説明

固有振動数可変機構及び制振装置

【課題】制振装置の振動系の固有振動数を調整するようにした固有振動数可変機構及びこれを備えた制振装置において、制振装置の振動系の固有振動数の調整作業を短時間で行う。
【解決手段】固有振動数可変機構2は、一端部が制振装置Aの本体部1にそれぞれ取り付けられる複数枚の板ばね20,21と、ターンバックル22と、このターンバックル22の端部に螺合された軸部材23,24と、各板ばね20,21毎に設けられ、軸部材23,24に連結され、板ばね20,21の一方側の面に接触する接触部材25,26とを備え、ターンバックル22を回転させて軸部材23,24をバックル軸方向に移動させることにより、各接触部材25,26を同時にバックル軸方向に移動させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振装置の振動系の固有振動数を調整するようにした固有振動数可変機構及びこれを備えた制振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、住宅等の建築物の屋根裏や床下などに設置して、その建築物(制振対象物)などの振動を低減する制振装置が知られている。このような制振装置は、その振動系の固有振動数を調整するようにした固有振動数可変機構を備えていることがある。
【0003】
例えば、特許文献1の制振装置は、制振用の重りと、上下2枚の板と組立用ボルトとから構成され重りを該上下2枚の板の間に介装し上下方向に移動自在にして支持する筺体と、重りを弾性的に支持するばね材と、重りの上下振動を減衰させる減衰装置と、からなるものである。特許文献1のものは、固有振動数可変機構を備えており、これは、筺体側に片持ち支持された2枚の板ばねと、重り側に取り付けられ、各板ばねとの接点を水平方向に摺動可能にして当接する2つの剛性伝達部材とで構成されるものである。そして、各剛性伝達部材を移動させることで各板ばねの剛性を変えて、制振装置の固有振動数を調整するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3253260号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のものでは、各剛性伝達部材を別々に移動させるため、制振装置の振動系の固有振動数の調整作業を行うのに時間を要する虞があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、制振装置の振動系の固有振動数を調整するようにした固有振動数可変機構及びこれを備えた制振装置において、制振装置の振動系の固有振動数の調整作業を短時間で行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、制振装置の振動系の固有振動数を調整するようにした固有振動数可変機構であって、一端部が上記制振装置の本体部にそれぞれ取り付けられる複数枚の板ばねと、ターンバックルと、上記ターンバックルの端部に螺合された軸部材と、上記各板ばね毎に設けられ、上記軸部材に連結され、該板ばねの一方側の面に接触する接触部材とを備えており、上記ターンバックルを回転させて上記軸部材をバックル軸方向に移動させることにより、上記各接触部材を同時にバックル軸方向に移動させることを特徴とするものである。
【0008】
これにより、ターンバックルを回転させて軸部材をバックル軸方向に移動させることにより、各接触部材を同時にバックル軸方向に移動させるので、制振装置の振動系の固有振動数の調整作業を短時間で行うことができる。
【0009】
尚、ターンバックルは、一端に右ねじを、他端に左ねじ(右ねじとは逆ねじ)を切ったものであり、ターンバックルを回すと、軸部材がターンバックルの軸方向に移動するようになっている。つまり、ターンバックルの中央には、そのような軸部材の移動を許容する孔が形成されている。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記複数枚の板ばねとして、長手方向がバックル軸方向に一致するようにバックル軸方向に並列配置された第1及び第2板ばねを有しており、上記軸部材として、上記ターンバックルの両端部にそれぞれ螺合された第1及び第2軸部材を有しており、上記第1及び第2板ばねの接触部材は、上記第1及び第2軸部材にそれぞれ連結されていることを特徴とするものである。
【0011】
これにより、第1及び第2板ばねを、長手方向がバックル軸方向に一致するようにバックル軸方向に並列配置しているので、第1及び第2板ばねの幅方向に関して、固有振動数可変機構を小さくすることができる。
