ腫瘍中で見出された大多数のCD24highCD44high癌細胞に比べてTICが高度に濃縮されていることが報告された(非特許文献1、2)。前記報告では、臨床サンプルに由来するlineage-CD24-/low CD44+細胞はCD24highCD44high細胞に比べてNOD/SCIDマウスで腫瘍形成能力が高く、生じた異種移植片は表面抗原の分布の観点から、原発腫瘍の不均一性を再現したことを論証している。
【0004】
原発乳癌組織または正常組織における他の集団と比較してCD24-/low CD44+細胞集団に焦点を合わせた遺伝子発現プロファイリングに関する2つの研究がある(非特許文献3、4)。前記研究は、悪い予後を予測すると思われるCD24-/lowCD44+細胞集団に由来する異なるシグネチャーを提案したが、一方の研究は、形質転換成長因子β(TGFβ)経路がこれらの細胞で活性化されているように思われることを示した。その後、TGFβは、正常乳腺上皮細胞と乳癌細胞の両方で、乳腺および幹様細胞で上皮間葉移行(EMT)を誘導することが報告された(非特許文献2)。他方、TGFβシグナル伝達が腫瘍形成において正の効果と負の効果を有することは良く知られているので、腫瘍形成を共同的に刺激するさらなるシグナル伝達が必要である。
【0005】
核因子カッパB(NF-κB)は転写因子複合体であり、通常、p50、p52、p65(RelA)、RelBおよびc-Relを含むヘテロダイマーである。NF-κBは、細胞質において、阻害タンパク質IκBと結合し、通常不活性である。腫瘍壊死因子(TNF)またはインターフェロン(IFN)等のシグナルで刺激されると、IκBがリン酸化され、次いで、ユビキチン化され、分解される。次いで、放出されたNF-κBが核に移行し、κB配列に結合し、炎症性サイトカイン等の種々の遺伝子の転写を促進させる。NF-κBは、炎症、血管新生、アポトーシスの抑制および腫瘍形成に関する役割を担っている(非特許文献5−7)。
【0006】
遺伝子セット濃縮解析(GSEA)は、遺伝子発現プロファイリングの最近開発された分析方法であり、発現レベルの何倍の変化を解析する個々の遺伝子解析に基づく結果に比べて、より生物学的に解釈可能で、正確かつ確固としていると認識されている(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Al-Hajj M, Wicha MS, Benito-Hernandez A, Morrison SJ, Clarke MF (2003) Prospective identification of tumorigenic breast cancer cells. Proc Natl Acad Sci U S A 100: 3983-3988.
【非特許文献2】Mani SA, Guo W, Liao MJ, Eaton EN, Ayyanan A, et al. (2008) The epithelial-mesenchymal transition generates cells with properties of stem cells. Cell 133: 704-715.
【非特許文献3】Shipitsin M, Campbell LL, Argani P, Weremowicz S, Bloushtain-Qimron N, et al. (2007) Molecular definition of breast tumor heterogeneity. Cancer Cell 11: 259-273.
【非特許文献4】Liu R, Wang X, Chen GY, Dalerba P, Gurney A, et al. (2007) The prognostic role of a gene signature from tumorigenic breast-cancer cells. N Engl J Med 356: 217-226.
【非特許文献5】Karin M, Cao Y, Greten FR, Li ZW (2002) NF-kappaB in cancer: from innocent bystander to major culprit. Nat Rev Cancer 2: 301-310.
【非特許文献6】Tabruyn SP, Griffioen AW (2008) NF-kappa B: a new player in angiostatic therapy. Angiogenesis 11: 101-106.
【非特許文献7】Huber MA, Beug H, Wirth T (2004) Epithelial-mesenchymal transition: NF-kappaB takes center stage. Cell Cycle 3: 1477-1480.
【非特許文献8】Subramanian A, Tamayo P, Mootha VK, Mukherjee S, Ebert BL, et al. (2005) Gene set enrichment analysis: a knowledge-based approach for interpreting genome-wide expression profiles. Proc Natl Acad Sci U S A 102: 15545-15550.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、固形癌、特に乳癌の初期ステージまたは再発の診断に有用な、癌幹細胞マーカー遺伝子を提供し、かかるマーカー遺伝子を利用した固形癌の初発または再発の診断ツールなどを提供することにある。また、本発明の目的は、かかるマーカー遺伝子を分子標的とし、癌幹細胞を標的とした固形癌の初発または再発の予防または治療薬などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、臨床検体ではなく乳癌細胞株からTIC様画分を見出し、TICにおいてシグナル伝達経路を解釈可能に分析するため、マイクロアレイ解析とGSEAを利用した。さらに、本発明者らは、乳癌細胞株を利用して、高感度の定量的インビボイメージングにより腫瘍形成を追跡するためのマウスモデルを確立させた。その結果、TIC様細胞で濃縮される多数の新規経路を抽出することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕 固形癌の初発または再発を予測するための試験方法であって、被験対象から採取した生体試料における固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現レベルを、当該遺伝子の転写産物または翻訳産物を対象として測定する工程を含み、当該遺伝子が
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
からなる群より選ばれる2〜169の遺伝子である、方法。
〔2〕 固形癌を保有する患者に対する癌治療の効果を測定するための試験方法であって、当該患者から採取した生体試料における固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現レベルを、当該遺伝子の転写産物または翻訳産物を対象として測定する工程を含み、当該遺伝子が
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
からなる群より選ばれる2〜169の遺伝子である、方法。
〔3〕 生体試料が血漿、血清、リンパ液、骨髄液、唾液、精液または尿である、前記〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕 固形癌が乳癌である、前記〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の方法。
〔5〕 固形癌の初発もしくは再発を予測または固形癌に対する治療効果を測定するための診断薬であって、下記固形癌幹細胞マーカー遺伝子:
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
からなる群より選ばれる2〜169の遺伝子の発現レベルを検出するための試薬を含有する診断薬。
〔6〕 固形癌が乳癌である、前記〔5〕に記載の診断薬。
〔7〕 試薬が固形癌幹細胞マーカー遺伝子の転写産物または翻訳産物に対する、プライマー、核酸プローブおよび抗体から選ばれる、前記〔5〕または〔6〕に記載の診断薬。
〔8〕 固体支持体および当該支持体の表面に固定された核酸プローブを含む、固形癌の初発もしくは再発または固形癌に対する治療効果の診断用アレイであって、当該核酸プローブが以下の固形癌幹細胞マーカー遺伝子:
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
から選ばれる2〜169の遺伝子にそれぞれハイブリダイズするプローブである、アレイ。
〔9〕 前記核酸プローブが約20から80塩基長である、前記〔8〕に記載のアレイ。
〔10〕 固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現または活性を抑制し得る物質を含む、固形癌の初発または再発の予防または治療剤であって、当該遺伝子が
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
からなる群より選ばれる、予防または治療剤。
〔11〕 固形癌が乳癌である、前記〔10〕に記載の予防または治療剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明の試験方法によれば、固形癌の発症または再発原因とされる固形癌幹細胞を識別可能なマーカー遺伝子を指標とすることにより、固形癌の初発または再発を事前に予測することが可能となり、固形癌の発症もしくは再発の予防、早期発見または早期治療に貢献することができる。本発明の固形癌の予防または治療剤によれば、固形癌幹細胞に対する分子標的を有効成分と含有し、正常細胞に悪影響を及ぼすことなく、固形癌の根治的治療が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、乳癌細胞株におけるCD24とCD44の発現パターンを示す。乳癌細胞株(HCC70,HCC1954,MCF7,BT474,MDA-MB231,AU565,SK-BR-3およびT47D)におけるCD24およびCD44の発現パターンをFACSにより解析した。FITC標識抗CD24抗体およびPE標識抗CD44抗体を解析に用いた。ゲートは、各細胞株に対応するアイソタイプコントロールに基づいた。
【図2】図2は、NOD-SCIDマウスにおけるCD24-/lowCD44+細胞のルシフェラーゼ活性を示す。ルシフェラーゼ発現HCC70、HCC1954およびMCF7細胞をFACSによりソーティングした。全集団のうちCD24-/lowCD44+に属する10%細胞をTIC集団(CD24-)として選択し、全集団のうちCD24+ CD44+に属する10%細胞を対照集団(CD24+)として選択した。A)〜D) 示された数のTIC集団細胞(マウスの左側)または対照集団細胞(マウスの右側)をMatrigelと混合し、NOD-SCIDマウスの乳腺に移植した。4週間後(上部パネル)に、IVISTMによりルシフェラーゼ活性を捕獲した。移植部位のルシフェラーゼ活性を定量した(A, C, Dではn=6、Bではn=4)(下部グラフ)。結果を平均+SDで示した。*p<0.05 (student t-test)。
【図3】図3は、HCC1954由来腫瘍の免疫組織化学的解析を示す。A),B) CD24-/low CD44+細胞(TIC)および CD24+ CD44+ 細胞(対照)由来の腫瘍のH&E-染色切片。C),D)TICおよび対照におけるCK14発現の免疫組織化学的解析。E),F) TICおよび対照におけるCK18発現の免疫組織化学的解析。陽性を茶色の染色で可視化した。スケールバーは100μmである。
【図4A】図4Aは、GSEA解析を示す。HCC70、HCC1954およびMCF7のTIC集団と対照集団とを比較して、DNAマイクロアレイ解析を行った。各細胞株の全集団の1%細胞(CD24-/lowCD44+に属する)をTIC集団としてCD24の最低の発現レベルに基づいて精製し、各細胞株の全集団の10%細胞(CD24+CD44+に属する)を対照集団(CD24+)として精製した。マイクロアレイデータを、3細胞株間でTIC/対照集団発現比の幾何平均でランクし、GSEAを適用した。TIC または対照集団で濃縮された遺伝子を含む代表的経路が抽出されたGSEAが示された。オリジナルのGSEAデータセットにおいて、オンコジーンRas経路をRAS_ONCOGENIC_SIGNATUREとして示し、TGFβ経路をTGFBETA_EARLY_UPとして示し、IFN応答をIFN_ANY_UPとして示し、TNF応答をSANA_TNFA_ENDOTHELIAL_UPとして示した。
【図4B】図4Bは、定量RT-PCRを示す。HCC1954細胞からソーティングした細胞集団を用いて、VEGFA、IL8、TLR1、SDF2L1、CCL5およびCD24(対照)をqRT-PCRにより調べた。データ(平均±SD)は6個の実験の代表である。* p<0.05
【図4C】図4Cは、HCC1954細胞からソーティングしたCD24- CD44+およびCD24+CD44+集団におけるNF-κB活性の定量結果を示す。データ(平均±SD)は3個の実験の代表である。* p<0.05
【図5】図5は、NF-κB阻害剤または抗VEGF抗体での処置による腫瘍形成の効果を示す。A)〜C) NF-κB阻害剤DHMEQまたはアバスチン(bevasizumab;抗VEGF抗体)で処置したHCC1954細胞のCD24-/lowCD44+およびCD24+ CD44+集団の腫瘍の増殖をルシフェラーゼ活性により測定した(n=8)。ルシフェラーゼ活性の平均をラインで示した。* p<0.05
【図6】図6は、TICにおけるNF-κBが関与するシグナル伝達経路のモデルを示す。TICが癌関連線維芽細胞(CAF)様に挙動し、NF-κBが主要なエフェクターとして作用してサイトカインおよびケモカインを含む多数の分泌タンパク質を誘導する癌幹細胞ニッチを活発に産生して維持するという興味深い可能性を示す。GSEAで抽出された遺伝子の中で、有意に高いレベルのmRNA発現または活性を有する分子(NF-κB、VEGF)を青色で示し、その他は赤色で示した。黒色の分子(IL8、SDF2L1、CCL5、TLR1)は、有意に高レベルのmRNA発現が確認された。
【図7】図7は、レンチウイルスベクターのトランスフェクション効率を示す。HCC70、HCC1954およびMCF7細胞をHIV-EF1α-d2VenusおよびHIV-EF1α-Luciferaseで感染させた。形質導入効率は、HIV-EF1α-d2Venus感染細胞を用いてフローサイトメーター(中間パネル)および緑色蛍光(上部パネル)で評価した。HCC70、HCC1954およびMCF7をCD24-FITCおよびCD44-PEで染色し、HIV-EF1α-Luciferaseの感染前後でフローサイトメーターで解析した(下部パネル)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(一般的定義)
「ポリヌクレオチド」という用語は、単数形で用いられても複数形で用いられても、ポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドであって、未修飾のRNAもしくはDNAまたは修飾されたRNAもしくはDNAを意味する。したがって、例えば、本明細書で定義されているポリヌクレオチドには、1本鎖および2本鎖のDNA、1本鎖および2本鎖の領域を含むDNA、1本鎖および2本鎖のRNA、1本鎖および2本鎖の領域を含むRNA、1本鎖もしくは2本鎖であるか、または、1本鎖および2本鎖の領域を含むDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子などがあるが、これらに限定されるものではない。さらに、本発明において「ポリヌクレオチド」は、RNAまたはDNA、またはRNAとDNAの両方を含む三重鎖領域をも包含する。このような領域にある鎖は、同一の分子または異なった分子に由来するものでもよい。該領域は、1つ以上の該分子のすべてを含んでいてもよいが、より一般的には、いくつかの分子の一領域のみを含む。三重鎖領域の分子の1つは、しばしばオリゴヌクレオチドである。「ポリヌクレオチド」という用語は、具体的にはcDNAをも含む。さらに、イノシンなどの例外的塩基、または、トリチウム化された塩基などの修飾塩基を有するDNAまたはRNAも、「ポリヌクレオチド」の範囲に含まれる。一般的に、「ポリヌクレオチド」という用語は、未修飾ポリヌクレオチドの化学的、酵素的および/または代謝的に修飾された形態のすべてを包含するとともに、ウイルスならびに単細胞および多細胞などの細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学形態も包含する。
【0014】
「示差的に発現される遺伝子」、「示差的遺伝子発現」ならびに、単に「発現遺伝子」および「遺伝子発現」という用語は、互換的に使用され、固形癌、具体的には乳癌などの病気を患う被験者において、その発現が、正常または対照となる被験者における発現と比較して、より高いレベルかより低いレベルに活性化される遺伝子を意味する。この用語は、同じ病気の異なる段階で、その発現がより高いレベルまたはより低いレベルに活性化される遺伝子も包含する。また、示差的に発現される遺伝子は、核酸レベルまたは蛋白質レベルで活性化または抑制されてもよく、あるいは、異なったポリペプチド産物をもたらす選択的スプライシングを受けることもあると理解される。このような違いは、例えば、ポリペプチドのmRNAレベル、表面発現、分泌またはその他の分配における変化によって証明することができる。示差的遺伝子発現は、2つ以上の遺伝子またはそれらの遺伝子産物の間で発現を比較すること、または、2つ以上の遺伝子またはそれらの遺伝子産物の間における発現比率を比較すること、または、さらに、同じ遺伝子が異なってプロセッシングされた2つの産物であって、正常な被験者と、具体的には癌という病気を患う被験者の間で異なっているか、または、同じ病気のさまざまな段階で異なっている産物を比較することを包含しうる。示差的発現は、例えば、正常および病気の細胞間における、または、異なった病気が発症したか、異なった病気の段階にある細胞間における、遺伝子またはその発現産物の時間的または細胞内での発現パターンの定量的、および定性的な違いを含む。本発明の目的にとって、正常な被験者と癌に罹患した被験者において、または、被験者の癌発症の様々な段階において、ある遺伝子の発現に約2倍以上、好ましくは約4倍以上、より好ましくは約6倍以上、最も好ましくは約10倍以上の違いがあるときに、「示差的遺伝子発現」が存在するとみなされる。
【0015】
RNA転写産物について「過剰発現」という用語は、標本中で決定されたRNAのすべてまたは特定の参照用mRNAセットであるかもしれない参照用mRNAのレベルに対して正規化することによって決定された転写産物のレベルを意味するために用いられる。
【0016】
「遺伝子増幅」という用語は、特定の細胞または細胞株において遺伝子または遺伝子断片の複数コピーを形成させる処理を意味する。複製領域(増幅されたDNAの鎖)は、しばしば「単位複製配列(アンプリコン)」と呼ばれる。通常、産生するmRNAの量、すなわち遺伝子発現のレベルも、発現遺伝子のコピー数に比例して増加する。
【0017】
「癌」または「腫瘍」という用語は、文脈上腫瘍が良性腫瘍を意味しない限り、互換的に使用される。
【0018】
(詳細な説明)
本発明は、固形癌の初発または再発を予測するための試験方法(I)を提供する。本発明の試験方法(I)は、被験対象から採取した生体試料における固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現レベルを、当該遺伝子の転写産物または翻訳産物を対象として測定する工程を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、固形癌を保有する患者に対する癌治療の効果を測定するための試験方法(II)を提供する。本発明の試験方法(II)は、固形癌保有患者からから採取した生体試料における固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現レベルを、当該遺伝子の転写産物または翻訳産物を対象として測定する工程を含むことを特徴とする。
本発明の試験方法(I)および(II)(以下、まとめて、「本発明の試験方法」と省略する場合がある)について説明する。
【0020】
本発明において、固形癌とは血液癌を除く癌を意味し、肉腫および癌腫が包含される。具体的には、繊維肉腫、粘膜肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌、食道癌、大腸癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢腺癌、骨髄癌、気管支原性癌、腎細胞癌、尿管癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮内膜癌、精巣癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、骨髄芽種、頭蓋咽頭癌、喉頭癌、舌癌、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、腹膜播腫、奇形腫、神経芽細胞腫、髄芽腫および網膜芽細胞腫などがあげられる。本発明においては、乳癌を対象とすることが好ましい。
【0021】
本発明において、固形癌の初発とは、上記した癌のいずれかで初めて発症した、または発症が見込まれる状態をいい、固形癌の再発とは、初発固形癌の治療後または根治後に再び発症した、または発症が見込まれる状態をいう。再発する組織または再発が見込まれる組織は、初発組織に限定されるものではなく、別の組織であってもよい。したがって、再発という概念には転移も含まれる。
【0022】
本発明の試験方法(II)において、固形癌の治療とは、外科的手術、放射線療法、抗癌剤投与を始めとしたあらゆる治療を包含する。特に、抗癌剤は再発防止のために投与されることが多く、投与効果の判定や投与完了を判断し難いものであるから、かかる判断が必要な場合に本発明の試験方法(II)を用いることが好ましい。また、後述する実施例に記載されたヒト固形癌幹細胞を移植した癌の再発モデルマウスを利用して、当該モデルマウスに抗癌剤を投与してその効果を事前に予測することも望ましい。
【0023】
本発明において、固形癌幹細胞とは、以下のi)〜iii)の能力を有する細胞をいう。
i)自己複製能を保有する。自己複製能とは、分裂した2つの娘細胞のどちらか1つまたは両方の細胞が、細胞系譜上、親細胞と同等の能力および分化程度を保持している細胞を産出できる能力を示す。
ii)腫瘍を構成する複数種の癌細胞へ分化できる。癌幹細胞から分化した複数種の癌細胞は、正常幹細胞と同様に、細胞系譜上、癌幹細胞を起点とする階層性を有する。癌幹細胞より、段階的に多種癌細胞が産出されることにより多様な特徴を有する腫瘍が形成される。
iii)高い細胞増殖活性を保有する。癌幹細胞は、自己複製および分化を繰り返すことで癌細胞集団の過剰な増殖を可能にする。
【0024】
癌幹細胞としては、各種固形癌由来幹細胞および各種固形癌細胞株由来幹細胞があげられ、好ましくは、CD24-/low CD44+細胞集団に濃縮されている細胞であり、より好ましくは、乳癌由来幹細胞および各種固形癌細胞株由来幹細胞(CD24-/low CD44+細胞集団に濃縮されている細胞)である。
