説明

固液分離装置

【課題】複数の固定部材と、隣り合う固定部材の間に配置された可動部材と、固定部材及び可動部材を貫通して延びる脱液スクリューとを有し、その脱液スクリューの回転によって、汚泥を固定部材と可動部材により区画された内部空間中にて搬送し、その濾液を固定部材と可動部材の間の濾液排出間隙から流下させる固液分離装置において、可動部材の摩耗をなくし、固液分離装置の維持費を低減させる。
【解決手段】脱液スクリュー24を可動部材4に対して接触しないように配置すると共に、複数の可動部材4を連結棒52により連結し、その複数の可動部材4のうちの一部の可動部材4Aに設けた従動ローラ40を、回転するカム43によって往復動させて全ての可動部材4を往復動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の固定部材と、隣り合う固定部材の間に配置された可動部材と、固定部材及び可動部材を貫通して延びる少なくとも1つの脱液スクリューとを有し、その脱液スクリューの回転によって液体を含む処理対象物を搬送しながら脱液処理する固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を含む処理対象物、例えば、廃豆腐、食品加工排水、下水処理物或いは養豚場から排出される廃水などの有機系汚泥、その有機系汚泥を微生物によって分解処理した汚泥、メッキ廃液、インク廃液、顔料廃液、塗料廃液などの無機系汚泥、或いは野菜屑や果実の皮、食品残渣、おからなどの処理対象物から液体を分離する上記形式の固液分離装置は従来より周知である(特許文献1乃至3参照)。従来、一般に使用されているこの種の固液分離装置においては、脱液スクリューの回転により可動部材を作動させて、固定部材と可動部材の間の濾液排出間隙に固形分が詰まることを防止している。ところが、この形式の固液分離装置においては、可動部材は、回転する脱液スクリューにより加圧されて作動するので、可動部材が比較的早期に摩耗する。このため、摩耗の進んだ可動部材を新たな可動部材と交換する必要があるが、可動部材はかなりコストの高い部材であるため、かかる部材の交換に伴う固液分離装置のランニングコストが上昇する欠点を免れない。
【0003】
そこで、各可動部材に被加圧部材をそれぞれ着脱可能に取り付け、その各被加圧部材を、回転する駆動スクリューによって往復動させ、これにより可動部材を固定部材に対して作動させて固定部材と可動部材との間の濾液排出間隙に固形分が詰まることを防止した固液分離装置が本出願人により提案されている(特許文献4)。かかる固液分離装置によれば、脱液スクリューを可動部材に接触させる必要はないので、可動部材が早期に摩耗する不具合を阻止できる。ところが、この形式の固液分離装置においては、多数の可動部材のそれぞれに被加圧部材が取り付けられているので、その被加圧部材が摩耗したとき、これらの被加圧部材を新たな被加圧部材と交換する作業が煩雑となり、その作業に多大な時間が必要となる欠点を免れない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−228695号公報
【特許文献2】特許第3565841号公報
【特許文献3】特許第3638597号公報
【特許文献4】特許第4036383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述した従来の欠点を軽減することのできる固液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の固定部材と、隣り合う固定部材の間に配置された可動部材と、該可動部材と前記固定部材に接触しない状態で該可動部材と固定部材を貫通して延びる脱液スクリューと、複数の可動部材のうちの一部の可動部材に着脱可能に取り付けられた被加圧部材と、該被加圧部材が往復動するように、当該被加圧部材を駆動する駆動手段と、前記被加圧部材が取り付けられた可動部材及び該被加圧部材の取り付けられていない可動部材が共に往復動するように、これらの可動部材を連結する連結手段とを具備する固液分離装置を提案する。
【0007】
また、上記固液分離装置において、前記駆動手段はカムにより構成され、前記被加圧部材は前記可動部材に回転可能に支持された従動ローラにより構成され、前記カムは前記従動ローラに接触しながら該従動ローラを加圧して当該従動ローラと可動部材を往復動させるように構成されていると有利である。
【0008】
