説明

固形石けん組成物

【課題】素早く泡立ち、クリーミーで弾力性に富む泡質を有すると共に、その泡質が持続し、洗い上がりの使用感に優れ、かつ、溶け崩れが生じ難く、保存安定性や生産性に優れた固形石けん組成物の提供。
【解決手段】本発明の固形石けん組成物は、数平均分子量20万〜60万のポリエチレングリコールa0.01〜1質量%、数平均分子量100万〜500万のポリエチレングリコールb0.005〜0.5質量%、炭素数12〜18の飽和脂肪酸塩98.5〜99.985質量%からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形石けん組成物に関し、詳しくは、素早く泡立ち、クリーミーで弾力性に富む泡質を有すると共に、その泡質が持続し、洗い上がりの使用感に優れ、かつ、溶け崩れを生じず、保存安定性や生産性に優れた固形石けん組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔や身体等の皮膚用の洗浄剤には、脂肪酸塩である石けんが主に使用されている。石けんは、洗浄後に独特のさっぱり感を有するだけでなく、生分解性も良好であり、環境に対しても優しい基剤である。中でも固形石けんは最も一般的な皮膚用洗浄剤として広く使われている。固形石けんを構成する脂肪酸には、牛脂、パーム油、ヤシ油およびパーム核油由来の脂肪酸が使用されており、これらの脂肪酸には不飽和脂肪酸が30〜40質量%程度含有されている。不飽和脂肪酸は、石けんの溶解性や成形性を保持するのに有効であるものの、保存安定性が悪く、変色や臭気劣化が生じ易いという問題があった。そのため、飽和脂肪酸のみを使用した固形石けんがある。これにより起泡性(泡立ちの素早さ)および保存安定性は改善されるものの、敏感肌の人の中には石けん特有の洗い上がりのさっぱり感をつっぱり感として感じる場合があった。
【0003】
このような洗い上がりのつっぱり感を解決するために、脂肪酸グリセリンモノエステルや炭素数12〜22の脂肪酸といった油分を添加することにより、しっとり感を与えることが行われているが、クリーミーな泡が十分に得られない場合や、石けんの溶け崩れなどの問題を有する場合があった。これらの問題点を改善する技術として、特許文献1には脂肪酸グリセリンモノエステルとラウリン酸(炭素数12の飽和脂肪酸)を併用する方法、特許文献2にはクロレラ粉末と両性界面活性剤を併用する方法、特許文献3にはベントナイトを添加する方法が開示されている。
【0004】
しかし、これらの技術により洗い上がりの使用感、泡のクリーミー性の改善や溶け崩れの改善はできるものの、泡の弾力性の点では十分なものではなく、しかも、クリーミーで弾力性に富む泡質が持続するものは得られなかった。さらに、石けんを製造する際にひびを生じたり、型離れが低下したりする場合があり、生産性が良好なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−283794号公報
【特許文献2】特開2003−238993号公報
【特許文献3】特開2005−82685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、素早く泡立ち、クリーミーで弾力性に富む泡質を有すると共に、その泡質が持続し、洗い上がりの使用感に優れ、かつ、溶け崩れが生じ難く、保存安定性や生産性に優れた固形石けん組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意検討した結果、2種の異なる特定分子量のポリエチレングリコールと、特定炭素数の飽和脂肪酸塩とからなる固形石けん組成物を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の固形石けん組成物は、(1)数平均分子量20万〜60万のポリエチレングリコールa0.01〜1質量%、数平均分子量100万〜500万のポリエチレングリコールb0.005〜0.5質量%、炭素数12〜18の飽和脂肪酸塩98.5〜99.985質量%からなる固形石けん組成物である。
また、(2)前記飽和脂肪酸塩を構成する飽和脂肪酸がラウリン酸5〜50質量%、ミリスチン酸40〜80質量%、パルミチン酸5〜20質量%からなり、かつラウリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸の合計量が100質量%であって、前記飽和脂肪酸塩が前記飽和脂肪酸とナトリウムおよびカリウムからなる塩基とを反応させて得られた塩であり、前記飽和脂肪酸と反応させるナトリウム/カリウムの質量比が99/1〜50/50である固形石けん組成物が好適である。
