説明

固液分離装置、濾過装置、および固液分離方法

【課題】濾過装置の2次脱水機構として用いて、被処理物の含液率を十分に、かつ効率的に低減できるとともに連続的な固液分離が可能な固液分離装置を提供する。
【解決手段】周方向に回転させられる分離ロール7の外周に、無端状の一対の分離濾布1、8が重ね合わされて巻回されつつ分離ロール7の回転方向に沿って走行可能とされ、分離ロール7の内周部には、分離ロール7の径方向に通気する複数の通気ガスチャンバー10A、10Bが分離ロール7の中心軸線方向に互いに隔絶されて形成され、分離濾布1、8の間に供給された被処理物Pが、分離ロール7の外周で分離濾布1、8の間に挟み込まれて圧搾されるとともに、複数の通気ガスチャンバー10A、10Bのうち少なくとも1つから噴出させられる通気ガスA、Bにより通気されて脱水される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に複数のロールに巻回されて走行する濾布上に供給された被処理物を濾過する水平式真空濾過装置、ドラム式真空濾過装置、および機械圧搾脱水機構のみのベルトプレス脱水機のような濾過装置の2次脱水機構として用いて好適な固液分離装置、該固液分離装置を用いたこのような濾過装置、および固液分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような濾過装置のうち、例えば水平式真空濾過装置は一般に、真空トレイ上を連続的あるいは間欠的に走行する濾布の上に被処理物を供給し、この濾布を介して真空トレイにより真空吸引することによって濾過するものであり、またドラム式真空濾過装置は一般的に液槽内の被処理物スラリー中に浸漬された濾布を介する真空室により真空吸引することにより濾過するものであるが、通常は大気圧よりも大きな差圧を作用させることができない。このため、濾過されたケーキの到達含液率が目標値を達成することが難しく、当該濾過装置の後段にこれとは別に遠心分離機やフィルタープレス等の2次脱水装置を用意しなければならないことが多い。
【0003】
そこで、本発明の発明者等は、例えば特許文献1、2において、このような水平式真空濾過装置の真空トレイのみによる濾過の後段に、濾過されたケーキに向けて進退可能な枠状または環状のシール材を有するシール手段と、このシール材の開口面内側で加圧板や圧力流体(エアー等)によってケーキを加圧する加圧手段とを備えた固液分離装置を設け、この後段に濾布の走行によって移動してきたケーキにシール材を密着させ、その内側で加圧手段によりケーキを加圧して脱水するものを提案している。
【特許文献1】特開2006−297366号公報
【特許文献2】特開2007−83117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような固液分離装置を設けた水平式真空濾過装置等においても、被処理物の組成や性状によっては、加圧板や加圧ロールによる濾布に垂直な方向への面圧あるいは線圧だけでは、ケーキの含液率を十分に目標値を達成することが困難となる場合がある。また、上述のように濾布の走行によって後段に移動したケーキにシール材を前進させて密着させた上で加圧する固液分離装置では、濾布が連続的に走行する場合にそのまま適用することはできない。
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたもので、特にこのような濾過装置の2次脱水機構として用いて、被処理物(ケーキ)の含液率を十分に、かつ効率的に低減することができるとともに連続的な固液分離が可能な固液分離装置、該固液分離装置を2次脱水機構として備えた濾過装置、および固液分離方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の固液分離装置は、周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の一対の分離濾布が重ね合わされて巻回されつつ上記分離ロールの回転方向に沿って走行可能とされるとともに、この分離ロールの内周部には、該分離ロールの径方向に通気する複数の通気ガスチャンバーが上記分離ロールの中心軸線方向に互いに隔絶されて形成されており、上記一対の分離濾布の間に供給された被処理物が、上記分離ロールの外周で該分離濾布の間に挟み込まれて圧搾されるとともに、上記複数の通気ガスチャンバーのうち少なくとも1つから噴出させられる通気ガスにより上記分離ロールの径方向に通気されて脱水させられることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の固液分離方法は、周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の一対の分離濾布を重ね合わせて巻回しつつ上記分離ロールの回転方向に沿って走行させるとともに、この分離ロールの内周部には、該分離ロールの径方向に通気する複数の通気ガスチャンバーを上記分離ロールの中心軸線方向に互いに隔絶して形成し、上記一対の分離濾布の間に供給された被処理物を、上記分離ロールの外周で該分離濾布の間に挟み込んで圧搾するとともに、上記複数の通気ガスチャンバーのうち少なくとも1つから通気ガスを噴出することにより上記分離ロールの径方向に通気して脱水することを特徴とする。
【0008】
