説明

固形製剤用組成物

【課題】 本発明の目的は患者の服用コンプライアンスが向上した小型製剤化が可能な、プランルカストを含有する新規医薬組成物を提供することにある。
【解決手段】 プランルカスト水和物、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび糖類を含有する固形組成物。市販のプランルカスト製剤に含まれるポリエチレングリコールをヒドロキシプロピルメチルセルロースに変更することにより、糖類の含量を少なくしても付着性を低減できるため、製剤の品質が安定し、かつ患者の服用コンプライアンスが向上した小型製剤の提供が可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランルカスト水和物、水溶性セルロース類および糖類を含有する固形製剤用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プランルカスト水和物はロイコトリエン(LT)拮抗剤として知られており(特許文献1参照)、気管支喘息やアレルギー性鼻炎の治療剤として上市されている。プランルカスト水和物が、気管支喘息やアレルギー性鼻炎に対して有効な治療効果を発現するためには、かなりの高用量を必要とするため、朝夕3号カプセルを2カプセルずつ、1日計4カプセル服用することが求められている。このような比較的大きい3号カプセルを一度に2カプセル服用することは、嚥下に困難のある患者、特に小児や老人の患者にとっては問題となることがあり、好ましい投与形態とはいいがたい。従って、患者の服用コンプライアンスを向上させるために、製剤の小型化が望まれていた。しかしながら、プランルカスト水和物は非常に強い付着性を有するため、通常の方法では服用に適した固形製剤を製造することは困難であり、種々の課題を解決した小型製剤を製造するためには、特別な製剤化の方法が必要となる。例えば、付着性を低減する方法として、プランルカスト水和物を糖類と共に噴霧乾燥することで付着性を低減する方法が知られている(特許文献2参照)。しかし、該方法では製剤化工程、得られた製剤の品質(溶出安定性、崩壊性、錠剤の色むら等)等の問題や、高含量の固形製剤を製造することには問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開昭61−050977号公報
【特許文献2】特許第2958863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は患者の服用コンプライアンスが向上した小型製剤化が可能な、プランルカスト水和物を含有する新規な固形製剤用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題に鑑み、本発明者らは鋭意検討を行なった結果、現行のプランルカスト水和物を含有するカプセル剤(商品名:オノンカプセル)に含まれる添加物(結合剤)であるポリエチレングリコールを水溶性セルロース類(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)に変更することによって、驚くべきことに、糖類の含量を減らしても造粒物の付着性を低減できるため、プランルカスト水和物の高含量造粒物を製造することができ、その結果得られた固形製剤の小型化が可能となることを見出した。さらに、得られた造粒物を用いることにより、プランルカスト水和物を高含量に有する固形製剤を得ることにも成功した。このようにして得られた固形製剤(特に錠剤)においては、溶出速度の向上や溶出性の経時安定性が向上することおよび錠剤化成型性、および崩壊速度の安定性も向上することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
その結果得られた固形製剤(特に錠剤)は、生体内への吸収性、経時安定性に優れ、錠剤同士の付着や色むらがなく、医薬品として提供するのにきわめて有用であることが見出された。すなわち、本発明は
(1)プランルカスト水和物、糖類および水溶性セルロース類を含有することを特徴とする固形製剤用組成物、
(2)水溶性セルロース類がヒドロキシプロピルメチルセルロースである前項(1)記載の組成物、
(3)噴霧乾燥造粒物である前項(2)記載の組成物、
(4)組成物1重量部に対して、プランルカスト水和物が0.70〜0.98重量部である前項(2)記載の組成物、
(5)プランルカスト水和物が0.75〜0.87重量部である前項(4)記載の組成物、
(6)プランルカスト水和物1重量部に対して、糖類が0.05〜0.30重量部、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.002〜0.050重量部である前項(2)記載の組成物、
(7)前項(2)記載の組成物を含有する錠剤、
(8)前項(2)記載の組成物を含有するカプセル剤、
(9)1錠剤中、プランルカスト水和物を112.5mg含有する前項(7)記載の錠剤、
(10)1錠剤中、プランルカスト水和物を225mg含有する前項(7)記載の錠剤、
(11)1錠剤1重量部に対して、プランルカスト水和物が0.50〜0.90重量部である前項(7)記載の錠剤、
(12)プランルカスト水和物が0.55〜0.70重量部である前項(11)記載の錠剤、
(13)1錠剤の体積が100〜175mmである前項(9)記載の錠剤、
(14)1錠剤の体積が200〜350mmである前項(10)記載の錠剤、
(15)1錠剤の重量が125〜225mgである前項(9)記載の錠剤、
(16)1錠剤の重量が250〜450mgである前項(10)記載の錠剤、
(17)直径7〜8mm、および厚さ2〜4mmの円形錠である前項(9)記載の錠剤、
(18)長径13〜14mm、短径6〜7mm、および厚さ4〜5mmのカプレット錠である前項(10)記載の錠剤、
