説明

固液懸濁液の固/液分離のための装置および方法

【課題】高いろ液透過性と、改善された寸法安定性と、高い熱安定性を有し、ポリプロピレン繊維と比較して改善された機械的強度を有する、固液懸濁液を連続的にろ過するためのろ布およびろ過装置を提供する。
【解決手段】有効ろ過層が、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(E−CTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる群から選択される合成繊維から形成された縦糸および横糸の織物材からなるろ布を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、可動フィルター、例えば、回転ドラムフィルターまたはベルトフィルター上で、固液懸濁液を連続的に固/液分離(ろ過)するための装置および方法に関し、有効ろ過層は合成繊維からなる織物材を含み、織物材は、高いろ液透過性、ならびに、改善された寸法安定性を備え130℃までの高い熱安定性を有し、さらに、ポリプロピレン繊維と比較して、改善された機械的強度を有する。織物材は、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(E−CTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の群から選択される繊維を含み、目違い継ぎの原理(groove-tongue principle)によって作用する取付け具を用いて、フィルタードラムの外表面に固定される。この織物ろ布の取替えが必要となる磨耗および破れが生じるまでの、織物ろ布の有効寿命は、従来のポリプロピレン(PP)織物ろ布よりも極めて長い。
【背景技術】
【0002】
液体フェノール中のビスフェノールA(BPA)−フェノール付加物結晶の懸濁液を、真空ドラムフィルター上でろ過することは既知であり、例えば国際公開第2001/046105号に記載されている。しかしながら、フィルター媒体の熱安定性については、適当なろ過材を特定することなく、他の態様の中で言及されている。
【0003】
PTFEまたは変性PTFEからおよびエチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(E−CTFE)から構成される熱安定性ろ過材、ならびにこのような物質からフィルターを製造することは既知であり、例えば米国特許第5,213,882号に記載されている。しかしながら、この文献は、不織繊維ウェブに関するものであって、その特性は、必ずしもこのような繊維材から形成された織物と相当しない。その文献は、このようなフィルターの機械的安定性や透過性について言及していない。
【0004】
PEEK繊維から作られたろ過材も既知であり、例えば国際公開第99/19043号に記載されている。しかしながら、この文献からは、織物ろ過材に関するものであるかどうか、およびこのようなフィルターがいかなる機械的特性または透過性を有しているかが明らかでない。
【0005】
したがって、同程度または減少した固体の漏出のために高いろ液の処理量をもたらし、それと同時に、ポリプロピレン織物における既知のろ布と比較して、絶えず繰り返される洗浄目的のために2−5bar圧力の蒸気に対する高い熱安定性ならびにこれらの温度での十分な寸法安定性および改善された機械的強度を有する、ろ布の必要性がある。回転ドラムフィルターの場合、これは、より具体的には、ろ布の作動中、目違い継ぎの原理により構成され、固定の領域における高い角偏向のためにろ布の格別の機械的負荷または弱点となり得る、ろ布をフィルタードラム上に固定する場所での裂けが生じないことを意味する。ドラムフィルターは連続的に作動し、異なる圧力にさらされるため、そしてさらに、結果として生じるろ過ケークは布表面から連続的に機械的に削り落とされるため、ろ布の機械的強度は重要である。この機械的応力は、静止フィルターとは対照的に、ろ布の有効寿命にとってかなり重要であり、従来使用されていたポリプロピレンろ布と比較して約1年〜約5年延ばされるべきである。同様に、改良されたろ布のろ液透過性は、ポリプロピレンろ布のろ液透過性と少なくとも同等であるべきであり、あるいは、ことによるとポリプロピレンろ布のろ液透過性より良くさえあるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2001/046105号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,213,882号明細書