さらに、上記固液分離装置において、前記カムは、モータにより回転駆動される軸に固定され、該モータによって前記軸と共に回転駆動されるように構成されていると有利である。
【0009】
また、上記固液分離装置において、前記カムは、前記従動ローラよりも耐摩耗性に優れた材料により構成されていると有利である。
【0010】
さらに、上記固液分離装置において、前記駆動手段は回転駆動される駆動スクリューにより構成され、前記被加圧部材は、前記可動部材に着脱可能に嵌着された被加圧板により構成され、前記駆動スクリューは、前記被加圧板に形成された孔を貫通して延びていて、該駆動スクリューの回転によって被加圧板を前記可動部材と共に往復動させると共に、該駆動スクリューの少なくとも前記被加圧板に接触する部分が、該被加圧部材よりも耐摩耗性に優れた材料により構成されていると有利である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各可動部材は脱液スクリューに接触していないので、可動部材が早期に摩耗する不具合を阻止できる。被加圧部材の摩耗が進んだときは、これを新たな被加圧部材と交換する必要があるが、被加圧部材は一部の可動部材にだけ取り付けられているので、被加圧部材の数は従来よりも少ない。このため、容易かつ短時間で被加圧部材の交換作業を行うことができる。しかも、被加圧部材が取り付けられた可動部材と、被加圧部材の取り付けられていない可動部材は、連結手段により連結されているので、これらの可動部材は共に往復動することができ、これによって可動部材と固定部材の間の濾液排出間隙に固形分が詰まる不具合を支障なく阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】固液分離装置の部分断面正面図である。
【図2】隣り合う2つの固定部材と、その2つの固定部材の間に配置された可動部材を示す斜視図である。
【図3】固液分離部の一部の縦断面図である。
【図4】図1のIV−IV線拡大断面図である。
【図5】図4のV−V線拡大断面図である。
【図6】2本の脱液スクリューを有する固液分離装置の、図4と同様な断面図である。
【図7】3本の脱液スクリューを有する固液分離装置の、図4と同様な断面図である。
【図8】他の形態の固定部材と可動部材を有する固液分離装置の、図4と同様な断面図である。
【図9】被加圧板を駆動スクリューによって往復動させる固液分離装置の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0014】
図1は固液分離装置の部分断面正面図である。この固液分離装置によって液体を含む各種の処理対象物を固液分離することができるが、ここでは、多量の水分を含んだ汚泥を脱水処理する場合について説明する。
【0015】
図1に示した固液分離装置は、上部が開口した箱状に形成された入口部材1と、上部と下部が開口した矩形の横断面形状を有する出口部材2と、その入口部材1と出口部材2との間に配置された複数の固定部材3及び可動部材4とを有している。入口部材1の上部開口は汚泥が流入する流入口5となっていて、入口部材1の下部は底壁6によって塞がれている。また、固定部材3と可動部材4を向いた側の入口部材1の側壁7には開口8が形成されている。同じく、固定部材3と可動部材4を向いた側の出口部材2の側壁9にも開口10が形成されていて、その出口部材2の下部開口は脱水処理されたケーキ状の汚泥が排出される排出口11となっている。かかる出口部材2と入口部材1は、その下部が支持フレームのステー12,13に固定支持されている。
【0016】
図2は隣り合う2つの固定部材3と、その2つの固定部材3の間に配置された1つの可動部材4を示す斜視図であり、図3は複数の固定部材3と可動部材4の拡大縦断面図である。また図4は図1のIV−IV線拡大断面図である。図1乃至図4に示すように、隣り合う固定部材3の間には、小リング状の複数のスペーサ14が配置されていて、複数の固定部材3は、そのスペーサ14によって軸線方向に互いに間隔をあけて同心状に配置され、その隣り合う固定部材3の間に1つの可動部材4が配置されている。図示した例では、隣り合う固定部材3の間に4個のスペーサ14が配置されている。また、本例の固定部材3と可動部材4は、共に円形の孔15,16が形成された板材により構成されている。
【0017】
