説明

固形粉末化粧料

【課題】使用時にスポンジやマット等の小道具へのとれが良好で、伸び広がり軽く、化粧持続性に優れ、しかも成形性の向上により耐衝撃性に優れた固形粉末化粧料を提供するものである。
【解決手段】化粧料基材と溶剤とを混合し、容器に充填した後、該溶剤を除去することにより得られる固形粉末化粧料において、前記化粧料基材中にガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末を配合することを特徴とする固形粉末化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料基材と溶剤とを混合し、容器に充填した後、該溶剤を除去することにより得られる固形粉末化粧料に関するものであり、より詳細には、使用時にスポンジやマット等の小道具へのとれが良好で、伸び広がりが軽く、化粧持続性に優れ、しかも成形性の向上により耐衝撃性に優れた固形粉末化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固形粉末化粧料は、一般的には皿状容器に充填成形し、これをコンパクト容器に装着する化粧料であり、携帯性が良いため、ファンデーションやアイシャドウ等のメーキャップ化粧料に汎用されている剤型である。このような固形粉末化粧料は、通常、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等からなる粉体系に油剤を加えて分散した化粧料基材をアルミニウム等の金属製や樹脂製の皿状容器に充填成形するものである。
【0003】
そして、固形粉末化粧料は、ハンドバック等に入れて携帯されることが多いため、成形物の耐衝撃性が悪いと、成形物が割れたり、崩れたりするので、耐衝撃性が保証された水準になければならない。また、固形粉末化粧料は成形物表面を小道具で擦り取り、肌に塗布して使用されるので、小道具へのとれ具合、肌への塗布感等の使用感が商品の重要な品質となっている。
【0004】
このような固形粉末化粧料の使用感は、組成物の処方に影響されるだけでなく、充填成形方法に由来するものも多く、特に耐衝撃性を保証する水準を確保するためには、どのような充填成形方法を選択するかが重要である。
【0005】
固形粉末化粧料の充填成形方法としては、粉体を主成分とする化粧料基材を皿状容器に充填し、これを圧縮成形する方法(いわゆる、プレス成形法)が一般的に用いられてきた。しかしながら、このプレス成形法では、化粧料基材の組成によって、成形品内部に空気が残存し、これが原因となって耐衝撃性の低下、剥離、かけといった成形不良の問題を生じる場合があり、この問題が発生しないように、処方構成を検討したり、圧縮成形条件を検討したりする必要があった。
【0006】
このようなプレス成形法の問題を解決するために、有機変性粘土鉱物を結合剤として配合した化粧料用基材と軽質流動イソパラフィン等の溶剤とを混合し、皿状容器に充填した後、該溶剤を除去することにより固形化粧料を得る方法(例えば、特許文献1参照)やプレス成形法における固形粉末化粧料の耐衝撃性を高めるために、粉末状ワックスを用いる方法(例えば、特許文献2参照)等が開発され、応用されてきた。
【0007】
【特許文献1】特開昭61−50910号公報(第1頁−第4頁)
【特許文献2】特開平4−18011号公報(第1頁−第11頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1記載の方法では、従来のプレス成形法により得られる固形粉末化粧料より、小道具へのとれが良好で、伸び広がりが軽い固形粉末化粧料を得ることができるが、有機変性粘土鉱物を結合剤として用いただけでは、耐衝撃性が満足できる水準ではなかった。更に、伸び広がりの軽さを維持したままで、化粧持続性を向上させることはできなかった。また、前記特許文献2記載の粉末状ワックスを用いる方法では、耐衝撃性が十分ではなく、粉末ワックスの形状に由来して伸び広がりが悪くなる場合があった。尚、特許文献2には、粉末状ワックスの平均粒径は0.01〜100μmが好ましいと記載されているが、実験的には、最も小さいもので平均粒径が4μmの例しか記載されておらず、0.1μm以下の粉末状ワックスを調製するための具体的方法やその効果については、全く記載されていない。
【0009】
このため、使用時にスポンジやマット等の小道具へのとれが良好で、伸び広がりが軽く、化粧持続性に優れ、しかも成形性の向上により耐衝撃性に優れた固形粉末化粧料の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる実情に鑑み、本発明者は鋭意検討した結果、化粧料基材と溶剤とを混合し、容器に充填した後、該溶剤を除去することにより得られる固形粉末化粧料において、前記化粧料基材中に、ガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末を配合することにより、「小道具へのとれ」、「伸び広がりの軽さ」を損なうことなく、成形性の向上により耐衝撃性を高めることができ、更に化粧持続性にも優れる固形粉末化粧料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち本発明は、化粧料基材と溶剤とを混合し、容器に充填した後、該溶剤を除去することにより得られる固形粉末化粧料に関するものであり、より詳細には、使用時にスポンジやマット等の小道具へのとれが良好で、伸び広がりが軽く、化粧持続性に優れ、しかも成形性の向上により耐衝撃性に優れた固形粉末化粧料を提供するものである。
