説明

固形石けん組成物

【課題】起泡性が良好で、クリーミーな泡質であり、使用後に嫌なつっぱり感がなくしっとりとした感触に優れ、ひび割れやべたつきといった外観上の不具合が生じ難く、鮮やかな黄色を呈する固形石けん組成物の提供。
【解決手段】下記(a),(b),(c),(d)からなる固形石けん組成物。
(a)ウコン(Curcuma Longa)の根茎抽出物0.0001〜5質量%、
(b)飽和脂肪酸アルカリ金属塩30〜99質量%、
(c)グリセリン、スクロース、ソルビトール、グリコシルトレハロースから選ばれる1種以上の多価アルコール0.1〜50質量%、
(d)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形石けん組成物に関し、更に詳しくは起泡性が良好で、クリーミーな泡質であり、使用後に嫌なつっぱり感がなくしっとりとした感触に優れ、ひび割れやべたつきといった外観上の不具合が生じ難く、鮮やかな黄色を呈する固形石けん組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より顔や身体用の皮膚用洗浄剤には、脂肪酸塩である石けんが使用されている。これは、石けんは容易に製造できると共に優れた起泡性を有し、さっぱりとした洗い上がりが好まれているためである。中でも固形石けんは最も一般的な皮膚用洗浄剤として広く使用されている。しかしながら、敏感肌の人の中には石けん特有の洗い上がりのさっぱり感をつっぱり感として感じる場合があった。
【0003】
このような洗い上がりのつっぱり感を改善し、しっとりとした感触にする試みが数多くなされてきた。例えば、よもぎ抽出液と魚由来のコラーゲンと塩化マグネシウム等の海洋ミネラルを石鹸用素地に添加する方法(特許文献1参照)、カンゾウ抽出液とクジン抽出液とヨクイニン抽出液とセラミドおよび腐食泥板岩を石鹸用素地に添加する方法(特許文献2参照)等が検討されてきた。
【0004】
また、使用時の感触を改善するために、泡質をクリーミーにすることが検討されてきた。泡質をクリーミーにする技術としては、例えば、モウソウチク抽出物とトレハロースを脂肪酸塩に添加する方法(特許文献3参照)等が知られている。
【0005】
さらに、固形石けんの外観に特徴を与え、他製品との差別化を図ることが検討されており、そのひとつとして色素を用いた着色が試みられている。色素には天然色素や合成色素があるが、天然色素が好まれる傾向にある。従来から天然色素としてカロチンやパプリカ色素、クチナシ色素等が用いられているが、これらの色素によって着色した石けんは、くすみや色むらが生じて着色性が悪くなるという問題を有していた。このような問題を解決するため、ロスマリン酸を有効成分とする退色抑制剤(特許文献4参照)、セリ科の植物の抽出液を有効成分とする退色抑制剤(特許文献5参照)が開示されている。
【0006】
しかしながら、使用感や泡質、着色性の改善がなされた上述の石けん組成物においても、使用感や泡質の改善、着色による発色が十分ではない場合があり、また固形石けんを調製したときのひび割れや、透明固形石けんを調製したときのべたつきといった外観上の不具合が生じるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−321346号公報
【特許文献2】特開2007−308673号公報
【特許文献3】特開2009−256535号公報
【特許文献4】特開2001−275611号公報
【特許文献5】特開2004−000180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的は、起泡性が良好で、クリーミーな泡質であり、使用後に嫌なつっぱり感がなくしっとりとした感触に優れ、ひび割れやべたつきといった外観上の不具合が生じ難く、鮮やかな黄色を呈する固形石けん組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、ウコン(Curcuma Longa)の根茎抽出物、飽和脂肪酸アルカリ金属塩、特定の多価アルコールおよび水を特定の比率で組み合わせることで上記目的を達成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記(a),(b),(c),(d)からなる固形石けん組成物である。
(a)ウコン(Curcuma Longa)の根茎抽出物0.0001〜5質量%、
