説明

固形製剤および製剤組成物

【課題】本発明の目的は、速やかに溶出し、かつ無包装状態で保存しても溶出率変化の起こりにくい、安定なプランルカスト水和物を含有する固形製剤および製剤組成物を提供することにある。
【解決手段】プランルカスト水和物1重量部に対して、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを0.02〜0.15重量部および乳糖、白糖及びマンニトールから選択される1種以上の賦形剤を0.1〜0.6重量部含有する、速やかに溶出し、安定な溶出性を示し、かつ経時的な溶出率変化が少ない造粒物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランルカスト水和物、セルロース系崩壊剤および賦形剤を含有してなる、速やかに溶出し、安定な溶出性を示し、かつ経時的な溶出率変化が少ない固形製剤に好適な造粒物ないし製剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プランルカスト水和物はロイコトリエン拮抗薬として知られており(特許文献1参照。)、プランルカスト水和物を有効成分として含有するカプセル剤(商品名:オノンカプセル)またはドライシロップ剤(商品名:オノンドライシロップ)が上市されている。プランルカスト水和物含有製剤は、気管支喘息やアレルギー性鼻炎の治療剤として大変有用な製剤である。
【0003】
一方、オノンカプセルは、温度25℃、相対湿度75%において無包装状態で保存した場合、1週間で溶出変化が起こることが報告されている(非特許文献1参照。)。それに対して、無包装状態で保存しても溶出変化が最小限に抑えられる、プランルカスト水和物とヒドロゲル形成物質とを撹拌造粒して得られたプランルカスト含有製剤が報告されている。しかし、該製剤は有効成分の溶出が遅く、例えば、溶出試験開始後120分での溶出率は34.0%であることが記載されている(特許文献2参照。)。
【0004】
医薬品においては有効成分の溶出に要する時間が長いもの、すなわち溶出の遅いものは、有効成分の血中濃度やバイオアベイラビリティーに悪影響を及ぼすことが知られている。よって、プランルカスト水和物が速やかに溶出する製剤の開発は医薬品としての品質保証において非常に重要である。
【0005】
溶出性を向上させる一般的かつ簡便な方法としては、崩壊剤としてセルロース類を添加することが知られている。また、セルロース類は成型性が高い(粘性が高い)ことから、結合剤としても使用される。一方、プランルカスト水和物は非常に強い付着性を有することが知られている(特許文献3)。よって、溶出性向上のために、プランルカスト水和物とセルロース類を組み合わせて造粒物を調製すれば、プランルカスト水和物およびセルロース類の物性の関連から、造粒用粉末(造粒物)の付着・凝集性のさらなる増加(増悪)が懸念され、溶出性を向上させたプランルカスト水和物の製剤化は非常に困難であると考えられていた。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−050977号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2005−187406号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献3】特許第2958863号公報(段落[0004])
【非特許文献1】錠剤・カプセル剤の無包装状態での安定性情報 改訂3版(社団法人日本病院、医薬ジャーナル社)(第136頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、有効成分が速やかに溶出し、かつ無包装状態で保存しても溶出率変化の起こりにくい、安定なプランルカスト水和物を含有する造粒物ないし製剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は鋭意検討を行った結果、プランルカスト水和物に特定のセルロース系崩壊剤と賦形剤を組み合わせて造粒物を調製したところ意外にも付着・凝集性の増悪が生じないこと、さらに造粒物において、プランルカスト水和物に対する該セルロース系崩壊剤の含量を特定の値にすることにより、プランルカスト水和物の溶出性を特段に向上できることを見出した。さらに、本発明者らは、上記で見出された造粒物およびこれを含む製剤組成物は安定な溶出性を示し、かつ経時的な溶出率変化が少ないことを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1] プランルカスト水和物1重量部に対して、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを0.02〜0.15重量部および乳糖、白糖及びマンニトールからなる群より選択される1種以上の賦形剤を0.1〜0.6重量部含有する、速やかに溶出し、安定な溶出性を示し、かつ経時的な溶出率変化が少ない造粒物、
[2] さらに結合剤を含有する前項[1]記載の造粒物、
[3] 平均引張破断力が300〜600gである前項[1]記載の造粒物、
[4] 造粒物の平均粒子径が200〜450μmである前項[1]記載の造粒物、
[5] 下記条件の撹拌造粒法によって製造されることを特徴とする前項[1]記載の造粒物;
1)撹拌羽根の回転数が50〜500rpmであり、
2)撹拌時間が1〜10分間、
3)仕込量を100重量%とした場合の添加水分量が20〜45重量%である、
[6] プランルカスト水和物1重量部に対して、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを0.02〜0.15重量部および乳糖、白糖及びマンニトールからなる群より選択される1種以上の賦形剤を0.1〜0.6重量部含有する造粒物を含有するカプセル剤であって、1カプセルに含まれるプランルカスト水和物が112.5mgであり、溶出試験において、試験開始30分後に少なくとも60%以上の溶出率を示し、120分後に少なくとも85%以上の溶出率を示し、かつ無包装状態で温度25℃、相対湿度75%において2週間保存後と保存前の溶出率の差が30%以下であるカプセル剤、
[7] 造粒物がさらに結合剤を含有する前項[6]記載のカプセル剤、
[8] 造粒物の平均引張破断力が300〜600gである前項[6]記載のカプセル剤、
[9] 造粒物の平均粒子径が200〜450μmである前項[6]記載のカプセル剤、