(19)1カプセル剤中、プランルカスト水和物を225mg含有する前項(8)記載のカプセル剤、
(20)1カプセル剤1重量部に対して、プランルカスト水和物が0.50〜0.90重量部である前項(8)記載のカプセル剤、
(21)カプセルが2号カプセルまたは3号カプセルである前項(20)記載のカプセル剤、
(22)プランルカスト水和物1重量部に対して、糖類を0.20〜0.25重量部、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.004〜0.009重量部含有する噴霧乾燥造粒物を含有する錠剤であって、1錠剤中、プランルカスト水和物を112.5mgまたは225mg含有し、1錠剤1重量部に対して、プランルカスト水和物が0.55〜0.70重量部であることを特徴とする、プランルカスト水和物高含量錠剤、
(23)プランルカスト水和物および水溶性セルロース類を含有することを特徴とする固形製剤用組成物、
(24)密封包装されていることを特徴とする前項(7)記載の錠剤、
(25)密封包装されていることを特徴とする前項(7)記載のカプセル剤、
(26)プランルカスト水和物、糖類および水溶性セルロース類を含有することを特徴とする付着凝集性の低減された高含量固形製剤製造のための組成物、
(27)水溶性セルロース類がヒドロキシプロピルメチルセルロースである前項(26)記載の組成物、
(28)噴霧乾燥造粒物である前項(27)記載の組成物、
(29)プランルカスト水和物1重量部に対して、糖類が0.05〜0.30重量部、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.002〜0.050重量部であり、組成物1重量部に対して、プランルカスト水和物が0.75〜0.87重量部であることを特徴とする付着性の低減されたプランルカスト水和物高含量組成物、
(30)前項(28)記載の組成物を含有することを特徴とする錠剤、
(31)前項(28)記載の組成物を含有することを特徴とするカプセル剤、
(32)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることを特徴とするプランルカスト水和物を含有する高含量製剤の製造方法、
(33)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることを特徴とするプランルカスト水和物を含有する製剤の高含量化方法、
(34)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることを特徴とするプランルカスト水和物を含有する造粒物の付着凝集性の低減方法および
(35)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることを特徴とするプランルカスト水和物を含有する造粒物を含んでなる小型固形製剤の製造方法に関する。
【0007】
本発明に用いられるプランルカスト水和物は式(A)
【0008】
【化1】

【0009】
で示される4−オキソ−8−[4−(4−フェニルブトキシ)ベンゾイルアミノ]−2−(テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン・1/2水和物である。プランルカスト水和物の製造は、例えば、特開昭61-050977号明細書記載の方法に準じて行なうことができる。
【0010】
本発明で用いられる水溶性セルロース類とは、セルロースの水酸基の水素原子の一部をメチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシプロピル基またはヒドロキシエチル基等で置換することにより、水素結合を消失させた水溶性高分子である。例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)等が挙げられる。水溶性セルロース類としてはいずれも好ましいが、特に好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0011】
本発明で用いられるヒドロキシプロピルメチルセルロースのメトキシ基含有率として好ましくは、約19〜30重量%であり、ヒドロキシプロポキシ基含有率として好ましくは、約4〜12重量%であり、粘度として好ましくは、約2.5〜17.5mm/sである。好適に使用されるヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208等が挙げられ、具体的にはメトローズ90SH、メトローズ65SH、メトローズ60SH、Tc−5(信越化学工業(株)製)、メトセルK、メトセルE(ダウケミカル社製)、マーポローズ(松本油脂製薬(株)製)等が挙げられる。Tc−5としては、例えば、Tc−5E、Tc−5Ew、Tc−5R、Tc−5Rw、Tc−5Mw、Tc−5S等が挙げられる。
【0012】
本発明における糖類としては、例えば、ぶどう糖、果糖、麦芽糖、乳糖、異性化乳糖、還元乳糖、蔗糖、D−マンニトール、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、パラチノース、トレハロース、ソルビトール、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギデンプン、コメデンプン等が挙げられ、好ましくは乳糖である。
【0013】
本発明において、固形製剤用組成物とは、プランルカスト水和物を高含量に含有する錠剤および/またはカプセル剤を製造するための造粒物を表わし、換言すれば、「高含量固形製剤製造のための組成物」である。
【0014】
また、本発明の固形製剤用組成物には、固形製剤を製造する際に一般的に使用される添加剤(製剤基剤)をさらに含んでいてもよく、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、矯味剤、矯臭剤、界面活性剤、香料、着色剤、抗酸化剤、隠蔽剤、静電気防止剤、流動化剤、湿潤剤、溶出補助剤等を1種または2種以上適宜配合して用いることができる。