また、(3)前記固形石けん組成物100質量部に対して、さらにアロエエキスまたは海藻エキスを0.01〜2質量部含有する固形石けん組成物が好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の固形石けん組成物は、素早く泡立ち、クリーミーで弾力性に富む泡質を有すると共に、その泡質が持続し、洗い上がりにはしっとり感が得られ、溶け崩れを生じ難く、保存安定性に問題がなく、生産性にも優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の固形石けん組成物は、数平均分子量20万〜60万のポリエチレングリコールa0.01〜1質量%、数平均分子量100万〜500万のポリエチレングリコールb0.005〜0.5質量%、炭素数12〜18の飽和脂肪酸塩98.5〜99.985質量%からなる。なお、本発明の固形石けん組成物は、上記ポリエチレングリコールaおよびb、ならびに上記飽和脂肪酸塩の合計量が100質量%となる。
【0011】
〔ポリエチレングリコールaおよびb〕
本発明に使用するポリエチレングリコールaおよびbは、数平均分子量(以下、Mnと表記する。)がそれぞれ20万〜60万(好ましくは25万〜50万)、100万〜500万(好ましくは200万〜400万)のものである。本発明におけるMnは、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリエチレングリコール換算で求めた値である。
【0012】
ポリエチレングリコールaおよびbの添加量は、Mnが大きい場合はそれぞれ0.01質量%以上、0.005質量%以上であり、Mnが小さい場合はそれぞれ1質量%以下、0.5質量%以下である。好ましくは、ポリエチレングリコールaの添加量は0.1〜0.8質量%、ポリエチレングリコールbの添加量は0.01〜0.4質量%であり、より好ましくはポリエチレングリコールaの添加量は0.1〜0.5質量%、ポリエチレングリコールbの添加量は0.05〜0.3質量%である。
【0013】
ポリエチレングリコールbのMnが小さく、かつ添加量が少ない場合は、ポリエチレングリコールaのMnが大きなものと併用すること、あるいは反対に、ポリエチレングリコールbのMnが大きく、かつ添加量が多い場合は、ポリエチレングリコールaのMnが小さなものと併用することが、泡質と洗い上がりのしっとり感がバランスよく得られ、石けんの生産性も良好であるため好ましい。ポリエチレングリコールaまたはbのMnが本発明で規定する範囲の下限を下回り、かつ添加量が本発明で規定する範囲の下限に満たない場合は、弾力性のある泡の持続性が不十分であったり、洗った後に良好な使用感が得られなかったりする虞がある。一方、Mnが本発明で規定する範囲の上限を超え、かつ添加量が本発明で規定する範囲の上限を超える場合は、ぬめりやべたつきを生じて使用感が損なわれたり、石けんの生産性を低下させたりする虞がある。
【0014】
〔飽和脂肪酸塩〕
本発明に使用する飽和脂肪酸塩は、飽和脂肪酸と塩基とを反応させて得られる炭素数12〜18の飽和脂肪酸塩である。飽和脂肪酸は炭素数12〜18の飽和脂肪酸であり、炭素数12〜16の直鎖飽和脂肪酸が好ましい。また、固形石けん組成物の泡立ち、泡質の点から、本発明に使用する飽和脂肪酸がラウリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸のみで構成され(すなわちラウリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸の合計量が100質量%である)、ラウリン酸が5〜50質量%、ミリスチン酸が40〜80質量%、パルミチン酸が5〜20質量%であるものがより好ましく、さらに好ましくは、ラウリン酸が10〜40質量%、ミリスチン酸が55〜75質量%、パルミチン酸5〜15質量%のものである。
【0015】
一方、飽和脂肪酸と反応させる塩基としては、アルカリ金属、アンモニウム、またはアルカノールアミンが挙げられ、泡立ち、泡質の点から、ナトリウムおよびカリウムのアルカリ金属からなる塩基が好ましい。ナトリウムおよびカリウムからなる塩基は、ナトリウム/カリウムの質量比が99/1〜50/50であるものがより好ましく、90/10〜60/40であるものがさらに好ましい。