図1乃至図4に示すように、各固定部材3には4つの取付孔17が形成され、その各取付孔17と各固定部材3の間に配置されたスペーサ14の中心孔には、ステーボルト18がそれぞれ貫通して延びている。その各ステーボルト18は、図1に示したように、入口部材1の側壁7と、出口部材2の側壁9を貫通し、各ステーボルト18の各長手方向端部に形成された雄ねじにナット19,20がそれぞれ螺着されて締め付けられている。これにより、複数の固定部材3が、互いに一体的に固定連結されると共に、その固定部材3が入口部材1と出口部材2に対して固定される。
【0018】
スペーサ14によって互いに間隔をあけて配置された各固定部材3を、これらがわずかに遊動できるように組み付けることもできる。また、隣り合う2つの固定部材のうちの一方の固定部材にスペーサを一体に形成し、そのスペーサによって、隣り合う2つの固定部材の間に間隙を形成し、ここに可動部材4を配置することもできる。さらに、図1乃至図4に示した固液分離装置においては、隣り合う2つの固定部材3の間に1つの可動部材4が配置されているが、隣り合う固定部材3の間に複数の可動部材4を配置することもできる。隣り合う固定部材3の間に少なくとも1つの可動部材4が配置されるのである。
【0019】
図3に示すように、各固定部材3の間にそれぞれ配置された各可動部材4の厚さTは、各固定部材間の間隙幅Gより小さく設定され、各固定部材3の端面と、これに対向する可動部材4の端面の間には、例えば0.1mm乃至1mm程の微小な濾液排出間隙gが形成される。かかる微小濾液排出間隙gは、後述するように汚泥から分離された水分、すなわち濾液を通過させるための隙間である。可動部材4の厚さTは、例えば、1.0mm乃至2mm程に設定され、間隙幅Gは、例えば2mm乃至3mm程に設定される。また、固定部材3の厚さtは、例えば1.5mm乃至3mm程に設定される。濾液排出間隙g、厚さT,t及び間隙幅Gの大きさは、処理対象物の種類などを考慮して適宜設定されるものである。
【0020】
隣り合う固定部材3の間に配置された各可動部材4は、後述するように、図4に矢印E,Fで示した方向に往復動することができる。その際、各可動部材4は、その各側方に位置する2個ずつのスペーサ14によって案内される。
【0021】
図1乃至図4から判るように、入口部材1の側壁7に形成された開口8と、固定部材3及び可動部材4にそれぞれ形成された円形の孔15,16と、出口部材2の側壁9に形成された開口10とによって、ほぼ連続した貫通孔状の内部空間S(図3及び図4)が形成されている。このように、本例の固液分離装置においては、スペーサ14により、軸線方向に間隔をあけて配置され、かつステーボルト18によって互いに固定された複数の固定部材3と、隣り合う固定部材3の間に配置された可動部材4と、入口部材1の側壁7と、出口部材2の側壁9とによって、処理対象物(この例では汚泥)から液体を分離する固液分離部21が構成されていて、この固液分離部21の内部は中空に形成され、入口部材1の側壁7の開口8によって、固液分離部21の内部空間Sの入口22が構成され、出口部材2の側壁9の開口10によって、固液分離部21の内部空間Sの出口23が構成されている。
【0022】
上述した固液分離部21の内部空間Sには、その軸線方向に延びる脱液スクリュー24が配置されている。この脱液スクリュー24は、軸部25と、その軸部25に一体に形成されたらせん状の羽根部26とから成り、その軸部25の入口部材1の側の端部は、入口部材1のもう一方の側壁27に固定支持された減速機付きのモータ28に駆動連結され、軸部25の出口部材2の側の端部は、その出口部材2のもう一方の側壁29に軸受を介して回転自在に支持されている。
【0023】
図4には、脱液スクリュー24の外形だけを二点鎖線で簡略化して示してあるが、この図から判るように、脱液スクリュー24の羽根部26の外径は、固定部材3と可動部材4にそれぞれ形成された各円形孔15,16の直径よりも小さく設定されている。しかも、この羽根部26の外径は、側壁7,9に形成された開口8,10の直径よりも小さく設定されていて、各可動部材4が後述するように往復動したときも、脱液スクリュー24が可動部材4及び固定部材3に接触することはない。このように、本例の固液分離装置には、可動部材4と固定部材3に接触しない状態で、その可動部材4と固定部材3を貫通して延びる脱液スクリュー24が設けられているのである。
【0024】
