説明

固液分離装置

【課題】複数の固定部材と、隣り合う固定部材の間に配置された可動部材と、固定部材及び可動部材を貫通して延びるスクリューとを有し、そのスクリューの回転によって、汚泥を固定部材と可動部材により区画された内部空間中にて搬送し、その濾液を固定部材と可動部材の間の濾液排出間隙から流下させる固液分離装置において、可動部材の摩耗をなくし、かつ汚泥に対する脱水効率の低下を防止する。
【解決手段】スクリュー24を固定部材と可動部材に対して接触しないように配置すると共に、スクリュー24に偏心カム57,157を固定し、その偏心カム57,157を軸受59,159に摺動自在に嵌合する。各軸受59,159に連結板61,161を固定し、その両連結板61,161を、可動部材が連結された2本の連結棒66によって固定し、スクリュー24の回転によって、偏心カム57,157、連結板61,161、連結棒66及び可動部材を円運動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の固定部材と、隣り合う固定部材の間に配置された可動部材と、固定部材及び可動部材を貫通して延びるスクリューとを有し、そのスクリューの回転によって液体を含む処理対象物を搬送しながら脱液処理する固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を含む処理対象物、例えば、廃豆腐、食品加工排水、下水処理物或いは養豚場から排出される廃水などの有機系汚泥、その有機系汚泥を微生物によって分解処理した汚泥、メッキ廃液、インク廃液、顔料廃液、塗料廃液などの無機系汚泥、或いは野菜屑や果実の皮、食品残渣、おからなどの処理対象物から液体を分離する上記形式の固液分離装置は従来より周知である。従来、一般に使用されているこの種の固液分離装置においては、スクリューの回転により可動部材を作動させて、固定部材と可動部材の間の濾液排出間隙に固形分が詰まることを防止している(特許文献1参照)。ところが、この形式の固液分離装置においては、可動部材は、回転するスクリューにより加圧されて作動するので、可動部材が比較的早期に摩耗する。このため、摩耗の進んだ可動部材を新たな可動部材と交換する必要があるが、可動部材はかなりコストの高い部材であるため、かかる部材の交換に伴う固液分離装置のランニングコストが上昇する欠点を免れない。
【0003】
そこで、スクリューを固定部材と可動部材に対して接触しないように配置すると共に、複数の可動部材を連結棒により連結し、その複数の可動部材のうちの一部の可動部材に設けた従動ローラを、回転するカムによって往復動させて全ての可動部材を往復動させる固液分離装置が本出願人により提案されている(特許文献2参照)。この固液分離装置によれば、可動部材がスクリューに接触していないので、可動部材が早期に摩耗する不具合を阻止できる。ところが、この提案に係る固液分離装置は、可動部材が往復直線運動するように構成されているため、処理対象物に対する脱液効率が低く、処理対象物を効率よく脱液処理できない点に問題があった。
【0004】
一方、複数の可動部材を一体的に連結すると共に、スクリューの長手方向各端部側に位置する各可動部材に形成された左右一対の円形のカム孔に、回転軸に対して偏心して固定された円形のカムをそれぞれ緩挿し、その両回転軸とカムを回転駆動して、可動部材が、回転軸とカムの偏心量に相当する長さを半径とする円運動を行うように構成した固液分離装置が提案されている(特許文献3参照)。この形式の固液分離装置によれば、可動部材が往復直線運動ではなく円運動を行うので、処理対象物に対する脱液効率を高めることができる。
【0005】
かかる固液分離装置において、カム外周面と、カム孔内周面の摩耗量を少なくするには、カムの外周面の全周をカム孔の内周面の全周に亘って当接させて、カムの外周面とカム孔の内周面に作用する外力を分散させる必要がある。
【0006】
