説明

固形粉末化粧料

【課題】耐水性に優れるだけでなく、滑らかな使用感でありながら、とれや付着性等の使用性にも優れ、成型物が均一であり、耐衝撃性も良好な固形粉末化粧料に関する。
【解決手段】成分(a)RSiO1.5単位とRSiO0.5単位(式中、R、Rは置換または非置換の1価炭化水素基を表す)から成るシリコーン樹脂と、成分(b)油剤と、成分(c)粉体を含有する固形粉末化粧料であって、成分(a)〜(c)と揮発性溶剤とを混合して容器又は中皿に充填した後、該揮発性溶剤を除去することにより成型されることを特徴とする固形粉末化粧料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RSiO1.5単位とRSiO0.5単位(式中、R、Rは置換または非置換の1価炭化水素基を表す)から成るシリコーン樹脂と油剤と粉体および揮発性溶剤とを混合して、これを容器又は中皿に充填した後、該揮発性溶剤を除去することにより成型されることを特徴とする固形粉末化粧料に関するものである。さらに詳しくは、耐水性に優れるだけでなく、滑らかな使用感でありながら、とれや付着性等の使用性にも優れ、成型物が均一であり、耐衝撃性も良好な固形粉末化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パウダーファンデーション、プレストパウダー、ほほ紅、パウダーアイシャドウ等の固形粉末化粧料は、のびのよさ、滑らかさ等の優れた感触や、きらびやかな外観といった高い品質が要求される傾向にある。このため、乾式成型方法に比べて、弾力を有する感触の良好な球状粉体や、アスペクト比が高い薄片状の光輝性粉体等を多量に含有する場合でも、耐衝撃性に優れた成型物を得ることが可能とされている、湿式成型方法を用いるケースが増えてきている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
しかしながら、湿式成形法による固形粉末化粧料は、揮発性溶剤の除去時に内容物が収縮することにより、内容物と容器又は中皿との間に隙間ができ、成型物が耐衝撃性に劣るという課題を有していた。そこで、湿式成型方法において、耐衝撃性を確保するために様々な研究が行われており、粉体の結合剤として、有機性ベントナイト、水溶性高分子、油溶性樹脂等を配合する方法(例えば、特許文献3〜5)が検討されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−255528号公報
【特許文献2】特開2002−128637号公報
【特許文献3】特開昭58−096009号公報
【特許文献4】特開平10−182350号公報
【特許文献5】特開2003−277228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機性ベントナイトを結合剤として配合する方法では、かさついた感触で、のびのよさ、滑らかさといった使用感が著しく低下しまうという問題点があった。また、水溶性高分子を用いた場合は、耐水性が著しく低下するといった問題点があった。油溶性樹脂を用いた場合には、溶剤の乾燥に伴い、樹脂が表層部に移行して被膜を形成することで、とれが悪くなったり、成型物中で樹脂が凝集し不均一になる等の問題点があった。このため、光輝性粉体を大量に配合しても耐衝撃性が良好で、のびや滑らかさといった使用感にも優れた固形粉末化粧料用結合剤の開発が望まれてきた。
したがって本発明の課題は、ウエット感に富む滑らかな使用感でありながら、耐衝撃性が良好であり、成型物が均一で、とれや付着性等の使用性にも優れた固形粉末化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記実情に鑑み、本発明者は鋭意研究を行った結果、特定構造のシリコーン樹脂を含有し、湿式成型した固形粉末化粧料は、ウエット感に富む滑らかな使用感でありながら、耐衝撃性が良好であり、成型物の均一性に優れ、付着性等の使用性にも優れていることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
すなわち本発明は、成分(a)RSiO1.5単位とRSiO0.5単位(式中、R、Rは置換または非置換の1価炭化水素基を表す)から成るシリコーン樹脂と、成分(b)油剤と、成分(c)粉体を含有する固形粉末化粧料であって、成分(a)〜(c)と揮発性溶剤とを混合して容器又は中皿に充填した後、該揮発性溶剤を除去することにより成型されることを特徴とする固形粉末化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の固形粉末化粧料は、結合剤として優れる特定のシリコーン樹脂を含有することにより、ウエット感に富む滑らかな使用感でありながら、光輝性顔料を大量に配合しても耐衝撃性が良好であり、成型物の均一性に優れ、付着性等の使用性にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳述する。