【0012】
第3の発明は、上記第1又は2の発明において、バックル軸方向に延び、上記接触部材をその移動方向にガイドするガイド部材をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0013】
これにより、バックル軸方向に延び、接触部材をその移動方向にガイドするガイド部材をさらに設けているので、接触部材のバックル軸方向への移動を確実に行うことができる。
【0014】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記ガイド部材はC型チャンネルであり、上記接触部材は、ナイロン樹脂製のものであって、上記板ばねの一方側の面に接触する本体部と、該本体部の上記ガイド部材側に設けられ、該ガイド部材にバックル軸方向に摺動可能に係合された被ガイド部とを有していることを特徴とするものである。
【0015】
これにより、接触部材を、滑りのよいナイロン樹脂製のもので構成しているので、接触部材を滑らかにガイドすることができる。
【0016】
また、ガイド部材をC型チャンネルで構成するとともに、接触部材をナイロン樹脂製のもので構成しているので、ガイド部材や接触部材を低コストで実現することができる。
【0017】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか1つの発明において、上記ターンバックルの軸方向の移動を規制する規制部材をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0018】
これにより、ターンバックルの軸方向の移動を規制する規制部材をさらに設けているので、ターンバックルの回転時のその軸方向の移動を規制することができる。
【0019】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記規制部材は、少なくとも、上記接触部材の一部を覆うカバー部材であることを特徴とするものである。
【0020】
これにより、規制部材を、少なくとも、接触部材の一部を覆うカバー部材で構成しているので、規制部材を別途設けないで済ませることができる。
【0021】
第7の発明は、制振対象物の振動を低減するようにした制振装置であって、本体部と、一端部が上記本体部にそれぞれ取り付けられる複数枚の板ばねと、ターンバックルと、上記ターンバックルの端部に螺合された軸部材と、上記各板ばね毎に設けられ、該軸部材に連結され、上記板ばねの一方側の面に接触する接触部材とを有し、上記ターンバックルを回転させて上記軸部材をバックル軸方向に移動させることにより、上記各接触部材を同時にバックル軸方向に移動させることで、振動系の固有振動数を調整するようにした固有振動数可変機構とを備えていることを特徴とするものである。
【0022】
これにより、上記第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0023】
第8の発明は、上記第7の発明において、上記制振対象物としての建築物の振動を低減するようにしたことを特徴とするものである。
【0024】
これにより、建築物の振動を低減するようにした制振装置の振動系の固有振動数の調整作業を短時間で行うことができる。
【0025】
第9の発明は、上記第7又は8の発明において、上記本体部は、マス部材と、該マス部材を支持する架台と、該架台の下側に配置されたベース部材と、上記架台と該ベース部材との間に設けられたばね部材とを有しており、上記板ばねは、上記架台側に水平方向に延びるように取り付けられており、上記接触部材は、上記ベース部材側に設けられていて、上記板ばねの下面に接触しており、上記ターンバックルは、上記板ばねよりも下側に設けられていることを特徴とするものである。
【0026】
これにより、ターンバックルを板ばねよりも下側に設けているので、制振装置の下側からその振動系の固有振動数の調整作業を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ターンバックルを回転させて軸部材をバックル軸方向に移動させることにより、各接触部材を同時にバックル軸方向に移動させるので、制振装置の振動系の固有振動数の調整作業を短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る制振装置を示す片側断面図である。
【図2】上架台を示す底面図である。
【図3】ベース部材を示す上面図である。