すなわち、本発明の発明者等は、特許文献1、2の後、さらに特願2008−266484号において、周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の一対の分離濾布が重ね合わされて巻回されつつ上記分離ロールの回転方向に沿って走行可能とされ、これらの分離濾布の間に供給された被処理物が、上記分離ロールの外周で該分離濾布の間に挟み込まれて圧搾されるとともに、上記分離ロールの径方向に通気されることによって脱水させられる固液分離装置、および周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の一対の分離濾布を重ね合わせて巻回しつつ上記分離ロールの回転方向に沿って走行させ、これらの分離濾布の間に供給した被処理物を、上記分離ロールの外周で該分離濾布の間に挟み込んで圧搾するとともに、上記分離ロールの径方向に通気することによって脱水する固液分離方法を提案している。
【0009】
従って、このように構成された固液分離装置および固液分離方法においては、一対の分離濾布の間に被処理物が供給されて挟み込まれ、周方向に回転する分離ロールの外周に、その回転方向に沿って走行しつつ巻き掛けられて押圧されることにより圧搾される。このため、分離ロールの回転や、その回転方向に沿った分離濾布の走行が間欠的な場合は勿論、連続的な場合でも、供給された被処理物を確実に処理することができる。
【0010】
さらに、こうして回転する分離ロールの外周に押し付けられる際に、被処理物は、該分離ロールの径方向に押圧力を受けるだけでなく、被処理物を挟んで内周の分離ロール側の分離濾布と反対の外周側の分離濾布との走行速度の差、すなわち周速の差によって周方向にも剪断力を受けるため、効率的に圧搾される。また、こうして圧搾された被処理物は、さらに通気ガスによって分離ロールの径方向に通気されることにより、液分が外周側の分離濾布を介して分離されるため、濾布に垂直な方向への面圧や線圧および加圧だけでは十分な含液率の低下が困難であった被処理物に対しても、効果的な液分の除去を促すことが可能となる。
【0011】
そして、さらに本発明の固液分離装置および固液分離方法では、こうして分離ロールの径方向に通気する通気ガスチャンバーが上記分離ロールの中心軸線方向に互いに隔絶されて複数形成されていて、分離ロールの外周で一対の分離濾布の間に挟み込んで圧搾した被処理物を、これら複数の通気ガスチャンバーのうち少なくとも1つから通気ガスを噴出することにより分離ロールの径方向に通気して脱水するので、効率的な脱水を図ることができる。
【0012】
すなわち、上述のように一対の分離濾布の間に供給されて挟み込まれるとともに分離ロールの外周で圧搾される被処理物は、この分離ロールの上記径方向におけるその厚さや、該分離ロールの中心軸線方向におけるその幅が一定となることはなく、こうして分離ロールの外周で圧搾されるとともに上述のように周方向に剪断力を受けることにより、被処理物の上記幅は分離ロールの周方向に沿ってばらつきを生じることになり、また通常は被処理物の厚さは、上記中心軸線方向の中央部が厚く、その両側部で薄くなる。
【0013】
従って、そのような被処理物に対して上記中心軸線方向に1つの通気ガスチャンバーによって全面的に均一に通気ガスを通気させようとすると、特に上記中心軸線方向の被処理物の幅の両側部の厚さが薄くなった部分や、あるいはこの幅がばらつきによって幅狭となって両側部に被処理物が存在しない部分が生じたときに、これらの部分から通気ガスが多量に漏れ出てしまい、通気ガスチャンバー全体としての通気ガス圧が低下して含液率の低減が損なわれることになる。その一方で、通気ガス圧を維持するには、通気ガスを多量に供給する必要があり、甚だ非効率的である。
【0014】
そこで、本発明では、上述のように通気ガスチャンバーを分離ロールの中心軸線方向に隔絶して複数形成することにより、例えば被処理物の幅のばらつきによって側部に被処理物が存在しなくなったときには、この側部に対応する位置の通気ガスチャンバーからは通気を行わずに、被処理物が存在する部分だけで通気を行うことで、不要な通気ガスの供給を抑えて効率的に被処理物を脱水することができる。また、この中心軸線方向の被処理物の幅の両側部で中央部より被処理物の厚さが薄くなったときには、通気ガスの漏れやすいこの両側部で通気ガス圧や流量を高めることにより、中央部では必要以上に多量の通気ガスを供給せずとも十分な含液率の低下を図ることができる。また、通気ガスは漏れやすいが被処理物の厚さが薄く脱水に高いガス圧を必要としない場合には、ガス圧を低く保ち通気ガス量を抑えることもできる。
【0015】
従って、特にこのような分離ロールの中心軸線方向における被処理物の幅のばらつきや中央部と両側部での被処理物の厚さの違いに伴って、各通気ガスチャンバーへの通気ガスの供給の有無や供給量を制御するには、上記複数の通気ガスチャンバーは、上記中心軸線方向における被処理物の幅、すなわち上記分離濾布の幅の少なくとも中央部とこの中央部の両側部との3つに互いに隔絶されて形成されているのが望ましい。勿論、4つ以上に隔絶されていてもよく、また被処理物の供給状況などにより一方の側部で幅のばらつきが生じ易いような場合には、この側部とそれ以外の部分との2つに隔絶されていたりしてもよい。
【0016】
また、このように中心軸線方向に互いに隔絶された複数の通気ガスチャンバーに通気ガスを供給するのに、例えば上述のように被処理物の幅のばらつきによって側部に被処理物が存在しなくなったときに側部の通気ガスチャンバーからは通気を行わずに、被処理物が存在する部分だけで通気を行うような場合には、これらの通気ガスチャンバーを共通した通気ガスの供給路に接続しておいて、途中に設けたバルブの開閉などにより供給を制御するようにしてもよいが、中央部と側部とで通気ガス圧を変化させるような場合には、このようなバルブの開閉だけで通気ガス圧を正確に制御するのは困難となる。
