説明

固形製剤

【課題】生薬エキス末または漢方エキス末を含有し、優れた崩壊性を有する固形製剤を提供する。
【解決手段】a)生薬エキス末または漢方エキス末、b)糖類、c)結晶セルロース、d)崩壊剤を含み、
a)が50〜90質量部、b)とc)を合わせて5〜50質量部、d)が0.1〜15質量部であり、
b):c)の質量比が4:6〜9:1であることを特徴とする固形製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬品、健康食品あるいは栄養補助食品として用いられ、生薬エキス末または漢方エキス末を含有し、良好な崩壊性を示す固形製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生薬エキス末や漢方エキス末は、生薬や漢方薬を抽出し、濃縮及び乾燥して得られたものである。一般に、このようなエキス末はべたつきがあり、吸湿しやすく、粉体の流動性が悪いため、非常に取り扱いが困難である。
【0003】
そのため、生薬エキス末や漢方エキス末を含む錠剤などの固形製剤の製造には、湿式打錠法が一般的に用いられてきた。しかし、湿式打錠法はエキス末の造粒工程を必要とするため、原料粉体を混合し、そのまま圧縮成形する直接打錠法に比べ、多くの工程とコストを要するという問題があった。
【0004】
直接打錠法は、生産コスト削減に魅力的な方法であるが、直接打錠法では原料の物性が錠剤の物性に影響しやすいため、生薬エキス末や漢方エキス末のべたつきが崩壊遅延を引き起こし、日本薬局方収載の崩壊時間の要件を満たす事が困難であった。
【0005】
従来、崩壊性の悪い固形製剤に対して、製剤処方中の添加剤、例えば崩壊剤や界面活性剤等を添加し、崩壊性や溶出性を向上させる方法が採用されてきた。しかし、生薬や漢方薬は一日あたりの服用量が多いもので6000mgと、合成医薬品の有効成分とは比較にならないほど服用量が多く、服用感を向上させる目的で、賦形剤、崩壊剤等の添加剤の量を少なく抑える必要がある。そのため、実用的な錠剤硬度、錠剤摩損度、崩壊時間の要件を満たす錠剤を得ることが非常に困難であった。
上記の問題に対して、様々な検討がなされている。
【0006】
特許文献1には、崩壊性および溶出性の改善を目的として、漢方エキスと繊維素グリコール酸、炭酸水素ナトリウムを含む錠剤組成物の発明が開示されている。しかし、炭酸水素ナトリウムはアルカリ性物質であるため、エキスに含まれる薬効成分と反応することが問題である。
【0007】
特許文献2には、マンニトール、他の糖類、無機賦形剤、崩壊剤を含む錠剤用の組成物の発明、及び薬効成分をさらに含む錠剤の発明が開示されている。
【0008】
特許文献3には、活性成分、糖類、セルロース類、崩壊剤を含む固形製剤の発明が開示されている。
【0009】
特許文献4には、トレハロースとセルロースを含む固形製剤用添加物の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2004/006945号パンフレット
【特許文献2】WO2005/037254号パンフレット
【特許文献3】特開2006−70046号公報
【特許文献4】特開2001−131091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献2〜4の実施例に示されているのは、強いべたつきを有しない薬物及び活性成分である。例えば、特許文献2の実施例で挙げられているアセトアミノフェンやアスコルビン酸、特許文献3の実施例で挙げられている塩酸マニジピン、ボグリボース、カンデサルタンシレキセチル、塩酸ピオグリタゾン等、特許文献4の実施例で挙げられているアスコルビン酸などは、べたつきがない。
【0012】
べたつかない薬物においては、薬物自体の崩壊性が良好であるため、固形製剤の崩壊が遅延することはない。しかし、べたつきを有する薬物においては、べたつきが固形製剤の崩壊を遅延させるため、適度な崩壊時間を有する固形製剤は今まで得られていなかった。
【0013】
本発明は、生薬エキス末または漢方エキス末を含有し、実用的な硬度および摩損度で、べたつかず、優れた崩壊性を有する固形製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、固形製剤を製造するうえで使用される成分として、生薬エキス末または漢方エキス末、糖質、結晶セルロース、崩壊剤を含む固形製剤とすることにより、硬度、崩壊、耐摩損性のバランスが良く、べたつかない固形製剤を得られることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
【0015】
(1)a)生薬エキス末または漢方エキス末、b)糖類、c)結晶セルロース、d)崩壊剤を含み、
a)が50〜90質量部、b)とc)を合わせて5〜50質量部、d)が0.1〜15質量部であり、
b):c)の質量比が4:6〜9:1であることを特徴とする固形製剤。
(2)a)生薬エキス末または漢方エキス末が、「セオラスPH−101」(旭化成ケミカルズ製)、「AVICEL、PH−101」(FMC社製)、「EMCOCEL、50M」(JRS社製)、「VIVAPOR、101P」(JRS社製)、「COMPRECEL、101QD」(明台社製)から選ばれる結晶セルロースとの等量混合物を圧縮して得られる錠剤硬度80Nの錠剤の崩壊時間が5〜60分の生薬エキス末または漢方エキス末であることを特徴とする上記(1)に記載の固形製剤。
(3)糖類がトレハロースであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の固形製剤。
(4)崩壊剤がクロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、アルファー化澱粉、部分アルファー化澱粉のいずれか1種以上であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の固形製剤。
(5)崩壊剤がクロスカルメロースナトリウムと部分アルファー化澱粉であり、クロスカルメロースナトリウムと部分アルファー化澱粉の質量比が1/3〜3/1であることを特徴とする上記(4)記載の固形製剤。