【0016】
本発明の固形石けん組成物は、石けん素地である飽和脂肪酸塩に、ポリエチレングリコールaおよびbを本発明の範囲内で所定量添加することにより得られる。ここで、ポリエチレングリコールaおよびbは、製造工程中でアルカリや熱などの影響を受けて分解する虞があるため、常温〜50℃で行われる混練工程で添加することが好ましい。混練は、石けん素地、ポリエチレングリコールaおよびb、さらにその他の添加成分をミキサーで加えて粗混合し、リファイナーとロールミルで均一に混合することにより行われる。混合を十分に行うために、リファイナー、ロールミルを数回繰り返すとより好ましい。
【0017】
本発明の固形石けん組成物は、アロエエキスまたは海藻エキスをさらに含有させることにより、洗った後のしっとり感をさらに高めることができる。
【0018】
〔アロエエキス〕
本発明で用いられるアロエエキスは、アロエ(Aloe Ferox、Aloe africane 、Aloe spicata、Aloe barbadensisまたはこれらの雑種(Liliaceae) )からの抽出物、葉肉から得られる葉肉末、またはこれらの乾燥物のいずれをも使用することができる。アロエエキスに含まれるムチン等の天然高分子多糖類によって粘りのある感触が得られ、洗い上がりにしっとり感を与えることができる。粉末状のアロエエキスは、水に浸漬すると体積が増加して軟らかくなるので、固形石けん組成物に添加する前に粉末状のアロエエキスを膨潤させたり、抽出物を乾燥して乾燥物として固形石けん組成物に添加したりすることもできる。
【0019】
例えば、抽出物としては、一丸ファルコス(株)製の「アロエキスベラ」、「アロエクラッシュ30B」、「アロエベラリキッド(BG)」、「ベラゲル200」、「ビオセルアクトアロエベラB」、「ビオセルアクトアロエベラE」、「ファルコレックスアロエKB」などが挙げられ、葉肉より得られる葉肉末としては、一丸ファルコス(株)製の「アロエクラッシュ」などが挙げられる。これらは既知の乾燥方法によって乾燥物として用いることもできる。アロエエキスは、前記固形石けん組成物100質量部に対して、0.01〜2質量部(好ましくは0.1〜1質量部)添加することで、洗った後のしっとり感をさらに高めることができる。
【0020】
〔海藻エキス〕
本発明で用いられる海藻エキスは、海藻からの抽出物、海藻を乾燥して粉砕物して得られたものであればよく、液状でも粉末状でも使用することができる。海藻としては、コンブ目、オキナワモズク目、ホンダワラ目などの褐藻類、スギノリ目、テングサ目、オオイシソウ目などの紅藻類、およびクロレラ目、カサノリ目、シオグサ目、アオサ目などの緑藻類に属する海藻を使用することができる。海藻エキスに含まれるフコイダン等の天然高分子多糖類によって粘りのある感触が得られ、洗浄後の肌にしっとりとした保湿を与えることができると考えられる。これら海藻のうち、褐藻類のものが好ましく、クロメまたはワカメから得られたエキスが特に好ましい。
【0021】
これらのエキスとしては、ワカメのメカブ部分を乾燥粉砕して得られる(有)ビクトリーオーシャン製の「ワカメ胞子体(メカブ粉末)」、クロメの全藻を乾燥粉砕して得られる日油(株)製の「エクレクストPW」、クロメの全藻をBG(ブチレングリコール)と水で抽出した「エクレクストBG」が挙げられる。海藻エキスは、前記固形石けん組成物100質量部に対して、0.01〜2質量部(好ましくは0.1〜1質量部)添加することで、洗った後のしっとりとした使用感をさらに高めることができる。なお、本発明の固形石けん組成物は、アロエエキスと海藻エキスの両方を含有していても良く、その場合のアロエエキスと海藻エキスの合計量は、前記固形石けん組成物100質量部に対して、0.01〜2質量部(好ましくは0.1〜1質量部)である。
【0022】
本発明の固形石けん組成物は、本発明の効果を損なわない程度に、固形石けんに通常使用される各種の成分を添加することができる。例えば、キレート剤、増粘剤、抗炎症剤、保湿剤、殺菌剤、防腐剤、香料、色素などを添加することができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。下記表1および表2に示した組成および成分を用いて、下記の製造例に示した方法により固形石けん組成物を調製した。
【0024】
<製造例>
