説明

固形粉末化粧料の成型方法

【課題】吸収シートに吸収された揮発性溶剤がシート内で滲み広がってしまうことを有効に抑制し、外観上良好な固形粉末化粧料を得る。
【解決手段】まず、化粧料基材を揮発性溶剤で溶解させた流動状の充填物2を収容皿1内に充填する。つぎに、充填物2から滲み出た揮発性溶剤を吸収するための吸収シート5を収容皿1とプレス板4の間に介在させた状態で、プレス板4を押し下げる。これによって、収容皿1に充填された充填物2が圧縮成型される。ここで、吸収シート5として、揮発性溶剤の単位面積当たりの吸収率が400g/m2以上で1600g/m2以下のものが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形粉末化粧料の成型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーションやアイシャドウといった固形粉末化粧料の一つとして、湿式成型品が知られている。この成型品は、化粧料基材を揮発性溶剤で溶解した流動物(スラリー)を収容皿に充填し、揮発性溶剤を吸収乾燥させて成型したもので、乾式成型品と比べて、しっとりサラサラにした使用感が得られる等の理由から広く普及している。湿式成型品の成型方法としては、例えば、収容皿の裏面に形成された孔よりスラリーを充填しつつ、収容皿の開口部で揮発性溶剤を吸収し、さらに乾燥させる方法が知られている(例えば、特許文献1の図21参照)。また、収容皿の開口部からスラリーを充填し、充填されたスラリーをプレス板によって圧縮吸引する方法も知られている(例えば、特許文献1の図22〜25参照)。後者の方法では、スラリーが充填された収容皿とプレス板の間に紙などの吸収シートを介在させることで、プレスによってスラリーから滲み出た揮発性溶剤を吸収し、汚れなどが化粧料に付着しないようにしている。また、プレス板のプレス面に微細孔を多数設け、滲み出た揮発性溶剤をそこから吸引することで、揮発性溶剤の除去を補助する方法も知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−199616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スラリーから滲み出た揮発性溶剤を吸収するための吸収シートは、吸収性に優れたものを使用することが好ましい。なぜなら、吸収性が悪いと、吸収された揮発性溶剤が吸収シート内で滲み広がってしまい、例えば同じ収容皿内に複数色の化粧料が存在する場合、隣同士の色を汚してしまう可能性があるからである。また、吸収シート内で滲まないようにプレス板の微細孔から揮発性溶剤を過度に吸引すると、化粧料の内部状態が不均一になってしまうので好ましくない。したがって、吸収した揮発性溶剤を内部で十分に保持できる吸収シートを用いる必要がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸収シートに吸収された揮発性溶剤がシート内で滲み広がってしまうことを有効に抑制し、外観上良好な固形粉末化粧料を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、本発明は、固形粉末化粧料の成型方法を提供する。この成型方法は、化粧料基材を揮発性溶剤で溶解させた流動状の充填物を収容皿内に充填する第1のステップと、充填物から滲み出た揮発性溶剤を吸収するための吸収シートを収容皿とプレス板の間に介在させた状態で、プレス板を押し下げることによって、収容皿に充填された充填物を圧縮成型する第2のステップとを有し、吸収シートとして、揮発性溶剤の単位面積当たりの吸収率が400g/m2以上で1600g/m2以下のものが用いられる。
【0007】
ここで、本発明において、吸収シートの材質は、レーヨン、キュプラ、アセテート等の合成繊維および綿、絹等の天然繊維の中から選ばれる1または2以上の繊維構造物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、吸収シートとして、揮発性溶剤の吸収性に優れたもの、具体的には、揮発性溶剤の単位面積当たりの吸収率が400g/m2以上、1600g/m2以下のものを用いる。これにより、吸収シートに吸収された揮発性溶剤がシート内で滲み広がってしまうことを有効に抑制できる。その結果、揮発性溶剤の滲み跡による化粧料表面の汚れを有効に防止でき、外観上良好な固形粉末化粧料を得ることができる。また、このような吸収性に優れた吸収シートを用いて充填物中の揮発性溶剤を吸収することで、固形粉末化粧料の内部状態が均一になる。