【0015】
本発明の固形製剤用組成物は、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤として用いるか、前記固形製剤を服用時に溶液または懸濁液として服用する用時溶解/懸濁型製剤(例えば、ドライシロップ剤等)として用いることができる。好ましい製剤形態としては錠剤、またはカプセル剤が挙げられる。
【0016】
本発明の固形製剤用組成物を製剤化する方法は公知であり、例えば、プランルカスト水和物、水溶性セルロース類(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、糖類および必要に応じて他の添加剤と混合するか、もしくは公知の造粒法(例えば、押出し造粒法、混合撹拌造粒法、高速混合撹拌造粒法、流動層造粒法、転動撹拌流動層造粒法、転動造粒法、乾式(圧縮)造粒法、破砕造粒法、噴霧乾燥造粒法等)によって得られる造粒物を必要に応じて乾燥、整粒、分級等することにより、散剤や顆粒剤を製造することができる。また、先で得られる造粒物、散剤または顆粒剤と必要に応じて他の添加剤を加えて、打錠またはカプセル充填することにより、錠剤やカプセル剤を製造することができる。また、錠剤は、必要に応じ薬学的に許容され、本発明の効果を妨げない、フィルムコーティング基剤を用いて被覆されても構わない。
【0017】
本発明の効果を妨げないか、または本発明の効果が最小限に得られる限り、他の添加剤(担体)として、いかなるものも加えて構わない。
【0018】
他の添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、矯味剤、界面活性剤、香料、滑沢剤、着色剤、抗酸化剤、隠蔽剤、静電気防止剤、流動化剤、湿潤剤、矯臭剤、溶出補助剤等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を適宜配合して用いてもよい。
【0019】
賦形剤としては、例えば、糖類(例えば、ぶどう糖、果糖、麦芽糖、乳糖、異性化乳糖、還元乳糖、蔗糖、D−マンニトール、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、パラチノース、トレハロース、ソルビトール、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギデンプン、コメデンプン等)、結晶セルロース、無水ケイ酸、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、部分α化デンプン、α化デンプン、アルギン酸ナトリウム、プルラン、アラビアゴム末、ゼラチン等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルスターチ、トウモロコシデンプン等が挙げられる。矯味剤としては、例えば、白糖、D−ソルビトール、キシリトール、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、グルタミン酸ナトリウム、5’−イノシン酸ナトリウム、5’−グアニル酸ナトリウム等が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80等)、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合物、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。香料としては、例えば、レモン油、オレンジ油、メントール、はっか油等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、蔗糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール等が挙げられる。着色剤としては、例えば、酸化チタン、食用黄色5号、食用青色2号、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄等が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、L−システイン、亜硫酸ナトリウム、ビタミンE等が挙げられる。隠蔽剤としては、例えば、酸化チタン等が挙げられる。静電気防止剤としては、例えば、タルク、酸化チタン等が挙げられる。流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、タルク、含水二酸化ケイ素等が挙げられる。湿潤剤としては、例えば、ポリソルベート80、ラウリル酸硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等が挙げられる。溶出補助剤としては、例えば、乾燥メタクリル酸コポリマーLD、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等が挙げられる。
【0020】
本発明の固形製剤用組成物の造粒物としては、噴霧乾燥造粒物が好ましい。噴霧乾燥造粒物を得る噴霧乾燥造粒法とは、液状物質を気流中に噴霧微粒化し、これを乾燥または凝固、ゲル化によって微細な造粒粒子を得る方法であり、粒子凝集および粉体表面物性の改善、粉体および粉体表面の形状の改善等が可能である。また、他の造粒法と比較し、多孔質となり、毛細管現象による濡れ性の改善、およびなめらかな表面をもつ粒子を得ることができる。さらに乾燥時間が数秒から数十秒と短く、品温も排気温度以上に上がらないため、熱影響が少ない。従って、非常に強い付着性や撥水性を有するプランルカスト水和物には好ましい造粒法である。
【0021】