(b)飽和脂肪酸アルカリ金属塩30〜99質量%、
(c)グリセリン、スクロース、ソルビトール、グリコシルトレハロースから選ばれる1種以上の多価アルコール0.1〜50質量%、
(d)水
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、起泡性が良好で、クリーミーな泡質であり、使用後に嫌なつっぱり感がなくしっとりとした感触に優れ、ひび割れやべたつきといった外観上の不具合が生じ難く、鮮やかな黄色を呈する固形石けん組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】固形石けんにおけるひび割れ評価試験の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の固形石けん組成物は、(a)ウコン(Curcuma Longa)の根茎抽出物、(b)飽和脂肪酸アルカリ金属塩、(c)グリセリン、スクロース、ソルビトール、グリコシルトレハロースから選ばれる1種以上の多価アルコール、および(d)水を含有する。まず、(a)ウコン根茎抽出物について説明する。
【0013】
〔(a)ウコン根茎抽出物〕
本発明における(a)成分に用いられるコケモモは、ショウガ科ウコン属に属する植物であり、学名はZingiberaceae Curcumaであり、一般にはウコンまたは秋ウコンと呼ばれている。香辛料や染料に利用される多年草であり、高温多湿を好み、インドから東南アジアを中心として熱帯や亜熱帯で広く栽培され、日本でも、沖縄等、西南日本の暖かいところで栽培される。葉は先のとがった楕円形で、長い柄があり、地下茎から群がってのび、高さ40〜100 cmとなる。日本では初秋に高さ20〜40cmほどの花茎がのび、先に花穂がつく。花穂は苞葉が鱗のように重なっており、その中に多くの黄色い花を咲かせる。根茎は太くショウガ状で、直径3〜4cmとなり、表面には輪状に節があり、肉質は鮮褐色である。根茎を分割して繁殖する。
【0014】
ウコン(Curcuma Longa)の主成分は、クルクミン、精油成分であるターメロン、シネオール及びカンファーである。ウコン(Curcuma Longa)は、クルクミン等の有用成分を他のCurcuma属の植物である春ウコン(Curcuma aromatica)、紫ウコン(Curcuma zedoaria)等よりも多く含むので、使用後のつっぱり感やしっとり感および着色において高い効果が得られる。クルクミンは、ポリフェノールの一種であるクルクミノイドに分類され、抗酸化物質として知られているほか、肝機能強化などの健康効果も報告されており、昔から黄色の着色料としてカレーやたくあんに使用されている。ターメロンは、ビサボラン型セスキテルペン骨格を有し、胆汁分泌促進作用も報告されている。シネオールは、環状エーテル構造を有するモノテルペノイドの一種であり、ローリエ、ローズマリーなどに含有されていることが知られており、胆汁分泌促進作用のほか、健胃作用、防腐作用がある。カンファーは樟脳ともいわれ、モノテルペノイドの一種であり、クスノキの精油の主成分であり、血行促進作用、強心作用がある。
【0015】
本発明に用いられる(a)成分のウコンの根茎抽出物は、ウコンの根茎から各種溶媒によって、通常次のようにして調製することができる。まず、ウコンの根茎をスライスあるいは粉砕した後、そのまま、あるいは乾燥させ、水、有機溶媒またはそれら混液にて加熱還流あるいは浸漬して抽出することにより、ウコンの根茎抽出物が得られる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水溶性アルコール類、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の水溶性多価アルコール類、アセトン等が挙げられる。抽出溶媒として好ましいのは、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、水の1種または2種以上であり、更に好ましくは、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、水の1種または2種以上である。
【0016】
得られた抽出液は、そのまま用いてもよく、あるいは溶媒留去により濃縮したり、カラムクロマトグラフィーや溶媒分画等の処理により精製したりしてもよい。このようにして得られた抽出液から、通常行われる公知の方法によって乾燥することにより乾燥粉体(乾燥残留物)を得ることができる。