本発明に用いられる成分(a)RSiO1.5単位とRSiO0.5単位から成るシリコーン樹脂は、RSiO1.5単位より成るシラノール基含有オルガノポリシルセスキオキサン(式中、Rは置換または非置換の1価炭化水素基を表す)のシラノール基を、トリオルガノシリル基で封鎖したものであり、例えば、特開平4−312511号公報に記載のものを使用することができる。
【0010】
具体的には、次の(A)と(B)とを反応させることで得ることができる。
(A):RSiO1.5単位より成るシラノール基含有オルガノポリシルセスキオキサン(式中、Rは置換または非置換の1価炭化水素基を表す)
(B):(RSi)aZ(式中、Rは置換または非置換の1価炭化水素基を表し、aは1または2を表し、Zはaが1のときは水素原子、水酸基、加水分解性基を表し、aが2のときは−O−,−N(X)−,−S−を表す。ここでXは水素原子、炭素数1〜4の1価炭化水素基またはRSi−を表す)で表されるシリコーン化合物
【0011】
ここで、R、Rはそれぞれ互いに同一或いは相異なる置換または非置換の1価炭化水素基を表す。R、Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;シクロヘキシル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基あるいはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子をハロゲン原子、シアノ基、アミノ基などで置換した基、例えばクロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基、γ−アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基などが例示される。
【0012】
ここでZの加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;プロペノキシ基などのアルケニルオキシ基;アセトキシ基、ベンゾキシ基などのアシロキシ基;アセトンオキシム基、ブタノンオキシム基などのオルガノオキシム基;ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基などのオルガノアミノキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基などのオルガノアミノ基;N−メチルアセトアミド基などのオルガノアミド基などが例示される。この中でも、合成や入手のし易さにおいては、メチル基、エチル基、フェニル基が好ましく、撥水性においては、メチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、フェニル基が好ましい。
【0013】
(A)RSiO1.5単位より成るシラノール基含有オルガノポリシルセスキオキサンは、公知の方法で合成でき、例えばオルガノトリクロロシランやオルガノトリアルコキシシランを、過剰の水で加水分解、縮合反応させることにより得られる。
【0014】
(B)(RSi)aZで表されるシリコーン化合物は、(A)のシラノール基をシリル化するものである。(B)としてはトリメチルシラン、トリエチルシランなどのハイドロジェンシラン;トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルジメチルクロロシランなどのクロロシラン;トリメチルシラノールなどのシラノール;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシランなどのアルコキシシラン;アミノシラン;アシロキシシラン;ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニルテトラメチルジシラザン、ビス[3,3,3−トリフルオロプロピル]テトラメチルジシラザンなどのシラザン等が例示される。これらの中でも、反応の制御や未反応物の除去が容易なことから、シラザン類やクロロシラン類が好ましい。
【0015】
(A)と(B)の反応は、シラノール基をシリル化する公知の方法で行うことができる。例えば、(B)がシラザンやクロロシランの場合は、(A)と混合して加熱するだけで容易に反応は進行する。シリル化反応はその反応温度を制御したり、副反応の脱水縮合反応を抑制するために有機溶媒中で行うのが好ましい。このような有機溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、工業用ガソリン、ミネラルスピリット、ケロシンなどの炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどの塩素化炭化水素系溶剤などがあげられる。反応温度は特に制限はないが、好ましくは室温から200℃の範囲において任意に定めればよい。反応によって生成する塩酸、アンモニア、塩化アンモニウム、アルコールなどは水洗により除去、もしくは溶媒と同時に留去することができる。
【0016】
