説明

固液分離装置及び固液分離装置を備えたトイレ設備

【課題】分離した固体分を良好に貯留することができる固液分離装置及び固液分離装置を備えたトイレ設備を提供する。
【解決手段】固液分離装置10は、人間の排泄物、家畜糞尿、家庭用生ゴミ等の固液混合物を固体分と液体分とに分離する。固液分離装置10は、固液混合物を上面に受け、液体分が下方に通過する開口部を設けた分離板20と、この分離板20上に残存した固体分を前記分離板上から複数方向に押し出す搬送装置30とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固液分離装置及び固液分離装置を備えたトイレ設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図19には従来の固液分離装置を備えたトイレ設備が開示されている。このトイレ設備は、非水洗式便器と、この非水洗式便器の便器排出口の下方に配置し、固体分である大便と液体分である小便とを分離して排出する固液分離装置と、固液分離装置から排出される大便が投入される大便用槽と、大便用槽とは別に設けられ、固液分離装置から排出される小便が投入される小便用槽とを備えている。固液分離装置は、固体分である大便と液体分である小便とを分離する分離板と、分離板の上面に残存した大便を分離板の一端部から押し出す搬送装置とを備えている。
【0003】
このトイレ設備では、大便は大便用槽に投入され、小便は小便用槽に投入されるため、大便用槽内に小便が流入しない。このため、このトイレ設備は、大便用槽内に貯留した大便の水分が過剰にならず、大便用槽内に貯留した大便を好気性微生物によって良好に発酵処理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−167679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の固液分離装置を備えたトイレ設備では、分離板の一端部のみから大便を押し出すため、大便用槽において分離板の一端部の下方に大便が早期に堆積してしまう。このように、この固液分離装置では大便が大便用槽内に一か所に偏って貯留されてしまう。また、大便が早期に堆積した部分では好気雰囲気が形成され難いため、好気性微生物による大便の発酵処理が不充分になるおそれがある。このように、このトイレ設備では固液分離装置で分離した大便の発酵処理が良好に行われないおそれがある。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、分離した固体分を良好に貯留することができる固液分離装置及び固液分離装置を備えたトイレ設備を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の固液分離装置は、人間の排泄物、家畜糞尿、家庭用生ゴミ等の固液混合物を固体分と液体分とに分離する固液分離装置であって、
前記固液混合物を上面に受け、液体分が下方に通過する開口部を設けた分離板と、
この分離板上に残存した固体分を前記分離板上から複数方向に押し出す搬送装置とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この固液分離装置は、搬送装置が分離板上に残存した固体分を分離板上から複数方向に押し出すことができるため、分離板状から押し出された固体分が一か所に早期に堆積してしまうことを防止することができる。このため、固体分の貯留を良好に行うことができる。
【0009】
したがって、本発明の固液分離装置は分離した固体分を良好に貯留することができる。
【0010】
本発明のトイレ設備は、人間の排泄物が投入される投入口の下方に配置して人間の排泄物を大便と小便とに分離する前記固液分離装置と、
前記分離板上から大便が押し出される位置の下方に設けられた大便が投入される大便用槽と、
この大便用槽とは隔離され、前記分離板の下方に設けられた小便が投入される小便用槽とを備えていることを特徴とする。
【0011】
このトイレ設備は、大便を分離板上から複数方向に押し出し、大便用槽の複数か所に落下させて貯留することができるため、大便が大便用槽の一か所に早期に堆積してしまうことを防止することができる。また、小便は小便用槽に投入されるため、大便用槽に貯留した大便は小便によって水分が過剰にならない。このため、このトイレ設備は大便を好気性微生物によって良好に発酵処理することができる。
【0012】
