説明

固形製剤

ピオグリタゾンまたはその塩の不快な味が十分に隠蔽された固形製剤;ピオグリタゾンまたはその塩の不快な味が十分に隠蔽されているとともに、優れた口腔内崩壊性、適度な製剤強度、長期間にわたる保存安定性などの優れた特性を有する固形製剤の提供。
賦形剤からなる核粒子をピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーで被覆した粒を含有する固形製剤。
【選択図面】なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、賦形剤からなる核粒子をピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーで被覆した粒を含有する固形製剤に関する。
【0002】
(発明の背景)
ピオグリタゾンまたはその塩の不快な味が隠蔽された製剤としては、下記の製剤が報告されている。
1)不快な味を有する塩基性医薬成分、2)糖類、3)ポリアニオン系ポリマー、4)矯味剤および5)カルボキシメチルセルロースを含有する固形製剤。(特許文献1参照)
【特許文献1】国際公開第02/30400号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
患者の服用コンプライアンスの高い医薬品として、ピオグリタゾンまたはその塩の不快な味が十分に隠蔽された固形製剤の開発が望まれている。
また、ピオグリタゾンまたはその塩の不快な味が十分に隠蔽されているとともに、優れた口腔内崩壊性、適度な製剤強度、長期間にわたる保存安定性などの優れた特性を有する固形製剤の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、不快な味を有するピオグリタゾンまたはその塩の製剤化について検討を行ったところ、ピオグリタゾンまたはその塩と酸可溶性ポリマーを組み合わせて用いることにより、また、賦形剤からなる核粒子をピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーで被覆することにより、ピオグリタゾンまたはその塩の不快な味が十分に隠蔽された固形製剤が得られることを見い出した。
【0005】
すなわち、本発明は、次の通りである。
1)賦形剤からなる核粒子をピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーで被覆した粒を含有する固形製剤(以下、本発明の固形製剤と略記することがある)。
2)酸可溶性ポリマーがアミノアルキルメタクリレートコポリマーEまたはポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートである前記1)記載の製剤。
3)ピオグリタゾンまたはその塩が塩酸ピオグリタゾンである前記1)記載の製剤。
4)口腔内速崩壊性固形製剤である前記1)記載の製剤。
5)賦形剤からなる核粒子をピオグリタゾンまたはその塩を含有する被覆層で被覆した粒を、酸可溶性ポリマーを含有する被覆層で被覆した粒を含有する前記1)記載の製剤。
6)賦形剤からなる核粒子をピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーを含有する被覆層で被覆した粒を含有する前記1)記載の製剤。
7)さらに(好ましくは、核粒子以外の部位に)糖類を含有する前記1)記載の製剤。
8)さらに(好ましくは、核粒子以外の部位に)崩壊剤を含有する前記1)記載の製剤。
9)さらに(好ましくは、核粒子以外の部位に)結晶セルロースを含有する前記1)記載の製剤。
10)さらに(好ましくは、核粒子以外の部位に)甘味料を含有する前記1)記載の製剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明の固形製剤は、ピオグリタゾンまたはその塩の不快な味が十分に隠蔽されており、非常に服用しやすいため、患者の服用コンプライアンスの高い医薬品として有用である。また、本発明の固形製剤が口腔内速崩壊性固形製剤である場合、該口腔内速崩壊性固形製剤は、ピオグリタゾンまたはその塩の不快な味が十分に隠蔽されているとともに、優れた口腔内崩壊性を有するため、薬剤の嚥下が困難な患者、高齢者あるいは小児の患者などの患者の服用コンプライアンスの高い医薬品として極めて有用である。さらに、該口腔内速崩壊性固形製剤は、適度な製剤強度、長期間にわたる保存安定性などの優れた特性を有する。
【0007】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の固形製剤で用いられる「賦形剤からなる核粒子」としては、乳糖、結晶セルロース、白糖、トウモロコシデンプン、D−マンニトールなどから選ばれる1ないし2種類が挙げられる。「賦形剤からなる核粒子」は、湿式造粒法、乾式造粒法あるいは加熱造粒法により造粒あるいは噴霧乾燥することによって得られるほぼ均一な形状と大きさを持つ粒を意味する。形状としては、球形状が好適なものとして挙げられる。
該核粒子の粒子径(粒度範囲)は、好ましくは50〜500μm、さらに好ましくは100〜300μmである。
ここに、粒子径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置(例、SYNPATEC HELOS−RODOS粒度分布測定装置)によって測定される。
該核粒子の具体例としては、乳糖・結晶セルロース球状顆粒[商品名:ノンパレル105(粒度範囲:180〜300μm)、ノンパレル105T(粒度範囲:105〜255μm);フロイント産業株式会社製]、結晶セルロース製球形核粒子[商品名:セルフィアSCP−100(粒度範囲:75〜212μm)、セルフィアCP−203(粒度範囲:150〜300μm)、セルフィアCP−305(粒度範囲:300〜500μm);旭化成ケミカルズ株式会社製]、白糖・デンプン球状顆粒[商品名:ノンパレル101、フロイント産業株式会社製]、精製白糖球状顆粒[商品名:ノンパレル103、フロイント産業株式会社製]、D−マンニトール球形粒[商品名:ノンパレル108 グレード200(粒度範囲:150〜250μm)、ノンパレル108 グレード32−42(粒度範囲:355〜500μm);フロイント産業株式会社製]、乳糖造粒粉末[商品名:ダイラクトースR、ダイラクトースS、フロイント産業株式会社製]、直打用乳糖[商品名:SUPER-TAB、旭化成ケミカルズ株式会社製]が挙げられる。なかでも、乳糖・結晶セルロース球状顆粒が好ましく、さらに、ノンパレル105T(商品名、粒度範囲:105〜255μm)が好ましい。
本発明の固形製剤中の「賦形剤からなる核粒子」の含量は、固形製剤100重量部に対して、通常、1〜50重量部、好ましくは5〜25重量部である。
【0008】
本発明の固形製剤で用いられるピオグリタゾンまたはその塩は、不快な味(例、苦味、辛味、刺激味)を有する。
ピオグリタゾンの塩としては、薬理学的に許容し得る塩、例えば無機酸との塩、有機酸との塩、酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。
無機酸との塩の好適な例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。
有機酸との塩の好適な例としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマール酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられる。
酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
ピオグリタゾンまたはその塩は、一般に医療、食品分野などで用いられる希釈剤などによって希釈されたものであってもよい。
ピオグリタゾンまたはその塩は、好ましくは塩酸ピオグリタゾンである。
本発明の固形製剤中のピオグリタゾンまたはその塩の含量は、投与量などにより異なるが、固形製剤100重量部に対して、通常0.01〜40重量部、好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは5〜10重量部である。
【0009】
本発明の固形製剤で用いられる「酸可溶性ポリマー」とは、pH5.8以下の酸性水溶液で溶解するポリマーをいう。「酸可溶性ポリマー」としては、例えばアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(商品名:オイドラギットE、オイドラギットE 100、オイドラギットE PO、オイドラギットE 12,5)、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート(商品名:AEA「三共」)などが挙げられる。