図1に矢印Aで示したように、多量の水分を含んだ汚泥は、流入口5から入口部材1内に送り込まれる。その際、処理前の汚泥の含水率は例えば99重量%程度であり、この汚泥には予め凝集剤が混入されていて、汚泥がフロック化されている。かかる汚泥が入口部材1に流入するとき、モータ28の作動によって、脱液スクリュー24が回転駆動されているので、その汚泥は、図1に矢印Bで示すように、入口部材1の側壁7に形成された開口8を通って、固定部材3と可動部材4の内部空間Sに流入する。このように、汚泥は、固液分離部21の内部空間Sに、その軸線方向一端側の入口22から流入するのである。なお、各図には汚泥の図示を省略してある。
【0025】
上述のようにして固液分離部21の内部に流入した汚泥は、モータ28により回転駆動された脱液スクリュー24によって、図1及び図3に破線矢印Cで示したように、固液分離部21の軸線方向他端側の出口23へ向けて搬送される。このとき、汚泥から分離された水分、すなわち濾液が、各固定部材3と可動部材4との間の濾液排出間隙g(図3)を通して固液分離部外に排出される。排出された濾液は、図1に示したようにステー12,13に固定された濾液受け部材30に受け止められ、次いで濾液排出管31を通って流下する。この濾液には未だ多少の固形分が含まれているので、当該濾液は他の汚泥と共に再度、水処理された後、再び固液分離装置に供給されて脱水処理される。
【0026】
上述のように固液分離部3内の汚泥の含水率が下げられ、含水量の減少したケーキ状の汚泥が、図1に矢印Dで示したように、固液分離部21の軸線方向他端側の出口23から排出される。固液分離部21から排出された汚泥は、出口部材2の下部の排出口11を通して下方に落下する。脱水処理されたケーキ状の汚泥の含水率は、例えば80重量%程度である。
【0027】
上述のように、固液分離装置は、固液分離部に配置されたスクリューを回転駆動して、該固液分離部の内部に入り込んだ処理対象物を固液分離部の出口へ向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を、固液分離部の濾液排出間隙を通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を固液分離部の出口から固液分離部外に排出させるように構成されている。
【0028】
上述のように汚泥を脱水処理するとき、固定部材3と可動部材4の間の濾液排出間隙gに固形分が詰まることを防止するために、本例の固液分離装置は次の構成を具備している。
【0029】
固液分離装置は多数の可動部材4を有しているが、図1においては、そのうちの2枚の可動部材4に符号4Aを付加して示してある。これらの可動部材4Aは、図1及び図4に示すように、他の可動部材4と同じく形成された本体部32と、その本体部32にボルト34とそのボルト34に螺着されたナットとによって固定された板材より成るアーム部33とから構成されている。本体部32とアーム部33を予め一体に成形された一つの部片により構成することもできる。
【0030】
図4のV−V線拡大図である図5と図4に示すように、可動部材4Aのアーム部33には貫通孔36が形成され、この貫通孔36には軸37が貫通して延びている。また、貫通孔36の近傍のアーム部33の部分には、軸37を挟んで対向した位置にローラユニット38がそれぞれ取り付けられている。このローラユニット38は、図5に示すように、ボルト39と、そのボルト39に回転自在に嵌合した従動ローラ40とを有し、ボルト39に螺着されたナット41を締め付けることによって、ボルト39がアーム部33に固定されている。また、ナット41を緩めて、これをボルト39から外すことによって、ローラユニット38を可動部材4Aから離脱することができる。このように、従動ローラ40は、ボルト39を介して可動部材4Aに回転可能に支持され、かつ可動部材4Aに着脱可能に装着されている。
【0031】
また、図4及び図5に示すように、軸37には、ボス42が固定されていて、このボス42は、軸37に対して相対回転不能であって、その軸線方向にも摺動不能に組み付けられている。かかるボス42に、カム43がボルト44により固定されている。ここに示したカム43は、軸37に対して偏心した偏心カムにより構成されている。
【0032】
図1に示したように、軸37の出口部材側の端部は、出口部材2に固定された支持ブラケット45に支持されているモータ47に駆動連結され、軸37の入口部材側の端部は、入口部材1に固定された支持ブラケット46に軸受を介して回転自在に支持されている。
【0033】