【0017】
〔(b)飽和脂肪酸アルカリ金属塩〕
本発明で使用する(b)成分の飽和脂肪酸アルカリ金属塩は、飽和脂肪酸とアルカリ金属を含有する塩基性化合物とを反応させて得られる。飽和脂肪酸アルカリ金属塩を構成する脂肪酸は、例えば炭素数8〜22の直鎖又は分岐の飽和脂肪酸であり、具体的にはカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸等が挙げられ、これらの単体脂肪酸を配合するほかに、極度硬化油や硬化脂肪酸等の混合飽和脂肪酸(例えば、牛脂、ヤシ油、パーム油、パーム核油、オリーブ油、コーン油、ヒマワリ油、ナタネ油、キャノーラ油、ダイズ油、ヒマシ油、これらの油脂を単独にて、または混合したものを硬化させた硬化油や硬化脂肪酸)、飽和脂肪酸のメチルエステルやエチルエステルも使用することができる。
【0018】
さらに、起泡性、泡質などについて更なる向上を考慮すると、前記(b)飽和脂肪酸アルカリ金属塩を構成する飽和脂肪酸が、ラウリン酸10〜40質量%、好ましくは15〜40質量%、ミリスチン酸30〜70質量%、好ましくは35〜70質量%、パルミチン酸5〜25質量%、好ましくは5〜23質量%、ステアリン酸0〜30質量%、好ましくは0〜20質量%からなり、かつラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸の合計量が100質量%であることが好ましい。
【0019】
また、飽和脂肪酸と反応させる塩基性化合物としては、アルカリ金属の水酸化物や炭酸塩の1種又は2種以上が用いられる。泡立ち、泡質の点から好ましくは、アルカリ金属の水酸化物である水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。溶解性の点から、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムを併用し、これら塩基性化合物の質量比(ナトリウム/カリウム)が99/1〜50/50であることが好ましい。
【0020】
〔(c)多価アルコール〕
本発明で使用する(c)成分は、グリセリン、スクロース、ソルビトール、グリコシルトレハロースから選ばれる1種以上の多価アルコールである。透明固形石けんを調製する場合には、これらの多価アルコールを二種以上併用するのが好ましい。
【0021】
〔各成分の含有量〕
本発明の固形石けん組成物における各成分の含有量は、それぞれ(a)成分が0.0001〜5質量%、(b)成分が30〜99質量%、(c)成分が0.1〜50質量%、残部が(d)成分の水であり、(a)+(b)+(c)+(d)の含有量の合計が100質量%である。
【0022】
本発明に使用する(a)成分の含有量は0.0001〜5質量%であり、好ましくは0.001〜3質量%、より好ましくは0.005〜1質量%である。(a)成分の含有量が0.0001質量%未満では、しっとり感と黄色の鮮やかな発色が得られない場合がある。一方、(a)成分の含有量が5質量%を超えても配合量に見合った効果が得られず経済的に不利である。
【0023】
なお、(a)成分の含有量は、ウコン根茎抽出物の乾燥残留物の質量であり、実際に溶媒を除去して乾燥させた残留物の質量のみならず、残留物に含まれる溶媒量を算出し、その溶媒量を減じた残留物の質量も概念的に包含される。例えば、抽出溶媒が揮発性である場合は、抽出溶媒を105℃〜120℃で完全に留去させ、残存した固形分の質量であり、抽出溶媒が不揮発性である場合は、高速液体クロマトグラフィー等で溶媒量を定量し、それ以外の成分量が乾燥残留物の質量である。
【0024】
本発明で使用する(b)成分の含有量は30〜99質量%であり、好ましくは33〜95質量%、より好ましくは35〜90質量%である。(b)成分の含有量が30質量%未満であると、十分な泡立ちが得られない場合がある。
【0025】
本発明で使用する(c)成分の含有量は0.1〜50質量%であり、好ましくは0.3〜45質量%、より好ましくは0.5〜40質量%である。また本発明の固形石けん組成物を透明固形石けんとする場合には、(c)成分を30〜50質量%含有させるのが好ましい。(c)成分の含有量が0.1質量%未満であると、しっとり感が得られない場合やひび割れが生じる場合があり、50質量%を超えると十分な泡立ちが得られない場合がある。