本発明の固形製剤用組成物1重量部におけるプランルカスト水和物は約0.70〜0.98重量部が好ましく、さらに好ましくは約0.75〜0.90重量部であり、特に好ましくは約0.75〜0.87重量部である。
【0022】
また、本発明固形組成物の噴霧乾燥造粒物1重量部における糖類は約0.25重量部以下が好ましく、さらに好ましくは約0.05〜0.20重量部であり、特に好ましくは約0.15〜0.20重量部である。
【0023】
本発明の固形製剤用組成物において、プランルカスト水和物1重量部に対して糖類の重量比として好ましくは、約0.05〜0.30重量部であり、さらに好ましくは約0.10〜0.25重量部であり、特に好ましくは約0.2〜0.25重量部である。
【0024】
本発明の固形製剤用組成物において、プランルカスト水和物1重量部に対して水溶性セルロース類の重量比として好ましくは、約0.002〜0.050重量部であり、さらに好ましくは約0.004〜0.030重量部であり、特に好ましくは約0.004〜0.009重量部である。
【0025】
本発明の固形製剤用組成物を錠剤やカプセル剤として用いる場合、該製剤中のプランルカスト水和物含量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、本発明の所望の効果が得られるように製することが好ましい。例えば、成人1日当たりのプランルカスト水和物の投与量として好ましくは約25〜2500mg、より好ましくは約112.5〜450mg、さらに好ましくは約225〜450mgである。
【0026】
本発明の固形製剤用組成物を含有する錠剤としては、服用する患者に負担を与えない形状や大きさのものが好ましい。例えば、円形錠や異形錠(例えば、カプレット錠等)等が挙げられ、円形錠であれば直径は約7〜9mm、厚さは約2〜4mmが好ましく、カプレット錠であれば長径は約13〜15mm、短径は約5〜7mm、厚さは約4〜5mmが好ましい。錠剤の形状は特に限定されないが、円柱状で曲率面を有することが好ましい。
また、錠剤に含まれるプランルカスト水和物の含量としては、1錠中、約112.5〜450mgが好ましく、より好ましくは約112.5mgまたは約225mgである。
【0027】
本発明における錠剤、すなわち高含量錠剤において、1錠剤1重量部に対して、プランルカスト水和物の含有量は好ましくは約0.50〜0.90重量部であり、より好ましくは約0.50〜0.80重量部であり、特に好ましくは約0.55〜0.70重量部である。
【0028】
プランルカスト水和物を約112.5mg含有する錠剤1個の重量として好ましくは、約125〜225mgであり、より好ましくは約140〜225mgであり、特に好ましくは約160〜205mgである。
【0029】
プランルカスト水和物を約225mg含有する錠剤1個の重量として好ましくは、約250〜450mgであり、より好ましくは約280〜450mgであり、特に好ましくは約320〜410mgである。
【0030】
プランルカスト水和物を約112.5mg含有する錠剤1個の体積として好ましくは、約100〜175mmであり、より好ましくは約110〜175mmであり、特に好ましくは約125〜160mmである。
【0031】
プランルカスト水和物を225mg含有する錠剤1個の体積として好ましくは、約200〜350mmであり、より好ましくは約220〜350mmであり、特に好ましくは約250〜320mmである。
【0032】
本発明の固形組成物を含有するカプセル剤に含まれるプランルカスト水和物の含量としては、1カプセル中、約225〜450mgが好ましく、より好ましくは225mgまたは450mgである。また、カプセルの大きさとしては、1号、2号、3号または4号カプセルが好ましい。例えば、プランルカスト水和物を225mg含有する2号カプセル剤または3号カプセル剤、もしくはプランルカスト水和物を112.5mg含有する4号カプセル剤等が、服用患者のコンプライアンスの観点から好ましい。
【0033】
本発明におけるカプセル剤、すなわち高含量カプセル剤において、1カプセル剤1重量部に対して、プランルカスト水和物の含有量は好ましくは約0.50〜0.90重量部である。
【0034】
本発明の固形組成物を含有する錠剤硬度として好ましくは、8.0〜14.6kgであり、例えば、長径13〜15mmで短径5〜7mmである、錠剤硬度10.0〜14.6kgのカプレット錠、直径が7〜9mmである、錠剤硬度8.0〜12.0kgの円形錠が好ましい。
【0035】
プランルカスト水和物を含有するカプセル剤は無包装状態で放置すると、1週間で溶出性が不安定になることが報告されている(「錠剤・カプセル剤の無包装状態での安定性情報」,改訂3版,医薬ジャーナル社,2003年2月5日,p.136参照)。溶出性が不安定になると、生体内投与後における生物学的利用能の変化が生じることになり、薬効発現が不十分になったり、副作用を伴なったりするおそれがあるが、本発明の固形製剤用組成物を用いることにより、経時的な溶出性が安定になることが明らかとなった。
【0036】
本発明において、経時的な溶出性が安定になるということは、本発明の固形製剤用組成物を用いて製造した製剤(例えば、錠剤、カプセル剤等)を、例えば、加速試験(40℃75%RH)や苛酷試験(60℃)に付しても、試験前の製剤と比して、溶出性の遅延や加速が起こりにくいことを意味する。
【0037】
本発明の錠剤および/またはカプセル剤は、前記のように製造された後、所望によって任意の包装が施される。かかる包装は、例えば、個別に包装されていない非単位包装(例えば、バルク包装)等であってもよいが、例えば、熱接着性フィルムで医薬品をシールする、いわゆるヒートシールのような密封包装が好ましい。尚、本発明における密封包装には、例えば、薬局方規定の「気密容器」や「密封容器」を用いての包装も、その意味合いとして含まれる。ヒートシールには、PTP(Press Through Pack)包装やSP(Strip Package)包装等が含まれるが、特に、PTP包装が好ましい。PTP包装の材質としては、PVC(ポリビニルクロライド)、PVDC(ポリビニリデンクロライド)コートPVC(ポリビニルクロライド)、PP(ポリプロピレン)、ポリプロピレン系多層等が挙げられる。PTP包装は、アルミ包装と併用することが好ましい。さらに本発明のカプセルは、PTP包装やSP包装を施した後、その一定数量をポリエチレンやアルミ箔で二次包装(いわゆるピロー包装)してもよい。