ところが、この形式の固液分離装置は、スクリューの長手方向各端部に位置する各可動部材に、左右一対のカムが嵌合し、その両カムの回転によって可動部材が円運動を行うように構成されているので、カムの外周面全周とカム孔内周面の全周を当接させてしまうと、左右のカムとこれらがそれぞれ嵌合したカム孔の形状を極めて高い精度で正しく形成して、その組付精度を高め、左右のカムの回転位相を高い精度で一致させないと、可動部材を正しく円運動させることができない。そこで、この種の固液分離装置においては、左右のカムの外径よりもこれらがそれぞれ嵌合するカム孔の径を大きくして、カムの外周面とカム孔の内周面を一個所で当接させ、その当接個所以外のカム外周面とカム孔内周面との間に隙間ができるようにしている。このようにすれば、左右のカムとカム孔の形状の精度が多少悪くとも、可動部材を正しく円運動させることができる。ところが、このようにカム外周面とカム孔内周面が一個所でのみ当接するように構成すると、その当接部における単位面積当たりの荷重が大きくなるので、カム外周面とカム孔内周面の摩耗が促進され、カムないしはカム孔の形成された可動部材の交換頻度が高くなり、装置の維持費が上昇するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−228695号公報
【特許文献2】特許第4374396号公報
【特許文献3】特開昭59−218298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、部品の摩耗量を少なく抑え、しかも脱液効率の低下を防止できる固液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、複数の固定部材と、隣り合う固定部材の間に配置された可動部材と、該可動部材と前記固定部材に接触しない状態で該可動部材と固定部材を貫通して延びていて、軸部と、該軸部と一体のらせん状の羽根部とを有するスクリューと、該スクリューをその軸部の中心軸線のまわりに回転駆動する駆動装置とを具備し、該駆動装置によって前記スクリューを回転駆動して、前記固定部材と可動部材とにより構成された固液分離部に入り込んだ処理対象物を該固液分離部の出口に向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を前記固定部材と可動部材の間の濾液排出間隙を通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を前記出口から固液分離部外に排出させる固液分離装置において、前記複数の可動部材が共に運動できるように、該複数の可動部材を連結する連結手段と、前記スクリューの軸部に対して偏心していて、該軸部と一体に回転する偏心カムと、前記連結手段に連結されていて、前記偏心カムの円形外周面が嵌合する円形カム孔を備えた軸受とを具備し、前記偏心カムの円形外周面は、その全周に亘って、前記軸受の円形カム孔の内周面に摺動可能に当接し、前記スクリューの回転に伴って、前記偏心カムは、その中心軸線が、前記スクリューの軸部の中心軸線のまわりに、該偏心カムの偏心量を半径とする円を描くように円運動を行い、これと同時に、前記連結手段と複数の可動部材が、偏心カムの偏心量を半径とする円運動を行うことを特徴とする固液分離装置を提案する(請求項1)。
【0010】
その際、前記連結手段が、可動部材と共に、前記スクリューの軸部の中心軸線のまわりに回動して、該可動部材が他の部材に当接することを防止するガイドを具備すると有利である(請求項2)。
【0011】
また、上記請求項1又は2に記載の固液分離装置において、前記偏心カム及び該偏心カムに嵌合した軸受は、前記スクリューの羽根部よりも該スクリューの長手方向外側の軸部の部分にそれぞれ1つずつ設けられ、前記連結手段は、前記各軸受にそれぞれ連結された一対の連結板と、前記複数の可動部材に連結された複数の連結棒とを有し、各連結棒がそれぞれ前記各連結板に連結されていると有利である(請求項3)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、可動部材がスクリューに接触していないので、可動部材が早期に摩耗する不具合を阻止できる。しかも、偏心カムの円形外周面は、その全周に亘って、軸受の円形カム孔の内周面に当接しているので、偏心カムの円形外周面と軸受の円形カム孔の内周面に作用する力が分散され、両周面の単位面積当たりの当接圧が小さなものとなる。