【特許文献3】国際公開第99/19043号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、ここに記載する装置および方法により取り組む課題は、先行技術のろ布よりも前記の利点を有する、液体フェノール中のビスフェノール−フェノール付加物結晶の懸濁液を連続的にろ過するための、可動フィルター(例えば、回転ドラムフィルターまたはベルトフィルター)用の、改良されたろ布を提供することである。より具体的には、ここに記載するろ布は、同等またはさらに改良された固体漏出を伴って、フェノールろ液の透過性を極めて高める働きをする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、驚くべきことに、特に、従来使用されていたポリプロピレンろ布と比較して同等またはさらに減少した透気性を有する、PEEKまたはフッ素含有エチレンコポリマーの縦糸および横糸で織られたろ布を用いることにより解決された。驚くべきことに、これらのろ布は、可動フィルターでの、液体フェノール中のビスフェノール−フェノール付加物結晶の懸濁液のろ過に使用した場合、[L/dm×min]で測定したろ布の透気性がポリプロピレンろ布のそれ未満であるにもかかわらず、従来使用されていたポリプロピレンろ布より高いフェノールろ液の透過性を有する。ろ布は、改良された熱安定性に加えて、より優れた機械安定性および高温での耐変形性を有する。
【0009】
ここで、ビスフェノールは、ビス(4−ヒドロキシアリール)アルカンである。
【0010】
ここに記載する装置および方法は、連続的ろ過装置(より具体的には可動フィルターおよび好ましくは回転ドラムフィルターを備える)での、固液懸濁液の連続的ろ過、より具体的には、可動フィルターでの液体フェノール中のビスフェノール−フェノール付加物結晶懸濁液の連続的ろ過を提供する。上記装置は、従来の可動フィルターおよびこの可動フィルター上のろ布からなり、より具体的には後述する。上記方法は、ビスフェノール製造の操作において生成する、液体フェノール中のビスフェノール−フェノール付加物結晶の懸濁液の連続的ろ過のための前記装置の使用にある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
国際公開第2001/046105号に記載されている、Krauss Maffei製のTSF真空ドラムフィルターは、使用され得る可動フィルターの例である。好ましくは、このようなドラムフィルターは、フィルターセルとして、ケーク形成区画、洗浄区画、乾燥吸引区画、曝気区画および任意にケーク除去区画および布のすすぎ区画を含む。そしてろ布は、ろ布に対してろ液透過性の支持要素上で、フィルタードラム上に位置し、合成繊維からなるロープまたは好ましくは耐食性金属バネまたはそれらの組合せで、目違い継ぎの原理により、そこに張られ、固定される。ドラムフィルターの端面を、好ましくはろ過領域として使用しない。このような真空ドラムフィルターの機能は、国際公開第2001/046105号において詳細に説明される。しかしながら、他のろ過装置、例えば、加圧回転フィルター、ベルトフィルター、ディスクフィルター、プレートフィルターまたは平面フィルターを使用できる。
【0012】
例えば真空ドラムフィルター用のろ布は、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(E−CTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる群から選ばれる織物であり、好ましくはE−CTFE製の織物である。これらのろ布も、金属性のろ布または耐久金属性エンジニアリング材料のろ過材よりも、改良された特性を有する。
【0013】
ろ布は、縦糸および横糸で織られた織物であり、例えば、斜文織または平逆畳み織り(the plain reverse dutch weave)または繻子織で織られていてよく、斜文織が好ましい。繊維の太さは、30μmから1000μmまでさまざまであり;500〜600g/mの織物重量に対して約600μm〜800μmの繊維が好ましい。20mm水柱の圧力下での、織物ろ布の透気性は、90〜1500[L/dm×min]で変化してよく、500〜1300[L/dm×min]の透気性が好ましい。所望により、ろ布を1回以上カレンダー仕上げしてよい。
【0014】
これらのろ布は、130℃で48時間にわたる高い熱負荷において、高い寸法安定性を有する。比較され得るポリプロピレンろ布は、同一条件下で、フィルター帯の横方向および縦方向の明らかな収縮を示す。したがって、ろ布を、蒸気を用いてより高温でより激しく、したがって、より長い間隔で洗浄することができ、そのため、ろ過装置全体が使用可能な期間が長くなる。
【0015】
