説明

固相抽出ピペット

【課題】液体を移送する性能と組み合わせて固相抽出能力を備える新規な装置および方法を提供する。
【解決手段】試料調製のためのより狭い1つの開口部およびより広い1つの開口部を有する中空の円錐管を備えた固相抽出装置が提供され、この管のより狭い開口部が、機能化された一体の収着剤を含む固相抽出材を含んでおり、この固相抽出装置が、減圧、加圧および機械的な圧密の組み合わせによって作製されている。本固相抽出装置は少容量サンプルの調製に適しており、被検体の回収率が良好でかつ流動性に優れている。固相抽出装置を作製するおよび使用する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く分析用サンプルを調製するための装置、特に小容量の分析用サンプルを調製するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分析用サンプルの調製は、かなりの量のサンプルを必要とし、分析中に無関係なまたは誤った結果を引き起こし、かなりの長時間を消費する可能性があるため、結果として分析に伴うコストを高めることになる。サンプル調製作業では、広く塩類またはサンプル中にある他の好ましくない成分を除去したり、好ましくない溶媒を除去し目的とする分析物(以下、「被検体」という)が溶解しているある溶媒を他の溶媒と交換したり、被検体の濃度を前もって決めた濃度へ濃縮したり等を行う。このような場合、試料調製作業が不適当であれば、時間の損失と同様に、求める被検体が失われたり、コスト上昇という結果を招いたりする可能性があり、分析作業が高価となり、時間を消費し、信頼性が低くなり、再現性が低下し不満足なものとなる。現在サンプルを調製する種々の方法が利用可能であり、液相から固相へ被検体を濃縮し、次いで、それをさらなる分析のために、比較的より純粋な形態で取り出すことができる固相抽出(SPE)がある。液−液相抽出および液−液−液相抽出法と共に、液相抽出法もまた知られている。
【0003】
行なう分析のタイプと使用する検出方法とによってSPEを調整して特定の妨害物を取り除くことができる。高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)または質量分析法を使用する血漿(プラズマ)および尿等の生物学的サンプルの分析では、分析に先立って、不溶物および可溶の妨害物を取り除くため、また検知感度を高めるために、目的化合物をあらかじめ濃縮するが、これにはSPEを必要とするのが通常である。多くの生物学的サンプルには、塩類または他のイオン阻害成分が含まれており、質量分析計を用いる検出を行う場合、特にこれが不都合を来す。また疎水性の差またはサンプル成分の官能基に基づいて、サンプルの簡単な分溜を行なうためにSPEを使用することができ、これによって分析するサンプルの複雑さを軽減することができる。
【0004】
SPE用に設計された装置は、通常はユーザーに選択的にサンプル成分を保持することが可能となるようなクロマトグラフィーの収着剤を含んでいる。サンプルを収着剤上に一旦付着させると、一連の洗浄及び溶出流体を装置に通して、求めるサンプル被検体から汚染物質または妨害化合物を分離し、その後にさらなる分析のための標的サンプル被検体を集める。SPE装置は、通常は、サンプルを保持する貯蔵槽、収着剤を収容するための手段、流体導管または装置から流出する流体を適当な回収容器へ導くための吐出管を備える。SPE装置は、少数のサンプルを調製するのに便利で、かつコストの点で有利なシングルウェル型(窪みが1つのタイプ)であってもよく、または、多数のサンプルを同時に調製するのに適しているマルチウェル型(窪みが多数のタイプ)であってもよい。マルチウェル型は、一般にロボット液体調合システムと共に使用する。典型的なマルチウェル型は、48−、96−、384−ウェルの標準プレート型を含んでいる。流体は、通常は特に設計された真空マニホールドを有する装置を通して真空で吸引することにより、または遠心力もしくは重力を使用することによってSPE装置を介して集収容器へ強制的に流される。遠心力は、この目的のために特に設計された遠心分離機中へ適切な集収トレーとともにSPE装置を入れることにより発生される。しかしながら、これらの型はすべて比較的大量のサンプルおよび溶媒を必要とし、また多くの流体輸送工程を必要とする。
【0005】