「酸可溶性ポリマー」は、好ましくはアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(商品名:オイドラギットE 100、オイドラギットE PO)である。
本発明の固形製剤中の酸可溶性ポリマーの含量は、酸可溶性ポリマーの種類などにより異なるが、固形製剤100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。
【0010】
本明細書中、「粒」とは、粉状、塊状、溶液あるいは溶融液状などの原料を、コーテイング法、湿式造粒法、乾式造粒法あるいは加熱造粒法により造粒することによって得られるほぼ均一な形状と大きさを持つ粒を意味する。該「粒」としては、例えば散剤、細粒および顆粒が挙げられ、これらは、好ましくは日本薬局方第十四改正に規定された粒度を有する。
すなわち、製剤の粒度試験において、散剤の粒度は、好ましくは「18号(850μm)ふるいを全量通過し、30号(500μm)ふるいに残留するものが全量の5%以下」であり、細粒の粒度は、好ましくは前記散剤の粒度のうち、「200号(75μm)ふるいを通過するものが全量の10%以下」であり、顆粒の粒度は、好ましくは「10号(1700μm)ふるいを全量通過し、12号(1400μm)ふるいに残留するものが全量の5%以下であり、また、42号(355μm)ふるいを通過するものが全量の15%以下」である。
本明細書中、「粒」の平均粒子径は、通常、30〜2000μm、好ましくは40〜1000μmである。当該平均粒子径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置(例、SYNPATEC HELOS−RODOS粒度分布測定装置)によって測定される。
本明細書中の「粒」は、本発明の固形製剤を得るための製剤化の過程(例、圧縮成形の工程)で、その形状や大きさが変化していてもよい。
【0011】
本発明の固形製剤に含まれる「賦形剤からなる核粒子をピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーで被覆した粒」(以下、本発明の粒と略記することがある)は、「賦形剤からなる核粒子」がピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーで被覆された粒であればよい。該粒としては、例えば「賦形剤からなる核粒子」、ピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーを、必要に応じて、後述する添加剤と共に、コーテイングまたは造粒することによって製造される粒;例えば「賦形剤からなる核粒子」を、ピオグリタゾンまたはその塩、必要に応じて、後述する添加剤と共にコーテイングまたは造粒後、得られるコーテイング粒または造粒物を、酸可溶性ポリマー、必要に応じて、後述する添加剤と共にコーテイングまたは造粒することによって製造される粒などが挙げられる。
本発明の固形製剤中の「本発明の粒」の含量は、例えば、固形製剤100重量部に対して、通常10〜100重量部、好ましくは15〜50重量部である。
【0012】
本発明において、添加剤としては下記の如き、糖類、崩壊剤、結晶セルロース、甘味料などが主たるものとして挙げられる。
本発明の固形製剤は、さらに(好ましくは、核粒子以外の部位に)糖類を含有していることが好ましい。
糖類としては、例えば砂糖、澱粉糖、乳糖、蜂蜜、糖アルコールが挙げられる。これら糖類は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
ここで、砂糖としては、例えば白糖、グリコシルスクロース(カップリングシュガー(商品名))、フラクトオリゴ糖、パラチノースが挙げられる。
澱粉糖としては、例えばブドウ糖、麦芽糖、粉飴、水飴、果糖が挙げられる。
乳糖としては、例えば乳糖、異性化乳糖(ラクチュロース)、還元乳糖(ラクチトール)が挙げられる。
蜂蜜としては、一般に食用として用いられる各種蜂蜜が挙げられる。
糖アルコールとしては、例えばソルビトール、D−マンニトール、マルチトール、還元澱粉糖化物、キシリトール、還元パラチノース、エリスリトール、トレハロースが挙げられる。
糖類は、好ましくは糖アルコールおよび乳糖であり、さらに好ましくはD−マンニトールおよび乳糖である。
本発明の固形製剤中の糖類の含量は、固形製剤100重量部に対して、好ましくは10〜90重量部、さらに好ましくは40〜70重量部である。
また、糖類を、ピオグリタゾンまたはその塩1重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部用いることにより、ピオグリタゾンまたはその塩の不快な味をより効果的に隠蔽することができる。
【0013】
本発明の固形製剤は、さらに(好ましくは、核粒子以外の部位に)崩壊剤を含有していることが好ましい。
崩壊剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチが用いられる。
崩壊剤は、好ましくはクロスポビドン[好ましくは、コリドンCL、CL―M、CL−F、CL−SF(商品名、BASFジャパン株式会社);ポリプラスドンXL、XL−10、INF−10(商品名、ISPジャパン株式会社)]、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(好ましくは、LH11、LH21、LH31、LH22、LH32、LH20、LH30、LH32、LH33(商品名、信越化学株式会社製)等のヒドロキシプロポキシル基含量が5〜16重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)である。なかでも、クロスポビドンが好ましく、さらにコリドンCL、CL−F、CL−SF(商品名、BASFジャパン株式会社);ポリプラスドンXL(商品名、ISPジャパン株式会社)が好ましい。クロスポビドンを用いることにより、口腔内速崩壊性に優れた固形製剤が得られる。
本発明の固形製剤中の崩壊剤の含量は、固形製剤100重量部に対して、好ましくは0.5〜25重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
【0014】
本発明の固形製剤は、さらに(好ましくは、核粒子以外の部位に)結晶セルロースを含有していることが好ましい。
結晶セルロースとしては、例えばセオラスKG801、KG802、PH101、PH102、PH301、PH302、PH−F20、RC−A591NF(商品名、旭化成ケミカルズ株式会社製)が挙げられ、微結晶セルロースと呼ばれているものも含まれる。結晶セルロースを用いることにより、適度な製剤強度を有し、口腔内速崩壊性に優れた固形製剤が得られる。
本発明の固形製剤中の結晶セルロースの含量は、固形製剤100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、さらに好ましくは0.5〜40重量部、特に好ましくは1〜25重量部である。
【0015】
本発明の固形製剤は、さらに(好ましくは、核粒子以外の部位に)甘味料を含有していることが好ましい。
甘味料としては、例えばアスパルテーム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウムが挙げられる。なかでも、アスパルテームが好ましい。
本発明の固形製剤中の甘味料の含量は、固形製剤100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、さらに好ましくは0.2〜10重量部である。
【0016】
本発明の固形製剤は、前記した糖類、崩壊剤、結晶セルロース、甘味料以外にも、製剤技術分野において慣用の添加剤を含有していてもよい。該添加剤としては、例えば賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、pH調整剤、界面活性剤、安定化剤、矯味剤、香料、流動化剤などが挙げられる。これら添加剤は、製剤技術分野において慣用の量が用いられる。また、これら添加剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
賦形剤としては、例えばトウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギコデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファ−化デンプン、有孔デンプン等のデンプン類;無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、粉末セルロースが挙げられる。