【0012】
また、前記固形油粉末の平均粒径が100〜500nmであることを特徴とする前記固形油粉末化粧料を提供するものである。
【0013】
そして、前記固形油粉末の融点が85〜125℃であることを特徴とする前記何れかの固形油粉末化粧料を提供するものである。
【0014】
更に、前記化粧料基材中に前記固形油粉末を0.1〜5質量%(以下、単に「%」と略す。)配合することを特徴とする前記何れかの固形粉末化粧料を提供するものである。
【0015】
そして更に、前記化粧料基材中の、前記ガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末以外の油剤の配合量が10%以下であることを特徴とする前記何れかの項記載の固形粉末化粧料。
【発明の効果】
【0016】
本発明の固形粉末化粧料は、使用時にスポンジやマット等の小道具へのとれが良好で、伸び広がり軽く、化粧持続性に優れ、しかも成形性の向上により耐衝撃性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の固形粉末化粧料に用いられる固形油粉末は、ガス中蒸発法により微粒化されたものである。このガス中蒸発法とは、不活性ガスを導入した真空容器内で固形油を加熱し、蒸発させ、得られた蒸気を前記不活性ガス中で冷却・凝結させることにより、固形油粉末を得る方法である。この方法には、その加熱方法により、抵抗加熱法、プラズマジェット加熱法、誘導加熱法、電子ビーム加熱法、レーザービーム加熱法、スパッタリング法等が知られている。
【0018】
前記ガス中蒸発法に用いられる不活性ガスとは、ヘリウム、アルゴン、窒素等が挙げられる。また、前記ガス中蒸発法における真空度は、10Torr以下が好ましい。
【0019】
従来における固形油の微粒化方法としては、(1)ジェットマイザー等の機械的粉砕方法、(2)固形油を溶媒に溶解し、これを噴霧乾燥する方法、(3)固形油をマイクロエマルション化してこれを乾燥する方法、(4)液中で固形油を粒子状に析出させる方法等がある。しかし、これら従来の方法では、平均粒径を1μm以下にすることは非常に困難であった。また、汎用されている(1)機械的粉砕方法により得られる粒子は、形状が不定形となり、固形粉末化粧料に配合した場合に、肌上での伸び広がりが良好でないという欠点を有していた。
【0020】
本発明で用いるガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末の形状は、粒子が丸みを帯びているため、固形粉末化粧料に配合した場合に、肌上での伸び広がりが非常に良好となる。
【0021】
本発明で用いるガス中蒸発法における固形油粉末の粒径は、真空容器内の圧力に影響されるので、これを制御することにより、目的とする粒径の粉末を得ることができる。また、粒径と圧力の関係を物質ごとに予め測定しておき、これに基づく検量線を得ておくことが好ましい。一般に不活性ガス圧力が0.01Torr〜10Torrの範囲内で得られる固形油粉末の粒径は約50〜4000nmの範囲で変化し、不活性ガス圧力が小さい(すなわち、真空度が高い)程、粒径が小さい粉末を得ることができる。
【0022】
本発明で用いるガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末は、前記した従来の課題や欠点を解消できると共に、固形油をその融点により精製できるという効果も有している。化粧料において、配合成分中の不純物は、経時的な酸化反応の進行による変色や変臭、皮膚への刺激等の好ましくない現象を引き起こすため、できるだけ除去するのが好ましい。本ガス中蒸発法では、加熱条件の制御により、好ましくない融点範囲の物質を除去することが可能となり、微粒化された固形油粉末も精製される。
【0023】
本発明で用いるガス中蒸発法により微粒化する固形油は、通常の化粧料に配合される室温で固形を呈する油剤である。具体的には、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、エチレンプロピレンコポリマー、合成炭化水素ワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、セラック、鯨ロウ、合成ゲイロウ、ミツロウ、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンワックス、パラフィンワックス、ステアリン酸、ベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、シリコーンワックス、含フッ素ワックス等が挙げられ、これらより一種又は二種以上用いることができる。本発明においては、これら油剤の中でも融点が85〜125℃の固形油を選択することにより、固形粉末化粧料の成形性が向上する固形油粉末を得ることができる。