(6)a)生薬エキス末又は漢方エキス末が、防風通聖散である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の固形製剤。
(7)固形製剤に対して、a)を50〜90質量%含むことを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の固形製剤。
(8)c)結晶セルロースが、平均重合度が130〜450、75μm以下の粒子の平均L/Dが1.2〜4.5、平均粒子径が20〜250μm、見掛け比容積が2〜7cm/g、見掛けタッピング比容積が2.4〜4.5cm/g、安息角が55°以下の結晶セルロースであることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の固形製剤。
(9)c)結晶セルロースが、セルロース一次粒子が凝集してなる二次凝集構造を有し、粒子内細孔容積が0.265cm/g〜2.625cm/gであり、I型結晶を含有し、平均粒子径が30μmを超え250μm以下、比表面積が0.1m/g以上20m/g未満、安息角が25°以上44°未満の結晶セルロースであることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の固形製剤。
(10)a)「セオラスPH−101」(旭化成ケミカルズ製)、「AVICEL、PH−101」(FMC社製)、「EMCOCEL、50M」(JRS社製)、「VIVAPOR、101P」(JRS社製)、「COMPRECEL、101QD」(明台社製)から選ばれる結晶セルロースとの等量混合物を圧縮して得られる錠剤硬度80Nの錠剤の崩壊時間が5〜60分である生薬エキス末または漢方エキス末と、b)糖類と、c)平均重合度が130〜450、75μm以下の粒子の平均L/Dが1.2〜4.5、平均粒子径が20〜250μm、見掛け比容積が2〜7cm/g、見掛けタッピング比容積が2.4〜4.5cm/g、安息角が55°以下である結晶セルロースと、d)崩壊剤と、を混合し、直接打錠することで、固形製剤を製造する方法。
(11)c)結晶セルロースが、セルロース一次粒子が凝集してなる二次凝集構造を有し、粒子内細孔容積が0.265cm/g〜2.625cm/gであり、I型結晶を含有し、平均粒子径が30μmを超え250μm以下、比表面積が0.1m/g以上20m/g未満、安息角が25°以上44°未満であることを特徴とする上記(10)記載の固形製剤を製造する方法。
【発明の効果】
【0016】
生薬エキス末または漢方エキス末を含有し、実用的な硬度および摩損度で、優れた崩壊性を有し、べたつかない固形製剤を提供できる。具体的には、硬度が70〜300N、崩壊時間が2〜20分、摩損度が0.5%以下であり、べたつかない固形製剤が簡便に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0018】
<概要>
本発明は、a)生薬エキス末又は漢方エキス末、b)糖類、c)結晶セルロース、d)崩壊剤を、特定量比で含む固形製剤である。
【0019】
<エキス成分>
一般的に、生薬エキス末または漢方エキス末(エキス末)には、べたつきが有るものと無いものがある。本実施形態においては、べたつきがあるエキス末を好適な対象としている。ここで、べたつきがあるとは、指で粉体に触れた時に粉体が指に張り付くことをいう。このべたつきの度合いは、錠剤の崩壊時間と密接に関係しており、べたつきの強いものほど、錠剤の崩壊時間が遅延する傾向がある。
【0020】
本実施形態で好適な、べたつきがある生薬エキス末や漢方エキス末としては、測定用結晶セルロースである「セオラスPH−101」(旭化成ケミカルズ製)、「AVICEL、PH−101」(FMC社製)、「EMCOCEL、50M」(JRS社製)、「VIVAPOR、101P」(JRS社製)、「COMPRECEL、101QD」(明台社製)から選ばれる結晶セルロースとの等量混合物を圧縮して得られる錠剤硬度80Nの錠剤の崩壊時間が、5〜60分となるものが挙げられる。ここで、上記した結晶セルロースは、市販品の結晶セルロースにおいて、物性がほぼ共通している結晶セルロースである。エキス末のべたつきの有無の具体的な評価方法としては、以下の通りである。
【0021】
エキス末と測定用結晶セルロースの「セオラスPH−101」(商品名)(旭化成ケミカルズ)を1:1で混合し、単発打錠機(MODEL−1321DW;アイコーエンジニアリング)で、錠剤(直径9mmΦ、13R、重量300mg)の硬度が80Nとなるように打錠し、日本薬局方収載の崩壊試験(純水、ディスクなし)により、崩壊時間を測定し、崩壊時間が5分以上のものを、べたつきにより崩壊が遅延する生薬または漢方エキス末と判定した。
【0022】
例として、本実施形態においてべたつきがあるエキス末である防風通聖散とギムネマの測定結果及び特許文献2〜4に記載されている薬物の測定結果を表1に示す。また、べたつきがあるエキス末の具体例を、下記の表2、3に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】



【0025】
【表3】

【0026】
<糖類>
本実施形態で使用される糖類は、白糖、ブドウ糖、乳糖、果糖、マルトース、トレハロース、マンニトールやソルビトールなどが挙げられる。特に水溶性が高い糖類が好ましく、トレハロース、マンニトールやソルビトールが好ましい。成形性が高く、吸湿性が低く、取扱い易いことから、トレハロースの使用が最も好ましい。トレハロースは、グルコースがα−1,1結合した、非還元性二糖類である。白色の結晶又は非結晶性の粉末が好ましい。市販品としてはトレハロースG、SG(林原生物化学研究所)、トレハロースP、G(旭化成ケミカルズ)などが挙げられる。
【0027】
<結晶セルロース>
本実施形態で使用される結晶セルロースは、白色の結晶性粉末であり、繊維性植物からパルプとして得たα−セルロースを鉱酸で部分的に解重合し、精製したものである。固形製剤の成形性を高め、固形製剤の摩損を低減させるために結晶セルロースが有効である。
【0028】
