固相基板表面上の官能基の定量方法
【課題】 簡便な操作で、バイオチップを作製するための固相基板等の表面上のアミノ基を正確に定量する方法を提供すること。
【解決手段】 固相基板表面上の官能基の定量方法は、バイオチップ用固相基板の表面上
のアミノ基を、ハロアシル化しそのハロゲン化物イオン量をイオンクロマトにより定量する。
【効果】 この方法によれば、簡便な操作で、バイオチップを作製するための固相基板等
の表面上のアミノ基を正確に定量できるので、このような固相基板の品質管
理を簡便、確実に行うことができる。また、基板上の官能基が簡便に正確に定量できるの
で、バイオチップ作製時に、高価な生体関連物質を、不必要に過剰な量用いる必要がなく
なり、コスト面でも大きな利益をもたらす。
【解決手段】 固相基板表面上の官能基の定量方法は、バイオチップ用固相基板の表面上
のアミノ基を、ハロアシル化しそのハロゲン化物イオン量をイオンクロマトにより定量する。
【効果】 この方法によれば、簡便な操作で、バイオチップを作製するための固相基板等
の表面上のアミノ基を正確に定量できるので、このような固相基板の品質管
理を簡便、確実に行うことができる。また、基板上の官能基が簡便に正確に定量できるの
で、バイオチップ作製時に、高価な生体関連物質を、不必要に過剰な量用いる必要がなく
なり、コスト面でも大きな利益をもたらす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドチップや核酸チップのようなバイオチップを作製するためのバイオ
チップ用固相基板の表面に導入された官能基の定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質や核酸等の生体関連物質を基板上に固定したデバイスであるマイクロアレイ
の使用が一般化しつつある中、安定した品質のマイクロアレイ用基板が求められている。
マイクロアレイ用基板はガラスもしくはプラスチック製であることが多いが、通常これら
の材料表面に生体関連物質を固定化するためには表面修飾を施す必要がある。表面修飾法
としては、アミノ基 、カルボキシル基などの官能基を導入する場合が多い。特にアミノ
基を導入した基板 は、マレイミド基、ブロモアセチル基への変換が容易で固定化に用いる生体物質に含まれるチオール基との間に共有結合を形成し、強固な固定化が可能であることから有
用である。
【0003】
アミノ基 を導入する方法として、アミノアルキルシランによる処理、窒素雰囲気下で
のプラズマ処理、アミノ基含有高分子物質のコーティングなどが挙げられるが、処理の簡
便性、均一性の観点から、アミノアルキルシランによる処理が一般的である。この方法で
は、浸漬、洗浄、熱処理という比較的簡便な工程で表面に官能基を導入することが可能で
あることから多用されている(特許文献1)。
【0004】
カルボキシル基を導入する方法としてはアミノ化した後、適当な酸クロリドあるいは酸
無水物を用いてカルボキシル化する方法が知られている(特許文献2)。
【0005】
基板表面の官能基を定量することは、マイクロアレイ用基板製造の品質管理の観点から
重要である。特に、ペプチド(タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド)は高価であり、固定化に過剰量用いるのは不経済である。このため、基板上の官能基を定量することは、コスト面からも重要である。
【0006】
表面の官能基は、X線光電子分析法による表面分析により定量可能であるが、X線光電
子分析法による表面分析は、装置自体が高価であり、また操作が煩雑であり、さらに、基板
内部にもX線がおよぶため、基板自体の元素も分析されてしまい、異なる材質間での比較
が困難である。また、官能基との結合性を有する試薬等を使用して官能基を定量する方法
(特許文献2)も知られているが、煩雑な作業を必要とするのみならず、官能基と試薬と
の反応性が100%ではないため、定量結果の信頼性も満足できるものではない。
【0007】
【特許文献1】特開昭60-015560
【特許文献2】特開2001-139532
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、簡便な操作で、バイオチップを作製するための固相基板等の