本発明のシリコーン樹脂の軟化点は、60℃〜95℃が好ましく、より好ましくは70℃〜90℃である。この範囲であれば、滑らかな使用感と付着性を併せ持つ固形粉末化粧料が得られる。なお、軟化点はJIS C 2104の環球式軟化点測定法に準じて得られた値である。また、市販品としては、「SILFORM FLEXIBLE RESIN」(モメンティブ株式会社製)を挙げることができる。
【0017】
本発明の固形粉末化粧料における成分(a)の配合量は、特に限定されないが、0.1〜8質量%(以下単に「%」と示す。)であり、好ましくは0.2〜4%である。この範囲で配合すると、滑らかな使用感でありながら、耐衝撃性が良好な固形粉末化粧料が得られる。また、本発明の成分(a)は、単独で用いてもいいが、必要に応じて、他の油溶性樹脂と混合して用いることもできる。
【0018】
本発明に用いられる成分(b)油剤は、成分(a)のシリコーン樹脂の溶媒、あるいは成分(c)粉体の結合剤として、作用するものである。化粧品一般に使用される固体、半固体、液体油であればよく、動物油、植物油、鉱物油、合成油、を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、エステル類、脂肪族類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油等が使用可能である。例示すれば、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、ワセリン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、マカデミアンナッツ油、モクロウ、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ラノリン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸オクチルドデシル、ロジン酸ペンタエリスリトール、トリオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、べヘニン酸、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、三次元架橋構造を有するジメチルポリシロキサン重合物、パーフルオロオクタン、パーフルオロデカン、パーフルオロポロエーテル等が挙げられる。これらを一種または二種以上用いることができる。なお、これらの油剤には、成分(a)の溶解性を高めるために、軽質流動イソパラフィン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の揮発性の油剤を含むこともできる。
【0019】
本発明の固形粉末化粧料における成分(b)の配合量は、特に規定されるものではないが3〜20%が好ましく、更には5〜15%が好ましい。この範囲内であると肌への付着性や、ウエット感といった使用感にも優れ、落下時の耐衝撃性も充分満足のいくものが得られる。
【0020】
本発明に用いられる成分(c)粉体は、通常、化粧料に用いられる粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、酸化チタン、黒色酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカチタン、有機顔料被覆マイカチタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン−メタクリル酸共重合体パウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ポリウレタンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロースパウダー、N−アシルリジンパウダー等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化亜鉛被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、酸化チタン含有シリカ、酸化亜鉛含有シリカ等の複合粉体等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。なお、これらの粉体は、分散性や付着性を改良するために、シリコーン類、フッ素化合物類、金属石鹸類、油剤類等で公知の方法により、表面処理して用いても良い。
【0021】
本発明の固形粉末化粧料における成分(c)の配合量は、特に限定されないが、メイクアップ効果の点から70〜99%が好ましい。また、光輝性顔料の配合量が固形粉末化粧料の50〜90%の範囲の場合には、特に光輝感に優れるため好ましい。
【0022】
本発明の固形粉末化粧料には、上記成分(a)〜(c)に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧料に使用される成分である水溶性成分、美容成分、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を適宜配合することができる。
【0023】