【0017】
そこで、このような場合には、複数の通気ガスチャンバーのうち少なくとも1つを、他の通気ガスチャンバーと異なる通気ガスの供給路に接続するのが望ましく、これにより、各供給路に供給される通気ガス圧そのものを制御するだけで、例えば上述のように中央部と側部とで通気ガス圧を変化させたりすることができるとともに、場合によっては中央部接続された供給路には常温の空気を、両側部に接続された供給路には加熱した空気を供給することによって、通気ガスが漏れやすいこの両側部での被処理物の脱水を促して、上記中心軸線方向の全体に亙って均一な含液率のケーキを得ることも可能となる。
【0018】
また、本発明の濾過装置は、複数のロールに巻回されて走行させられる濾布上に、供給手段から被処理物が供給されて、この供給手段よりも上記濾布の走行方向側に備えられた濾過手段により上記被処理物が濾過される濾過装置であって、上記濾過手段よりも上記走行方向側には、上述した本発明の固液分離装置が配設されていて、上記複数のロールのうち上記濾過手段よりも上記走行方向側に位置するロールが上記分離ロールとされるとともに、上記濾布が上記一対の分離濾布のうちの一方とされていることを特徴とする。
【0019】
従って、このように構成される、例えば上述した水平式真空濾過装置のような濾過装置では、その上記濾過手段よりも走行方向側の当該濾過装置のロールが、上記固液分離装置の分離ロールとされ、また濾過装置の上記濾布が固液分離装置の上記一対の分離濾布のうちの一方とされているので、濾過手段によって濾過された濾布上の被処理物は、そのままこの濾過手段よりも濾布の走行方向側すなわち濾過手段の後段に移動させられ、他方の分離濾布との間に挟まれて分離ロールに巻き掛けられることにより圧搾されるとともに、分離ロールの中心軸線方向に隔絶された複数の通気ガスチャンバーから通気ガスが通気させられて上述のように効果的に脱水させられる。
【0020】
このため、この濾過装置の後段に、該濾過装置とは別に遠心分離機やフィルタープレス等の2次脱水装置を用意しなくとも、含液率の少ない被処理物のケーキを得ることができて効率的であり、こうして脱水された被処理物を乾燥させる場合などに乾燥装置の負担を軽減するとともに、ベルトコンベアなど乾燥装置までのケーキ搬送装置へのケーキの付着等、搬送トラブルを軽減することが可能となる。しかも、濾過装置の濾布およびロールを固液分離装置の上記分離濾布および分離ロールとして利用することができるので、経済的でもある。そして、上記固液分離装置が被処理物の連続的な供給にも対応可能であることから、濾布が連続的に走行する水平式真空濾過装置、ドラム式真空濾過装置、およびベルトプレス脱水機のような濾過装置でも確実な被処理物の含水率低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の固液分離装置および固液分離方法によれば、回転する分離ロールに巻き掛けられる一対の分離濾布の間に被処理物が挟み込まれて、分離ロールの回転とともにその回転方向に走行させられることにより、この分離ロールの径方向への押圧力に加えて、周方向への剪断力を作用させて被処理物を効果的に圧搾することができるとともに、分離ロールの中心軸線方向に互いに隔絶された複数の通気ガスチャンバーからの通気により、必要以上に多くの通気ガスを供給することなく部分的に供給量や通気ガス圧を制御したりすることができ、効率的に被処理物を通気して含液率の低減を図ることが可能となる。また、本発明の濾過装置によれば、このような固液分離装置を用いて、2次脱水装置を要することなく効率的かつ経済的に、より低い含液率の被処理物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1ないし図3は、本発明の固液分離装置および該固液分離装置を備えた濾過装置の一実施形態を示すものである。本実施形態における濾過装置は、図1に示すように、無端状の濾布1が、中心軸線を水平にして互いに平行に配置された複数のロール2に巻き掛けられて周回するように張り渡され、このうちの1つが駆動ロール2Aとされて上記中心軸線回りに回転駆動させられることにより、濾布1のうち装置上部に水平に渡された水平部1Aが矢線Fで示す走行方向に移動するように走行可能とされて、この水平部1Aの走行方向F後方側に配設された供給手段3から供給された被処理物Pが、その直ぐ走行方向F側の駆動ロール2Aとの間に配設された濾過手段4によって濾布1を介して濾過される、水平式真空濾過装置の構成とされている。
【0023】
ここで、上記駆動ロール2Aは、上記水平部1Aの走行方向F側の端部に位置し、図2に示すようにモータ等の駆動手段5により可変減速機6を介して回転させられることによって、連続的、あるいは所定のピッチで間欠的に濾布1を走行させる。また、濾過手段4において被処理物Pは、水平部1Aにおいて濾布1を支持する図示されない真空トレイにより液分が濾布1を介して吸引されて濾過される。そして、さらにこの濾過手段4よりも上記走行方向F側に、図1に破線で示すように本発明の一実施形態の固液分離装置が配設されている。
【0024】
この実施形態の固液分離装置は、図2および図3に示すように、回転方向Tに向けて周方向に回転させられる分離ロール7の外周に、無端状の一対の分離濾布1、8が、濾過手段4によって濾過された被処理物Pを間に挟み込むように重ね合わされて巻き掛けられつつ上記回転方向Tに沿って走行可能とされたものとされている。なお、分離濾布1、8は例えばポリエチレン繊維やポリエステル繊維などからなる。ここで、本実施形態では、上記濾過装置におけるロール2のうちの上記駆動ロール2Aが分離ロール7とされ、また一対の分離濾布1、8のうちの一方は、濾過装置の濾布1がそのままこの分離ロール7に巻き掛けられたものとされている。