【図4】ガイド部材に係合された接触支持部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の実施形態に係る制振装置Aの概略構成を示しており、この制振装置Aは、図示は省略するが、住宅等の建築物(制振対象物)の屋根裏や床下などに設置して、その建築物などの振動を低減するものであり、その建築物の固有振動数に合わせて振動系の固有振動数を調整することができるようなっている。制振装置Aは、制振装置本体部1と、この制振装置本体部1に配設され、制振装置Aの振動系の固有振動数を調整する固有振動数可変機構2とを備えている。尚、以下の説明では、便宜上、図1の紙面を貫く方向を水平前後方向と、図1の左右方向を水平左右方向と呼ぶ。この水平左右方向は、本実施形態では、後述のターンバックル22の軸方向(以下、単にバックル軸方向と呼ぶ)と一致している。
【0031】
制振装置本体部1は、図1〜図3に示すように、マス部材10と、このマス部材10を載置支持する上架台11と、この上架台11の下側に対向配置されたベース部材12と、上架台11とベース部材12との間にそれぞれ配設されたコイルばね13(ばね部材)、シリコンダンパー14(減衰機構)、及び耐震ストッパー機構15とを有している。
【0032】
マス部材10は、上面視で略矩形状の金属板を複数枚重ねたものであり、例えば、上架台11の四隅部に対応してその上面に4つ、ボルト固定されている。上架台11は、断面略矩形状のフレーム部材11a,…を上面視で略矩形状になるように組み合わせた矩形部11bと、この矩形部11bの内部に配設され、断面略コ字状のフレーム部材11c,…を上面視で略十字状になるように組み合わせた十字部11dとからなるものである。
【0033】
上記ベース部材12は、断面略矩形状のフレーム部材12a,…を上面視で略矩形状になるように組み合わせたものであり、その状態で建築物の屋根裏や床下に配設された梁部材等に固定される。上記コイルばね13は、マス部材10,…を上架台11を介して弾性支持して、マス部材10の上下方向の振動を緩和するものであり、例えば、上架台11及びベース部材12の四隅に対応して4つ配置されている(図1では1つのみ図示)。
【0034】
上記シリコンダンパー14は、マス部材10の上下方向の振動を減衰するものであり、例えば、上架台11及びベース部材12における左右のフレーム部材11a,11a,12a,12aの水平前後方向中央部に対応して2つ配置されている。上記耐震ストッパー機構15は、マス部材10が地震時の振動等により大きく変位して、制振装置Aが転倒するのを防止するものであり、例えば、上架台11及びベース部材12の四隅に対応して4つ配置されている(図1では2つのみ図示)。
【0035】
上記固有振動数可変機構2は、図1〜図4に示すように、長手方向一端部が上架台11側に水平左右方向に延びるようにそれぞれ取り付けられた第1及び第2板ばね20,21と、軸方向両端部に図示しない第1及び第2雌ねじがそれぞれ形成されたスリーブ(ナット)状のターンバックル22と、このターンバックル22の第1及び第2雌ねじにそれぞれ螺合された第1及び第2ボルト23,24(第1及び第2軸部材)と、それぞれ、第1及び第2ボルト23,24に連結されかつ第1及び第2板ばね20,21の下面(一方側の面)を接触支持する第1及び第2接触支持部材25,26(接触部材)と、それぞれ、水平左右方向に延びるように配置されかつ第1及び第2接触支持部材25,26をその移動方向にガイドする第1及び第2ガイド部材27,28と、それぞれ、接触支持部材25,26の下部(一部)やガイド部材27,28を覆う第1及び第2カバー部材29,30(規制部材)とを有している。尚、これらの第1及び第2カバー部材29,30は、見栄えの観点等から配設されている。
【0036】
第1及び第2板ばね20,21は、その長手方向が水平左右方向に一致するように、水平左右方向に所定間隔を開けて並列配置されていて、その水平左右方向外側端部にて上架台11における左右のフレーム部材11a,11aの水平前後方向中央部の下面にステー31及びブラケット32を介してそれぞれ片持ち支持されている。ターンバックル22は、第1及び第2板ばね20,21よりも下側でかつ上面視でこれらの板ばね20,21の間に配設されていて、その第1及び第2雌ねじが互いに反対方向の螺旋状をなしている。
【0037】
上記第1及び第2ボルト23,24は、互いに同軸に配置されていて、ターンバックル22の第1及び第2雌ねじに対応して互いに反対方向の螺旋状をなす雄ねじがそれぞれ形成されている。第1及び第2ボルト23,24は、ターンバックル22を第1所定方向に回転させると、同時に水平左右方向外側に移動する一方、ターンバックル22を第1所定方向とは反対方向の第2所定方向に回転させると、同時に水平左右方向内側に移動するようになっている。