【0026】
本発明で使用する(d)成分の水の含有量は、機械練り方式で固形石けんとする場合は8〜16質量%、枠練り方式で固形石けんとする場合は12〜25質量%であることが、本発明の固形石けん組成物を効率よく生産できるため好ましい。
【0027】
本発明の固形石けん組成物は、機械練り方式または枠練り方式で製造することができるが、透明固形石けんを製造する場合には、枠練り方式が好ましい。枠練り方式で透明固形石けんを製造するには、例えば、あらかじめ溶解した飽和脂肪酸あるいは飽和脂肪酸エチルエステルに、(c)成分の多価アルコール、エタノールおよび水を加え、塩基性化合物で中和した後、さらに(a)成分のウコン根茎抽出物を加える。次に、型枠に流し込んで石けんを固化した後、適当な大きさに切り取って乾燥室で乾燥する。乾燥後、荒磨き、型打ち、仕上げ磨きを行うことにより枠練り、透明固形石けんを得ることができる。
【0028】
本発明で得られる固形石けん組成物は粉砕工程や乾燥工程、分球工程等を経て粉末石けんとして用いてもよい。
【0029】
本発明の固形石けん組成物には、本発明の特徴を損なわない範囲で、洗浄剤に通常用いられる成分、例えば、油性原料、保湿剤、界面活性剤、増粘剤、酸化防止剤、キレート剤、香料、着色料、動植物抽出物等を適宜配合することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。まず、本発明の実施例で用いるウコン(Curcuma Longa)の根茎抽出物の調製方法を示す。なお、特に断りのない限り、%は質量%を表す。
【0031】
〔ウコン(Curcuma Longa)の根茎抽出物の調製方法〕
ウコン(Curcuma Longa)の根茎をスライスし乾燥させた後、質量比で15倍量の80質量%1,3−ブチレングリコール水溶液を添加し、室温で1週間抽出して、ろ過することにより、ウコンの根茎抽出物を得た。このウコンの根茎抽出物の乾燥残留物を測定したところ、0.3w/v%であった。
【0032】
<固形石けんの調製>
ウコンの根茎抽出物と、表1に示す組成の混合脂肪酸1〜4と、表2に示す塩基性化合物と、表3に示す共通配合原料を用いて、下記の方法により表4および表5に示す固形石けんを調製した。なお、混合脂肪酸1〜4は単体脂肪酸を適宜配合して調製した。表1中のC12はラウリン酸、C14はミリスチン酸、C16はパルミチン酸、C18はステアリン酸である。
【0033】
〔調製例1(実施例1)〕
5L双腕式混練機(入江商会(株)製PNV−5型)を用いて混合脂肪酸1000gを70℃で溶解した後、表2に示す塩基性化合物の28%塩基性化合物水溶液を用いて中和した。中和点はフェノールフタレイン指示液を用いて確認した。加熱攪拌により水分10質量%程度まで乾燥し石けん素地を得た。この石けん素地に表3に示す共通配合成分、表4に示す(a)成分および(c)成分を所定の割合で添加して、口金にハチノス状の金具を付けたプロッダー(日本化工機(株)製「ミニソーププロッダー」)とロールミル(アイメックス(株)製「BR-150型ベンチロール」)で3回混練した後、プロッダーでソープバーとし、これを足踏み式型打ち機で型打ちして固形石けん(60×40×15mm)を得た。得られた固形石けんの乾燥減量をJIS-K3304 に準じて測定し、これを水の含量とした。
【0034】
実施例及び比較例には以下の化合物を使用した。
グリセリン・・・・・・・日油(株)「RG−S」
スクロース・・・日本粉末薬品(株)「日本薬局方白糖」
ソルビトール・・・東和化成工業(株)「ソルビット D−70」
グリコシルトレハロース・・・(株)林原生物化学研究所「トルナーレ」
ラウリン酸・・・・・・日油(株)「NAA−122」
d−δ−トコフェロール・・エーザイフード・ケミカル(株)「d−δ−トコフェロール」
クチナシエキス・・・一丸ファルコス(株)「クチナシリキッド」
パプリカエキス・・・三栄源エフ・エフ・アイ(株)「パプリカベース250」
28%塩基性化合物水溶液・・・試薬特級グレードの塩基性化合物に蒸留水を加え濃度28質量%とした。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
表4および表5に示す組成(質量%)で、調製例1と同様に調製して、実施例2〜5、比較例1〜3の固形石けんを得た。得られた実施例1〜5および比較例1〜3の固形石けんに対し、起泡性、泡質、しっとり感、ひび割れ、発色について、それぞれ下記の基準によって評価を行った。