【0025】
本発明が標的とする固形癌幹細胞マーカー遺伝子とは、CD24+ CD44+細胞集団に比べてCD24-/low CD44+細胞集団で示差的に発現される遺伝子群の中から本発明者らが独自の視点に基づいて選別した、固形癌幹細胞特異的マーカーであり、下記固形癌幹細胞マーカー遺伝子(以下、単に「マーカー遺伝子」または「マーカー」と省略する場合がある)(1)から選ばれる2〜169の遺伝子から構成される。マーカー遺伝子(1)は、好ましくは3以上、5以上、10以上、15以上、20以上または25以上の遺伝子から構成される。
【0026】
マーカー遺伝子(1):
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1。
【0027】
前記固形癌幹細胞マーカー遺伝子を構成する個々の遺伝子は公知であり、その塩基配列およびアミノ酸配列も既知である。これら169遺伝子のリストを表1に示す。
【0028】
【表1−1】
【0029】
【表1−2】
【0030】
【表1−3】
【0031】
本発明の試験方法(I)における被験対象は、ヒトを始めとする哺乳動物であれば特に限定されるものではないが、固形癌の初発または再発が疑われるヒトが好ましい。
【0032】
本発明の試験方法が測定対象とする生体試料は、哺乳動物、好ましくはヒトから採取可能なものであれば特に限定されるものではなく、固形癌組織(癌細胞を含む)、リンパ節(固形癌が転移したリンパ節を含む)などの固形試料、全血、血漿、血清、リンパ液、骨髄液、唾液、精液、尿などの体液試料があげられる。
【0033】
本発明の試験方法が全血、血漿、血清、リンパ液、骨髄液、唾液、精液または尿などの体液試料を測定する場合、上記マーカー遺伝子(1)の中から、その転写産物または翻訳産物が体液中に放出され、場合によっては体外に排出される(尿中に移行して排出される)ものを標的とすることが好ましい。かかるマーカー遺伝子としては、例えば、下記マーカー遺伝子(2)から選ばれる2〜65の遺伝子があげられるが、これに限定されるものではない。この実施態様において、マーカー遺伝子(2)は、より好ましくは3以上、5以上、10以上、15以上、20以上または25以上の遺伝子から構成される。マーカー遺伝子(2)の転写産物または翻訳産物(好ましくは翻訳産物)は、体液中に放出され、場合によっては体外に排出される(尿中に移行して排出される)ことが予想されるので、上記体液試料を用いた迅速かつ簡便な試験方法が可能となり、それにより、固形癌の初発または再発の迅速な診断が可能となる。
【0034】
マーカー遺伝子(2):
SNAIL、IL8、CX3CL1、ADAM10、MMP15、CCL5、IGF1R、WNT5A、IL20RA、CSTF3、IL13RA、ADAM12、ADAM9、TNFSF10、VEGF、IGFBP2、TNFSF13、SDF2L1、EGF、SDFR1、TGFA、TBRG1、BMP7、IGSF8、HDGF、PDGFB、TGFB、TLR1、CCL22、IL18、BMP5、TGFBR1、MMP14、TIMP3、EPHB1、CXCR4、CXCL12、ADAMTS19、IL7、MMP24、ITCH、IL1B、IGFBP6、FGF11、FGF13、IL1R1、CXCL16、TIMP21、EPHB4、LITAF、ADAMTS10、ING1、VEGFB、TGFB114、IL27RA、IGFBP4、FGF9、PLGF、TIMP1、MMP7、TNFSF14、CKLFSF7、TGFBRAP1、NOTCH2およびEPHB3。
【0035】
本発明の試験方法において、マーカー遺伝子の発現レベルは、下記本発明の固形癌の初発もしくは再発を予測または固形癌に対する治療効果を測定するための診断薬を用いて、自体公知の方法により測定することができる。本発明の診断薬およびマーカー遺伝子の発現レベルの測定方法は、後述する。
【0036】
本発明の試験方法(I)において、生体試料中のマーカー遺伝子の2〜169種類の発現レベルを測定した結果、それらの2種以上の発現レベルが基準と比べて有意に高い場合、当該試料中または試料の採取元の生体内に固形癌幹細胞の存在が疑われる。ここで、基準としては、健常人の平均値あるいは被験者の癌治療後など比較対照となる値が用いられる。この場合、被験対象において固形癌の初発または再発が予想される。固形癌の初発または再発の有無を、さらに別の検査によって確認することが好ましい。
【0037】
本発明の試験方法(II)において、生体試料中のマーカー遺伝子の2〜169種類の発現レベルを測定した結果、それらの2種以上の発現レベルが基準と比べて有意に高い場合、当該試料中または試料の採取元の生体内に固形癌幹細胞の存在が疑われる。ここで、基準としては、健常人の平均値あるいは被験者の癌治療後など比較対照となる値が用いられる。この場合、固形癌患者において癌の治療効果が完全に奏していないことが考えられる。逆に、前記2種以上の発現レベルが基準以下(例えば、実質的にゼロ)の場合、当該試料中に固形癌幹細胞が存在しないと判断される。この場合、癌治療によって固形癌幹細胞が消失し、癌治療が奏功していると考えられる。さらに、その他の検査と組み合わせて、固形癌の治療効果を多面的に確認することが好ましい。
【0038】
本発明の試験方法においては、さらに下記工程を含んでいてもよい:
(a)固形癌患者から採取した細胞における固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現レベルを、当該マーカー遺伝子の転写産物または翻訳産物を対象として、当該細胞におけるすべての転写産物もしくは発現産物の発現レベル、または転写産物もしくは発現産物の参照用セットの発現レベルに対して正規化して決定する工程;
(b)工程(a)で得られたデータを統計解析に供する工程;および
(c)工程(b)で得られた解析結果に基づいて、当該患者の再発の可能性が高いかまたは低いかを決定する工程、あるいは、当該患者の治療効果の適否を決定する工程。
【0039】
本発明の診断薬は、前記マーカー遺伝子(1)から選ばれる2〜169の遺伝子の発現レベルを検出するための試薬を含有する。
【0040】
前記試薬は、マーカー遺伝子の発現レベルを検出可能な物質または手段であればいずれを選んでもよいが、好適には、マーカー遺伝子の転写産物または翻訳産物に対する、プライマー、核酸プローブおよび抗体からなる群より選ぶことができる。
【0041】
本発明の診断薬に含まれるプライマーは、マーカー遺伝子の増幅及び検出を可能とする限り特に限定されない。例えば、プライマーのサイズは、少なくとも約12塩基長以上、好ましくは約15〜100塩基長、より好ましくは約16〜50塩基長、さらにより好ましくは約18〜35塩基長である。また、遺伝子増幅法の種類に応じて必要とされるプライマー数が異なるため、本発明の診断薬に含まれるプライマー数は特に限定されないが、本発明の診断薬は、1種類のマーカー遺伝子に対して2以上のプライマーを含んでもよい。2以上のプライマーは、予め混合されていても、混合されていなくてもよい。このようなプライマーは、自体公知の方法により作製することができる。プライマーの設計方法については後述する。
【0042】
本発明の診断薬に含まれる核酸プローブは、マーカー遺伝子の転写産物の検出を可能とする限り特に限定されない。核酸プローブはDNA、RNA、修飾核酸またはそれらのキメラ分子などであり得るが、安定性、簡便性等を考慮するとDNAが好ましい。核酸プローブはまた、1本鎖または2本鎖のいずれでもよい。核酸プローブのサイズは、マーカー遺伝子の転写産物に特異的にハイブリダイズし得る限り特に限定されないが、例えば約15または16塩基長以上、好ましくは約15〜1000塩基長、より好ましくは約20〜500塩基長、さらにより好ましくは約20〜80塩基長である。核酸プローブは、核酸アレイのように基板上に固定された形態で提供されてもよい。このような核酸プローブは、自体公知の方法により作製することができる。
【0043】
本発明の診断薬に含まれる抗体は、マーカー遺伝子の翻訳産物に特異的に結合し得る抗体である限り特に限定されない。例えば、翻訳産物に対する抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもよい。抗体はまた、抗体のフラグメント(例、Fab、F(ab’)2)、組換え抗体(例、scFv)であってもよい。抗体は、プレート等の基板上に固定された形態で提供されてもよい。抗体は、自体公知の方法により作製することができる。
【0044】
例えば、ポリクローナル抗体は、マーカー遺伝子の翻訳産物あるいはその部分ペプチド(必要に応じて、ウシ血清アルブミン、KLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)等のキャリアタンパク質に架橋した複合体とすることもできる)を抗原として、市販のアジュバント(例、完全または不完全フロイントアジュバント)とともに、動物の皮下あるいは腹腔内に2〜3週間おきに2〜4回程度投与し(部分採血した血清の抗体価を公知の抗原抗体反応により測定し、その上昇を確認しておく)、最終免疫から約3〜約10日後に全血を採取して抗血清を精製することにより取得できる。抗原を投与する動物としては、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、モルモット、ハムスターなどの哺乳動物があげられる。
【0045】
また、モノクローナル抗体は、細胞融合法(例、渡邊武、細胞融合法の原理とモノクローナル抗体の作成、谷内昭、高橋利忠編、「モノクローナル抗体とがん―基礎と臨床―」、第2-14頁、サイエンスフォーラム出版、1985年)により作製することができる。例えば、マウスにマーカー遺伝子の翻訳産物等を市販のアジュバントと共に2〜4回皮下あるいは腹腔内に投与し、最終投与の約3日後に脾臓あるいはリンパ節を採取し、白血球を採取する。この白血球と骨髄腫細胞(例、NS-1, P3X63Ag8など)を細胞融合して前記翻訳産物に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。細胞融合はPEG法[J. Immunol. Methods,81(2): 223-228 (1985)]でも電圧パルス法[Hybridoma, 7(6): 627-633 (1988)]であってもよい。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、周知のEIAまたはRIA法等を用いて抗原と特異的に結合する抗体を、培養上清中から検出することにより選択することができる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養は、インビトロ、またはマウスもしくはラット、好ましくはマウス腹水中等のインビボで行うことができ、抗体はそれぞれハイブリドーマの培養上清及び動物の腹水から取得することができる。
【0046】
本発明の診断薬は、前記試薬に加え、マーカー遺伝子の転写産物または翻訳産物と試薬との複合体を測定する手段を含む、キットの形態で提供されていてもよい。この場合、キットに含まれる試薬および測定手段は、互いに隔離された形態、例えば、異なる容器に格納された形態で提供され得る。測定用手段は、試薬の種類に応じて、標識用物質で標識された検出物質であってもよい。標識用物質としては、例えば、FITC、FAM等の蛍光物質、ルミノール、ルシフェリン、ルシゲニン等の発光物質、3H、14C、32P、35S、123I等の放射性同位体、ビオチン、ストレプトアビジン等の親和性物質などがあげられる。
【0047】
本発明の診断薬は、試薬および測定用手段に加え、さらなる構成要素を含むキットの形態で提供されてもよい。より詳細には、本発明の診断薬がキットの形態で提供される場合、試薬および測定用手段の種類に応じたさらなる構成要素を含み得る。例えば、試薬がプライマーである場合、キットは、逆転写酵素、核酸抽出液または核酸抽出装置をさらに含み得る。試薬が核酸プローブである場合、キットは、核酸抽出液または核酸抽出装置をさらに含んでいてもよい。測定用手段が抗体である場合、キットは、蛋白質抽出液または蛋白質抽出装置をさらに含んでいてもよい。
【0048】
また、本発明の診断薬がキットの形態で提供される場合、被験対象から生体試料を採取し得る手段をさらに含み得る。かかる採取手段は、特に限定されないが、例えば、生検針等の生検器具、採血器具があげられる。
【0049】
本発明の診断薬は、アレイの形態で提供されることが好ましく、核酸アレイ(マイクロアレイと同義)、抗体アレイが例示される。
【0050】
好ましい核酸アレイは、固体支持体と当該表面に固定された、マーカー遺伝子(1)から選ばれる2〜169の遺伝子にそれぞれハイブリダイズする核酸プローブとを含む、固形癌の初発もしくは再発の予測または固形癌に対する治療効果を測定するための診断用アレイである。
【0051】
前記固体支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、メンブレン(例えば、ナイロン膜)、ガラス、プラスチック、金属などがあげられる。本発明における核酸アレイの形態としては、当該分野で周知の形態を用いることができ、例えば、支持体上で核酸が直接合成されるアレイ(いわゆるアフィメトリクス方式)、支持体上に核酸が固定化されるアレイ(いわゆるスタンフォード方式)、繊維型アレイ、電気化学的アレイ(ECA)等があげられる(例、特開2005−102694号公報参照)。
【0052】
本発明の試験方法に適用可能な、遺伝子発現解析方法を以下に説明する。
【0053】
(1.遺伝子発現プロファイリング)
遺伝子発現プロファイリングの方法には、ポリヌクレオチド解析に基づく方法、ポリヌクレオチドの配列決定に基づく方法、およびプロテオミクスによる方法などがある。最も一般的に用いられる方法で、サンプル中のmRNA発現を定量するために当技術分野において知られている方法には、ノーザンブロッティングおよびインサイチュハイブリダイゼーション((Parker & Barnes,Methods in Molecular Biology 106:247−283(1999));RNaseプロテクション・アッセイ法(Hod,Biotechniques 13:852−854(1992));および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT−PCR)などのPCR法(Weis et al.,Trends in Genetics 8:263−264(1992))などがある。あるいは、DNA二重鎖、RNA二重鎖、およびDNA−RNAハイブリッドの二重鎖またはDNA−蛋白質二重鎖などの特定の二重鎖を識別できる抗体を用いることもできる。配列決定による遺伝子発現解析法の代表的な方法には、遺伝子発現連続解析法(SAGE)、および大規模並列シグネチャー配列決定法(massively parallel signature sequencing:MPSS)による遺伝子発現解析法などがある。
【0054】
(2.PCRによる遺伝子発現プロファイリング法)
(a 逆転写酵素PCR(RT−PCR))
上記技術の中で、最も感度が高く、最も融通がきく定量法はRT−PCRであって、異なったサンプル集団、正常組織と癌組織、薬物治療の有無などにおけるmRNAレベルを比較したり、遺伝子発現のパターンの特徴を調べたり、密接に関係したmRNAを区別したり、また、RNAの構造を解析するために利用できる。
【0055】
最初の工程は、生体試料からRNAを単離することである。出発物質は、一般的には、ヒトの癌または癌細胞株、およびそれぞれに対応する正常な組織または細胞株から単離された全RNAである。このように、RNAは、被験対象から、あるいは、健康なドナーから採取した生体試料から単離することができる。RNAを抽出するための一般的な方法が、当技術分野において周知されており、Ausubel et al.,Current Protocols of Molecular Biology,John Wiley and Sons (1997)など、分子生物学の標準的な教科書に開示されている。具体的には、Qiagenなどの製造業者から入手した精製キット、緩衝液セット、およびプロテアーゼを用いて、製造業者の指示に従ってRNA単離を行うことができる。例えば、培養されている細胞の全RNAは、QiagenのRNeasyミニカラムを用いて単離することができる。これ以外の市販されているRNA単離用キットには、登録商標MasterPure全DNAおよびRNA精製キット(登録商標EPICENTRE、Madison、WI)、およびパラフィンブロックRNA単離用キット(Ambion,Inc.)などがある。組織サンプルからの全RNAは、RNA Stat−60(Tel−Test)を用いて単離することができる。生体試料から調製されたRNAは、例えば、塩化セシウム濃度勾配遠心法によって精製してもよい。
【0056】
RNAは、PCRの鋳型としては利用できないため、RT−PCRによる遺伝子発現プロファイリングの第一の工程は、RNA鋳型を逆転写させてcDNAとした後、PCR反応でそれを指数的に増幅させることである。2つの最も広く使用されている逆転写酵素は、トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV−RT)およびモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV−RT)である。逆転写工程は、一般的には、環境および発現プロファイリングの目的に応じて、特異的プライマー、ランダムなヘキサマー、またはオリゴ−dTプライマーを用いて開始される。例えば、GeneAmp RNA PCRキット(Perkin Elmer,CA,USA)を用いて製造業者の指示に従って、抽出されたRNAを逆転写することができる。そして、得られたcDNAを、次のPCR反応における鋳型として用いることができる。
【0057】
PCRの工程では、さまざまな熱安定的DNA依存型DNAポリメラーゼを使用するが、一般的には、5’−3’ヌクレアーゼ活性をもつが、3’−5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性をもたないTaqDNAポリメラーゼが用いられる。すなわち、登録商標TaqMan PCRは、一般的には、TaqポリメラーゼまたはTthポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性を利用して、その標的単位複製配列に結合しているハイブリダイゼーション用プローブを加水分解するが、同じ5’ヌクレアーゼ活性をもつ酵素を使用することもできる。2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCR反応に特有の単位複製配列を生成させる。この2つのプライマーの間に存在する塩基配列を検出するために別のオリゴヌクレオチド、すなわちプローブを設計する。このプローブは、Taq DNAポリメラーゼ酵素によって伸長することはできず、レポーター用の蛍光色素およびクエンチャー用の蛍光色素で標識されている。これら2種類の色素がプローブ上にあって互いに近くにあるときには、レポーター用色素からレーザーによって発生する光は、クエンチャー用の色素で消光されている。増幅反応の過程で、Taq DNAポリメラーゼ酵素が、鋳型依存的にプローブを切断する。その結果得られたプローブ断片は溶液中に解離して、放出されたレポーター用色素からのシグナルが、第2のフルオロフォアの消光作用から解放される。レポーター用色素の一分子は、新しい分子が合成される度に放出されるため、消光されないレポーター用色素の検出に基づいて、データを定量的に解釈することが可能となる。
【0058】
登録商標TaqMan RT−PCRは、例えば、登録商標ABI PRISM 7700配列検出キット(Perkin−Elmer−Applied Biosystems, Foster City,CA,USA)、またはLightcycler(Roche Molecular Biochemicals,Mannheim,Germany)など市販の装置を用いて行うことができる。好適な実施態様において、5’ヌクレアーゼ法は、登録商標ABI PRISM 7700配列検出キットなどのリアルタイム定量用PCR装置上で行う。この装置は、サーモサイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)カメラおよびコンピュータからなる。この装置は、サーモサイクラー上の96ウェルのフォーマットの中にあるサンプルを増幅する。増幅過程で、レーザーによって発生させた蛍光シグナルを、96ウェルすべてについて、光ファイバーケーブルを通じてリアルタイムで集めて、CCDで検出する。この装置は、器具を作動させるため、およびデータを解析するためのソフトウエアを含む。
【0059】
5’ヌクレアーゼアッセイのデータは、まず、Ctすなわち限界サイクル(threshold cycle)として表現される。上記したように、蛍光値は、サイクル毎に記録され、増幅反応のその時点までに増幅された産物の量を示す。蛍光シグナルが統計的に有意であると最初に記録された時点が限界サイクル(Ct)である。
【0060】
誤差とサンプル対サンプルにおける変動作用を最小にするために、通常、内部標準を用いてRT−PCRを実施する。理想的な内部標準は、さまざまな組織の中で一定のレベルで発現され、実験処理によって影響されないものである。遺伝子発現のパターンを正規化するためにもっとも頻繁に使用されるRNAは、ハウスキーピング遺伝子であるグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)およびb−アクチンのmRNAである。
【0061】
RT−PCR技術のより新しい変法は、リアルタイム定量的PCRであって、二重標識された蛍光発生プローブ(例、登録商標Taqmanプローブ)によってPCR産物の蓄積を決定する。リアルタイムPCRは、各標的配列に対する内部競合分子を正規化するために利用する定量的な競合PCRにも、サンプル中に含まれる正規化用遺伝子、またはRT−PCR用のハウスキーピング遺伝子を用いる定量的な比較PCRにも適合する。更なる詳細については、例えば、Held et al.,Genome Research 6:986−994(1996)を参照されたい。
【0062】
(b.マスアレイ装置)
Sequenom Inc.(San Diego,CA)によって開発されたマスアレイによる遺伝子発現プロファイリング法において、RNAを単離し逆転写した後、得られたcDNAを、一塩基を除くすべての位置で標的となるcDNA領域に一致する合成DNA分子(競合分子)で固定して、内部標準として使用する。このcDNA/競合分子の混合液をPCRで増幅してから、エビ由来アルカリホスファターゼ(SAP)酵素によるPCR後処理を行ない、その結果、残ったヌクレオチドを脱リン酸化する。アルカリホスファターゼを不活性化させた後、競合分子およびcDNAのPCR産物にプライマー伸長処理を行って、競合分子およびcDNAに由来するPCR産物に対し異なった質量シグナルを生じさせる。これらの生成物は、精製された後、マトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF MS)による解析に必要な成分を予め搭載しているチップアレイに分注される。そして、作成された質量スペクトルのピーク領域の比率を解析することによって反応液中に存在するcDNAを定量する。更なる詳細については、例えば、Ding and Cantor,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:3059−3064(2003)を参照されたい。
【0063】
