説明

固形製剤の印字検査方法及び装置

【課題】 固形製剤の印字検査を正確に行うことができる固形製剤の印字検査方法を提供する。
【解決手段】 固形製剤の印字を検査する方法であって、固形製剤に照射する照明手段の設定発光量を取得する発光設定ステップを備え、前記照明手段は、発光波長が異なる複数の単色光源を備え、前記各単色光源は発光量を個別に設定可能とされており、前記発光設定ステップは、前記各単色光源の発光量を仮決めした後、画像データの印字色と背景色とのコントラストが最大となるように、発光量を個別に調整して前記設定発光量を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤やカプセル剤等の固形製剤に付された文字や記号等の印字を検査する固形製剤の印字検査方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印字検査装置として、例えば特許文献1に開示された構成が知られている。この装置は、赤色、緑色及び青色をそれぞれ発する複数の発光素子を備えており、各発光素子の発光量を調節することにより、印字の背景色に一致する色の検査光を検査対象に照射して、背景色の濃度を削減した撮像データを得るように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−98094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の印字検査装置は、各発光素子の発光量を検査対象の背景色に応じて調節する一方、印字色との関係については何ら考慮されていない。このため、上記従来の装置を用いて固形製剤の印字検査を行う場合、特に製剤色と印字色とが同系色であると、撮像データにおいて両者の十分なコントラストが得られず、印字領域を正確に抽出することが困難であるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、固形製剤の印字検査を正確に行うことができる固形製剤の印字検査方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、固形製剤の印字を検査する方法であって、固形製剤に照射する照明手段の設定発光量を取得する発光設定ステップと、前記設定発光量で照射した固形製剤を撮像する撮像ステップと、撮像された画像データに含まれる印字部を二値化処理により抽出する画像処理ステップとを備え、前記照明手段は、発光波長が異なる複数の単色光源を備え、前記各単色光源は発光量を個別に設定可能とされており、前記発光設定ステップは、前記各単色光源の発光量を仮決めした後、画像データの印字色と背景色とのコントラストが最大となるように、発光量を個別に調整して前記設定発光量を決定することを特徴とする固形製剤の印字検査方法により達成される。
【0007】
この固形製剤の印字検査方法において、前記発光設定ステップは、予め決定された初期値を前記各単色光源の基準発光量として仮決めする初期化ステップと、前記各単色光源から固形製剤に前記基準発光量で照射して撮像し、画像データの印字色と背景色との基準コントラスト値を算出する基準値算出ステップと、前記各単色光源の少なくとも1つの前記基準発光量を所定量増減させてそれぞれを比較発光量とし、前記各単色光源から固形製剤に前記各比較発光量で照射して撮像し、それぞれの画像データについて印字色と背景色との比較コントラスト値を算出する比較値算出ステップと、前記基準コントラスト値と前記各比較コントラスト値とを比較し、前記基準コントラスト値よりも大きい前記比較コントラスト値が存在しない場合に、前記基準発光量を前記設定発光量とする判定ステップとを備えることが好ましい。
【0008】
前記判定ステップは、前記基準コントラスト値よりも大きい前記比較コントラスト値が存在する場合に、最大の前記比較コントラスト値に対応する比較発光量を前記基準発光量として再設定し、再設定後の前記基準発光量に基づいて、前記比較値算出ステップを再度行うことができる。
【0009】
複数の前記単色光源は、赤色、緑色及び青色のLED光源を備えることが好ましい。
【0010】