結晶セルロースとしては、平均重合度が130〜450、75μm以下の粒子の平均L/Dが1.2〜4.5、平均粒子径が20〜250μm、見掛け比容積が2〜7cm/g、見掛けタッピング比容積が2.4〜4.5cm/g、安息角が55°以下であるものが好ましい。より好ましくは、平均L/Dが2〜4.5、見掛け比容積が4〜7cm/gである。
【0029】
さらに好ましくは、セルロース一次粒子が凝集してなる二次凝集構造を有し、粒子内細孔容積が0.265cm/g〜2.625cm/gであり、I型結晶を含有し、平均粒子径が30μmを超え250μm以下、比表面積が0.1m/g以上20m/g未満、平均重合度が130−250、安息角が25°以上44°未満である結晶セルロースである。
【0030】
市販品としては、「セオラスPH−101、PH−102、PH−200、PH−301、PH−302、KG−802、KG−1000、UF−702、UF−711」(商品名)(旭化成ケミカルズ)を用いることができる。「セオラスUF−702、UF−711、KG−802」(商品名)(旭化成ケミカルズ)を用いることが好ましく、これを用いることで粉体の流動性や錠剤の成形性に効果的である。「セオラスUF−702、UF−711、KG−802」(商品名)(旭化成ケミカルズ)の物性を表4に示す。より好ましくは、「セオラスUF−702、UF−711」である。
【0031】
【表4】

【0032】
<崩壊剤>
本実施形態で使用される崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、アルファー化澱粉、部分アルファー化澱粉、クロスカルメロースカルシウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチが挙げられる。これらは、2種以上組み合わせても良い。好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、アルファー化澱粉、部分アルファー化澱粉である。また、クロスカルメロースナトリウムと部分アルファー化澱粉を用いる場合、これらを単独で使用するよりも、これらを1/3〜3/1の質量比で混合して併用すると、崩壊性が向上するため好ましい。
【0033】
<各成分の配合量>
本実施形態の固形製剤は、a)生薬エキス末又は漢方エキス末を50〜90質量部、b)糖類とc)結晶セルロースを合わせて5〜50質量部、d)崩壊剤を0.1〜15質量部含む。また、b):c)の質量比が4:6〜9:1である。
【0034】
本実施形態で使用される生薬エキス末または漢方エキス末の配合量は、50〜90質量部である。生薬や漢方薬は一日に服用する量が多く、多いものでは6000mgというものもある。そのため配合量を55質量部未満にすると、一日あたりの服用量を満たすために、摂取する錠剤の数及び量が多くなり、服用感が悪化する。一方、配合量が90質量部を超えると、添加剤の量を減らす必要があり、べたつきによる崩壊遅延を抑制できなくなる。好ましくは60〜80質量部である。
【0035】
本実施形態で使用される糖類と結晶セルロースの配合量は、合計5〜50質量部である。
【0036】
本実施形態で使用される崩壊剤の配合量は、錠剤の崩壊性を向上させるために0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜5質量部である。配合量が0.1質量部未満の時は、崩壊剤の効果が得られにくい。一方、医薬品添加剤では最大使用量に制限があるため、15質量部を超える添加は実用に適さない。
【0037】
本実施形態では、崩壊性と摩損度のバランスをとるために、b)糖類:c)結晶セルロースの質量比が4:6〜9:1である。結晶セルロースの質量比が4:6よりも多くなると、錠剤中での結晶セルロースの絡まりあいが強くなり、崩壊を遅延させてしまう。一方9:1未満にすると、錠剤の成形性が低下し、摩損しやすくなり実用に適さない。好ましくは5:5〜9:1、より好ましくは7:3〜9:1、さらに好ましくは7:3〜8:2である。
【0038】
また、固形製剤に対して、a)生薬エキス末又は漢方エキス末を50〜90質量%含むことが好ましい。より好ましくは、55質量%〜85質量%、さらに好ましくは、60質
量%〜80質量%である。
【0039】
<添加剤>
本実施形態の固形製剤は、上記したa)生薬エキス末または漢方エキス末、b)糖類、c)結晶セルロース、d)崩壊剤以外の成分を含んでも良い。
そのような成分としては他の賦形剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、矯味剤、香料、着色料、甘味剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0040】
賦形剤としては、キシリトール、マルチトール、ソルビトール等の糖アルコール類、コメ澱粉、小麦澱粉、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン等のデンプン類、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、無水ケイ酸、含水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム等の無機類等が挙げられる。
過去
【0041】
結合剤としては、ゼラチン、プルラン、カラギーナン、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム等の水溶性多糖類、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類、アルファー化デンプン、デンプン糊等のデンプン類、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等の合成高分子類等が挙げられる。
流動化剤としては含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
【0042】
滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられる。
矯味剤としてはグルタミン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、l−メントールなどが挙げられる。