[10] 造粒物が下記条件の撹拌造粒法によって製造されることを特徴とする前項[6]記載のカプセル剤;1)撹拌羽根の回転数が50〜500rpmであり、2)撹拌時間が1〜10分間、3)仕込量を100重量%とした場合の添加水分量が20〜45重量%である、
[11] 造粒物と滑沢剤とを含有する前項[7]記載のカプセル剤、
[12] プランルカスト水和物、セルロース系崩壊剤および賦形剤を含有してなる、速やかに溶出し、安定な溶出性を示し、かつ経時的な溶出率変化が少ない製剤組成物、
[13] 30分後に少なくとも40%以上の溶出率を示し、120分後に少なくとも70%以上の溶出率を示し、かつ無包装状態で温度25℃、相対湿度75%において2週間保存後と保存前の溶出率の差が30%以下である前項[12]記載の製剤組成物、
[14] 30分後に少なくとも40%以上の溶出率を示し、90分後に少なくとも80%以上の溶出率を示し、かつ無包装状態で温度25℃、相対湿度75%において2週間保存後と保存前の溶出率の差が30%以下である前項[13]記載の製剤組成物、
[15] セルロース系崩壊剤が結晶セルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、および低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される一種以上であり、賦形剤が乳糖、白糖およびマンニトールからなる群より選択される一種以上である前項[12]記載の製剤組成物、
[16] セルロース系崩壊剤が低置換度ヒドロキシプロピルセルロースであり、賦形剤が乳糖である前項[15]記載の製剤組成物、
[17] プランルカスト水和物1重量部に対して、セルロース系崩壊剤0.02〜0.2重量部、および賦形剤0.05〜0.6重量部を含む前項[12]記載の製剤組成物、
[18] セルロース系崩壊剤を添加してから造粒することを特徴とする前項[12]記載の製剤組成物、
[19] 前項[12]記載の製剤組成物を充填してなるカプセル剤、
[20] 前項[12]記載の製剤組成物を打錠してなる錠剤、および
[21] 前項[12]記載の製剤組成物からなる顆粒剤
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、崩壊剤として特定のセルロース類を用いて造粒することにより、付着・凝集性を悪化させることなく、有効成分であるプランルカスト水和物の溶出性の向上した造粒物を提供することができる。このため、本発明のプランルカスト水和物、セルロース系崩壊剤および賦形剤を含有する造粒物ないし製剤組成物は、固形製剤の製造に好適であり、該固形製剤(錠剤、カプセル剤等)は、有効成分が速やかに溶出し、さらに無包装状態で保存しても溶出変化が起こりにくい。したがって、安定した品質のプランルカスト水和物含有固形製剤を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の造粒物は、プランルカスト水和物と、セルロース系崩壊剤と、賦形剤とを含有してなる造粒物であり、速やかに溶出し、安定な溶出性を示し、かつ経時的な溶出率変化が少ない、例えば粉末、顆粒等の造粒物である。
【0012】
本発明に用いられるプランルカスト水和物は式(A)
【化1】

で示される4−オキソ−8−[4−(4−フェニルブトキシ)ベンゾイルアミノ]−2−(テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン 1/2水和物である。プランルカスト水和物の製造は、例えば、特開昭61−050977号明細書記載の方法に準じて行なうことができる。
【0013】
本発明で用いられるセルロース系崩壊剤とは、結晶セルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウムまたはカルボキシメチルセルロースであり、これらを一種以上適宜配合して用いることができる。好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースまたはクロスカルメロースナトリウムが挙げられる。さらに好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0014】
本発明で用いられる低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)は、通常のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)とは区別され、ヒドロキシプロピルセルロースにおけるヒドロキシプロポキシル基含量が約5〜16重量部である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースであり、約7〜13重量部である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、約7〜9.9重量部である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。具体的なL−HPCとしては、ヒドロキシプロピルセルロースにおけるヒドロキシプロポキシル基含量が約7〜9.9重量部である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとして、例えばLH−22(信越化学工業(株)製、平均粒子径約40μm)、LH−32(信越化学工業(株)製、平均粒子径約25μm)やこれらの混合物等が挙げられ、これらは市販品として入手可能である。ヒドロキシプロピルセルロースにおけるヒドロキシプロポキシル基含量が約10.0〜12.9重量である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとして、例えばLH−21(信越化学工業(株)製、平均粒子径約40μm)、LH−31(信越化学工業(株)製、平均粒子径約25μm)、LH−11(信越化学工業(株)製、平均粒子径約50μm)、LH−B1(信越化学工業(株)製、平均粒子径約50μm)やこれらの混合物等が挙げられ、これらは市販品として入手可能である。ヒドロキシプロピルセルロースにおけるヒドロキシプロポキシル基含量が約13.0〜16.0重量である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとして、例えばLH−20(信越化学工業(株)製、平均粒子径約40μm)、LH−30(信越化学工業(株)製、平均粒子径約25μm)やこれらの混合物等が挙げられ、これらは市販品として入手可能である。