表面上のアミノ基をハロアセチル化することでアミノ基量を正確に定量する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討したが、なかなか目的を達成できな
かった。塩基性又は酸性官能基を定量するために中和滴定ということも考えられたが、バ
イオチップを作製するための固相基板に導入される官能基の量は極めて微量であるため、中和滴
定の感度ではとても定量できないと考えられた。さらに、固相基板上の官能基を塩にした後、対イオンを遊離させ、遊離した対イオンを測定することにより、バイオチップを作製するための固相基板に導入される微量の官能基を定量できることを見出したが、検出限界に問題があった。そこで、アミノ基をハロアセチル化した後、所定の反応でハロゲン化物イオンを遊離させてイオン定量する本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、バイオチップ用固相基板の表面上のアミノ基を、過剰のハロ酢酸無水物で処理し、洗浄後にメルカプトエタノール水溶液に接触させ遊離するハロゲン化物イオン量
を測定することにより定量する、固相基板表面上のアミノ基の定量方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、簡便な操作で、バイオチップを作製するための固相基板等の表面上のアミノ基を正確に定量する方法が初めて提供された。本発明の方法によれば、簡便な操作で、バイオチップを作製するための固相基板等の表面上のアミノ基を正確に定量できるので、このような固相基板の品質管理を簡便、確実に行うことができる。また、基板上のアミノ基が簡便かつ正確に定量できるので、バイオチップ作製時に、高価な生体関連物質を、不必要に過剰な量用いる必要がなくなり、コスト面でも大きな利益をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の方法に供される固相基板は、バイオチップを作製するためのバイオチップ用固
相基板である。定量される官能基は、バイオチップ上に生体関連物質を固定化するために
導入されたアミノ基であることが好ましい。バイオチップは、チップ上に生体関連物質が固
定化され、被検試料中の特定の物質と生体関連物質との相互作用に基づき被検試料中の特
定の物質の検出や定量に用いられるものである。バイオチップとしては、ペプチド(タン
パク質、ポリペプチド、オリゴペプチド)を固定化するペプチドチップや、DNAやRNAを固
定化する核酸チップが好ましく、特に、固定化する物質が高価なペプチドチップに適用す
るのが有利である。バイオチップ上に固定化される生体関連物質は、ペプチドチップの場
合には、タンパク質、ポリペプチド又はオリゴペプチドであり、核酸チップの場合にはDN
AやRNAである。
【0013】
また、基板の材質は何ら限定されるものではなく、バイオチップに広く用いられている
ガラス、プラスチック、カーボン、金属等でよい。本発明の方法は、ハロゲン化物イオン測定を利用しているので、材質の種類によらず適用可能である。
【0014】
定量される官能基はアミノ基であり、好ましくは、生体関連物質の固定化に多用される一級または二級アミノ基である。
【0015】
アミノ基の導入方法は何ら限定されるものではなく、いかなる方法により導入されたアミノ基であってもよい。例えば、導入手段としては、アミノアルキルシランによる処理、窒素雰囲気下でのプラズマ処理、アミノ基含有高分子物質のコーティングなどが挙げられるが、処理の簡便性、均一性の観点から、アミノアルキルシランによる処理が一般的である。
【0016】
アミノ基をハロアシル化したのち遊離させたハロゲン化物イオン量の測定方法は特に限定されないが、あらかじめ基板を過剰のハロ酢酸無水物で処理し、洗浄後にメルカプトエタノール水溶液に接触させ遊離するハロゲン化物イオン量を測定する方法が好ましい。
【0017】
基板を過剰のハロ無水酢酸で処理する際の濃度は特に限定されないが、好ましくは 0.01〜5 M より好ましくは 0.1〜2 M、最も好ましくは 0.2〜0.5 M である。このように基板を過剰のハロ酢酸無水物で処理し、アルコール等でよく洗浄した後、ハロゲン化物イオンを遊離させることが好ましい。
【0018】