したがって、本発明のトイレ設備は固液分離装置で分離した大便を良好に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1のトイレ設備を示す概略図である。
【図2】実施例1及び2の固液分離装置を示す分解斜視図である。
【図3】実施例1及び2の押出部材が分離板の他端部に移動した状態を示す断面図である。
【図4】実施例1及び2の押出部材が分離板の他端部に移動した状態を示す平面図である。
【図5】実施例1及び2の押出部材が分離板の一端部に移動した状態を示す断面図である。
【図6】実施例1及び2の押出部材が分離板の一端部に移動した状態を示す平面図である。
【図7】実施例2のトイレ設備であって、ある設定期間の使用状態を示す概略図である。
【図8】実施例2のトイレ設備であって、図7で示す設定期間とは別の設定期間の使用状態を示す概略図である。
【図9】実施例3のトイレ設備であって、分離板と搬送装置とが回転装置に保持されている状態を示す断面図である。
【図10】実施例3のトイレ設備であって、分離板と搬送装置とが回転する様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0015】
本発明の固液分離装置において、前記搬送装置は、前記分離板の一端部と、この一端部の反対側に位置する他端部との間を往復移動し、前記分離板上の固体分を前記一端部及び前記他端部から押し出す押出部材を有し得る。この場合、この搬送装置は単純な構造及び動きで分離板の一端部及び他端部の2か所から固体分を押し出すことができる。
【0016】
本発明の固液分離装置において、前記押出部材は、前記往復移動方向に対して直向して延びており、前記一端部に向けて下降傾斜した第1押出板と、前記往復移動方向に対して直向して延びており、他端部に向けて下降傾斜した第2押出板とを具備し得る。この場合、押出部材を往復移動させることによって、第1押出板が分離板の一端部から固体分を押し出し、第2押出板が分離板の他端部から固体分を押し出すことができる。
【0017】
本発明の固液分離装置は前記搬送装置を水平面上で回転自在に保持する回転装置を備え得る。この場合、搬送装置を回転装置によって水平面上で回転させることができる。このため、分離板上に残存した固体分を搬送装置によって分離板上から任意の方向に押し出すことができる。
【0018】
本発明のトイレ設備は前記分離板上から大便が押し出される位置ごとに別々に設けられた複数の前記大便用槽を備えており、
前記搬送装置は設定期間毎に前記分離板上から大便を押し出す方向を変更し、大便が投入される前記大便用槽以外の前記大便用槽は、前記設定期間の間、貯留した大便の発酵処理に利用され得る。
【0019】
この場合、設定期間、例えば半年間、複数の大便用槽の内、一つの大便用槽のみに分離した大便を投入し、他の大便用槽には大便を投入しないようにする。これによって、他の大便用槽では、少なくとも設定期間(半年間)、貯留した大便を好気性微生物によって発酵処理することができる。このため、他の大便用槽に貯留した大便の全てを充分に発酵処理することができるため、そのまま堆肥として有効に利用することができる。
【0020】
次に本発明の固液分離装置を備えたトイレ設備を具体化した実施例1〜3について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
<実施例1>
実施例1のトイレ設備は、図1に示すように、非水洗式便器1、固液分離装置10、大便用槽60、及び小便用槽70を備えている。非水洗式便器1は、便器本体2と、便器本体2の上面に取り付けた便座3及び便蓋4とを有している。便器本体2は、上下が開口した便鉢部5を有しており、下方開口が便器排出口6を形成している。便器排出口6は、床部材7に設けられた開口に連結しており、人間の排泄物が投入される投入口を形成している。
【0022】
固液分離装置10は、図2〜図6に示すように、分離板20、搬送装置30、スクレーパー部材40、及び除去部材51、52A、52Bを有している。分離板20は、平面視が長方形状の平板であり、便器排出口6の下方に水平状態で配置されている。分離板20は長辺に対して平行にスリット状の複数の開口部21A、21Bを設けている。各開口部21A、21Bは、分離板20の短辺側の一端部20Aと、この一端部20Aの反対側に位置する他端部20Bとの間に延びている。分離板20は、長辺を形成する両端部から垂直上方に延びた側板22と、側板22の上端から外側水平方向に延びた上板23とを連続的に設けている。上板23は分離板20の長辺方向の両端部にスペーサー24を介して係止板25を固定している。