また、図1及び図4に示すように、上述した支持ブラケット45,46には、一対の支持棒49の各長手方向端部が固定され、その各支持棒49には、ガイドローラ50が回転自在に支持され、これらのガイドローラ50は、アーム部33の対向した面にそれぞれ当接している。図5においては、支持棒49の図示を省略してある。
【0034】
一方、図1、図3及び図4に示すように、従動ローラ40が設けられた可動部材4Aと、従動ローラ40の設けられていない可動部材4の全ての可動部材4には孔51が形成され、これらの孔51には連結棒52が貫通していて、その連結棒52によって全ての可動部材4が連結されている。連結棒52の長手方向各端部には係止リング53,54がそれぞれ嵌着固定され、その係止リング53,54によって連結棒52が可動部材4から抜け出ることが阻止されている。また、連結棒52は、可動部材4に形成された孔51に多少の遊びをもって嵌合していてもよいし、その孔51に遊びのない状態にきつく嵌合していてもよい。
【0035】
前述のように、汚泥が固液分離部21の内部空間Sを移動しながら、脱水処理されているとき、モータ28だけでなく、もう一方のモータ47も作動し、これによって軸37がカム43と共に、その軸37の中心軸線のまわりに回転する。このため、このカム43に当接した従動ローラ40は、そのカム43によって加圧されて回転しながら可動部材4Aと共に図4に矢印E,Fで示した方向に往復動する。このとき、各可動部材4Aは、その両側に配置されたガイドローラ50によって規制されながら、正しく直線状に往復動することができる。また、従動ローラ40の設けられた可動部材4Aは、従動ローラ40の設けられていない可動部材4に連結棒52を介して連結されているので、全ての可動部材4が矢印E,F方向に往復動する。
【0036】
これに対し、固定部材3は不動であるため、可動部材4は固定部材3に対して相対的に作動し、これによって可動部材4と固定部材3との間の濾液排出間隙g(図3)に入り込んだ固形分は、その間隙gから効率よく排出され、固形分がここに詰まったままとなることが阻止される。しかも、前述のように、回転する脱液スクリュー24の羽根部26が可動部材4に接触することはないので、可動部材4が早期に摩耗することはない。
【0037】
但し、従動ローラ40はカム43に接触しながら加圧されるので、その従動ローラ40が経時的に摩耗することは避けられない。従って、従動ローラ40の摩耗が進んだ段階で、図5に示したナット41をボルト39から外して、ローラユニット38の全体を可動部材4Aから離脱し、新たなローラユニット38をナット41によって可動部材4Aに取り付ける。このように、従動ローラ40を交換する必要があるが、その従動ローラ40、ないしはローラユニット38は、可動部材4に比べて小サイズのコストの低い部材であるため、固液分離装置のランニングコストを低く抑えることができる。しかも、従動ローラ40は、多数の可動部材4のうちの一部の可動部材4Aにだけ取り付けられているので、簡単かつ短時間でその交換作業を行うことができる。
【0038】
上述した固液分離装置においては、多数の可動部材4のうちの2つの可動部材4Aに従動ローラ40を設けたが、複数の可動部材4のうちの一部の可動部材に従動ローラ40を設ければ、本発明の所期の目的を達成できる。一部の可動部材であれば、1枚又は3枚以上の可動部材に従動ローラを取り付けることができるのである。
【0039】
上述したところから理解されるように、可動部材4Aに回転可能に支持された従動ローラ40は、複数の可動部材4のうちの一部の可動部材4Aに着脱可能に取り付けられた被加圧部材の一例を構成し、カム43は、その被加圧部材が往復動するように、当該被加圧部材を駆動する駆動手段の一例を構成している。カム43が従動ローラ40に接触しながら、その従動ローラ40を加圧して、当該従動ローラ40と可動部材4を往復動させるのである。さらに、連結棒52は、被加圧部材が取り付けられた可動部材及び被加圧部材の取り付けられていない可動部材が共に往復動するように、これらの可動部材を連結する連結手段の一例を構成している。
【0040】
また、駆動手段の一例であるカムとしては、直進カムなどを含めた適宜な形態のカムを用いることができるが、本例の固液分離装置においては、カム43は、モータ47により回転駆動される軸37に固定され、そのモータ47によって回転駆動されるように構成されているので、駆動手段の構成を簡素化することができる。
【0041】