同様に、ろ布の透過性の追加的な評価尺度としてのろ布の透水性は、比較され得るポリプロピレンろ布未満であるため、透気性と相関する。本発明のろ布によると、比較され得るポリプロピレンろ布に代えて本発明のろ布を使用する場合、他の操作パラメーターは同一で、同じ真空ドラムフィルターで、より低い透過性にも関わらず、フェノール性ビスフェノールA−含有懸濁液の処理能力がより高くなる。
【0016】
ろ過ケークのビスフェノール含量に関して測定されるろ過特性は、使用するろ布が比較可能な条件下で使用される場合、ポリプロピレンろ布のものに相当する。
【0017】
液体フェノール中のビスフェノール−フェノール付加物結晶の懸濁液の連続的ろ過のための本発明の方法は、これらの懸濁液を分離するために前記ろ布を用いることにより、可動フィルターを使用することにある。国際公開第2001/046105号に記載された方法のような先行技術方法と比較する場合、この方法は、高い透過性、破れおよびろ布への他の機械的損傷の回避によって、可動フィルター上のろ布の検査期間および洗浄期間が減ることによる、より長い使用可能期間という利点を有する。改良されたろ過特性の結果として生成物の処理量が向上するため、この方法は、高い生産性というさらなる利点を有する。
【0018】
本発明の方法は、国際公開第2001/046105号に詳細に記載されるビスフェノールの製造方法の一部である。
【0019】
ビス(4−ヒドロキシアリール)アルカンは、好ましくは連続的にまたは回分式に、好ましくは触媒(好ましくはイオン交換体)下で、縮合反応用の固定床反応器中で、連続的に製造される。
【0020】
製造されるビス(4−ヒドロキシアリール)アルカンは、例えば、一般式(I):
【化1】

〔式中、
は、直鎖または分枝鎖C−C18−アルキレン基、好ましくはC−C−アルキレン基、またはC−C18−シクロアルキレン基、好ましくはC−C12−シクロアルキレン基を表し、
Rは、独立して直鎖または分枝鎖C−C18−アルキル基、好ましくはC−C−アルキル基、C−C18−シクロアルキル基、好ましくはC−C12−シクロアルキル基、C−C24−アリール基、好ましくはC−C12−アリール基、またはハロゲン基を表し、および、
xおよびyは、独立して0または1〜4の整数、好ましくは独立して0、1または2を表す〕
で示される。
【0021】
好ましいビス(4−ヒドロキシアリール)アルカンは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA(BPA))、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0022】
特に好ましいビス(4−ヒドロキシアリール)アルカンは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA(BPA))、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0023】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が極めて好ましい。
【0024】
ビス(4−ヒドロキシアリール)アルカンは、p−位が未置換の芳香族モノヒドロキシ化合物と、少なくとも1つの脂肪族基をカルボニル官能基上に有するケトンとを、縮合反応によって反応させることにより、従来通りに得られる。好ましく得られる中間体生成物は、ビス(4−ヒドロキシアリール)アルカンと、出発物質として使用される芳香族モノヒドロキシ化合物との付加物であり、その後、所望のビス(4−ヒドロキシアリール)アルカンと芳香族モノヒドロキシ化合物に分離される。
【0025】
適当な芳香族モノヒドロキシ化合物は、例えば、一般式(II):
【化2】

〔p−位が未置換であり、式中、
Rは、独立して直鎖または分枝鎖C−C18−アルキル基、好ましくはC−C−アルキル基、C−C18−シクロアルキル基、好ましくはC−C12−シクロアルキル基、C−C24−アリール基、好ましくはC−C12−アリール基、またはハロゲン基を表し、および、
xまたはyは、0または1〜4の整数、好ましくは0、1または2を表す〕
で示される。
【0026】
一般式(II)の芳香族モノヒドロキシ化合物の適当な例は、例えば、フェノール、o−およびm−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、o−tert−ブチルフェノール、2−メチル−6−tert−ブチルフェノール、o−シクロヘキシルフェノール、o−フェニルフェノール、o−イソプロピルフェノール、2−メチル−6−シクロペンチルフェノール、o−およびm−クロロフェノールまたは2,3,6−トリメチルフェノールである。フェノール、o−およびm−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、o−tert−ブチルフェノールおよびo−フェニルフェノールが好ましく、フェノールが極めて好ましい。