(c.その他のPCR法)
さらなるPCRによる技術には、例えば、ディファレンシャルディスプレイ法(Liang and Pardee,Science 257:967−971(1992));増幅断片長多型法(iAFLP)(Kawamoto et al.,Genome Res.12:1305−1312(1999));登録商標ビーズアレイ技術(Illumina,San Diego,CA;Oliphant et al.,Discovery of Markers for Disease(Supplement to Biotechniques),June 2002;Ferguson et al.,Analytical Chemistry 72:5618(2000));遺伝子発現の迅速アッセイ法において、市販されているLuminex100LabMAP装置と複数に色分けされたミクロスフェア(Luminex Corp.,Austin,TX)を用いた遺伝子発現検出用ビーズアレイ(BADGE)(Yang et al.,Genome Res.11:1888−1898(2001));および高カバー率遺伝子発現プロフィール(HiCEP)解析法(Fukumura et al.,Nucl.Acids.Res.31(16)e94(2003))などがある。
【0064】
(3.マイクロアレイ)
示差的遺伝子発現は、マイクロアレイ技術を用いても同定または確認することができる。この方法においては、目的とするポリヌクレオチド配列(cDNAおよびオリゴヌクレオチドなど)をマイクロチップ基板上にプレートするか、整列させる。そして、整列させた配列を、目的とする細胞または組織由来の特異的DNAプローブとハイブリダイズさせる。RT−PCRと同様に、RNAの由来源は、生体試料から単離した全RNAである。
【0065】
マイクロアレイ技術の具体的な実施態様において、cDNAクローンのPCR増幅された挿入配列を高密度で基板に乗せる。目的とする組織から抽出されたRNAの逆転写によって蛍光標識を取り込むことにより、蛍光標識されたcDNAを作製することができる。チップに適用された標識cDNAは、アレイ上のDNAスポットに特異性をもってハイブリダイズする。非特異的結合を除去するための高厳密性洗浄の後、共焦点レーザー顕微鏡、またはCCDカメラなど、別の検出法によってチップを走査する。各アレイ上成分のハイブリダイゼーションを定量すると、対応するmRNAの豊富さを見積もることが可能になる。二色蛍光法によって、2種類のRNA由来源から作成され、別々に標識されたcDNAを対毎にアレイにハイブリダイズさせる。こうして、これら2種類の由来源からの各特定遺伝子に対応する転写産物の相対的な豊富さが同時に決定される。ハイブリダイゼーションを小規模化させたことによって、多数の遺伝子の発現パターンの簡便で迅速な評価が利用可能になる。このような方法は、細胞当り数コピーしか発現されない希少な転写産物を検出するのに必要とされる感度をもつことが示されており、少なくとも約2倍の発現レベルの違いを再現性をもって検出することが示されている(Schena et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(2):106−149(1996)。また、本発明においては、一色蛍光法によって検出することも可能である。マイクロアレイ解析法は、製造業者の指示に従って、Affymetrix GeneChip技術、Agilent Technologiesのマイクロアレイ技術またはIncyteのマイクロアレイ技術を用いるなどして、市販されている装置によって実施することができる。
【0066】
(4.遺伝子発現連続解析法(SAGE))
遺伝子発現連続解析法(SAGE)は、各転写産物に対するハイブリダイゼーション・プローブを用意する必要なしに、多数の遺伝子転写産物を同時かつ定量的に解析できる方法である。まず、短い配列タグ(約10〜14塩基対)を各転写産物内部のユニークな位置から得る場合には、各転写産物を個別に同定するのに十分な情報を含むタグを作成する。そして、多数の転写産物を一緒に連結させて、長い連続した分子を形成させると、配列決定することができ、多数のタグの同一性を同時に明らかにすることができる。転写産物の集団の発現パターンを、各タグの量を決定し、各タグに対応する遺伝子を同定することによって定量的に評価することができる。さらなる詳細については、例えば、Velculescu et al.,Science 270:484−487 (1995);およびVelculescu et al.,Cell 88:243−51(1997)を参照されたい。
【0067】
(5.大規模並列シグネチャー配列決定法(MPSS))
この方法は、Brenner et al.,Nature Biotechnology 18:630−634(2000)に記載されているが、ゲルによらないシグネチャー配列決定法を、個別の直径5μmのマイクロビーズ上の何百万もの鋳型のインビトロにおけるクローニングと組み合わせる配列決定法である。まず、インビトロ・クローニングによって、DNA鋳型のマイクロビーズライブラリーを構築する。その後、フロー・セルにおいて高密度(一般的には3×106マイクロビーズ/cm2よりも大きい)で、鋳型を含むマイクロビーズの平らなアレイを組み立てる。各マイクロビーズ上のクローニングされた鋳型の遊離末端を、DNA断片の分離を必要としない蛍光によるシグネチャー配列決定法を用いて同時に解析する。
【0068】
(6.免疫組織化学法)
免疫組織化学法も、本発明のマーカー遺伝子の発現レベルを検出するのに適している。すなわち、各マーカー遺伝子産物に対して特異的な抗体を用いて発現を検出する。これらの抗体は、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチン、またはホースラディッシュ・ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどのハプテン標識によって抗体そのものを直接標識して検出することができる。あるいは、非標識一次抗体を、抗血清、ポリクローナル抗血清、または一次抗体に特異的なモノクローナル抗体を含む、標識された二次抗体とともに用いる。免疫組織化学法のプロトコールおよびキットは、当技術分野において周知されていて市販されている。
【0069】
(7.プロテオミクス)
「プロテオミクス」という用語は、一定の時点でサンプル(例、組織、生物、または細胞培養物)の中に存在する蛋白質の全部と定義されている。とりわけ、プロテオミクスは、あるサンプルにおける蛋白質発現の全体的な変化を調べること(「発現プロテオミクス」とも呼ばれる)を含む。プロテオミクスは、一般的に以下の工程を含む:(1)2−Dゲル電気泳動(2−D PAGE)によるサンプル中の各蛋白質の分離、(2)このゲルから回収された各蛋白質の同定、例えば、質量分析またはN−末端配列決定法、および(3)バイオインフォマティクスを用いたデータ解析。プロテオミクス法は、他の遺伝子発現プロファイリング法の有用な補助法であり、本発明のマーカー遺伝子の産物を検出するために単独または他の方法と組み合わせて使用することができる。
【0070】
本発明は、本発明の試験方法および診断薬を適用することにより、生体内に存在する固形癌幹細胞を固形癌が初発または再発する前に検出して、発症を予測することが可能である。あるいは、固形癌の発症を初期のステージで検出して癌患者の早期治療に導くことも可能である。さらに、癌患者に対する治療効果を固形癌幹細胞の存否を指標にして評価することも可能である。
【0071】
また、本発明は、固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現または当該遺伝子の翻訳産物の活性を抑制し得る物質を含む、固形癌の初発または再発の予防または治療剤を提供する。
【0072】
固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現を抑制し得る物質としては、例えば、アンチセンス核酸(例、DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、あるいはそれらのキメラ分子)、リボザイム、RNAi誘導性核酸(細胞内に導入されることによりRNAi効果を誘導し得るポリヌクレオチド、好ましくはRNA:例、siRNA)、並びにそれらの発現ベクターがあげられる。
【0073】
固形癌幹細胞マーカー遺伝子の翻訳産物の活性を抑制し得る物質としては、例えば、抗体(例、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体)、ドミナントネガティブ変異体、アプタマー、並びにそれらの発現ベクターがあげられる。当該物質は、各マーカーに直接または間接に作用する阻害物質であってもよく、NF-κBの阻害剤DHMEQなどが例示される。
【0074】
本発明の剤に有効成分として含有する抗体は、キメラ抗体(chimeric antibody)、ヒト化抗体(humanized antibody)、ヒト型抗体(human antibody)が好ましく、ヒト化抗体およびヒト型抗体がより好ましい。キメラ抗体は、例えば「実験医学(臨時増刊号), Vol.6, No.10, 1988」、特公平3-73280号公報等を、ヒト化抗体は、例えば特表平4-506458号公報、特開昭62-296890号公報等を、ヒト抗体は、例えば「Nature Genetics, Vol.15, p.146-156, 1997」、「Nature Genetics, Vol.7, p.13-21, 1994」、特表平4-504365号公報、国際出願公開WO94/25585号公報、「日経サイエンス、6月号、第40〜第50頁、1995年」、「Nature, Vol.368, p.856-859, 1994」、特表平6-500233号公報等を参考にそれぞれ作製することができる。
【0075】
ドミナントネガティブ変異体は、固形癌幹細胞マーカー遺伝子の各翻訳産物に対する変異の導入によりその活性が低減したものである。ドミナントネガティブ変異体は、天然の翻訳産物と競合することで間接的にその機能を阻害することができる。変異としては、例えば、機能性部位における、当該部位が担う機能の低下をもたらすようなアミノ酸の変異(例、1以上のアミノ酸の欠失、置換、付加)があげられる。
【0076】
本発明の剤が発現ベクターを有効成分とする場合、当該発現ベクターは、上記タンパク質をコードするオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドが、投与対象である生体の細胞内でプロモーター活性を発揮し得るプロモーターに機能的に連結されていなければならない。ここで、発現ベクターが含み得るプロモーターは、その制御下にある因子の発現を可能とする限り特に限定されず、因子の種類により適宜選択され得るが、例えば、polIIIプロモーター(例、tRNAプロモーター、U6プロモーター、H1プロモーター)、哺乳動物用プロモーター(例、CMVプロモーター、CAGプロモーター、SV40プロモーター)、EF1αプロモーターなどがあげられる。また、発現ベクターは、好ましくは核酸分子をコードするオリゴ(ポリ)ヌクレオチドの下流に転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含む。
【0077】
発現ベクターとして使用される基本骨格のベクターは、プラスミド又はウイルスベクターであり得る。特に、ヒト等の哺乳動物への投与に好適なベクターとしては、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、センダイウイルス、レンチウイルス等のウイルスベクターがあげられる。
【0078】
本発明の剤は、固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現または当該遺伝子の翻訳産物の活性を抑制し得る物質に加え、任意の担体、例えば医薬上許容され得る担体を含むことができる。医薬上許容され得る担体としては、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ナトリウム−グリコール−スターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑剤、クエン酸、メントール、グリシルリシン・アンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水、オレンジジュース等の希釈剤、カカオ脂、ポリエチレングリコール、白灯油等のベースワックスなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0079】
経口投与に好適な製剤は、水、生理食塩水のような希釈液に有効量の物質を溶解させた液剤、有効量の物質を固体や顆粒として含んでいるカプセル剤、サッシェ剤又は錠剤、適当な分散媒中に有効量の物質を懸濁させた懸濁液剤、有効量の物質を溶解させた溶液を適当な分散媒中に分散させ乳化させた乳剤、あるいは散剤、顆粒剤等である。
【0080】
非経口的な投与(例、静脈内注射、皮下注射、筋肉注射、局所注入など)に好適な製剤としては、水性および非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。当該製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、有効成分および医薬上許容され得る担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解又は懸濁すればよい状態で保存することもできる。
【0081】
本発明の剤の投与量は、有効成分の活性や種類、投与様式(例、経口、非経口)、病気の重篤度、投与対象となる動物種、投与対象の薬物受容性、体重、年齢等によって異なり一概に云えないが、通常、成人1日あたり有効成分量として約0.001mg〜約5.0gである。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0083】
細胞培養
乳癌細胞株HCC70、HCC1954、MCF7、SK-BR-3、AU-565、BT-474、T-47DおよびMDA-MB-231は、American Type Culture Collection (ATCC)から購入した。細胞は、製造業者の指示通りに培養した。
【0084】
FACS
細胞をCD24-FITC,CD44-PE抗体(BD Pharmingen)で染色した後、FACS VantageSE (BD Bioscience)によりソーティングまたは解析し、Propidiumiodide (Sigma)を用いて死細胞を除去した。データは、FlowJo 7.2.2により解析した。
【0085】
レンチウイルスベクターの構築
ホタルルシフェラーゼまたはd2Venus(黄色蛍光タンパク質の改良版)(Nat Biotechnol, 20: 87-90 (2002))(A. Miyawaki博士から供与、RIKEN, Wako, Japan)をコードする遺伝子を有し、エロンゲーションファクター1-アルファ(EF1α)プロモーターから発現する第3世代自己不活化レンチウイルストランスファーベクタープラスミドを、H. Miyoshi博士(RIKEN, Tsukuba, Japan)から供与されたコンストラクトを用いて、標準的な分子生物学的技術(Science, 283: 682-686 (1999))により調製した。また、これらのベクターは、セントラルポリプリントラックおよびウッドチャック肝炎ウイルスポストレギュラトリーエレメントも含んでいた。ウイルスの上清は、パッケージングプラスミド(pMDLg/p.RRE)、HIV rev発現プラスミド(pRSV-rev)を用いて293T細胞の一過性トランスフェクションにより調製し、水疱性口内炎ウイルスG (VSV.G)タンパク質(pMD.G)の偽型であった(Gene Ther, 10: 1446-1457 (2003))。高力価のウイルスストックは超高速遠心分離により調製した。これらのベクター(HIV-EF1a-Luciferase, HIV-EF1a-d2Venus)の機能的力価は、リアルタイムPCR法(DNA力価)を用いるHeLa細胞の感染により決定した(Gene Ther, Proc Natl Acad Sci U S A 102: 15545-15550 9: 1155-1162 (2002))。本実験で使用するすべてのMOI(multiplicity of infection)値は、DNA力価から計算した。
【0086】
レンチウイルスベクターでの細胞の形質導入
HCC70、HCC1954およびMCF7 細胞をペレット化し、1.5-ml Eppendorf チューブ内でMOI 10 のウイルス上清とインキュベートした。5% CO2下、37℃で2時間インキュベートした後、インビボ実験で使用するまで細胞を培養した。HIV-EF1α-d2Venusを形質導入効率の確認に使用したので、HIV-EF1α-LuciferaseおよびHIV-EF1α-d2Venusを別々のチューブ内で同時に感染させた。3回よりも多い継代の後、細胞をFACS解析のために使用するか、異種移植片として使用した。
【0087】
異種移植
6週齢雌性NOD/SICDマウスをイソフルラン(Abott Japan)で麻酔し、0.72mg /ペレット/ 60 日放出β-Estradiol(E2)ペレット(Innovative research of America)を首の後ろに皮下移植した(MCF7移植の場合のみ)。ソーティングした1x102〜3x104細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)-(-)/Matrigel(BD Biosciences)と1:1の容量で100μl混合液中に懸濁し、乳腺に注入した。デヒドロキシメチルエポキシキノマイシン(DHMEQ)を0.5%クロロメチルセルロースに懸濁し、12mg/kgを含む100μlを、週3回腹腔内注射により投与した。アバスチン(Chugai Pharmaceutical)を生理食塩水で希釈し、2週間毎に5mg/kgを投与した。対照群は同容量の溶媒を注入した。すべての処置は、腫瘍細胞移植後2日目に開始した。
【0088】
IVISTM
マウスを、麻酔条件下、150mg/kgのルシフェリン(Promega)のPBS(-)溶液を腹腔内注射し、ルシフェリン注入5分後にIVISTMイメージングシステム(Xenogen)によりイメージを記録した。バイオルミネッセンスイメージをLivingimage (Xenogen)により定量した。IVISTMによる観察を、注射直後から4週目まで週に1回続けた。DHMEQまたはAvastinTM処置においては、32日目まで週に2回ルシフェラーゼ活性により腫瘍の増殖をモニターし、担体投与群(対照)との比較を行った。
【0089】
組織化学的解析
異種移植した細胞由来の腫瘍を、10%中和緩衝ホルマリン(NBF)で固定し、パラフィンに包埋し、ヘマトキシリン-エオジン(HE)で染色した。免疫組織化学的アッセイは、Ventana HX System Benchmark (Ventana Medical Systems, Tucson, AZ)を用いて、ホルマリン固定しパラフィン包埋した切片で行った。抗CK14(Abcam)またはCK18(Abcam)抗体は、それぞれ1:100または1:200希釈で用いた。
【0090】
マイクロアレイ解析
HCC70、HCC1954またはMCF7細胞株の全集団の1%の細胞(CD24-/lowCD44+に属する)をCD24の最低発現レベルに基づいて精製し、各細胞株の全集団の10%の細胞(CD24+CD44+に属する)を対照集団(CD24+)として精製した。TIC集団としてCD24-/low CD44+に属する、全集団の1%細胞を使用した場合と10%細胞を使用した場合について、腫瘍形成に有意差はなかった。マイクロアレイ解析を既報に従って行った(Clin Cancer Res, 13: 5703-5709 (2007))。要約すると、Trizol(Invitrogen)を用いて、製造業者の指示書に従って試料から全RNAを単離した。6個の試料を、Affimetrix high-density oligonucleotide array Human Genome U133 Plus 2.0で解析した。出力されたイメージをMAS5アルゴリズムでプロセシングし、標的強度100に包括的にスケールした。CD24-/lowCD44+集団とCD24+ CD44+集団との間の差に基づく遺伝子シグネチャーを同定するために、GSEAを行った(Proc Natl Acad Sci U S A, 102: 15545-15550 (2005))。すべてのプローブセットを各群発現値の幾何平均の比で前もってランクし、次に、この順序付けられたプローブセットリストをGSEAインプットとして使用した。詳細なGSEAセッティングパラメーターは、以下の通りである。順列の数は2500であり、小さなサンプルサイズの問題を回避するために、順列の型がgene_setに適するように設定される。
【0091】
定量RT-PCR
全RNAをIsogen(Nippon Gene)を用いて製造業者のプロトコールに従って単離した。1μgの全RNAを、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems)により逆転写した。定量RT-PCRを、Step ONE plus(Applied Biosystems)により40サイクル内で行った。用いたプローブは、beta-Actin(Hs99999903_m1)、VEGFA(Hs00900054_m1)、IL8(Hs00174103_m1)、TLR1(Hs00413978_m1)、SDF2L1(Hs00222786_m1)、CCL5(Hs00174575_m1)およびCD24(Hs00273561_s1)に対するTaqmanプローブであった。定量は、標準曲線に基づいて行った。
【0092】
NF-κB活性の定量
核抽出物を、Nuclear Extract Kit(Active Motif)を用いて、製造業者のプロトコールに従って調製した。要約すると、CD24-/lowCD44+集団および CD24+CD44+集団をHCC1954細胞のバルクからソーティングし、核抽出物を単離した。NF-κB p65活性は、TransAM NF-κB p65 Transcription Factor Assay kit(Active Motif)を用いて、製造業者のプロトコールに従って測定した。各集団の核抽出物を4セット調製し、20μgの核抽出物をp65NF-κB活性アッセイに使用した。
【0093】
(結果)
乳癌細胞株におけるTIC集団
種々の型の乳癌細胞株にCD24-/low CD44+細胞集団が存在するか否かを調べるため、8個の乳癌細胞株におけるこれらの表面マーカーの発現をFACSにより解析した(図1A)。各細胞株は、CD24およびCD44の様々な発現レベルを有することがわかった。これらの中で、HCC70、HCC1954、MCF7およびMDA-MB-231細胞は相対的に高いパーセンテージのCD44+細胞集団を有し、一方、BT-474、AU-565、SK-BR-3およびT47-D細胞はCD44の低発現レベルを示した。TIC集団は初期ステージの乳癌組織の大多数で小さい集団として残存することが予想されるので、CD24-/lowCD44+集団および対照としてCD24+CD44+ 集団の小集団を得ることができるHCC70、HCC1954およびMCF7細胞を選択した。
【0094】
乳癌細胞株におけるCD24-/lowCD44+細胞集団の腫瘍形成能