市販の基板上に導入されたアミノ基をハロ酢酸無水物で処理する際、十分にアシル化を進行させるため過剰量を用いて処理しなければならない。なお、ここで、「過剰」とは、定量すべきアミノ基の化学量論量よりも多いことを意味し、好ましくは、化学量論量の10倍〜1000倍程度である。通常、バイオチップ作製のための基板に導入されるアミノ基の量は、0.01nmol〜10nmol/cm2程度、特に0.1nmol〜1nmol/cm2程度であるので、通常、これよりも過剰なハロ酢酸無水物で処理する。処理後は過剰分を取り除くために基板をアルコール等で洗浄することが好ましい。
【0019】
上記アミノ基をハロアセチル化した基板上からハロゲン化物イオンを遊離させるために、過剰のメルカプトエタノール水溶液で処理する。その際に濃度は特に限定されないが、好ましくは0.0001〜1 M、より好ましくは 0.001〜0.1 M、最も好ましくは 0.005〜0.05 Mである。このように基板を過剰のメルカプトエタノール水溶液で処理することでハロゲン化物イオンを遊離させることが好ましい。基板表面のアミノ基の数と遊離するハロゲン化物イオンは同数だけ水溶液中に遊離する。したがって、ハロゲン化物イオンを測定することにより、基板上のアミノ基の定量が可能となる。
【0020】
基板上のアミノ基をハロアセチル化した後ハロゲン化物イオンを遊離させる際、十分にチオールのアルキル化反応進行させるためメルカプトエタノールを過剰量を用いて処理しなければならない。なお、ここで、「過剰」とは、定量すべきアミノ基の化学量論量よりも多いことを意味し、好ましくは、化学量論量の10倍〜1000倍程度である。通常、バイオチップ作製のための基板に導入されるアミノ基の量は、0.01nmol〜10nmol/cm2程度、特に0.1nmol〜1nmol/cm2程度であるので、通常、これよりも過剰なメルカプトエタノール水溶液に接触させる。この水溶液中のハロゲン化物イオン量を定量する。
【0021】
水溶液中のハロゲン化物イオン量の測定方法は特に限定されないが、感度や簡便性から市販のイオンクロマトグラフィーを用いて行なうことが好ましい。
【0022】
アミノ基との反応由来でない、すなわち吸着に由来するハロゲン化物イオン量を排除するため、アミノ化されていない基板を用いて同様の操作を行い、バックグラウンド補正を行った。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例
に限定されるものではない。
【0023】
参考例1
臭化物イオン濃度測定用検量線の作成
市販の10 ppm臭化物イオン標準水溶液を用い、島津製パーソナルイオンアナライザPIA-1000によりイオン分析し検量線を作成した。結果を下記表1と図1に示した。
【表1】
【実施例1】
【0024】
基板上のアミノ基の定量
表面にアミノ基の導入された基板(1.0 x 1.2 cm)の表面に0.25 M ブロモ酢酸無水物のDMF溶液0.05 mL を導入した。30分後、メタノールで浸漬洗浄し乾燥させた。0.01Mのメルカプトエタノール水溶液1 mL に基板を1時間接触させた。0.01 mL を島津製パーソナルイオンアナライザPIA-1000にロードして臭化物イオンの定量をおこなった。臭化物イオン濃度は参考例1の検量線より求めた(実施例1〜3)。なお、アミノ基の導入されていない基板についても同様の操作を行うことで、ブロモ酢酸の吸着補正を行った(比較例1〜3)。アミノ基量は下式により求めた。同ロットの基板3枚で試験を行った平均値を用いてアミノ基の量を算出した。結果は下記表2に示した。
アミノ基量[nmol/1枚]=(アミノ化基板から遊離した臭化物イオン量)−(非アミノ化基板から遊離した臭化物イオン量)
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】臭化物イオン濃度測定用検量線
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドチップや核酸チップのようなバイオチップを作製するためのバイオ
チップ用固相基板の表面に導入された官能基の定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質や核酸等の生体関連物質を基板上に固定したデバイスであるマイクロアレイ
の使用が一般化しつつある中、安定した品質のマイクロアレイ用基板が求められている。
マイクロアレイ用基板はガラスもしくはプラスチック製であることが多いが、通常これら
の材料表面に生体関連物質を固定化するためには表面修飾を施す必要がある。表面修飾法
としては、アミノ基 、カルボキシル基などの官能基を導入する場合が多い。特にアミノ
