説明

固液分離装置

【課題】 濾過効率を大幅に向上させ、更に濾材の目詰まりによる頻繁な清掃を不要とすると共に逆洗浄をも不要とする。
【解決手段】 固液分離装置1は密閉円筒形の分離装置本体2と、該分離装置本体2の濾過室に充填する多数の濾材15とで構成する。分離装置本体2は、上部に水の流入口3と水の流出口4を設けると共に、小孔5aを多数穿設した邪魔板5をもって内部を上下に仕切る。上部を濾過室6としてその中に濾材15を向きを不揃いにして所要数充填すると共に、下部を固形物沈降室7としてその底部に固形物排出口8を設ける。濾材15は、環状をなす濾材本体に、その周方向に沿って千鳥状に矩形状の水流入口を多数設けると共に、各水流入口の夫々の一方側の短辺から内側に延びる半円状に彎曲した水流規制板を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中浮遊固形物を除去するための固液分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空調機構において冷却媒体として使用される水を、水の気化熱を利用して冷却する装置として冷却塔(クーリングタワー)が設置される。該冷却塔は、ファンによって外部から大量の空気を吸入し、この空気を空調機構から循環してくる水に接触させ、気化熱により冷却するものである。
【0003】
このように冷却塔は水に外気を接触させるものであることから、水中に様々な種類の固形不純物が取り込まれることになる。その結果、次の如き弊害を発生させることになる。
a.熱交換体の表面にスケールやスライムが発生し、熱伝導を阻害する。
b.金属表面に沈積し、沈積物下の腐食が起こる。
c.配管の詰まりや水流の滞りが発生し、ポンプのエネルギーロスが増える。
d.冷却システム内の水流の遅い場所でコロイド物が堆積されて、微生物の温床となる。
e.細粒が水流によって配管壁に接触し、管内を傷つける。
【0004】
このように水中に固形不純物が存在すると種々の弊害を発生させることになることから、この固形不純物を除去するための装置が不可欠である。そして、斯かる装置として従来用いられていたものは、上部に水の流入口と流出口を設けた密閉円筒形の分離装置本体内に、メッシュ状の濾材を充填してなる固液分離装置である。該固液分離装置は、水の流入口から分離装置本体内に流入した水をメッシュ状の濾材を通過させ、このとき水中の固形不純物を該濾材によって除去し、濾過した水を水の流出口から分離装置本体外に流出させるものである。
【0005】
しかし、斯かる従来の装置は、メッシュ状の濾材が目詰まりを起こし易く、頻繁な清掃が必要である。また、メッシュ状の濾材は腐食する金属からなっているから、長期の使用はできず、これの交換に多大な手間とコストを要するものであった。更に、単に網目によって固形不純物を捕捉するものであるから、水の流入側において目詰まりが始まると水が濾材内を通過し難くなり、濾過の効率が著しく落ちると共に循環する水の流れに対して大きな抵抗となる。また、通過する水の量を考慮して孔径を選択しなければならず、したがって粒径の極小さなものを除去することはできなかった。更に濾材の目詰まりを防ぐために逆洗浄をしなければならず、このための大量の水を必要としていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、濾材が目詰まりを起こさず、もって従来の如き頻繁な清掃を不要とすると共に逆洗浄をも不要とし、また分離装置本体と濾材のいずれも腐食し難い金属であるステンレスを用いることにより長期間の使用に耐え、更に衝撃と遠心力による分離作用を行う特殊形態の濾材を用いることにより、従来に比してはるかに効率よく濾過することができると共に、7ミクロン程度迄の微細な粒径の固形物をも除去することができるようになした固液分離装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
而して、本発明の要旨とするところは、上部に水の流入口と流出口を設けると共に、小孔を多数穿設した邪魔板をもって内部を上下に仕切り、上部を濾過室としてその中に後記濾材を向きを不揃いにして所要数充填すると共に、下部を固形物沈降室としてその底部に固形物排出口を設けた密閉円筒形の分離装置本体と、環状をなす濾材本体に、その周方向に沿って千鳥状に矩形状の水流入口を多数設けると共に、各水流入口の夫々の一方側の短辺から内側に延びる半円状に彎曲した水流規制板を設けた濾材とからなる固液分離装置にある。
【0008】
また、上記構成において、分離装置本体と濾材はステンレスをもって製作したものとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記の如き構成であり、濾材として従来のメッシュ状のものに代えて衝撃と遠心力による分離作用を行う特殊形態の濾材を用いるから、従来のメッシュ状の濾材の如き目詰まりを起こすことがない。したがって、従来の如き頻繁な清掃を不要とすると共に逆洗浄をも不要とすることができるものである。また、分離装置本体と濾材のいずれもステンレス製とした場合には、腐食することなく長期の使用が可能となるものである。加えて、上記の如く濾材として衝撃と遠心力による分離作用を行う特殊形態の濾材を用いるから、従来に比してはるかに効率よく濾過することができると共に、7ミクロン程度迄の微細な粒径の固形物をも除去することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る固液分離装置の正面図である。
【図2】同中央縦断正面図である。
【図3】濾材の斜視図である。
【図4】濾材の正面図である。
【図5】図4中A−A線断面図である。
【図6】濾材の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図中、1は固液分離装置である。2は該固液分離装置1における密閉円筒形の分離装置本体である。また、該分離装置本体2は、本実施形態においてはステンレスによって製作している。
【0013】