【0038】
上記第1及び第2接触支持部材25,26は、各板ばね20,21毎にベース部材12側に配設された、高い耐久性を有するナイロン樹脂製のものであり、上端が板ばね20,21の下面に接触する本体部25a,26aと、この本体部25,26aの下側(ガイド部材27,28側)に形成され、ガイド部材27,28の内部に水平左右方向に摺動可能に係合嵌合された断面略凸字状の被ガイド部25b,26bとを有している。
【0039】
本体部25a,26aの上端部は、上端に行くに従って細くなる水平方向前後方向視で略三角形状に形成されている一方、その上端部よりも下側の部分は、水平方向前後方向視で略矩形状に形成されている。本体部25a,26aの上端は、水平方向前後方向視で丸みを帯びており、この湾曲端が板ばね20,21の下面に当接している。本体部25a,26aには、水平左右方向に貫通する挿通孔25c,26cが形成されており、この挿通孔25c,26cにはボルト23,24が挿通されている。そして、その状態で接触支持部材25,26をボルト23,24に螺合されたナット33,33,33で挟み込むことにより、接触支持部材25,26はボルト23,24に固定されている。
【0040】
第1及び第2接触支持部材25,26は、第1及び第2ボルト23,24が同時に水平左右方向外側に移動すると、同時に水平左右方向外側に移動する一方、第1及び第2ボルト23,24が同時に水平左右方向内側に移動すると、同時に水平左右方向内側に移動するようになっている。
【0041】
上記第1及び第2ガイド部材27,28は、断面略C字状のC型チャンネルである。このように第1及び第2ガイド部材27,28を曲げ板で構成しているので、コスト低減を図ることができる。第1及び第2ガイド部材27,28は、その長手方向が水平左右方向に一致するように、ベース部材12における左右のフレーム部材12a,12aの水平前後方向中央部の間に第1ステー34,34を介して水平左右方向に延びるように架設された第2ステー35の上面に、水平左右方向に所定間隔を開けてそれぞれボルト固定されている。第2ステー35は、ベース部材12よりも下側に配設されている。
【0042】
第1及び第2ガイド部材27,28は、第1及び第2接触支持部材25,26が同時に水平左右方向に移動すると、その移動を案内するようになっている。第1及び第2ガイド部材27,28の長さは、制振装置Aの振動系の固有振動数の調整範囲に応じて設定されている。尚、図示は省略するが、第1及び第2ガイド部材27,28を第2ステーに取り付けるためのボルトが、第1及び第2接触支持部材25,26が水平左右方向外側に移動するのを規制するストッパー部材を構成している。
【0043】
上記第1及び第2カバー部材29,30は、下側に向かって開口する略直方体箱状のものであり、第2ステー35の上面に水平左右方向に所定間隔を開けてそれぞれボルト固定されている。第1及び第2カバー部材29,30の上面には、水平左右方向に延びる略矩形状のガイド孔29a,30aがそれぞれ形成されており、このガイド孔29a,30aから接触支持部材25,26の上端が飛び出している。ガイド孔29a,30aは、第1及び第2接触支持部材25,26が同時に水平左右方向に移動すると、その移動を案内するようになっている。ガイド孔29a,30aの長さは、制振装置Aの振動系の固有振動数の調整範囲に応じて設定されている。
【0044】
第1及び第2カバー部材29,30の水平左右方向内側の側面29b,30bには、図示しない挿通孔がそれぞれ形成されており、この挿通孔にはボルト23,24が挿通されている。第1及び第2カバー部材29,30の水平左右方向内側の側面29b,30bは、ターンバックル22の軸方向両端面にそれぞれ近接していて、ターンバックル22の回転時のその軸方向の移動を規制するようになっている。このようにターンバックル22の軸方向の移動を規制しているため、第1及び第2ボルト23,24は、ターンバックル22を回転させると、互いに等しい距離だけ移動する。
【0045】
以下、制振装置Aの振動系の固有振動数の調整方法について説明する。まず、制振装置Aを建築物の屋根裏や床下などに配設し、その建築物などに生じる振動を計測する。そして、その計測結果から建築物の固有振動数を求め、この固有振動数に合わせるように、板ばね20,21の有効長を制振装置Aの下方から調整することによって、板ばね20,21のばね定数を変化させて、制振装置Aの振動系の固有振動数を調整する。
【0046】