【0023】
床部材7の下面には便器排出口6を挟んで平行に延びた一対のレール部材26が取り付けられている。固液分離装置10は、係止板25の外側両端部をレール部材26に係止することによって、床部材7の下面にスライド自在に吊下げられ、固定されている。このため、固液分離装置10は設置及びメンテナンス等のための取外しを容易に行うことができる。
【0024】
分離板20が便器排出口6の下方に配置されているため、非水洗式便器1を利用して使用者が用便をすると、排泄物(固液混合物)が分離板20の上面に落下する。分離板20の上面に受けた排泄物のうち、液体分である小便は各開口部21A、21Bを下方へ通過し、固体分である大便は分離板20上に残存する。このように、固液分離装置10は、分離板20によって排泄物を小便と大便に分離することができる。
【0025】
搬送装置30は、押出部材31、及び押出部材31を分離板20の一端部20Aと他端部20Bとの間で往復移動させる駆動装置36を有している。押出部材31は第1押出板32及び第2押出板33を具備している。第1押出板32は、押出部材31の往復移動方向に対して直交して延びた横長矩形状の平板であり、分離板20の一端部20Aに向けて下降傾斜している。
【0026】
第1押出板32は両端部に連続して形成された一対の支持板34を有している。各支持板34は第1押出板32に直交した平板である。各支持板34は第1押出板32に連続して折り曲げられている部分が上端部から分離板20の一端部20Aに向けて下降傾斜した第1傾斜辺34Aを形成している。また、各支持板34は第1傾斜辺34Aの上端から反対側(分離板20の他端部20B)に向けて下降傾斜した第2傾斜辺34Bを有している。各支持板34は、第1傾斜辺34A及び第2傾斜辺34Bの下端から内側水平方向に延びた底辺34Cと、中央部で底辺34Cより下方に突出した横長矩形状の凸部34Dとを有している。また、各支持板34は上端部に貫通孔34Eを設けている。この貫通孔34Eは後述する第2押出板33を回動自在に軸支した軸部材35が挿通している。
【0027】
第1押出板32は分離板20の両側板22のそれぞれに最も近い開口部(両側開口部21B)間に亘って延びている。このため、各支持板34は、凸部34Dを両側開口部21Bに挿通し、両側開口部21Bに沿って移動することができる。第1押出板32は支持板34の第1傾斜辺34Aに沿って分離板20上に配置されている。このため、第1押出板32は分離板20の一端部20Aに向けて下降傾斜している。また、第1押出板32は支持板34とともに分離板20の一端部20Aと他端部20Bとの間を往復移動することができる。
【0028】
第2押出板33は、押出部材31の往復移動方向に対して直交して延びた横長矩形状の略平板である。この第2押出板33は横方向が第1押出板32よりわずかに長く形成されている。第2押出板33は上辺と左右辺の上部が同じ直角方向に折り曲げられている。第2押出板33は左右辺の折り曲げた部分に貫通孔33Aを設けている。第2押出板33は、この貫通孔33Aに軸部材35を挿入して支持板34に軸支され、支持板34の第2傾斜辺34Bに裏面が当接している。これによって、第2押出板33は分離板20の他端部20Bに向けて下降傾斜して配置されている。また、第2押出板33は分離板20の一端部20Aから他端部20Bへの方向に回動することができる。
【0029】
このように、押出部材31は、分離板20より上方において、第1押出板32と第2押出板33とによって往復移動方向に対する中央部が一番高い略山型に形成されている。このため、非水洗式便器1を利用した使用者が用便をした際に、仮に押出部材31が便器排出口6の下方に位置していたとしても、排泄物は押出部材31上に留まらず、第1押出板32及び第2押出板33に沿って分離板20上に落下する。
【0030】
スクレーパー部材40は、分離板20の短辺方向に亘って延びた平板であり、分離板20上に載置されている。スクレーパー部材40は分離板20の短辺に対して平行な辺部41が鋸刃状に形成されている。また、スクレーパー部材40は分離板20上に載置した際に分離板20の各開口部21A、21Bに対応する位置にスリット状の開口部42を貫設している。
【0031】