結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、アラビアゴム末が挙げられる。なかでも、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、蔗糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウムが挙げられる。なかでも、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。
着色剤としては、例えば食用黄色5号(サンセットイエロー、米国の食用黄色6号と同一)、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素、食用レーキ色素、黄色三二酸化鉄が挙げられる。
pH調整剤としては、例えばクエン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、アミノ酸塩が挙げられる。
界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が挙げられる。
安定化剤としては、例えばアスコルビン酸ナトリウム、トコフェロール、エデト酸四ナトリウム、ニコチン酸アミド、シクロデキストリン類;アルカリ土類金属塩(例、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム)、ブチルヒドロキシアニソールが挙げられる。
矯味剤としては、例えばアスコルビン酸、(無水)クエン酸、酒石酸、リンゴ酸が挙げられる。
香料としては、例えばメントール、ハッカ油、レモン油、バニリンが挙げられる。
流動化剤としては、例えば軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素が挙げられる。ここで、軽質無水ケイ酸は、含水二酸化ケイ素(SiO・nHO)(nは整数を示す)を主成分とするものであればよく、その具体例として、例えばサイリシア320(商品名、富士シリシア化学株式会社)、アエロジル200(商品名、日本アエロジル株式会社)等が挙げられる。
上記した添加剤の粒子径は、口腔内でのザラツキ感を生じにくい500μm以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の固形製剤は、好ましくは口腔内速崩壊性固形製剤である。ここで、口腔内速崩壊性とは、口腔内で、固形製剤が短時間(例えば5〜90秒)内に崩壊する性質を意味する。口腔内速崩壊性固形製剤の口腔内崩壊時間(健康な成人男子及び女子の口腔内の唾液で固形製剤が完全に崩壊するまでの時間)は、固形製剤の剤形、大きさなどによって異なるが、例えば固形製剤が錠剤である場合、通常5〜90秒、好ましくは5〜60秒、さらに好ましくは5〜30秒程度である。
該口腔内速崩壊性固形製剤は、薬剤の嚥下が困難な患者、高齢者、小児用の服用しやすい製剤として、また一般成人の緊急時の安全な製剤として、各種疾患の予防および治療に有用である。
本発明の固形製剤の硬度(錠剤硬度計による測定値)は、好ましくは15〜200N、さらに好ましくは15〜150N程度である。
【0018】
本発明の固形製剤は、賦形剤からなる核粒子を、所望により前記した添加剤とともに、ピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーで被覆し、得られる被覆粒を、所望により前記した添加剤とともに混合し、ついで圧縮成形することにより、製造することができる。
ここで、「被覆」、「混合」および「圧縮成形」は、製剤技術分野において慣用の方法を用いて行われる。
具体的には、「被覆」は、例えば、転動流動層造粒・コーテイング機(MP−10;パウレック社)、遠心流動型コーティング造粒機(CFグラニュレーター;フロイント産業)を用いて行われる。また、高速攪拌造粒機(FM−VG−10;パウレック社)、流動造粒乾燥機(LAB−1、FD−3S、FD−3SN;パウレック社)などの製剤機械を用いた造粒によって、「被覆」を行うこともできる。
混合(造粒、乾燥、整粒等を含む)は、例えば、V型混合機、タンブラー混合機、高速攪拌造粒機(FM−VG−10;パウレック社)、万能練合機(畑鉄工所)、流動造粒乾燥機(LAB−1、FD−3S、FD−3SN;パウレック社製)、箱形真空乾燥機(楠木機械)、スクリーンミル(P−3;株式会社昭和化学機械工作所)などの製剤機械を用いて行われる。
圧縮成形は、例えば、単発錠剤機(菊水製作所)、ロータリー式打錠機(菊水製作所)、オートグラフ(島津製作所)などを用い、通常3〜35kN/cmの圧力で打錠することにより行われる。
【0019】
本発明の固形製剤の具体例としては、以下の製剤(1)および製剤(2)が挙げられる。
製剤(1):
賦形剤からなる核粒子をピオグリタゾンまたはその塩を含有する被覆層で被覆した粒を、酸可溶性ポリマーを含有する被覆層で被覆した粒を含有する固形製剤。
製剤(2):
賦形剤からなる核粒子をピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーを含有する被覆層で被覆した粒を含有する固形製剤。
なお、それぞれの層間にヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等のフィルムコーティング基剤、さらにはタルク、マクロゴール等を含む層(中間層)を有してもよい。
上記製剤のなかでも、製剤(2)の方が容易に製造することができる。また、製剤(2)の方が長期間にわたる保存安定性に優れ、例えば、長期間(例、6ヶ月)保存後でも、ピオグリタゾンまたはその塩の溶出性における経時的変化が小さい。したがって、本発明の固形製剤としては、製剤(2)が好ましい。
【0020】
以下、製剤(1)について詳述する。
製剤(1)において、「賦形剤からなる核粒子」の含量は、固形製剤100重量部に対して、通常、1〜50重量部、好ましくは5〜25重量部である。
製剤(1)において、「ピオグリタゾンまたはその塩を含有する被覆層」は、好ましくはピオグリタゾンまたはその塩、結合剤(好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース)および糖類(好ましくは、乳糖)からなる被覆層である。該結合剤(被覆層中の結合剤)の製剤(1)における含量は、固形製剤100重量部に対して、通常0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜20重量部である。また、該糖類(被覆層中の糖類)の製剤(1)における含量は、固形製剤100重量部に対して、通常0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜20重量部である。
製剤(1)において、「ピオグリタゾンまたはその塩を含有する被覆層」の含量は、固形製剤100重量部に対して、通常1〜50重量部、好ましくは5〜25重量部である。
製剤(1)において、「酸可溶性ポリマーを含有する被覆層」は、好ましくは酸可溶性ポリマー(例、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE)からなり、さらに、ポリエチレングリコール、タルクおよび(無水)クエン酸から選ばれる添加剤を含有していてもよい被覆層である。該添加剤(被覆層中の添加剤)の製剤(1)における含量は、固形製剤100重量部に対して、通常0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜20重量部である。
製剤(1)において、「酸可溶性ポリマーを含有する被覆層」の含量は、固形製剤100重量部に対して、通常0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜20重量部である。
製剤(1)において、「賦形剤からなる核粒子をピオグリタゾンまたはその塩を含有する被覆層で被覆した粒を、酸可溶性ポリマーを含有する被覆層で被覆した粒」の含量は、固形製剤100重量部に対して、通常、10〜100重量部、好ましくは15〜50重量部である。
製剤(1)は、好ましくは、上記した「賦形剤からなる核粒子をピオグリタゾンまたはその塩を含有する被覆層で被覆した粒を、酸可溶性ポリマーを含有する被覆層で被覆した粒」に加えて、さらに添加剤[好ましくは、結晶セルロース、崩壊剤(好ましくは、クロスポビドン)、滑沢剤(好ましくは、ステアリン酸マグネシウム)、糖類(好ましくは、D−マンニトール)、着色剤(好ましくは、黄色三二酸化鉄)、甘味料(好ましくは、アスパルテーム)]を含有する。該添加剤の総含量は、固形製剤100重量部に対して、通常、1〜90重量部、好ましくは50〜85重量部である。また、該添加剤の単独での含量は、固形製剤100重量部に対して、通常、0.001〜90重量部、好ましくは0.01〜85重量部である。