これまで、TICを同定するための究極の判断基準は、インビボの腫瘍形成能アッセイである(Cancer Res, 66: 9339-9344 (2006))。免疫不全マウスとして通常使用されるNOD/SCIDマウスにおけるTICの腫瘍形成能は、触診可能な腫瘍の数を計数して腫瘍の直径を測定することにより調べられてきた。定量的結果の質を改善するために、インビボバイオルミネッセンスイメージング(IVISTM)を利用して腫瘍の増殖を測定した。最初に、ルシフェラーゼまたはd2Venus(黄色蛍光タンパク質の改良版)をコードするcDNAを含むレンチウイルスベクターで細胞を形質導入した。形質導入効率を、FACSを用いてd2Venusの発現レベルにより測定した。図7に示すように、各細胞株で高形質導入効率が得られ、HCC70、HCC1954およびMCF7細胞について、それぞれ、66.63%、92.60%および99.29%であった。次に、ルシフェラーゼ発現レンチウイルスベクターをこれらの細胞に形質導入した。ルシフェラーゼ発現レンチウイルスベクターの形質導入に対してd2Venusと同様のレベルのMOIを用いたので、同様のレベルのルシフェラーゼの発現が各細胞株(HCC70-Luc、HCC1954-LucまたはMCF7-Luc)で得られたと仮定する。これらの細胞株は、TICが濃縮されたと考えられるイメージングシステムであり、CD24+CD44+集団は対照として使用した。次いで、これらの細胞をNOD/SCIDマウスの乳腺に移植し、腫瘍の増殖をIVISTMを用いてルシフェラーゼ活性を定量することにより測定した。CD24-/lowCD44+集団中の細胞を左側に移植し、CD24+CD44+集団中の細胞を右側に移植した。両集団の1万個の細胞のHCC1954-LucおよびMCF7-Lucならびに3x104個の細胞のHCC70-Lucをそれぞれ移植した(図2A、C,D)。4週間後、ルシフェラーゼ活性の解析により、HCC1954-LucおよびMCF7-LucのCD24-/lowCD44+集団中の細胞が対照集団に比べて有意に大きな腫瘍を形成した(p<0.05)ことが示された。HCC70-LucのCD24-/lowCD44+集団中の細胞に由来する腫瘍サイズの平均は、有意差が示されなかったが、対照のものよりも高かった。
【0095】
さらに、1x102個のHCC1954-Lucの両集団を移植し、CD24-/lowCD44+集団に由来する腫瘍は非常に迅速に増殖し、4週間後、CD24-/low CD44+集団のみしか腫瘍を形成しなかった(n=6)(図2B)。これらの結果は、乳癌細胞株におけるCD24-/lowCD44+集団は対照集団に比べてより高い腫瘍形成能を有することを示唆する。したがって、乳癌細胞株におけるCD24-/lowCD44+ 集団中の細胞はTIC様に挙動すると思われる。対照集団よりもCD24-/low CD44+細胞集団のより高い腫瘍形成能は、HCC1954-Luc細胞で最も明確であり、これらの細胞を用いてさらなる解析を行うことを決定した。
【0096】
HCC1954由来の腫瘍の組織化学的解析
1x104細胞の各集団を移植した場合の各集団におけるHCC1954-Luc細胞由来の腫瘍の組織学を調べた。ヘマトキシリン-エオジン(HE)染色により、CD24-/lowCD44+細胞に由来する腫瘍はストローマ成分に関連して、様々なモルフォロジーを有する浸潤パターンを独占的に示したことが明らかになった(図3A)。一方、対照細胞由来の腫瘍は、ストローマ成分に関連して、浸潤パターンと管状形成に分化したパターンとの両方から構成されていた(図3B)。ストローマ成分の量は、対照細胞のものに比べてCD24-/lowCD44+細胞に由来する腫瘍で多かった。組織学の分化パターンが対照由来の腫瘍でのみ観察されたという事実は、分化した腫瘍は非-TIC細胞から生じ、TIC細胞から生じたのではないことを示唆する。
【0097】
次に、サイトケラチンマーカーに対する免疫染色により、HCC1954-Luc細胞由来の腫瘍の細胞系譜および分化状態を評価した。CD24-/lowCD44+細胞由来の浸潤病変は、筋上皮細胞マーカーサイトケラチン(CK)-14に対してほとんど陽性であった(図3C)が、対照的に、内腔マーカーCK18に対しては陽性が少なかった(図3E)。他方、対照細胞由来の浸潤病変部は筋上皮細胞マーカーCK14に対してほとんど陰性であり(図3D)、内腔マーカーCK18に対しては陽性であった(図3F)。このことから、TIC細胞は異種移植した腫瘍の基底細胞表現型を与えていることが示唆される。
【0098】
CD24-/low CD44+細胞で制御される経路および主要エフェクターを抽出するための遺伝子発現プロファイリングおよびGSEA
CD24-/low CD44+細胞および対照細胞で高度に濃縮される発現遺伝子を同定するため、HCC70、HCC1954およびMCF7を用いるDNAマイクロアレイ解析を行った。細胞集団を厳密に選択するため、全集団の1%であるCD24-CD44+ 細胞集団のみを使用した。対照として、全集団の約10%であるCD24+CD44+ 細胞集団を使用した。3つの細胞株間でCD24-/lowCD44+集団/CD24+CD44+集団発現比の幾何平均で、マイクロアレイデータをランクした。次いで、GSEAを適用した(Proc Natl Acad Sci U S A, 102: 15545-15550 (2005))。TGF-β経路およびオンコジーンRas経路を含む遺伝子セットがCD24-/low-CD44+集団でアップレギュレートされていることに注目した(図4A)。さらに、TNFおよび IFN応答遺伝子シグネチャーがCD24-/low-CD44+集団で顕著に濃縮されていることがわかった。個々の遺伝子に関して、ジーンオントロジー(GO)に基づく分類により、対照細胞集団に比べてCD24-/low-CD44+において、幹細胞性、細胞増殖/維持、細胞接着、細胞運動性、浸潤、血管新生、成長因子/サイトカイン、免疫応答/抑制及び代謝に関する遺伝子が高度に現れていることが明らかになった。これらすべての遺伝子は、発癌に関与している可能性がある。例えば、GSEAから抽出された経路に関与する遺伝子の中で、幹細胞性関連遺伝子としてNotch2、細胞浸潤または接着関連遺伝子としてLAMA3、血管新生関連遺伝子としてKLF5、EPAS1およびVEGFを見出した。他方、GSEAは、対照集団で高度に発現する遺伝子が多数の細胞増殖/維持関連遺伝子を有する細胞周期関連遺伝子セットのいくつかと相関していることを明らかにした。GESAで抽出された経路およびランクされた個々の遺伝子のリストに基づき、TIC中の主要なエフェクター分子の候補をさらに抽出した。GSEAの結果でも示されたように、血管内皮細胞増殖因子A(VEGFA)の発現がオンコジーンRasで形質転換した細胞でアップレギュレートされていることが知られている(Nature, 439: 353-357 (2006))。TNF応答経路とIFN応答経路との間で共通する重要なエフェクター分子の1つはNF-κBである。NF-κBのサブユニットであるNF-κBインヒビターAのみがGESA遺伝子セットのTNF応答経路に現れていたが、FACSによりソーティングしたCD24-/low-CD44+ and集団および対照集団の核抽出物でNF-κB活性を定量した。NF-κBの活性はCD24+-CD44+よりもCD24-/low-CD44+において有意に高いことがわかった(n=4)(図4C)。NF-κB活性は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インターロイキン8(IL8)およびケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5(CCL5)を含む多数の炎症性サイトカイン/ケモカインの発現に関与する。前記サイトカイン/ケモカインはストローマ様活性と関連するパラクライン因子である(J Immunol, 158: 3483-3491 (1997), Immunol Lett, 108: 121-128 (2007), Mol Cell Biol, 17: 4015-4023, (1997), Mol Cell Biol, 16: 4231-4239, (1996))。また、VEGFAおよびIL8は腫瘍形成中の血管新生に対する主要な因子として知られている(Angiogenesis, 11: 101-106 (2008))。高ランクされた遺伝子の中で、NF-κBの上流の別の活性因子であるToll様受容体1(TLR1)、ならびにTGFβ経路の重要な生物学的アウトプットである上皮間葉移行(EMT)を介してアップレギュレートされることが報告されているストローマ細胞由来因子2-ライク1(SDF2L)にも注目した(Cancer Res, 68: 989-997 (2008), Cell, 134(2):215-30 (2008), Nat Rev Cancer, 9: 57-63 (2009))。これらの遺伝子の発現レベルを定量RT-PCR(qRT-PCR)により測定し、対照細胞よりもCD24-/low-CD44+集団で有意に高いレベルで実際に発現していることを確認した(図4B)。CD24のmRNAは、対照集団においてより高く、タンパク質の発現レベルと一致した(図4B)。
【0099】
NF-κB特異的阻害剤であるDHMEQでの処置によるCD24-/low-CD44+集団細胞に由来する腫瘍形成能の低下
TIC様細胞におけるNF-κBの活性増加およびVEGFAの発現増加を見出したので、次に、各分子特異的阻害剤を用いて本マウスモデルの腫瘍形成におけるそれらの役割を調べた。TICは腫瘍形成の開始または再発において重要な役割を果たすと考えられるので、相対的に少数のTIC様細胞から初期の時点で腫瘍形成を分析することに焦点を当てた。104個のCD24-/low-CD44+集団の細胞または対照としてCD24+-CD44+集団の細胞を、図2Aに示すようにNOD/SCIDマウスに移植し、NF-κB特異的阻害剤であるデヒドロキシメチルエポキシキノマイシン(DHMEQ)または抗VEGFA抗体であるAvastinTM(bevacizumab)で処置した。腫瘍形成の過程での効果を分析するため、移植2日後に阻害剤処置を開始した。腫瘍の形成をインビボイメージングでモニターした。DHMEQで処置したCD24-/low-CD44+細胞集団由来の腫瘍のルシフェラーゼ活性は、未処置の細胞に由来する腫瘍に比べて有意に低下していることがわかった(図5A)。しかしながら、DHMEQで処置した対照細胞由来の腫瘍は、統計学的に有意差はなかったけれど、未処置の対照細胞由来の腫瘍よりも大きくなる傾向を示した(図5B)。他方、bevacizumabは、処置または未処置のいずれの条件でも、CD24-/low-CD44+細胞集団の腫瘍増殖に有意差を示さなかった(図5C)。bevacizumabは、どちらかというと、対照細胞由来の腫瘍形成を低下させ、それは30日を超える日数を要した(データ示さず)。これらの結果は、NF-κBが非TIC様細胞ではなくTIC様細胞に由来する腫瘍形成に関して主要なエフェクターとして作用することを示唆する。
【0100】
(考察)
本研究において、本発明者らは、乳癌細胞株を用いてTICから発生する腫瘍形成の過程の一部を再現するマウスモデルを確立した。対照であるCD24+CD44+集団のものよりもCD24-/lowCD44+集団に由来する細胞がより大きな腫瘍を形成することを示した。重要なことは、100個という少ない数の細胞を移植した場合、対照細胞ではなくCD24-/lowCD44+集団における細胞のみが腫瘍を形成したことである。このことは、TICが原発乳癌組織に存在していると信じられている特徴に基づくTICとしての重要な基準の1つである。したがって、細胞株のCD24-/lowCD44+集団中の細胞がTIC様細胞で濃縮されている可能性があり、このことはTIC様細胞とその他の細胞に分割される細胞集団に不均一性があることを明らかにするであろう。本研究でのデータと一致して、他の細胞株もTIC様細胞集団を有することがごく最近報告されている(Breast Cancer Res, 10: R25 (2008))。したがって、いくつかの乳癌細胞株は不均一であり、全く異なる細胞集団:TIC様細胞およびその他の細胞(両者は、原発癌組織中のTIC様細胞およびその他の細胞の特徴をある程度まで保存している)を有すると推論することは合理的である。
【0101】
さらに、ルシフェラーゼレポーターで細胞を標識し、100個の細胞という少ない数を検出可能な高感度かつ定量的なインビボイメージングによりNOD/SCIDマウスの乳腺中で腫瘍形成をモニターする系を確立した。TICは前癌性ステージから悪性ステージまで移行中または少ない腫瘍細胞での再発中の腫瘍形成に対して重要な役割を果たすと考えられるので、このモデルはかかるステージにおける腫瘍形成をモニターするのに有用である。実際、このモデルを用いて、TICの標的候補であるNF-κBおよびVEGFAの阻害剤を評価することが可能であった(図5)。
【0102】
さらに、TIC様細胞由来の腫瘍がより悪性度の高い組織像を示し、CK14陽性細胞の多い対照由来腫瘍と比べてCK18陽性の細胞が多かった。このことは、TICがこのモデルで分化したパターンを有する細胞には分化しないかもしれないことを示唆し、正常幹細胞が特定の組織においてすべての細胞型を発生させるけれども、TICは腫瘍組織においてすべての細胞型に分化する必要がないかもしれない可能性を生じさせる。しかしながら、この移植モデルは、TICが乳癌のすべての細胞型に分化する能力を再現しないという可能性を排除することはできない。この問題を明確にするために、他のタイプのインビボモデルを解析する必要がある。
遺伝子発現プロファイリングとGSEA解析を組み合わせることにより、いくつかのシグナル伝達経路および多数の遺伝子がCD24+CD44+対照集団よりはむしろCD24-/lowCD44+ TIC様細胞に関与していることが示唆された。GO分類により、様々な遺伝子がCD24-/low CD44+ TIC様細胞の悪性特性を表す可能性を明らかにした。正常乳腺組織に由来するCD24-/low CD44+集団と原発乳癌組織に由来するCD24+CD44+集団における細胞を用いた以前の報告で見出された遺伝子と重複する遺伝子が存在する。TGFβ経路に関与するいくつかの遺伝子は、CD24-/lowCD44+集団に濃縮されており、既報と一致する(Cancer Cell, 11: 259-273, (2007))。重要なことに、CD24-/low CD44+集団における新規の遺伝子セットとして、オンコジーンRas経路ならびにTNFおよびIFN応答経路に関連する遺伝子を見出した。これらは、遺伝子発現パターンの観点から、TICと正常幹細胞との相違点である。このことは、個々の遺伝子リストからTIC様細胞における可能な分子標的をさらに抽出することを可能にする。したがって、GSEAは、TIC様細胞において可能な多数の経路とのベストフィットを示す経路を明確に解明した。
【0103】
ストローマ様活性に関連した遺伝子は、CD24+CD44+集団に比べてCD24-/low CD44+集団に高度に濃縮されていたことが注目される。前記遺伝子は、炎症性サイトカイン、血管新生サイトカイン、SDF2LおよびToll様受容体などである。これらのストローマ様活性は、浸潤、血管新生および免疫応答/抑制に寄与すると考えられている。最近、いわゆる癌関連線維芽細胞(CAF)と一致する腫瘍ストローマが腫瘍形成に主要な役割を果たすことを提案する証拠が増加している(Nat Rev Cancer, 6: 392-401 (2006))。これらは、成長因子、サイトカインおよびケモカインを分泌して、パラクラインメカニズムにより炎症性応答および血管新生を誘導する。次いで、腫瘍細胞はこれらの活性を腫瘍の進行に用いているように思われる。本発明者らの知見は、TICがCAFのように挙動し、成長因子、サイトカインおよびケモカインを産生することにより腫瘍形成に関与していることを示唆する。この観点から、TICは腫瘍形成の進行に対して微小環境、すなわち、癌幹細胞ニッチを積極的に産生し維持している可能性がある。
【0104】
最近、脳腫瘍幹細胞が血管近辺、血管周囲ニッチに局在し、異種移植モデルで内皮細胞により幹細胞状態に維持されていること、およびbevacizumabを用いる抗血管新生療法が腫瘍の退縮に効果を有することが報告されている(Cancer Cell, 11: 69-82, (2007))。しかしながら、本モデルにおいて、bevacizumabはTIC様細胞に由来する腫瘍形成に有意な効果を有さなかった(図5)。この相違点に関する2つの可能な理由が存在する。血管は本モデルにおいて癌幹細胞ニッチを維持するためには必須ではないかもしれない、あるいは、IL-8等の他のサイトカインも有意な効果を有するかもしれない(図5)。
【0105】
TGFβ経路は、細胞で活性化される唯一の経路である場合、腫瘍形成を防止することはよく知られている(Cell, 134:215-30 (2008))。しかしながら、悪性の状態では、TGFβ経路は他の経路と協調して、腫瘍形成を進行させる。オンコジーンRas経路、炎症性応答およびNF-κBの活性化はかかる協調経路であることが報告されている(Cell Cycle, 3: 1477-1480 (2004))。
【0106】
様々な周期およびカスケードにおいて代謝に関連する多数の遺伝子が存在することにも注目した。このことは、TIC様細胞では代謝が非常に活発であることを示唆する。これらすべての知見は、TICが癌において他の細胞よりも悪性であることを示唆する。細胞株は原発細胞とは異なる追加の特性を有する可能性も排除できない。例えば、対照細胞中に濃縮されて見出された細胞周期関連遺伝子セットは、インビトロでの培養適合をいくらか反映している可能性があり、原発組織由来の対照細胞がほとんどインビボで腫瘍を生成しないけれども、高進された細胞周期活性は、対照細胞に移植後のインビボ増殖を与える可能性があった。(図4A)。
【0107】
NF-κBの活性は、対照細胞よりもTIC様細胞で高いことを示した。さらに、NF-κB特異的阻害剤DHMEQは、相対的に少ない数の細胞を移植したすぐ後にマウスを処置した場合、本マウスモデルにおいて、TIC様細胞由来の腫瘍形成を抑制した。したがって、NF-κBは乳癌の初期ステージの処置のために、および再発の予防のために、有望な標的であると思われる。本知見は、臨床検体を用いて広範に評価すべきであるが、NF-κB阻害剤がインビトロで、別の乳癌細胞株由来の副集団(SP)画分であるMCF7細胞の増殖を阻害または抑制したことがごく最近報告されていた(Breast Cancer Res Treat, 111: 419-427 (2008))。TICもSP画分の細胞に濃縮されていると思われるので、本研究のアイデアと一致する(Exp Cell Res, 312: 3701-3710 (2006))。他方、驚くべきことに、DHMEQ処置対照細胞が未処置細胞よりも大きな腫瘍を発生させたことを見出した(図5B)。このことは、臨床上、適切な患者にはNF-κB標的療法を選択すべきであるという重要な課題を起こさせる。例えば、血清マーカーを用いてTICを含む乳癌組織中のNF-κBの活性を測定する診断方法を開発することは明らかに重要である。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、固形癌の早期診断、再発の診断および治療効果の診断が可能になる。また、固形癌の根治にもつながることが期待される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形癌、特に乳癌の再発予測のための試験方法および再発予防剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腫瘍は、バラエティーに富んだ生物学的特性をもった不均一な細胞集団の機能的階層に組織されていることが広く受け入れられており、蓄積した証拠は、不均一な腫瘍細胞のごく小さな割合である腫瘍開始細胞(TIC)または癌幹細胞が腫瘍においてその他の細胞よりも腫瘍形成を維持する能力を保有することを示唆している。TICは腫瘍が発生する組織中の正常な幹細胞と共通の特徴を有することが提唱されている。すなわち、TICは自己複製し、同時に、高分化した状態に達するまで強力に増殖する分化した娘細胞を産生する。他方、TICと正常幹細胞との間には明らかな相違点も存在する。すなわち、後者はホメオスタシスの密接な制御の中にあり、成人の組織においてそれを取り囲んで維持する微小環境である幹細胞ニッチ中で受動的に保護されている。しかしながら、前者は腫瘍形成に活発に寄与しているはずである。TICの概念は、癌生物学に大きなインパクトを与え、癌治療の再考察を喚起するものである。他方、TICがどのように腫瘍形成を促進させるかという分子メカニズムは不明のままである。
【0003】
幹細胞生物学の前進とともに、血液学的悪性腫瘍におけるTICは、10年前に最初に同定された。続いて、乳癌を含む多くの固形腫瘍がTIC集団を含むことが報告された。ヒト乳癌における細胞表面マーカーCD24-/lowCD44highの発現で特徴付けられる集団が、同じ腫瘍中で見出された大多数のCD24highCD44high癌細胞に比べてTICが高度に濃縮されていることが報告された(非特許文献1、2)。前記報告では、臨床サンプルに由来するlineage-CD24-/low CD44+細胞はCD24highCD44high細胞に比べてNOD/SCIDマウスで腫瘍形成能力が高く、生じた異種移植片は表面抗原の分布の観点から、原発腫瘍の不均一性を再現したことを論証している。
【0004】
原発乳癌組織または正常組織における他の集団と比較してCD24-/low CD44+細胞集団に焦点を合わせた遺伝子発現プロファイリングに関する2つの研究がある(非特許文献3、4)。前記研究は、悪い予後を予測すると思われるCD24-/lowCD44+細胞集団に由来する異なるシグネチャーを提案したが、一方の研究は、形質転換成長因子β(TGFβ)経路がこれらの細胞で活性化されているように思われることを示した。その後、TGFβは、正常乳腺上皮細胞と乳癌細胞の両方で、乳腺および幹様細胞で上皮間葉移行(EMT)を誘導することが報告された(非特許文献2)。他方、TGFβシグナル伝達が腫瘍形成において正の効果と負の効果を有することは良く知られているので、腫瘍形成を共同的に刺激するさらなるシグナル伝達が必要である。
【0005】
核因子カッパB(NF-κB)は転写因子複合体であり、通常、p50、p52、p65(RelA)、RelBおよびc-Relを含むヘテロダイマーである。NF-κBは、細胞質において、阻害タンパク質IκBと結合し、通常不活性である。腫瘍壊死因子(TNF)またはインターフェロン(IFN)等のシグナルで刺激されると、IκBがリン酸化され、次いで、ユビキチン化され、分解される。次いで、放出されたNF-κBが核に移行し、κB配列に結合し、炎症性サイトカイン等の種々の遺伝子の転写を促進させる。NF-κBは、炎症、血管新生、アポトーシスの抑制および腫瘍形成に関する役割を担っている(非特許文献5−7)。
【0006】
遺伝子セット濃縮解析(GSEA)は、遺伝子発現プロファイリングの最近開発された分析方法であり、発現レベルの何倍の変化を解析する個々の遺伝子解析に基づく結果に比べて、より生物学的に解釈可能で、正確かつ確固としていると認識されている(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Al-Hajj M, Wicha MS, Benito-Hernandez A, Morrison SJ, Clarke MF (2003) Prospective identification of tumorigenic breast cancer cells. Proc Natl Acad Sci U S A 100: 3983-3988.