【0024】
本発明の固形油粉末の平均粒径は、100〜500nmが好ましい。この範囲であれば固形粉末化粧料の成形性をより向上できる。固形油粉末の平均粒径の測定方法は、特に制限されないが、例えば、レーザー散乱式粒度分布測定法が挙げられる。
【0025】
本発明の固形粉末化粧料は、化粧料基材と溶剤とを混合し、容器に充填した後、該溶剤を除去することにより得られる固形粉末化粧料に関するものであり、前記化粧料基材中にガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末を配合するものである。そして、前記化粧料基材中における、前記ガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末の配合量は、0.05〜5%が好ましく、0.1〜3%がより好ましい。固形油粉末の配合量がこの範囲であると、使用時にスポンジやマット等の小道具へのとれが良好で、伸び広がりが軽く、化粧持続性に優れ、しかも成形性の向上により耐衝撃性に優れた固形粉末化粧料を得ることができる。
【0026】
本発明の固形粉末化粧料における化粧料基材とは、粉体を主成分とするものであり、前記固形油粉末を必須に配合するものであり、その他として、前記固形油粉末以外の油剤、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料、美容成分等を本発明の効果を損なわない範囲にて配合することができる。
【0027】
本発明の化粧料基材に配合可能な粉体は、着色剤、隠蔽材(メーキャップ効果)、感触調整剤、賦形剤、紫外線遮蔽剤等の目的で用いられるものであり、通常の化粧料に用いられる粉体であればよく、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、酸化チタン、黒色酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、無水ケイ酸、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカチタン、有機顔料被覆マイカチタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン−メタクリル酸共重合体パウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラルトマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ポリウレタンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロースパウダー、N−アシルリジンパウダー等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化亜鉛被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、酸化チタン含有無水ケイ酸、酸化亜鉛含有無水ケイ酸等の複合粉体等が挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。尚、これら粉体は、フッ素化合物、シリコーン化合物、界面活性剤等の通常公知の処理剤により表面処理を施して用いても良い。
【0028】
発明の化粧料基材中における、粉体の配合量は、60〜99%が好ましい。粉体の配合量がこの範囲内であると、使用時にスポンジやマット等の小道具へのとれがより良好で、伸び広がりがより軽い固形粉末化粧料を得ることができる。
【0029】
本発明の化粧料基材中には、前記成分の他に、通常の化粧料に使用される成分として、油剤、界面活性剤、油ゲル化剤、水溶性高分子、トリメチルシロキシケイ酸等の油溶性被膜形成剤、水性成分、パラオキシ安息香酸誘導体、フェノキシエタノール等の防腐剤、ビタミン類、美容成分、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0030】
本発明の化粧料基材中に配合可能な油剤としては、感触調整剤、粉体同士の結合剤、肌への付着性向上剤等として用いられるものである。このような油剤としては、通常の化粧料に用いられるものであれば何れでもよく、例えば、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、カルナウバロウ、ミツロウ、ラノリンワックス、キャンデリラ等の天然ロウ類、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ホホバ油、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、トリオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸類、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、モクロウ等の油脂類、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のアミノ酸誘導体類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類が挙げられ、これらより一種又は二種以上用いることができる。