香料としてはオレンジ、バニラ、ストロベリー、ヨーグルト、メントール等が挙げられる。
【0043】
着色剤としては食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号等の食用色素、リボフラビンなどが挙げられる。
【0044】
甘味剤としてはアスパルテーム、サッカリン、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア等が挙げられる。
【0045】
界面活性剤としては、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0046】
<製造方法>
次に混合粉体から固形製剤を得る方法について説明する。
直接打錠法では、上述の生薬エキス末または漢方エキス末、糖類、結晶セルロース、崩壊剤を含む粉体を一般的な方法で混合し、打錠機に投入し、圧縮成形することで、簡便に固形製剤が得られる。
【0047】
混合機としては一般的なタンブラー混合機、V型混合機などを用いることができるが、少量であれば、混合粉体をポリ袋入れ、混合しても構わない。
【0048】
打錠機としては、一般的にロータリー打錠機(「リブラ2」(商品名)、「クリーンプレス・コレクト12HUK」(商品名);菊水製作所)を挙げることができる。粉末を臼に供給するフィーダー部は、粉末の流動性や顆粒の大きさにより攪拌フィーダーやオープンフィーダーなどフィーダーの種類を選択することができる。また、実験室規模の実験では、一般的な単発打錠機(MODEL−1321DW;アイコーエンジニアリング、Tab Flex(商品名);岡田精工)を使用することができる。
【0049】
<固形製剤の形態>
固形製剤とは、粉体混合物を圧縮成形して得られたものであり、具体的には、錠剤、顆粒剤、丸剤等が挙げられる。本実施形態において、好ましくは錠剤である。
【実施例】
【0050】
本発明を実施例に基づいて説明する。
物性の測定方法及び条件は以下の通りである。
【0051】
<結晶セルロースの重合度>
第15改正日本薬局方結晶セルロースの確認試験(3)を用いた。
【0052】
<結晶セルロースの見掛けタッピング比容積(cm/g)>
粉体30gを100cmのガラス製メスシリンダーに疎充填し、ゴム板を敷いた衝撃の低い台の上で、手でタッピングを行う。タッピングは数cmの高さから台に垂直に落とすようにして行い、粒子層の圧密が止まるまで行う。タッピング終了後、粒子層の容積を読み取り、30gで除する。3回測定し、その平均値を求めた。
【0053】
<結晶セルロースの比表面積(m/g)>
マイクロメリティクス(株)製、商品名「TriSTAR」を用い、吸着ガスとして窒素を使用しBET法により測定した。各結晶セルロース粉体を約1gずつセルに仕込み測定した。測定に用いた各結晶セルロース粉体は、110℃で3時間減圧乾燥したものを使用した。
【0054】
<結晶セルロースの粒子内細孔容積(cm/g)>
島津製作所(株)製「オートポア9520型」(商品名)を用い、水銀ポロシメトリーにより細孔分布を求めた。測定に用いた各結晶セルロース粉体は、室温で15時間減圧乾燥したものを使用した。初期圧20kPaの測定によって得られた細孔分布から、細孔径0.1〜15μmの範囲にある明確なピーク部分を粒子内細孔容積として計算した。
【0055】
<結晶セルロースの見掛け比容積(cm/g)>
100cmのメスシリンダーを使用し、各結晶セルロース粉体を定量フィーダーなどを用いて2〜3分かけて粗充填し、粉体層上面を筆のような軟らかい刷毛で水平にならし、その容積を読み取り、これを粉体試料の重量で割った値を見かけ比容積とした。粉体の重量は、容積が70〜100cmになるように適宜設定した。
【0056】
<SEMによる結晶セルロース粒子表面及び細孔の観察及び評価>
各セルロース試料を、カーボンテープを貼った試料台に載せ、白金-パラジウムを真空蒸着(この際の蒸着膜の膜厚は20nm以下)し、日本電子(製)「JSM−5510LV」(商品名)を使用し、加速電圧6kV、倍率250〜1500倍で観察した場合に、一次粒子が連続して凝集し、一次粒子の境界が明確であり、確認できる細孔の中央細孔径が0.1μm以上である一次粒子が凝集した二次凝集粒子構造を有するものを○とし、それ以外の構造を取るものを×とした。
【0057】
<安息角(°)>
杉原式安息角測定器(スリットサイズ奥行10×幅50×高さ14mm、幅50mmの位置に分度器を設置)を使用し、定量フィーダーを使用し、粉体を3g/分でスリットに投下した際の動的自流動性を測定した。装置底部と粉体の形成層の角度が安息角である。
【0058】
<錠剤硬度>
シュロインゲル硬度計で、錠剤を破壊するのに必要な荷重を求め、錠剤10個の平均値を算出した。錠剤硬度70〜300Nが実用範囲内であり、良好な錠剤硬度である。
【0059】
<錠剤の崩壊試験>
日本薬局方収載の一般試験法「崩壊試験法」に従って実施した。試験液には水を用い、ディスクを使用しない方法で、錠剤の崩壊時間を測定し、錠剤6個の平均値を算出した。崩壊時間2〜20分が実用範囲内であり、良好な崩壊時間である。
【0060】
<錠剤の摩損度試験>
第15改正日本薬局方、製剤総則に従って実施した。一定速度の25rpmで回転する円筒中に錠剤を20錠入れ、中板により錠剤の落下を繰り返した。8分間回転させ、円筒内の錠剤を取り出した。破損分離した粉及び小粒子を篩別除去して質量を測定し、減少した質量をもとの質量に対する百分率で示した。摩損度0.5%以下が実用範囲内であり、良好な摩損度である。
【0061】
<錠剤の重量CV>
打錠(ロータリー打錠)により得られた錠剤10錠の重量を測定し、平均重量と、重量の標準偏差を求め、(標準偏差/平均重量)×100(%)で定義される変動係数を重量CVという。重量CVが小さいほど、重量のばらつきが小さいことを意味する。重量CV1%以下が実用範囲内であり、良好な重量CVである。
【0062】
