説明

固形粉末化粧料

【課題】
使用感に優れ、圧縮成型性が良好で、ケーキングすることなく、化粧もちに優れた固形粉末化粧料に関するものである。
【解決手段】
化粧料全体の20〜60質量%の光輝性粉体を及び/又は化粧料全体の5〜30質量%の球状粉体を配合する固形粉末化粧料において、融点が25℃〜40℃であるアルキル変性ジメチルポリシロキサンを含有することを特徴とする固形粉末化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融点が25℃〜40℃であるアルキル変性ジメチルポリシロキサンと、光輝性粉体及び/又は球状粉体を含有する固形粉末化粧料に関し、更に詳しくは、圧縮成型性に優れ、ケーキング(小道具等の摩擦により表面が固化し、化粧料が取れなくなる現象)することなく使用性が良好で、さらに、塗布時の伸び広がり、仕上がりの光沢感等の使用感と化粧もちに優れる固形粉末化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固形粉末化粧料に関して、仕上がりの光沢感や塗布時の伸び広がり等の使用感を演出するために、光輝性粉体及び/又は球状粉体を配合しているが、これらの粉体種はその形状により圧縮成型性が悪いため、多量に配合すると固形粉末化粧料の強度に問題が生じることがあった。この欠点を解消するために、タルク等の不定形粉体を配合する技術、ミツロウやポリエチレンワック等の炭化水素系ワックスを配合する技術(例えば特許文献1)、あるいはアルキロイル変性シリコーンワックス(例えば、ステアロキシメチルポリシロキサン)を配合することにより、固形粉末化粧料の圧縮成型性を確保していた。
【0003】
【特許文献1】特開平4−18011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、タルク等の不定形粉体は圧縮成型性を向上させるものの、その性状により、塗布時の伸び広がりや仕上がりの光沢感等の使用感を損なうものであった。また、炭化水素系ワックスは、肌への密着力の高さから、化粧料の伸び広がりが悪く、更にケーキング(小道具等の摩擦により表面が固化し、化粧料が取れなくなる現象)が生じ、使用性に問題があった。さらに、アルキロイル変性シリコーンワックスは、固形粉末化粧料の製造過程で加熱されることにより、アルキロイル基の結合部がはずれ分子構造が変化するために、結合剤としての機能が低下し、圧縮成型性が劣るとともに、解離基の凝集物により化粧料が不均一になり、塗布時の感触が粗雑であった。このため、光輝性粉体及び/又は球状粉体を多量に配合しても、圧縮成型性に優れ、ケーキングすることなく使用性が良好で、さらに、塗布時の伸び広がりや仕上がりの光沢感等の使用感を損なうことなく、化粧もちに優れる固形粉末化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情において、本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、光輝性粉体及び球状粉体を多量に配合した固形粉末化粧料において、融点が25℃〜40℃であるアルキル変性ジメチルポリシロキサンを配合することにより、圧縮成型性が良好で、ケーキングすることなく、化粧もちに優れた固形粉末化粧料が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、化粧料全体の20〜60質量%の光輝性粉体を及び/又は化粧料全体の5〜30質量%の球状粉体を配合する固形粉末化粧料において、融点が25℃〜40℃であるアルキル変性ジメチルポリシロキサンを含有することを特徴とする固形粉末化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の固形粉末化粧料は、光輝性粉体及び/又は球状粉体を多量に配合しても、圧縮成型性に優れ、ケーキングすることなく使用性が良好で、さらに、塗布時の伸び広がりや仕上がりの光沢感等の使用感を損なうことなく、化粧もちに優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の固形粉末化粧料に用いられるアルキル変性ジメチルポリシロキサンは、融点が25℃〜40℃である。圧縮成型時においては、固形のため粉末状ワックスと同様に粉体同士の結合剤の役割を果たし、また、化粧料使用時においては、小道具等の摩擦熱により液体状に変化することにより、化粧料の表面にとどまることなく小道具等へ付着するためケーキングせず、塗布時は体温で融けることにより、良好な使用感と化粧持ちを付与する成分である。
【0008】
本発明の固形粉末化粧料に用いられるアルキル変性ジメチルポリシロキサンの含有量は、特に制限はされないが、0.5〜15%が好ましく、更に好ましくは1〜10%であり、この範囲で用いればケーキングが生じることなく、伸び広がり、化粧持ちに優れた固形粉末化粧料を得ることができる。
【0009】
本発明の固形粉末化粧料に用いられるアルキル変性ジメチルポリシロキサンは、例えば下記構造式(1)
(CHSiO−(R1(CH)SiO)−((CHSiO)−SiO(CH (1)
(式中、R1は炭素数16〜20のアルキル基であり、xは1〜100の整数、yは1〜50の整数、x+y<120を示す。)
で示されるもので、さらに炭素数18のステアリル基が、本発明の効果を最良に得られる点で好ましい。市販品としては、例えば、DC2503 Cosmetic Wax(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)が挙げられる。