【非特許文献2】Mani SA, Guo W, Liao MJ, Eaton EN, Ayyanan A, et al. (2008) The epithelial-mesenchymal transition generates cells with properties of stem cells. Cell 133: 704-715.
【非特許文献3】Shipitsin M, Campbell LL, Argani P, Weremowicz S, Bloushtain-Qimron N, et al. (2007) Molecular definition of breast tumor heterogeneity. Cancer Cell 11: 259-273.
【非特許文献4】Liu R, Wang X, Chen GY, Dalerba P, Gurney A, et al. (2007) The prognostic role of a gene signature from tumorigenic breast-cancer cells. N Engl J Med 356: 217-226.
【非特許文献5】Karin M, Cao Y, Greten FR, Li ZW (2002) NF-kappaB in cancer: from innocent bystander to major culprit. Nat Rev Cancer 2: 301-310.
【非特許文献6】Tabruyn SP, Griffioen AW (2008) NF-kappa B: a new player in angiostatic therapy. Angiogenesis 11: 101-106.
【非特許文献7】Huber MA, Beug H, Wirth T (2004) Epithelial-mesenchymal transition: NF-kappaB takes center stage. Cell Cycle 3: 1477-1480.
【非特許文献8】Subramanian A, Tamayo P, Mootha VK, Mukherjee S, Ebert BL, et al. (2005) Gene set enrichment analysis: a knowledge-based approach for interpreting genome-wide expression profiles. Proc Natl Acad Sci U S A 102: 15545-15550.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、固形癌、特に乳癌の初期ステージまたは再発の診断に有用な、癌幹細胞マーカー遺伝子を提供し、かかるマーカー遺伝子を利用した固形癌の初発または再発の診断ツールなどを提供することにある。また、本発明の目的は、かかるマーカー遺伝子を分子標的とし、癌幹細胞を標的とした固形癌の初発または再発の予防または治療薬などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、臨床検体ではなく乳癌細胞株からTIC様画分を見出し、TICにおいてシグナル伝達経路を解釈可能に分析するため、マイクロアレイ解析とGSEAを利用した。さらに、本発明者らは、乳癌細胞株を利用して、高感度の定量的インビボイメージングにより腫瘍形成を追跡するためのマウスモデルを確立させた。その結果、TIC様細胞で濃縮される多数の新規経路を抽出することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕 固形癌の初発または再発を予測するための試験方法であって、被験対象から採取した生体試料における固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現レベルを、当該遺伝子の転写産物または翻訳産物を対象として測定する工程を含み、当該遺伝子が
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
からなる群より選ばれる2〜169の遺伝子である、方法。
〔2〕 固形癌を保有する患者に対する癌治療の効果を測定するための試験方法であって、当該患者から採取した生体試料における固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現レベルを、当該遺伝子の転写産物または翻訳産物を対象として測定する工程を含み、当該遺伝子が
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
からなる群より選ばれる2〜169の遺伝子である、方法。
〔3〕 生体試料が血漿、血清、リンパ液、骨髄液、唾液、精液または尿である、前記〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕 固形癌が乳癌である、前記〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の方法。
〔5〕 固形癌の初発もしくは再発を予測または固形癌に対する治療効果を測定するための診断薬であって、下記固形癌幹細胞マーカー遺伝子:
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
からなる群より選ばれる2〜169の遺伝子の発現レベルを検出するための試薬を含有する診断薬。
〔6〕 固形癌が乳癌である、前記〔5〕に記載の診断薬。
〔7〕 試薬が固形癌幹細胞マーカー遺伝子の転写産物または翻訳産物に対する、プライマー、核酸プローブおよび抗体から選ばれる、前記〔5〕または〔6〕に記載の診断薬。
〔8〕 固体支持体および当該支持体の表面に固定された核酸プローブを含む、固形癌の初発もしくは再発または固形癌に対する治療効果の診断用アレイであって、当該核酸プローブが以下の固形癌幹細胞マーカー遺伝子:
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
から選ばれる2〜169の遺伝子にそれぞれハイブリダイズするプローブである、アレイ。
〔9〕 前記核酸プローブが約20から80塩基長である、前記〔8〕に記載のアレイ。
〔10〕 固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現または活性を抑制し得る物質を含む、固形癌の初発または再発の予防または治療剤であって、当該遺伝子が
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
からなる群より選ばれる、予防または治療剤。
〔11〕 固形癌が乳癌である、前記〔10〕に記載の予防または治療剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明の試験方法によれば、固形癌の発症または再発原因とされる固形癌幹細胞を識別可能なマーカー遺伝子を指標とすることにより、固形癌の初発または再発を事前に予測することが可能となり、固形癌の発症もしくは再発の予防、早期発見または早期治療に貢献することができる。本発明の固形癌の予防または治療剤によれば、固形癌幹細胞に対する分子標的を有効成分と含有し、正常細胞に悪影響を及ぼすことなく、固形癌の根治的治療が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、乳癌細胞株におけるCD24とCD44の発現パターンを示す。乳癌細胞株(HCC70,HCC1954,MCF7,BT474,MDA-MB231,AU565,SK-BR-3およびT47D)におけるCD24およびCD44の発現パターンをFACSにより解析した。FITC標識抗CD24抗体およびPE標識抗CD44抗体を解析に用いた。ゲートは、各細胞株に対応するアイソタイプコントロールに基づいた。
【図2】図2は、NOD-SCIDマウスにおけるCD24-/lowCD44+細胞のルシフェラーゼ活性を示す。ルシフェラーゼ発現HCC70、HCC1954およびMCF7細胞をFACSによりソーティングした。全集団のうちCD24-/lowCD44+に属する10%細胞をTIC集団(CD24-)として選択し、全集団のうちCD24+ CD44+に属する10%細胞を対照集団(CD24+)として選択した。A)〜D) 示された数のTIC集団細胞(マウスの左側)または対照集団細胞(マウスの右側)をMatrigelと混合し、NOD-SCIDマウスの乳腺に移植した。4週間後(上部パネル)に、IVISTMによりルシフェラーゼ活性を捕獲した。移植部位のルシフェラーゼ活性を定量した(A, C, Dではn=6、Bではn=4)(下部グラフ)。結果を平均+SDで示した。*p<0.05 (student t-test)。
【図3】図3は、HCC1954由来腫瘍の免疫組織化学的解析を示す。A),B) CD24-/low CD44+細胞(TIC)および CD24+ CD44+ 細胞(対照)由来の腫瘍のH&E-染色切片。C),D)TICおよび対照におけるCK14発現の免疫組織化学的解析。E),F) TICおよび対照におけるCK18発現の免疫組織化学的解析。陽性を茶色の染色で可視化した。スケールバーは100μmである。
【図4A】図4Aは、GSEA解析を示す。HCC70、HCC1954およびMCF7のTIC集団と対照集団とを比較して、DNAマイクロアレイ解析を行った。各細胞株の全集団の1%細胞(CD24-/lowCD44+に属する)をTIC集団としてCD24の最低の発現レベルに基づいて精製し、各細胞株の全集団の10%細胞(CD24+CD44+に属する)を対照集団(CD24+)として精製した。マイクロアレイデータを、3細胞株間でTIC/対照集団発現比の幾何平均でランクし、GSEAを適用した。TIC または対照集団で濃縮された遺伝子を含む代表的経路が抽出されたGSEAが示された。オリジナルのGSEAデータセットにおいて、オンコジーンRas経路をRAS_ONCOGENIC_SIGNATUREとして示し、TGFβ経路をTGFBETA_EARLY_UPとして示し、IFN応答をIFN_ANY_UPとして示し、TNF応答をSANA_TNFA_ENDOTHELIAL_UPとして示した。
【図4B】図4Bは、定量RT-PCRを示す。HCC1954細胞からソーティングした細胞集団を用いて、VEGFA、IL8、TLR1、SDF2L1、CCL5およびCD24(対照)をqRT-PCRにより調べた。データ(平均±SD)は6個の実験の代表である。* p<0.05
【図4C】図4Cは、HCC1954細胞からソーティングしたCD24- CD44+およびCD24+CD44+集団におけるNF-κB活性の定量結果を示す。データ(平均±SD)は3個の実験の代表である。* p<0.05
【図5】図5は、NF-κB阻害剤または抗VEGF抗体での処置による腫瘍形成の効果を示す。A)〜C) NF-κB阻害剤DHMEQまたはアバスチン(bevasizumab;抗VEGF抗体)で処置したHCC1954細胞のCD24-/lowCD44+およびCD24+ CD44+集団の腫瘍の増殖をルシフェラーゼ活性により測定した(n=8)。ルシフェラーゼ活性の平均をラインで示した。* p<0.05
【図6】図6は、TICにおけるNF-κBが関与するシグナル伝達経路のモデルを示す。TICが癌関連線維芽細胞(CAF)様に挙動し、NF-κBが主要なエフェクターとして作用してサイトカインおよびケモカインを含む多数の分泌タンパク質を誘導する癌幹細胞ニッチを活発に産生して維持するという興味深い可能性を示す。GSEAで抽出された遺伝子の中で、有意に高いレベルのmRNA発現または活性を有する分子(NF-κB、VEGF)を青色で示し、その他は赤色で示した。黒色の分子(IL8、SDF2L1、CCL5、TLR1)は、有意に高レベルのmRNA発現が確認された。
【図7】図7は、レンチウイルスベクターのトランスフェクション効率を示す。HCC70、HCC1954およびMCF7細胞をHIV-EF1α-d2VenusおよびHIV-EF1α-Luciferaseで感染させた。形質導入効率は、HIV-EF1α-d2Venus感染細胞を用いてフローサイトメーター(中間パネル)および緑色蛍光(上部パネル)で評価した。HCC70、HCC1954およびMCF7をCD24-FITCおよびCD44-PEで染色し、HIV-EF1α-Luciferaseの感染前後でフローサイトメーターで解析した(下部パネル)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(一般的定義)
「ポリヌクレオチド」という用語は、単数形で用いられても複数形で用いられても、ポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドであって、未修飾のRNAもしくはDNAまたは修飾されたRNAもしくはDNAを意味する。したがって、例えば、本明細書で定義されているポリヌクレオチドには、1本鎖および2本鎖のDNA、1本鎖および2本鎖の領域を含むDNA、1本鎖および2本鎖のRNA、1本鎖および2本鎖の領域を含むRNA、1本鎖もしくは2本鎖であるか、または、1本鎖および2本鎖の領域を含むDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子などがあるが、これらに限定されるものではない。さらに、本発明において「ポリヌクレオチド」は、RNAまたはDNA、またはRNAとDNAの両方を含む三重鎖領域をも包含する。このような領域にある鎖は、同一の分子または異なった分子に由来するものでもよい。該領域は、1つ以上の該分子のすべてを含んでいてもよいが、より一般的には、いくつかの分子の一領域のみを含む。三重鎖領域の分子の1つは、しばしばオリゴヌクレオチドである。「ポリヌクレオチド」という用語は、具体的にはcDNAをも含む。さらに、イノシンなどの例外的塩基、または、トリチウム化された塩基などの修飾塩基を有するDNAまたはRNAも、「ポリヌクレオチド」の範囲に含まれる。一般的に、「ポリヌクレオチド」という用語は、未修飾ポリヌクレオチドの化学的、酵素的および/または代謝的に修飾された形態のすべてを包含するとともに、ウイルスならびに単細胞および多細胞などの細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学形態も包含する。
【0014】
「示差的に発現される遺伝子」、「示差的遺伝子発現」ならびに、単に「発現遺伝子」および「遺伝子発現」という用語は、互換的に使用され、固形癌、具体的には乳癌などの病気を患う被験者において、その発現が、正常または対照となる被験者における発現と比較して、より高いレベルかより低いレベルに活性化される遺伝子を意味する。この用語は、同じ病気の異なる段階で、その発現がより高いレベルまたはより低いレベルに活性化される遺伝子も包含する。また、示差的に発現される遺伝子は、核酸レベルまたは蛋白質レベルで活性化または抑制されてもよく、あるいは、異なったポリペプチド産物をもたらす選択的スプライシングを受けることもあると理解される。このような違いは、例えば、ポリペプチドのmRNAレベル、表面発現、分泌またはその他の分配における変化によって証明することができる。示差的遺伝子発現は、2つ以上の遺伝子またはそれらの遺伝子産物の間で発現を比較すること、または、2つ以上の遺伝子またはそれらの遺伝子産物の間における発現比率を比較すること、または、さらに、同じ遺伝子が異なってプロセッシングされた2つの産物であって、正常な被験者と、具体的には癌という病気を患う被験者の間で異なっているか、または、同じ病気のさまざまな段階で異なっている産物を比較することを包含しうる。示差的発現は、例えば、正常および病気の細胞間における、または、異なった病気が発症したか、異なった病気の段階にある細胞間における、遺伝子またはその発現産物の時間的または細胞内での発現パターンの定量的、および定性的な違いを含む。本発明の目的にとって、正常な被験者と癌に罹患した被験者において、または、被験者の癌発症の様々な段階において、ある遺伝子の発現に約2倍以上、好ましくは約4倍以上、より好ましくは約6倍以上、最も好ましくは約10倍以上の違いがあるときに、「示差的遺伝子発現」が存在するとみなされる。
【0015】
RNA転写産物について「過剰発現」という用語は、標本中で決定されたRNAのすべてまたは特定の参照用mRNAセットであるかもしれない参照用mRNAのレベルに対して正規化することによって決定された転写産物のレベルを意味するために用いられる。
【0016】
「遺伝子増幅」という用語は、特定の細胞または細胞株において遺伝子または遺伝子断片の複数コピーを形成させる処理を意味する。複製領域(増幅されたDNAの鎖)は、しばしば「単位複製配列(アンプリコン)」と呼ばれる。通常、産生するmRNAの量、すなわち遺伝子発現のレベルも、発現遺伝子のコピー数に比例して増加する。
【0017】
「癌」または「腫瘍」という用語は、文脈上腫瘍が良性腫瘍を意味しない限り、互換的に使用される。
【0018】
(詳細な説明)
本発明は、固形癌の初発または再発を予測するための試験方法(I)を提供する。本発明の試験方法(I)は、被験対象から採取した生体試料における固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現レベルを、当該遺伝子の転写産物または翻訳産物を対象として測定する工程を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、固形癌を保有する患者に対する癌治療の効果を測定するための試験方法(II)を提供する。本発明の試験方法(II)は、固形癌保有患者からから採取した生体試料における固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現レベルを、当該遺伝子の転写産物または翻訳産物を対象として測定する工程を含むことを特徴とする。
本発明の試験方法(I)および(II)(以下、まとめて、「本発明の試験方法」と省略する場合がある)について説明する。
【0020】
本発明において、固形癌とは血液癌を除く癌を意味し、肉腫および癌腫が包含される。具体的には、繊維肉腫、粘膜肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌、食道癌、大腸癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢腺癌、骨髄癌、気管支原性癌、腎細胞癌、尿管癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮内膜癌、精巣癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、骨髄芽種、頭蓋咽頭癌、喉頭癌、舌癌、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、腹膜播腫、奇形腫、神経芽細胞腫、髄芽腫および網膜芽細胞腫などがあげられる。本発明においては、乳癌を対象とすることが好ましい。
【0021】
本発明において、固形癌の初発とは、上記した癌のいずれかで初めて発症した、または発症が見込まれる状態をいい、固形癌の再発とは、初発固形癌の治療後または根治後に再び発症した、または発症が見込まれる状態をいう。再発する組織または再発が見込まれる組織は、初発組織に限定されるものではなく、別の組織であってもよい。したがって、再発という概念には転移も含まれる。
【0022】
本発明の試験方法(II)において、固形癌の治療とは、外科的手術、放射線療法、抗癌剤投与を始めとしたあらゆる治療を包含する。特に、抗癌剤は再発防止のために投与されることが多く、投与効果の判定や投与完了を判断し難いものであるから、かかる判断が必要な場合に本発明の試験方法(II)を用いることが好ましい。また、後述する実施例に記載されたヒト固形癌幹細胞を移植した癌の再発モデルマウスを利用して、当該モデルマウスに抗癌剤を投与してその効果を事前に予測することも望ましい。
【0023】
本発明において、固形癌幹細胞とは、以下のi)〜iii)の能力を有する細胞をいう。
i)自己複製能を保有する。自己複製能とは、分裂した2つの娘細胞のどちらか1つまたは両方の細胞が、細胞系譜上、親細胞と同等の能力および分化程度を保持している細胞を産出できる能力を示す。
ii)腫瘍を構成する複数種の癌細胞へ分化できる。癌幹細胞から分化した複数種の癌細胞は、正常幹細胞と同様に、細胞系譜上、癌幹細胞を起点とする階層性を有する。癌幹細胞より、段階的に多種癌細胞が産出されることにより多様な特徴を有する腫瘍が形成される。
iii)高い細胞増殖活性を保有する。癌幹細胞は、自己複製および分化を繰り返すことで癌細胞集団の過剰な増殖を可能にする。
【0024】
癌幹細胞としては、各種固形癌由来幹細胞および各種固形癌細胞株由来幹細胞があげられ、好ましくは、CD24-/low CD44+細胞集団に濃縮されている細胞であり、より好ましくは、乳癌由来幹細胞および各種固形癌細胞株由来幹細胞(CD24-/low CD44+細胞集団に濃縮されている細胞)である。
【0025】
本発明が標的とする固形癌幹細胞マーカー遺伝子とは、CD24+ CD44+細胞集団に比べてCD24-/low CD44+細胞集団で示差的に発現される遺伝子群の中から本発明者らが独自の視点に基づいて選別した、固形癌幹細胞特異的マーカーであり、下記固形癌幹細胞マーカー遺伝子(以下、単に「マーカー遺伝子」または「マーカー」と省略する場合がある)(1)から選ばれる2〜169の遺伝子から構成される。マーカー遺伝子(1)は、好ましくは3以上、5以上、10以上、15以上、20以上または25以上の遺伝子から構成される。
【0026】
マーカー遺伝子(1):
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1。
【0027】
前記固形癌幹細胞マーカー遺伝子を構成する個々の遺伝子は公知であり、その塩基配列およびアミノ酸配列も既知である。これら169遺伝子のリストを表1に示す。
【0028】
【表1−1】
【0029】
【表1−2】
【0030】
【表1−3】
【0031】
本発明の試験方法(I)における被験対象は、ヒトを始めとする哺乳動物であれば特に限定されるものではないが、固形癌の初発または再発が疑われるヒトが好ましい。
【0032】
本発明の試験方法が測定対象とする生体試料は、哺乳動物、好ましくはヒトから採取可能なものであれば特に限定されるものではなく、固形癌組織(癌細胞を含む)、リンパ節(固形癌が転移したリンパ節を含む)などの固形試料、全血、血漿、血清、リンパ液、骨髄液、唾液、精液、尿などの体液試料があげられる。
【0033】
本発明の試験方法が全血、血漿、血清、リンパ液、骨髄液、唾液、精液または尿などの体液試料を測定する場合、上記マーカー遺伝子(1)の中から、その転写産物または翻訳産物が体液中に放出され、場合によっては体外に排出される(尿中に移行して排出される)ものを標的とすることが好ましい。かかるマーカー遺伝子としては、例えば、下記マーカー遺伝子(2)から選ばれる2〜65の遺伝子があげられるが、これに限定されるものではない。この実施態様において、マーカー遺伝子(2)は、より好ましくは3以上、5以上、10以上、15以上、20以上または25以上の遺伝子から構成される。マーカー遺伝子(2)の転写産物または翻訳産物(好ましくは翻訳産物)は、体液中に放出され、場合によっては体外に排出される(尿中に移行して排出される)ことが予想されるので、上記体液試料を用いた迅速かつ簡便な試験方法が可能となり、それにより、固形癌の初発または再発の迅速な診断が可能となる。
【0034】
マーカー遺伝子(2):
SNAIL、IL8、CX3CL1、ADAM10、MMP15、CCL5、IGF1R、WNT5A、IL20RA、CSTF3、IL13RA、ADAM12、ADAM9、TNFSF10、VEGF、IGFBP2、TNFSF13、SDF2L1、EGF、SDFR1、TGFA、TBRG1、BMP7、IGSF8、HDGF、PDGFB、TGFB、TLR1、CCL22、IL18、BMP5、TGFBR1、MMP14、TIMP3、EPHB1、CXCR4、CXCL12、ADAMTS19、IL7、MMP24、ITCH、IL1B、IGFBP6、FGF11、FGF13、IL1R1、CXCL16、TIMP21、EPHB4、LITAF、ADAMTS10、ING1、VEGFB、TGFB114、IL27RA、IGFBP4、FGF9、PLGF、TIMP1、MMP7、TNFSF14、CKLFSF7、TGFBRAP1、NOTCH2およびEPHB3。