【0027】
適当なケトンは、例えば、一般式(III):
【化3】

〔式中、
は、 直鎖または分枝鎖C−C18−アルキル基、好ましくはC−C−アルキル基を表し、および、
は、直鎖または分枝鎖C−C18−アルキル基、好ましくはC−C−アルキル基、またはC−C24−アリール基、好ましくはC−C12−アリール基を表し、または、
およびRは、共に、直鎖または分枝鎖C−C18−アルキル基、好ましくはC−C12−アルキル基を表す〕
で示される。
【0028】
一般式(III)で示される適当なケトンの例は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル−、ジメチル−およびそれぞれジェミナルメチル基を有してもよいトリメチルシクロヘキサノン、例えば3,3−ジメチル−5−メチルシクロヘキサノン(ヒドロイソホロン)である。好ましいケトンは、アセトン、アセトフェノン、シクロヘキサノンおよびそのメチル−含有同族体であり、特に、アセトンが好ましい。
【0029】
−C−アルキルは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルまたは1−エチル−2−メチルプロピルを表し、さらに、C−C18−アルキルは、例えばn−ヘプチルおよびn−オクチル、ピナコリル、アダマンチル、異性体メチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシルまたはステアリルを表す。
【0030】
−C−アルキレン/C−C18−アルキレンは、例えば、前記のアルキル基に対応するアルキレン基を表す。
【0031】
−C12−シクロアルキルは、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルまたはシクロドデシルを表す。
【0032】
−C24−アリールまたはC−C12−アリールの例は、フェニル、o−、p−、m−トリル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニルまたはフルオレニルである。
【0033】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくはフッ素または塩素、より好ましくは塩素を表し得る。
【実施例】
【0034】
以下の実施例は、本発明の例示的説明のために役立つものであり、請求項の範囲の限定を意図するものではない。「比較例」として特定される実施例は、本発明の態様を示すものではない。他の全ての実施例を、本明細書に記載される本発明の概念を示すために提示する。
【0035】
本発明の実施例では、以下のろ布を用いた:
SEFAR TETEXMONO 08−1033−W 115(E−CTFE)
SEFAR TETEXMONO 17−2032−W 155(PEEK)
ここで、E−CTFEはエチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマーを意味し、PEEKはポリエーテルエーテルケトンを意味する。
【0036】
Verseidag製の、ポリプロピレン(PP)からなるPP2763(1200L/(dm・min))型のろ布を、比較例に使用し、同様に、Haver&Boecker製の1.4306(X2CrNi19−11、AISI 304L)からのSPW40型;メッシュ80×400の金属フィルターを使用した。
【0037】
この目的のために構築した実験装置で透水性を測定した。既定量(5000ml)の温度制御された水を、まず、そこを通り流入が起こる縦の測定区域の上方の、温度制御された静水圧カラム中に入れた。規定された空の断面領域において、そこを通り流入が起こる縦の測定区域に、被試験ろ布を取付け、そこを通り流入が起こる既定された断面領域にろ布を取り付けることにより、測定組立品の主な流れ抵抗が予定されるようにした。ろ布試験において測定された数量は、温度制御された静水圧カラムから流出するのに、水量に必要な時間である。
【0038】
以下で詳細に示す実施例1〜6を、次の表1に要約する。
【0039】
【表1】

【0040】
〔実施例1〕