[実施例1]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):330.0g、糖類としてトレハロースP(旭化成ケミカルズ):237.6g、結晶セルロースとしてセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ):26.4g、崩壊剤としてクロスポビドンであるポリプラスドンXL−10(ISPジャパン):6.0gをポリ袋に入れ、手で3分間振り混ぜ、さらに滑沢剤として植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):3.0gを加え、30秒混合した。この混合粉体をロータリー打錠機(リブラ2;菊水製作所)に仕込み、打錠圧12kNで重量280mg、直径8.5mmΦ、12Rの錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度119N、崩壊時間9.3分、摩損度0.37%であり、重量CV0.49%であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0063】
[実施例2]
トレハロースP(旭化成ケミカルズ):105.6g、結晶セルロースとしてセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ):158.4gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度127N、崩壊時間16.5分、摩損度0.27%であり、重量CV0.40%であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0064】
[実施例3]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):354.0g、トレハロースP(旭化成ケミカルズ):216.0g、結晶セルロースとしてセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ):24.0g、ポリプラスドンXL−10(ISPジャパン):6.0gをポリ袋に入れ、手で3分間振り混ぜ、さらに植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):3.0gを加え、30秒混合した。この混合粉体をロータリー打錠機(リブラ2;菊水製作所)に仕込み、打錠圧12kNで重量280mg、直径8.5mmΦ、12Rの錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度117N、崩壊時間9.8分、摩損度0.38%であり、重量CV0.52%であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0065】
[実施例4]
トレハロースP(旭化成ケミカルズ):168.0g、結晶セルロースとしてセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ):72.0gに変更したこと以外は、実施例3と同様にして、錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度123N、崩壊時間12.4分、摩損度0.32%であり、重量CV0.48%であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0066】
[実施例5]
トレハロースP(旭化成ケミカルズ):96.0g、結晶セルロースとしてセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ):144.0gに変更したこと以外は、実施例3と同様にして、錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度127N、崩壊時間17.8分、摩損度0.27%であり、重量CV0.43%であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0067】
[実施例6]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):390.0g、トレハロースP(旭化成ケミカルズ):162.0g、結晶セルロースとしてセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ):18.0g、ポリプラスドンXL−10(ISPジャパン):30.0gをポリ袋に入れ、手で3分間振り混ぜ、さらに植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):3.0gを加え、30秒混合した。この混合粉体をロータリー打錠機(リブラ2;菊水製作所)に仕込み、打錠圧12kNで重量280mg、直径8.5mmΦ、12Rの錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度116N、崩壊時間11.8分、摩損度0.41%であり、重量CV0.98%であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0068】
[実施例7]
トレハロースP(旭化成ケミカルズ):72.0g、結晶セルロースとしてセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ):108.0gに変更したこと以外は、実施例6と同様にして、錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度123N、崩壊時間18.3分、摩損度0.32%であり、重量CV0.91%であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0069】
[比較例1]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):354.0g、トレハロースP(旭化成ケミカルズ):240.0g、ポリプラスドンXL−10(ISPジャパン):6.0gをポリ袋に入れ、手で3分間振り混ぜ、さらに植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):3.0gを加え、30秒混合した。この混合粉体をロータリー打錠機(リブラ2;菊水製作所)に仕込み、打錠圧12kNで重量280mg、直径8.5mmΦ、12Rの錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度110N、崩壊時間9.5分、摩損度0.55%であり、重量CV0.56%であり、摩損度が実用範囲内にならなかった。