【0038】
本発明の製剤はプランルカスト水和物の物性に基づく付着凝集性を低減することを特徴とするが、付着凝集性を反映するパラメーターとして、引張破断力が用いられる。
【0039】
付着性を低減した本発明の製剤における引張破断力として好ましくは、約10.0g以下であり、より好ましくは約0.1〜8.0gである。
[医薬品への適用]
本発明の製剤はプランルカスト水和物を有効成分として含有するため、気管支喘息、副鼻腔炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)等の呼吸器疾患、メニエール病、偏頭痛、咳嗽、月経困難症等の種々の疾患等の予防および/または治療薬として有用である。
[毒性]
本発明が提供するプランルカスト水和物を含有する製剤は低毒性であり、医薬として使用するために十分に安全である。
【発明の効果】
【0040】
水溶性セルロース類(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)を用いることによって、糖類の量を減らしても付着性を低減できるため、小型製剤(特に錠剤)を製造することが可能となった。また、本発明により、製剤化工程における諸問題も解決し、さらに溶出速度の向上や経時的な溶出性も安定になり、また製剤化における成形性も格段に向上した。すなわち、本発明の製剤は、種々の問題点を解決した、プランルカスト水和物を含有する高含量固形製剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明をよく理解するためのものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
製剤例1
Tc−5Rw(3g;信越化学工業(株))を精製水(1027mL)に溶解し、さら
に乳糖(100g;NZMP社)およびプランルカスト水和物(450g)を加え、懸濁液とした。この懸濁液をスプレードライヤー(給気(入り口)温度:180℃、排気温度:100〜110℃、送液速度:30〜40g/分、アトマイザー回転速度:12000rpm)で噴霧乾燥し、プランルカスト水和物の噴霧乾燥品を得た。これを0.5mmの篩で篩過し、噴霧乾燥造粒物(SD品)(450g)を得た。得られたSD品(55.8g)に低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)(3g;信越化学工業(株))およびステアリン酸マグネシウム(1.2g;太平化学産業(株))を添加・混合して、打錠用末を得た。この打錠用末を打錠機(岡田精工製、Tab−ALL)により、杵径7.5mm、打錠圧750kgfの条件で打錠し、以下の処方である直径7.5mm、厚さ3.1mmのプランルカスト水和物を75.7重量%含有する錠剤1を製造した。
本発明錠剤1の処方(1錠中)
噴霧乾燥造粒物の成分
プランルカスト水和物 112.5mg
乳糖 25.0mg
Tc−5Rw 0.8mg
添加剤
L−HPC 7.4mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
計 148.7mg
製剤例2
製剤例1と同様の操作を行なうことにより、以下の処方である直径7.5mm、厚さ2.9mmのプランルカスト水和物を84.0重量%含有する錠剤2を製造した。
本発明錠剤2の処方(1錠中)
噴霧乾燥造粒物の成分
プランルカスト水和物 112.5mg
乳糖 11.3mg
Tc−5Rw 0.8mg
添加剤
L−HPC 6.7mg
ステアリン酸マグネシウム 2.7mg
計 134.0mg
製剤例3
製剤例1と同様の操作を行なうことにより、以下の処方である直径7.5mm、厚さ3.2mmのプランルカスト水和物を74.7重量%含有する錠剤3を製造した。
本発明錠剤3の処方(1錠中)
噴霧乾燥造粒物の成分
プランルカスト水和物 112.5mg
乳糖 25.0mg
Tc−5Rw 2.5mg
添加剤
L−HPC 7.5mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
計 150.5mg
製剤例4
Tc−5Rw(5.4g;信越化学工業(株))を精製水(1848.6mL)に溶解し、さらに乳糖(180g;NZMP社)およびプランルカスト水和物(810g)を加え、懸濁液とした。この懸濁液を下記条件下において、スプレードライヤー(給気(入り口)温度:180℃、排気温度:100〜110℃、送液速度:30〜40g/分、アトマイザー回転速度:10000rpm、大川原化工機(株)製、L−8)で噴霧乾燥し、プランルカスト水和物の噴霧乾燥品を得た。これを0.5mmの篩にて篩過し、噴霧乾燥造粒物(SD品)(826.2g)を得た。得られたSD品(760g)に直打用乳糖(スーパータブ)(155g;NZMP社)、乾燥メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット L100−55)(50g;レーム社)、クロスカルメロースナトリウム(Ac−Di−Sol)(25g;旭化成(株))およびステアリン酸マグネシウム(10g;太平化学産業(株))をボーレコンテナーミキサー(寿工業製、MC−2.5)にて30分間混合して、打錠用末を得た。この打錠用末を打錠機((株)菊水製作所製、バーゴ(Virgo))により、杵径8mm、打錠圧1000kgfの条件で打錠し、以下の処方である8mm、厚さ3.41mm、錠剤硬度9.4kgのプランルカスト水和物を61.8%含有する錠剤4を製造した。