【0025】
この分離ロール7(駆動ロール2A)は概略中空の円筒状とされるとともに、その円筒面部分には図3に示すように該分離ロール7の中心軸線方向において上記濾布1の幅の範囲よりも内側に、また周方向には分離ロール7の全周に亙って、多数の貫通孔9が開口させられている。一方、分離ロール7の内周部には、これらの貫通孔9にそれぞれ連通する複数の通気ガスチャンバー10が、上記中心軸線方向には貫通孔9が形成された範囲と略等しい範囲で、また周方向には分離ロール7の全周に亙って該分離ロール7の内周部をほぼ等間隔に弧状に仕切るようにして、互いに隔絶されて形成されている。
【0026】
そして、これら周方向に隔絶された各通気ガスチャンバー10は、それぞれさらに上記中心軸線方向にも仕切板によって互いに隔絶されて複数に分割させられている。ここで、本実施形態では各通気ガスチャンバー10は、上記中心軸線方向の中央部に位置する中央部通気ガスチャンバー10Aとその両側に位置する一対の側部通気ガスチャンバー10Bとの3つの通気ガスチャンバー10A、10Bに分割させられている。
【0027】
より詳しくは、図3に示すように一対の分離濾布1、8およびその間に挟み込まれて分離ロール7に巻回される被処理物Pの上記中心軸線方向における幅の中央部に上記中央部通気ガスチャンバー10Aが、またこの中央部通気ガスチャンバー10Aの中心軸線方向両側部に隣接して一対の側部通気ガスチャンバー10Bが配置され、特にこれら側部通気ガスチャンバー10Bは上記被処理物Pが挟み込まれた範囲の中心軸線方向の両側部に位置するようにされている。
【0028】
なお、本実施形態では、複数の通気ガスチャンバー10間において、これら中央部通気ガスチャンバー10Aの幅同士と側部通気ガスチャンバー10B同士の幅がそれぞれ互いに等しくなるように、すなわち上記仕切板の中心軸線方向の位置が互いに同じ位置となるようにされている。一方、個々の通気チャンバー10においては、一対の側部通気ガスチャンバー10B同士の上記中心軸線方向の幅が互いに等しくされるとともに、中央部通気ガスチャンバー10Aの幅は、上記被処理物Pが挟み込まれた範囲より小さく、また1つの側部通気ガスチャンバー10Bの幅よりも大きくされ、特に本実施形態では一対の側部通気ガスチャンバー10Bの幅を合わせた幅よりも大きくされている。
【0029】
また、分離ロール7のさらに内周部には、中心軸線方向一端側(図3における右側)から通気ガスチャンバー10と同数の中央部通気配管11Aと側部通気配管11Bとが挿通されている。このうち、中央部通気配管11Aは分離ロール7内でL字状に曲折して各通気ガスチャンバー10の中央部通気ガスチャンバー10Aの中心軸線方向中央に接続される一方、側部通気配管11BはF字状に2つに分岐するとともに曲折して、各通気ガスチャンバー10の一対の側部通気ガスチャンバー10Bのやはり中心軸線方向中央にそれぞれ接続されている。
【0030】
さらに、これら中央部通気配管11Aと側部通気配管11Bとは、分離ロール7の上記中心軸線方向一端側において中央部通気ガス分岐チャンバー12Aと側部通気ガス分岐チャンバー12Bとに各々接続され、さらにロータリージョイント(あるいは多段回転継手)12Cを介して図示されない通気ガスA、Bの供給源に接続される。すなわち、側部通気ガス分岐チャンバー12Bは上記中心軸線を中心とした円板状の空間をなすように形成されて、その外周部に各側部通気配管11Bが接続されるとともに、その一端側には上記中心軸線に沿って側部導入配管12Dが延びていて、上記ロータリージョイント12Cにおいて回転自在に支持されるとともに通気ガスBの供給源と気密に連通させられる。
【0031】
一方、中央部通気ガス分岐チャンバー12Aは、この側部通気ガス分岐チャンバー12Bの上記一端側において側部導入配管12Dの周りに環状の空間をなすように形成されて、やはりその外周部に各中央部通気配管11Aが接続されるとともに、そのさらに一端側には上記側部導入配管12D内に挿通されて同軸の二重管をなすように中央部導入配管12Eが延びていて、ロータリージョイント12Cにおいて側部導入配管12Dの端部の手前で回転自在に支持されるとともに、この側部導入配管12Dの連通部分とは隔絶されて、通気ガスAの供給源と気密に連通させられている。従って、これら中央部と側部の通気配管11A、11B、通気ガス分岐チャンバー12A、12B、導入配管12D、12Eは、通気ガスA、Bが供給されながら分離ロール7と一体に回転可能とされる。
【0032】
さらに、このうち中央部通気配管11Aと側部通気配管11Bとには、中央部および側部ガス分岐チャンバー12A、12Bから中央部および側部通気チャンバー10A、10Bへの通気ガスA、Bの供給を開閉制御する自動弁13が各通気配管11A、11Bごとに備えられている。ここで、これらの自動弁13の開閉操作は、分離ロール7に取り付けられて各通気ガスチャンバー10の回転位置に応じて動作するリミットスイッチ13Aによって、上記中央部通気ガス分岐チャンバー12Aからの通気ガスAが信号ガスとして供給配管13Bを介して中央部通気配管11Aと側部通気配管11Bのそれぞれの自動弁13に供給または非供給の状態となることにより、制御される。
【0033】