また、本発明の前記目的は、固形製剤の印字を検査する装置であって、固形製剤に照射する照明装置の設定発光量を取得する発光設定手段と、固形製剤に照明光を前記設定発光量で照射する照明手段と、照射した固形製剤を撮像する撮像手段と、撮像された画像データに含まれる印字部を二値化処理により抽出する画像処理手段とを備え、前記照明手段は、発光波長が異なる複数の単色光源を備え、前記各単色光源は発光量を個別に設定可能とされており、前記発光設定手段は、前記各単色光源の発光量を仮決めした後、画像データの印字色と背景色とのコントラストが最大となるように、発光量を個別に調整して前記設定発光量を決定することを特徴とする固形製剤の印字検査装置により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、固形製剤の印字検査を正確に行うことができる固形製剤の印字検査方法及び装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る印字検査装置の概略構成図である。
【図2】照明装置の設定発光量を取得する手順を説明するためのフローチャートである。
【図3】固形製剤の画像データの一例を示す図である。
【図4】比較発光量を求めるための発光量増減パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印字検査装置の概略構成図である。図1に示すように、印字検査装置1は、固形製剤Pを斜め上方から照明する2つの照明装置10,10と、各照明装置10,10の設定発光量を取得する発光設定装置20と、固形製剤Pを直上から撮像する撮像装置30と、撮像した画像データの画像処理を行う画像処理装置40とを備えている。固形製剤Pとしては、錠剤やカプセル剤など外表面に印字される各種製剤を挙げることができ、ベルトコンベアBにより撮像装置30の撮像エリアAに順次搬送されて、撮像が行われる。
【0014】
照明装置10は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3種類の発光ダイオードを備えており、各種類の発光ダイオードを一組としてマトリクス状に配置されている。各色の発光ダイオードは、発光量を個別に設定することが可能であり、任意の色を発光することができる。照明装置10の構成としては、発光波長が異なる単色光源を複数備えるものであればよく、必ずしもRGBに限定されるものではない。また、単色光源としては、発光ダイオードを使用することにより発光量の制御を省電力で精度良く行うことができるが、例えば、白熱電球や蛍光灯にRGBの色フィルタを設置して、各色の単色光源を構成することも可能である。照明装置10は、必ずしも複数設ける必要はなく、例えば、各色の単色光源を環状に配置した単一の照明装置を撮像装置と同軸に配置することもできる。
【0015】
発光設定装置20は、照明装置10のRGBの発光ダイオードについて、種類毎に設定発光量を取得するための装置である。発光設定装置20は、設定発光量を決定するための基準発光量や比較発光量などを算出する演算処理部と、これら基準発光量や比較発光量などを格納するメモリ部とを備えている。発光設定装置20における演算処理の詳細については後述する。
【0016】
撮像装置30は、CCDやCMOSなどのモノクロカメラからなり、撮像エリアAに搬送された固形製剤Pを撮像して、モノクロの画像データを取得する。
【0017】
画像処理装置40は、取得した画像データから、印字色とその周辺領域の背景色とのコントラストを算出し、二値化処理により印字部のみを抽出する。画像処理装置40には、印字部の正常な形状をマスターパターンとして格納することができ、このマスターパターンとパターンマッチングを行うことにより、抽出された印字部の良否を判定することができる。
【0018】
次に、上記の構成を有する印字検査装置を用いて、固形製剤Pの印字を検査する方法を説明する。本実施形態の印字検査装置は、固形製剤Pにおける印字色と背景色とのコントラストが最大となるように、照明装置10の各色発光量を発光設定装置20により個別に最適化することができる。発光設定装置20が照明装置10の設定発光量を取得する手順を、図2に示すフローチャートを適宜参照しながら説明する。
【0019】
ユーザが新規な固形製剤Pについて発光設定を行う場合、ベルトコンベアBを停止させた状態で固形製剤Pを撮像エリアA内に配置し、発光設定の指示を発光設定装置20に入力する(ステップS1)。
【0020】