【0021】
以下、製剤(2)について詳述する。
製剤(2)において、「賦形剤からなる核粒子」の含量は、固形製剤100重量部に対して、通常、1〜50重量部、好ましくは5〜25重量部である。
製剤(2)において、「ピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーを含有する被覆層」は、好ましくはピオグリタゾンまたはその塩、酸可溶性ポリマー(例、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE)および糖類(好ましくは、乳糖)からなる被覆層である。該糖類(被覆層中の糖類)の製剤(1)における含量は、固形製剤100重量部に対して、通常0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜20重量部である。
製剤(2)において、「ピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーを含有する被覆層」の含量は、固形製剤100重量部に対して、通常0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜20重量部である。
製剤(2)において、「賦形剤からなる核粒子をピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーを含有する被覆層で被覆した粒」の含量は、固形製剤100重量部に対して、通常、10〜100重量部、好ましくは15〜50重量部である。
製剤(2)は、好ましくは、上記した「賦形剤からなる核粒子をピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーを含有する被覆層で被覆した粒」に加えて、さらに添加剤[好ましくは、結晶セルロース、崩壊剤(好ましくは、クロスポビドン)、滑沢剤(好ましくは、ステアリン酸マグネシウム)、糖類(好ましくは、D−マンニトール)、着色剤(好ましくは、黄色三二酸化鉄)、甘味料(好ましくは、アスパルテーム)]を含有する。該添加剤の総含量は、固形製剤100重量部に対して、通常、1〜90重量部、好ましくは50〜85重量部である。また、該添加剤の単独での含量は、固形製剤100重量部に対して、通常、0.001〜90重量部、好ましくは0.01〜85重量部である。
【0022】
以下、製剤(1)及び製剤(2)の製造法について詳述する。
製剤(1)は、賦形剤からなる核粒子を、所望により前記した添加剤とともに、ピオグリタゾンまたはその塩を含有する被覆層で被覆し、
得られる被覆粒(a)を、所望により前記した添加剤とともに、酸可溶性ポリマーを含有する被覆層で被覆し、
得られる被覆粒(b)を、所望により前記した添加剤とともに混合し、
ついで圧縮成形することにより、製造することができる。
製剤(1)は、具体的には、以下のようにして製造することができる。
(1A) 賦形剤からなる核粒子(例、乳糖・結晶セルロース球状顆粒)を、添加剤[例、結合剤(例、ヒドロキシプロピルセルロース)、糖類(例、乳糖)]およびピオグリタゾンまたはその塩(好ましくは、塩酸ピオグリタゾン)の溶媒(例、水)分散液で造粒し、
得られる造粒物を、酸可溶性ポリマー(例、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE)の溶媒(例、水−エタノールの混合溶媒、無水クエン酸水溶液、クエン酸1水和物水溶液)分散液(該分散液は、ポリエチレングリコール、タルクなどを含有していてもよい)で造粒し、
得られる造粒物を、添加剤[例、結晶セルロース、崩壊剤(例、クロスポビドン)、滑沢剤(例、ステアリン酸マグネシウム)、糖類(例、D−マンニトール)、着色剤(例、黄色三二酸化鉄)、甘味料(例、アスパルテーム)]とともに混合し、
ついで圧縮成形(例、打錠)することにより、製造することができる。
【0023】
製剤(2)は、賦形剤からなる核粒子を、所望により前記した添加剤とともに、ピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーを含有する被覆層で被覆し、
得られる被覆粒(c)を、所望により前記した添加剤とともに混合し、
ついで圧縮成形することにより、製造することができる。
製剤(2)は、具体的には、以下のようにして製造することができる。
(2A) 賦形剤からなる核粒子(例、乳糖・結晶セルロース球状顆粒)を、添加剤[例、糖類(例、乳糖)]、ピオグリタゾンまたはその塩(好ましくは、塩酸ピオグリタゾン)および酸可溶性ポリマー(例、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE)の溶媒(例、水−エタノールの混合溶媒、無水クエン酸水溶液)分散液で造粒し、
得られる造粒物を、添加剤[例、結晶セルロース、崩壊剤(例、クロスポビドン)、滑沢剤(例、ステアリン酸マグネシウム)、糖類(例、D−マンニトール)、着色剤(例、黄色三二酸化鉄)、甘味料(例、アスパルテーム)]とともに混合し、
ついで圧縮成形(例、打錠)することにより、製造することができる。
【0024】
本発明の固形製剤の剤形としては、例えば錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、トローチ剤等の経口剤が挙げられる。なかでも、錠剤が好ましい。
本発明の固形製剤の形状は特に制限されず、丸形、キャプレット形、ドーナツ形、オブロング形等のいずれであってもよい。
本発明の固形製剤は、コーティング剤によって被覆されていてもよく、また、識別性のためのマーク、文字さらには分割用の割線を付してあってもよい。
ここで、コーティング基剤としては、例えば糖衣基剤、水溶性フィルムコーティング基剤、腸溶性フィルムコーティング基剤、徐放性フィルムコーティング基剤などが挙げられる。
糖衣基剤としては、白糖が用いられ、さらに、タルク、沈降炭酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、カルナバロウなどから選ばれる1種または2種以上を併用してもよい。
水溶性フィルムコーティング基剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系高分子;ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE〔オイドラギットE(商品名)〕、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子;プルランなどの多糖類などが挙げられる。
腸溶性フィルムコーティング基剤としては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース アセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースなどのセルロース系高分子;メタアクリル酸コポリマーL〔オイドラギットL(商品名)〕、メタアクリル酸コポリマーLD〔オイドラギットL−30D55(商品名)〕、メタアクリル酸コポリマーS〔オイドラギットS(商品名)〕などのアクリル酸系高分子;セラックなどの天然物などが挙げられる。
徐放性フィルムコーティング基剤としては、例えばエチルセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース系高分子;アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS〔オイドラギットRS(商品名)〕、アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル共重合体懸濁液〔オイドラギットNE(商品名)〕などのアクリル酸系高分子などが挙げられる。
上記したコーティング基剤は、その2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。また、コーティングの際に、コーティング添加剤を用いてもよい。
該コーティング添加剤としては、例えば酸化チタン、タルク、三二酸化鉄などの遮光剤および/または着色剤;ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、ヒマシ油、ポリソルベート類などの可塑剤;クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸などの有機酸などが挙げられる。
【0025】