基を導入した基板 は、マレイミド基、ブロモアセチル基への変換が容易で固定化に用いる生体物質に含まれるチオール基との間に共有結合を形成し、強固な固定化が可能であることから有
用である。
【0003】
アミノ基 を導入する方法として、アミノアルキルシランによる処理、窒素雰囲気下で
のプラズマ処理、アミノ基含有高分子物質のコーティングなどが挙げられるが、処理の簡
便性、均一性の観点から、アミノアルキルシランによる処理が一般的である。この方法で
は、浸漬、洗浄、熱処理という比較的簡便な工程で表面に官能基を導入することが可能で
あることから多用されている(特許文献1)。
【0004】
カルボキシル基を導入する方法としてはアミノ化した後、適当な酸クロリドあるいは酸
無水物を用いてカルボキシル化する方法が知られている(特許文献2)。
【0005】
基板表面の官能基を定量することは、マイクロアレイ用基板製造の品質管理の観点から
重要である。特に、ペプチド(タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド)は高価であり、固定化に過剰量用いるのは不経済である。このため、基板上の官能基を定量することは、コスト面からも重要である。
【0006】
表面の官能基は、X線光電子分析法による表面分析により定量可能であるが、X線光電
子分析法による表面分析は、装置自体が高価であり、また操作が煩雑であり、さらに、基板
内部にもX線がおよぶため、基板自体の元素も分析されてしまい、異なる材質間での比較
が困難である。また、官能基との結合性を有する試薬等を使用して官能基を定量する方法
(特許文献2)も知られているが、煩雑な作業を必要とするのみならず、官能基と試薬と
の反応性が100%ではないため、定量結果の信頼性も満足できるものではない。
【0007】
【特許文献1】特開昭60-015560
【特許文献2】特開2001-139532
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、簡便な操作で、バイオチップを作製するための固相基板等の
表面上のアミノ基をハロアセチル化することでアミノ基量を正確に定量する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討したが、なかなか目的を達成できな
かった。塩基性又は酸性官能基を定量するために中和滴定ということも考えられたが、バ
イオチップを作製するための固相基板に導入される官能基の量は極めて微量であるため、中和滴
定の感度ではとても定量できないと考えられた。さらに、固相基板上の官能基を塩にした後、対イオンを遊離させ、遊離した対イオンを測定することにより、バイオチップを作製するための固相基板に導入される微量の官能基を定量できることを見出したが、検出限界に問題があった。そこで、アミノ基をハロアセチル化した後、所定の反応でハロゲン化物イオンを遊離させてイオン定量する本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、バイオチップ用固相基板の表面上のアミノ基を、過剰のハロ酢酸無水物で処理し、洗浄後にメルカプトエタノール水溶液に接触させ遊離するハロゲン化物イオン量
を測定することにより定量する、固相基板表面上のアミノ基の定量方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、簡便な操作で、バイオチップを作製するための固相基板等の表面上のアミノ基を正確に定量する方法が初めて提供された。本発明の方法によれば、簡便な操作で、バイオチップを作製するための固相基板等の表面上のアミノ基を正確に定量できるので、このような固相基板の品質管理を簡便、確実に行うことができる。また、基板上のアミノ基が簡便かつ正確に定量できるので、バイオチップ作製時に、高価な生体関連物質を、不必要に過剰な量用いる必要がなくなり、コスト面でも大きな利益をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の方法に供される固相基板は、バイオチップを作製するためのバイオチップ用固
相基板である。定量される官能基は、バイオチップ上に生体関連物質を固定化するために
導入されたアミノ基であることが好ましい。バイオチップは、チップ上に生体関連物質が固