アルキル変性ジメチルポリシロキサンの側鎖のアルキル基は、アルキロイル変性シリコーンワックスの側鎖のアルキロイル基に比べて化学的安定性が高いため、製造工程における加熱処理においても分解せず、解離基の凝集物により化粧料を不均一にしたり、塗布時の感触を粗雑にしたりすることがない。
【0010】
本発明の固形粉末化粧料に用いられる光輝性粉体は、仕上がりの光沢感並びに塗布時における伸び広がりを向上させる成分である。具体的には、雲母チタン、窒化ホウ素、合成金雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆ガラス末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0011】
本発明の固形粉末化粧料に用いられる光輝性粉体の含有量は20〜60%である。この範囲であれば、仕上がりの光沢感並びに塗布時の伸び広がりが良好で、圧縮成型性に優れた固形粉末化粧料が得られる。光輝性粉体の含有量が20%未満では、仕上がりの光沢感並びに塗布時の伸び広がりが劣り、光輝性粉体の含有量が60%を超えると、圧縮成型性が低下し使用性が悪くなる。
【0012】
本発明の固形粉末化粧料に用いられる球状粉体は、塗布時における伸び広がりを向上させるための成分である。具体的には、無水ケイ酸、ポリメチルメタクリレート、ナイロン、架橋型シリコーン等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0013】
本発明の固形粉末化粧料に用いられる球状粉体の含有量は、5〜30%以上である。この範囲であれば、塗布時の伸び広がりが良好で、圧縮成型性に優れたものとなる。球状粉体の含有量が5%未満では、塗布時の伸び広がりが劣り、球状粉体の含有量が30%を超えると、圧縮成型性が低下する。
【0014】
本発明の固形粉末化粧料には上記必須成分に加えて、通常化粧料に用いられる成分、例えば粉体、油剤、界面活性剤、油ゲル化剤、水溶性高分子、トリメチルシロキシケイ酸等の油溶性被膜形成剤、水性成分、パラオキシ安息香酸誘導体、フェノキシエタノール等の防腐剤、ビタミン類、美容成分、香料等を本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて適宜配合することができる。
【0015】
本発明の固形粉末化粧料に配合可能な粉体としては、必須成分に加えて、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機白色顔料、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、グンジョウ、コンジョウ、カーボンブラック等の無機着色顔料、タール系色素、天然色素等の有機着色顔料、シルクパウダー、N−アシルリジン等の有機粉体等が挙げられ、これら一種又は二種以上を用いることができる。またこれらの粉体は、フッ素化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、ロウ、油脂、炭化水素等を用いて通常公知の方法により表面処理を施して用いても良い。これらの粉体は、賦形剤及び、カバー力、肌への密着感、伸び広がり等の感触調整剤等の役割を果たす成分である。
【0016】
本発明の固形粉末化粧料に配合可能な油剤としては、常温にて液状、ペースト状、固形状のものである。油剤の役割としては、肌への密着感、伸び広がり等の感触調整剤及び粉体同士の結合剤が挙げられる。具体的には、例えば、オリーブ油、マカデニアナッツ油、ホホバ油等の油脂類、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、ミリスチン酸イソプロピル、トリオクタン酸グリセリル等のエステル油類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の揮発性環状シリコーン油、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油類等を挙げられる。
本発明の固形粉末化粧料に用いられる油剤の配合量は、特に限定されないが、20%以下が好ましい。
【0017】
本発明の固形粉末化粧料の製造方法は、特に限定されないが、粉体と、必要に応じて油剤やその他の成分をヘンシェルミキサー等の混合機にて均一に分散、混合し、これを金属製や樹脂製の皿状容器に充填成形する方法等が挙げられ、充填成形する方法としては、圧縮成型性(プレス成型)する方法、溶剤を用いてスラリー充填する方法等、通常公知の方法で行うことができる。
【0018】
本発明の固形粉末化粧料は、ファンデーション、アイシャドウ、アイブロウ、フェイスパウダー、頬紅等のメイキャップ化粧料等に適用できる。また、本発明の固形粉末化粧料の形態は、ケーキ状の他に、ドーム状、球状、半球状、円錐状、角錐状、ダイヤモンドカット状、スティック状等の多種多様な立体形状に成形することができる。
【0019】
次に実施例をもって本発明をより詳細に説明する。本発明はこれらにより、何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
本発明品1〜6及び比較品1〜4:アイカラー
表1に示す組成のアイカラーを下記の製造方法にて調製し、使用感(伸び広がりの良さ、仕上がりの光沢感)、圧縮成型性(落下強度)、ケーキング(小道具による表面固化)、化粧もち、化粧料の均一性、を評価した。
【0021】
【表1】

【0022】
(製造方法)
A:成分1〜10をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で均一に混合した。