そして、こうして制御される自動弁13により、本実施形態では、分離ロール7の周方向に分離濾布1、8が巻き掛けられた範囲にある通気ガスチャンバー10のうち、さらに所定の回転位置にある通気ガスチャンバー10にのみ、その中央部通気ガスチャンバー10Aに通気ガスAが、また一対の側部通気ガスチャンバー10Bに通気ガスBが、分離ロール7の回転に伴い順次切り替えられながら連続して供給されるようになされている。すなわち、通気ガスチャンバー10がこの所定の回転位置にあるときには、自動弁13が開いて常に通気ガスA、Bが中央部および側部通気ガスチャンバー10A、10Bに供給されて貫通孔9から噴出させられる一方、この所定の回転位置以外の位置では、自動弁13が閉じられて通気が行われないように制御される。
【0034】
一方、一対の分離濾布1、8のうち他方の分離濾布8は、濾布(一方の分離濾布)1とほぼ等しい幅とされており、分離ロール7の外周においては該濾布1の外側に巻き掛けられてこの分離ロール7(駆動ロール2A)の回転方向Tに向けて濾布1と一体的に走行方向Fと同じ走行方向Gに走行可能とされている。また、この走行方向Gにおいて分離ロール7の次に他方の分離濾布8が巻き掛けられるロール2Bは、図2に示すように濾布1が巻き掛けられたロール2と共通とされ、このロール2Bから他方の分離濾布8は下方に向けて濾布1と反対側に引き出されて離間し、複数のロール14に巻き掛けられて再び分離ロール7の外周に至るように無端状に巻回されている。
【0035】
さらに、本実施形態では、このように一対の分離濾布1、8が重ね合わされて巻き掛けられた分離ロール7の外周に圧搾ベルト15が、このうち上記他方の分離濾布8のさらに外周に巻き掛けられるように備えられており、この圧搾ベルト15も上記一対の分離濾布1、8とともに分離ロール7の外周ではその回転方向Tに沿って走行方向F、Gと同じ走行方向Hに走行可能とされている。ここで、この圧搾ベルト15は、分離濾布1、8と同様の濾布、または金網やチェーン等からなる金属ベルト、あるいはアラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、カーボン繊維等の高強度繊維からなる樹脂ベルト、もしくはゴムベルトによって構成され、ただしその通気度は分離濾布1、8よりも高くされている。
【0036】
また、この圧搾ベルト15は、本実施形態では分離濾布1、8よりは幅広とされて、その幅方向の両端が図3に示すように該分離濾布1、8の幅方向の両端をそれぞれ越えて分離濾布1、8に覆い被さるように分離ロール7に巻き掛けられている。ただし、圧搾ベルト15の横幅は、一対の分離濾布1、8間に挟み込まれて圧搾される被処理物Pのケーキ幅よりも広ければ、必ずしも分離濾布1、8よりも幅広である必要はなく、すなわち分離濾布1、8とほぼ等しい幅であったり、これより幅狭であったりしてもよい。
【0037】
さらに、走行方向Hにおいて分離ロール7の次に圧搾ベルト15は、上記一対の分離濾布1、8が巻き掛けられた共通の上記ロール2Bに巻き掛けられ、次いで図2に示すように分離ロール7と上記ロール14に巻回された他方の分離濾布8との間に配設された複数のロール16に順次巻き掛けられた後、分離ロール7に至る直前で他方の分離濾布8が巻き掛けられるロール14Aに該他方の分離濾布8とともに巻き掛けられて、再び分離ロール7の外周に至るように無端状に巻回されている。
【0038】
なお、この圧搾ベルト15が巻き掛けられる上記ロール2A、14A、16は、他の分離濾布1、8だけが巻き掛けられるロール2、14よりも大径とされるとともに、分離ロール7よりは小径とされ、さらに複数のロール16のうちの1つは、支持軸17Aを中心にシリンダ装置17Bによって回動可能とされた圧搾ベルト緊張装置17のアーム17Cに取り付けられていて、、シリンダ装置17Bに所定の圧力を供給しアーム17Cを回動させることにより、圧搾ベルト15に所定の張力が与えられるようにされている。
【0039】
また、複数のロール16のうちの他の1つは、その少なくとも一端が、やはりシリンダ装置18Aにより圧搾ベルト15の走行方向Hに向けて進退する圧搾ベルト蛇行修正装置18のブラケット18Bに取り付けられていて、こうしてブラケット18Bを走行方向Hに進退させて該走行方向Hに対する当該ロール16の傾きを微調整することにより、圧搾ベルト15の走行に蛇行が生じたときには、これを修正するようにされている。ただし、これらのロール16も含めて、本実施形態の濾過装置および固液分離装置において、上記駆動ロール2A(分離ロール7)以外のロール2、14、16は、いずれも駆動手段に連結されない従動ロールとされている。
【0040】
さらに、圧搾ベルト15の走行経路には圧搾ベルト洗浄装置19が、他方の分離濾布8の走行経路には分離濾布洗浄装置20がそれぞれ設けられるとともに、一方の分離濾布1の走行経路にも図示されない洗浄装置が設けられ、また固液分離装置の底部には受け皿21が配設されている。さらにまた、上記ロール2Bの下方には、当該固液分離装置によって固液分離された被処理物Pのケーキを排出する排出口22が設けられるとともに、このロール2Bからそれぞれその走行方向Fに向けて互いに反対向きに離れてゆく一対の分離濾布1、8に対しては、被処理物Pと接していた面に接するようにスクレーパ23やワイヤー等が配設される。また、分離ロール7に分離濾布1、8および圧搾ベルト15が巻き掛けられた部分のさらに外周側には、断面円弧状の回収板24が圧搾ベルト15と間隔をあけて配設されていて、通気によって分離された液分を回収して上記受け皿21に導くようにされている。
【0041】