支持板34の凸部34Dは除去部材51を構成している。また、他の除去部材52A、52Bは左右上部が横方向に延びた鍔部53を有する矩形状の平板で形成されている。各除去部材51、52A、52Bは後述する連結部材56が挿通する貫通孔54を設けている。支持板34の底辺34Cがスクレーパー部材40の開口部42の縁部に係止しており、除去部材51である凸部34Dがスクレーパー部材40の開口部42及び分離板20の両側開口部21Bを挿通して分離板20の下方に突出している。また、他の除去部材52A、52Bは、鍔部53がスクレーパー部材40の開口部42の縁部に係止しており、スクレーパー部材40の開口部42及び分離板20の開口部21Aを挿通して分離板20の下方に突出している。他の除去部材52A、52Bの内、離れた位置に配置した一対の除去部材52Bは後述する駆動装置36の接続部材38の両端部38Aに連結するためのボルト孔55を2個ずつ設けている。他の除去部材52A、52Bの鍔部53は、両上端角部が第1押出板32の裏面、または第2押出板33の裏面に当接するように形成されている。
【0032】
各除去部材51、52A、52Bは、分離板20より下方で貫通孔54に挿通した棒状の連結部材56によって連結されている。連結部材56は、貫通孔54から抜け出ないように、両端部に抜け止め部材56Aが取り付けられている。なお、連結部材56の両端部に抜け止め部材56Aを取り付けず、連結部材56の両端部を変形させることによって、連結部材56が貫通孔54から抜け出ないようにしてもよい。
【0033】
各除去部材51、52A、52Bは、分離板20の各開口部21A、21Bに挿通した状態で、各開口部21A、21Bに沿って往復移動することができる。また、各除去部材51、52A、52Bは、連結部材56及び支持板34を介して第1押出板32及び第2押出板33に一体にされている。このため、第1押出板32、第2押出板33、各除去部材51、52A、52B及びスクレーパー部材40は、一緒に分離板20の一端部20Aと他端部20Bとの間を往復移動することができる。
【0034】
駆動装置36は、プッシュプル式ケーブル37と、接続部材38と、レバー部材39とを有している。プッシュプル式ケーブル37は、両端に設けられた筒状のアウターケーシング37Aと、各アウターケーシング37A内にスライド自在に収納され、アウターケーシング37Aの先端から出入りする棒状のロッド部材37Bと、各ロッド部材37Bの後端部を連結するインナーケーブル37Cとを具備している。
【0035】
接続部材38は、横長の平板であり、両端部38Aが同じ方向に直角に折り曲げられ、一対の除去部材52Bを連結するためのボルトを挿通する貫通孔38Bが設けられている。接続部材38は、中央部にプッシュプル式ケーブル37の一方のロッド部材37Bの先端部を連結しており、両端部に一対の除去部材52Bを連結している。
【0036】
レバー部材39は、図1に示すように、棒状のレバー本体39Aと、操作ボックス39Bとを具備している。レバー本体39Aはプッシュプル式ケーブル37の他方のロッド部材37Bの先端部が連結している。操作ボックス39Bはレバー本体39Aを挿通する一直線状のガイド孔39Cを有している。レバー本体39Aはガイド孔39Cに沿って往復移動する。操作ボックス39Bは、ガイド孔39に沿って水平方向にレバー本体39Aを操作することができるように、非水洗式便器1が設置されたトイレ室の壁面に固定されている。
【0037】
トイレ室の床下の全体が大便用槽60として利用されている。つまり、大便用槽60は、床基礎63、床基礎63の周囲から立ちあがった側壁64、及び床部材7に囲まれて形成されており、固液分離装置10の分離板20上から大便が押し出される位置の下方に設けられている。側壁64は点検口65を設けている。点検口65は、大便用槽60内の発酵処理済みの大便を搬出したり、固液分離装置10等を点検したりする際に利用する。点検口65は開閉自在な扉部材66が取り付けられている。この扉部材66は、大便に混入して発酵処理を促進するための灰を大便用槽60内に投入する投入筒66Aを設けている。投入筒66Aは、常時、蓋部材66Bによって閉鎖されている。
【0038】
大便用槽60は、床部材7を貫通して立ち上がる排気パイプ67によって、外部に連通している。排気パイプ67は、図示しないファンを有し、強制的に大便用槽60内の空気を排気することができる。
【0039】