B:成分11〜15を75℃にて均一に溶解した。
C:AにBを添加混合、粉砕し、金型に充填して圧縮成型した。
【0023】
(評価方法1)使用感、化粧もちについての評価方法
22〜40才の女性パネル20人によるアイカラーの使用試験を行った。使用感について、伸び広がりの良さ及び仕上がりの光沢感を下記評価基準に従って評価し、各サンプルの評点の平均点を下記判断基準に従って判定した。但し、光輝性粉体を配合していないサンプルについては、仕上がりの光沢感の評価を行っていない。
(評価基準)
(評点):(評価)
6 : 非常に良い
5 : 良い
4 : やや良い
3 : 普通
2 : やや悪い。
1 : 悪い。
0 : 非常に悪い。
(判定基準)
(評点の平均点) :(判定)
5.0以上 : ◎(非常に良好)
3.5以上5.0未満: ○(良好)
1.0以上3.5未満: △(普通)
1.0未満 : ×(不良)
【0024】
(評価方法2)圧縮成型性(落下強度)ついての評価方法
金皿に圧縮成型したアイカラーを50cmからアクリル板に自由落下させ、落下後の状態を目視観察し、状態を評価した。
(評価) :(判定)
全く変化なし : ◎
変化なし : ○
ひび、すきまが生じた: △
こなごなに割れた : ×
【0025】
(評価方法3)ケーキング(小道具による表面固化)についての評価方法
金皿に圧縮成型したアイカラーの表面に、アイカラーチップを対角線上に片面20回づつ、計40回連続で擦り合わせ、その後、新しいアイカラーチップでのとれ具合を評価した。
(評価) :(判定)
チップへのとれが非常に優れ、全く使用性に問題なし: ◎
チップへのとれが優れ、使用性に問題なし。 : ○
あまりチップにとれず、使用性が悪い。 : △
全くチップにとれず、使用性がかなり悪い。 : ×
【0026】
(評価方法4)化粧料の均一性についての評価方法
金皿に圧縮成型したアイカラーの表面に、ブラシを対角線上に同一方向、連続40回擦り合わせ、サンプル表面の凝集物の有無を目視にて観察し、評価した。
(評価) :(判定)
全く表面が均一で問題なし: ◎
表面が均一で問題なし : ○
凝集物が少しみられる : △
凝集物がかなりみられる : ×
【0027】
本発明品1〜6のアイカラーは使用感(塗布時の伸び広がりの良さ、仕上がりの光沢感)、圧縮成型性(落下強度)、ケーキング(小道具による表面固化)、化粧もち、化粧料の均一性、の全項目において優れた固形粉末化粧料であった。一方、アルキル変性ジメチルポリシロキサンを配合していない比較品1のアイカラーは使用感、圧縮成型性、化粧もちが劣っていた。本願発明のアルキル変性ジメチルポリシロキサンに替えて、ステアロキシメチルポリシロキサンを配合した比較品2のアイカラーは、圧縮成型性が劣り、さらに解離部の凝集物により化粧料の均一性が劣っていた。同様にミツロウを配合した比較品3、4のアイカラーは、圧縮成型性は優れているが、ケーキングが生じ、化粧もちが劣っていた。
【実施例2】
【0028】
パウダーファンデーション
(成分) (%)
1.マイカ 20.0
2.タルク 20.0
3.セリサイト 残量
4.球状ポリスチレン粉末(平均粒子径3μm) 20.0
5.酸化チタン 5.0
6.ベンガラ 1.0
7.黄酸化鉄 1.0
8.黒酸化鉄 0.3
9.防腐剤 適量
10.粉末状ワックス(平均粒子径3μm) 1.0
11.ステアリル変性ジメチルポリシロキサン(注1) 5.0
12.2−エチルヘキサン酸セチル 1.0
13.スクワラン 4.0
14.ジメチルポリシロキサン(20cs) 5.0
【0029】
(製造方法)
A:成分1〜10をヘンシェルミキサーで均一に混合する。
B:11〜14を75℃にて加熱溶解した後に、Aに添加混合、粉砕し、金型に充填して圧縮成型した。
実施例2のパウダーファンデーションは、使用感が良好で、且つ圧縮成型性に優れ、小道具(パフ)によるケーキングがなく、化粧もちに優れていた。
【実施例3】
【0030】
頬紅
(成分) (%)
1.マイカ 10.0
2.タルク 20.0
3.雲母チタン(アスペクト比30) 40.0
4.セリサイト 残量
5.酸化チタン 1.0
6.ベンガラ 1.0
7.黄酸化鉄 0.5
8.黒酸化鉄 0.1
9.防腐剤 適量
10.ステアリル変性ジメチルポリシロキサン(注1) 5.0
11.スクワラン 5.0
12.ジメチルポリシロキサン(20cs) 5.0
【0031】
(製造方法)
A:成分1〜9をヘンシェルミキサーで均一に混合する。
B:成分10〜12を75℃にて加熱溶解した後に、Aに添加混合、粉砕し、金型中に充填して圧縮成型した。
実施例3の頬紅は、使用感が良好で、且つ圧縮成型性に優れ、ケーキングがなく、化粧もちに優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料全体の20〜60質量%の光輝性粉体を及び/又は化粧料全体の5〜30質量%の球状粉体を配合する固形粉末化粧料において、融点が25℃〜40℃であるアルキル変性ジメチルポリシロキサンを含有することを特徴とする固形粉末化粧料。
【請求項2】
前記アルキル変性ジメチルポリシロキサンを0.5〜15質量%配合することを特徴とする請求項1記載の固形粉末化粧料。

【公開番号】特開2006−76982(P2006−76982A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266134(P2004−266134)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】