【0070】
[比較例2]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):354.0g、トレハロースP(旭化成ケミカルズ):72.0g、結晶セルロースとしてセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ):168.0g、ポリプラスドンXL−10(ISPジャパン):6.0gをポリ袋に入れ、手で3分間振り混ぜ、さらに植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):3.0gを加え、30秒混合した。この混合粉体をロータリー打錠機(リブラ2;菊水製作所)に仕込み、打錠圧12kNで重量280mg、直径8.5mmΦ、12Rの錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度132N、崩壊時間20.4分、摩損度0.24%であり、重量CV0.42%であり、崩壊性が実用範囲内にならなかった。
【0071】
[比較例3]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):390.0g、トレハロースP(旭化成ケミカルズ):150.0g、ポリプラスドンXL−10(ISPジャパン):60.0gをポリ袋に入れ、手で3分間振り混ぜ、さらに植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):3.0gを加え、30秒混合した。この混合粉体をロータリー打錠機(リブラ2;菊水製作所)に仕込み、打錠圧12kNで重量280mg、直径8.5mmΦ、12Rの錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度114N、崩壊時間10.6分、摩損度0.58%であり、重量CV0.99%であり、摩損度が実用範囲内にならなかった。
【0072】
[比較例4]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):390.0g、結晶セルロースとしてセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ):150.0g、ポリプラスドンXL−10(ISPジャパン):60.0gをポリ袋に入れ、手で3分間振り混ぜ、さらに植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):3.0gを加え、30秒混合した。この混合粉体をロータリー打錠機(リブラ2;菊水製作所)に仕込み、打錠圧12kNで重量280mg、直径8.5mmΦ、12Rの錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度131N、崩壊時間22.0分、摩損度0.26%であり、重量CV0.85%であり、崩壊性が実用範囲内にならなかった。
【0073】
[比較例5]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):420.0g、トレハロースP(旭化成ケミカルズ):126.0g、結晶セルロースとしてセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ):54.0gをポリ袋に入れ、手で3分間振り混ぜ、さらに植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):3.0gを加え、30秒混合した。この混合粉体をロータリー打錠機(リブラ2;菊水製作所)に仕込み、打錠圧12kNで重量280mg、直径8.5mmΦ、12Rの錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度121N、崩壊時間20.8分、摩損度0.34%であり、重量CV0.96%であり、崩壊性が実用範囲内にならなかった。
実施例1〜10及び比較例1〜5を表5に示す。
【0074】
【表5】

【0075】
[実施例8]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):534.0g、トレハロースP(旭化成ケミカルズ):54.0g、結晶セルロースとしてセオラスUF−711(旭化成ケミカルズ):6.0g、ポリプラスドンXL−10(ISPジャパン):6.0gをポリ袋に入れ、手で3分間振り混ぜ、さらに植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):3.0gを加え、30秒混合した。この混合粉体をロータリー打錠機(リブラ2;菊水製作所)に仕込み、打錠圧12kNで重量280mg、直径8.5mmΦ、12Rの錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度116N、崩壊時間17.1分、摩損度0.41%であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0076】
[実施例9]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):534.0g、トレハロースP(旭化成ケミカルズ):24.0g、結晶セルロースとしてセオラスUF−711(旭化成ケミカルズ):36.0g、ポリプラスドンXL−10(ISPジャパン):6.0gをポリ袋に入れ、手で3分間振り混ぜ、さらに植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):3.0gを加え、30秒混合した。この混合粉体をロータリー打錠機(リブラ2;菊水製作所)に仕込み、打錠圧12kNで重量280mg、直径8.5mmΦ、12Rの錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度117N、崩壊時間19.8分、摩損度0.38%であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0077】