このため、偏心カム又は軸受、或いはその両者の摩耗量を少なくすることができ、その寿命を伸ばすことができる。各連結手段を左右一対の偏心カムで駆動するのではなく、スクリューの軸部に設けられた偏心カムによって駆動するので、偏心カムの円形外周面と軸受の円形カム孔の内周面が全周に亘って当接していても、偏心カムと軸受の形状精度ないしは組付精度を、さほど高めなくとも、連結手段を確実に円運動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】固液分離装置の部分断面正面図であって、図を判りやすくするため、一部の部材の図示を省略し、かつ連結棒については、その長手方向の各端部のみを示した図である。
【図2】固液分離装置の平面図であって、固定部材と可動部材と濾液を受ける濾液受け部材と、ステーボルト及びそのステーボルトに螺着されたナットの図示を省略した図である。
【図3】固液分離装置の一部を示す斜視図である。
【図4】隣り合う2つの固定部材と、その2つの固定部材の間に配置された可動部材と、これらに関連する一部の部材を示す斜視図である。
【図5】固液分離部の一部の縦断面図であって、図8の(a)のV−V線に沿って切断した断面図に相当する図である。
【図6】図3のVI−VI線拡大断面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】可動部材の動作を明らかにした説明図である。
【図9】可動部材の動作を明らかにした説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0015】
図1は固液分離装置の部分断面正面図であり、図2は固液分離装置の平面図であって、後述する固定部材と可動部材等の図示を省略した図である。また、図3は固液分離装置の一部を示す斜視図である。これらの図に示した固液分離装置によって液体を含む各種の処理対象物を固液分離することができるが、ここでは、多量の水分を含んだ汚泥を脱水処理する場合について説明する。
【0016】
図1乃至図3に示した固液分離装置は、上部が開口し、内部が中空に形成された入口部材1と、上部と下部が開口した矩形の横断面形状を有する出口部材2と、その入口部材1と出口部材2との間に配置された複数の固定部材3及び可動部材4を有する固液分離部21とを具備している。入口部材1は、固液分離部21の側に開口8が形成されたカップ状の入口部材本体6と、その本体6の固液分離部21の側の端部に一体に固着された支持板7と、入口部材本体6の上部に形成された開口に整合した状態で、その入口部材本体6の上部に一体に固着された筒状体51とから構成され、該筒状体51の上部開口が汚泥の流入口5となっている。また、出口部材2の固液分離部21の側の側壁9にも開口10が形成されていて、その出口部材2の下部開口が脱水処理されたケーキ状の汚泥の排出口11となっている。
【0017】
図1に示すように、入口部材1の支持板7の下部は、支持フレームのステー12に固定され、出口部材2の側壁9の下部も支持フレームのステー13に固定されている。このように、側壁9は、支持板7と同様に支持台としての用をなす。また、入口部材1と出口部材2の間には、円形の貫通孔52が形成されている中間板53が配置され、その中間板53の下部も支持フレームのステー54に固定されている。かかる入口部材1の支持板7と中間板53との間と、中間板53と出口部材2の側壁9との間に、複数の固定部材3と可動部材4がそれぞれ配設されているのである。
【0018】
図4は隣り合う2つの固定部材3と、その2つの固定部材3の間に配置された1つの可動部材4を示す斜視図であり、図5は複数の固定部材3と可動部材4を備えた固液分離部21の一部の拡大縦断面図である。図1、図4及び図5に示すように、隣り合う固定部材3の間には、小リング状の複数のスペーサ14が配置されていて、複数の固定部材3は、そのスペーサ14によって軸線方向に互いに間隔をあけて同心状に配置され、その隣り合う固定部材3の間に1つの可動部材4が配置されている。図示した例では、隣り合う固定部材3の間に4個のスペーサ14が配置されている。また、本例の固定部材3と可動部材4は、共に円形の孔15,16が形成されたリング状の板材により構成されている。
【0019】