【0035】
本発明の試験方法において、マーカー遺伝子の発現レベルは、下記本発明の固形癌の初発もしくは再発を予測または固形癌に対する治療効果を測定するための診断薬を用いて、自体公知の方法により測定することができる。本発明の診断薬およびマーカー遺伝子の発現レベルの測定方法は、後述する。
【0036】
本発明の試験方法(I)において、生体試料中のマーカー遺伝子の2〜169種類の発現レベルを測定した結果、それらの2種以上の発現レベルが基準と比べて有意に高い場合、当該試料中または試料の採取元の生体内に固形癌幹細胞の存在が疑われる。ここで、基準としては、健常人の平均値あるいは被験者の癌治療後など比較対照となる値が用いられる。この場合、被験対象において固形癌の初発または再発が予想される。固形癌の初発または再発の有無を、さらに別の検査によって確認することが好ましい。
【0037】
本発明の試験方法(II)において、生体試料中のマーカー遺伝子の2〜169種類の発現レベルを測定した結果、それらの2種以上の発現レベルが基準と比べて有意に高い場合、当該試料中または試料の採取元の生体内に固形癌幹細胞の存在が疑われる。ここで、基準としては、健常人の平均値あるいは被験者の癌治療後など比較対照となる値が用いられる。この場合、固形癌患者において癌の治療効果が完全に奏していないことが考えられる。逆に、前記2種以上の発現レベルが基準以下(例えば、実質的にゼロ)の場合、当該試料中に固形癌幹細胞が存在しないと判断される。この場合、癌治療によって固形癌幹細胞が消失し、癌治療が奏功していると考えられる。さらに、その他の検査と組み合わせて、固形癌の治療効果を多面的に確認することが好ましい。
【0038】
本発明の試験方法においては、さらに下記工程を含んでいてもよい:
(a)固形癌患者から採取した細胞における固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現レベルを、当該マーカー遺伝子の転写産物または翻訳産物を対象として、当該細胞におけるすべての転写産物もしくは発現産物の発現レベル、または転写産物もしくは発現産物の参照用セットの発現レベルに対して正規化して決定する工程;
(b)工程(a)で得られたデータを統計解析に供する工程;および
(c)工程(b)で得られた解析結果に基づいて、当該患者の再発の可能性が高いかまたは低いかを決定する工程、あるいは、当該患者の治療効果の適否を決定する工程。
【0039】
本発明の診断薬は、前記マーカー遺伝子(1)から選ばれる2〜169の遺伝子の発現レベルを検出するための試薬を含有する。
【0040】
前記試薬は、マーカー遺伝子の発現レベルを検出可能な物質または手段であればいずれを選んでもよいが、好適には、マーカー遺伝子の転写産物または翻訳産物に対する、プライマー、核酸プローブおよび抗体からなる群より選ぶことができる。
【0041】
本発明の診断薬に含まれるプライマーは、マーカー遺伝子の増幅及び検出を可能とする限り特に限定されない。例えば、プライマーのサイズは、少なくとも約12塩基長以上、好ましくは約15〜100塩基長、より好ましくは約16〜50塩基長、さらにより好ましくは約18〜35塩基長である。また、遺伝子増幅法の種類に応じて必要とされるプライマー数が異なるため、本発明の診断薬に含まれるプライマー数は特に限定されないが、本発明の診断薬は、1種類のマーカー遺伝子に対して2以上のプライマーを含んでもよい。2以上のプライマーは、予め混合されていても、混合されていなくてもよい。このようなプライマーは、自体公知の方法により作製することができる。プライマーの設計方法については後述する。
【0042】
本発明の診断薬に含まれる核酸プローブは、マーカー遺伝子の転写産物の検出を可能とする限り特に限定されない。核酸プローブはDNA、RNA、修飾核酸またはそれらのキメラ分子などであり得るが、安定性、簡便性等を考慮するとDNAが好ましい。核酸プローブはまた、1本鎖または2本鎖のいずれでもよい。核酸プローブのサイズは、マーカー遺伝子の転写産物に特異的にハイブリダイズし得る限り特に限定されないが、例えば約15または16塩基長以上、好ましくは約15〜1000塩基長、より好ましくは約20〜500塩基長、さらにより好ましくは約20〜80塩基長である。核酸プローブは、核酸アレイのように基板上に固定された形態で提供されてもよい。このような核酸プローブは、自体公知の方法により作製することができる。
【0043】
本発明の診断薬に含まれる抗体は、マーカー遺伝子の翻訳産物に特異的に結合し得る抗体である限り特に限定されない。例えば、翻訳産物に対する抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもよい。抗体はまた、抗体のフラグメント(例、Fab、F(ab’)2)、組換え抗体(例、scFv)であってもよい。抗体は、プレート等の基板上に固定された形態で提供されてもよい。抗体は、自体公知の方法により作製することができる。
【0044】
例えば、ポリクローナル抗体は、マーカー遺伝子の翻訳産物あるいはその部分ペプチド(必要に応じて、ウシ血清アルブミン、KLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)等のキャリアタンパク質に架橋した複合体とすることもできる)を抗原として、市販のアジュバント(例、完全または不完全フロイントアジュバント)とともに、動物の皮下あるいは腹腔内に2〜3週間おきに2〜4回程度投与し(部分採血した血清の抗体価を公知の抗原抗体反応により測定し、その上昇を確認しておく)、最終免疫から約3〜約10日後に全血を採取して抗血清を精製することにより取得できる。抗原を投与する動物としては、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、モルモット、ハムスターなどの哺乳動物があげられる。
【0045】
また、モノクローナル抗体は、細胞融合法(例、渡邊武、細胞融合法の原理とモノクローナル抗体の作成、谷内昭、高橋利忠編、「モノクローナル抗体とがん―基礎と臨床―」、第2-14頁、サイエンスフォーラム出版、1985年)により作製することができる。例えば、マウスにマーカー遺伝子の翻訳産物等を市販のアジュバントと共に2〜4回皮下あるいは腹腔内に投与し、最終投与の約3日後に脾臓あるいはリンパ節を採取し、白血球を採取する。この白血球と骨髄腫細胞(例、NS-1, P3X63Ag8など)を細胞融合して前記翻訳産物に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。細胞融合はPEG法[J. Immunol. Methods,81(2): 223-228 (1985)]でも電圧パルス法[Hybridoma, 7(6): 627-633 (1988)]であってもよい。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、周知のEIAまたはRIA法等を用いて抗原と特異的に結合する抗体を、培養上清中から検出することにより選択することができる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養は、インビトロ、またはマウスもしくはラット、好ましくはマウス腹水中等のインビボで行うことができ、抗体はそれぞれハイブリドーマの培養上清及び動物の腹水から取得することができる。
【0046】
本発明の診断薬は、前記試薬に加え、マーカー遺伝子の転写産物または翻訳産物と試薬との複合体を測定する手段を含む、キットの形態で提供されていてもよい。この場合、キットに含まれる試薬および測定手段は、互いに隔離された形態、例えば、異なる容器に格納された形態で提供され得る。測定用手段は、試薬の種類に応じて、標識用物質で標識された検出物質であってもよい。標識用物質としては、例えば、FITC、FAM等の蛍光物質、ルミノール、ルシフェリン、ルシゲニン等の発光物質、3H、14C、32P、35S、123I等の放射性同位体、ビオチン、ストレプトアビジン等の親和性物質などがあげられる。
【0047】
本発明の診断薬は、試薬および測定用手段に加え、さらなる構成要素を含むキットの形態で提供されてもよい。より詳細には、本発明の診断薬がキットの形態で提供される場合、試薬および測定用手段の種類に応じたさらなる構成要素を含み得る。例えば、試薬がプライマーである場合、キットは、逆転写酵素、核酸抽出液または核酸抽出装置をさらに含み得る。試薬が核酸プローブである場合、キットは、核酸抽出液または核酸抽出装置をさらに含んでいてもよい。測定用手段が抗体である場合、キットは、蛋白質抽出液または蛋白質抽出装置をさらに含んでいてもよい。
【0048】
また、本発明の診断薬がキットの形態で提供される場合、被験対象から生体試料を採取し得る手段をさらに含み得る。かかる採取手段は、特に限定されないが、例えば、生検針等の生検器具、採血器具があげられる。
【0049】
本発明の診断薬は、アレイの形態で提供されることが好ましく、核酸アレイ(マイクロアレイと同義)、抗体アレイが例示される。
【0050】
好ましい核酸アレイは、固体支持体と当該表面に固定された、マーカー遺伝子(1)から選ばれる2〜169の遺伝子にそれぞれハイブリダイズする核酸プローブとを含む、固形癌の初発もしくは再発の予測または固形癌に対する治療効果を測定するための診断用アレイである。
【0051】
前記固体支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、メンブレン(例えば、ナイロン膜)、ガラス、プラスチック、金属などがあげられる。本発明における核酸アレイの形態としては、当該分野で周知の形態を用いることができ、例えば、支持体上で核酸が直接合成されるアレイ(いわゆるアフィメトリクス方式)、支持体上に核酸が固定化されるアレイ(いわゆるスタンフォード方式)、繊維型アレイ、電気化学的アレイ(ECA)等があげられる(例、特開2005−102694号公報参照)。
【0052】
本発明の試験方法に適用可能な、遺伝子発現解析方法を以下に説明する。
【0053】
(1.遺伝子発現プロファイリング)
遺伝子発現プロファイリングの方法には、ポリヌクレオチド解析に基づく方法、ポリヌクレオチドの配列決定に基づく方法、およびプロテオミクスによる方法などがある。最も一般的に用いられる方法で、サンプル中のmRNA発現を定量するために当技術分野において知られている方法には、ノーザンブロッティングおよびインサイチュハイブリダイゼーション((Parker & Barnes,Methods in Molecular Biology 106:247−283(1999));RNaseプロテクション・アッセイ法(Hod,Biotechniques 13:852−854(1992));および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT−PCR)などのPCR法(Weis et al.,Trends in Genetics 8:263−264(1992))などがある。あるいは、DNA二重鎖、RNA二重鎖、およびDNA−RNAハイブリッドの二重鎖またはDNA−蛋白質二重鎖などの特定の二重鎖を識別できる抗体を用いることもできる。配列決定による遺伝子発現解析法の代表的な方法には、遺伝子発現連続解析法(SAGE)、および大規模並列シグネチャー配列決定法(massively parallel signature sequencing:MPSS)による遺伝子発現解析法などがある。
【0054】
(2.PCRによる遺伝子発現プロファイリング法)
(a 逆転写酵素PCR(RT−PCR))
上記技術の中で、最も感度が高く、最も融通がきく定量法はRT−PCRであって、異なったサンプル集団、正常組織と癌組織、薬物治療の有無などにおけるmRNAレベルを比較したり、遺伝子発現のパターンの特徴を調べたり、密接に関係したmRNAを区別したり、また、RNAの構造を解析するために利用できる。
【0055】
最初の工程は、生体試料からRNAを単離することである。出発物質は、一般的には、ヒトの癌または癌細胞株、およびそれぞれに対応する正常な組織または細胞株から単離された全RNAである。このように、RNAは、被験対象から、あるいは、健康なドナーから採取した生体試料から単離することができる。RNAを抽出するための一般的な方法が、当技術分野において周知されており、Ausubel et al.,Current Protocols of Molecular Biology,John Wiley and Sons (1997)など、分子生物学の標準的な教科書に開示されている。具体的には、Qiagenなどの製造業者から入手した精製キット、緩衝液セット、およびプロテアーゼを用いて、製造業者の指示に従ってRNA単離を行うことができる。例えば、培養されている細胞の全RNAは、QiagenのRNeasyミニカラムを用いて単離することができる。これ以外の市販されているRNA単離用キットには、登録商標MasterPure全DNAおよびRNA精製キット(登録商標EPICENTRE、Madison、WI)、およびパラフィンブロックRNA単離用キット(Ambion,Inc.)などがある。組織サンプルからの全RNAは、RNA Stat−60(Tel−Test)を用いて単離することができる。生体試料から調製されたRNAは、例えば、塩化セシウム濃度勾配遠心法によって精製してもよい。
【0056】
RNAは、PCRの鋳型としては利用できないため、RT−PCRによる遺伝子発現プロファイリングの第一の工程は、RNA鋳型を逆転写させてcDNAとした後、PCR反応でそれを指数的に増幅させることである。2つの最も広く使用されている逆転写酵素は、トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV−RT)およびモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV−RT)である。逆転写工程は、一般的には、環境および発現プロファイリングの目的に応じて、特異的プライマー、ランダムなヘキサマー、またはオリゴ−dTプライマーを用いて開始される。例えば、GeneAmp RNA PCRキット(Perkin Elmer,CA,USA)を用いて製造業者の指示に従って、抽出されたRNAを逆転写することができる。そして、得られたcDNAを、次のPCR反応における鋳型として用いることができる。
【0057】
PCRの工程では、さまざまな熱安定的DNA依存型DNAポリメラーゼを使用するが、一般的には、5’−3’ヌクレアーゼ活性をもつが、3’−5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性をもたないTaqDNAポリメラーゼが用いられる。すなわち、登録商標TaqMan PCRは、一般的には、TaqポリメラーゼまたはTthポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性を利用して、その標的単位複製配列に結合しているハイブリダイゼーション用プローブを加水分解するが、同じ5’ヌクレアーゼ活性をもつ酵素を使用することもできる。2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCR反応に特有の単位複製配列を生成させる。この2つのプライマーの間に存在する塩基配列を検出するために別のオリゴヌクレオチド、すなわちプローブを設計する。このプローブは、Taq DNAポリメラーゼ酵素によって伸長することはできず、レポーター用の蛍光色素およびクエンチャー用の蛍光色素で標識されている。これら2種類の色素がプローブ上にあって互いに近くにあるときには、レポーター用色素からレーザーによって発生する光は、クエンチャー用の色素で消光されている。増幅反応の過程で、Taq DNAポリメラーゼ酵素が、鋳型依存的にプローブを切断する。その結果得られたプローブ断片は溶液中に解離して、放出されたレポーター用色素からのシグナルが、第2のフルオロフォアの消光作用から解放される。レポーター用色素の一分子は、新しい分子が合成される度に放出されるため、消光されないレポーター用色素の検出に基づいて、データを定量的に解釈することが可能となる。
【0058】
登録商標TaqMan RT−PCRは、例えば、登録商標ABI PRISM 7700配列検出キット(Perkin−Elmer−Applied Biosystems, Foster City,CA,USA)、またはLightcycler(Roche Molecular Biochemicals,Mannheim,Germany)など市販の装置を用いて行うことができる。好適な実施態様において、5’ヌクレアーゼ法は、登録商標ABI PRISM 7700配列検出キットなどのリアルタイム定量用PCR装置上で行う。この装置は、サーモサイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)カメラおよびコンピュータからなる。この装置は、サーモサイクラー上の96ウェルのフォーマットの中にあるサンプルを増幅する。増幅過程で、レーザーによって発生させた蛍光シグナルを、96ウェルすべてについて、光ファイバーケーブルを通じてリアルタイムで集めて、CCDで検出する。この装置は、器具を作動させるため、およびデータを解析するためのソフトウエアを含む。
【0059】
5’ヌクレアーゼアッセイのデータは、まず、Ctすなわち限界サイクル(threshold cycle)として表現される。上記したように、蛍光値は、サイクル毎に記録され、増幅反応のその時点までに増幅された産物の量を示す。蛍光シグナルが統計的に有意であると最初に記録された時点が限界サイクル(Ct)である。
【0060】
誤差とサンプル対サンプルにおける変動作用を最小にするために、通常、内部標準を用いてRT−PCRを実施する。理想的な内部標準は、さまざまな組織の中で一定のレベルで発現され、実験処理によって影響されないものである。遺伝子発現のパターンを正規化するためにもっとも頻繁に使用されるRNAは、ハウスキーピング遺伝子であるグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)およびb−アクチンのmRNAである。
【0061】
RT−PCR技術のより新しい変法は、リアルタイム定量的PCRであって、二重標識された蛍光発生プローブ(例、登録商標Taqmanプローブ)によってPCR産物の蓄積を決定する。リアルタイムPCRは、各標的配列に対する内部競合分子を正規化するために利用する定量的な競合PCRにも、サンプル中に含まれる正規化用遺伝子、またはRT−PCR用のハウスキーピング遺伝子を用いる定量的な比較PCRにも適合する。更なる詳細については、例えば、Held et al.,Genome Research 6:986−994(1996)を参照されたい。
【0062】
(b.マスアレイ装置)
Sequenom Inc.(San Diego,CA)によって開発されたマスアレイによる遺伝子発現プロファイリング法において、RNAを単離し逆転写した後、得られたcDNAを、一塩基を除くすべての位置で標的となるcDNA領域に一致する合成DNA分子(競合分子)で固定して、内部標準として使用する。このcDNA/競合分子の混合液をPCRで増幅してから、エビ由来アルカリホスファターゼ(SAP)酵素によるPCR後処理を行ない、その結果、残ったヌクレオチドを脱リン酸化する。アルカリホスファターゼを不活性化させた後、競合分子およびcDNAのPCR産物にプライマー伸長処理を行って、競合分子およびcDNAに由来するPCR産物に対し異なった質量シグナルを生じさせる。これらの生成物は、精製された後、マトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF MS)による解析に必要な成分を予め搭載しているチップアレイに分注される。そして、作成された質量スペクトルのピーク領域の比率を解析することによって反応液中に存在するcDNAを定量する。更なる詳細については、例えば、Ding and Cantor,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:3059−3064(2003)を参照されたい。
【0063】
(c.その他のPCR法)
さらなるPCRによる技術には、例えば、ディファレンシャルディスプレイ法(Liang and Pardee,Science 257:967−971(1992));増幅断片長多型法(iAFLP)(Kawamoto et al.,Genome Res.12:1305−1312(1999));登録商標ビーズアレイ技術(Illumina,San Diego,CA;Oliphant et al.,Discovery of Markers for Disease(Supplement to Biotechniques),June 2002;Ferguson et al.,Analytical Chemistry 72:5618(2000));遺伝子発現の迅速アッセイ法において、市販されているLuminex100LabMAP装置と複数に色分けされたミクロスフェア(Luminex Corp.,Austin,TX)を用いた遺伝子発現検出用ビーズアレイ(BADGE)(Yang et al.,Genome Res.11:1888−1898(2001));および高カバー率遺伝子発現プロフィール(HiCEP)解析法(Fukumura et al.,Nucl.Acids.Res.31(16)e94(2003))などがある。
【0064】
(3.マイクロアレイ)
示差的遺伝子発現は、マイクロアレイ技術を用いても同定または確認することができる。この方法においては、目的とするポリヌクレオチド配列(cDNAおよびオリゴヌクレオチドなど)をマイクロチップ基板上にプレートするか、整列させる。そして、整列させた配列を、目的とする細胞または組織由来の特異的DNAプローブとハイブリダイズさせる。RT−PCRと同様に、RNAの由来源は、生体試料から単離した全RNAである。
【0065】
マイクロアレイ技術の具体的な実施態様において、cDNAクローンのPCR増幅された挿入配列を高密度で基板に乗せる。目的とする組織から抽出されたRNAの逆転写によって蛍光標識を取り込むことにより、蛍光標識されたcDNAを作製することができる。チップに適用された標識cDNAは、アレイ上のDNAスポットに特異性をもってハイブリダイズする。非特異的結合を除去するための高厳密性洗浄の後、共焦点レーザー顕微鏡、またはCCDカメラなど、別の検出法によってチップを走査する。各アレイ上成分のハイブリダイゼーションを定量すると、対応するmRNAの豊富さを見積もることが可能になる。二色蛍光法によって、2種類のRNA由来源から作成され、別々に標識されたcDNAを対毎にアレイにハイブリダイズさせる。こうして、これら2種類の由来源からの各特定遺伝子に対応する転写産物の相対的な豊富さが同時に決定される。ハイブリダイゼーションを小規模化させたことによって、多数の遺伝子の発現パターンの簡便で迅速な評価が利用可能になる。このような方法は、細胞当り数コピーしか発現されない希少な転写産物を検出するのに必要とされる感度をもつことが示されており、少なくとも約2倍の発現レベルの違いを再現性をもって検出することが示されている(Schena et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(2):106−149(1996)。また、本発明においては、一色蛍光法によって検出することも可能である。マイクロアレイ解析法は、製造業者の指示に従って、Affymetrix GeneChip技術、Agilent Technologiesのマイクロアレイ技術またはIncyteのマイクロアレイ技術を用いるなどして、市販されている装置によって実施することができる。
【0066】
(4.遺伝子発現連続解析法(SAGE))