発光設定装置20は、これを受けて、予め格納された初期値に基づき各色発光ダイオードの基準発光量を仮決めする(ステップS2)。例えば、RGB3色の発光ダイオードについて、それぞれの最大発光量の50%を基準発光量とすることができる。基準発光量を仮決めするための初期値は、必ずしも50%に限定されるものではなく、また、各色発光ダイオードの種類によって最大発光量に対する割合が異なるものであってもよい。更に、この初期値は、ユーザが経験等に基づいて入力した値を使用するようにしてもよい。
【0021】
こうして基準発光量が決定されると、発光設定装置20は、照明装置10の各色発光ダイオードが基準発光量で発光するように制御し、固形製剤Pを照明する。そして、撮像装置30を作動して固形製剤Pを撮像し、得られた撮像データに対して画像処理装置40で画像処理を施して、印字色と背景色とのコントラストである基準コントラスト値を算出する(ステップS3)。すなわち、図3に示すように、画像データDにおける固形製剤Pの印字部P1における濃度値と、固形製剤P内の印字部P1以外の周辺領域である背景部P2における濃度値との差を求めることにより、基準コントラスト値を得ることができる。印字部P1および背景部P2は、例えばユーザがモニタ上で指定することが可能であり、複数の画素を含むように領域で指定した場合には、指定領域内の各画素の平均濃度値に基づいて基準コントラスト値を算出することができる。
【0022】
ついで、発光設定装置20は、各色発光ダイオードの基準発光量を所定量増減させることにより比較発光量を取得し、照明装置10の各色発光ダイオードが比較発光量で発光するように制御して、固形製剤Pを照明する。そして、撮像装置30を作動して固形製剤Pを撮像し、上記の基準コントラスト値の算出と同様に、印字色と背景色とのコントラストである比較コントラスト値を算出する(ステップS4)。
【0023】
図4は、比較発光量を求めるための発光量増減パターンの一例を示しており、RGBの3種類の発光ダイオードのいずれか1種類のみについて、基準発光量を5ポイント増加あるいは減少させたものを、それぞれ比較発光量としている。例えば、RGBの基準発光量がいずれも50%である場合に、Rの発光ダイオードのみを5ポイント増加させた場合、比較発光量は、R55%、G50%、B50%となる。同様に、RGBの発光ダイオードの2種類を所定量増減させた場合や3種類全てを所定量増減させた場合をそれぞれ比較発光量として、これらの各比較発光量に対応する比較コントラスト値を測定により求める。発光量の増減値は、各色毎に異なっていてもよく、増加値と減少値が互いに異なっていてもよい。また、図4に示された全ての比較発光量を求める必要はなく、各色発光ダイオードの少なくとも1つの基準発光量を増減させることで最低2つの比較発光量を求めることができればよい。但し、2種以上の発光量増減の組み合わせに対して比較コントラスト値を求めることで、後述する設定発光量の設定が最適化し易くなる。
【0024】
発光設定装置20は、こうして得られた複数の比較コントラスト値を、それぞれ基準コントラスト値と比較する(ステップS5)。基準コントラスト値よりも大きい比較コントラスト値が存在しない場合、発光設定装置20は、この基準コントラスト値に対応する基準発光量を、設定発光量として設定する(ステップS6)。
【0025】
一方、基準コントラスト値よりも大きい比較コントラスト値が存在する場合には、発光設定装置20は、比較コントラスト値の中で最大のものに対応する比較発光量を、基準発光量として再設定する(ステップS7)。そして、上記ステップS4に移行し、再設定後の基準発光量を所定量増減させることにより新たに比較発光量を取得して、固形製剤Pを照明する。そして、撮像装置30を作動して固形製剤Pを撮像し、比較コントラスト値を再び算出する。
【0026】
次に、再設定後の基準発光量に基づいて得られた複数の比較コントラスト値を、ステップS5においてそれぞれ基準コントラスト値と比較し、基準コントラスト値よりも大きい比較コントラスト値が存在しなくなるまで、上記ステップS4及びS5を繰り返し行う。こうして、最終的にはステップS6において設定発光量を得ることができる。
【0027】