従来のSPE装置設計では、SPE装置内に内蔵されている多孔質フィルターディスク間に収容されている収着剤粒子の充填床を利用していた。たとえば、Fiskの特許に係る下記特許文献1では、収着剤粒子が2つの多孔質フィルターエレメント間に収容されているSPE装置について記載されている。特に収着剤特性を注意深く選択する場合には、このようにして得られる充填床による化合物の保持は通常はかなり良好である。しかしながら、従来の充填床装置の1つの短所は、多孔質フィルターおよび充填床内に含まれる空隙容量では、完全に目標化合物を完全に溶出するために比較的大きい溶出容量を使用する必要があることである。充填床タイプSPE装置から目標化合物を完全に溶出するのに必要な典型的な溶出容量は、収着媒床の寸法に依存して、0.20ml〜5mlまたはこれ以上の範囲内になる。
【0006】
このように、この種の装置は、少量サンプルまたは小容量サンプルに適切ではなく、この技術分野では小さなサンプルサイズおよび少量を扱うための装置および方法が必要とされている。当技術においけるこれらのニーズに対処するために、Blevinsの特許に係る下記特許文献2には、チャンバの側壁間にはめ込まれた複数の固相抽出ディスクプレスを使用する固相抽出プレートについて記載されている。様々な抽出媒体が有用であることが報告されおり、特に疎水基を結合したシリカを含む無極性の抽出媒体、Varian, Inc of Lake Forest、CAから商品名SPEC(登録商標)として入手可能な抽出媒体が報告されている。
【0007】
しかしながら、固相抽出機能を微少容量液体取り扱い装置および調製装置自体の中に組み込むことは好都合であろうし、このようにすればサンプル処理における工程を削減できよう。この目的に対して、Shuklaの特許に係る下記特許文献3には、毛細管またはピペット先端部等のチューブおよびカラムを使用する小サンプル調製用の装置が記載されており、その装置では分離媒体の粒子が装置を構成する固形物質に直接埋め込まれている。Shuklaはさらに、分離媒体を保持するのにフィルターを使用すると、このフィルターによって、サンプルのカラムを流れる速度が低下し、濾過材上でサンプルの損失が起こるので問題があると報告している。Shuklaは、非常に少量のサンプル容量の場合には、サンプルの損失が特に深刻になる可能性があると述べている。Shuklaはさらに、分離媒体が埋め込まれている固体保持マトリックスを基礎とするフィルターを用いないカラムは確かに存在するが、これらのカラムを通すとそのサンプルの流れは低速になると述べている。
【0008】
Kopaciewiczの特許に係る下記特許文献4および下記特許文献5には、収着性もしくは反応性媒体として有用な、その場で生成する(cast−in−place)複合体および/または非充填(nonfilled)構造体の調製方法、または大きさに基づいた分離方法が記載されている。該記述によれば、この装置は、ポリマーの中に取り込まれた大量の収着性粒子を含んでいるが、依然としてその膜は三次元構造に維持されている。好ましい態様においては、この方法は、ピペット先端部内の多孔性の重合体の基質内に取り込まれている粒子を調製するのに役立つと報告されている。
【0009】
しかしながら、これらの装置および他のものは、調製法において再生が不可能であること、流量が不十分であること、被検体を吸着するための能力が低いこと、流量が一様でないこと、製造原価が高いこと等の制限がある。したがって、本技術においては、先行技術装置の限界を克服できる改良されたSPE装置、およびこれを作製する方法が求められている。
【特許文献1】米国特許第6,723,236号明細書
【特許文献2】米国特許第5,906,796号明細書
【特許文献3】米国特許第6,416,716号明細書
【特許文献4】米国特許第6,048,457号明細書
【特許文献5】米国特許第6,200,474号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の第1の目的は、液体を移送する性能と組み合わせて固相抽出能力を備える新規な装置および方法を提供することによって当該技術における前述の要望に対処することである。