【0015】
なお、通常のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)とは、ヒドロキシプロピルセルロースにおけるヒドロキシプロポキシル基含量が約53.4〜77.5重量部であるヒドロキシプロピルセルロースである。
【0016】
本発明で用いられる賦形剤としては、例えば、糖類、澱粉類、結晶セルロース、無水ケイ酸、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられ、これらを一種以上適宜配合して用いることができる。好ましくは糖類が挙げられる。糖類としては、例えば、ぶどう糖、果糖、麦芽糖、乳糖、白糖、異性化乳糖、還元乳糖、ショ糖、マンニトール、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、パラチノース、トレハロース、ソルビトール等が挙げられる。好ましくは乳糖、白糖またはマンニトールであり、さらに好ましくは乳糖である。デンプン類としては、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン等が挙げられる。
【0017】
本発明の造粒物を製造する方法は公知の方法に準じ、例えば、プランルカスト水和物、セルロース系崩壊剤、賦形剤、さらに必要に応じて他の添加剤を混合するか、もしくは公知の造粒法(例えば、押出し造粒法、攪拌造粒法、混合撹拌造粒法、高速混合撹拌造粒法、混練高速撹拌造粒法、流動層造粒法、転動撹拌流動層造粒法、転動造粒法、乾式(圧縮)造粒法、破砕造粒法、噴霧乾燥造粒法等)によって造粒し、必要に応じて乾燥、整粒、分級等行うことにより製造することができる。速やかに溶出し、安定な溶出性を示し、かつ経時的な溶出率変化が少ない造粒物ないし製剤組成物を製造するには、上記のセルロース系崩壊剤を添加して造粒することが好ましい。本発明の造粒物の造粒法としては、撹拌造粒法(混合撹拌造粒法、高速混合撹拌造粒法、混練高速撹拌造粒法を含む)、流動層造粒法、転動撹拌流動層造粒法または噴霧乾燥造粒法が好ましく、特に、撹拌造粒法が好ましい。
【0018】
本発明の造粒物は、プランルカスト水和物、セルロース系崩壊剤および賦形剤の他に、造粒物ないし製剤組成物を製造する際に一般的に使用される添加剤(製剤基剤)をさらに含んでいてもよく、例えば、結合剤、滑沢剤、矯味剤、矯臭剤、界面活性剤、香料、着色剤、抗酸化剤、隠蔽剤、静電気防止剤、湿潤剤、溶出補助剤、流動化剤等を一種以上適宜配合して用いることができる。また、上記したセルロース系崩壊剤以外の崩壊剤を含んでいてもよく、所望によりその一種以上を適宜配合して用いることができる。
【0019】
結合剤としては、例えば、水溶性セルロース類、ポビドン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、アルギン酸ナトリウム、プルラン、アラビアゴム末、ゼラチン等が挙げられる。水溶性セルロース類とは、セルロースの水酸基の水素原子の一部をメチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシプロピル基またはヒドロキシエチル基等で置換することにより、水素結合を消失させた水溶性高分子である。例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)等が挙げられ、これらを一種以上適宜配合して用いることができる。水溶性セルロース類としてはいずれも好ましいが、特に好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)である。
【0020】
矯味剤としては、例えば、白糖、D−ソルビトール、キシリトール、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、グルタミン酸ナトリウム、5’−イノシン酸ナトリウム、5’−グアニル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0021】
界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80等)、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合物、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。香料としては、例えば、レモン油、オレンジ油、メントール、はっか油等が挙げられる。
【0022】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、蔗糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0023】
着色剤としては、例えば、酸化チタン、食用黄色5号、食用青色2号、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄等が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、L−システイン、亜硫酸ナトリウム、ビタミンE等が挙げられる。
【0024】
隠蔽剤としては、例えば、酸化チタン等が挙げられる。
静電気防止剤としては、例えば、タルク、酸化チタン等が挙げられる。
湿潤剤としては、例えば、ポリソルベート80、ラウリル酸硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等が挙げられる。
【0025】
溶出補助剤としては、例えば、乾燥メタクリル酸コポリマーLD、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等が挙げられる。
流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、タルク、含水二酸化ケイ素等が挙げられる。
【0026】