本発明の固形粉末化粧料の成型方法は、公知の湿式成型方法であれば、特に制約を受けるものではないが、例えば、成分(a)、(b)を混合し、これに成分(c)粉体を添加し、均一分散した粉体組成物を調製した後、揮発性溶剤と混合してスラリー状とし、容器又は中皿に充填し、該揮発性溶剤を除去することにより成形される。
【0024】
本発明に用いられる揮発性溶剤としては、沸点が250℃以下の揮発性化合物が好ましく、具体的には、エタノール、イソプロピルアルコール、水、n−ブタノール、軽質流動イソパラフィン等の低沸点炭化水素、低重合度のジメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の揮発性シリコーン、低沸点パーフルオロポリエーテル等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0025】
これらの中でも、軽質流動イソパラフィン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルトリメチコン、メチルポリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、エチルトリシロキサンを選択すると、成分(a)の溶解分散性に優れるため好ましい。
【0026】
本発明における、揮発性溶剤の混合量は、粉体の組成および油剤の量によっても異なるが、成分(a)〜(c)と揮発性溶剤との混合物からの空気の抜け、および容器又は中皿への充填が容易な粘度(スラリー状)になるようにするのが好ましく、前記粉体組成物:揮発性溶剤の質量比が、概ね1:0.4〜1:1.5が好ましい。この範囲であれば、揮発性溶剤の除去が良好である。
【0027】
また、成分(a)〜(c)と揮発性溶剤の混合方法として、乳化剤を用いたエマルションの形態を用いることも可能である。具体的には、成分(a)および成分(b)を含む油相と、水相とを乳化して水中油型乳化組成物を調製し、次いで該乳化組成物と成分(c)粉体とを混合した後、容器又は中皿に充填し、これを乾燥することにより成形する方法が挙げられる。この方法であると、成分(a)の固形粉末化粧料中での分散性が高まり、成型物の均一性がより向上するため好ましい。
【0028】
前記水中油型乳化組成物の水相には、水が必須成分として用いられる他、通常の化粧料で用いられる水性成分であれば、特に限定されず含有することができる。例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類、グルコース、マンノース、トレハロース、ソルビトール、キシリトール、マンニトールなどの糖及び糖アルコール類等が挙げられ、これらの一種または二種以上を組み合わせて使用することができる。しかし、多価アルコール類等の非揮発性成分の配合量が多いと乾燥性が著しく低下するため、水中油型乳化組成物への配合量は5%未満が好ましい。
【0029】
水中油型乳化組成物に用いられる乳化剤は、通常の水中油型乳化化粧料に用いられる乳化剤であれば特に限定されないが、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられ、これらを一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−メチル−N−アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸塩、ο−アルキル置換リンゴ酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられ、これらを一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノールアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等が挙げられ、これらを一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものがあり、例えば、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシルメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸、N,N,N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、レシチン等が挙げられ、これらを一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、非イオン性界面活性剤を用いると、固形粉末化粧料の退色および変色がなく、経時安定性が良好であり好ましい。
【0030】
水中油型乳化組成物における乳化剤の含有量は、安定に油相を水相中に乳化できる量であり、水中油型乳化組成物の0.1〜15%が好ましい。この範囲で含有すると、乳化性及び経時安定性が特に良好な水中油型乳化組成物が得られるため、固形粉末化粧料の成型物の均一性と、滑らかな使用感が特に良好である。
【0031】