図1、図4及び図5に示すように、各固定部材3には4つの取付孔17が形成され、その各取付孔17と、各固定部材3の間に配置されたスペーサ14の中心孔には、ステーボルト18がそれぞれ貫通して延びている。その各ステーボルト18は、図1に示したように、入口部材1の支持板7と、中間板53と、出口部材2の側壁9を貫通し、各ステーボルト18の各長手方向端部に形成された雄ねじに、ナット19,20がそれぞれ螺着されて締め付けられている(図3も参照)。これにより、複数の固定部材3が、互いに一体的に固定連結されると共に、その固定部材3が入口部材1と出口部材2に対して固定される。なお、図2においては、ステーボルト18と、そのステーボルト18に螺着されたナット19,20の図示を省略してある。
【0020】
スペーサ14によって互いに間隔をあけて配置された各固定部材3を、これらがわずかに遊動できるように組み付けることもできる。また、隣り合う2つの固定部材のうちの一方の固定部材にスペーサを一体に形成し、そのスペーサによって、隣り合う2つの固定部材の間に間隙を形成し、ここに可動部材4を配置することもできる。さらに、図1乃至図5に示した固液分離装置においては、隣り合う2つの固定部材3の間に1つの可動部材4が配置されているが、隣り合う固定部材3の間に複数の可動部材4を配置することもできる。軸線方向に隣り合う固定部材3の間に少なくとも1つの可動部材4が配置されるのである。
【0021】
図5に示すように、各固定部材3の間にそれぞれ配置された各可動部材4の厚さTは、各固定部材間の間隙幅Gより小さく設定され、各固定部材3の端面と、これに対向する可動部材4の端面の間には、例えば0.1mm乃至1mm程の微小な濾液排出間隙gが形成される。かかる微小濾液排出間隙gは、後述するように汚泥から分離された水分、すなわち濾液を通過させるための隙間である。可動部材4の厚さTは、例えば、1.0mm乃至2mm程に設定され、間隙幅Gは、例えば2mm乃至3mm程に設定される。また、固定部材3の厚さtは、例えば1.5mm乃至3mm程に設定される。濾液排出間隙g、厚さT,t及び間隙幅Gの大きさは、処理対象物の種類などを考慮して適宜設定されるものである。
【0022】
図1、図4及び図5から判るように、入口部材1の支持板7に形成された開口8と、固定部材3及び可動部材4にそれぞれ形成された円形の孔15,16と、中間板53に形成された円形の貫通孔52と、出口部材2の側壁9に形成された開口10とによって、ほぼ連続した貫通孔状の内部空間S(図5)が形成されている。このように、スペーサ14により、軸線方向に間隔をあけて配置され、かつステーボルト18によって互いに固定された複数の固定部材3と、軸線方向に隣り合う固定部材3の間に配置された可動部材4とによって、処理対象物(この例では汚泥)から液体を分離する固液分離部21が構成されているのである。この固液分離部21の内部は中空に形成され、かかる固液分離部21の入口部材1の側の端部が、その固液分離部21の内部空間Sの入口22となっていて、出口部材2の側の端部が、当該固液分離部21の内部空間Sの出口23となっている。
【0023】
図8(a),(b)及び図9(a),(b)は、後述する可動部材4の円運動を明らかにする説明図であるが、これらの図から固液分離部を軸線方向に見たときの固定部材3、可動部材4、ステーボルト18、スペーサ14の状態をよく理解することができる。また、図5は、図8(a)のV−V線に沿って切断した図に相当する断面図である。
【0024】
上述した固液分離部21の内部空間Sには、その軸線方向に延びるスクリュー24が配置されている。このスクリュー24は、軸部25と、その軸部25に一体に形成されたらせん状の羽根部26とから成り、図1及び図2に示すように、この軸部25の出口部材2の側の端部は、出口部材2のもう一方の側壁27に固定支持された減速機付きの電動モータ28より成る駆動装置に駆動連結され、軸部25の入口部材1の側の部分は、軸受55を介して、入口部材1のもう一方の側壁29に回転自在に支持されている。電動モータ28より成る駆動装置は、スクリュー24をその軸部25の中心軸線X(図2及び図5)のまわりに回転駆動する用をなす。
【0025】