その際、カム43を、従動ローラ40よりも耐摩耗性に優れた材料により構成することが好ましい。かかる構成により、従動ローラ40ないしはローラユニット38を交換するだけで、カム43を長期に亘って使用することができる。例えば、カム43を焼入れした鉄製とし、従動ローラ40をステンレス鋼製とする。
【0042】
以上説明した固液分離装置は、1本の脱液スクリュー24を有しているが、それ自体公知のように、2本以上の脱液スクリューを設けることもできる。図6は、2本の脱液スクリュー24,124が、固定部材3に形成された孔15と可動部材4に形成された孔16を貫通して延びていて、その両脱液スクリュー24,124の回転により汚泥を搬送する固液分離装置を示し、図7は3本の脱液スクリュー24,124,224を有する固液分離装置を示す断面図である。図6及び図7に示した固液分離装置の他の構成は、図1乃至図5に示した固液分離装置と実質的に相違はない。すなわち図6及び図7に示した固液分離装置の場合も、脱液スクリュー24,124,224は、固定部材3と可動部材4に接触せず、可動部材4は、前述した固液分離装置の場合と全く同様にして往復動される。
【0043】
以上説明した固液分離装置の固定部材3と可動部材4は、それぞれ孔15,16を有する板材により構成されているが、固定部材と可動部材を他の適宜な形態に形成することもできる。図8は、特許第3638597号公報及び特許第4036383号公報に記載された形式の固液分離装置に本発明を適用した例を示す。ここに示した固液分離装置においては、上部に凹部55が形成された複数の固定部材103がスペーサ114によって軸線方向に間隔をあけて配置され、隣り合う固定部材103の間に少なくとも1つの可動部材104が配置されていて、その可動部材104の上部にも凹部56が形成されている。複数の固定部材103は、ステーボルト118によって固定連結され、これらの固定部材103と可動部材104の凹部55,56には、2本の脱液スクリュー24,124が可動部材104と固定部材103に接触しない状態で貫通して延びている。脱液スクリュー24,124の上部はカバー57によって覆われている。かかる脱液スクリュー24,124の回転によって、固定部材103と可動部材104の凹部55,56と、カバー57との間の内部空間Sを汚泥が搬送され、このとき固定部材103と可動部材104の間の濾液排出間隙を通して濾液が流下し、含水率の低下したケーキ状の汚泥が内部空間Sの出口から排出される。この固液分離装置の他の基本構成は、特許第3638597号公報及び特許第4036383号公報に詳しく記載されている。
【0044】
ここで、図8に示した複数の可動部材104は、連結棒152によって連結されていて、その複数の可動部材104のうちの一部の可動部材104Aの本体部132には、アーム部133が一体に突設され、そのアーム部133に、先の実施形態例の固液分離装置の場合と同様に被加圧部材の一例である従動ローラ140が着脱可能に取り付けられている。また、図8には示していないモータにより回転駆動される軸137には、カム143が固定され、軸137とカム143がモータにより回転駆動されることにより、従動ローラ140と可動部材104Aが矢印E,F方向に往復動し、これによって全ての可動部材104が往復動する。これにより固定部材103と可動部材104の間の濾液排出間隙に汚泥の固形分が詰まる不具合が阻止される。この場合も、従動ローラ140を容易に交換することができる。
【0045】
以上説明した固液分離装置においては、被加圧部材が従動ローラ40,140により構成され、駆動手段が軸37,137に固定されたカム43,143により構成されているが、他の適宜な形態の被加圧部材と駆動手段を採用することもできる。例えば、特許第4036383号公報に記載された駆動スクリューより成る駆動手段と被加圧板より成る被加圧部材を用いることもできる。この場合には、例えば、図1又は図8に示したように配列された複数の可動部材4,104が、連結棒52,152より成る連結手段によって連結され、その複数の可動部材4,104のうちの一部の可動部材4A,104Aの本体部32,132に、図9に示したようにアーム部233が一体に連設され、そのアーム部233に形成された矩形孔58に小サイズな被加圧板240より成る被加圧部材が着脱可能に嵌着されている。この被加圧板240に形成された長孔より成る孔59を駆動スクリュー60が貫通して延びていて、この駆動スクリュー60が図示していないモータにより回転駆動される。