遺伝子発現連続解析法(SAGE)は、各転写産物に対するハイブリダイゼーション・プローブを用意する必要なしに、多数の遺伝子転写産物を同時かつ定量的に解析できる方法である。まず、短い配列タグ(約10〜14塩基対)を各転写産物内部のユニークな位置から得る場合には、各転写産物を個別に同定するのに十分な情報を含むタグを作成する。そして、多数の転写産物を一緒に連結させて、長い連続した分子を形成させると、配列決定することができ、多数のタグの同一性を同時に明らかにすることができる。転写産物の集団の発現パターンを、各タグの量を決定し、各タグに対応する遺伝子を同定することによって定量的に評価することができる。さらなる詳細については、例えば、Velculescu et al.,Science 270:484−487 (1995);およびVelculescu et al.,Cell 88:243−51(1997)を参照されたい。
【0067】
(5.大規模並列シグネチャー配列決定法(MPSS))
この方法は、Brenner et al.,Nature Biotechnology 18:630−634(2000)に記載されているが、ゲルによらないシグネチャー配列決定法を、個別の直径5μmのマイクロビーズ上の何百万もの鋳型のインビトロにおけるクローニングと組み合わせる配列決定法である。まず、インビトロ・クローニングによって、DNA鋳型のマイクロビーズライブラリーを構築する。その後、フロー・セルにおいて高密度(一般的には3×106マイクロビーズ/cm2よりも大きい)で、鋳型を含むマイクロビーズの平らなアレイを組み立てる。各マイクロビーズ上のクローニングされた鋳型の遊離末端を、DNA断片の分離を必要としない蛍光によるシグネチャー配列決定法を用いて同時に解析する。
【0068】
(6.免疫組織化学法)
免疫組織化学法も、本発明のマーカー遺伝子の発現レベルを検出するのに適している。すなわち、各マーカー遺伝子産物に対して特異的な抗体を用いて発現を検出する。これらの抗体は、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチン、またはホースラディッシュ・ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどのハプテン標識によって抗体そのものを直接標識して検出することができる。あるいは、非標識一次抗体を、抗血清、ポリクローナル抗血清、または一次抗体に特異的なモノクローナル抗体を含む、標識された二次抗体とともに用いる。免疫組織化学法のプロトコールおよびキットは、当技術分野において周知されていて市販されている。
【0069】
(7.プロテオミクス)
「プロテオミクス」という用語は、一定の時点でサンプル(例、組織、生物、または細胞培養物)の中に存在する蛋白質の全部と定義されている。とりわけ、プロテオミクスは、あるサンプルにおける蛋白質発現の全体的な変化を調べること(「発現プロテオミクス」とも呼ばれる)を含む。プロテオミクスは、一般的に以下の工程を含む:(1)2−Dゲル電気泳動(2−D PAGE)によるサンプル中の各蛋白質の分離、(2)このゲルから回収された各蛋白質の同定、例えば、質量分析またはN−末端配列決定法、および(3)バイオインフォマティクスを用いたデータ解析。プロテオミクス法は、他の遺伝子発現プロファイリング法の有用な補助法であり、本発明のマーカー遺伝子の産物を検出するために単独または他の方法と組み合わせて使用することができる。
【0070】
本発明は、本発明の試験方法および診断薬を適用することにより、生体内に存在する固形癌幹細胞を固形癌が初発または再発する前に検出して、発症を予測することが可能である。あるいは、固形癌の発症を初期のステージで検出して癌患者の早期治療に導くことも可能である。さらに、癌患者に対する治療効果を固形癌幹細胞の存否を指標にして評価することも可能である。
【0071】
また、本発明は、固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現または当該遺伝子の翻訳産物の活性を抑制し得る物質を含む、固形癌の初発または再発の予防または治療剤を提供する。
【0072】
固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現を抑制し得る物質としては、例えば、アンチセンス核酸(例、DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、あるいはそれらのキメラ分子)、リボザイム、RNAi誘導性核酸(細胞内に導入されることによりRNAi効果を誘導し得るポリヌクレオチド、好ましくはRNA:例、siRNA)、並びにそれらの発現ベクターがあげられる。
【0073】
固形癌幹細胞マーカー遺伝子の翻訳産物の活性を抑制し得る物質としては、例えば、抗体(例、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体)、ドミナントネガティブ変異体、アプタマー、並びにそれらの発現ベクターがあげられる。当該物質は、各マーカーに直接または間接に作用する阻害物質であってもよく、NF-κBの阻害剤DHMEQなどが例示される。
【0074】
本発明の剤に有効成分として含有する抗体は、キメラ抗体(chimeric antibody)、ヒト化抗体(humanized antibody)、ヒト型抗体(human antibody)が好ましく、ヒト化抗体およびヒト型抗体がより好ましい。キメラ抗体は、例えば「実験医学(臨時増刊号), Vol.6, No.10, 1988」、特公平3-73280号公報等を、ヒト化抗体は、例えば特表平4-506458号公報、特開昭62-296890号公報等を、ヒト抗体は、例えば「Nature Genetics, Vol.15, p.146-156, 1997」、「Nature Genetics, Vol.7, p.13-21, 1994」、特表平4-504365号公報、国際出願公開WO94/25585号公報、「日経サイエンス、6月号、第40〜第50頁、1995年」、「Nature, Vol.368, p.856-859, 1994」、特表平6-500233号公報等を参考にそれぞれ作製することができる。
【0075】
ドミナントネガティブ変異体は、固形癌幹細胞マーカー遺伝子の各翻訳産物に対する変異の導入によりその活性が低減したものである。ドミナントネガティブ変異体は、天然の翻訳産物と競合することで間接的にその機能を阻害することができる。変異としては、例えば、機能性部位における、当該部位が担う機能の低下をもたらすようなアミノ酸の変異(例、1以上のアミノ酸の欠失、置換、付加)があげられる。
【0076】
本発明の剤が発現ベクターを有効成分とする場合、当該発現ベクターは、上記タンパク質をコードするオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドが、投与対象である生体の細胞内でプロモーター活性を発揮し得るプロモーターに機能的に連結されていなければならない。ここで、発現ベクターが含み得るプロモーターは、その制御下にある因子の発現を可能とする限り特に限定されず、因子の種類により適宜選択され得るが、例えば、polIIIプロモーター(例、tRNAプロモーター、U6プロモーター、H1プロモーター)、哺乳動物用プロモーター(例、CMVプロモーター、CAGプロモーター、SV40プロモーター)、EF1αプロモーターなどがあげられる。また、発現ベクターは、好ましくは核酸分子をコードするオリゴ(ポリ)ヌクレオチドの下流に転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含む。
【0077】
発現ベクターとして使用される基本骨格のベクターは、プラスミド又はウイルスベクターであり得る。特に、ヒト等の哺乳動物への投与に好適なベクターとしては、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、センダイウイルス、レンチウイルス等のウイルスベクターがあげられる。
【0078】
本発明の剤は、固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現または当該遺伝子の翻訳産物の活性を抑制し得る物質に加え、任意の担体、例えば医薬上許容され得る担体を含むことができる。医薬上許容され得る担体としては、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ナトリウム−グリコール−スターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑剤、クエン酸、メントール、グリシルリシン・アンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水、オレンジジュース等の希釈剤、カカオ脂、ポリエチレングリコール、白灯油等のベースワックスなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0079】
経口投与に好適な製剤は、水、生理食塩水のような希釈液に有効量の物質を溶解させた液剤、有効量の物質を固体や顆粒として含んでいるカプセル剤、サッシェ剤又は錠剤、適当な分散媒中に有効量の物質を懸濁させた懸濁液剤、有効量の物質を溶解させた溶液を適当な分散媒中に分散させ乳化させた乳剤、あるいは散剤、顆粒剤等である。
【0080】
非経口的な投与(例、静脈内注射、皮下注射、筋肉注射、局所注入など)に好適な製剤としては、水性および非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。当該製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、有効成分および医薬上許容され得る担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解又は懸濁すればよい状態で保存することもできる。
【0081】
本発明の剤の投与量は、有効成分の活性や種類、投与様式(例、経口、非経口)、病気の重篤度、投与対象となる動物種、投与対象の薬物受容性、体重、年齢等によって異なり一概に云えないが、通常、成人1日あたり有効成分量として約0.001mg〜約5.0gである。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0083】
細胞培養
乳癌細胞株HCC70、HCC1954、MCF7、SK-BR-3、AU-565、BT-474、T-47DおよびMDA-MB-231は、American Type Culture Collection (ATCC)から購入した。細胞は、製造業者の指示通りに培養した。
【0084】
FACS
細胞をCD24-FITC,CD44-PE抗体(BD Pharmingen)で染色した後、FACS VantageSE (BD Bioscience)によりソーティングまたは解析し、Propidiumiodide (Sigma)を用いて死細胞を除去した。データは、FlowJo 7.2.2により解析した。
【0085】
レンチウイルスベクターの構築
ホタルルシフェラーゼまたはd2Venus(黄色蛍光タンパク質の改良版)(Nat Biotechnol, 20: 87-90 (2002))(A. Miyawaki博士から供与、RIKEN, Wako, Japan)をコードする遺伝子を有し、エロンゲーションファクター1-アルファ(EF1α)プロモーターから発現する第3世代自己不活化レンチウイルストランスファーベクタープラスミドを、H. Miyoshi博士(RIKEN, Tsukuba, Japan)から供与されたコンストラクトを用いて、標準的な分子生物学的技術(Science, 283: 682-686 (1999))により調製した。また、これらのベクターは、セントラルポリプリントラックおよびウッドチャック肝炎ウイルスポストレギュラトリーエレメントも含んでいた。ウイルスの上清は、パッケージングプラスミド(pMDLg/p.RRE)、HIV rev発現プラスミド(pRSV-rev)を用いて293T細胞の一過性トランスフェクションにより調製し、水疱性口内炎ウイルスG (VSV.G)タンパク質(pMD.G)の偽型であった(Gene Ther, 10: 1446-1457 (2003))。高力価のウイルスストックは超高速遠心分離により調製した。これらのベクター(HIV-EF1a-Luciferase, HIV-EF1a-d2Venus)の機能的力価は、リアルタイムPCR法(DNA力価)を用いるHeLa細胞の感染により決定した(Gene Ther, Proc Natl Acad Sci U S A 102: 15545-15550 9: 1155-1162 (2002))。本実験で使用するすべてのMOI(multiplicity of infection)値は、DNA力価から計算した。
【0086】
レンチウイルスベクターでの細胞の形質導入
HCC70、HCC1954およびMCF7 細胞をペレット化し、1.5-ml Eppendorf チューブ内でMOI 10 のウイルス上清とインキュベートした。5% CO2下、37℃で2時間インキュベートした後、インビボ実験で使用するまで細胞を培養した。HIV-EF1α-d2Venusを形質導入効率の確認に使用したので、HIV-EF1α-LuciferaseおよびHIV-EF1α-d2Venusを別々のチューブ内で同時に感染させた。3回よりも多い継代の後、細胞をFACS解析のために使用するか、異種移植片として使用した。
【0087】
異種移植
6週齢雌性NOD/SICDマウスをイソフルラン(Abott Japan)で麻酔し、0.72mg /ペレット/ 60 日放出β-Estradiol(E2)ペレット(Innovative research of America)を首の後ろに皮下移植した(MCF7移植の場合のみ)。ソーティングした1x102〜3x104細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)-(-)/Matrigel(BD Biosciences)と1:1の容量で100μl混合液中に懸濁し、乳腺に注入した。デヒドロキシメチルエポキシキノマイシン(DHMEQ)を0.5%クロロメチルセルロースに懸濁し、12mg/kgを含む100μlを、週3回腹腔内注射により投与した。アバスチン(Chugai Pharmaceutical)を生理食塩水で希釈し、2週間毎に5mg/kgを投与した。対照群は同容量の溶媒を注入した。すべての処置は、腫瘍細胞移植後2日目に開始した。
【0088】
IVISTM
マウスを、麻酔条件下、150mg/kgのルシフェリン(Promega)のPBS(-)溶液を腹腔内注射し、ルシフェリン注入5分後にIVISTMイメージングシステム(Xenogen)によりイメージを記録した。バイオルミネッセンスイメージをLivingimage (Xenogen)により定量した。IVISTMによる観察を、注射直後から4週目まで週に1回続けた。DHMEQまたはAvastinTM処置においては、32日目まで週に2回ルシフェラーゼ活性により腫瘍の増殖をモニターし、担体投与群(対照)との比較を行った。
【0089】
組織化学的解析
異種移植した細胞由来の腫瘍を、10%中和緩衝ホルマリン(NBF)で固定し、パラフィンに包埋し、ヘマトキシリン-エオジン(HE)で染色した。免疫組織化学的アッセイは、Ventana HX System Benchmark (Ventana Medical Systems, Tucson, AZ)を用いて、ホルマリン固定しパラフィン包埋した切片で行った。抗CK14(Abcam)またはCK18(Abcam)抗体は、それぞれ1:100または1:200希釈で用いた。
【0090】
マイクロアレイ解析
HCC70、HCC1954またはMCF7細胞株の全集団の1%の細胞(CD24-/lowCD44+に属する)をCD24の最低発現レベルに基づいて精製し、各細胞株の全集団の10%の細胞(CD24+CD44+に属する)を対照集団(CD24+)として精製した。TIC集団としてCD24-/low CD44+に属する、全集団の1%細胞を使用した場合と10%細胞を使用した場合について、腫瘍形成に有意差はなかった。マイクロアレイ解析を既報に従って行った(Clin Cancer Res, 13: 5703-5709 (2007))。要約すると、Trizol(Invitrogen)を用いて、製造業者の指示書に従って試料から全RNAを単離した。6個の試料を、Affimetrix high-density oligonucleotide array Human Genome U133 Plus 2.0で解析した。出力されたイメージをMAS5アルゴリズムでプロセシングし、標的強度100に包括的にスケールした。CD24-/lowCD44+集団とCD24+ CD44+集団との間の差に基づく遺伝子シグネチャーを同定するために、GSEAを行った(Proc Natl Acad Sci U S A, 102: 15545-15550 (2005))。すべてのプローブセットを各群発現値の幾何平均の比で前もってランクし、次に、この順序付けられたプローブセットリストをGSEAインプットとして使用した。詳細なGSEAセッティングパラメーターは、以下の通りである。順列の数は2500であり、小さなサンプルサイズの問題を回避するために、順列の型がgene_setに適するように設定される。
【0091】
定量RT-PCR
全RNAをIsogen(Nippon Gene)を用いて製造業者のプロトコールに従って単離した。1μgの全RNAを、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems)により逆転写した。定量RT-PCRを、Step ONE plus(Applied Biosystems)により40サイクル内で行った。用いたプローブは、beta-Actin(Hs99999903_m1)、VEGFA(Hs00900054_m1)、IL8(Hs00174103_m1)、TLR1(Hs00413978_m1)、SDF2L1(Hs00222786_m1)、CCL5(Hs00174575_m1)およびCD24(Hs00273561_s1)に対するTaqmanプローブであった。定量は、標準曲線に基づいて行った。
【0092】
NF-κB活性の定量
核抽出物を、Nuclear Extract Kit(Active Motif)を用いて、製造業者のプロトコールに従って調製した。要約すると、CD24-/lowCD44+集団および CD24+CD44+集団をHCC1954細胞のバルクからソーティングし、核抽出物を単離した。NF-κB p65活性は、TransAM NF-κB p65 Transcription Factor Assay kit(Active Motif)を用いて、製造業者のプロトコールに従って測定した。各集団の核抽出物を4セット調製し、20μgの核抽出物をp65NF-κB活性アッセイに使用した。
【0093】
(結果)
乳癌細胞株におけるTIC集団
種々の型の乳癌細胞株にCD24-/low CD44+細胞集団が存在するか否かを調べるため、8個の乳癌細胞株におけるこれらの表面マーカーの発現をFACSにより解析した(図1A)。各細胞株は、CD24およびCD44の様々な発現レベルを有することがわかった。これらの中で、HCC70、HCC1954、MCF7およびMDA-MB-231細胞は相対的に高いパーセンテージのCD44+細胞集団を有し、一方、BT-474、AU-565、SK-BR-3およびT47-D細胞はCD44の低発現レベルを示した。TIC集団は初期ステージの乳癌組織の大多数で小さい集団として残存することが予想されるので、CD24-/lowCD44+集団および対照としてCD24+CD44+ 集団の小集団を得ることができるHCC70、HCC1954およびMCF7細胞を選択した。
【0094】
乳癌細胞株におけるCD24-/lowCD44+細胞集団の腫瘍形成能
これまで、TICを同定するための究極の判断基準は、インビボの腫瘍形成能アッセイである(Cancer Res, 66: 9339-9344 (2006))。免疫不全マウスとして通常使用されるNOD/SCIDマウスにおけるTICの腫瘍形成能は、触診可能な腫瘍の数を計数して腫瘍の直径を測定することにより調べられてきた。定量的結果の質を改善するために、インビボバイオルミネッセンスイメージング(IVISTM)を利用して腫瘍の増殖を測定した。最初に、ルシフェラーゼまたはd2Venus(黄色蛍光タンパク質の改良版)をコードするcDNAを含むレンチウイルスベクターで細胞を形質導入した。形質導入効率を、FACSを用いてd2Venusの発現レベルにより測定した。図7に示すように、各細胞株で高形質導入効率が得られ、HCC70、HCC1954およびMCF7細胞について、それぞれ、66.63%、92.60%および99.29%であった。次に、ルシフェラーゼ発現レンチウイルスベクターをこれらの細胞に形質導入した。ルシフェラーゼ発現レンチウイルスベクターの形質導入に対してd2Venusと同様のレベルのMOIを用いたので、同様のレベルのルシフェラーゼの発現が各細胞株(HCC70-Luc、HCC1954-LucまたはMCF7-Luc)で得られたと仮定する。これらの細胞株は、TICが濃縮されたと考えられるイメージングシステムであり、CD24+CD44+集団は対照として使用した。次いで、これらの細胞をNOD/SCIDマウスの乳腺に移植し、腫瘍の増殖をIVISTMを用いてルシフェラーゼ活性を定量することにより測定した。CD24-/lowCD44+集団中の細胞を左側に移植し、CD24+CD44+集団中の細胞を右側に移植した。両集団の1万個の細胞のHCC1954-LucおよびMCF7-Lucならびに3x104個の細胞のHCC70-Lucをそれぞれ移植した(図2A、C,D)。4週間後、ルシフェラーゼ活性の解析により、HCC1954-LucおよびMCF7-LucのCD24-/lowCD44+集団中の細胞が対照集団に比べて有意に大きな腫瘍を形成した(p<0.05)ことが示された。HCC70-LucのCD24-/lowCD44+集団中の細胞に由来する腫瘍サイズの平均は、有意差が示されなかったが、対照のものよりも高かった。
【0095】
さらに、1x102個のHCC1954-Lucの両集団を移植し、CD24-/lowCD44+集団に由来する腫瘍は非常に迅速に増殖し、4週間後、CD24-/low CD44+集団のみしか腫瘍を形成しなかった(n=6)(図2B)。これらの結果は、乳癌細胞株におけるCD24-/lowCD44+集団は対照集団に比べてより高い腫瘍形成能を有することを示唆する。したがって、乳癌細胞株におけるCD24-/lowCD44+ 集団中の細胞はTIC様に挙動すると思われる。対照集団よりもCD24-/low CD44+細胞集団のより高い腫瘍形成能は、HCC1954-Luc細胞で最も明確であり、これらの細胞を用いてさらなる解析を行うことを決定した。
【0096】
HCC1954由来の腫瘍の組織化学的解析
1x104細胞の各集団を移植した場合の各集団におけるHCC1954-Luc細胞由来の腫瘍の組織学を調べた。ヘマトキシリン-エオジン(HE)染色により、CD24-/lowCD44+細胞に由来する腫瘍はストローマ成分に関連して、様々なモルフォロジーを有する浸潤パターンを独占的に示したことが明らかになった(図3A)。一方、対照細胞由来の腫瘍は、ストローマ成分に関連して、浸潤パターンと管状形成に分化したパターンとの両方から構成されていた(図3B)。ストローマ成分の量は、対照細胞のものに比べてCD24-/lowCD44+細胞に由来する腫瘍で多かった。組織学の分化パターンが対照由来の腫瘍でのみ観察されたという事実は、分化した腫瘍は非-TIC細胞から生じ、TIC細胞から生じたのではないことを示唆する。
【0097】
次に、サイトケラチンマーカーに対する免疫染色により、HCC1954-Luc細胞由来の腫瘍の細胞系譜および分化状態を評価した。CD24-/lowCD44+細胞由来の浸潤病変は、筋上皮細胞マーカーサイトケラチン(CK)-14に対してほとんど陽性であった(図3C)が、対照的に、内腔マーカーCK18に対しては陽性が少なかった(図3E)。他方、対照細胞由来の浸潤病変部は筋上皮細胞マーカーCK14に対してほとんど陰性であり(図3D)、内腔マーカーCK18に対しては陽性であった(図3F)。このことから、TIC細胞は異種移植した腫瘍の基底細胞表現型を与えていることが示唆される。