本発明錠剤4の処方(1錠中)
噴霧乾燥造粒物の成分
プランルカスト水和物 112.5mg
乳糖 25.0mg
Tc−5Rw 0.8mg
添加剤
オイドラギット L100−55 9.1mg
スーパータブ 28.2mg
Ac−Di−Sol 4.5mg
ステアリン酸マグネシウム 1.8mg
計 181.9mg
製剤例5
Tc−5Rw(5.4g;信越化学工業(株))を精製水(1848.6mL)に溶解し、さらに乳糖(180g;NZMP社)およびプランルカスト水和物(810g)を加え、懸濁液とした。この懸濁液をスプレードライヤー(給気(入り口)温度:180℃、排気温度:100〜110℃、送液速度:30〜40g/分、アトマイザー回転速度:10000rpm、大川原化工機(株)製、L−8)で噴霧乾燥し、プランルカスト水和物の噴霧乾燥品を得た。これを0.5mmの篩にて篩過し、噴霧乾燥造粒物(SD品)(843.2g)を得た。得られたSD品(760g)に直打用乳糖(スーパータブ)(150g;NZMP社)、乾燥メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギットL100−55)(50g;レーム社)、Tc−5Rw(30.0g;信越化学工業(株))およびステアリン酸マグネシウム(10g;太平化学産業(株))をボーレコンテナーミキサー(寿工業(株)製、MC−2.5)にて30分間混合して、打錠用末を得た。この打錠用末を打錠機((株)菊水製作所製、バーゴ(Virgo))により、杵直径14mm、短径6mm、打錠圧800kgfの条件で打錠し、以下の処方である14×6mm、厚さ4.86mm、錠剤硬度13.8kgのプランルカスト水和物を61.8%含有するカプレット錠剤(錠剤5)を製造した。
本発明錠剤5の処方(1錠中)
噴霧乾燥造粒物の成分
プランルカスト水和物 225.0mg
乳糖 50.0mg
Tc−5Rw 1.5mg
添加剤
オイドラギット L100−55 18.2mg
スーパータブ 54.6mg
Tc−5Rw 10.9mg
ステアリン酸マグネシウム 3.6mg
計 363.8mg
製剤例6
Tc−5Rw(1.2kg;信越化学工業(株))を精製水(221.2kg)に溶解し、さらに乳糖(40kg;NZMP社)およびプランルカスト水和物(180kg)を加え、懸濁液とした。この懸濁液をスプレードライヤー(給気(入り口)温度:190℃、排気温度:85±5℃、送液速度:100kg/時間、アトマイザー回転速度:16000±100rpm、大川原化工機(株)製、ODA−27)で噴霧乾燥し、プランルカスト水和物の噴霧乾燥品を得た。これを0.85mmの篩にて篩過し、噴霧乾燥造粒物(SD品)(212.3kg)を得た。得られたSD品(47.005kg)に直打用乳糖(スーパータブ)(9.574kg;NZMP社)、乾燥メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギットL100−55)(1.53kg;レーム社)、クロスカルメロースナトリウム(キッコレートND−2HS)(1.53kg;ニチリン化学工業(株))、軽質無水ケイ酸(アドソリダー101)(0.52kg;フロイント産業(株))およびステアリン酸マグネシウム(1.04kg;太平化学産業(株))をボーレコンテナーミキサー(寿工業(株)製、MC−150)にて30分間混合して、打錠用末を得た。この打錠用末を打錠機((株)畑鐵工所製、HT−X20)により、杵直径14mm、短径6mm、打錠圧900kgfの条件で打錠し、以下の処方である14×6mm、厚さ4.26mm、錠剤硬度12.64kgのプランルカスト水和物を62.5%含有するカプレット錠剤(錠剤6)を製造した。
本発明錠剤6の処方(1錠中)
噴霧乾燥造粒物の成分
プランルカスト水和物 225.0mg
乳糖 50.0mg
Tc−5Rw 1.5mg
添加剤
オイドラギット L100−55 9.0mg
スーパータブ 56.5mg
キッコレートND−2HS 9.0mg
アドソリダー101 3.0mg
ステアリン酸マグネシウム 6.0mg
計 360.0mg
製剤例7
Tc−5Rw(1.2kg;信越化学工業(株))を精製水(221.2kg)に溶解し、さらに乳糖(40kg;NZMP社)およびプランルカスト水和物(180kg)を加え、懸濁液とした。この懸濁液をスプレードライヤー(給気(入り口)温度:190℃、排気温度:85±5℃、送液速度:100kg/時間、アトマイザー回転速度:16000±100rpm、大川原化工機(株)製、ODA−27)で噴霧乾燥し、プランルカスト水和物の噴霧乾燥品を得た。これを0.85mmの篩にて篩過し、噴霧乾燥造粒物(SD品)(212.3kg)を得た。得られたSD品(47.005kg)に直打用乳糖(スーパータブ)(9.574kg;NZMP社)、乾燥メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギットL100−55)(1.53kg;レーム社)、クロスカルメロースナトリウム(キッコレートND−2HS)(1.53kg;ニチリン化学工業(株))、軽質無水ケイ酸(アドソリダー101)(0.52kg;フロイント産業(株))およびステアリン酸マグネシウム(1.04kg;太平化学産業(株))をボーレコンテナーミキサー(寿工業(株)製、MC−150)にて30分間混合して、打錠用末を得た。この打錠用末を打錠機((株)畑鐵工所製、HT−X20)により、杵直径8.0mm、打錠圧700kgfの条件で打錠し、以下の処方である8.0mm、厚さ3.47mm、錠剤硬度9.99kgのプランルカスト水和物を62.5%含有する円形錠剤(錠剤7)を製造した。
本発明錠剤7の処方(1錠中)
噴霧乾燥造粒物の成分
プランルカスト水和物 112.5mg
乳糖 25.0mg