脂肪酸を5L双腕式混練機(入江商会(株)製PNV−5型)に入れて約80℃で溶解した後、28質量%アルカリ水溶液を用いて中和した。中和点はフェノールフタレイン指示液を用いて微紅色であることを確認した。次に、濃グリセリン(日油(株)製「RG−S」)、クエン酸およびラウリン酸を添加し、加熱攪拌により水分10質量%前後まで乾燥して、石けん素地を得た。各実施例および各比較例で用いられたアルカリ水溶液におけるナトリウム/カリウム(Na/K)の質量比、および石けん素地の水分を表1および表2に示す。
【0025】
得られた石けん素地にポリエチレングリコールa、ポリエチレングリコールbおよびグリセリンなどの他の成分を全て加えてよく混合し、口金にハチノス状の金具を付けたプロッダー(日本化工機(株)製「ミニソーププロッダー」)とロールミル(アイメックス(株)製「BR-150型ベンチロール」)で3回混練を繰り返した後、プロッダーの口金をソープバーが押し出せる形状のものに取り替えて押し出しを行って、ソープバーを得た。さらに、得られたソープバーを型打ち機(日本化工機(株)製「FP−171」)により成形して固形石けんを得た。
【0026】
なお、原料は以下のものを使用した。
・ラウリン酸・・・日油(株)製「NAA−122」
・ミリスチン酸・・・日油(株)製「NAA−142」
・パルミチン酸・・・日油(株)製「NAA−160」
・ステアリン酸・・・日油(株)製「NAA−180」
・オレイン酸・・・日油(株)製「NAA−34」
・クエン酸・・・試薬特級グレード
・Mn29万のポリエチレングリコール・・・ユニオンカーバイド社製「ポリオックスWSR N-750 」
・Mn38万のポリエチレングリコール・・・明成化学工業(株)製「アルコックスE-30」
・Mn190万のポリエチレングリコール・・・ユニオンカーバイド社製「ポリオックスWSR N-60K 」
・Mn285万のポリエチレングリコール・・・明成化学工業(株)製「アルコックスE-100 」
・Mn370万のポリエチレングリコール・・・ユニオンカーバイド社製「ポリオックスWSR301」
・アロエエキス・・・一丸ファルコス(株)製「アロエクラッシュ」
・海藻末(ワカメメカブ)・・・(有)ビクトリーオーシャン製「ワカメ胞子体(メカブ粉末)」
・海藻末(クロメ)・・・日油(株)製「エクレクストPW」
【0027】
実施例および比較例の各固形石けんを泡立てた際の泡立ち、クリーミー性や弾力性といった泡質およびそれらの泡質の持続性、洗い上がりの使用感、固形石けんの溶け崩れの有無、保存安定性および製造時の生産性について、それぞれ後述する評価方法により試験を行った。評価結果を表1および表2に併せて示す。
【0028】
(1)泡立ち
10名の女性(10代〜30代)をパネラーとし、石けんを手に取って泡立てた際の泡立ちについて下記の基準に基づき評価した。
2点・・速やかに泡立つ。
1点・・泡立ちがやや遅い。
0点・・泡立ちが遅い。
【0029】
さらに、全てのパネラーの合計点から以下の通りに判定した。
○・・合計が14〜20点であり、かつ0点を付けた人がいない。
△・・合計が7〜13点である。
×・・合計が0〜6点である。
【0030】
(2)泡質(クリーミー性、弾力性)
10名の女性(10代〜30代)をパネラーとし、石けんを手に取って泡立てた際の泡質について下記の基準に基づき評価した。
2点・・泡がクリーミーで弾力性に富んでいる。
1点・・泡のクリーミーさや弾力性がやや不十分である。
0点・・クリーミーさや弾力性が足りない。
【0031】
さらに、全てのパネラーの合計点から以下の通りに判定した。
○・・合計が14〜20点であり、かつ0点を付けた人がいない。
△・・合計が7〜13点である。
×・・合計が0〜6点である。
【0032】
(3)泡質の持続性
固形石けんの2.5質量%水溶液20mLをミルサー(岩谷産業(株)製「IFM−180G」)の大カップに入れて、30秒間泡立てる。泡の上に1円玉を乗せ、カップの底に到達するまでの時間を測定し、これを3回繰り返して平均値を求め、下記の基準に基づき評価した。
○・・カップの底への到達時間が10分以上
△・・カップの底への到達時間が1分以上10分未満
×・・カップの底への到達時間が1分未満
【0033】
(4)洗い上がりの使用感(しっとり感、つっぱり感)
10名の女性(10代〜30代)をパネラーとし、固形石けんを使用してタオルドライした後の感触について下記の基準に基づき評価した。
2点・・しっとり感が得られ、つっぱり感を感じない
