説明

固液分離装置および水洗トイレ

【課題】液分と固分とをしっかりと分離することができる固液分離装置および水洗トイレを提供する。
【解決手段】固液分離装置3は、便器2の排便口21の下方に設けられた略V字状に形成された濾過板と312と、濾過板312の下方に配置された略V字状の案内板313と、濾過板312と案内板313とを受け側を上に向けた状態で、かつ所定間隔をあけて両側を挟んで固定する一対の円盤311と、円盤311の中心同士を貫通し、案内板313の傾斜面の下端の位置に排液口314aが設けられた排液パイプ314と、濾過板312と共に案内板313を回転させる回転機構32とを備えている。回転機構32により排液パイプ314を回転支軸として円盤311と共に濾過板312および案内板313を回転させることで、液分が分離して排液パイプ314から流れていった後の固分が濾過板312から下方へ落下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚物の固分と液分とを分離して再利用を可能とする固液分離装置および水洗トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
イベント会場や工事現場では、ボックス型の簡易トイレが設置される。この簡易トイレは、便器の下方に設けられた汚物槽に、液体および固体が混ざった状態の汚物を貯留するものである。また、下水が普及していない地域でも、同様に、便器の下方に設けられた汚物槽に汚物を貯留するものが使用されている。
このような混在した状態で貯留するトイレに対し、液体と固体とを分離するトレイが特許文献1に記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載の固液分離装置は、便器の排便口の下方に配装された上面凹状型に形成された受皿が一端側で回動するように軸支固定され、常時には液分が受皿上面を滴水にし、排液口から排液パイプの開口へ向かって流下および落下し、一方、固分はレバー操作により受皿が回動して、排便パイプに向かって滑動落下することで、液体と固体とを分離するものである。
【特許文献1】実開昭59−151983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の固液分離装置では、汚物を受ける受皿が上面凹状型に形成されているので、受皿から溢れた液分は排液パイプへ流れていくが、少なからず液分が残留してしまい、受皿を回動したときに固分と共に液分が排便パイプへ流れてしまうものと想定される。
【0005】
そこで本発明は、液分と固分とをしっかりと分離することができる固液分離装置および水洗トイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の固液分離装置は、便器の排便口の下方に設けられた濾過板と、前記濾過板の下方に、傾斜した状態で配置された案内板と、前記案内板の傾斜面の下端の位置に排液口が設けられた排液パイプと、前記濾過板と共に前記案内板を回転させる回転機構とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の固液分離装置は、濾過板により固分と液分とを分離するものである。濾過板により濾された液分は濾過板の下方に配置された案内板に落ちる。案内板に落ちた液分は、案内板の傾斜面に案内されて下端まで到達すると、排液口から排液パイプ内へと入っていく。そして回転機構により濾過板と共に案内板を回転させることで、濾過板上に残った固分はそのまま落下する。従って、液分は排液パイプから取り出すことができ、固分は濾過板と案内板との下方に落下させることができる。
【0008】
前記濾過板と前記案内板とは、それぞれが略V字状に形成されると共に、互いに所定間隔をあけて配置され、前記排液パイプは、前記案内板の下端に設けられ、前記回転機構は、前記排液パイプを回転支軸として前記濾過板と前記案内板とを回転させるのが望ましい。
固分は略V字状に形成された濾過板に溜まり、液分は略V字状に形成された案内板に傾斜面に沿って下端に集まる。案内板の下端には排液パイプが設けられているので、集まった液分が排液口から排液パイプ内へ入る。そして、排液パイプを回転支軸として濾過板と共に案内板を回転することで、逆さまになった濾過板から固分を落下させることができる。
【0009】
前記濾過板と前記案内板とには、上方へ向けるための錘部が設けられ、前記回転機構には、前記濾過板と前記案内板とに回転駆動力を伝達するラチェット機構付き歯車が設けられていると、濾過板と案内板とを逆さまの状態まで回転させて固分を落下させたときに、錘部の重さにより一気に回転方向に回転して元の状態に復帰させることができる。
【0010】
本発明の水洗トイレは、本発明の固液分離装置と、分離された液分を貯留する小便槽と、前記小便槽に貯留された液分を汲み上げて便器の洗浄水として再利用するポンプとを備えたことを特徴とする。この発明によれば、液分は排液パイプから取り出すことができ、固分は濾過板と案内板との下方に落下させることができる。また、液分を洗浄水として再利用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、液分は排液パイプから取り出すことができ、固分は濾過板と案内板との下方に落下させることができるので、液分と固分とをしっかり分離することができる。また、液分を洗浄水として再利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る水洗トイレを図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る水洗トイレを正面から見た図である。図2は、図1に示す水洗トイレのA−A線矢視図である。
【0013】
図1および図2に示す水洗トイレ1は、和式の便器2と、汚物の液分と固分とを分離する固液分離装置3と、便器2を洗浄するための水洗機構4とを備えている。
【0014】
便器2には、下方に向かって開口した排便口21が形成されている。