【0098】
CD24-/low CD44+細胞で制御される経路および主要エフェクターを抽出するための遺伝子発現プロファイリングおよびGSEA
CD24-/low CD44+細胞および対照細胞で高度に濃縮される発現遺伝子を同定するため、HCC70、HCC1954およびMCF7を用いるDNAマイクロアレイ解析を行った。細胞集団を厳密に選択するため、全集団の1%であるCD24-CD44+ 細胞集団のみを使用した。対照として、全集団の約10%であるCD24+CD44+ 細胞集団を使用した。3つの細胞株間でCD24-/lowCD44+集団/CD24+CD44+集団発現比の幾何平均で、マイクロアレイデータをランクした。次いで、GSEAを適用した(Proc Natl Acad Sci U S A, 102: 15545-15550 (2005))。TGF-β経路およびオンコジーンRas経路を含む遺伝子セットがCD24-/low-CD44+集団でアップレギュレートされていることに注目した(図4A)。さらに、TNFおよび IFN応答遺伝子シグネチャーがCD24-/low-CD44+集団で顕著に濃縮されていることがわかった。個々の遺伝子に関して、ジーンオントロジー(GO)に基づく分類により、対照細胞集団に比べてCD24-/low-CD44+において、幹細胞性、細胞増殖/維持、細胞接着、細胞運動性、浸潤、血管新生、成長因子/サイトカイン、免疫応答/抑制及び代謝に関する遺伝子が高度に現れていることが明らかになった。これらすべての遺伝子は、発癌に関与している可能性がある。例えば、GSEAから抽出された経路に関与する遺伝子の中で、幹細胞性関連遺伝子としてNotch2、細胞浸潤または接着関連遺伝子としてLAMA3、血管新生関連遺伝子としてKLF5、EPAS1およびVEGFを見出した。他方、GSEAは、対照集団で高度に発現する遺伝子が多数の細胞増殖/維持関連遺伝子を有する細胞周期関連遺伝子セットのいくつかと相関していることを明らかにした。GESAで抽出された経路およびランクされた個々の遺伝子のリストに基づき、TIC中の主要なエフェクター分子の候補をさらに抽出した。GSEAの結果でも示されたように、血管内皮細胞増殖因子A(VEGFA)の発現がオンコジーンRasで形質転換した細胞でアップレギュレートされていることが知られている(Nature, 439: 353-357 (2006))。TNF応答経路とIFN応答経路との間で共通する重要なエフェクター分子の1つはNF-κBである。NF-κBのサブユニットであるNF-κBインヒビターAのみがGESA遺伝子セットのTNF応答経路に現れていたが、FACSによりソーティングしたCD24-/low-CD44+ and集団および対照集団の核抽出物でNF-κB活性を定量した。NF-κBの活性はCD24+-CD44+よりもCD24-/low-CD44+において有意に高いことがわかった(n=4)(図4C)。NF-κB活性は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インターロイキン8(IL8)およびケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5(CCL5)を含む多数の炎症性サイトカイン/ケモカインの発現に関与する。前記サイトカイン/ケモカインはストローマ様活性と関連するパラクライン因子である(J Immunol, 158: 3483-3491 (1997), Immunol Lett, 108: 121-128 (2007), Mol Cell Biol, 17: 4015-4023, (1997), Mol Cell Biol, 16: 4231-4239, (1996))。また、VEGFAおよびIL8は腫瘍形成中の血管新生に対する主要な因子として知られている(Angiogenesis, 11: 101-106 (2008))。高ランクされた遺伝子の中で、NF-κBの上流の別の活性因子であるToll様受容体1(TLR1)、ならびにTGFβ経路の重要な生物学的アウトプットである上皮間葉移行(EMT)を介してアップレギュレートされることが報告されているストローマ細胞由来因子2-ライク1(SDF2L)にも注目した(Cancer Res, 68: 989-997 (2008), Cell, 134(2):215-30 (2008), Nat Rev Cancer, 9: 57-63 (2009))。これらの遺伝子の発現レベルを定量RT-PCR(qRT-PCR)により測定し、対照細胞よりもCD24-/low-CD44+集団で有意に高いレベルで実際に発現していることを確認した(図4B)。CD24のmRNAは、対照集団においてより高く、タンパク質の発現レベルと一致した(図4B)。
【0099】
NF-κB特異的阻害剤であるDHMEQでの処置によるCD24-/low-CD44+集団細胞に由来する腫瘍形成能の低下
TIC様細胞におけるNF-κBの活性増加およびVEGFAの発現増加を見出したので、次に、各分子特異的阻害剤を用いて本マウスモデルの腫瘍形成におけるそれらの役割を調べた。TICは腫瘍形成の開始または再発において重要な役割を果たすと考えられるので、相対的に少数のTIC様細胞から初期の時点で腫瘍形成を分析することに焦点を当てた。104個のCD24-/low-CD44+集団の細胞または対照としてCD24+-CD44+集団の細胞を、図2Aに示すようにNOD/SCIDマウスに移植し、NF-κB特異的阻害剤であるデヒドロキシメチルエポキシキノマイシン(DHMEQ)または抗VEGFA抗体であるAvastinTM(bevacizumab)で処置した。腫瘍形成の過程での効果を分析するため、移植2日後に阻害剤処置を開始した。腫瘍の形成をインビボイメージングでモニターした。DHMEQで処置したCD24-/low-CD44+細胞集団由来の腫瘍のルシフェラーゼ活性は、未処置の細胞に由来する腫瘍に比べて有意に低下していることがわかった(図5A)。しかしながら、DHMEQで処置した対照細胞由来の腫瘍は、統計学的に有意差はなかったけれど、未処置の対照細胞由来の腫瘍よりも大きくなる傾向を示した(図5B)。他方、bevacizumabは、処置または未処置のいずれの条件でも、CD24-/low-CD44+細胞集団の腫瘍増殖に有意差を示さなかった(図5C)。bevacizumabは、どちらかというと、対照細胞由来の腫瘍形成を低下させ、それは30日を超える日数を要した(データ示さず)。これらの結果は、NF-κBが非TIC様細胞ではなくTIC様細胞に由来する腫瘍形成に関して主要なエフェクターとして作用することを示唆する。
【0100】
(考察)
本研究において、本発明者らは、乳癌細胞株を用いてTICから発生する腫瘍形成の過程の一部を再現するマウスモデルを確立した。対照であるCD24+CD44+集団のものよりもCD24-/lowCD44+集団に由来する細胞がより大きな腫瘍を形成することを示した。重要なことは、100個という少ない数の細胞を移植した場合、対照細胞ではなくCD24-/lowCD44+集団における細胞のみが腫瘍を形成したことである。このことは、TICが原発乳癌組織に存在していると信じられている特徴に基づくTICとしての重要な基準の1つである。したがって、細胞株のCD24-/lowCD44+集団中の細胞がTIC様細胞で濃縮されている可能性があり、このことはTIC様細胞とその他の細胞に分割される細胞集団に不均一性があることを明らかにするであろう。本研究でのデータと一致して、他の細胞株もTIC様細胞集団を有することがごく最近報告されている(Breast Cancer Res, 10: R25 (2008))。したがって、いくつかの乳癌細胞株は不均一であり、全く異なる細胞集団:TIC様細胞およびその他の細胞(両者は、原発癌組織中のTIC様細胞およびその他の細胞の特徴をある程度まで保存している)を有すると推論することは合理的である。
【0101】
さらに、ルシフェラーゼレポーターで細胞を標識し、100個の細胞という少ない数を検出可能な高感度かつ定量的なインビボイメージングによりNOD/SCIDマウスの乳腺中で腫瘍形成をモニターする系を確立した。TICは前癌性ステージから悪性ステージまで移行中または少ない腫瘍細胞での再発中の腫瘍形成に対して重要な役割を果たすと考えられるので、このモデルはかかるステージにおける腫瘍形成をモニターするのに有用である。実際、このモデルを用いて、TICの標的候補であるNF-κBおよびVEGFAの阻害剤を評価することが可能であった(図5)。
【0102】
さらに、TIC様細胞由来の腫瘍がより悪性度の高い組織像を示し、CK14陽性細胞の多い対照由来腫瘍と比べてCK18陽性の細胞が多かった。このことは、TICがこのモデルで分化したパターンを有する細胞には分化しないかもしれないことを示唆し、正常幹細胞が特定の組織においてすべての細胞型を発生させるけれども、TICは腫瘍組織においてすべての細胞型に分化する必要がないかもしれない可能性を生じさせる。しかしながら、この移植モデルは、TICが乳癌のすべての細胞型に分化する能力を再現しないという可能性を排除することはできない。この問題を明確にするために、他のタイプのインビボモデルを解析する必要がある。
遺伝子発現プロファイリングとGSEA解析を組み合わせることにより、いくつかのシグナル伝達経路および多数の遺伝子がCD24+CD44+対照集団よりはむしろCD24-/lowCD44+ TIC様細胞に関与していることが示唆された。GO分類により、様々な遺伝子がCD24-/low CD44+ TIC様細胞の悪性特性を表す可能性を明らかにした。正常乳腺組織に由来するCD24-/low CD44+集団と原発乳癌組織に由来するCD24+CD44+集団における細胞を用いた以前の報告で見出された遺伝子と重複する遺伝子が存在する。TGFβ経路に関与するいくつかの遺伝子は、CD24-/lowCD44+集団に濃縮されており、既報と一致する(Cancer Cell, 11: 259-273, (2007))。重要なことに、CD24-/low CD44+集団における新規の遺伝子セットとして、オンコジーンRas経路ならびにTNFおよびIFN応答経路に関連する遺伝子を見出した。これらは、遺伝子発現パターンの観点から、TICと正常幹細胞との相違点である。このことは、個々の遺伝子リストからTIC様細胞における可能な分子標的をさらに抽出することを可能にする。したがって、GSEAは、TIC様細胞において可能な多数の経路とのベストフィットを示す経路を明確に解明した。
【0103】
ストローマ様活性に関連した遺伝子は、CD24+CD44+集団に比べてCD24-/low CD44+集団に高度に濃縮されていたことが注目される。前記遺伝子は、炎症性サイトカイン、血管新生サイトカイン、SDF2LおよびToll様受容体などである。これらのストローマ様活性は、浸潤、血管新生および免疫応答/抑制に寄与すると考えられている。最近、いわゆる癌関連線維芽細胞(CAF)と一致する腫瘍ストローマが腫瘍形成に主要な役割を果たすことを提案する証拠が増加している(Nat Rev Cancer, 6: 392-401 (2006))。これらは、成長因子、サイトカインおよびケモカインを分泌して、パラクラインメカニズムにより炎症性応答および血管新生を誘導する。次いで、腫瘍細胞はこれらの活性を腫瘍の進行に用いているように思われる。本発明者らの知見は、TICがCAFのように挙動し、成長因子、サイトカインおよびケモカインを産生することにより腫瘍形成に関与していることを示唆する。この観点から、TICは腫瘍形成の進行に対して微小環境、すなわち、癌幹細胞ニッチを積極的に産生し維持している可能性がある。
【0104】
最近、脳腫瘍幹細胞が血管近辺、血管周囲ニッチに局在し、異種移植モデルで内皮細胞により幹細胞状態に維持されていること、およびbevacizumabを用いる抗血管新生療法が腫瘍の退縮に効果を有することが報告されている(Cancer Cell, 11: 69-82, (2007))。しかしながら、本モデルにおいて、bevacizumabはTIC様細胞に由来する腫瘍形成に有意な効果を有さなかった(図5)。この相違点に関する2つの可能な理由が存在する。血管は本モデルにおいて癌幹細胞ニッチを維持するためには必須ではないかもしれない、あるいは、IL-8等の他のサイトカインも有意な効果を有するかもしれない(図5)。
【0105】
TGFβ経路は、細胞で活性化される唯一の経路である場合、腫瘍形成を防止することはよく知られている(Cell, 134:215-30 (2008))。しかしながら、悪性の状態では、TGFβ経路は他の経路と協調して、腫瘍形成を進行させる。オンコジーンRas経路、炎症性応答およびNF-κBの活性化はかかる協調経路であることが報告されている(Cell Cycle, 3: 1477-1480 (2004))。
【0106】
様々な周期およびカスケードにおいて代謝に関連する多数の遺伝子が存在することにも注目した。このことは、TIC様細胞では代謝が非常に活発であることを示唆する。これらすべての知見は、TICが癌において他の細胞よりも悪性であることを示唆する。細胞株は原発細胞とは異なる追加の特性を有する可能性も排除できない。例えば、対照細胞中に濃縮されて見出された細胞周期関連遺伝子セットは、インビトロでの培養適合をいくらか反映している可能性があり、原発組織由来の対照細胞がほとんどインビボで腫瘍を生成しないけれども、高進された細胞周期活性は、対照細胞に移植後のインビボ増殖を与える可能性があった。(図4A)。
【0107】
NF-κBの活性は、対照細胞よりもTIC様細胞で高いことを示した。さらに、NF-κB特異的阻害剤DHMEQは、相対的に少ない数の細胞を移植したすぐ後にマウスを処置した場合、本マウスモデルにおいて、TIC様細胞由来の腫瘍形成を抑制した。したがって、NF-κBは乳癌の初期ステージの処置のために、および再発の予防のために、有望な標的であると思われる。本知見は、臨床検体を用いて広範に評価すべきであるが、NF-κB阻害剤がインビトロで、別の乳癌細胞株由来の副集団(SP)画分であるMCF7細胞の増殖を阻害または抑制したことがごく最近報告されていた(Breast Cancer Res Treat, 111: 419-427 (2008))。TICもSP画分の細胞に濃縮されていると思われるので、本研究のアイデアと一致する(Exp Cell Res, 312: 3701-3710 (2006))。他方、驚くべきことに、DHMEQ処置対照細胞が未処置細胞よりも大きな腫瘍を発生させたことを見出した(図5B)。このことは、臨床上、適切な患者にはNF-κB標的療法を選択すべきであるという重要な課題を起こさせる。例えば、血清マーカーを用いてTICを含む乳癌組織中のNF-κBの活性を測定する診断方法を開発することは明らかに重要である。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、固形癌の早期診断、再発の診断および治療効果の診断が可能になる。また、固形癌の根治にもつながることが期待される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形癌の初発または再発を予測するための試験方法であって、被験対象から採取した生体試料における固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現レベルを、当該遺伝子の転写産物または翻訳産物を対象として測定する工程を含み、当該遺伝子が
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
からなる群より選ばれる2〜169の遺伝子である、方法。
【請求項2】
固形癌を保有する患者に対する癌治療の効果を測定するための試験方法であって、当該患者から採取した生体試料における固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現レベルを、当該遺伝子の転写産物または翻訳産物を対象として測定する工程を含み、当該遺伝子が
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
からなる群より選ばれる2〜169の遺伝子である、方法。
【請求項3】
生体試料が血漿、血清、リンパ液、骨髄液、唾液、精液または尿である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
固形癌が乳癌である、請求項1〜3いずれかに記載の方法。
【請求項5】
固形癌の初発もしくは再発を予測または固形癌に対する治療効果を測定するための診断薬であって、下記固形癌幹細胞マーカー遺伝子:
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
からなる群より選ばれる2〜169の遺伝子の発現レベルを検出するための試薬を含有する診断薬。
【請求項6】
固形癌が乳癌である、請求項5に記載の診断薬。
【請求項7】
試薬が固形癌幹細胞マーカー遺伝子の転写産物または翻訳産物に対する、プライマー、核酸プローブおよび抗体から選ばれる、請求項5または6に記載の診断薬。
【請求項8】
固体支持体および当該支持体の表面に固定された核酸プローブを含む、固形癌の初発もしくは再発または固形癌に対する治療効果の診断用アレイであって、当該核酸プローブが以下の固形癌幹細胞マーカー遺伝子:
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
から選ばれる2〜169の遺伝子にそれぞれハイブリダイズするプローブである、アレイ。
【請求項9】
前記核酸プローブが約20から80塩基長である、請求項8に記載のアレイ。
【請求項10】
固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現または活性を抑制し得る物質を含む、固形癌の初発または再発の予防または治療剤であって、当該遺伝子が
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
からなる群より選ばれる、予防または治療剤。
【請求項11】
固形癌が乳癌である、請求項10に記載の予防または治療剤。
【請求項1】
固形癌の初発または再発を予測するための試験方法であって、被験対象から採取した生体試料における固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現レベルを、当該遺伝子の転写産物または翻訳産物を対象として測定する工程を含み、当該遺伝子が
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
からなる群より選ばれる2〜169の遺伝子である、方法。
【請求項2】
固形癌を保有する患者に対する癌治療の効果を測定するための試験方法であって、当該患者から採取した生体試料における固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現レベルを、当該遺伝子の転写産物または翻訳産物を対象として測定する工程を含み、当該遺伝子が
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
からなる群より選ばれる2〜169の遺伝子である、方法。
【請求項3】
生体試料が血漿、血清、リンパ液、骨髄液、唾液、精液または尿である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
固形癌が乳癌である、請求項1〜3いずれかに記載の方法。
【請求項5】
固形癌の初発もしくは再発を予測または固形癌に対する治療効果を測定するための診断薬であって、下記固形癌幹細胞マーカー遺伝子:
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
からなる群より選ばれる2〜169の遺伝子の発現レベルを検出するための試薬を含有する診断薬。
【請求項6】
固形癌が乳癌である、請求項5に記載の診断薬。
【請求項7】
試薬が固形癌幹細胞マーカー遺伝子の転写産物または翻訳産物に対する、プライマー、核酸プローブおよび抗体から選ばれる、請求項5または6に記載の診断薬。
【請求項8】
固体支持体および当該支持体の表面に固定された核酸プローブを含む、固形癌の初発もしくは再発または固形癌に対する治療効果の診断用アレイであって、当該核酸プローブが以下の固形癌幹細胞マーカー遺伝子:
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
から選ばれる2〜169の遺伝子にそれぞれハイブリダイズするプローブである、アレイ。
【請求項9】
前記核酸プローブが約20から80塩基長である、請求項8に記載のアレイ。
【請求項10】
固形癌幹細胞マーカー遺伝子の発現または活性を抑制し得る物質を含む、固形癌の初発または再発の予防または治療剤であって、当該遺伝子が
ADAM10、ADAM12、ADAM9、ADAMTS10、ADAMTS19、AMFR、ATF1、ATF4、ATF5、ATF6、AXIN2、BCL3、BCL6、BCL7A、BCL7B、BIK、BMP5、BMP7、BMPR2、BNIP2、CASP2、CCL22、CCL5、CD58、CDC42、CDH18、CKLFSF7、CLDN8、CSTF3、CX3CL1、CXCL12、CXCL16、CXCR4、DAB2、DAPK1、DAPK3、DDX18、DDX27、DLG3、DVL3、EGF、EGFR、EPAS1、EPHA1、EPHA7、EPHB1、EPHB3、EPHB4、ERBB2、ERBB3、EXOC7、FBXO32、FGF11、FGF13、FGF9、FGFR3、FURIN、FZD7、GPC6、GRB2、HDAC4、HDGF、HEY1、HIF1A、HNLF、IFI27、IFNAR1、IFNGR2、IGBP1、IGF1R、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP6、IGSF1、IGSF8、IL13RA1、IL18、IL1B、IL1R1、IL20RA、IL27RA、IL7、IL8、ING1、INSIG1、INSR、IRF2、IRF5、IRF6、IRF7、ITCH、ITGA5、ITGB5、ITGB6、KIF21A、KIT、KLF5、KRT18、KRT19、LAK、LIFR、LITAF、LYN、MMP14、MMP15、MMP24、MMP7、MSI2、MUC1、MUC16、NCK2、NFAT5、NFATC2、NFATC3、NOTCH2、NUMB、PDGFB、PECAM1、PGF、PIK3C2B、PLGL、PTEN、RAC1、RET、RHEB、SDF2L1、SDFR1、SNAI2、SOS1、SPP1、SPUVE、STAT1、STAT3、STAT5B、TANK、TBRG1、TBX19、TBX2、TBX3、TCFL4、TGFA、TGFB1I4、TGFBI、TGFBR1、TGFBRAP1、THBD、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TLR1、TLR3、TLR5、TM4SF8、TNFRSF14、TNFSF10、TNFSF13、TOB1、TRA1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6、VEGF、VEGFB、VIPR1、WNT11、WNT5AおよびWT1
からなる群より選ばれる、予防または治療剤。
【請求項11】
固形癌が乳癌である、請求項10に記載の予防または治療剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−178650(P2010−178650A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23933(P2009−23933)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(505457994)学校法人東京医科大学 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(505457994)学校法人東京医科大学 (6)
【Fターム(参考)】
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