小便用槽70は、固液分離装置10の下方に連続して吊り下げられており、分離板20の下方に設けられている。小便用槽70は、分離板20よりわずかに大きい底面板71と、底面板71の周囲から立ち上がった側面板72とを有しており、上端開口が分離板20を囲むようにして固液分離装置10の下端に固定されている。このように、小便用槽70は大便用槽60と隔離して形成されている。
【0040】
小便用槽70は側面板72の下端部に連通した排出管73を有している。排出管73は、下降傾斜しており、大便用槽60の側壁64を貫通して屋外に配置した小便用貯留タンク80に連通している。
【0041】
このような構成を有する実施例1のトイレ設備は以下のように使用される。
【0042】
非水洗式便器1の使用者は、用便後にレバー本体39Aを非水洗式便器1に対して近い方から遠い方へ(図1において、右から左へ)移動させる。これによって、プッシュプル式ケーブル37の他方のロッド部材37Bはアウターケーシング37A内から引き出され、一方のロッド部材37Bは、図3及び図4に示すように、アウターケーシング37A内に引き込まれる。このため、搬送装置30の押出部材31は分離板20の一端部20Aから他端部20Bへ移動する。
【0043】
この際、スクレーパー部材40の移動方向の前側に位置する鋸刃状の辺部41が分離板20上の大便をこそぎ落としつつ、さらに各除去部材51、52A、52Bが各開口部21A、21Bに付着又は各開口部21A、21Bを閉鎖する大便を除去しながら、第2押出板33が分離板20上に残存した大便を分離板20の他端部20Bから押し出す。このようにして、大便は大便用槽60内に投入される。
【0044】
その後、非水洗式便器1を利用して用便をした使用者は、レバー本体39Aを非水洗式便器1に対して遠いほうから近いほうへ(図1において、左から右へ)移動させる。これによって、プッシュプル式ケーブル37の他方のロッド部材37Bはアウターケーシング37A内に押し込まれ、一方のロッド部材37Bは、図5及び図6に示すように、アウターケーシング37A内から押し出される。このため、搬送装置30の押出部材31は分離板20の他端部20Bから一端部20Aへ移動する。
【0045】
この際、スクレーパー部材40の移動方向の前側に位置する鋸刃状の辺部41が分離板20上の大便をこそぎ落としつつ、さらに各除去部材51、52A、52Bが各開口部21A、21Bに付着又は各開口部21A、21Bを閉鎖する大便を除去しながら、第1押出板32が分離板20上に残存した大便を分離板20の一端部20Aから押し出す。このようにして、大便は大便用槽60内に投入される。
【0046】
一方、非水洗式便器1を利用して排泄された小便は、図1に示すように、分離板20の各開口部21A、21Bを下方へ通過し、小便用槽70内に投入される。小便用槽70内に投入された小便は、排出管73を介して小便用貯留タンク80に貯留される。
【0047】
このように、このトイレ設備は大便を分離板20の一端部20A及び他端部20Bの2か所から大便用槽60内に投入することができる。このため、大便用槽60の2か所に大便を落下させて貯留することができるため、大便が大便用槽60の一か所に早期に堆積してしまうことを防止することができる。また、小便は小便用槽70に投入され、排出管73を介して小便用貯留タンク80に貯留されるため、大便用槽60に貯留した大便は、小便によって水分が過剰にならず、好気性微生物によって良好に発酵処理することができる。
【0048】
したがって、実施例1のトイレ設備は固液分離装置10で分離した大便を良好に処理することができる。
【0049】
また、搬送装置30が分離板20の一端部20Aと他端部20Bとの間を往復移動し、第1押出板32が分離板20の一端部20Aから大便を押し出し、第2押出板33が分離板20の他端部20Bから大便を押し出す。このように、この搬送装置30は単純な構造及び動きで分離板20の一端部20A及び他端部20Bの2か所から大便を押し出すことができる。
【0050】
また、このトイレ設備は、使用者が用便をした後に、レバー本体39Aを一方向に移動させることによって、大便を大便用槽60内に投入することができる。このように、単純な操作によって大便用槽60内に大便を投入することができる。
【0051】
<実施例2>