水中油型乳化組成物を調製する方法としては、通常公知の乳化方法が用いられ、デスパーミキサー、ホモジナイザー等によって乳化させる方法が挙げられる。
また、水中油型乳化組成物と成分(c)粉体を混合する方法としては、例えばヘンシェルミキサーやプラネタリーミキサー等の混合機器を用いる方法が挙げられ、混合量は、粉体の組成や水中油型乳化組成物の処方によっても異なるが、粉体100質量部に対し水中油型乳化組成物が50〜180質量部が好ましい。この範囲であれば、適量の成分(a)、(b)を混合することができ、容器又は中皿への充填が容易な粘度(スラリー状)となる。
【0032】
本発明の固形粉末化粧料の成型方法において、揮発性溶剤の除去は、その揮発速度によっても異なるが、例えば自然乾燥、加温乾燥、温風乾燥、真空吸引等によって行われる。
【0033】
本発明の固形粉末化粧料としては、アイカラー、ファンデーション、ほほ紅、アイライナー、フェイスパウダー等のメイクアップ化粧料、ボディパウダー、制汗パウダー等のスキンケア化粧料等を挙げることができる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0035】
製造例1:水中油型乳化組成物1
モノステアリン酸ポリエチレングリコール2.0g、ベヘニルアルコール2.0g、スクワラン5.0g、ワセリン3.0g、「SILFORM FLEXIBLE RESIN」(モメンティブ株式会社製)4.0g、軽質流動パラフィン4.0gを75℃で混合溶解しこれに75℃に加温した精製水80gを添加しデスパーにて5分間混合した後、冷却、脱法して水中油型乳化組成物1を得た。
【0036】
実施例1〜6及び比較例1〜3:パウダーアイカラー
表1に示す組成のパウダーアイカラーを調製し、官能評価(滑らかさ、ウエット感、付着性、成型物の均一性)と耐衝撃性について下記の評価方法により評価を行った。その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
(製法)
1.成分(1)〜(13)を均一になるまで攪拌混合する。
2.1と成分(14)〜(16)を均一に混合する。
3.2を容器に充填した後、70℃条件下で24時間乾燥して製品とする。
(比較例1については、2を容器に充填した後、プレス成型した。)
【0039】
(評価方法1)「滑らかさ」「ウエット感」「付着性」
化粧品評価専門パネル20名に、前記実施例及び比較例のパウダーアイカラーを使用してもらい、各自が以下の評価基準に従って5段階評価し、サンプル毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を以下の判定基準に従って判定した。
評価基準:
評価結果 : 評 点
非常に良好 : 5点
良好 : 4点
普通 : 3点
やや不良 : 2点
不良 : 1点
判定基準:
評点の平均点 : 判 定
4.5以上 : ◎
3.5以上〜4.5未満 : ○
1.5以上〜3.5未満 : △
1.5未満 : ×
【0040】
(評価方法2)「成型物の均一性」
化粧品評価専門パネル20名に、前記実施例及び比較例のパウダーアイカラーを一ヶ月間使い込んでもらい、初回をサンプルの上層、最終回をサンプルの下層として評価し、「滑らかさ」「ウエット感」といった官能に差が認められたかを、各自が以下の評価基準に従って5段階評価し、サンプル毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を以下の判定基準に従って判定した。
評価基準:
評価結果 : 評 点
官能差が認められない : 5点
官能差がわずかに認められる : 4点
官能差が認められるが気にならない : 3点
官能差が認められる : 2点
官能差が著しく認められる : 1点
判定基準
評点の平均点 : 判 定
4.5以上 : ◎
3.5以上〜4.5未満 : ○
1.5以上〜3.5未満 : △
1.5未満 : ×
【0041】
(評価方法3)「耐衝撃性」
前記実施例及び比較例のパウダーアイカラーを10個ずつ作成し、高さ50cmから2回落下させ、表面の状態を観察し、以下の評価基準に従って5段階評価し、サンプル毎に評点を付し、更に全評点の平均点を以下の判定基準に従って判定した。
評価基準:
評価結果 : 評 点
変化なし : 5点
二回目で僅かにひび、はがれが認められる : 4点
一回目で僅かにひび、はがれが認められる : 3点
一回目で僅かにひび、はがれが認められる : 2点
一回目で激しいひび、はがれが認められる : 1点
判定基準
評点の平均点 : 判 定
4.5以上 : ◎
3.5以上〜4.5未満 : ○
1.5以上〜3.5未満 : △
1.5未満 : ×
【0042】
表1の結果から明らかなように、本発明品に係わる実施例1〜6のパウダーアイカラーは比較例1〜3のパウダーアイカラーに比較し、耐衝撃性、成型物の均一性、使用時の滑らかさ、ウエット感の点において優れた特性を有していることがわかる。