このような固液分離装置、この固液分離装置を備えた濾過装置、および該固液分離装置を用いた本発明の固液分離方法の一実施形態では、濾過装置の濾過手段4によって濾過された被処理物Pは、当該固液分離装置の分離ロール7の外周で一対の分離濾布1、8の間に挟み込まれるとともに、特に本実施形態ではその外周に圧搾ベルト15が高張力で巻き掛けられることにもよって、分離ロール7の径方向内周側に押圧力を受けて圧搾される。従って、この固液分離装置による被処理物Pの固液分離工程の後段に乾燥工程があるような場合でも、この乾燥工程における負荷を低減することができる。
【0042】
また、被処理物Pを挟み込んで分離ロール7に巻き掛けられた一対の分離濾布1、8は、被処理物Pの厚さ分だけ分離ロール7の中心軸線からの距離が異なり、しかも一方の分離濾布1が分離ロール7(駆動ロール2A)に直接巻き掛けられて走行させられるのに対し、他方の分離濾布5と圧搾ベルト15はこの一方の分離濾布1と被処理物Pを介して従動的に走行させられるために、分離ロール7の外周ではこれら一対の分離濾布1、5に周速差が生じ、この周速差により被処理物Pには、これを周方向に剪断しようとする剪断力が作用して、この剪断力と上記押圧力とによって被処理物Pは効率的に圧搾される。
【0043】
さらに、分離ロール7においては、上述のように一対の分離濾布1、8が巻き掛けられた範囲のうちの所定の回転位置において、通気ガスチャンバー10を介して通気ガスA、Bが通気孔9から噴出させられて分離濾布1、被処理物P、分離濾布8、および圧搾ベルト15を通して分離ロール7の径方向外周側に通気させられる。従って、被処理物Pから圧搾された液分は、この通気ガスA、Bとともに分離濾布8および圧搾ベルト15を介して該被処理物Pから分離させられ、回収板24に滴下して回収されるため、従来は十分な固液分離が困難とされていた被処理物Pに対しても十分な含液率の低減を図ることが可能となる。
【0044】
そして、この通気ガスチャンバー10は、分離ロール7の中心軸線方向に複数に分割されており、特に本実施形態ではこの中心軸線方向における分離濾布1、8および被処理物Pの幅の中央部の中央部通気ガスチャンバー10Aとその両側部の一対の側部通気ガスチャンバー10Bとから構成されて、これら中央部通気ガスチャンバー10Aと側部通気ガスチャンバー10Bとは、それぞれ通気配管11A、11B、通気ガス分岐チャンバー12A、12Bおよび導入配管12D、12Eを介して互いに異なる通気ガスA、Bの供給源に接続されているので、該中央部通気ガスチャンバー10Aと側部通気ガスチャンバー10Bから通気孔9を通して異なる態様で通気ガスA、Bを噴出させることにより、効率的な脱水を図ることが可能となる。
【0045】
すなわち、分離濾布1、8によって挟み込まれて分離ロール7の外周面に押し付けられた被処理物Pの厚さは、図3では簡略化されて一定の厚さに示されているが、実際には挟み込まれた被処理物Pの範囲で上記中心軸線方向の両側部が中央部よりも薄くなるため、例えば本実施形態のように、一対の側部通気ガスチャンバー10Bがこの被処理物Pの範囲の両側部に位置するとともに、中央部通気ガスチャンバー10Aはその間の中央部に位置している場合、同じ通気ガス圧で通気ガスA、Bを通気させると両側部では通気ガスBの漏れが生じて効率的な脱水を図ることができない。
【0046】
そこで、このような場合には、両側部は被処理物Pの厚みが薄いため高い通気ガス圧は必要なく、側部通気ガスチャンバー10Bから通気する通気ガスBの通気ガス圧を、中央部通気ガスチャンバー10Aの通気ガスAの通気ガス圧よりも小さくすることにより、通気ガスA、B全体のガス圧や流量は必要以上に多くすることなく、ランニングコストを抑え、効率的に被処理物P全体として含液率の少ないケーキを得ることができる。
【0047】
また、このように通気ガスA、Bの通気ガス圧や通気ガス流量を複数の通気ガスチャンバー10A、10B同士で異なる大きさとするほかに、例えば中央部通気ガスチャンバー10Aには常温の空気を通気ガスAとして供給する一方で、側部通気ガスチャンバー10Bには加熱した空気を通気ガスBとして供給して含液率の低減を図るようにしてもよい。さらに、同じ空気でも湿度の異なるものを供給したり、場合によってはこれら通気ガスA、Bとして、例えば空気とスチームなどの互いに異なる組成や成分のガスを供給したりしてもよい。
【0048】
さらにまた、被処理物Pの供給量や性状により、あるいは上述のように分離ロール7の外周で圧搾されるとともに周方向に剪断力を受けることにより、分離濾布1、8間に挟み込まれた被処理物Pの上記中心軸線方向の幅自体にばらつきが生じて、例えば被処理物Pが側部通気ガスチャンバー10B上にまで広がらなくなった場合などには、この側部通気ガスチャンバー10Bへの通気ガスBの供給を停止して、中央部通気ガスチャンバー10Aのみから通気ガスAを通気させるようにしてもよく、すなわちこれら複数の通気ガスチャンバー10A、10Bのうち少なくとも1つから通気ガスを噴出することにより被処理物Pを分離ロール7の径方向に通気して脱水するようにすればよい。
【0049】
また、上述のように被処理物Pの厚さの違いは通常は上記中心軸線方向の中央部と両側部とで生じ、被処理物Pの幅のばらつきもこの中央部を中心として両側部が拡縮することが多いので、本実施形態のように複数の通気ガスチャンバー10A、10Bを、この分離ロール7の中心軸線方向における被処理物Pの幅すなわち分離濾布1、8の幅の中央部の中央部通気ガスチャンバー10Aと、この中央部通気ガスチャンバー10Aの両側部の側部通気ガスチャンバー10Bとの少なくとも3つで構成するのが効果的である。
【0050】