上記したセルロース系崩壊剤以外の崩壊剤としては、アジピン酸、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、含水二酸化ケイ素、カンゾウ末、カンテン末、グァーガム、クエン酸カルシウム、グリセリン脂肪酸エステル、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、コムギデンプン、コメデンプン、酢酸フタル酸セルロース、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ショ糖脂肪酸エステル、水酸化アルミナマグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル40、精製白糖、セスキオレイン酸ソルビタンゼラチン、ソルビタン脂肪酸エステル、タルク、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、デキストリン、デヒドロ酢酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、トラガント末、ハチミツ、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、フマル酸一ナトリウム、ポビドン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリソルソルベート40、ポリソルベート80、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、マクロゴール400、マクロゴール1500、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マンニトール、無水クエン酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メチルセルロース、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、リン酸二水素カルシウム等が挙げられる。
【0027】
本発明において、製剤組成物とは、プランルカスト水和物と、セルロース系崩壊剤と、賦形剤とを含有してなる組成物を意味する。したがって、本発明における製剤組成物は、上記の造粒物そのものであってもよく、該造粒物と上記したような他の添加剤の1種以上とを混合してなる組成物であってもよい。
【0028】
本発明の造粒物ないし製剤組成物は、固形製剤の製造に好適に用いることができる。すなわち、上記方法により得た造粒物ないし製剤組成物を公知の方法によってカプセル充填もしくは打錠することにより、例えば、「造粒物を充填してなるカプセル剤」、「造粒物を打錠してなる錠剤」ないし「製剤組成物を充填してなるカプセル剤」、「製剤組成物を打錠してなる錠剤」を製造することができ、造粒物ないし製剤組成物をそのまま顆粒剤または散剤等として用いることもできる。さらに、錠剤、散剤または顆粒剤を服用時に溶液または懸濁液として服用する用時溶解/懸濁型製剤(例えば、ドライシロップ剤等)として用いることができる。
【0029】
「造粒物を充填してなるカプセル剤」、「造粒物を打錠してなる錠剤」ないし「製剤組成物を充填してなるカプセル剤」、「製剤組成物を打錠してなる錠剤」を製造する際には、造粒物を必要に応じて滑沢剤等の他の添加剤と混合し、打錠もしくはカプセル充填してもよい。
【0030】
本発明の造粒物ないし製剤組成物を充填するカプセルの材皮としては、通常用いられる材皮であればどんなものでもよいが、例えば、ゼラチン、ポリエチレングリコール配合ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン等が挙げられる。また、錠剤は、必要に応じ薬学的に許容され、本発明の効果を妨げない、フィルムコーティング基剤を用いて被覆されても構わない。
【0031】
ドライシロップ剤としては、上記方法により得た造粒物を、そのままドライシロップ剤として供することもできるし、さらに所望により、通常用いられる苦味改善剤(矯味剤)を加えて、用時水に懸濁して服用可能なドライシロップ剤を供することができる。
【0032】
本発明における固形製剤としては、本発明の造粒物を充填してなるカプセル剤ないし本発明の製剤組成物を充填してなるカプセル剤、または本発明の造粒物を打錠してなる錠剤ないし本発明の製剤組成物を打錠してなる錠剤が好ましく、さらに好ましくは本発明の造粒物を充填してなるカプセル剤ないし本発明の製剤組成物を充填してなるカプセル剤である。
【0033】
造粒物ないし製剤組成物を充填してなるカプセル剤もしくは打錠してなる錠剤を製造する過程で添加してもよい他の添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、矯味剤、界面活性剤、香料、滑沢剤、着色剤、抗酸化剤、隠蔽剤、静電気防止剤、湿潤剤、矯臭剤、溶出補助剤等が挙げられ、これらから選択される一種以上を適宜配合して用いてもよい。賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、矯味剤、界面活性剤、香料、滑沢剤、着色剤、抗酸化剤、隠蔽剤、静電気防止剤、湿潤剤、矯臭剤、溶出補助剤としては、上記したものが挙げられる。
【0034】
本発明の造粒物ないし製剤組成物におけるプランルカスト水和物の含有量として好ましくは、造粒物ないし製剤組成物を100重量部とした場合、約50〜約98重量部が好ましく、さらに好ましくは約60〜約90重量部であり、特に好ましくは約60〜約80重量部である。
【0035】
本発明の造粒物ないし製剤組成物において、プランルカスト水和物1重量部に対するセルロース系崩壊剤の重量比として好ましくは、約0.02〜0.2重量部であり、より好ましくは約0.02〜約0.15重量部であり、特に好ましくは約0.07〜約0.15重量部であり、とりわけ好ましくは約0.07〜約0.13重量部である。
【0036】
本発明の造粒物ないし製剤組成物において、プランルカスト水和物1重量部に対する賦形剤の重量比として好ましくは、約0.05〜約0.8重量部であり、さらに好ましくは約0.1〜約0.6重量部であり、特段好ましくは約0.15〜約0.35重量部である。
【0037】
本発明の造粒物ないし製剤組成物において、プランルカスト水和物1重量部に対する結合剤の重量比として好ましくは、約0.01〜約0.3重量部であり、さらに好ましくは約0.01〜約0.1であり、特段好ましくは、約0.01〜約0.04重量部である。
【0038】