本発明の固形製剤は、哺乳動物(例、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、サル、ヒト)に対して、経口的に安全に投与することができる。
本発明の固形製剤の投与量は、投与対象、疾患の種類などにより異なるが、ピオグリタゾンまたはその塩の投与量が有効量となる範囲から選択すればよい。
本発明の固形製剤の投与量は、例えば成人(体重60kg)1人あたり、ピオグリタゾンとして、通常7.5〜60mg/日、好ましくは15〜60mg/日であり、この量を、1日2〜3回に分けて投与してもよい。
本発明の固形製剤が口腔内崩壊性固形製剤である場合、該固形製剤は、水なしで、または適量の水とともに服用することができる。また、該固形製剤は、口腔内で崩壊させずに服用することもできる。
【0026】
本発明の固形製剤は、例えば糖尿病(例、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病)、高脂血症(例、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL血症、食後高脂血症)、耐糖能不全[IGT(Impaired Glucose Tolerance)]、糖尿病性合併症[例、神経障害、腎症、網膜症、白内障、大血管障害、骨減少症、糖尿病性高浸透圧昏睡、感染症(例、呼吸器感染症、尿路感染症、消化器感染症、皮膚軟部組織感染症、下肢感染症)、糖尿病性壊疽、口腔乾燥症、聴覚の低下、脳血管障害、末梢血行障害等]、肥満症、骨粗鬆症、悪液質(例、癌性悪液質、結核性悪液質、糖尿病性悪液質、血液疾患性悪液質、内分泌疾患性悪液質、感染症性悪液質または後天性免疫不全症候群による悪液質)、脂肪肝、高血圧、多嚢胞性卵巣症候群、腎臓疾患(例、糖尿病性ネフロパシー、糸球体腎炎、糸球体硬化症、ネフローゼ症候群、高血圧性腎硬化症、末期腎臓疾患)、筋ジストロフィー、心筋梗塞、狭心症、脳血管障害(例、脳梗塞、脳卒中)、インスリン抵抗性症候群、シンドロームX、代謝不全症候群(Dysmetabolic syndrome)、高インスリン血症、高インスリン血症における知覚障害、腫瘍(例、白血病、乳癌、前立腺癌、皮膚癌)、過敏性腸症候群、急性または慢性下痢、炎症性疾患[例、アルツハイマー病、慢性関節リウマチ、変形性脊椎炎、変形性関節炎、腰痛、痛風、手術外傷後の炎症、腫脹の緩解、神経痛、咽喉頭炎、膀胱炎、肝炎(非アルコール性脂肪性肝炎を含む)、肺炎、膵炎、炎症性大腸疾患、潰瘍性大腸炎]、内臓肥満症候群、動脈硬化症(例、アテローム性動脈硬化症)などの疾患の予防・治療剤;あるいは上記した各種疾患の2次予防(例、心筋梗塞などの心血管イベントの2次予防)および進展抑制(例、耐糖能不全から糖尿病への進展抑制、糖尿病患者における動脈硬化進展抑制)に有用である。
【0027】
本発明の固形製剤は、ピオグリタゾンまたはその塩以外の活性成分(以下、併用成分と略記することがある)と組み合わせて用いることができる。この際、本発明の固形製剤と併用成分の投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。さらに、本発明の固形製剤と併用成分とは、それぞれの活性成分を含む2種類の製剤として投与されてもよいし、両方の活性成分を含む単一の製剤として投与されてもよい。
併用成分の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。
このように、併用成分を用いることにより、1)本発明の固形製剤または併用成分の作用の増強効果(薬剤作用の相乗効果)、2)本発明の固形製剤または併用成分の投与量の低減効果(単独投与時と比較した場合の薬剤投与量の低減効果)、3)本発明の固形製剤または併用成分の二次的な作用の低減効果などの優れた効果が得られる。
併用成分としては、例えば糖尿病治療薬(インスリン抵抗性改善薬を除く)、糖尿病性合併症治療薬、高脂血症治療薬、降圧剤、抗肥満薬、利尿薬、抗血栓薬などが挙げられる。これらの活性成分は、低分子化合物であってもよく、また高分子の蛋白、ポリペプチド、抗体であるか、あるいはワクチン等であってもよい。また、活性成分は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0028】
ここで、糖尿病治療薬としては、例えばインスリン製剤(例、ウシ、ブタの膵臓から抽出された動物インスリン製剤;大腸菌、イーストを用い遺伝子工学的に合成したヒトインスリン製剤;インスリン亜鉛;プロタミンインスリン亜鉛;インスリンのフラグメントまたは誘導体(例、INS−1))、α−グルコシダーゼ阻害剤(例、ボグリボース、アカルボース、ミグリトール、エミグリテート)、ビグアナイド剤[例、フェンフォルミン、メトフォルミン、ブフォルミンまたはそれらの塩(例、塩酸塩、フマール酸塩、コハク酸塩)]、インスリン分泌促進薬[例、スルホニルウレア剤(例、トルブタミド、グリベンクラミド、グリクラジド、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、グリクロピラミド、グリメピリド、グリピザイド、グリブゾール)、非スルホニルウレア系インスリン分泌促進薬(例、レパグリニド、ナテグリニド、ミチグリニドまたはそのカルシウム塩水和物)]、GLP−1受容体アゴニスト[例、GLP−1、GLP−1MR剤、NN−2211、exendin−4、BIM−51077、Aib(8,35)hGLP−1(7,37)NH、CJC−1131]、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤(例、ヴィルダグリプチン(Vildagliptin)、サクサグリプチン(Saxagliptin) 、NVP−DPP−278、PT−100、NVP−DPP−728、P32/98、P93/01、TS−021、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、T−6666)、β3アゴニスト(例、AJ−9677)、アミリンアゴニスト(例、プラムリンチド)、ホスホチロシンホスファターゼ阻害剤(例、バナジン酸ナトリウム)、糖新生阻害剤(例、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、グルコース−6−ホスファターゼ阻害剤、グルカゴン拮抗剤)、SGLUT(sodium−glucose cotransporter)阻害剤(例、T−1095)、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害薬(例、BVT−3498)、アディポネクチンまたはその作動薬、IKK阻害薬(例、AS−2868)、レプチン抵抗性改善薬、ソマトスタチン受容体作動薬(例、WO01/25228、WO03/42204、WO98/44921、WO98/45285、WO99/22735に記載の化合物)、グルコキナーゼ活性化薬(例、Ro−28−1675)等が挙げられる。
【0029】
糖尿病性合併症治療薬としては、例えばアルドース還元酵素阻害剤(例、トルレスタット、エパルレスタット、ゼナレスタット、ゾポルレスタット、ミナルレスタット、フィダレスタット、CT−112、ラニレスタット)、神経栄養因子(例、NGF、NT−3、BDNF)、神経栄養因子産生・分泌促進剤[例、WO01/14372に記載のニューロトロフィン産生・分泌促進剤(例えば4−(4−クロロフェニル)−2−(2−メチル−1−イミダゾリル)−5−(3−(2−メチルフェノキシ)プロピル)オキサゾール)]、PKC阻害剤(例、ルボキシスタウリン メシレート(ruboxistaurin mesylate))、AGE阻害剤(例、ALT946、ピマゲジン、ピラトキサチン、N−フェナシルチアゾリウム ブロマイド(ALT766)、EXO−226、ALT−711、ピリドリン(Pyridorin)、ピリドキサミン)、活性酸素消去薬(例、チオクト酸)、脳血管拡張剤(例、チアプリド、メキシレチン)、ソマトスタチン受容体作動薬(例、BIM23190)、アポトーシスシグナルレギュレーティングキナーゼ−1(ASK−1)阻害薬が挙げられる。
【0030】