図5に示すように、スクリュー24の羽根部26の外径は、固定部材3と可動部材4にそれぞれ形成された各円形孔15,16の直径よりも小さく設定されていて、各可動部材4が後述するように円運動したときも、スクリュー24が可動部材4及び固定部材3に接触することはない。スクリュー24は、開口8,10の内周面にも接触せず、しかも貫通孔52の内周面に接触することもない。このように、本例の固液分離装置は、可動部材4と固定部材3に接触しない状態で、その可動部材4と固定部材3を貫通して延びていて、軸部25と、その軸部25と一体のらせん状の羽根部26とを有するスクリュー24と、該スクリュー24をその軸部25の中心軸線Xのまわりに回転駆動する駆動装置とを具備しているのである。
【0026】
図1に矢印Aで示したように、多量の水分を含んだ汚泥は、流入口5から入口部材1内に送り込まれる。その際、処理前の汚泥の含水率は例えば99重量%程度であり、この汚泥には予め凝集剤が混入されていて、汚泥がフロック化されている。かかる汚泥が入口部材1に流入するとき、電動モータ28の作動によって、スクリュー24が回転駆動されているので、その汚泥は、図1に矢印Bで示すように、入口部材1の支持板7に形成された開口8を通って、固定部材3と可動部材4により構成された固液分離部21の内部空間Sに流入する。このように、汚泥は、固液分離部21の内部空間Sに、その軸線方向一端側の入口22から流入するのである。なお、各図には汚泥の図示を省略してある。
【0027】
上述のようにして固液分離部21の内部に流入した汚泥は、電動モータ28により回転駆動されたスクリュー24によって、図1及び図5に矢印Cで示したように、固液分離部21の軸線方向他端側の出口23へ向けて搬送される。このとき、汚泥から分離された水分、すなわち濾液が、各固定部材3と可動部材4との間の濾液排出間隙g(図5)を通して固液分離部外に排出される。排出された濾液は、図1に示したようにステー12,13に固定された濾液受け部材30(図2には示さず)に受け止められ、次いで濾液排出管31を通って流下する。
【0028】
上述のように固液分離部3内の汚泥の含水率が下げられ、含水量の減少したケーキ状の汚泥が、図1に矢印Dで示したように、固液分離部21の軸線方向他端側の出口23から排出される。固液分離部21から排出された汚泥は、出口部材2の下部の排出口11を通して下方に落下する。脱水処理されたケーキ状の汚泥の含水率は、例えば75乃至80重量%程度である。
【0029】
上述のように、固液分離装置は、駆動装置によってスクリューを回転駆動して、固定部材と可動部材により構成された固液分離部の内部に入り込んだ処理対象物を固液分離部の出口へ向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を、固定部材と可動部材との間の濾液排出間隙を通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を固液分離部の出口から固液分離部外に排出させるように構成されている。
【0030】
上述のように汚泥を脱水処理するとき、固定部材3と可動部材4の間の濾液排出間隙gに固形分が詰まることを防止するために、本例の固液分離装置は次の構成を具備している。
【0031】
図1乃至図3、図6及び図7に示すように、スクリュー24の一方の端部の軸部25の部分には、キー溝に嵌合したキー56(図7)によって、偏心カム57がスクリュー24と一体に回転できるように、着脱可能に固定されている。特に図6及び図7に示すように、この偏心カム57の中心軸線Yは、スクリュー24の軸部25の中心軸線Xに対して、δで示す距離だけ偏心していて、その偏心カム57の円形の外周面58は、すべり軸受より成る軸受59の円形カム孔60に嵌合している。その際、偏心カム57の円形外周面58は、その全周に亘って、軸受59の円形カム孔60の内周面に、直接又は潤滑剤を介して摺動可能に当接している。
【0032】