本発明の固形製剤中のプランルカスト水和物含量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間、剤型等により異なるが、本発明の所望の効果が得られるように設定することが好ましい。成人1日当たりのプランルカスト水和物の投与量として好ましくは約25〜2500mg、より好ましくは約112.5〜450mgである。具体的には、約50mg、約70mg、約100mg、約112.5mg、約140mg、約200mg、約225mg、約280mgまたは約450mgが好ましい。例えば、造粒物もしくは製剤組成物を充填してなるカプセル剤または打錠してなる錠剤である場合、1カプセル中または1錠中のプランルカスト水和物含有量として好ましくは約112.5mgまたは約225mg、さらに好ましくは約112.5mgである。
【0039】
また、本発明の造粒物ないし製剤組成物を小児に対して投与するには、散剤、顆粒剤またはドライシロップ剤として用いるのが好ましい。小児患者の体重1kg当たりの1日当たりのプランルカスト水和物の投与量としては、約2mg〜約10mgが好ましく、より好ましくは約5mg〜約8mgであり、さらに好ましくは約7mgである。また、体重12kg以上18kg未満の小児患者に対しては、プランルカスト水和物を1日当たり約50mg〜約100mg投与するのが好ましく、より好ましくは約50mgまたは約100mgである。体重18kg以上25kg未満の小児患者に対しては、プランルカスト水和物を1日当たり約70mg〜約140mg投与するのが好ましく、より好ましくは約70mgまたは約140mgである。体重25kg以上35kg未満の小児患者に対しては、プランルカスト水和物を1日当たり約100mg〜約200mg投与するのが好ましく、より好ましくは約100mgまたは約200mgである。体重35kg以上45kg未満の小児患者に対しては、プランルカスト水和物を1日当たり約140mg〜約280mg投与するのが好ましく、より好ましくは約140mgまたは約280mgである。
【0040】
本発明において、溶出率は、第十四改正日本薬局方一般試験法 溶出試験法第2法(パドル法:50rpm)に準じて溶出試験を行い算出される、プランルカスト水和物の溶出率とする。すなわち、試験液として1.0%ポリソルベート80含有崩壊試験第2液(pH6.8、900mL)を選択し、シンカーを用いて溶出試験を行い、得られたサンプル液を吸光度法(測定波長350nm)で測定し、プランルカスト水和物の溶出率を算出することができる。
【0041】
本発明の造粒物ないし製剤組成物において、「速やかに溶出する」とは、本発明の造粒物ないし製剤組成物、当該造粒物もしくは製剤組成物を充填してなるカプセル剤または当該造粒物もしくは製剤組成物を打錠してなる錠剤に含まれるプランルカスト水和物が、速やかに溶出することを指し、例えば、上記溶出試験において、試験開始30分後の溶出率が40%以上であることを指標とする。
【0042】
本発明の造粒物ないし製剤組成物において、「安定な溶出性を示す」とは、例えば、本発明の造粒物ないし製剤組成物、当該造粒物もしくは製剤組成物を充填してなるカプセル剤または当該造粒物もしくは製剤組成物を打錠してなる錠剤が一様な溶出性を示すことを指す。例えば、上記溶出試験において、本発明の造粒物ないし製剤組成物、当該造粒物もしくは製剤組成物を充填してなるカプセル剤または当該造粒物もしくは製剤組成物を打錠してなる錠剤の試験開始30分後の溶出率が40%以上であり、かつ試験開始120分後の溶出率が70%以上、好ましくは、試験開始90分後の溶出率が80%以上であることを指標とする。「安定な溶出性を示す」として好ましくは、試験開始30分後の溶出率が60%以上であり、かつ試験開始120分後の溶出率が85%以上である。
【0043】
本発明の造粒物ないし製剤組成物において、「経時的な溶出率変化が少ない」とは、本発明の造粒物ないし製剤組成物、当該造粒物ないし製剤組成物を充填してなるカプセル剤または当該造粒物ないし製剤組成物を打錠してなる錠剤を加温および/または加湿条件下で一定期間保存後も、溶出率が変化しない、または溶出率の変化が少ないことを指す。例えば、無包装状態で温度25℃、相対湿度75%において2週間保存した本発明の造粒物ないし製剤組成物、当該造粒物ないし製剤組成物を充填してなるカプセル剤または当該造粒物ないし製剤組成物を打錠してなる錠剤について上記溶出試験を行い、保存前と比較して、溶出率の差が30%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下であることを指標とする。なお、溶出率の差とは、保存前に所定の測定時間で測定された溶出率をC(%)、2週間保存後に同じ測定時間で測定された溶出率をC(%)としたときの、C(%)とC(%)との差を意味する。したがって、「経時的な溶出率変化が少ない」とは、C−Cの絶対値が30%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下であることを指標とする。
【0044】
本発明においては、造粒物の付着・凝集性を大きく増悪させることなしに、溶解性を向上させるという目的を達成するが、そのようにして目的を達成するための一つの指標として、造粒物の平均引張破断力を採用することができる。本発明の造粒物の平均引張破断力として好ましくは、約300〜約600gであり、より好ましくは約300〜約450gであり、特段好ましくは約350〜約450である。造粒物の平均引張破断力が300g未満では、付着・凝集性が小さい反面、溶出性が低下する傾向にあるので好ましくない。一方、600gを超えると、付着・凝集性が大きくなり、造粒物の製造や使用上問題となる場合があるので好ましくない。
【0045】
本発明において、平均引張破断力は、圧縮特性・付着特性測定装置(商品名:アグロボット、ホソカワミクロン株式会社製)によって算出する。
粒子間の付着・凝集は、次のような力によって生じることが古くから知られている。1)固体粒子間の分子間力、2)粒子表面における結合力、3)静電荷力、4)粒子間液体架橋による表面張力・毛細管負圧による結合力、5)結合剤による結合力、6)高温・高圧下における粒子の融解による結合などがある。これらのパラメータを総合的に測定する方法として、低圧密・二分割セルを用いた比較的小さな付着凝集性を測定する装置はいくつか知られている。しかしながら、低圧密・二分割セルを用いた方法では、測定レンジが不足し安定した測定が困難である。アグロボット(商品名)は、既存の装置では測定が困難であった粉体の混合、造粒操作で取り扱う高圧密領域での安定測定が可能な装置である。
【0046】
粉体層の引張破断力σ(Ftb、g)は、Rumpfの式
【数1】

で表されるように粒子径Xpと粉体層の構造(空間率ε、配位数k)、ならびに粒子間付着力Hによって規定されるものであり、付着性を表す指標の一つである。