高脂血症治療薬としては、例えばHMG−CoA還元酵素阻害薬(例、プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、リパンチル、イタバスタチン、ロスバスタチンまたはそれらの塩(例、ナトリウム塩、カルシウム塩))、フィブラート系化合物(例、ベザフィブラート、ベクロブラート、ビニフィブラート、シプロフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブラート、クロフィブリン酸、エトフィブラート、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、ニコフィブラート、ピリフィブラート、ロニフィブラート、シムフィブラート、テオフィブラート)、スクアレン合成酵素阻害剤(例、WO97/10224に記載の化合物、例えば1−[[(3R,5S)−1−(3−アセトキシ−2,2−ジメチルプロピル)−7−クロロ−5−(2,3−ジメトキシフェニル)−2−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−4,1−ベンゾオキサゼピン−3−イル]アセチル]ピペリジン−4−酢酸)、ACAT阻害剤(例、アバシマイブ(Avasimibe)、エフルシマイブ(Eflucimibe))、陰イオン交換樹脂(例、コレスチラミン)、プロブコール、ニコチン酸系薬剤(例、ニコモール(nicomol)、ニセリトロール(niceritrol))、イコサペント酸エチル、植物ステロール(例、ソイステロール(soysterol)、ガンマオリザノール(γ−oryzanol))などが挙げられる。
【0031】
降圧剤としては、例えばアンジオテンシン変換酵素阻害剤(例、カプトプリル、エナラプリル、デラプリル)、アンジオテンシンII拮抗剤(例、ロサルタン、エプロサルタン、バルサンタン、テルミサルタン、イルベサルタン、タソサルタン、オルメサルタン メドキソミル、1−[[2’−(2,5−ジヒドロ−5−オキソ−4H−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)ビフェニル−4−イル]メチル]−2−エトキシ−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボン酸)、カルシウム拮抗剤(例、マニジピン、ニフェジピン、ニカルジピン、アムロジピン、エホニジピン)、カリウムチャンネル開口薬(例、レブクロマカリム、L−27152、AL0671、NIP−121)、クロニジン等が挙げられる。
【0032】
抗肥満薬としては、例えば中枢性抗肥満薬[例、デキスフェンフルラミン、フェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、アンフェプラモン、デキサンフェタミン、マジンドール、フェニルプロパノールアミン、クロベンゾレックス;MCH受容体拮抗薬(例、SB−568849;SNAP−7941;WO01/82925およびWO01/87834に記載の化合物);ニューロペプチドY拮抗薬(例、CP−422935);カンナビノイド受容体拮抗薬(例、SR−141716、SR−147778);グレリン拮抗薬;11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害薬(例、BVT−3498)]、膵リパーゼ阻害薬(例、オルリスタット、セティリスタット(ATL−962))、β3アゴニスト(例、AJ−9677)、ペプチド性食欲抑制薬(例、レプチン、CNTF(毛様体神経栄養因子))、コレシストキニンアゴニスト(例、リンチトリプト、FPL−15849)、摂食抑制薬(例、P−57)等が挙げられる。
【0033】
利尿薬としては、例えばキサンチン誘導体(例、サリチル酸ナトリウムテオブロミン、サリチル酸カルシウムテオブロミン)、チアジド系製剤(例、エチアジド、シクロペンチアジド、トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、ベンチルヒドロクロロチアジド、ペンフルチジド、ポリチアジド、メチクロチアジド)、抗アルドステロン製剤(例、スピロノラクトン、トリアムテレン)、炭酸脱水酵素阻害剤(例、アセタゾラミド)、クロルベンゼンスルホンアミド系製剤(例、クロルタリドン、メフルシド、インダパミド)、アゾセミド、イソソルビド、エタクリン酸、ピレタニド、ブメタニド、フロセミド等が挙げられる。
【0034】
抗血栓薬としては、例えばヘパリン(例、ヘパリンナトリウム、ヘパリンカルシウム、ダルテパリンナトリウム(dalteparin sodium))、ワルファリン(例、ワルファリンカリウム)、抗トロンビン薬(例、アルガトロバン(aragatroban))、血栓溶解薬(例、ウロキナーゼ(urokinase)、チソキナーゼ(tisokinase)、アルテプラーゼ(alteplase)、ナテプラーゼ(nateplase)、モンテプラーゼ(monteplase)、パミテプラーゼ(pamiteplase))、血小板凝集抑制薬(例、塩酸チクロピジン(ticlopidine hydrochloride)、シロスタゾール(cilostazol)、イコサペント酸エチル、ベラプロストナトリウム(beraprost sodium)、塩酸サルポグレラート(sarpogrelate hydrochloride)など)などが挙げられる。
【0035】
上記併用成分のなかでも、ビグアナイド剤(好ましくはメトフォルミン)、インスリン分泌促進薬(好ましくはスルホニルウレア剤、非スルホニルウレア系インスリン分泌促進薬、さらに好ましくはグリメピリド、ナテグリニド、ミチグリニドまたはそのカルシウム塩水和物)、HMG−CoA還元酵素阻害薬(好ましくはシンバスタチン)、α−グルコシダーゼ阻害剤(好ましくはボグリボース)などが好ましい。さらに、2種以上の併用成分を用いる場合の組合せとしては、ビグアナイド剤(好ましくはメトフォルミン)とインスリン分泌促進薬(好ましくはスルホニルウレア剤、さらに好ましくはグリメピリド)との組合せが好ましい。
【0036】
本発明は、さらに「ピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーを含有する固形製剤」を提供する。ここで、「ピオグリタゾンまたはその塩」および「酸可溶性ポリマー」としては、前記した本発明の固形製剤において例示したものが用いられる。また、該固形製剤は、例えば前記した本発明の固形製剤と同様にして製造することができ、ピオグリタゾンまたはその塩の不快な味が抑制された固形製剤として有用である。
【0037】
以下に実施例、比較例および試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において、製剤添加剤(例、乳糖、D−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウム、結晶セルロース)としては、日本薬局方第14改正あるいは医薬品添加物規格2003適合品を用いた。
【実施例】
【0038】
比較例1
塩酸ピオグリタゾン 694.3g、ヒドロキシプロピルセルロース(グレードSSL、日本曹達株式会社)189g、乳糖 420gを秤量し、水 3041gに溶解、分散して分散液を得た。
乳糖・結晶セルロース球状顆粒(ノンパレル105T、フロイント産業株式会社)1260gを、転動流動層造粒・コーテイング機(MP−10、パウレック株式会社)に仕込み、上記分散液を噴霧し、被覆粒Lを得た。
被覆粒L 6.1g、後述の実施例2で得た整粒末B 12.11g、マンニトール(マンニットS 東和化成工業株式会社)0.67g、マンニトール(Cat No:105980 メルク・ジャパン株式会社)0.34g、結晶セルロース(セオラスKG−802、旭化成ケミカルズ工業株式会社)1.05g、クロスポビドン(ポリプラスドン XL−10、ISP ジャパン株式会社)0.53g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社)0.21g秤量し、混合した。
得られる混合末を、オートグラフ(AG−1、島津製作所株式会社)を用い、10mmφ隅角平面杵を用い、打錠圧11(kN/cm)にて打錠して、1錠あたり420mgの錠剤を得た。
【0039】
比較例2
塩酸ピオグリタゾン 347.1g、ヒドロキシプロピルセルロース(グレードSSL、日本曹達株式会社)94.5g、乳糖 210gを秤量し、水1521gに溶解、分散して分散液を得た。
乳糖・結晶セルロース球状顆粒(ノンパレル105T、フロイント産業株式会社)630gを、転動流動層造粒・コーテイング機(MP−10、パウレック株式会社)に仕込み、上記分散液を噴霧し、被覆粒Mを得た。
被覆粒M 6.1g、マンニトール(Cat No:105980 メルク・ジャパン株式会社) 13.11g、結晶セルロース(セオラスKG−802、旭化成ケミカルズ株式会社)1.05g、クロスポビドン(ポリプラスドン XL−10、ISP ジャパン株式会社)0.525g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社)0.21gを秤量し、混合した。
得られる混合末を、オートグラフ(AG−1、島津製作所株式会社)を用い、8mmφ隅角平面杵を用い、打錠圧 10(kN/cm)にて打錠して、1錠あたり210mgの錠剤を得た。
【0040】
実施例1