具体的には、制振装置Aのベース部材12の下方から、ターンバックル22を回転させて、第1及び第2ボルト23,24を同時に水平左右方向に移動させることにより、第1及び第2接触支持部材25,26を同時に水平左右方向に移動させる。尚、第1及び第2接触支持部材25,26が水平左右方向外側に移動すると、制振装置Aの振動系の固有振動数は高くなる一方、第1及び第2接触支持部材25,26が水平左右方向内側に移動すると、その固有振動数は低くなる。
【0047】
そして、制振装置Aの振動系が所定の固有振動数になる所定の位置まで第1及び第2接触支持部材25,26を移動させる。このようにして、第1及び第2板ばね20,21に対する第1及び第2接触支持部材25,26の接触支持位置を変更することにより、第1及び第2板ばね20,21の有効長さを変えて、第1及び第2板ばね20,21のばね定数を調整する。
【0048】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、ターンバックル22を回転させてボルト23,24をバックル軸方向に移動させることにより、各接触支持部材25,26を同時にバックル軸方向に移動させるので、建築物の振動を低減するようにした制振装置Aの振動系の固有振動数の調整作業を短時間で行うことができる。
【0049】
また、各接触支持部材25,26を同時にバックル軸方向に移動させるので、制振装置Aの振動系の固有振動数の調整幅を大きくすることができる。
【0050】
また、第1及び第2板ばね20,21を、長手方向がバックル軸方向に一致するようにバックル軸方向に並列配置しているので、第1及び第2板ばね20,21の幅方向に関して、固有振動数可変機構2を小さくすることができる。
【0051】
また、バックル軸方向に延び、接触支持部材25,26をその移動方向にガイドするガイド部材27,28をさらに設けているので、接触支持部材25,26のバックル軸方向への移動を確実に行うことができる。
【0052】
また、接触支持部材25,26を、滑りのよいナイロン樹脂製のもので構成しているので、接触支持部材25,26を滑らかにガイドすることができる。
【0053】
また、ガイド部材27,28をC型チャンネルで構成するとともに、接触支持部材25,26をナイロン樹脂製のもので構成しているので、ガイド部材27,28や接触支持部材25,26を低コストで実現することができる。
【0054】
また、ターンバックル22の軸方向の移動を規制する規制部材29,30をさらに設けているので、ターンバックル22の回転時のその軸方向の移動を規制することができる。
【0055】
また、規制部材を、少なくとも、接触支持部材25,26の一部を覆うカバー部材29,30で構成しているので、規制部材を別途設けないで済ませることができる。
【0056】
また、ターンバックル22を板ばね20,21よりも下側に設けているので、制振装置Aの下側からその振動系の固有振動数の調整作業を効率よく行うことができる。
【0057】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、本発明を建築物の振動を低減する制振装置Aに適用しているが、これに限らず、例えば、振動の大きな設備機器を設置するための防振台装置(制振装置)に適用してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、第1及び第2板ばね20,21を、長手方向が水平左右方向に一致するように、水平左右方向に並列配置しているが、これに限らず、例えば、図示は省略するが、第1及び第2板ばねを、長手方向が水平左右方向に一致するように、水平前後方向に並列配置してもよい。この場合、例えば、ターンバックルの軸方向一端部に螺合されたボルトに棒状部材を水平前後方向に延びるように取り付け、この棒状部材の軸方向両端部に第1及び第2接触支持部材を連結するようにする。
【0059】
さらに、上記実施形態では、板ばね20,21を2枚配設しているが、3枚以上配設してもよい。但し、この場合、ターンバックルを回転させてボルトをバックル軸方向に移動させることにより、各接触支持部材を同時にバックル軸方向に移動させることができるように、固有振動数可変機構の構成を工夫する必要がある。
【0060】
さらにまた、上記実施形態では、ガイド部材27,28をC型チャンネルで構成するとともに、接触支持部材25,26をナイロン樹脂製のもので構成しているが、これに限らない。但し、低コストの観点等からは、そのように構成するのが望ましい。
【0061】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0062】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明にかかる固有振動数可変機構及び制振装置は、制振装置の振動系の固有振動数の調整作業を短時間で行うことが必要な用途等に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