一方、単純に成分(a)を配合し乾式プレスにて成型した比較例1は耐衝撃性、滑らかさ、成型品の均一性の点で、成分(a)を配合しないで成型した比較例2は耐衝撃性の点で、成分(b)を配合しないで成型した比較例3では滑らかさ、ウエット感の点で満足のいくものが得られなかった。
【0043】
実施例7 パウダーファンデーション
(成分) (部)
1.シリコーン3%処理タルク 30.0
2.シリコーン5%処理マイカ 10.0
3.シリコーン5%処理セリサイト 35.0
4.球状シリカ(15μ) 10.0
5.シリコーン3%処理酸化チタン 8.0
6.シリコーン1.5%処理ベンガラ 1.5
7.シリコーン1.5%処理黄酸化鉄 3.0
8.シリコーン1.5%処理黒酸化鉄 0.5
9.シリコーン1.5%処理群青 0.3
10.パラベン 0.2
11.香料 0.1
12.精製水 90.0
13.ジプロピレングリコール 1.0
14.水中油型乳化組成物1 30.0
【0044】
(製法)
1.成分(1)〜(11)を均一に混合する。
2.1の粉体組成物と(12)〜(14)を混合する。
3.容器に充填した後、40℃条件下で24時間乾燥して製品とする。
本発明のパウダーファンデーションは、耐衝撃性、成型品の均一性に優れ、滑らかさ、ウエット感、付着性といった使用性においても優れた特性を有していた。
【0045】
実施例8 フェイスパウダー
(成分) (部)
1.タルク 62.0
2.マイカ 10.0
3.セリサイト 15.0
4.ナイロンパウダー 5.0
5.酸化チタン 4.0
6.ベンガラ 0.5
7.黄酸化鉄 1.5
8.黒酸化鉄 0.3
9.群青 0.3
10.パラベン 0.1
11.香料 0.2
12.軽質流動パラフィン 60.0
13.成分(a)シリコーン樹脂(注3) 1.0
【0046】
(製法)
1.成分(1)〜(11)を均一に混合する。
2.1の粉体組成物と(12)〜(13)を混合する。
3.容器に充填した後、40℃条件下で24時間乾燥して製品とする。
本発明のフェイスパウダーは、耐衝撃性、成型品の均一性に優れ、滑らかさ、ウエット感、付着性といった使用性においても優れた特性を有していた。
【0047】
実施例9 チークカラー
(成分) (部)
1.タルク 36.0
2.マイカ 10.0
3.セリサイト 35.0
4.ナイロンパウダー 5.0
5.雲母チタン(注4) 5.0
6.雲母チタン(注5) 5.0
7.ベンガラ 1.0
8.黄酸化鉄 2.0
9.赤色226 0.5
10.群青 0.3
11.パラベン 0.1
12.香料 0.1
13.軽質流動パラフィン 90.0
14.成分(a)シリコーン樹脂(注3) 2.0
*注4:FLAMENCO RED 420C(メルク社製)
*注5:FLAMENCO GOLD 220C(メルク社製)
【0048】
(製法)
1.成分(1)〜(12)を均一に混合する。
2.1の粉体組成物と(13)〜(14)を混合する。
3.容器に充填した後、40℃条件下で24時間乾燥して製品とする。
本発明のチークカラーは、耐衝撃性、成型品の均一性に優れ、滑らかさ、ウエット感、付着性といった使用性においても優れた特性を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a)RSiO1.5単位とRSiO0.5単位(式中、R、Rは置換または非置換の1価炭化水素基を表す)から成るシリコーン樹脂と、成分(b)油剤と、成分(c)粉体を含有する固形粉末化粧料であって、成分(a)〜(c)と揮発性溶剤とを混合して容器又は中皿に充填した後、該揮発性溶剤を除去することにより成型されることを特徴とする固形粉末化粧料。
【請求項2】
成分(a)の軟化点が60℃から95℃であることを特徴とする請求項1に記載の固形粉末化粧料。
【請求項3】
成分(c)粉体として、光輝性粉体を全固形粉末化粧料中50〜90質量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】
揮発性溶剤が、軽質流動イソパラフィン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルトリメチコン、メチルポリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、エチルトリシロキサンから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固形粉末化粧料。
【請求項5】
成分(a)および成分(b)を含有する油相と、水相とを乳化して水中油型乳化組成物を調製し、次いで該乳化組成物と成分(c)粉体とを混合した後、容器又は中皿に充填し、揮発性成分を除去することにより成型されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の固形粉末化粧料。

【公開番号】特開2010−235466(P2010−235466A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82947(P2009−82947)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】