定化され、被検試料中の特定の物質と生体関連物質との相互作用に基づき被検試料中の特
定の物質の検出や定量に用いられるものである。バイオチップとしては、ペプチド(タン
パク質、ポリペプチド、オリゴペプチド)を固定化するペプチドチップや、DNAやRNAを固
定化する核酸チップが好ましく、特に、固定化する物質が高価なペプチドチップに適用す
るのが有利である。バイオチップ上に固定化される生体関連物質は、ペプチドチップの場
合には、タンパク質、ポリペプチド又はオリゴペプチドであり、核酸チップの場合にはDN
AやRNAである。
【0013】
また、基板の材質は何ら限定されるものではなく、バイオチップに広く用いられている
ガラス、プラスチック、カーボン、金属等でよい。本発明の方法は、ハロゲン化物イオン測定を利用しているので、材質の種類によらず適用可能である。
【0014】
定量される官能基はアミノ基であり、好ましくは、生体関連物質の固定化に多用される一級または二級アミノ基である。
【0015】
アミノ基の導入方法は何ら限定されるものではなく、いかなる方法により導入されたアミノ基であってもよい。例えば、導入手段としては、アミノアルキルシランによる処理、窒素雰囲気下でのプラズマ処理、アミノ基含有高分子物質のコーティングなどが挙げられるが、処理の簡便性、均一性の観点から、アミノアルキルシランによる処理が一般的である。
【0016】
アミノ基をハロアシル化したのち遊離させたハロゲン化物イオン量の測定方法は特に限定されないが、あらかじめ基板を過剰のハロ酢酸無水物で処理し、洗浄後にメルカプトエタノール水溶液に接触させ遊離するハロゲン化物イオン量を測定する方法が好ましい。
【0017】
基板を過剰のハロ無水酢酸で処理する際の濃度は特に限定されないが、好ましくは 0.01〜5 M より好ましくは 0.1〜2 M、最も好ましくは 0.2〜0.5 M である。このように基板を過剰のハロ酢酸無水物で処理し、アルコール等でよく洗浄した後、ハロゲン化物イオンを遊離させることが好ましい。
【0018】
市販の基板上に導入されたアミノ基をハロ酢酸無水物で処理する際、十分にアシル化を進行させるため過剰量を用いて処理しなければならない。なお、ここで、「過剰」とは、定量すべきアミノ基の化学量論量よりも多いことを意味し、好ましくは、化学量論量の10倍〜1000倍程度である。通常、バイオチップ作製のための基板に導入されるアミノ基の量は、0.01nmol〜10nmol/cm2程度、特に0.1nmol〜1nmol/cm2程度であるので、通常、これよりも過剰なハロ酢酸無水物で処理する。処理後は過剰分を取り除くために基板をアルコール等で洗浄することが好ましい。
【0019】
上記アミノ基をハロアセチル化した基板上からハロゲン化物イオンを遊離させるために、過剰のメルカプトエタノール水溶液で処理する。その際に濃度は特に限定されないが、好ましくは0.0001〜1 M、より好ましくは 0.001〜0.1 M、最も好ましくは 0.005〜0.05 Mである。このように基板を過剰のメルカプトエタノール水溶液で処理することでハロゲン化物イオンを遊離させることが好ましい。基板表面のアミノ基の数と遊離するハロゲン化物イオンは同数だけ水溶液中に遊離する。したがって、ハロゲン化物イオンを測定することにより、基板上のアミノ基の定量が可能となる。
【0020】
基板上のアミノ基をハロアセチル化した後ハロゲン化物イオンを遊離させる際、十分にチオールのアルキル化反応進行させるためメルカプトエタノールを過剰量を用いて処理しなければならない。なお、ここで、「過剰」とは、定量すべきアミノ基の化学量論量よりも多いことを意味し、好ましくは、化学量論量の10倍〜1000倍程度である。通常、バイオチップ作製のための基板に導入されるアミノ基の量は、0.01nmol〜10nmol/cm2程度、特に0.1nmol〜1nmol/cm2程度であるので、通常、これよりも過剰なメルカプトエタノール水溶液に接触させる。この水溶液中のハロゲン化物イオン量を定量する。
【0021】
水溶液中のハロゲン化物イオン量の測定方法は特に限定されないが、感度や簡便性から市販のイオンクロマトグラフィーを用いて行なうことが好ましい。
【0022】
アミノ基との反応由来でない、すなわち吸着に由来するハロゲン化物イオン量を排除するため、アミノ化されていない基板を用いて同様の操作を行い、バックグラウンド補正を行った。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例