本発明の他の目的は、再現性のある性能を有し、かつ大切なサンプルの損失を招かない、固相抽出装置を作製するための方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、サンプルからより多くかつより的確に被検体を回収する固相抽出装置を作製するための方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、被検体回収と使用の容易さとの両面から、さらに信頼性の高い性能を有する固相抽出装置を作製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明では、より狭い1つの開口部およびより広い1つの開口部を有する中空の円錐管を備えたサンプル調製用の固相抽出装置が提供され、この装置では、管のより狭い開口部が、機能化された一体の収着剤を含む固相抽出材を含んでおり、この固相抽出装置が、減圧(負圧)、加圧(陽圧)および機械的な圧密の組み合わせによって作製されている。好ましい実施形態においては、当該固相抽出装置は、より小さい開口部およびより大きい開口部と、ピペットのより小さな開口部(すなわち先端部(チップ))に配置されている機能化された一体の収着剤とを有するピペットである。この機能化された一体の収着剤は、減圧、加圧、機械的な圧密の組み合わせによってピペットのより小さな開口部中に配置されている。
【0013】
この固相抽出材は機能化された一体の収着剤であって、アルコキシシラン、アミノシラン、ヒドロキシシランまたはハロシラン等のシラン類との反応性を有する反応性金属酸化物を含んだ金属酸化物、またはメタロイド酸化物を含む結合相(集塊相)を埋め込んだガラス繊維マトリックスを含む。適当な金属酸化物およびメタロイド酸化物としては、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ムライト、ジルコニア、バナジアもしくはチタニア、またはこれらの混合物もしくは複合体が挙げられる。また、ガラス繊維マトリックスは金属またはメタロイド酸化物から構成される。固相抽出材がシランと反応した後に、このシランは、酸素結合によって無機基質に共有結合で結合し、この金属またはメタロイド酸化物を機能化するのであるが、この機能化はたとえば以下のもので行う。ヒドロカルビル、アミド、カルバミル、カルバメート、ウレタン、カルバミド、イソシアネート、ジオール、グリシドキシ、エトキシ、プロポキシ、カルボニル、カルボキシ、アセトニル、チオ、ジチオ、ヒドロキシ、エーテル、スルフィニル、スルフォニル、スルホン酸、スルフェート、スルホンアミド、アミノ、ニトリロ、イソニトリロ、エポキシ、グアニジノ、ニトロ、ニトロソおよびホスフェート。好ましい実施形態においては、機能化された一体の収着剤は、結合シリカを含んでいる。シリカは、当該技術でこれまで知られているいかなる方法によってでも化学的に処理することができる(すなわち機能化することができる)。好ましい実施形態においては、シリカは、通常はC2〜30アルキル基のアルキル基部分と結合させて疎水性にされている。
【0014】
本発明では、固相抽出のための装置を作製するための方法も提供され、通常下記の工程を使用する。すなわち、より広い1つの開口部およびより狭い1つの開口部を有する中空管に機能化された一体の収着剤を挿入する工程と、前記管のより狭い開口部を減圧にして、この管内に機能化された一体の収着剤を挿入する工程と、この管のより広い開口部を加圧して、この管の前記狭い開口部に前記機能化された一体の収着剤を挿入する工程と、前記機能化された一体の収着剤を圧密する工程とである。
【0015】
好ましい実施形態においては、本固相抽出装置は固相抽出ピペットであり、より広い1つの開口部およびより狭い1つの開口部を有する前記中空の管はピペットの先端部(チップ)である。通常、前記機能化された一体の収着剤は、ピペットのより小さな開口部の中に配置するが、これは以下の工程で行う。ピペットのより大きい開口部に前記機能化された一体の収着剤を挿入する工程と、このピペットのより小さな開口部を減圧して、この機能化された一体の収着剤を挿入する工程と、このピペットのより大きい開口部を加圧して、このピペットの先端部にこの機能化された一体の収着剤を挿入する工程と、機能化された一体の収着剤を圧密する工程とである。通常は、前記減圧は水銀柱で約25インチであり、前記加圧は、約95psi〜約110psiであり、より一般的には約100psiである。
【0016】