実施例2のトイレ設備は、図7及び図8に示すように、別々に設けられた2個の大便用槽61、62を備えている。また、このトイレ設備は小便用槽75内にリン吸着体91と水分保持体92とを収納している。さらに、このトイレ設備はレバー部材39がトイレ室の壁面に設けられた円形の回転盤8上に固定されている。他の構成は実施例1と同様であり、同一の構成は同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0052】
このトイレ設備は、固液分離装置10の下方に床基礎63から立ち上げた立壁68によって、その内側に小便用槽75を形成している。トイレ設備は、上方が開口し、底面に排出口90Aを有する容器90を小便用槽75の上部に配置している。この容器90はリン吸着体91を収納している。リン吸着体91は、炭や、小便を分解する分解菌を担持した廃培地、赤玉土等のリンの吸着性が高い球体と、球体を覆う藁成形体とから形成されている。リン吸着体91は小便に含まれるリンを吸着することができる。
【0053】
トイレ設備は、小便用槽75内であって、容器90の下方に複数枚の水分保持体92を収納している。水分保持体92は、平板状であり、水平方向に拡げた状態で上下方向に間隔を空けて、複数枚が容器90の下方に吊り下げられている。このように、水分保持体92は、その上下に空気が流れるように配置されている。水分保持体92は、容器90の排出口90Aから落下した小便を十分に保持することができる。また、水分保持体92は、空気との接触を良好に行うことができるため、保持した小便を良好に蒸発させることができる。
【0054】
2個の大便用槽61、62は、小便用槽75を挟んで、分離板20の一端部20A側及び他端部20B側に別々に設けられている。このため、分離板20の一端部20A側から押し出された大便は、一方(図7及び図8において右側)の大便用槽61に投入され、分離板20の他端部20B側から押し出された大便は、他方(図7及び図8において左側)の大便用槽62に投入される。2個の大便用槽61、62は、それぞれ、点検口65と、点検口65に開閉自在に取り付けられた扉部材66とを有している。
【0055】
このような構成を有する実施例2のトイレ設備は以下のように使用される。
【0056】
ある設定期間、例えば、毎年1月から6月までの6か月間は、図7に示すように、分離板20の一端部20Aのみから大便を押し出し、一方の大便用槽61のみに大便を投入する。このために、非水洗式便器1の使用者は、用便後にレバー本体39Aを非水洗式便器1に対して遠い方から近い方へ、さらに遠い方へ往復移動させる。つまり、レバー本体39Aは、非水洗式便器1に対して遠い方に待機させ、用便後に往復移動させる。
【0057】
一方、他方の大便用槽62は、新たな大便を投入せず、前年の7月から12月の6か月間に貯留した大便を好気性微生物によって発酵処理する。他方の大便用槽62内に貯留した大便は、1月から6月までの半年間で発酵処理することができるため、全てを充分に発酵処理することができる。このため、半年後に他方の大便用槽62内の発酵処理済みの大便を点検口65から搬出してそのまま堆肥として有効に利用することができる。
【0058】
他方の大便用槽62内の発酵処理済みの大便を搬出した後、次の設定期間である毎年7月から12月までの6か月間は、図8に示すように、分離板20の他端部20Bのみから大便を押し出し、他方の大便用槽62のみに大便を投入させる。この際、トイレ室の壁面に設けられた回転盤8を180度回転する。これによって、レバー本体39Aの操作は、前の設定期間と同様に、非水洗式便器1に対して遠い方に待機させ、用便後に往復移動させることによって、大便を分離板20の他端部20Bから押し出し、他方の大便用槽62に投入することができる。
【0059】
この期間、一方の大便用槽61は、新たな大便を投入せず、1月から6月の6か月間に貯留した大便を好気性微生物によって発酵処理する。一方の大便用槽61内に貯留した大便は、7月から12月までの半年間で発酵処理することができるため、全てを充分に発酵処理することができる。このため、半年後に一方の大便用槽61内の発酵処理済みの大便を点検口65から搬出してそのまま堆肥として有効に利用することができる。
【0060】
したがって、実施例2のトイレ設備も固液分離装置10で分離した大便を良好に処理することができる。
【0061】
<実施例3>
実施例3のトイレ設備は、図9及び図10に示すように、床部材7の下面に取り付けた回転装置100を介して固液分離装置10が取り付けられている。他の構成は実施例1又は2と同様であり、同一の構成は同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0062】