[実施例10]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):480.0g、トレハロースP(旭化成ケミカルズ):24.0g、結晶セルロースとしてセオラスUF−711(旭化成ケミカルズ):36.0g、ポリプラスドンXL−10(ISPジャパン):60.0gをポリ袋に入れ、手で3分間振り混ぜ、さらに植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):3.0gを加え、30秒混合した。この混合粉体をロータリー打錠機(リブラ2;菊水製作所)に仕込み、打錠圧12kNで重量280mg、直径8.5mmΦ、12Rの錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度120N、崩壊時間19.1分、摩損度0.36%であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0078】
【表6】



【0079】
実施例8〜10は、エキス末が非常に多い錠剤の実施例である。通常、べたつきがあるエキス末の量が多いと、錠剤の崩壊時間が長くなる。しかし、実施例8〜10では、崩壊時間が20分以内であり、崩壊性が向上していることがわかる。加えて、錠剤の摩損度も0.5%以下と低いことがわかる。
【0080】
[実施例11]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):390.0g、トレハロースP(旭化成ケミカルズ):126.0g、結晶セルロースとしてセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ):54.0g、ポリプラスドンXL−10(ISPジャパン):30.0gをポリ袋に入れ、手で3分間振り混ぜ、さらに植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):3.0gを加え、30秒混合した。この混合粉体をロータリー打錠機(リブラ2;菊水製作所)に仕込み、打錠圧12kNで重量280mg、直径8.5mmΦ、12Rの錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度120N、崩壊時間14.1分、摩損度0.36%、重量CV0.94であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0081】
[実施例12]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):390.0g、トレハロースP(旭化成ケミカルズ):126.0g、結晶セルロースとしてセオラスUF−711(旭化成ケミカルズ):54.0g、ポリプラスドンXL−10(ISPジャパン):30.0gをポリ袋に入れ、手で3分間振り混ぜ、さらに植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):3.0gを加え、30秒混合した。この混合粉体をロータリー打錠機(リブラ2;菊水製作所)に仕込み、打錠圧12kNで重量280mg、直径8.5mmΦ、12Rの錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度124N、崩壊時間16.1分、摩損度0.32%、重量CV0.61であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0082】
[実施例13]
結晶セルロースとして、セオラスKG−802(旭化成ケミカルズ)に変更したこと以外は、実施例12と同様にして、錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度127N、崩壊時間16.3分、摩損度0.26%、重量CV0.65であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0083】
[実施例14]
崩壊剤として、アルファー化澱粉であるSWELSTAR PD−1(旭化成ケミカルズ)に変更したこと以外は、実施例12と同様にして、錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度123N、崩壊時間16.5分、摩損度0.32%、重量CV0.61であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0084】
[実施例15]
崩壊剤として、クロスカルメロースナトリウムであるキッコレートND−200(旭化成ケミカルズ)に変更したこと以外は、実施例12と同様にして、錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度124N、崩壊時間16.4分、摩損度0.31%、重量CV0.62であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0085】
[実施例16]
崩壊剤として、クロスカルメロースナトリウムであるキッコレートND−200(旭化成ケミカルズ):15.0g及び部分アルファー化澱粉であるPCS PC−10(旭化成ケミカルズ):15.0g(クロスカルメロースナトリウム:部分アルファー化澱粉=1:1)に変更したこと以外は、実施例12と同様にして、錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度123N、崩壊時間13.1分、摩損度0.32%、重量CV0.6であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0086】
[実施例17]