Tc−5Rw 0.75mg
添加剤
オイドラギット L100−55 4.5mg
スーパータブ 28.25mg
キッコレートND−2HS 4.5mg
アドソリダー101 1.5mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
計 180.0mg
比較例1
Tc−5Rwの代わりにポリエチレングリコール(PEG)を用いて、製剤例1と同様の操作を行なうことにより、以下の処方である直径7.5mm、厚さ3.78mmのプランルカスト水和物を59.3重量%含有する比較錠剤1を製造した。
比較錠剤1の処方(1錠中)
噴霧乾燥造粒物の成分
プランルカスト水和物 112.5mg
乳糖 52.7mg
PEG 11.3mg
添加剤
L−HPC 9.5mg
ステアリン酸マグネシウム 3.8mg
計 189.8mg
比較例2
Tc−5Rwの代わりにポリエチレングリコール(PEG)を用いて、乳糖を使用しない以外は、製剤例1と同様の操作を行なうことにより、以下の処方である直径7.5mm、厚さ2.91mmのプランルカスト水和物を84.5重量%含有する比較錠剤2を製造した。
比較錠剤2の処方(1錠中)
噴霧乾燥造粒物の成分
プランルカスト水和物 112.5mg
PEG 11.3mg
添加剤
L−HPC 6.7mg
ステアリン酸マグネシウム 2.7mg
計 133.1mg
比較例3
Tc−5Rwの代わりにポリエチレングリコール(PEG)を用いて、乳糖を使用しない以外は、製剤例1と同様の操作を行なうことにより、以下の処方である直径7.5mm、厚さ2.75mmのプランルカスト水和物を92.4重量%含有する比較錠剤3を製造した。
比較錠剤3の処方(1錠中)
噴霧乾燥造粒物の成分
プランルカスト水和物 112.5mg
PEG 0.8mg
添加剤
L−HPC 6.1mg
ステアリン酸マグネシウム 2.4mg
計 121.8mg
比較例4
Tc−5Rwの代わりにポリエチレングリコール(PEG)を用いて、製剤例1と同様の操作を行なうことにより、以下の処方である直径7.5mm、厚さ3.20mmのプランルカスト水和物を75.7重量%含有する比較錠剤4を製造した。
比較錠剤4の処方(1錠中)
噴霧乾燥造粒物の成分
プランルカスト水和物 112.5mg
乳糖 25.0mg
PEG 0.8mg
添加剤
L−HPC 7.4mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
計 148.7mg
噴霧乾燥造粒物(SD品)の付着性評価
製剤例1〜3、および比較例1〜4で製造したSD品の付着性を、アグロボット(商品名)にて引張破断力を測定した。アグロボットの測定条件は、セル内径25mm、セル温度25℃、バネ線径1.0mm、圧縮速度0.1mm/秒、最大圧縮力200kgf、圧縮保持時間60秒、引張速度0.04mm/秒、引張サンプリング時間20秒という条件で行なった。結果を表1に示す。なお、*は測定限界値以上の値のため、計測不能であった。
【0042】
【表1】

【0043】
上記結果から明らかなように、糖類の含量を少なくした本発明製剤であるSD品は比較例で用いたSD品と比し、圧縮時の付着性が著しい軽減を示している。従って、本発明固形組成物を用いることにより、プランルカスト水和物の高含量化および打錠時の杵への付着に伴なう打錠障害等の抑制を同時に行なうことが可能であることが明らかとなった。
【0044】
すなわち、本発明の製剤は引張破断力が10.0g以下であり、比較例の製剤と比して付着凝集性が低減されることが明らかである。
溶出性評価1
製剤例1〜3、および比較例1〜4で製造した錠剤について、0.5%ポリソルベート80リン酸緩衝液(pH6.8)における溶出性試験を行なった。試験は第十四改正日本薬局方の一般試験法66溶出試験法・第2法(50rpm)に従って行なった。試験液はpH6.8のリン酸緩衝液(1→2)に0.5%のポリソルベート80を添加した液を用いた。サンプリングした液を吸光度法(測定波長350nm)で測定し、30分後および60分後の溶出率を算出した。
溶出性評価2(経時安定性試験)
製剤例1〜3、および比較例1〜4で製造した錠剤をガラス瓶に詰め、これを(i)密閉状態で60℃の恒温器内または(ii)開封状態で40℃、相対湿度75%条件下の恒温恒湿器内に保存した。16日間保存後、各錠剤を採取し、上記溶出性評価1と同様に溶出率を測定した。溶出性試験1および2の結果を以下の表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
上記結果から明らかなように本発明製剤は比較製剤と比して、おおむね溶出速度の向上が見られている。また、保存後の比較製剤を見ると明らかなように、溶出速度の遅延や加速といった変化が認められる。それに対し、本発明製剤の殆どにおいて溶出速度の変動が非常に小さく、溶出性の制御能力や品質の保存安定性に優れた製剤であることがわかる。
【0047】
溶出性は、60分後において溶出性評価1における数値と比較して±12%以下であり、かつ60分後において85%以上の溶出率であれば溶出性が安定であるといえる。
崩壊性評価
製剤例1〜3、および比較例1〜4で製造した錠剤を40℃、相対湿度75%の恒温恒湿器内、あるいは60℃の恒温器内に16日保存し、崩壊時間の比較を行なった。崩壊時間の測定は、第十四改正日本薬局方の一般試験法58崩壊試験法に準じて、試験液に水、第1液(pH1.2)および第2液(pH6.8)を用い試験を行なった。40℃、相対湿度75%条件下で保存した錠剤の結果を表3に、60℃条件下で保存した錠剤の結果を表4に示す。なお、変化率(%)とは、例えば、崩壊時間が保存前より保存後が上回った場合、増加(+)の割合を、保存前より保存後が下回った場合、低下(−)の割合を意味する。
【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