【0047】
本発明の造粒物の平均粒子径としては、約200〜約450μmであり、より好ましくは約250〜約370μmであり、特段好ましくは約300〜370μmである。
なお、本発明において、造粒物の平均粒子径とは、粉体粒子の累積50%平均粒径(重量基準平均径)を意味する。本発明における平均粒子径は、例えば乾式のふるい分け測定器である音波振動式全自動フルイ分け粒度分布測定器(ロボットシフター、セイシン企業製)を用いて、セット段数が6段で、24、32、60、100、150、200のサイズのメッシュを用いることにより、測定することができる。
【0048】
本発明の造粒物の嵩密度としては、約0.4〜約0.65g/mLが好ましく、より好ましくは約0.53〜約0.59g/mLである。
なお、本発明において、「造粒物の嵩密度」とは、「造粒物の重量」を「造粒物を容器に入れたときの体積」で除した値(ルーズ嵩密度)を意味し、例えば約30gの試料を精密に量り、乾いたメスシリンダーに圧密せずに入れ、目盛の最小単位まで読み取り、造粒物の重量を造粒物の最終嵩体積で除したものを嵩密度とする方法によって測定することができる。
【0049】
本発明の目的を達成するためには、下記条件の撹拌造粒(湿式高剪断造粒)法で造粒することも好ましい。
1)撹拌羽根の回転数は50〜500rpmが好ましく、より好ましくは100〜350rpmであり、特段好ましくは250〜350rpmである。
2)撹拌時間は1〜10分間が好ましく、より好ましくは1〜5分間であり、さらに好ましくは1〜3分間である。なお、本発明における撹拌時間とは、造粒用粉末に造粒液を添加し、造粒用粉末を湿式状態で撹拌している時間である。造粒液としては、水(精製水)、含水エタノール、無水エタノール、またはこれらの混合物等を用いることができ、あるいは、これらに結合剤等を溶解または懸濁して用いることもできる。
3)仕込量を100重量%とした場合の添加水分量として好ましくは約20〜約45重量%であり、好ましくは約20〜約35重量%であり、さらに好ましくは約24〜約30重量%である。なお、仕込量とは、撹拌を開始する前のプランルカスト水和物、セルロース系崩壊剤、賦形剤、さらに必要に応じて加えた他の添加剤の合計重量を意味する。
【0050】
撹拌造粒装置としては、バーチカルグラニュレーター((株)パウレック製)、混練高速撹拌造粒機SPG(ダルトン製)、フロージェットグラニュレータFJG(大川原製作所製)、スパルタンリューザ(ダルトン製)、ボーレバギューメータVMA(寿工業製)、高速撹拌型混合造粒機NMG(奈良機械製作所製)、ハイスピードミキサー(深江パウテック製)、ディオスナ撹拌混合造粒機(ミューチュアル製)、ニュースピードニーダー(岡田精工製)等が挙げられる。好ましくは、バーチカルグラニュレーター、混練高速撹拌造粒機SPG、高速撹拌型混合造粒機NMG、ハイスピードミキサーである。
【0051】
[医薬品への適用]
本発明の造粒物ないし製剤組成物は、プランルカスト水和物を有効成分として含有するため、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)等の呼吸器疾患、メニエール病、滲出性中耳炎、偏頭痛、咳嗽、月経困難症等の種々の疾患等の予防および/または治療薬として有用である。
【0052】
[毒性]
本発明が提供するプランルカスト水和物を含有する造粒物ないし製剤組成物は、低毒性であり、医薬として使用するために十分に安全である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明をよく理解するためのものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
[製剤例1]
攪拌造粒機(FM−VG−10P型バーチカルグラニュレーター、(株)パウレック製)の容器内にプランルカスト水和物(787.5g)、乳糖(175.0g;LACTOSE NEW ZEALAND社製)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)(70.0g;信越化学工業(株)製「LH−22」)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(22.4g;信越化学工業(株)製「TC−5EW」)を投入し、約1分間混合した後、精製水(仕込量に対して約27.5重量%)を混合物に対して適量添加しプランルカスト水和物の湿性品を得た(ブレード回転速度:300rpm、チョッパー回転速度:2500rpm、撹拌時間約2分間)。この湿性品を流動層造粒機(STREA−1、(株)パウレック製)を用いて、給気温度85℃にて、排熱温度が40℃になるまで乾燥した。この乾燥品を標準篩(目開き:1.00mm)を用いて篩過し、プランルカスト水和物の造粒物(VG品、平均粒子径351.6μm、ルーズ嵩密度0.56g/mL)を得た。このVG品(400.0g)にステアリン酸マグネシウム(6.0g;太平化学産業(株)製)を添加した後、袋混合を行い、カプセル充填用末を得た。この充填用末をカプセル充填機(LIQFILsuper40、クオリカプス(株)製)により、3号カプセルに充填を行い、プランルカスト水和物1重量部に対して、セルロース系崩壊剤を約0.089重量部かつ賦形剤を約0.22重量部含有する、下記処方のカプセル剤1を製造した。
<カプセル剤1の処方(1カプセル中)>
造粒物
プランルカスト水和物 112.5mg
乳糖(賦形剤) 25.0mg
L−HPC(セルロース系崩壊剤) 10.0mg
TC−5EW(結合剤:水溶性セルロース類) 3.2mg
添加剤
ステアリン酸マグネシウム(滑沢剤) 2.3mg
計 153.0mg
【0055】
[製剤例2]
仕込量に対して精製水を約22重量%用い、かつ低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いず、また、ステアリン酸マグネシウムの使用量を変えたこと以外は、製造例1と同様の操作を行なうことにより、セルロース系崩壊剤を含まず、プランルカスト水和物1重量部に対して、賦形剤を約0.22重量部含有する、下記処方のカプセル剤2を製造した。なお、造粒物の平均粒子径は380.6μmであり、ルーズ嵩密度は0.61g/mLであった。
<カプセル剤2の処方(1カプセル中)>
造粒物
プランルカスト水和物 112.5mg
乳糖(賦形剤) 25.0mg
TC−5EW(結合剤:水溶性セルロース類) 3.0mg
添加剤