回転装置100は、床部材7の下面に固定した環状の内輪部材101、内輪部材101と同心であり、内輪部材101に外嵌した状態で回転する環状の外輪部材102、内輪部材101と外輪部材102との間に挟まれた複数の球状の転動体103、転動体103の位置を定める保持部材104、及び外輪部材102を回転駆動する駆動部110を有している。回転装置100は内輪部材101及び外輪部材102の中心が便器排出口6の中心と同じになるように床部材7の下面に取り付けられている。
【0063】
駆動部110は、外輪部材102の外周面に接触して、外輪部材102を回転させる円盤状の回転体111、回転体111の中心軸上に延びて、床部材7を垂直方向に貫通した回転軸112、回転軸112の上端から床部材7上を水平方向に延びた柄部113、及び柄部113の先端部に垂直上方に延びたハンドル114を有している。回転体111の外周面は外輪部材102の外周面との摩擦力を高めるためにゴム等の弾性部材によって形成されている。柄部113は、中央部に上下方向に貫通した棒状のストッパー115と、ストッパー115に下方向の弾性力を付与するバネ116とを有している。
【0064】
床部材7は、ストッパー115が駆動部110の回転軸112を中心として回転する円周上の1か所にストッパー115の下端部を挿入することができる凹部9を設けている。ストッパー115が凹部9に位置すると、下端部がバネ116の弾性力によって床部材7の凹部9に挿入される。ストッパー115の下端部が床部材7の凹部9に挿入された状態では、駆動部110を回転させることができない。一方、バネ116の弾性力に抗してストッパー115を引上げて、ストッパー115の下端部を凹部9から引き上げた状態で、駆動部110を回転させることができる。ハンドル114を一回転させると、回転装置100が設定角度だけ回転する。
【0065】
固液分離装置10は回転装置100の外輪部材102に固定されている。つまり、固液分離装置10の係止板25の両端部が外輪部材102に固定されている。このため、固液分離装置10を構成する分離板20、搬送装置30、スクレーパー部材40等は水平面上で回転自在に保持されている。
【0066】
このような構成を有する実施例3のトイレ設備は以下のように使用される。
【0067】
非水洗式便器の使用者は、用便後にレバー本体39Aを操作して大便を大便用槽内に投入した後、ハンドル114を一回転させる。すると、回転装置100が設定角度だけ回転する。これによって、非水洗式便器の次の使用者が用便をした後に、レバー本体39Aを操作して大便を大便用槽内に投入する際、搬送装置30が汚物を分離板20から押し出す方向が設定角度分だけずれることになる。
【0068】
このトイレ設備は固液分離装置10を水平面上で略360度回転させることができるため、分離板20の端部から略360度の範囲で大便を大便用槽内に投入することができる。このため、大便が大便用槽の一か所に早期に堆積してしまうことを防止することができるため、好気性微生物によって良好に発酵処理することができる。
【0069】
したがって、実施例3のトイレ設備は固液分離装置10で分離した大便を良好に処理することができる。
【0070】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1及び2では、分離板の一端部と他端部とから大便を押し出したが、分離板の3方向以上から押し出すようにしてもよい。
(2)実施例1及び2では、レバー本体を水平方向に往復移動自在にしたが、垂直方向など他の方向に往復移動自在にしてもよい。
(3)実施例2では、レバー本体を常に同じ往復操作をするようにしたが、設定期間ごとにレバー本体の往復操作を逆方向にしてもよい。この場合、レバー本体の壁面の固定位置を変更しなくてもよい。
(4)実施例2では、レバー本体を非水洗式便器に対して遠い方に待機させ、用便後に往復移動させるようにしたが、レバー本体を非水洗式便器に対して近い方に待機させ、用便後に往復移動させてもよい。
(5)実施例2では、大便を押し出す方向を変更し、大便が投入される大便用槽を半年ごとに変更したが、半年ごとに限らず、トイレ設備の使用者数や、大便用槽の大きさに応じて変更してもよい。
(6)実施例1〜3では固液分離装置をトイレ設備に適用したが、この固液分離装置は家畜糞尿、家庭用生ゴミ等の固液混合物を固体分と液体分とに分離するものに適用することができる。その場合、固液分離装置の大きさ等は固液分離する対象物の量等に応じて変更される。