フェノールおよびアセトンの酸−触媒反応と、続く懸濁液結晶化において生じたBPA/フェノール付加物結晶を、回転フィルターによって液相から分離し、さらに精製する。そのために、供給流中の25重量%の固体含量および回転フィルター中への41℃の供給温度を固定する。フェノール耐久性で、1080L/dm/分の透気性を有する、熱安定性ろ布であるSefar製TETEXMONO 08−1033−W 115上でろ過を行う。真空は、ケーク形成区画で100mbar、洗浄区画で300mbarおよび乾燥吸引区画で300mbarである。回転フィルターハウジングは、10mbarのわずかに加圧下の窒素ガスで不活性化する。ドラム回転スピード、ろ過ケーク厚さ、循環窒素速度および制御盤上の吸引孔を、ろ過ケークの残留水分含量が、混合結晶量に基づいて15重量%未満となるように設定する。回転フィルターは、約3.3t/(時間・フィルター領域1mあたり)までの供給流で安定的に作動させる。
【0041】
洗浄区画でのろ過ケークのすすぎは、55℃の温度を有する純フェノールを使用し、ろ過ケーク洗浄のためのすすぎ量は、ろ過ケーク量に基づいて100%である。
【0042】
ろ布のすすぎは、80℃の温度を有するフェノールを使用し、ろ布すすぎのためのすすぎ量は、ろ過ケークの量に基づいて80重量%である。このろ過方法は、高純度(>99%、フェノール留分なし)のBPA−フェノール付加物を与える。
【0043】
ろ液のビスフェノールA含量は、約8.8重量%である。
【0044】
〔実施例2(比較例)〕
実施例1との対照に、同一の回転フィルターにVerseidag製PP2763のろ布を取り付けたこと除き、実施例1を繰り返した。
【0045】
他の同一の操作パラメーターのもとで、回転フィルターは、約2.7t/(時間・フィルター領域1mあたり)までの最大供給流まで安定的に作動し得る。より高い供給流は、回転フィルター溝における懸濁レベルの連続的な増加をもたらし、最終的に、組立品の完全な氾濫をもたらし得る。
【0046】
このろ過方法は、同様に、高純度(>99%、フェノール留分なし)を有するBPA−フェノール付加物を与える。
【0047】
ろ液のビスフェノールA含量は、約9.0重量%である。
【0048】
〔実施例3〕
フェノールおよびアセトンの酸−触媒反応と、続く懸濁液結晶化において生じたBPA/フェノール付加物結晶を、温度制御された吸引フィルターにより液相から分離する。回分式で行ったろ過は、懸濁液中で25重量%の固体含量および41℃の懸濁液温度を固定して使用した。吸引フィルターは、同様に41℃に温度制御する。フェノール耐久性で、熱安定な、1080L/dm/分の透気性を有するSefar製TETEXMONO 08−1033−W 115ろ布上でろ過を行った。約2mのBPA−フェノール付加物結晶−含有懸濁液を、ろ布領域1mあたりに使用する。ケーク形成区画での真空は、約100mbarである。
【0049】
ろ過ケークを、60℃に温度制御した純フェノールで洗浄し、ろ布洗浄のためのすすぎ量は、ろ布量に基づいて100%である。
【0050】
洗浄したろ過ケークを、約15%の残留水分含量に下がるまで吸引乾燥し、分析する。
【0051】
このろ過方法は、高純度(>99%、フェノール留分なし)のBPA−フェノール付加物を与える。
【0052】
ろ液のビスフェノールA含量は、約9.4重量%である。
【0053】
〔実施例4〕
フェノールおよびアセトンの酸−触媒反応と、続く懸濁液結晶化において生じたBPA−フェノール付加物結晶を、温度制御された吸引フィルターにより液相から分離する。回分式で行ったろ過は、懸濁液中で25重量%の固体含量および41℃の懸濁液温度を固定して使用した。吸引フィルターは、同様に41℃に温度制御する。フェノール耐久性で、熱安定な、1200L/dm/分の透気性を有するSefar製TETEXMONO 17−2032−W 155ろ布上でろ過を行った。約2mのBPA−フェノール付加物結晶−含有懸濁液を、ろ布領域1mあたりに使用する。
【0054】
ケーク形成区画での真空は、約100mbarである。ろ過ケークを、60℃に温度制御された純フェノールで洗浄し、ろ布洗浄のためのすすぎ量は、ろ布量に基づいて100%である。洗浄したろ過ケークを、約15%の残留水分含量に下がるまで吸引乾燥し、分析する。
【0055】
このろ過方法は、高純度(>99%、フェノール留分なし)を有するBPA−フェノール付加物を与える。
【0056】
ろ液のビスフェノールA含量は、約9.4重量%である。
【0057】
〔実施例5〕
フェノールおよびアセトンの酸−触媒反応と、続く懸濁液結晶化において生じたBPA−フェノール付加物結晶を、温度制御された吸引フィルターにより液相から分離する。回分式で行ったろ過は、懸濁液中で25重量%の固体含量および41℃の懸濁液温度を固定して使用した。吸引フィルターは、同様に41℃に温度制御する。フェノール耐久性で、熱安定な、1200L/dm/分の透気性を有するVerseidag製のPP2763ろ布上でろ過を行った。約2mのBPA−フェノール付加物結晶−含有懸濁液を、ろ布領域1mあたりに使用する。