1点・・しっとり感が若干あるものの、つっぱり感をやや感じる
0点・・つっぱり感を感じる
【0034】
さらに、全てのパネラーの合計点から以下の通りに判定した。
○・・合計が14〜20点であり、かつ0点を付けた人がいない。
△・・合計が7〜13点である。
×・・合計が0〜6点である。
【0035】
(5)溶け崩れ
固形石けん10個を25℃の水中に1時間浸漬させた後、2時間乾燥し、個々の固形石けんの表面状態を目視で観察して下記の基準で評価した。
合格品:表面は軟らかいが内部は硬い状態であり、ほぼ溶け崩れを生じていない。
不合格品:内部まで軟らかくなり、溶け崩れを生じている。
【0036】
さらに、合格品の個数から以下の通り判定した。
○・・合格品が8個以上である。
△・・合格品が6〜7個である。
×・・合格品が5個以下である。
【0037】
(6)保存安定性
固形石けん10個を空気にさらした状態で、25℃および40℃でそれぞれ3ヶ月間保存し、個々の固形石けんの外観を目視で観察して下記の基準で評価した。
合格品:いずれの温度条件においても外観及び臭気に変化がない。
不合格品:いずれかの温度条件において若干着色やひび割れを生じるか、やや劣化臭がある。
【0038】
さらに、合格品の個数から以下の通り判定した。
○・・合格品が9個以上である。
△・・合格品が7〜8個である。
×・・合格品が6個以下である。
【0039】
(7)生産性
上記製造例に準じて押し出し機と型打ち機を用いて、固形石けん10個を成形した後、金型への付着物の有無を目視で観察し、さらに成形後の個々の石鹸の外観を目視で観察して下記の基準で判定した。
合格品:金型に付着物がなく、成形後の石けん表面にひび割れが見られない。
不合格品:金型に付着物が見られるか、成形後の石けん表面にひび割れが見られる。
【0040】
さらに、合格品の個数から以下の通り判定した。
○・・合格品が9個以上である
△・・合格品が7〜8個である
×・・合格品が6個以下である
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
比較例1の固形石けんは、ポリエチレングリコールaおよびbを含まず、脂肪酸塩のみからなるので、泡質、生産性の評価が低く、また泡質の持続性、洗い上がりの使用感の評価が悪かった。比較例2の固形石けんは、Mn100万〜500万のポリエチレングリコールbが含まれていないので、泡質持続性、洗い上がりの使用感の評価が低かった。同様に、比較例3の固形石けんは、Mn20万〜60万のポリエチレングリコールaが含まれていないので、泡質、その持続性、洗い上がりの使用感の評価が低かった。また、比較例4の固形石けんは、不飽和脂肪酸塩(オレイン酸塩)を含有しているので、泡立ち、固形石けんの溶け崩れ、保存安定性の評価が低かった。
【0044】
これに対して、実施例1〜7では、泡立ち、泡質、その持続性、洗い上がりの使用感、固形石けんの溶け崩れ、保存安定性および製造時の生産性のいずれにおいても良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量20万〜60万のポリエチレングリコールa0.01〜1質量%、数平均分子量100万〜500万のポリエチレングリコールb0.005〜0.5質量%、炭素数12〜18の飽和脂肪酸塩98.5〜99.985質量%からなる固形石けん組成物。
【請求項2】
前記飽和脂肪酸塩を構成する飽和脂肪酸がラウリン酸5〜50質量%、ミリスチン酸40〜80質量%、パルミチン酸5〜20質量%からなり、かつラウリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸の合計量が100質量%であって、前記飽和脂肪酸塩が前記飽和脂肪酸とナトリウムおよびカリウムからなる塩基とを反応させて得られた塩であり、前記飽和脂肪酸と反応させるナトリウム/カリウムの質量比が99/1〜50/50である請求項1記載の固形石けん組成物。
【請求項3】
前記固形石けん組成物100質量部に対して、さらにアロエエキスまたは海藻エキスを0.01〜2質量部含有する請求項1または2記載の固形石けん組成物。

【公開番号】特開2011−195690(P2011−195690A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63382(P2010−63382)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】