ステアリン酸マグネシウム(滑沢剤) 2.1mg
計 142.6mg
【0056】
[製剤例3]
仕込量に対して精製水を約36重量%用い、セルロース系崩壊剤その他の剤の使用量を適宜変えて製造例1と同様の操作を行なうことにより、プランルカスト水和物1重量部に対して、セルロース系崩壊剤を約0.22重量部かつ糖類を約0.22重量部含有する、下記処方のカプセル剤3を製造した。なお、造粒物の平均粒子径は263.3μmであり、ルーズ嵩密度は0.51g/mLであった。
<カプセル剤3の処方(1カプセル中)>
造粒物
プランルカスト水和物 112.5mg
乳糖(賦形剤) 25.0mg
L−HPC(セルロース系崩壊剤) 25.0mg
TC−5EW(結合剤:水溶性セルロース類) 3.5mg
添加剤
ステアリン酸マグネシウム(滑沢剤) 2.5mg
計 168.5mg
【0057】
[製剤例4]
仕込量に対して精製水を約25重量%用い、賦形剤その他の剤の使用量を適宜変えて製剤例1と同様の操作を行なうことにより、プランルカスト1重量部に対して、セルロース系崩壊剤を約0.089重量部かつ賦形剤を約0.089重量部含有する、下記処方のカプセル剤4を製造した。なお、造粒物の平均粒子径は415.9μmであり、ルーズ嵩密度は0.38g/mLであった。
<カプセル剤4の処方(1カプセル中)>
造粒物
プランルカスト水和物 112.5mg
乳糖(賦形剤) 10.0mg
L−HPC(セルロース系崩壊剤) 10.0mg
TC−5EW(結合剤:水溶性セルロース類) 3.2mg
添加剤
ステアリン酸マグネシウム(滑沢剤) 2.1mg
計 137.8mg
【0058】
[製剤例5]
仕込量に対して精製水を約26重量%用い、賦形剤その他の剤の使用量を適宜変えて製剤例1と同様の操作を行なうことにより、プランルカスト1重量部に対して、セルロース系崩壊剤を約0.089重量部かつ糖類を約0.31重量部含有する、下記処方のカプセル剤5を製造した。なお、造粒物の平均粒子径は294.9μmであり、ルーズ嵩密度は0.57g/mLであった。
<カプセル剤5の処方(1カプセル中)>
造粒物
プランルカスト水和物 112.5mg
乳糖(賦形剤) 35.0mg
L−HPC(セルロース系崩壊剤) 10.0mg
TC−5EW(結合剤:水溶性セルロース類) 3.2mg
添加剤
ステアリン酸マグネシウム(滑沢剤) 2.4mg
計 163.1mg
【0059】
[引張破断力の測定]
製造例1〜3で製造したカプセル剤に含まれる造粒物の付着性を評価するために、ホソカワミクロン株式会社製アグロボット(商品名;型式AGR−2)にて引張破断力を測定した。アグロボットの測定条件は以下の通り;
<測定条件>
・セル内径:25mm
・セル温度:25℃
・バネ線径:1.2mm
・圧縮速度:0.1mm/秒
・最大圧縮力:150kgf
・圧縮保持時間:60秒
・引張サンプリング時間:25秒
【0060】
測定は各造粒物において3回行ない、その平均値を求めた結果を下記表1に示す。なお、表1中、L−HPC重量部とは、造粒物中において、プランルカスト水和物を1重量部とした場合のL−HPCの重量部を意味する。
【0061】
【表1】

【0062】
上記の結果から、造粒物に含まれるL−HPC量が増加することにより、引張破断力が低下することが明らかとなった。付着凝集性の強い薬物であるプランルカスト水和物と粘性の高いセルロース系崩壊剤であるL−HPCの組み合わせにおいて、L−HPC量を増加させた場合、プランルカスト水和物の付着性が増悪されると考えられたが、上記のような予期に反する逆の結果となった。
【0063】
[溶出性評価1]
製剤例1〜3で製造したカプセル剤について、1.0%ポリソルベート80含有崩壊試験第2液(pH6.8)における溶出試験を行った。試験は第十四改正日本薬局方の一般試験法 溶出試験法 第2法(パドル法:50rpm)に従ってシンカーを用いて行った。試験液は崩壊試験第2液(pH6.8)に1.0%のポリソルベート80を添加した液を用いた。サンプリングした液を吸光度法(測定波長350nm)で測定し、溶出率を算出した。結果を表2および図1に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
上記結果から明らかなように、製剤例1は崩壊試験開始30分後において約73%、120分後において約93%の溶出率を示し、製剤例2および製剤例3に比べ、明らかに溶出速度の向上が見られた。
【0066】
この溶出試験の結果を上記の引張破断力の測定結果と合わせて考えた場合、付着性が相対的に低度であり、かつ崩壊剤の含量が多い製剤例3が溶液中での崩壊性に優れると考えられたが、上記結果はそれとは相反する結果となり、製剤例1で製造したカプセル剤1が最も優れた溶出性を示した。
このことから、プランルカスト水和物とセルロース系崩壊剤の組み合わせにおいては、セルロース系崩壊剤の含量を特定の値(製剤例1)にすることにより、プランルカスト水和物の溶出速度を特段に向上できることが明らかとなった。
【0067】
[溶出性評価2(安定性試験)]
製剤例1で製造したカプセル剤1を無包装で、25℃、相対湿度75%条件下の恒温恒湿器内で2週間保存後、上記溶出性評価1と同様に溶出率を測定した。保存前の溶出率に対する差(%)を表3に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
上記から、製剤例1で製造したカプセル剤1は、加湿条件下で一定期間、無包装状態で保存後も、保存前と比較した溶出率の差(低下)がいずれの測定時間においても30%以下であることから、経時的な溶出率変化が少ない製剤であることが明らかとなった。
【0070】
[溶出性評価3]
上記溶出性評価1と同様の溶出試験を行なうことにより、製剤例1、4および5で製造したカプセル剤における溶出率を算出した。結果を表4に示す。
【0071】
【表4】

【0072】
製剤例4、1および5において、プランルカスト水和物1重量部に対するセルロース系崩壊剤の重量部は一定であるのに対し、賦形剤の重量部(製剤例4:0.089、製剤例1:0.22、製剤例5:0.31)は異なっている。
上記結果から、製剤例4で製造したカプセル剤と比較して、製剤例1および製剤例5で製造したカプセル剤が溶出性に優れていることが明らかであるため、プランルカスト水和物と賦形剤の組み合わせにおいても、プランルカスト水和物に対する賦形剤の含量を特定の値にすることにより、プランルカスト水和物の溶出速度を向上できることが明らかとなった。
【0073】
[製剤例6]