【0039】
(起泡性)10名の女性(10代〜30代)をパネラーとし、石けんを手に取って泡立てた際の泡立ちについて下記の基準に基づき評価した。
2点・・泡が速やかに立ち、良好な泡立ちと感じた場合
1点・・泡が立つまで若干時間を要すると感じた場合
0点・・泡が立つまで非常に時間を要し、泡立ちが悪いと感じた場合
【0040】
なお、全てのパネラーの合計点から以下の通り判定した。
○・・合計点が14〜20点であり、かつ0点を付けた人がいない。
△・・合計点が7〜13点である。
×・・合計点が0〜6点である。
【0041】
(泡質)10名の女性(10代〜30代)をパネラーとし、石けんを泡立てた際の泡質について下記の基準に基づき評価した。
2点・・非常にクリーミーな泡質であると感じた場合
1点・・少しクリーミーであるが、さらにクリーミーであることが望ましいと感じた場合
0点・・クリーミーではないと感じた場合
【0042】
なお、全てのパネラーの合計点から以下の通り判定した。
○・・合計点が14〜20点であり、かつ0点を付けた人がいない。
△・・合計点が7〜13点である。
×・・合計点が0〜6点である。
【0043】
(しっとり感)10名の女性(10代〜30代)をパネラーとし、石けんの使用感について下記の基準に基づき評価した。
2点・・つっぱり感、ぬめり感がなく、洗い上がりが良好である。
1点・・わずかにつっぱり感、ぬめり感がある。
0点・・つよいつっぱり感、ぬめり感がある。
【0044】
なお、全てのパネラーの合計点から以下の通り判定した。
○・・合計点が14〜20点であり、かつ0点を付けた人がいない。
△・・合計点が7〜13点である。
×・・合計点が0〜6点である。
【0045】
(ひび割れ)固形石けんを約20℃の水中に90分間浸漬したのち取り出し、一昼夜20℃恒温槽で放置乾燥した。放置後の石けん表面の亀裂を観察し、下記の基準で評価した。なお、図1に示すように、固形石けん1は、鰐口状に折り曲げた針金2の端部で挟んで固定し、針金2の頂部を糸3で吊るして、石けんの全表面が水や空気に等しく接触するように試験した。
○・・全くひび割れがない。
△・・浅い、または小さいひび割れがある。
×・・深い、または大きいひび割れがある。
【0046】
(発色)固形石けんを目視で観察し、下記の基準で評価した。
○・・鮮やかな発色である。
△・・少しくすんだ発色である。
×・・かなりくすんだ発色であるか、または全く発色していない。
【0047】
表4に示すように実施例1〜5では、(a)成分のウコン根茎抽出物を0.0001〜5質量%、(b)成分の飽和脂肪酸アルカリ金属塩を30〜99質量%、(c)成分の多価アルコールを0.1〜50質量%含有することによって、いずれも良好な起泡性、泡質、しっとり感、ひび割れ防止効果および発色に優れた固形石けんを得ることができる。
【0048】
これに対して表5に示すように、ウコン根茎抽出物を含有しない比較例1では、しっとり感、ひび割れ防止、発色で十分な効果が得られていない。またウコン根茎抽出物を用いずに、クチナシエキスを含有する比較例2では、泡質、しっとり感、ひび割れ防止効果、発色が不十分であり、パプリカエキスを含有する比較例3では、泡質、しっとり感、ひび割れ防止効果、発色が不十分であった。
【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
さらに、ウコン根茎抽出物と、表1に示す組成の混合脂肪酸1と、表6に示す塩基性化合物と、表7に示す共通配合原料を用いて、下記の方法により表8に示す透明固形石けんを調製した。
【0052】
〔調製例2(実施例6)〕
還流装置と攪拌機を有する四ツ口フラスコを用いて、温度80℃で混合脂肪酸1000gを溶解する。ついで、攪拌しながら水150gとエタノール600gを加える。つぎに、あらかじめ調製した表6に示す塩基性化合物の28%塩基性化合物水溶液(水酸化ナトリウム/水酸化カリウム=80%/20%)をゆっくりと加え均一になるまで攪拌混合する。つぎに、表7の共通配合成分、表8に示す(a)成分および(c)成分を所定の割合で加え、均一に混合する。少量を取り出しフェノールフタレイン指示薬にて微紅色であることを確認する。微紅色でなければ、28%塩基性化合物水溶液または飽和脂肪酸により調整する。
【0053】