なお、例えば中央部通気ガスチャンバー10Aをさらに複数に分割するなどして、4つ以上の通気ガスチャンバーを形成するようにしても、勿論構わない。また、例えば濾布1への供給手段3からの被処理物Pの供給状況などにより、上記中心軸線方向の一端側と他端側とで被処理物Pの厚さに偏りが生じるような場合には、これら一端側と他端側との2つで複数の通気ガスチャンバーを構成してもよい。
【0051】
さらに、本実施形態では、これら中央部と側部の複数の通気ガスチャンバー10A、10Bが、それぞれ異なる通気配管11A、11B、通気ガス分岐チャンバー12A、12Bおよび導入配管12D、12Eよりなる供給路を介して、互いに異なる通気ガスA、Bの供給源に接続されており、上述のように温度や湿度、組成や成分などの性状の異なる通気ガスA、Bを供給することが可能となる。
【0052】
また、同じ通気ガスを異なる通気ガス圧や流量で被処理物Pに通気させる場合でも、本実施形態によれば、通気配管11A、11Bに備えられた自動弁13は当該通気配管11A、11Bの通気ガスA、Bの流通を開閉するだけで、これら通気ガス圧や流量の制御は通気ガスの供給源側で行うことができるので、例えば通気配管11A、11Bを共通の通気ガス供給源に接続しておいて、上記自動弁13等のバルブの開閉量の調節により通気ガス圧や流量を制御したりするのに比べ、より正確な制御を促して確実に脱水効率の向上を図ることができる。
【0053】
その一方で、本実施形態の固液分離装置では、中心軸線方向に隔絶された中央部通気ガスチャンバー10Aと一対の側部通気ガスチャンバー10Bとからなる通気ガスチャンバー10が、周方向にも互いに隔絶されてほぼ等間隔に複数形成されるとともに、これら中央部および側部通気ガスチャンバー10A、10Bに接続されて通気ガスA、Bを供給する通気配管11A、11Bにはこのように自動弁13が備えられていて、分離濾布1、8が巻き掛けられた範囲にある通気ガスチャンバー10のうち、さらに所定の回転位置にある通気ガスチャンバー10の中央部および側部通気ガスチャンバー10A、10Bのみに、通気ガスA、Bが連続して供給されるようになされている。
【0054】
このため、被処理物Pの脱水に関与しない部分で通気が行われて通気ガスA、Bの供給量や供給のための動力、ランニングコストが増大するのを防ぐことができ、上述のように通気ガスチャンバー10が中心軸線方向に分割されていることとも相俟って、一層効率的な脱水を図ることができる。また、こうして上記所定の回転位置以外の脱水に関与しない部分で通気が行われなことにより、該回転位置の分離濾布1、8の走行方向F、Gの前後での分離濾布1、8の浮き上がりやケーキの吹き出しを防ぐこともでき、その一方で脱水に関与する部分では、分離ロール7の回転に伴い自動弁13の開閉が順次切り替えられながら、通気ガスチャンバー10の回転位置に関わらずに常に通気ガスA、Bが噴き出した状態を維持することができるので、一層効率的な液分の除去を促すことが可能となる。
【0055】
加えて、本実施形態では、分離ロール7に巻き掛けられた外周側の分離濾布8のさらに外周に、圧搾ベルト15が巻き掛けられてこの分離濾布8ごと被処理物Pを押さえ付けているので、たとえ脱液能力を高めるために通気ガスA、Bの通気ガス圧を大きくしても、上述のような分離濾布1、8の浮き上がりケーキの吹き出しが生じたりすることがなく、さらなる含液率の低減を図ることができる。また、本実施形態では、この圧搾ベルト15の通気度が分離濾布1、8の通気度より高くされており、通気によって被処理物Pから分離させられた液分を速やかに排出して上記回収板24から受け皿21に回収することができる。
【0056】
なお、このように通気ガスA、Bによる分離濾布1、8の浮き上がりやケーキの吹き出しを一層確実に防ぐには、分離ロール7に巻き掛けられる圧搾ベルト15の面圧を、この分離ロール7の径方向に通気する通気ガスA、Bの通気ガス圧よりも大きくすることが望ましい。例えば、通気ガス圧が0.4MPaの場合は、圧搾ベルト15の面圧は0.5MPa程度とされるのが望ましい。そして、上記構成の固液分離装置では、上述した圧搾ベルト緊張装置17によって圧搾ベルト15の張力を調整することにより、この面圧も所定の大きさに制御することができる。
【0057】
一方、このような固液分離装置を濾過手段4に対して濾布1の走行方向F側に備えた本実施形態の濾過装置では、この濾布1が固液分離装置における一対の分離濾布1、8の一方とされるとともに、分離ロール7が濾過装置の複数のロール2の1つとされている。このため、濾過手段4によって濾過された濾布1上の被処理物Pを、そのまま濾布1の走行によって固液分離装置に供給し、上述のように効率的に脱水することができる。
【0058】
従って、この濾過装置の濾過手段4によって濾過した被処理物Pを該濾過装置から一旦回収して、これとは別の遠心分離機やフィルタープレス等の2次脱水装置により脱水したりする必要がなく、また例えば既設の水平式真空濾過装置等の濾過装置にも、多少の改造を加える程度で適用することも可能であって、経済的である。また、液分が分離された被処理物Pを後段の乾燥装置において乾燥させたりする場合でも、やはり該乾燥装置における負担を軽減することができるとともに、このような後段の乾燥装置に製品を搬送する際にも、ベルトコンベアやスクリューコンベア等の搬送機器に液分の多い被処理物Pが付着することによるトラブル等も解決することが可能となる。
【0059】