あらかじめ結合剤としてのヒドロキシプロピルメチルセルロース(157.5g;信越化学工業(株)製「TC−5EW」)を精製水(2092.5g)に溶解させ結合液とした。攪拌造粒機(FM−VG−10P型バーチカルグラニュレーター、パウレック(株)製)の容器内にプランルカスト水和物(750.0g)および乳糖(166.7g;LACTOSE NEW ZEALAND社製)を投入し、1分間混合した後、上記で調製した結合液を混合物に対して適量添加しプランルカスト水和物の湿性品を得た(ブレード回転速度:300rpm、チョッパー回転速度:2500rpm)。この湿性品を流動層造粒機(STREA−1、(株)パウレック製)を用いて、給気温度85℃にて、排熱温度が40℃になるまで乾燥した。この乾燥品を、標準篩(目開き:1.00mm)を用いて篩過し、プランルカスト水和物の造粒物(VG品)を得た。このVG品(368.0g)に低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)(26.0g;信越化学工業(株)製「LH−22」)およびステアリン酸マグネシウム(6.0g:太平化学産業(株)製)を添加した後、袋混合を行い、カプセル充填用末を得た。この充填用末をカプセル充填機(LIQFILsuper40、クオリカプス(株)製)により、3号カプセルに充填を行い、セルロース系崩壊剤を造粒後に添加して製造するカプセル剤6を製造した。
<カプセル剤6の処方(1カプセル中)>
造粒物
プランルカスト水和物 112.5mg
乳糖(賦形剤) 25.0mg
TC−5EW(結合剤:水溶性セルロース類) 2.4mg
添加剤
L−HPC(崩壊剤) 10.0mg
ステアリン酸マグネシウム(滑沢剤) 2.3mg
計 152.2mg

【0074】
[溶出性評価4]
上記溶出性評価1と同様の溶出試験を行なうことにより、製剤例6で製造したカプセル剤における溶出率を算出した。その結果を製剤例1および2についての結果と対比したところ、セルロース系崩壊剤を含まない製剤(製剤例2)や、セルロース系崩壊剤を造粒後に添加して製造した製剤(製剤例6)については、いずれの測定時間においても、セルロース系崩壊剤を含む本発明の造粒物を用いて製造した製剤(製剤例1)と比較してプランルカスト水和物の溶出が遅かった。以上のことから、溶出性を向上させるためには、セルロース系崩壊剤を添加してから造粒することが好ましいことも明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の造粒物ないし製剤組成物を用いて製造した固形製剤(錠剤、カプセル剤等)は、有効成分が速やかに溶出し、かつ安定な溶出性を示すため、血中濃度やバイオアベイラビリティーに影響を及ぼさない。したがって、生物学的に同等な、安定した品質の製剤を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】製剤例1〜3の溶出試験の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランルカスト水和物1重量部に対して、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを0.02〜0.15重量部および乳糖、白糖及びマンニトールからなる群より選択される1種以上の賦形剤を0.1〜0.6重量部含有する、速やかに溶出し、安定な溶出性を示し、かつ経時的な溶出率変化が少ない造粒物。
【請求項2】
さらに結合剤を含有する請求項1記載の造粒物。
【請求項3】
平均引張破断力が300〜600gである請求項1記載の造粒物。
【請求項4】
造粒物の平均粒子径が200〜450μmである請求項1記載の造粒物。
【請求項5】
下記条件の撹拌造粒法によって製造されることを特徴とする請求項1記載の造粒物;1)撹拌羽根の回転数が50〜500rpmであり、2)撹拌時間が1〜10分間、3)仕込量を100重量%とした場合の添加水分量が20〜45重量%である。
【請求項6】
プランルカスト水和物、セルロース系崩壊剤および賦形剤を含有してなる、速やかに溶出し、安定な溶出性を示し、かつ経時的な溶出率変化が少ない製剤組成物。
【請求項7】
30分後に少なくとも40%以上の溶出率を示し、120分後に少なくとも70%以上の溶出率を示し、かつ無包装状態で温度25℃、相対湿度75%において2週間保存後と保存前の溶出率の差が30%以下である請求項6記載の製剤組成物。
【請求項8】
30分後に少なくとも40%以上の溶出率を示し、90分後に少なくとも80%以上の溶出率を示し、かつ無包装状態で温度25℃、相対湿度75%において2週間保存後と保存前の溶出率の差が30%以下である請求項7記載の製剤組成物。
【請求項9】
セルロース系崩壊剤が結晶セルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、および低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される一種以上であり、賦形剤が乳糖、白糖およびマンニトールからなる群より選択される一種以上である請求項6記載の製剤組成物。
【請求項10】
セルロース系崩壊剤が低置換度ヒドロキシプロピルセルロースであり、賦形剤が乳糖である請求項9記載の製剤組成物。
【請求項11】
プランルカスト水和物1重量部に対して、セルロース系崩壊剤0.02〜0.2重量部、および賦形剤0.05〜0.6重量部を含む請求項6記載の製剤組成物。
【請求項12】
セルロース系崩壊剤を添加してから造粒することを特徴とする請求項6記載の製剤組成物。
【請求項13】
請求項6記載の製剤組成物を充填してなるカプセル剤。
【請求項14】
請求項6記載の製剤組成物を打錠してなる錠剤。
【請求項15】
請求項6記載の製剤組成物からなる顆粒剤。

【図1】
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【公開番号】特開2007−169264(P2007−169264A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304880(P2006−304880)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【分割の表示】特願2006−288201(P2006−288201)の分割
【原出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】