固液分離装置3は、汚物を受け固分と液分とに分離する回転部31と、この回転部31を回転させる回転機構32とを備えている。
【0015】
回転部31は、2枚の円盤311と、円盤311に挟まれた略V字状の濾過板312と、濾過板312の下方に位置する略V字状の案内板313と、案内板313の下端に位置する排液パイプ314と、円盤311の下部同士の間に保持された錘部315と、回転部全体を吊り下げる保持金具316を備えている。
【0016】
円盤311は、直径が約30cm程度の円形状に形成されている。円盤311の中心には、排液パイプ314が貫通している。
濾過板312は、縦列および横列に並べられた約1cmの貫通孔312aが設けられている。この濾過板312は、排液パイプ314を中心として斜め上方に向かって広がるように円盤311同士の間に配置されている。濾過板312は、パンチングメタルとしたり、ドリルによる穿孔加工した板体としたりすることができる。また、濾過板312は、メッシュ板や目の細かい金網としたりすることもできるが、汚物が目地に入り込み取り除きにくくなるため、パンチングメタルなどとするのが望ましい。
【0017】
案内板313は、濾過板312と互いに所定間隔をあけ、排液パイプ314を中心として斜め上方に向かって広がるように円盤311同士の間に配置されている。
排液パイプ314には、濾過板312と案内板313との間の位置にある案内板313の下端に軸線に沿って細長孔に形成された排液口314aが設けられている。排液パイプ314の一方の端部は閉鎖されており、他方の端部には屈曲したL字管314bが設けられている。
錘部315は、濾過板312と案内板313とを汚物の受け側を上方に向けて安定させるために設けられている。
保持金具316は、便器2の両側から垂下した一対の細長板状体である。この保持金具316は、排液パイプ314との間にベアリング(図示せず)が介在していることで、回転自在に保持している。
【0018】
回転機構32は、排液パイプ314に設けられた第1スプロケット321と、第1スプロケット321を駆動する第2スプロケット322と、第1スプロケット321と第2スプロケット322とに亘って巻き掛けられた無端チェーン323とを備えている。
第1スプロケット321は、ラチェット機構付きの鎖歯車である。第2スプロケット322には、回転軸に対して偏心した位置に、ハンドル322aが設けられている。
【0019】
水洗機構4は、小便槽41と、大便槽42と、上水槽43と、小便槽41からの尿を汲み上げる第1ポンプ44と、上水槽43からの水を汲み上げる第2ポンプ45とを備えている。
【0020】
小便槽41は、排液パイプ314に端部に設けられたL字管314bの下方に配置されている。大便槽42は、回転部31の下方に配置されている。上水槽43は水道水などの上水が貯留される。
【0021】
第1ポンプ44と第2ポンプ45とは、足踏みにより作動する電動ポンプである。
第1ポンプ44には、小便槽41に向かって垂下する尿吸水ホース44aと、便器2内へ向かって延びる第1洗浄ホース44bとが接続されている。尿吸水ホース44aの先端部分には、リング状のフロート44cが設けられている。また、第2ポンプ45には、上水槽43に向かって垂下する上水吸水ホース45aと、便器2内へ向かって延びる第2洗浄ホース45bとが接続されている。
本実施の形態では、第1ポンプ44と第2ポンプ45とを電動ポンプとしているが、電気の供給が不可能な場所に設置される簡易トイレとする場合には、手動式のポンプとすることも可能である。
【0022】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る水洗トイレの使用状態および動作を図面に基づいて説明する。
【0023】
使用者から排泄された汚物は、便器2の排便口21を通過して回転部31へ落下する。回転部31では、落下した汚物のうち固分が濾過板312へ落ち、濾過板312上の傾斜面に沿って下端を中心に留まる。液分も濾過板312へ流れるが、濾過板312には貫通孔312aが設けられているので、貫通孔312aから案内板313へ滴下する。貫通孔312aから滴下した液分は、案内板313に沿って流れることで集約されて下端に位置する排液口314aから排液パイプ314内へ流れ込む。案内板313は両側が円盤311に挟まれているため液分が漏れることなく下端まで液分を案内することができる。
排液パイプ314内を流れる液分は、L字管314bから小便槽41へ流れ溜まっていく。
【0024】
使用者の排便が終了すると、使用者はハンドル322aを回転させることで、第2スプロケット322が回転する。この第2スプロケット322の回転は、無端チェーン323の周回により第1スプロケット321へ伝達され、保持金具316によって保持された排液パイプ314を回転軸として回転部31が回転を始める。
【0025】
回転部31が回転することで、濾過板312の一面側が上り傾斜面から水平面となり、下り傾斜面となる。濾過板312の一面側が下り傾斜面となることで、固分が移動し始め、端部から滑落して、大便槽42へ蓄積される。水分を多く含む固分は、高い粘着性を有するものであるが、使用者のハンドル322aの操作により回転部31が半回転もすれば逆さまの状態となるので、高い粘着性の固分であっても、濾過板312から大便槽42へ落下させることができる。
【0026】
回転部31の半回転により、濾過板312上から固分が滑落すると共に錘部315が上に移動することで、回転部31の重心が高い位置に移動する。第1スプロケット321はラチェット機構を備えているので、重心が高くなった回転部31は、自動的に回転方向に回転し始め、第1スプロケット321を空回りさせながら、元の状態に復帰する。従って、ハンドル322aの回転を半回転した段階で、使用者が自動的に元の状態に復帰する回転部31を視認することで、それ以上の回転をさせる必要がないことを認識するので、ハンドル322aの回し過ぎを抑止することができる。このような簡単な操作で濾過板312上に残った固分を処理することができる。