また、該分離装置本体2は、上部に水の流入口3と水の流出口4を設けると共に、小孔5aを多数穿設した邪魔板5をもって内部を上下に仕切り、上部を濾過室6としてその中に後記濾材を向きを不揃いにして所要数充填すると共に、下部を固形物沈降室7としてその底部に固形物排出口8を設けてなるものである。また、前記濾過室6と固形物沈降室7との比率は、本実施形態においては55:45になしているが、水の流量、水圧、水質等に応じて適宜に設定することができる。また、本実施形態においては、前記水の流入口3と水の流出口4の夫々に、接続用フランジ9a、10a付きの通水筒9、10を接続し、且つ該通水筒9、10との接続部には夫々後記濾材の飛び出しを防ぐ所要径の孔11a、12aを穿設した板11、12を取り付けている。尚、本実施形態においては、前記邪魔板5と板11、12はパンチングプレートを用いている。また、分離装置本体2の頂部には、吊り下げ孔13aを有する複数の吊り下げ板13、13を設け、また下端部には床面上に支持する支持脚14、14を設けている。
【0014】
15は前記分離装置本体2の濾過室6内に充填する濾材である。また、該濾材15は、本実施形態においてはステンレスによって製作している。
【0015】
また、該濾材15は、環状をなす濾材本体16に、その周方向に沿って千鳥状に矩形状の水流入口17、17、17・・・を多数設けると共に、各水流入口17、17、17・・・の夫々の一方側の短辺から内側(中心部に向かう径方向)に延びる半円状に彎曲した水流規制板18、18、18・・・を設けてなるものである。尚、本実施形態においては、水流規制板18は水流入口17の部分から内向きに切り起こして形成している。また、該濾材15は、前記分離装置本体2の濾過室6内に、固定することなく、向きを不揃いにして多数充填するものである。
【0016】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図2に示す如く、通水筒9を経て水の流入口3から分離装置本体2内に流入した固形不純物が混入した水は、その濾過室6内に充填した濾材15、15、15・・・をもって濾過され、固形物は邪魔板5の小孔5aを通過して固形物沈降室7に沈降し、濾過された水は水の流出口4から流出するものである。尚、固形物沈降室7内に沈降した固形物はその底部に沈殿し、所定の時期に固形物排出口8から排出されるものである。
【0017】
また、濾材15による分離作用は、図6に示す通りであり、濾材本体16に設けた多数の水流入口17、17、17・・・の夫々から濾材本体16内に水が流入すると、この流入した水は、各水流入口17、17、17・・・の夫々の半円状に彎曲した水流規制板18、18、18・・・における同列の前後の水流規制板18、18間に流入し、これらによって回転流となる。そしてこのとき、遠心力によって比重差の大きい固形物は水の当たる一方側の水流規制板18、18、18の前面に突き当たると共に、水流中に未だ残っている固形物はもう一方の水流規制板18、18の後面に突き当たることになり、もって水中の固形物が分離されるものである。そして、分離した固形物は濾材本体16の側方から流入する水によって押し流され、沈降するものである。尚、Wは水流を、Cは固形物を示す。
【0018】
このように、単一の濾材15において複数箇所で濾過が行われ、そして分離装置本体2の濾過室6内には多数の濾材15を充填するものであり、加えて濾材15は向きを不揃いにして充填するものであるから、分離装置本体2の濾過室6内の水流は乱流となって次々に濾材15に接触するから、従来の固液分離装置に比してはるかに濾過効率を向上させることができるものである。また、上記作用によって固液分離を行うものであるから、従来装置によっては濾過することができない7ミクロン程度迄の微細な粒径の固形物をも除去することができるものである。また、従来装置の如き目詰まりを起こすことがないから、頻繁な清掃を不要とすると共に、大量な水を必要とする逆洗浄をも不要とすることができるものである。また、分離装置本体と濾材のいずれもステンレス製とした場合には、腐食することなく長期の使用が可能となるものである。
【符号の説明】
【0019】
1 固液分離装置
2 分離装置本体
3 水の流入口
4 水の流出口
5 邪魔板
5a 小孔
6 濾過室
7 固形物沈降室
8 固形物排出口
9、10 通水筒
11、12 濾材の飛び出し防止板
15 濾材
16 濾材本体
17、17、17 水の流入口
18、18、18 水流規制板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に水の流入口と流出口を設けると共に、小孔を多数穿設した邪魔板をもって内部を上下に仕切り、上部を濾過室としてその中に後記濾材を向きを不揃いにして所要数充填すると共に、下部を固形物沈降室としてその底部に固形物排出口を設けた密閉円筒形の分離装置本体と、環状をなす濾材本体に、その周方向に沿って千鳥状に矩形状の水流入口を多数設けると共に、各水流入口の夫々の一方側の短辺から内側に延びる半円状に彎曲した水流規制板を設けた濾材とからなる固液分離装置。
【請求項2】
分離装置本体と濾材が、ステンレスからなる分離装置本体と濾材である請求項1記載の固液分離装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−59733(P2013−59733A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200423(P2011−200423)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(390015897)カルファケミカル株式会社 (3)
【出願人】(591035472)
【出願人】(511224173)
【氏名又は名称原語表記】KAO,JENN−HUEI
【住所又は居所原語表記】2F.,No.7,Ln.45,Sec.2,Zhongshe Rd.,Shilin Dist.,Taipei City 111,Taiwan(R.O.C.)
【Fターム(参考)】