に限定されるものではない。
【0023】
参考例1
臭化物イオン濃度測定用検量線の作成
市販の10 ppm臭化物イオン標準水溶液を用い、島津製パーソナルイオンアナライザPIA-1000によりイオン分析し検量線を作成した。結果を下記表1と図1に示した。
【表1】
【実施例1】
【0024】
基板上のアミノ基の定量
表面にアミノ基の導入された基板(1.0 x 1.2 cm)の表面に0.25 M ブロモ酢酸無水物のDMF溶液0.05 mL を導入した。30分後、メタノールで浸漬洗浄し乾燥させた。0.01Mのメルカプトエタノール水溶液1 mL に基板を1時間接触させた。0.01 mL を島津製パーソナルイオンアナライザPIA-1000にロードして臭化物イオンの定量をおこなった。臭化物イオン濃度は参考例1の検量線より求めた(実施例1〜3)。なお、アミノ基の導入されていない基板についても同様の操作を行うことで、ブロモ酢酸の吸着補正を行った(比較例1〜3)。アミノ基量は下式により求めた。同ロットの基板3枚で試験を行った平均値を用いてアミノ基の量を算出した。結果は下記表2に示した。
アミノ基量[nmol/1枚]=(アミノ化基板から遊離した臭化物イオン量)−(非アミノ化基板から遊離した臭化物イオン量)
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】臭化物イオン濃度測定用検量線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオチップ用固相基板の表面上のアミノ基をハロアシル化し、チオール類でハロゲン化物イオンを遊離させてその量を測定することによりアミノ基量を定量する、バイオチップ用固相基板表面上の官能基の定量方法。
【請求項2】
前記固相基板を先ず過剰の無水ハロ酢酸によりハロアシル化し、洗浄後にチオール類でハロゲン化物イオンを遊離させその量を測定することにより行なう請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記過剰の無水ハロ酢酸はカルボジイミドにより調製したもので、遊離するハロゲン化物イオン量の測定をイオンクロマトにて行なう請求項2項に記載の方法。
【請求項4】
前記官能基がアミノ基である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ハロゲン化物イオンが臭化物イオン又はヨウ化物イオンである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
バイオチップ用固相基板の表面上のアミノ基をハロアシル化し、チオール類でハロゲン化物イオンを遊離させてその量を測定することによりアミノ基量を定量する、バイオチップ用固相基板表面上の官能基の定量方法。
【請求項2】
前記固相基板を先ず過剰の無水ハロ酢酸によりハロアシル化し、洗浄後にチオール類でハロゲン化物イオンを遊離させその量を測定することにより行なう請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記過剰の無水ハロ酢酸はカルボジイミドにより調製したもので、遊離するハロゲン化物イオン量の測定をイオンクロマトにて行なう請求項2項に記載の方法。
【請求項4】
前記官能基がアミノ基である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ハロゲン化物イオンが臭化物イオン又はヨウ化物イオンである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【公開番号】特開2009−58228(P2009−58228A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223151(P2007−223151)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(502249851)株式会社ハイペップ研究所 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(502249851)株式会社ハイペップ研究所 (11)
【Fターム(参考)】
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