【0058】
ケーク形成区画での真空は、約100mbarである。ろ過ケークを、60℃に温度制御された純フェノールで洗浄し、ろ布洗浄のためのすすぎ量は、ろ布量に基づいて100%である。洗浄したろ過ケークを、約15%の残留水分含量に下がるまで吸引乾燥し、分析する。
【0059】
このろ過方法は、高純度(>99%、フェノール留分なし)を有するBPA−フェノール付加物を与える。
【0060】
ろ液のビスフェノールA含量は、約9.6重量%である。
【0061】
〔実施例6(比較例)〕
フェノールおよびアセトンの酸−触媒反応と、続く懸濁液結晶化において生じたBPA−フェノール付加物結晶を、温度制御された吸引フィルターにより液相から分離する。回分式で行ったろ過は、懸濁液中で25重量%の固体含量および41℃の懸濁液温度を固定して使用した。吸引フィルターは、同様に41℃に温度制御する。フェノール耐久性で、熱安定な、Haver&Boecker製のSPW40金属フィルター、メッシュ80×400、構成材料1.430上で、ろ過を行った。約2mのBPA−フェノール付加物結晶−含有懸濁液を、ろ布領域1mあたりに使用する。
【0062】
ケーク形成区画での真空は、約100mbarである。ろ過ケークを、60℃に温度制御された純フェノールで洗浄し、ろ布洗浄のためのすすぎ量は、ろ布量に基づいて100%である。洗浄したろ過ケークを、約15%の残留水分含量に下がるまで吸引乾燥し、分析する。
【0063】
このろ過方法は、高純度(>99%、フェノール留分なし)を有するBPA−フェノール付加物を与える。
【0064】
ろ液のビスフェノールA含量は、約10.0重量%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的ろ過装置上で、固液懸濁液を連続的にろ過するための装置であって、有効ろ過層が、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(E−CTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる群から選択される合成繊維から形成された縦糸および横糸の織物材を含む装置。
【請求項2】
有効ろ過層が可動フィルターの円筒状側面に位置する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
回転ドラムフィルターでろ過を行う請求項2に記載の装置。
【請求項4】
繊維の太さが300〜1000μmの範囲である請求項1に記載の装置。
【請求項5】
織物材の透気性が、20mm水柱の圧力で、90〜1500[L/dm×min]の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(E−CTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる群から選択される合成繊維の縦糸および横糸の織物材を含むろ過層の、連続的ろ過装置で固液懸濁液を連続的にろ過するための使用。
【請求項7】
液体フェノール中のビスフェノール−フェノール付加物結晶の懸濁液を連続的にろ過するための請求項6に記載の使用。
【請求項8】
液体フェノール中のビスフェノール−フェノール付加物結晶の懸濁液を請求項1に記載する装置でろ過することにより、該懸濁液からビスフェノール−フェノール付加物結晶を単離するための方法。
【請求項9】
ビスフェノールが、次の式(I):
【化1】

〔式中、
は、直鎖または分枝鎖C−C18−アルキレン基またはC−C18−シクロアルキレン基を表し、
Rは、独立して直鎖または分枝鎖C−C18−アルキル基、C−C18−シクロアルキル基、C−C24−アリール基またはハロゲン基を表し、および、
xおよびyは、独立して0または1〜4の整数を表す〕
に従う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ビスフェノールが、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA(BPA))、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)から選択される、請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2012−16700(P2012−16700A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−151620(P2011−151620)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】