これによって被加圧板240が加圧され、全ての可動部材が矢印E,F方向に往復動し、可動部材と固定部材との間の濾液排出間隙に汚泥の固形分が詰まる不具合が阻止される。被加圧板240の摩耗が進んだときは、その被加圧板240を矩形孔58から外し、新たな被加圧板を矩形孔58に嵌着する。この場合も、被加圧板240の数は少ないので、その交換作業を簡単に行うことができる。図9に示した固液分離装置の基本構成は、図1乃至図8に示した固液分離装置と変わりはない。すなわち、複数の固定部材3,103と、隣り合う固定部材3,103の間に配置された可動部材4,104とを、少なくとも1つの脱液スクリューが、これらの部材3,103,4,104に接触することなく貫通して延び、その脱液スクリューの回転によって処理対象物を搬送しながら濾液排出間隙を通して濾液を排出させるように構成されている。
【0046】
上述のように、図9に示した固液分離装置においては、駆動手段が、回転駆動される駆動スクリュー60により構成され、被加圧部材は、一部の可動部材4A,104Aに着脱可能に嵌着された被加圧板240により構成され、駆動スクリュー60は、被加圧板240に形成された孔59を貫通して延びていて、該駆動スクリュー60の回転によって被加圧板240を可動部材4と共に往復動させるように構成されている。また、この場合も、駆動スクリュー60の少なくとも被加圧板240に接触する部分が、その被加圧部材240よりも耐摩耗性に優れた材料により構成されていると、被加圧板240を交換するだけで駆動スクリュー60を長期に亘って使用することができる。
【符号の説明】
【0047】
3,103 固定部材
4,104, 可動部材
24,124,224 脱液スクリュー
37 軸
40,140 従動ローラ
43,143 カム
47 モータ
59 孔
60 駆動スクリュー
240 被加圧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固定部材と、隣り合う固定部材の間に配置された可動部材と、該可動部材と前記固定部材に接触しない状態で該可動部材と固定部材を貫通して延びる脱液スクリューと、複数の可動部材のうちの一部の可動部材に着脱可能に取り付けられた被加圧部材と、該被加圧部材が往復動するように、当該被加圧部材を駆動する駆動手段と、前記被加圧部材が取り付けられた可動部材及び該被加圧部材の取り付けられていない可動部材が共に往復動するように、これらの可動部材を連結する連結手段とを具備する固液分離装置。
【請求項2】
前記駆動手段はカムにより構成され、前記被加圧部材は前記可動部材に回転可能に支持された従動ローラにより構成され、前記カムは前記従動ローラに接触しながら該従動ローラを加圧して当該従動ローラと可動部材を往復動させる請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
前記カムは、モータにより回転駆動される軸に固定され、該モータによって前記軸と共に回転駆動される請求項2に記載の固液分離装置。
【請求項4】
前記カムは、前記従動ローラよりも耐摩耗性に優れた材料により構成されている請求項2又は3に記載の固液分離装置。
【請求項5】
前記駆動手段は回転駆動される駆動スクリューにより構成され、前記被加圧部材は、前記可動部材に着脱可能に嵌着された被加圧板により構成され、前記駆動スクリューは、前記被加圧板に形成された孔を貫通して延びていて、該駆動スクリューの回転によって被加圧板を前記可動部材と共に往復動させると共に、該駆動スクリューの少なくとも前記被加圧板に接触する部分が、該被加圧部材よりも耐摩耗性に優れた材料により構成されている請求項1に記載の固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−172784(P2010−172784A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13631(P2009−13631)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【特許番号】特許第4374396号(P4374396)
【特許公報発行日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(591007022)アムコン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】