【0031】
本発明の化粧料基材中における油剤の配合量は、10%以下が好ましい。油剤の配合量がこの範囲内であると、使用時にスポンジやマット塔の小道具へのとれがより良好で、伸び広がりがより軽い固形粉末化粧料を得ることができる。
【0032】
本発明の化粧料基材中に配合可能な界面活性剤としては、分散剤、感触調整剤等の目的で用いられるものである。このような界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン等の非イオン性界面活性剤類、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−メチル−N−アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸塩等の陰イオン性界面活性剤類、アルキルアミン塩、ポリアミンおよびアルカノイルアミン脂肪酸誘導体、アルキルアンモニウム塩、脂環式アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤、レシチン、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン等の両性界面活性剤等が挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。
【0033】
本発明の化粧料基材中に配合可能な油ゲル化剤としては、通常の化粧料に用いられるものであれば何れでもよく、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸カルシウム等が挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。
【0034】
本発明の化粧料基材中に配合可能な水溶性高分子としては、肌への付着性向上、化粧持続性向上、感触改良等を目的で用いられるものである。このような水溶性高分子としては、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体類、アルギン酸ソーダ、カラギーナン、クインスシードガム、寒天、ゼラチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ペクチン、ジェランガム等の天然高分子類、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、アルキル付加カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸グリセリンエステル、ポリビニルピロリドン等の合成高分子類等が挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。
【0035】
本発明の固形粉末化粧料において、前記化粧料基材との混合に用いられる溶剤は、化粧料基材中の空気を置換し、空隙を減少させるものである。具体的には、水、エタノール、イソプロパノール、ヘキサン、等の揮発性炭化水素、低分子量の鎖状シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、等の揮発性シリコーン化合物、デカメチルシクロペンタシロキサンフルオロカーボン等の低沸点フッ素化合物等が挙げられ、これらより一種又は二種以上用いることができる。この中でも、溶剤の回収のし易さより、揮発性炭化水素油(沸点170℃〜200℃)が好ましい。溶剤の量は、前記化粧料基材中の粉体の配合量、吸油量、比表面積、粒子径、形状、表面状態等の性質及び、油剤の配合量及びIOB値等の特性により変動し、また充填する容器の形状等を考慮して決められるものである。化粧料基材と溶剤の混合質量比は、概ね、化粧料基材:溶剤=1:0.3〜2が好ましく、1:0.4〜1が特に好ましい。溶剤量が多すぎると、溶剤の除去に時間がかかり、容器又は中皿への充填量が少なくなり、強度が低下する場合がある。
【0036】
本発明の固形粉末化粧料における化粧料基材の製造方法は、特に限定されないが、粉体を混合分散し、これに必要に応じて油剤やその他の成分を添加混合した後、均一分散し、必要に応じて粉砕する方法等が挙げられる。また、本発明の固形粉末化粧料の調整方法としては、前記化粧料基材と溶剤とを混合し、流動性を有する状態(スラリー状態)とし、この混合物を金皿や樹脂皿等の容器に充填し、該溶剤を乾燥(例えば、70℃で24時間乾燥等)により除去して得られるものである。