(7)実施例3では固液分離装置を回転装置によって水平面上で回転させたが、固液分離装置の分離板を回転させず、搬送装置のみを回転させるようにしてもよい。この場合、スクレーパー部材を搬送装置と共に回転するように構成してもよい。
(8)実施例3では回転装置(固液分離装置)を非水洗式便器の使用者がハンドルを回転させることによって手動で回転させたが、モーター等を用いて自動的に回転させるようにしてもよい。この場合、定期的にモーター等を駆動して、回転装置を回転させるとよい。また、非水洗式便器の使用回数を検知する検知装置を備えて、その検知装置の出力によって、非水洗式便器が所定回数使用される度にモーター等を駆動して、回転装置を回転させるとよい。
(9)実施例3では非水洗式便器を使用する度に使用者がハンドルを回転させて回転装置(固液分離装置)を回転するようにしたが、例えば、1日に1回、非水洗式便器の使用者がハンドルを回転させて回転装置(固液分離装置)を回転するようにしてもよい。
(10)実施例3では回転体を円盤状に形成したが、回転体を多角形状に形成し、ハンドルを回転させた際にクリック感を得るようにしてもよい。この場合、1回のクリック感で回転装置(固液分離装置)が所定角度(例えば、5度)を回転したことを把握することができる。
(11)実施例3では回転体が略360度回転するが、180度回転にして、分離板の両端から大便を落下させるようにしてもよい。この場合も、固液分離装置の周囲(360度)から大便を大便用槽内に投入することができる。
【符号の説明】
【0071】
6…便器排出口(投入口)
10…固液分離装置
20…分離板
20A…(分離板の)一端部
20B…(分離板の)他端部
30…搬送装置
31…押出部材
32…第1押出板
33…第2押出板
60、61、62…大便用槽
70、75…小便用槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の排泄物、家畜糞尿、家庭用生ゴミ等の固液混合物を固体分と液体分とに分離する固液分離装置であって、
前記固液混合物を上面に受け、液体分が下方に通過する開口部を設けた分離板と、
この分離板上に残存した固体分を前記分離板上から複数方向に押し出す搬送装置とを備えていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
前記搬送装置は、前記分離板の一端部と、この一端部の反対側に位置する他端部との間を往復移動し、前記分離板上の固体分を前記一端部及び前記他端部から押し出す押出部材を有していることを特徴とする請求項1記載の固液分離装置。
【請求項3】
前記押出部材は、前記往復移動方向に対して直向して延びており、前記一端部に向けて下降傾斜した第1押出板と、前記往復移動方向に対して直向して延びており、他端部に向けて下降傾斜した第2押出板とを具備していることを特徴とする請求項2記載の固液分離装置。
【請求項4】
前記搬送装置を水平面上で回転自在に保持する回転装置を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の固液分離装置。
【請求項5】
人間の排泄物が投入される投入口の下方に配置して人間の排泄物を大便と小便とに分離する前記請求項1乃至4のいずれか1項記載の固液分離装置と、
前記分離板上から大便が押し出される位置の下方に設けられた大便が投入される大便用槽と、
この大便用槽とは隔離され、前記分離板の下方に設けられた小便が投入される小便用槽とを備えていることを特徴とするトイレ設備。
【請求項6】
前記分離板上から大便が押し出される位置ごとに別々に設けられた複数の前記大便用槽を備えており、
前記搬送装置は設定期間毎に前記分離板上から大便を押し出す方向を変更し、大便が投入される前記大便用槽以外の前記大便用槽は、前記設定期間の間、貯留した大便の発酵処理に利用されることを特徴とする請求項5記載のトイレ設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−81934(P2013−81934A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−189272(P2012−189272)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】