また、上述した軸受59は、連結板61の取付孔62に嵌合していると共に、当該軸受59は、図3及び図6に示したように、図示していないボルトと、そのボルトに螺着されて締め付けられた同じく図示していないナットとによって連結板61に着脱可能に固定されている。このように、本例の軸受59は、連結板61に固定されているが、軸受59を、連結板61に形成された取付孔62に回転可能に嵌合することもできる。いずれの場合も、連結板61が後述する円運動を行えるように、当該連結板61が軸受59に連結されているのである。
【0033】
上述した偏心カム57と、その偏心カム57に嵌合した軸受59は、入口部材1の側のスクリュー24の軸部25に設けられているが、本例の固液分離装置においては、図2に明示するように、出口部材2の側の軸部25の部分にも、上述した偏心カム57、軸受59及び連結板61と全く同じく構成された偏心カム157、軸受159、及び連結板161が設けられている。偏心カム57,157と、その偏心カム57,157に嵌合した軸受59,159と、連結板61,161は、スクリュー24の羽根部26よりも当該スクリュー24の長手方向外側の軸部25の部分にそれぞれ1つずつ設けられているのである。
【0034】
図2に示すように、各軸受59,159がそれぞれ固定されている一対の連結板61,161には、それぞれ2つずつの取付孔64,164が形成され、また図4に示すように、複数の可動部材4にも、それぞれ2つずつの取付孔65が形成されている。これらの取付孔64,164,65には、図2乃至図4に示すように、スクリュー24の中心軸線Xに関して対称に配置された一対の連結棒66がそれぞれ貫通し、その各連結棒66の長手方向端部にそれぞれ形成された雄ねじ部にナット67,167が螺着されて締め付けられている。2本の連結棒66は、それぞれ入口部材1の支持板7と、中間板53と、出口部材2の側壁9も貫通して延びている。なお、図1においては、連結棒66については、その長手方向各端部のみを示してある。
【0035】
上述のように、本例の連結棒66は、各連結板61,161に固定連結されているが、各連結棒66を、各連結板61,161に遊びをもって連結することもできる。
【0036】
上述のようにして、一対の連結板61,161が2本の連結棒66によって連結され、その2本の連結棒66に多数の可動部材4が組み付けられている。各連結棒66は、各可動部材4の取付孔65に隙間なく強固に嵌合して、連結棒66が各可動部材4に固定連結されていてもよいし、連結棒66が取付孔65に多少の隙間をもって遊嵌していてもよい。また、連結棒を3本以上設けることもできる。
【0037】
上述のように、一対の連結板61,161と、複数の連結棒66は、複数の可動部材4を連結する連結手段を構成していて、その連結手段の各連結板61,161に各軸受59,159がそれぞれ連結されているのである。
【0038】
上述したところから理解されるように、本例の固液分離装置は、複数の可動部材4が共に運動できるように、その複数の可動部材4を連結する連結手段と、スクリュー24の軸部25に対して偏心していて、該軸部25と一体に回転する偏心カム57,157と、上記連結手段に連結されていて、偏心カム57,157の円形外周面58,158が嵌合する円形カム孔60,160を備えた軸受59,159とを具備し、偏心カム57,157の円形外周面58,158は、その全周に亘って、軸受59,159の円形カム孔60,160の内周面に直接又は潤滑剤を介して摺動可能に当接している。しかも、本例の固液分離装置においては、偏心カム57,157及びその偏心カム57,157に嵌合した軸受59,159は、スクリュー24の羽根部26よりもそのスクリュー24の長手方向外側の軸部25の部分にそれぞれ1つずつ設けられており、さらに連結手段は、各軸受59,159にそれぞれ連結された一対の連結板61,161と、複数の可動部材4に連結された複数の連結棒66とを有し、各連結棒66がそれぞれ各連結板61,161に連結されている。
【0039】
ここで、図1及び図2に示した電動モータ28が作動を開始して、スクリュー24がその中心軸線Xのまわりに回転(自転)すると、そのスクリュー24の回転に伴って、偏心カム57,157は、図7に矢印Eで示すように、その偏心カム57,157の中心軸線Yがスクリュー24の軸部25の中心軸線Xのまわりに、偏心カム57,157の偏心量δを半径とした円を描くように円運動を行う。このとき、各偏心カム57,157は各連結板61,161に連結され、複数の可動部材4は、複数の連結棒66を介して両連結板61,161に連結されているので、偏心カム57,157が上述のように円運動するのと同時に、連結板61,161と連結棒66により構成された連結手段と、複数の可動部材4は、偏心カム57,157の偏心量δを半径とする円運動を行う。