【0037】
本発明の固形粉末化粧料は、ファンデーション、白粉、頬紅、口紅、アイシャドウ、アイライナー、アイブロウ、コンシーラー等のメーキャップ化粧料等が挙げられる。また、本発明の固形粉末化粧料の形態は、ケーキ状の他に、ドーム状、球状、半球状、円錐状、角錐状、ダイヤモンドカット状、スティック状等の多種多様な立体形状に成形することができる。
【0038】
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0039】
固形油粉末の製造例1:
融点88℃のポリエチレンワックス(PERFORMALENE 500:ニューフェーズテクノロジー社製)をTaヒーターを巻きつけた石英製のルツボに入れ、ヘリウムガス1Torrの雰囲気中で200〜240℃に加熱し、蒸発したワックスをルツボ上に設置したアルミホイルに付着させ、これを回収することにより平均粒径220nm(レーザー散乱式粒度分布測定法)の固形油粉末を得た。尚、この固形油粉末の粒子は、電子顕微鏡観察により、均一で丸みを帯びていた。
【0040】
固形油粉末の製造例2:
前記製造例1と同様にして、融点120℃のフィッシャートロプシュワックス(サゾールワックスH1:サゾール社製)を加熱条件170〜530℃として、平均粒径180nm(レーザー散乱式粒度分布測定法)の固形油粉末を得た。尚、この固形油粉末の粒子は、図1の電子顕微鏡写真に示すように、粒子端面が丸みを帯びていた。
【0041】
固形油粉末の製造比較例1:
融点120℃のフィッシャートロプシュワックス(サゾールワックスH1:サゾール社製)をシングルトラックジェットミルにて微粉砕し、平均粒径3μm(レーザー回折式粒度分布測定法)の固形油粉末を得た。尚、この固形油粉末の粒子は、図2の電子顕微鏡写真で示すように、粒子は不定形であった。
【実施例1】
【0042】
本発明品1〜8及び比較品1〜3:パウダーファンデーション(ケーキ状)
表1に示す組成のパウダーファンデーションを以下に示す製造方法により調製し、「マットへのとれ具合」、「滑らかな伸び広がり」、「耐衝撃性」について、以下に示す評価方法及び判断基準により評価し、結果を併せて表1に示した。
【0043】
【表1】

【0044】
(製造方法)
A.成分1〜15をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で均一分散する。
B.成分16〜19を加熱溶解し、均一分散する。
C.Aをヘンシェルミキサーで攪拌しながら、B及び20を添加し、混合する。
D.C100部に対し、軽質流動イソパラフィン(沸点170〜200℃)50部を添加し、均一に混合し、スラリー状の混合物とする。
E.Dを金皿に充填し、70℃で24時間乾燥して、パウダーファンデーションを得た。
【0045】
(評価方法1)「マットへのとれ具合」、「滑らかな伸び広がり」
化粧品評価専門パネル20名に本発明品及び比較品のパウダーファンデーションを使用してもらい、「マットへのとれ具合」、「滑らかな伸び広がり」について、各自が以下の基準に従って5段階評価し、パウダーファンデーション毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を以下の判定基準に従って判定した。
(評価基準)
(評価) :(評点)
非常に良好 : 5点
良好 : 4点
普通 : 3点
やや不良 : 2点
不良 : 1点
(判定基準)
(評点の平均点) :(判定)
4.5以上 : ◎
3.5以上〜4.5未満 : ○
1.5以上〜3.5未満 : △
1.5未満 : ×
【0046】
(評価方法2)「耐衝撃性」
本発明品及び比較品のパウダーファンデーションをそれぞれ5個用意し、金皿に充填した状態のまま、50cmの高さからアクリル板上に正立方向で自由落下させ、落下後の表面状態を観察し、ファンデーション毎に以下の評価基準により評点を付し、そしてn=5の評点の平均点を算出し、以下の4段階の判定基準により判定した。
(評価基準)
(評価) :(評点)
変化無し : 4点
僅かにヒビ割れがあるが、使用性に問題無し: 3点
ヒビ割れ、スキマ有り : 2点
大きなヒビ割れやスキマ有り : 1点
(判定基準)
(評点の平均点) :(判定)
3.5以上 : ◎
3.0以上〜3.5未満 : ○
2.0以上〜3.0未満 : △
2.0未満 : ×
【0047】
表1の結果から明らかなように、本発明品1〜8のパウダーファンデーションは、「マットへのとれ具合」、「滑らかな伸び広がり」、「耐衝撃性」の全ての項目に優れた固形粉末化粧料であった。一方、結合剤として固形油粉末を配合していない比較品1のパウダーファンデーションは、なめらかな伸び広がりと耐衝撃性に劣っていた。また、ガス中蒸発法による固形油粉末の代わりに、機械粉砕した固形油粉末を用いた比較品2のパウダーファンデーションは、マットへの取れ具合が悪く、滑らかな伸び広がりが得られなかった。そして、充填成形時に溶剤を用いない比較品3は、滑らかな伸び広がりが得られず、化粧品の内部を観察すると空隙が多く成形されており、耐衝撃性にも劣っていた。