これにより、固形粉末化粧料の強度も全体にわたって均一になるので、落下によるヒビや割れの発生を有効に抑制することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ファンデーションやアイシャドウといった固形粉末化粧料を成型する方法について、図1を参照しつつ説明する。同図(a)は、充填工程の説明図である。まず、収容皿1を用意する。この収容皿1は、複数色の化粧料を収容すべく複数の収容空間を有しており、隣り合った収容空間は壁部によって隔離されている。つぎに、化粧料基材を揮発性溶剤(例えば、エタノール、水、揮発性炭化水素、揮発性環状シリコーン、イソプロピルアルコール等)で溶解させた流動状の充填物2(スラリー)をノズル3より吐出し、収容皿1の一方の収容空間内に充填物2を充填する。同様に、他方の収容空間内にも別の充填物2が充填される。
【0010】
同図(b)は、プレス工程の説明図である。プレス板4の直下に収容皿1の開口部が位置するように、収容皿1をプレス板4の下方に配置する。プレス板4は、下方に配置された充填物2を圧縮(プレス)するためのプレス面を有するが、このプレス面には、複数の微細な吸引孔が形成されている。また、収容皿1とプレス板4の間には、吸収シート5が介在している。
【0011】
本実施形態では、吸収シート5として、揮発性溶剤の単位面積当たりの吸収率が800g/m2のものを用いる。また、本実施形態では、紙以外の材質の吸収シート5を用いる。具体的には、レーヨン、キュプラ、アセテート等の合成繊維および綿、絹等の天然繊維の中から選ばれる1または2以上の繊維構造物よりなる材質が用いられる。
【0012】
同図(b)のような状態で、プレス板4を押し下げることによって、収容皿1に充填された充填物2が圧縮成型される。このプレス工程において、充填物2より滲み出た揮発性溶剤は、収容皿1とプレス板4の間に介在する吸収シート5によって吸収されるとともに、吸収シート5を介して、プレス板4に形成された吸引孔に吸引される。吸引孔に吸引された揮発性溶剤は、プレス板4内のチャンバ(図示せず)を経て、外部に放出される。なお、充填物2からの揮発性溶剤の除去は、吸引孔による吸引ではなく、吸収シート5のみで行ってもよい。その後、充填物2内の残存揮発成分を乾燥除去することで、固形粉末化粧料の製品が完成する。
【0013】
このように、本実施形態では、揮発性溶剤の吸収性に優れた吸収シート5を用いて、充填物2中の揮発性溶剤を吸収する。これにより、吸収シート5に吸収された揮発性溶剤がシート5内で滲み広がってしまうことを有効に抑制できる。その結果、揮発性溶剤の滲み跡による化粧料表面の汚れを有効に防止でき、外観上良好な固形粉末化粧料を得ることができる。
【0014】
また、このような吸収性に優れた吸収シート5を用いて充填物2中の揮発性溶剤を吸収することで、固形粉末化粧料の内部状態が均一になる。これにより、固形粉末化粧料の強度も全体にわたって均一になるので、落下によるヒビや割れの発生を有効に抑制することが可能になる。
【0015】
なお、上述した実施形態では、吸収シート5として、揮発性溶剤の単位面積当たりの吸収率が800g/m2のものを用いているが、本発明者が実験やシミュレーションを通じて検討した結果、吸収シート5として有効に機能し得るための吸収率は、最低でも400g/m2以上必要であることが判明した。それとともに、吸収率は、1600g/m2以下が好ましいことも判明した。1600g/m2を超えても、単にコストが高くなるだけで、それ以上の数値に見合った効果は得られないからである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】固形粉末化粧料の成型方法の説明図
【符号の説明】
【0017】
1 収容皿
2 充填物
3 ノズル
4 プレス板
5 吸収シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形粉末化粧料の成型方法において、
化粧料基材を揮発性溶剤で溶解させた流動状の充填物を収容皿内に充填する第1のステップと、
前記充填物から滲み出た前記揮発性溶剤を吸収するための吸収シートを前記収容皿とプレス板の間に介在させた状態で、前記プレス板を押し下げることによって、前記収容皿に充填された前記充填物を圧縮成型する第2のステップとを有し、
前記吸収シートとして、前記揮発性溶剤の単位面積当たりの吸収率が400g/m2以上で1600g/m2以下のものが用いられることを特徴とする固形粉末化粧料の成型方法。
【請求項2】
前記吸収シートの材質は、レーヨン、キュプラ、アセテート等の合成繊維および綿、絹等の天然繊維の中から選ばれる1または2以上の繊維構造物であることを特徴とする請求項1に記載された固形粉末化粧料の成型方法。

【図1】
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