【0040】
図8の(a),(b)及び図9の(a),(b)は、図を判りやすくするために、固定部材3とスペーサ14とステーボルト18を二点鎖線で表わし、可動部材4と連結棒66を実線で示し、かつスクリュー24の図示を省略した説明図である。これらの図から判るように、偏心カム57,157の中心軸線Yがスクリュー24の中心軸線Xのまわりに偏心量δを半径として矢印E方向に回転することにより、可動部材4は図8の(a),(b)、図9の(a),(b)に示した順にスクリュー24の中心軸線Xのまわりを、偏心量δを半径として円運動をする。
【0041】
前述のように、汚泥が固液分離部21の内部空間Sを移動しながら脱水処理されているとき、各可動部材4は上述のように円運動を行い、これに対し固定部材3は不動に固定されているので、互いに隣り合う可動部材4と固定部材3との間の濾液排出間隙g(図5)に入り込んだ固形分は、その間隙gから効率よく排出され、固形分がここに詰まったままとなることが阻止される。しかも、回転するスクリュー24の羽根部26が可動部材4に接触することはないので、可動部材4が早期に摩耗することも阻止される。
【0042】
また、可動部材4は往復直線運動ではなく、円運動するので、汚泥に対する脱水効率を高めることができる。この効果は多数の実験により確認されている。
【0043】
但し、偏心カム57,157は、その円形外周面58,158が軸受59,159の円形カム孔60,160の内周面に摺接しながら回転するので、偏心カム57,157又は軸受59,159、或いはその両者が共に経時的に摩耗することは避けられない。ところが、その摩耗量は次に示すように小さく留められる。
【0044】
前述のように、偏心カム57,157の円形外周面58,158は、その全周に亘って、軸受59,159の円形カム孔60,160の内周面に直接又は潤滑剤を介して当接している。これにより、偏心カム57,157の円形外周面58,158と軸受59,159の円形カム孔60,160の内周面に作用する外力は分散され、両周面の単位面積当たりの当接圧は小さなものとなる。このため、偏心カム57,157又は軸受59,159、或いはその両者の摩耗量を少なくすることができ、その寿命を伸ばすことができ、これらの部品の交換回数を減らすことができる。しかも、各連結板61,161を左右一対の偏心カムで駆動するのではなく、スクリュー24の軸部25に固定された1つの偏心カム57,157によって駆動するので、偏心カム57,157の円形外周面58,158と軸受59,159の円形カム孔60,160の内周面が全周に亘って当接していても、偏心カム57,157と軸受59,159の形状精度ないしは組付精度をさほど高めなくとも、各連結板61,161を正しく円運動させることができる。
【0045】
ところで、可動部材4と連結手段が前述のように円運動するとき、偏心カム57,157から連結手段の連結板61,161に加えられる外力によって、連結板61,161と連結棒66と可動部材4とが、スクリュー24の中心軸線Xのまわりに、図8の(a)に矢印Fで示した方向に回動して、その可動部材4が、固定部材3ないしはその固定部材間のスペーサ14に当接して、これらに傷が付けられるおそれがある。
【0046】
そこで、本例の固液分離装置においては、図2及び図3に示すように、各連結棒66が貫通する支持板7、中間板53及び側壁9の孔に、リング状のガイド69(図1には示さず)が、図示していないボルトとナットとによって着脱可能に固定されている。連結棒66が前述の円運動を行うとき、その連結棒66はリング状の各ガイド69の内周面に摺接しながら案内され、その連結棒66が図8の(a)に示した矢印F方向に大きく回動することが阻止される。このように、ガイド69は、連結手段が、可動部材4と共に、スクリュー24の軸部25の中心軸線Xのまわりに矢印F方向に回動して、可動部材4が他の部材に当接することを防止する用をなす。