【0027】
ハンドル322aの操作が終了すると、第1ポンプ44を足踏みする。この足踏みにより第1ポンプ44が作動する。第1ポンプ44に接続された尿吸水ホース44aの先端から小便槽41に貯留された液分が汲み上げられる。汲み上げられた液分は、第1洗浄ホース44bを介して便器2内へ流れることで、便器2の内側面を洗浄する。
【0028】
尿吸水ホース44aの先端部分にはフロート44cが設けられているので、尿吸水ホース44aの先端部分は浮上した状態である。従って、沈殿した汚物を避けて上澄みだけを汲み上げることができるので、沈殿した汚物を汲み上げてしまい、便器2を汚してしまうことが防止できる。便器2を洗浄した液分は、排便口21から濾過板312へ流れ、濾過板312の貫通孔312aから案内板313へ落ち、排液パイプ314を通って、再び小便槽41へ貯留される。このように汚物の液分はリサイクルされる。
【0029】
小便槽41に液分が蓄積されていない状態や、きれいな水で便器2を洗浄したい場合は、第2ポンプ45を足踏みすることで、上水槽43に貯留された上水が、上水吸水ホース45aから汲み上げられ、第2洗浄ホース45bを介して便器2へ流れる。そうすることで、上水による洗浄も可能である。
【0030】
このように、濾過板312により濾された汚物の液分は、濾過板312の下方に配置された案内板313に落ち、案内板313の傾斜面を伝って排液口314aから排液パイプ314内へと入り、汚物の固分は濾過板312上に残留するので、液分と固分とをしっかりと分離することができる。そして、回転機構32により回転部31を形成する濾過板312と共に案内板313を回転させることで、濾過板312上に残った固分をそのまま直下に落下させることができるので、固分のみを容易に溜めることができる。
【0031】
また、案内板313は略V字状に形成されているので、濾過板312から滴下した液分を下端に集約させることができるので、排液パイプ314へ確実に集約することができる。また、濾過板312は、略V字状に形成され、案内板313と所定間隔をあけて配置されているので、濾過板312と案内板313とをコンパクトに配置することができる。
【0032】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、本実施の形態では、濾過板312は略V字状に形成されているが、固分が外へ漏れ出ないようにする周壁を有するトレイ状であってもよい。また、本実施の形態では、案内板313は略V字状に形成されているが、濾過板の下方に傾斜した状態で配置され、案内板の下端に排液口が設けられた排液パイプが配置されていれば、単なる平板であってもよい。
更に、2枚の円盤311の下部の間には、錘部315が設けられているが、2枚の円盤311の下部の厚みを、上部の厚みより厚く形成することで、回転部31の重心を調整してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、固分と液分とをしっかりと分離して、液分を洗浄水として使用できるので、水洗トイレに好適であり、イベント会場や工事現場に設置される簡易トイレには最適である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係る水洗トイレを正面から見た図である。
【図2】図1に示す水洗トイレのA−A線矢視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 水洗トイレ
2 便器
21 排便口
3 固液分離装置
31 回転部
311 円盤
312 濾過板
312a 貫通孔
313 案内板
314 排液パイプ
314a 排液口
314b L字管
315 錘部
316 保持金具
32 回転機構
321 第1スプロケット
322 第2スプロケット
322a ハンドル
323 無端チェーン
4 水洗機構
41 小便槽
42 大便槽
43 上水槽
44 第1ポンプ
44a 尿吸水ホース
44b 第1洗浄ホース
44c フロート
45 第2ポンプ
45a 上水吸水ホース
45b 第2洗浄ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の排便口の下方に設けられた濾過板と、
前記濾過板の下方に、傾斜した状態で配置された案内板と、
前記案内板の傾斜面の下端の位置に排液口が設けられた排液パイプと、
前記濾過板と共に前記案内板を回転させる回転機構とを備えたことを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
前記濾過板と前記案内板とは、それぞれが略V字状に形成されると共に、互いに所定間隔をあけて配置され、
前記排液パイプは、前記案内板の下端に設けられ、
前記回転機構は、前記排液パイプを回転支軸として前記濾過板と前記案内板とを回転させる請求項1記載の固液分離装置。
【請求項3】
前記濾過板と前記案内板との受け側を上方へ向けるための錘部が設けられ、
前記回転機構には、前記濾過板と前記案内板とに回転駆動力を伝達するラチェット機構付き歯車が設けられている請求項2記載の固液分離装置。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれかの項に記載の固液分離装置と、
分離された液分を貯留する小便槽と、
前記小便槽に貯留された液分を汲み上げて便器の洗浄水として再利用するポンプとを備えたことを特徴とする水洗トイレ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−138628(P2010−138628A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316946(P2008−316946)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(505062628)
【Fターム(参考)】