固形製剤Pの印字検査においては、ベルトコンベアBを作動させて固形製剤Pを撮像エリアAに順次搬送し、照明装置10により設定発光量で固形製剤Pを照射して、撮像装置30により撮像する。照明装置10は、固形製剤Pを常時照明するように作動させることも可能であるが、撮像エリアAへの固形製剤Pの搬送を光電センサやタイマ等により検知して、断続的に照射するようにしてもよい。これによって、多数の固形製剤Pを高輝度かつ省電力で照明することができる。
【0028】
画像処理装置40は、固形製剤Pの印字色と背景色とに基づいて設定した閾値により印字色を抽出し、パターンマッチング等の手法により印字部の良否判定を行う。本実施形態の固形製剤の印字検査方法によれば、画像データの印字色と背景色とのコントラストが最大となるように、発光量を個別に調整して設定発光量を決定することができるので、印字色と背景色とを判別するための閾値の設定が容易であり、印字部P1を背景部P2から確実に分離して抽出することができる。したがって、固形製剤Pの印字検査を正確に行うことができる。
【符号の説明】
【0029】
1 印字検査装置
10 照明装置
20 発光設定装置
30 撮像装置
40 画像処理装置
P 固形製剤
P1 印字部
P2 背景部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形製剤の印字を検査する方法であって、
固形製剤に照射する照明手段の設定発光量を取得する発光設定ステップと、
前記設定発光量で照射した固形製剤を撮像する撮像ステップと、
撮像された画像データに含まれる印字部を二値化処理により抽出する画像処理ステップとを備え、
前記照明手段は、発光波長が異なる複数の単色光源を備え、前記各単色光源は発光量を個別に設定可能とされており、
前記発光設定ステップは、前記各単色光源の発光量を仮決めした後、画像データの印字色と背景色とのコントラストが最大となるように、発光量を個別に調整して前記設定発光量を決定することを特徴とする固形製剤の印字検査方法。
【請求項2】
前記発光設定ステップは、予め決定された初期値を前記各単色光源の基準発光量として仮決めする初期化ステップと、
前記各単色光源から固形製剤に前記基準発光量で照射して撮像し、画像データの印字色と背景色との基準コントラスト値を算出する基準値算出ステップと、
前記各単色光源の少なくとも1つの前記基準発光量を所定量増減させてそれぞれを比較発光量とし、前記各単色光源から固形製剤に前記各比較発光量で照射して撮像し、それぞれの画像データについて印字色と背景色との比較コントラスト値を算出する比較値算出ステップと、
前記基準コントラスト値と前記各比較コントラスト値とを比較し、前記基準コントラスト値よりも大きい前記比較コントラスト値が存在しない場合に、前記基準発光量を前記設定発光量とする判定ステップとを備える請求項1に記載の固形製剤の印字検査方法。
【請求項3】
前記判定ステップは、前記基準コントラスト値よりも大きい前記比較コントラスト値が存在する場合に、最大の前記比較コントラスト値に対応する比較発光量を前記基準発光量として再設定し、
再設定後の前記基準発光量に基づいて、前記比較値算出ステップを再度行う請求項2に記載の固形製剤の印字検査方法。
【請求項4】
複数の前記単色光源は、赤色、緑色及び青色のLED光源を備える請求項1から3のいずれかに記載の固形製剤の印字検査方法。
【請求項5】
固形製剤の印字を検査する装置であって、
固形製剤に照明光を照射する照明手段と、
前記照明手段の設定発光量を取得する発光設定手段と、
照射した固形製剤を撮像する撮像手段と、
撮像された画像データに含まれる印字部を二値化処理により抽出する画像処理手段とを備え、
前記照明手段は、発光波長が異なる複数の単色光源を備え、前記各単色光源は発光量を個別に設定可能とされており、
前記発光設定手段は、前記各単色光源の発光量を仮決めした後、画像データの印字色と背景色とのコントラストが最大となるように、発光量を個別に調整して前記設定発光量を決定することを特徴とする固形製剤の印字検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−190786(P2010−190786A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36724(P2009−36724)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【出願人】(000228110)クオリカプス株式会社 (22)
【Fターム(参考)】