また、上記固液分離装置および固液分離方法においては、上述のように濾布1の走行とともに回転する分離ロール7の外周において被処理物Pの脱水が行われるため、濾過装置におけるこの濾布1の走行が連続的なものであっても、間欠的なものであっても、上記押圧力と剪断力とさらに通気とによって効率的な脱水を図ることができる。従って、分離ロール7が連続的または間欠的に回転させられて濾布1が走行する場合は勿論、例えば濾布1をクランプして所定のストロークで走行方向Fに間欠移動させることにより走行させるような水平式真空濾過装置にも対応して適用することが可能である。
【0060】
さらに、本実施形態の固液分離装置では、その分離ロール7に巻き掛けられた一対の分離濾布1、8の外周にさらに圧搾ベルト15が巻き掛けられて押し付けられることにより、濾布1を分離ロール7外周に強く密着させて大きな摩擦力を発生させることができる。このため、たとえ通気によってこの摩擦力が低下しても、分離ロール7と分離濾布1との間に滑りを生じさせたりすることなく、一体的に分離ロール7を回転方向Tに回転させるとともに濾布1を安定して走行方向Fに走行させることができる。
【0061】
従って、このような固液分離装置を備えた濾過装置においては、本実施形態のようにこの分離ロール7を当該濾過装置における濾布1の駆動ロール2Aとすることができ、一対の分離濾布1、8の一方が濾過装置の濾布1と共用であることとも相俟って、設備コストやランニングコストの低減を図ることができる。特に、このような駆動ロール2Aは、濾布1を確実に走行させるためにある程度の直径が必要となるのに対し、分離ロール7も、その内周部に通気ガスチャンバー10が形成されるためにある程度の直径を要することになるので、これらを共用することによって他のロール2、14、16は、該駆動ロール2Aや分離ロール7よりも小径とすることができて、一層経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の濾過装置の一実施形態の概略を示す側面図である。
【図2】図1に示す濾過装置に用いられる、本発明の固液分離装置の一実施形態を示す側面図である。
【図3】図2に示す固液分離装置を図2の右側から見た一部破断背面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 濾布(分離濾布)
2、14、16 ロール
2A 駆動ロール
3 供給手段
4 濾過手段
7 分離ロール
8 分離濾布
9 貫通孔
10 通気チャンバー
10A 中央部通気ガスチャンバー
10B 側部通気ガスチャンバー
11A 中央部通気配管
11B 側部通気配管
12A 中央部通気ガス分岐チャンバー
12B 側部通気ガス分岐チャンバー
12C ロータリージョイント
12D 側部導入配管
12E 中央部導入配管
13 自動弁
15 圧搾ベルト
A、B 通気ガス
P 被処理物
F 濾布1の走行方向
G 分離濾布8の走行方向
H 圧搾ベルト15の走行方向
T 分離ロール7の回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の一対の分離濾布が重ね合わされて巻回されつつ上記分離ロールの回転方向に沿って走行可能とされるとともに、この分離ロールの内周部には、該分離ロールの径方向に通気する複数の通気ガスチャンバーが上記分離ロールの中心軸線方向に互いに隔絶されて形成されており、上記一対の分離濾布の間に供給された被処理物が、上記分離ロールの外周で該分離濾布の間に挟み込まれて圧搾されるとともに、上記複数の通気ガスチャンバーのうち少なくとも1つから噴出させられる通気ガスにより上記分離ロールの径方向に通気されて脱水させられることを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
上記複数の通気ガスチャンバーは、少なくとも上記中心軸線方向における上記分離濾布の幅の中央部とこの中央部の両側部とに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
上記複数の通気ガスチャンバーのうち少なくとも1つは、他の通気ガスチャンバーと異なる上記通気ガスの供給路に接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固液分離装置。
【請求項4】
複数のロールに巻回されて走行させられる濾布上に、供給手段から被処理物が供給されて、この供給手段よりも上記濾布の走行方向側に備えられた濾過手段により上記被処理物が濾過される濾過装置であって、上記濾過手段よりも上記走行方向側には、請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の固液分離装置が配設されていて、上記複数のロールのうち上記濾過手段よりも上記走行方向側に位置するロールが上記分離ロールとされるとともに、上記濾布が上記一対の分離濾布のうちの一方とされていることを特徴とする濾過装置。
【請求項5】
周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の一対の分離濾布を重ね合わせて巻回しつつ上記分離ロールの回転方向に沿って走行させるとともに、この分離ロールの内周部には、該分離ロールの径方向に通気する複数の通気ガスチャンバーを上記分離ロールの中心軸線方向に互いに隔絶して形成し、上記一対の分離濾布の間に供給された被処理物を、上記分離ロールの外周で該分離濾布の間に挟み込んで圧搾するとともに、上記複数の通気ガスチャンバーのうち少なくとも1つから通気ガスを噴出することにより上記分離ロールの径方向に通気して脱水することを特徴とする固液分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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