A 制振装置
1 制振装置本体部
10 マス部材
11 上架台
12 ベース部材
13 コイルばね(ばね部材)
2 固有振動数可変機構
20 第1板ばね
21 第2板ばね
22 ターンバックル
23 第1ボルト(第1軸部材)
24 第2ボルト(第2軸部材)
25 第1接触支持部材(接触部材)
26 第2接触支持部材(接触部材)
27 第1ガイド部材
28 第2ガイド部材
29 第1カバー部材(規制部材)
30 第2カバー部材(規制部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制振装置の振動系の固有振動数を調整するようにした固有振動数可変機構であって、
一端部が上記制振装置の本体部にそれぞれ取り付けられる複数枚の板ばねと、
ターンバックルと、
上記ターンバックルの端部に螺合された軸部材と、
上記各板ばね毎に設けられ、上記軸部材に連結され、該板ばねの一方側の面に接触する接触部材とを備えており、
上記ターンバックルを回転させて上記軸部材をバックル軸方向に移動させることにより、上記各接触部材を同時にバックル軸方向に移動させることを特徴とする固有振動数可変機構。
【請求項2】
請求項1記載の固有振動数可変機構において、
上記複数枚の板ばねとして、長手方向がバックル軸方向に一致するようにバックル軸方向に並列配置された第1及び第2板ばねを有しており、
上記軸部材として、上記ターンバックルの両端部にそれぞれ螺合された第1及び第2軸部材を有しており、
上記第1及び第2板ばねの接触部材は、上記第1及び第2軸部材にそれぞれ連結されていることを特徴とする固有振動数可変機構。
【請求項3】
請求項1又は2記載の固有振動数可変機構において、
バックル軸方向に延び、上記接触部材をその移動方向にガイドするガイド部材をさらに備えていることを特徴とする固有振動数可変機構。
【請求項4】
請求項3記載の固有振動数可変機構において、
上記ガイド部材はC型チャンネルであり、
上記接触部材は、ナイロン樹脂製のものであって、上記板ばねの一方側の面に接触する本体部と、該本体部の上記ガイド部材側に設けられ、該ガイド部材にバックル軸方向に摺動可能に係合された被ガイド部とを有していることを特徴とする固有振動数可変機構。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の固有振動数可変機構において、
上記ターンバックルの軸方向の移動を規制する規制部材をさらに備えていることを特徴とする固有振動数可変機構。
【請求項6】
請求項5記載の固有振動数可変機構において、
上記規制部材は、少なくとも、上記接触部材の一部を覆うカバー部材であることを特徴とする固有振動数可変機構。
【請求項7】
制振対象物の振動を低減するようにした制振装置であって、
本体部と、
一端部が上記本体部にそれぞれ取り付けられる複数枚の板ばねと、ターンバックルと、上記ターンバックルの端部に螺合された軸部材と、上記各板ばね毎に設けられ、該軸部材に連結され、上記板ばねの一方側の面に接触する接触部材とを有し、上記ターンバックルを回転させて上記軸部材をバックル軸方向に移動させることにより、上記各接触部材を同時にバックル軸方向に移動させることで、振動系の固有振動数を調整するようにした固有振動数可変機構とを備えていることを特徴とする制振装置。
【請求項8】
請求項7記載の制振装置において、
上記制振対象物としての建築物の振動を低減するようにしたことを特徴とする制振装置。
【請求項9】
請求項7又は8記載の制振装置において、
上記本体部は、マス部材と、該マス部材を支持する架台と、該架台の下側に配置されたベース部材と、上記架台と該ベース部材との間に設けられたばね部材とを有しており、
上記板ばねは、上記架台側に水平方向に延びるように取り付けられており、
上記接触部材は、上記ベース部材側に設けられていて、上記板ばねの下面に接触しており、
上記ターンバックルは、上記板ばねよりも下側に設けられていることを特徴とする制振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−242807(P2010−242807A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90237(P2009−90237)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】