【実施例2】
【0048】
白粉(ケーキ状)
(成分) (%)
1.ジメチルポリシロキサン処理合成マイカ
(平均粒径15μm、アスペクト比60) 50
2.ジメチルポリシロキサン処理タルク 残量
3.パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩処理
マイカチタン(平均粒径30μm、アスペクト比50) 5
4.製造例2の固形油粉末 3
5.グンジョウ 0.2
6.ベンガラ 0.1
7.防腐剤 0.1
8.ジメチルポリシロキサン 2.5
9.流動パラフィン 5
10.スクワラン 3
11.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 1
12.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 4
【0049】
(製造方法)
A.成分1〜7をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で均一分散する。
B.Aをヘンシェルミキサーで攪拌しながら、成分8〜12を添加し、均一分散する。
C.Bをパルベライザーで粉砕する。
D.C100部に対し、エタノール40部と精製水20部とを添加し、均一に混合し、スラリー状の混合物とする。
E.Dを金皿に充填し、70℃で24時間乾燥して、白粉を得た。
実施例2の白粉は、「マットへの取れ具合」、「滑らかな伸び広がり」、「耐衝撃性」の全ての項目に優れた固形粉末化粧料であった。
【実施例3】
【0050】
アイシャドウ(ケーキ状)
(成分) (%)
1.トリステアロイルチタネート処理マイカチタン
(平均粒径5μm、アスペクト比45) 20
2.ジメチルポリシロキサン処理合成金マイカ
(平均粒径15μm、アスペクト比60) 20
3.シリコーン処理タルク 残量
4.製造例1の固形油粉末 3
5.ベンガラ 0.2
6.黄酸化鉄 3
7.黒酸化鉄 0.1
8.球状シリコーン(注3) 3
9.ワセリン 1
10.スクワラン 2
11.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 5
12.メチルフェニルポリシロキサン 2.5
13.ひまし油 2
※注3:トレフィルE506(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)
【0051】
(製造方法)
A.成分1〜8をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で均一分散する。
B.Aをヘンシェルミキサーで攪拌しながら、成分9〜13を添加し、均一分散する。
C.Bをパルベライザーで粉砕する。
D.C100部に対し、イソプロピルアルコール45部を添加し、均一に混合し、スラリー状の混合物とする。
E.Dを金皿に充填し、70℃で24時間乾燥して、アイシャドウを得た。
実施例3のアイシャドウは、「チップへの取れ具合」、「滑らかな伸び広がり」、「耐衝撃性」の全ての項目に優れた固形粉末化粧料であった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】製造例2の固形油粉末の電子顕微鏡写真
【図2】製造比較例1の固形油粉末の電子顕微鏡写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料基材と溶剤とを混合し、容器に充填した後、該溶剤を除去することにより得られる固形粉末化粧料において、前記化粧料基材中にガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末を配合することを特徴とする固形粉末化粧料。
【請求項2】
前記固形油粉末の平均粒径が100〜500nmであることを特徴とする請求項1記載の固形粉末化粧料。
【請求項3】
前記固形油粉末の融点が85〜125℃であることを特徴とする請求項1又は2記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】
前記化粧料基材中に前記固形油粉末を0.1〜5質量%配合することを特徴とする請求項1〜3の何れかの項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項5】
前記化粧料基材中の、前記固形油粉末以外の油剤の配合量が10質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れかの項に記載の固形粉末化粧料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−69938(P2006−69938A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253580(P2004−253580)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】