比較例1で得た被覆粒L 500gを、転動流動層造粒・コーテイング機(MP−10、パウレック株式会社)に仕込み、オイドラギットE 100(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、デグサジャパン株式会社)81.9gを、エタノール 533g、水 533gに溶解した液を噴霧し、被覆粒Aを得た。
一方、マンニトール(マンニットS 東和化成工業株式会社)1635g、マンニトール(Cat No:105980 メルク・ジャパン株式会社)865gを、転動流動層造粒・コーテイング機(MP−10、パウレック株式会社)に仕込み、マンニトール(マンニットS 東和化成工業株式会社)86.5g、黄色三二酸化鉄(Ansted株式会社)1.1gを、水 865.3gに溶解、分散させた液で、造粒し、造粒末Bを得た。
被覆粒A 284g、造粒末B 464g、結晶セルロース(セオラスKG−802、旭化成ケミカルズ株式会社)42g、クロスポビドン(ポリプラスドン XL−10、ISP ジャパン株式会社)21g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社)8.4gを秤量し、混合した。
得られる混合末を、オートグラフ(AG−1、島津製作所株式会社)を用い、10mmφ隅角平面杵を用い、打錠圧10(kN/cm)にて、打錠して、1錠あたり420mgの錠剤を得た。
【0041】
実施例2
塩酸ピオグリタゾン 347g、オイドラギットE PO(デグサジャパン株式会社)42g、乳糖 221gを秤量し、エタノール 1218g、水 987gに溶解、分散して分散液を得た。
乳糖・結晶セルロース球状顆粒(ノンパレル105T、フロイント産業株式会社)630gを、転動流動層造・コーテイング粒機(MP−10、パウレック株式会社)に仕込み、上記分散液を噴霧し、被覆粒Cを得た。
一方、実施例1で得た造粒末Bを、パワーミル(株式会社昭和化学機械工作所)を用いて整粒し、整粒末Bを得た。
被覆粒C 11.8g、整粒末B 26.6g、結晶セルロース(セオラスKG−802、旭化成ケミカルズ株式会社)2.1g、クロスポビドン(ポリプラスドン XL−10、ISP ジャパン株式会社)1.1g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社)0.4g、アスパルテーム(味の素株式会社)1gを秤量し、混合した。
得られる混合末を、オートグラフ(AG−1、島津製作所株式会社)を用い、10mmφ隅角平面杵を用い、打錠圧7.5(kN/cm)にて、打錠して、1錠あたり420mgの錠剤を得た。
【0042】
実施例3
マンニトール(マンニットS、東和化成工業株式会社)411g、マンニトール(Cat No:105980 メルク・ジャパン株式会社)876g、結晶セルロース(セオラスKG−802、旭化成ケミカルズ株式会社)107.8g、クロスポビドン(ポリプラスドン XL−10、ISP ジャパン株式会社)53.9g、アスパルテーム(味の素株式会社)51.3gを、転動流動層造粒・コーテイング機(MP−10、パウレック株式会社)に仕込み、マンニトール(マンニットS 東和化成工業株式会社)25.7g、三二酸化鉄(Ansted株式会社)2.6gを、水 308gに溶解、分散させた液で、造粒し、造粒末Dを得た。
実施例2で得た被覆粒C 236g、造粒末D 596g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社)8.4gを秤量し、混合した。
得られる混合末を、打錠機(Clean Press Correct 19KAWC、菊水製作所株式会社)を用い、10mmφ隅角平面杵を用い、打錠圧10(kN/cm)にて打錠して、1錠あたり420mgの錠剤を得た。
【0043】
実施例4
塩酸ピオグリタゾン 347g、ヒドロキシプロピルセルロース(グレードSSL、日本曹達株式会社)94.5g、乳糖 220.5gを秤量し、水 1545gに溶解、分散して分散液を得た。
乳糖・結晶セルロース球状顆粒(ノンパレル105T、フロイント産業株式会社)630gを、転動流動層造粒・コーテイング機(MP−10)に仕込み、上記分散液を噴霧し、被覆粒Eを得た。
被覆粒E 500gを、転動流動層造粒・コーテイング機(MP−10、パウレック株式会社)に仕込み、オイドラギットE PO(デグサジャパン株式会社)40.6gを、無水クエン酸 13.9g、水 218.2gに溶解した液を噴霧し、被覆粒Fを得た。
被覆粒F 13.7g、マンニトール(Cat No:105980 メルク・ジャパン株式会社)21.7g、結晶セルロース(セオラスKG−802、旭化成ケミカルズ株式会社)3.15g、クロスポビドン(ポリプラスドン XL−10、ISP ジャパン株式会社)2.10g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社)0.42g、アスパルテーム(味の素株式会社)1gを秤量し、混合した。
得られる混合末を、オートグラフ(AG−1、島津製作所株式会社)を用い、10mmφ隅角平面杵を用い、打錠圧10(kN/cm)にて打錠して、1錠あたり420mgの錠剤を得た。
【0044】
実施例5
塩酸ピオグリタゾン 347g、オイドラギットE PO(デグサジャパン株式会社)63g、乳糖 221gを秤量し、エタノール 1218g、水 987gに溶解、分散して分散液を得た。
乳糖・結晶セルロース球状顆粒(ノンパレル105T、フロイント産業株式会社)630gを、転動流動層造粒・コーテイング機(MP−10、パウレック株式会社)に仕込み、上記分散液を噴霧し、被覆粒Gを得た。
被覆粒G 12g、マンニトール(Cat No:105980 メルク・ジャパン株式会社)23.3g、結晶セルロース(セオラスKG−802、旭化成ケミカルズ株式会社)3.15g、クロスポビドン(ポリプラスドン XL−10、ISP ジャパン株式会社)2.1g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社)8.4gを秤量し、混合した。
得られる混合末を、オートグラフ(AG−1、島津製作所株式会社)を用い、10mmφ隅角平面杵を用い、打錠圧10(kN/cm)にて打錠して、1錠あたり420mgの錠剤を得た。
得られた錠剤を用いて、pH 2.0(KCl/HCl 緩衝液)、900mL、50rpm(パドル法)の溶出試験を行ったところ、塩酸ピオグリタゾンは、15分で97%溶出した。
【0045】
実施例6
比較例1で得た被覆粒L 500gを、転動流動層造粒・コーテイング機(MP−10、パウレック株式会社)に仕込み、オイドラギットE 100(デグサジャパン株式会社)81.9gを、エタノール 532.5g、水 532.5gに溶解・分散した液を噴霧し、被覆粒Hを得た。
被覆粒H 7.1g、実施例2で得た整粒末B 12.11g、結晶セルロース(セオラスKG−802、旭化成ケミカルズ工業株式会社)1.05g、クロスポビドン(ポリプラスドン XL−10、ISP ジャパン株式会社)0.53g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社)0.21gを秤量し、混合した。
得られる混合末を、オートグラフ(AG−1、島津製作所株式会社)を用い、10mmφ隅角平面杵を用い、打錠圧11(kN/cm)にて打錠して、1錠あたり420mgの錠剤を得た。
【0046】
実施例7
塩酸ピオグリタゾン 347.2g、オイドラギットE PO(デグサジャパン株式会社) 94.5g、乳糖 220.5gを秤量し、エタノール 1218g、水 987gに溶解、分散して分散液を得た。
乳糖・結晶セルロース球状顆粒(ノンパレル105T、フロイント産業株式会社)630gを、転動流動層造粒・コーテイング機(MP−10)に仕込み、上記分散液を、噴霧し、被覆粒Iを得た。
被覆粒I 246.1g、実施例2で得た整粒末B 502.5g、結晶セルロース(セオラスKG−802、旭化成ケミカルズ工業株式会社)42.0g、クロスポビドン(ポリプラスドン XL−10、ISP ジャパン株式会社)21.0g、アスパルテーム(味の素株式会社)20.0g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社)8.4gを秤量し、混合した。
得られる混合末を、打錠機(Cleanpress Correct 19KAWC、菊水製作所株式会社)を用い、10mmφ隅角平面杵を用い、打錠圧9.9(kN/cm)にて打錠して、1錠あたり420mgの錠剤を得た。
得られた錠剤を用いて、pH 2.0(KCl/HCl 緩衝液)、900mL、50rpm(パドル法)の溶出試験を行ったところ、塩酸ピオグリタゾンは、15分で101%溶出した。
