説明

固液2相窒素の製造装置および固液2相窒素の製造方法

【課題】簡便な構成により容易に固液2相窒素を製造する装置、および簡便な方法により容易に固液2相窒素の製造する方法を提供すること。
【解決手段】固液2相窒素を収容する貯槽2と、貯槽2上に取り付けられた冷凍機1と、貯槽2内の液体窒素6内に浸漬され、冷凍機1により冷却されるコールドヘッド3と、コールドヘッド3に取り付けられたヒータ4とからなり、冷凍機1により冷却されてコールドヘッド3に付着した固体窒素7をヒータ4により加熱して剥離し、貯槽2内に固液2相窒素を製造することを特徴とする固液2相窒素製造装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液2相窒素の製造装置および固液2相窒素の製造方法に係り、例えば、超電導応用機器の冷却装置に使用される固液2相窒素の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スラッシュ窒素(微細な固体窒素粒子が分散したスラリー状の液体窒素)を超電導送電ケーブルの冷却に用いるために管内搬送特性に関する基礎研究が盛んに行われている。スラッシュ窒素を含めて固液2相窒素を製造するためには、主として次の2種類の方法がある。第1の方法は、真空ポンプにより減圧して窒素の三重点まで圧力を下げることにより固体窒素を生成する方法であり、第2の方法は、液体窒素中に固体窒素のできる温度(63K)以下の温度の極低温ガス(ネオン、水素、ヘリウム)を液体窒素中に噴出させて液体窒素を固化させる方法である。
【特許文献1】特表2004−80892号公報
【非特許文献1】池内正充 他4名:「スラッシュ窒素の生成に関する基礎研究」、第68回2003年度春季低温工学・超電導学会、2003年5月、2C−a03
【非特許文献2】松尾康一 他3名:「スラッシュ窒素の管内搬送特性に関する基礎研究」、低温工学39巻10号 pp.475−482, 2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記第1の方法は、圧力が大気圧以下となるため、搬送のために加圧すると温度が上昇したり、外気の吸い込みによるトラブルが生じるおそれがある。また、真空ポンプにより排気するため、液体窒素の量が減少する。また、上記第2の方法は、ヘリウム等の極低温ガスが高価であるという問題点がある。
本発明の目的は、上記の問題点に鑑みて、簡便な構成により容易に固液2相窒素を製造する装置、および簡便な方法により容易に固液2相窒素の製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
第1の手段は、固液2相窒素を収容する貯槽と、該貯槽上に取り付けられた冷凍機と、前記貯槽内の液体窒素内に浸漬され、前記冷凍機により冷却されるコールドヘッドと、該コールドヘッドに取り付けられたヒータとからなり、前記冷凍機により冷却されて前記コールドヘッドに付着した固体窒素を前記ヒータにより加熱して剥離し、前記貯槽内に固液2相窒素を製造することを特徴とする固液2相窒素製造装置である。
第2の手段は、第1の手段において、前記コールドヘッドは、該コールドヘッドの端部側に前記ヒータが取り付けられ、前記端部側より前記冷凍機側が断熱材で被覆されていることを特徴とする固液2相窒素の製造装置である。
第3の手段は、冷凍機により液体窒素内で冷却されるコールドヘッドと、該コールドヘッドに取り付けられたヒータとからなり、前記冷凍機により前記コールドヘッドを冷却して該コールドヘッドに固体窒素を付着させる工程と、その後、前記コールドヘッドの冷却を中止して前記ヒータを加熱し、前記付着した固体窒素を前記コールドヘッドから剥離する工程とを繰り返すことにより、固液2相窒素を製造することを特徴とする固液2相窒素の製造方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の固液2相窒素の製造装置によれば、簡便な構成により安価に固液2相窒素を製造することができ、また、本発明の固液2相窒素の製造方法によれば、簡便な方法により安価に固液2相窒素の製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の一実施形態を図1を用いて説明する。
図1は本実施形態の発明に係る固液2相窒素製造装置の構成を示す図である。
同図において、1は小型冷凍機、2は液体窒素6と固体窒素7からなる固液2相窒素を収容する透明ガラス貯槽、3は小型冷凍機1により冷却されるコールドヘッド、4はコールドヘッド3の端部表面に、例えば、巻回して設けられたヒータ、5はコールドヘッド3の端部表面のみに固体窒素7を付着させ、端部表面以外の箇所には固体窒素7が付着されないようにするために設けられた断熱材、6は液体窒素、7は固体窒素である。なお、透明ガラス貯槽2は2重構造になっており、2重構造内は真空引きされており、所謂魔法瓶のような断熱構造となっている。また透明ガラスも貯槽2内を可視化するために使用したものであり、本来ガラスである必要はなく、魔法瓶のようにステンレスで構成してもよい。
【0007】
同装置において、固液2相窒素は次の手順で製造される。まず、透明ガラス貯槽2に液体窒素6を充填し、小型冷凍機1の運転を開始する。運転開始後約6時間で固体窒素7がコールドヘッド3の端部周囲にでき始める。さらに運転を続けると固体窒素7の厚みは、例えば、約1mm/10 min.の割合で増加していく。ある程度の厚さの固体窒素7がコールドヘッド3の端部周囲に付着されたら、小型冷凍機1の運転を停止し、ヒータ4を投入する。数分後、ヒータ4と固体窒素7との間に気泡が生じ、その後、固体窒素7が剥離し、液体窒素6中に固体窒素7が混在した固液2相窒素が製造される。この一連の作業を繰り返すことにより、透明ガラス貯槽2内において、固液2相窒素中における固体窒素7の割合を増やすことができる。
【産業上の利用の可能性】
【0008】
超電導応用機器の冷却装置において、特に、超電導機器からの発熱が定常的ではなく、負荷変動が大きい場合には固体窒素の融解潜熱を利用することにより、冷媒温度を一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る固液2相窒素製造装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0010】
1 小型冷凍機
2 透明ガラス貯槽
3 コールドヘッド
4 ヒータ
5 断熱材
6 液体窒素
7 固体窒素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固液2相窒素を収容する貯槽と、該貯槽上に取り付けられた冷凍機と、前記貯槽内の液体窒素内に浸漬され、前記冷凍機により冷却されるコールドヘッドと、該コールドヘッドに取り付けられたヒータとからなり、前記冷凍機により冷却されて前記コールドヘッドに付着した固体窒素を前記ヒータにより加熱して剥離し、前記貯槽内に固液2相窒素を製造することを特徴とする固液2相窒素製造装置。
【請求項2】
前記コールドヘッドは、該コールドヘッドの端部側に前記ヒータが取り付けられ、前記端部側より前記冷凍機側が断熱材で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の固液2相窒素の製造装置。
【請求項3】
冷凍機により液体窒素内で冷却されるコールドヘッドと、該コールドヘッドに取り付けられたヒータとからなり、前記冷凍機により前記コールドヘッドを冷却して該コールドヘッドに固体窒素を付着させる工程と、その後、前記コールドヘッドの冷却を中止して前記ヒータを加熱し、前記付着した固体窒素を前記コールドヘッドから剥離する工程とを繰り返すことにより、固液2相窒素を製造することを特徴とする固液2相窒素の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−273756(P2008−273756A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115862(P2007−115862)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度経済産業省「超電導薄膜限流器研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】