上記表3および4から明らかなように、本発明製剤は比較製剤と比して、おおむね向上もしくは同程度の崩壊性を有しており、保存前と保存後の崩壊性の変化率(安定性)を比較した場合、加速試験条件下(40℃75%RH)、苛酷試験条件下(60℃)、両条件下においても本発明製剤の崩壊性の安定性が優れていることが明らかである。
錠剤の成型性試験
製剤例1および2、および比較例1〜4で製造した錠剤の錠剤硬度、錠剤径および錠厚をWHT−2錠剤測定装置(ファルマテスト社製)を用いて測定し、式1に従って引張強度を算出した。比較例1の錠剤の引張強度を100として、他の錠剤の相対引張強度を測定した。結果を表5に示す。
式1:引張強度=(2×錠剤硬度)/(円周率×錠剤径×錠厚)[kg/mm2
【0051】
【表5】

【0052】
上記から明らかなように、PEGからTc−5Rwに変更した場合、乳糖の含量を少なくしても、引張強度が維持もしくは向上することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の固形組成物を用いることにより、糖類の含量を少なくしても付着性を低減できるため、安定な品質の製剤や患者のコンプライアンスが改善された小型製剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランルカスト水和物、糖類および水溶性セルロース類を含有することを特徴とする固形製剤用組成物。
【請求項2】
水溶性セルロース類がヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
噴霧乾燥造粒物である請求項2記載の組成物。
【請求項4】
組成物1重量部に対して、プランルカスト水和物が0.70〜0.98重量部である請求項2記載の組成物。
【請求項5】
プランルカスト水和物が0.75〜0.87重量部である請求項4記載の組成物。
【請求項6】
プランルカスト水和物1重量部に対して、糖類が0.05〜0.30重量部、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.002〜0.050重量部である請求項2記載の組成物。
【請求項7】
請求項2記載の組成物を含有する錠剤。
【請求項8】
請求項2記載の組成物を含有するカプセル剤。
【請求項9】
1錠剤中、プランルカスト水和物を112.5mg含有する請求項7記載の錠剤。
【請求項10】
1錠剤中、プランルカスト水和物を225mg含有する請求項7記載の錠剤。
【請求項11】
1錠剤1重量部に対して、プランルカスト水和物が0.50〜0.90重量部である請求項7記載の錠剤。
【請求項12】
プランルカスト水和物が0.55〜0.70重量部である請求項11記載の錠剤。
【請求項13】
1錠剤の体積が100〜175mmである請求項9記載の錠剤。
【請求項14】
1錠剤の体積が200〜350mmである請求項10記載の錠剤。
【請求項15】
1錠剤の重量が125〜225mgである請求項9記載の錠剤。
【請求項16】
1錠剤の重量が250〜450mgである請求項10記載の錠剤。
【請求項17】
直径7〜8mm、および厚さ2〜4mmの円形錠である請求項9記載の錠剤。
【請求項18】
長径13〜14mm、短径6〜7mm、および厚さ4〜5mmのカプレット錠である請求項10記載の錠剤。
【請求項19】
1カプセル剤中、プランルカスト水和物を225mg含有する請求項8記載のカプセル剤。
【請求項20】
1カプセル剤1重量部に対して、プランルカスト水和物が0.50〜0.90重量部である請求項8記載のカプセル剤。
【請求項21】
カプセルが2号カプセルまたは3号カプセルである請求項20記載のカプセル剤。
【請求項22】
プランルカスト水和物1重量部に対して、糖類を0.20〜0.25重量部、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.004〜0.009重量部含有する噴霧乾燥造粒物を含有する錠剤であって、1錠剤中、プランルカスト水和物を112.5mgまたは225mg含有し、1錠剤1重量部に対して、プランルカスト水和物が0.55〜0.70重量部であることを特徴とする、プランルカスト水和物高含量錠剤。
【請求項23】
プランルカスト水和物および水溶性セルロース類を含有することを特徴とする固形製剤用組成物。
【請求項24】
密封包装されていることを特徴とする請求項7記載の錠剤。
【請求項25】
密封包装されていることを特徴とする請求項7記載のカプセル剤。
【請求項26】
プランルカスト水和物、糖類および水溶性セルロース類を含有することを特徴とする付着凝集性の低減された高含量固形製剤製造のための組成物。
【請求項27】
水溶性セルロース類がヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項26記載の組成物。
【請求項28】
噴霧乾燥造粒物である請求項27記載の組成物。
【請求項29】
プランルカスト水和物1重量部に対して、糖類が0.05〜0.30重量部、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.002〜0.050重量部であり、組成物1重量部に対して、プランルカスト水和物が0.75〜0.87重量部であることを特徴とする付着性の低減されたプランルカスト水和物高含量組成物。
【請求項30】
請求項28記載の組成物を含有することを特徴とする錠剤。
【請求項31】
請求項28記載の組成物を含有することを特徴とするカプセル剤。

【公開番号】特開2006−8676(P2006−8676A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154761(P2005−154761)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】