つぎに、円筒形の型枠(φ65mm)に流し込み、室温で12時間放冷して固化する。完全に固化したことを確認し型枠より取り出し、厚み3cmに切る。切断した透明固形石けんを1ヶ月間室温にて乾燥する。ついで、型打ち、磨きを行い、さらに一夜乾燥させた後に仕上げ磨きを行って直径6.5cm、厚み2.3cmの透明固形石けんを得た。
【0054】
【表6】

【0055】
【表7】

【0056】
表8に示す組成(質量%)で、調製例2と同様に調製して、実施例7および8、比較例4〜6の透明固形石けんを得た。得られた実施例6〜8および比較例4〜6の透明固形石けんに対し、起泡性、泡質、しっとり感、発色について固形石けんと同様の基準で評価し、さらに、透明性、べたつきについて下記の基準によって評価を行った。
【0057】
(透明性)20名のパネラー(10代〜30代)により、透明固形石けんの透明性を目視にて、また4ポイントのカタカナを書いた紙の上に透明固形石けんを乗せることにより判定し、20名の合計値を求めて評価した。ただし、エキス由来の不溶性成分は曇りや濁りと見なさず、石けん分由来の白い濁りや曇りのみを判断基準とした。
2点・・・曇りがなく透明であり、4ポイントの文字が容易に判別できる。
1点・・・わずかに曇りがあるが透明であり、4ポイントの文字が判別できる。
0点・・・曇りや濁りがあり、4ポイントの文字を判別できないか、一部または全部が白濁している。
【0058】
なお、全てのパネラーの合計点から以下の通り判定した。
○・・・合計点が28〜40点で、且つ0点を付けた人がいない。
△・・・合計点が14〜27点で、且つ0点を付けた人がいない。
×・・・合計点が0〜13点であるか、または0点を付けた人がいる。
【0059】
(べたつき)湿度85%(温度23℃)の恒温槽に12時間放置した後の試料の表面の状態を目視及び手触りにより以下の判定基準で判断した。
○・・・べたつきや発汗は認められない。
△・・・わずかにべたつきや発汗が認められる。
×・・・顕著にべたつきや発汗が認められる。
【0060】
【表8】

【0061】
表8に示すように実施例6〜8では、(a)成分のウコン根茎抽出物を0.0001〜5質量%、(b)成分の飽和脂肪酸アルカリ金属塩を30〜99質量%、(c)成分の多価アルコールを0.1〜50質量%含有することによって、優れた透明性、発色性を有すると共に、べたつきや発汗が起こり難く、また使用時の起泡性に優れると共にクリーミーな泡質で使用感に優れ、使用後はしっとりとした保湿効果に優れた枠練り透明石けんが得られることが判る。
【0062】
これに対して、ウコン根茎抽出物を含有しない比較例4では、泡質、発色で十分な効果が得られていない。ウコン根茎抽出物を用いずに、クチナシエキスを用いている比較例5では、泡質、しっとり感、発色が不十分であった。ウコン根茎抽出物を用いずに、パプリカエキスを用いている比較例6では、起泡性、泡質、発色が不十分であった。
【符号の説明】
【0063】
1:固形石けん
2:針金
3:糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a),(b),(c),(d)からなる固形石けん組成物。
(a)ウコン(Curcuma Longa)の根茎抽出物0.0001〜5質量%、
(b)飽和脂肪酸アルカリ金属塩30〜99質量%、
(c)グリセリン、スクロース、ソルビトール、グリコシルトレハロースから選ばれる1種以上の多価アルコール0.1〜50質量%、
(d)水
【請求項2】
前記(b)飽和脂肪酸アルカリ金属塩を構成する飽和脂肪酸が、ラウリン酸10〜40質量%、ミリスチン酸30〜70質量%、パルミチン酸5〜25質量%、ステアリン酸0〜30質量%からなり、かつラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸の合計量が100質量%であって、アルカリ金属がナトリウムおよびカリウムであり、ナトリウム/カリウムの質量比が99/1〜50/50である請求項1記載の固形石けん組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−102048(P2012−102048A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252201(P2010−252201)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】