漢方エキス末である防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業)から、生薬エキス末であるギムネマエキスパウダーMG(丸善製薬株式会社)に変更したこと以外は、実施例12と同様にして、錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度120N、崩壊時間15.5分、摩損度0.36%、重量CV0.58であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
【0087】
[実施例18]
漢方エキス末である防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業)から、紫胡桂枝湯乾燥エキス−F(アルプス薬品工業)に変更したこと以外は、実施例12と同様にして、錠剤を作製した。打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度122N、崩壊時間19.5分、摩損度0.33%、重量CV0.65であり、硬度、崩壊性、摩損度ともに良好であった。
実施例11〜18の結果を表7に示す。
【0088】
【表7】


【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は医薬品、健康食品あるいは栄養補助食品として用いられる生薬エキス末または漢方エキス末を含有する固形製剤に関する。特に、直接打錠方法によって、製造される固形製剤において有効である。本発明によれば、特に、生薬エキス末または漢方エキス末のべたつきにより、錠剤の崩壊遅延が問題となり、錠剤化が困難であった生薬または漢方薬に対して、実用的な錠剤硬度および摩損度、崩壊性のバランスが取れた錠剤を簡便な方法で得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)生薬エキス末または漢方エキス末、b)糖類、c)結晶セルロース、d)崩壊剤を含み、
a)が50〜90質量部、b)とc)を合わせて5〜50質量部、d)が0.1〜15質量部であり、
b):c)の質量比が4:6〜9:1であることを特徴とする固形製剤。
【請求項2】
a)生薬エキス末または漢方エキス末が、「セオラスPH−101」(旭化成ケミカルズ製)、「AVICEL、PH−101」(FMC社製)、「EMCOCEL、50M」(JRS社製)、「VIVAPOR、101P」(JRS社製)、「COMPRECEL、101QD」(明台社製)から選ばれる結晶セルロースとの等量混合物を圧縮して得られる錠剤硬度80Nの錠剤の崩壊時間が5〜60分の生薬エキス末または漢方エキス末であることを特徴とする請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
糖類がトレハロースであることを特徴とする請求項1又は2記載の固形製剤。
【請求項4】
崩壊剤がクロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、アルファー化澱粉、部分アルファー化澱粉のいずれか1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項5】
崩壊剤がクロスカルメロースナトリウムと部分アルファー化澱粉であり、クロスカルメロースナトリウムと部分アルファー化澱粉の質量比が1/3〜3/1であることを特徴とする請求項4記載の固形製剤。
【請求項6】
a)生薬エキス末又は漢方エキス末が、防風通聖散である請求項1〜5のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項7】
固形製剤に対して、a)を50〜90質量%含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項8】
c)結晶セルロースが、平均重合度が130〜450、75μm以下の粒子の平均L/Dが1.2〜4.5、平均粒子径が20〜250μm、見掛け比容積が2〜7cm/g、見掛けタッピング比容積が2.4〜4.5cm/g、安息角が55°以下の結晶セルロースであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項9】
c)結晶セルロースが、セルロース一次粒子が凝集してなる二次凝集構造を有し、粒子内細孔容積が0.265cm/g〜2.625cm/gであり、I型結晶を含有し、平均粒子径が30μmを超え250μm以下、比表面積が0.1m/g以上20m/g未満、安息角が25°以上44°未満の結晶セルロースであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項10】
a)「セオラスPH−101」(旭化成ケミカルズ製)、「AVICEL、PH−101」(FMC社製)、「EMCOCEL、50M」(JRS社製)、「VIVAPOR、101P」(JRS社製)、「COMPRECEL、101QD」(明台社製)から選ばれる結晶セルロースとの等量混合物を圧縮して得られる錠剤硬度80Nの錠剤の崩壊時間が5〜60分である生薬エキス末または漢方エキス末と、
b)糖類と、
c)平均重合度が130〜450、75μm以下の粒子の平均L/Dが1.2〜4.5、平均粒子径が20〜250μm、見掛け比容積が2〜7cm/g、見掛けタッピング比容積が2.4〜4.5cm/g、安息角が55°以下である結晶セルロースと、
d)崩壊剤と、
を混合し、直接打錠によって圧縮成形することを特徴とする固形製剤の製造方法。
【請求項11】
c)結晶セルロースが、セルロース一次粒子が凝集してなる二次凝集構造を有し、粒子内細孔容積が0.265cm/g〜2.625cm/gであり、I型結晶を含有し、平均粒子径が30μmを超え250μm以下、比表面積が0.1m/g以上20m/g未満、安息角が25°以上44°未満であることを特徴とする請求項10記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−1473(P2012−1473A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137155(P2010−137155)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】