また、得られた錠剤を、温度40℃/湿度44%の条件にて、6か月保存した後に、pH 2.0(KCl/HCl 緩衝液)、900mL、50rpm(パドル法)の溶出試験を行ったところ、塩酸ピオグリタゾンは、15分で87%溶出した。
【0047】
実施例8
比較例1で製した被覆粒L 500gを、転動流動層造粒・コーテイング機(MP−10、パウレック株式会社)に仕込み、オイドラギットE100(デグサジャパン株式会社)54.6gを、ポリエチレングリコール(三洋化成工業株式会社)27.3g、エタノール 532.5g、水 532.5gに溶解・分散した液を噴霧し、被覆粒Jを得た。
被覆粒J 7.1g、実施例2で得た整粒末B 12.11g、結晶セルロース(セオラスKG−802、旭化成ケミカルズ工業株式会社)1.05g、クロスポビドン(ポリプラスドン XL−10、ISP ジャパン株式会社)0.53g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社)0.21gを秤量し、混合した。
得られる混合末を、オートグラフ(AG−1、島津製作所株式会社)を用い、10mmφ隅角平面杵を用い、打錠圧11(kN/cm)にて打錠して、1錠あたり420mgの錠剤を得た。
得られた錠剤の硬度を、硬度計(富山産業株式会社)で測定したところ、31.3(N)であった(n=3)。
【0048】
実施例9
比較例1で製した被覆粒L 500gを、転動流動層造粒・コーテイング機(MP−10、パウレック株式会社)に仕込み、オイドラギットE 100(デグサジャパン株式会社)54.6gを、タルク(松村産業株式会社)27.3g、エタノール 532.5g、水 532.5gに溶解・分散した液を噴霧し、被覆粒Kを得た。
被覆粒K 7.1g、実施例2で得た整粒末B 12.11g、結晶セルロース(セオラスKG−802、旭化成工業株式会社)1.05g、クロスポビドン(ポリプラスドンXL−10、ISP ジャパン株式会社)0.53g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社)0.21gを秤量し、混合した。
得られる混合末を、オートグラフ(AG−1、島津製作所株式会社)を用い、10mmφ隅角平面杵を用い、打錠圧11(kN/cm)にて打錠して、1錠あたり420mgの錠剤を得た。
【0049】
実施例10
塩酸ピオグリタゾン 663.2g、オイドラギットE PO(デグサジャパン株式会社) 180g、乳糖(メグレ ジャパン株式会社) 416.8gを秤量し、エタノール 2320g、水 1880gに溶解、分散して分散液を得た。
乳糖・結晶セルロース球状顆粒(ノンパレル105T、フロイント産業株式会社)1200gを、転動流動層造粒・コーテイング機(MP−10、パウレック株式会社)に仕込み、上記分散液を噴霧し、被覆粒Nを得た。前記と同様にして、2倍量の被覆粒Nを得た。
マンニトール(PEARTOL mannitol(商品名)、ロケットジャパン株式会社)3732g、結晶セルロース(セオラスKG-802、旭化成工業株式会社)519.8g、クロスポビドン(コリドン CL−F、BASFジャパン株式会社)346.5g、アスパルテーム(味の素株式会社)165gを、流動層造粒機(FD−5S、パウレック株式会社)に仕込み、マンニトール(PEARTOL mannitol(商品名)、ロケットジャパン株式会社)82.5g、黄色三二酸化鉄(Ansted株式会社) 1.82gを、水 990gに溶解、分散させた液で造粒し、造粒末Pを得た。前記と同様にして、2倍量の造粒末Pを得た。
被覆粒N 2706g、造粒末P 6464g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社)70.4gを混合し、混合末Qを得た。
得られた混合末Qを、打錠機(アクエリアス、菊水製作所)を用い、10mmφ隅角平面杵を用いて、打錠圧 7.4(kN/cm)にて打錠し、1錠あたり420mgの錠剤を得た。
得られた錠剤を用いて、pH 2.0(KCl/HCl 緩衝液)、900mL、50rpm(パドル法)の溶出試験を行ったところ、塩酸ピオグリタゾンは、15分で100%溶出した。
【0050】
実施例11
実施例10で得た混合末Qを、オートグラフ(AG−1、島津製作所株式会社)を用い、8mmφ隅角平面杵(割線あり)を用い、打錠圧5(kN/cm)にて打錠して、1錠あたり210mgの錠剤を得た。
【0051】
実施例12
実施例10で得た混合末Qを、オートグラフ(AG−1、島津製作所株式会社)を用い、長径14mm、短径9mmの平面杵を用い、打錠圧13(kN/cm)にて打錠して、1錠あたり630mgの錠剤を得た。
【0052】
試験例1
実施例で得られた錠剤の口腔内崩壊時間を測定した。
なお、錠剤を健常人の口の中に含んだ後、全く噛まずに溶けるまでの時間を、口腔内崩壊時間とした(n=1または3)。結果を表1に示す。表中、実施例1〜5および7の口腔内崩壊時間は、n=1の値であり、実施例6および8〜10の口腔内崩壊時間は、n=3の平均値である。
【0053】
【表1】

【0054】
試験例2
比較例および実施例で得られた錠剤について、健常人による官能試験により、ピオグリタゾンまたはその塩の不快な味(苦味)を評価した。
なお、苦味は、以下の基準で評価した。
1.苦味を感じない
2.ほとんど苦味を感じない
3.苦味を感じるが我慢できる
4.苦味を有し、口に入れているのが耐えられない
結果を表2に示す。表中、比較例2、実施例1〜5および7の苦味は、n=1の値であり、比較例1、実施例6および8〜10の苦味は、n=3の平均値である。
【0055】
【表2】

【0056】
表2から明らかなように、比較例1および2の錠剤と比較して、本発明の錠剤では、ピオグリタゾンまたはその塩の不快な味(苦味)が顕著に隠蔽された。すなわち、ピオグリタゾンまたはその塩と酸可溶性ポリマーを組み合わせて用いることにより、該ピオグリタゾンまたはその塩の不快な味(苦味)が顕著に隠蔽された。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の固形製剤は、ピオグリタゾンまたはその塩の不快な味が十分に隠蔽されており、非常に服用しやすいため、患者の服用コンプライアンスの高い医薬品として有用である。また、本発明の固形製剤が口腔内速崩壊性固形製剤である場合、該口腔内速崩壊性固形製剤は、ピオグリタゾンまたはその塩の不快な味が十分に隠蔽されているとともに、優れた口腔内崩壊性を有するため、薬剤の嚥下が困難な患者、高齢者あるいは小児の患者などの患者の服用コンプライアンスの高い医薬品として極めて有用である。さらに、該口腔内速崩壊性固形製剤は、適度な製剤強度、長期間にわたる保存安定性などの優れた特性を有する。
【0058】
本出願は、日本で出願された特願2006−124456を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
賦形剤からなる核粒子をピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーで被覆した粒を含有する固形製剤。
【請求項2】
酸可溶性ポリマーがアミノアルキルメタクリレートコポリマーEまたはポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートである請求項1記載の製剤。
【請求項3】
ピオグリタゾンまたはその塩が塩酸ピオグリタゾンである請求項1記載の製剤。
【請求項4】
口腔内速崩壊性固形製剤である請求項1記載の製剤。
【請求項5】
賦形剤からなる核粒子をピオグリタゾンまたはその塩を含有する被覆層で被覆した粒を、酸可溶性ポリマーを含有する被覆層で被覆した粒を含有する請求項1記載の製剤。
【請求項6】
賦形剤からなる核粒子をピオグリタゾンまたはその塩および酸可溶性ポリマーを含有する被覆層で被覆した粒を含有する請求項1記載の製剤。
【請求項7】
さらに糖類を含有する請求項1記載の製剤。
【請求項8】
さらに崩壊剤を含有する請求項1記載の製剤。
【請求項9】
さらに結晶セルロースを含有する請求項1記載の製剤。
【請求項10】
さらに甘味料を含有する請求項1記載の製剤。

【公表番号】特表2009−534294(P2009−534294A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550095(P2008−550095)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際出願番号】PCT/JP2007/059430
【国際公開番号】WO2007/126136
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】