【0047】
以上説明した固液分離装置においては、偏心カム57,157がスクリュー24とは別部材として構成されているが、偏心カム57,157をスクリュー24と一体に形成することもできる。但し、本例のように、偏心カム57,157をスクリュー24の軸部25に着脱可能に固定すると、その偏心カム57,157が摩耗したとき、これらを軸部25から外して、容易に新たな偏心カムを軸部25に取り付けることができる。
【0048】
また、本例の固液分離装置においては、固定部材3と可動部材4が孔15,16を有するリング状に形成されているが、例えば特許第4374396号公報に記載されているように、凹部が形成された固定部材と可動部材を用い、その凹部にスクリューを配置することもできる。
【符号の説明】
【0049】
3 固定部材
4 可動部材
21 固液分離部
23 出口
24 スクリュー
25 軸部
26 羽根部
57,157 偏心カム
58,158 円形外周面
59,159 軸受
60,160 円形カム孔
61,161 連結板
66 連結棒
69 ガイド
g 濾液排出間隙
X,Y 中心軸線
δ 偏心量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固定部材と、隣り合う固定部材の間に配置された可動部材と、該可動部材と前記固定部材に接触しない状態で該可動部材と固定部材を貫通して延びていて、軸部と、該軸部と一体のらせん状の羽根部とを有するスクリューと、該スクリューをその軸部の中心軸線のまわりに回転駆動する駆動装置とを具備し、該駆動装置によって前記スクリューを回転駆動して、前記固定部材と可動部材とにより構成された固液分離部に入り込んだ処理対象物を該固液分離部の出口に向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を前記固定部材と可動部材の間の濾液排出間隙を通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を前記出口から固液分離部外に排出させる固液分離装置において、前記複数の可動部材が共に運動できるように、該複数の可動部材を連結する連結手段と、前記スクリューの軸部に対して偏心していて、該軸部と一体に回転する偏心カムと、前記連結手段に連結されていて、前記偏心カムの円形外周面が嵌合する円形カム孔を備えた軸受とを具備し、前記偏心カムの円形外周面は、その全周に亘って、前記軸受の円形カム孔の内周面に摺動可能に当接し、前記スクリューの回転に伴って、前記偏心カムは、その中心軸線が、前記スクリューの軸部の中心軸線のまわりに、該偏心カムの偏心量を半径とする円を描くように円運動を行い、これと同時に、前記連結手段と複数の可動部材が、偏心カムの偏心量を半径とする円運動を行うことを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
前記連結手段が、可動部材と共に、前記スクリューの軸部の中心軸線のまわりに回動して、該可動部材が他の部材に当接することを防止するガイドを具備する請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
前記偏心カム及び該偏心カムに嵌合した軸受は、前記スクリューの羽根部よりも該スクリューの長手方向外側の軸部の部分にそれぞれ1つずつ設けられ、前記連結手段は、前記各軸受にそれぞれ連結された一対の連結板と、前記複数の可動部材に連結された複数の連結棒とを有し、各連結棒がそれぞれ前記各連結板に連結されている請求項1又は2に記載の固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−50923(P2012−50923A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194954(P2010−194954)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(591007022)アムコン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】