本発明では、分析用のサンプルを作製するための方法も提供し、その方法は、通常下記の工程を含む。すなわち、固相抽出ピペットを活性化する工程と、分析するサンプルの成分をこの固相抽出ピペット上へ吸着させる工程と、吸着された被検体をこの固相抽出材料から取り除かない溶媒を用いて固相抽出ピペットを洗浄する工程と、前記吸着された被検体をこの固相抽出材料から取り除く溶媒を用いて固相抽出ピペットを洗浄する工程と、該被検体を回収する工程とである。
【0017】
本発明の付加的な目的、利点、新規な特徴を一部以下の説明の中で述べるが、一部は、当業者であれば以下の記述の検討によって明らかとなろうし、または本発明を実施することによって理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
I.定義および概要
本発明を詳細に記述する前に、別段の記載のない限り、本発明は、特定のピペット先端部(チップ)の形状、寸法等に限定されるものではなく、変更してもよいものと理解されたい。また、本明細書に使用する用語は、特定の実施形態のみについて記述するためにあるのであって、本発明の範囲を限定する意図はないものと理解されたい。
【0019】
本明細書および請求項において使用する、単数形態「a(ある、ひとつの)」、「and(および)」、「the(前記)」は、文脈で明白に別段の方法で指示がなければ複数の指示対象を含んでいるものとすることを理解されたい。たとえば、「a solvent(ある、または1種の溶媒)」は2種以上の溶媒を含んでおり、「an analyte(ある、または1つの被検体)」は2つ以上の被検体を含むものとし、以下同様に考えるものとする。
【0020】
値の範囲を示す場合において、その範囲中に存在する各値は、その範囲の上限と下限との間およびその範囲内のいかなる他のまたはその中に存在する値も、もし文脈で明白に別段の方法で記述しなければ、下限の単位の10分の1まで、本発明内に含まれるものとする。これらのより狭い範囲の上限と下限とは、この狭い範囲の中に独立して含まれていてもよく、またその記述した範囲内の特に除外したいずれかの限界値に属していても本発明内に含まれるものとする。記述する範囲が、1つまたは双方の限界値を含んでいる場合、これらの含まれている一方のまたは双方の限界値以外の範囲も本発明の中に含まれるものとする。
【0021】
本明細書で使用する用語「ピペット」とは、ピペットの流体に接触する部分を指し、通常は少量の液体の分配のために使用するピペッターと共に使用される、使い捨てのピペット先端部を指すものとする。
本明細書で使用する用語「スラグ」とは、本発明の固相抽出材の塊(集合体)を指すものとする。
【0022】
本明細書で使用する用語「機能化された一体の(モノリシック)収着剤(媒体)」とは、結合相金属酸化物、好ましくはシリカを含むガラス繊維マトリックスを指すものとする。
ガラス繊維フィルターは、濾過において有用であると当該技術において知られているが、この材料は固相抽出に適切な表面積をわずかしか有さないと考えられており、実際、ガラス繊維は通常は、クロマトグラフィーまたは分析操作に対しては不活性でかつ非吸着性であるものとして見なされてきた。したがって、上記特許文献3において示唆されているように、フィルターがそれ自体サンプルの損失になりうるとの報告があるにも拘らず、ガラス繊維はそれ自体SPEの吸着性の材料としてではなく、主として収着剤のための保持手段としてSPEにおいて利用されてきた。本発明者等は、結合相シリカと共に埋め込まれたガラス繊維マトリックスを、固相抽出ピペット内で被検体に対する高い吸着性能を持った機能化された一体の収着剤にすることができ、また良好な流動性および性能と製造時の再現性とを保持しているという驚くべき事実を発見した。マイクロモル単位の少量の被検体の抽出用の固相抽出装置を作製するための、結合相シリカと共に埋め込まれているガラス繊維マトリックスを扱う従来の手段は、繊細なガラス繊維マトリックスに対して損傷を与えるので非実用的であることが明らかになっている。しかしながら、本発明者は、流動性が良好でかつ被検体の保持性および回収性の双方が優秀なピペット先端部内で、非常に再現性の高い固相抽出収着剤の調製ができるようになる減圧、加圧、および機械的な圧密の組み合わせを使用して、結合相シリカを含むガラス繊維マトリックスを含む、機能化された一体の収着剤を含んでいる固相抽出ピペットを形成することができるという驚くべき発見をなした。
【0023】
したがって、1つのより狭い開口部と1つのより広い開口部とを有する中空の円錐管を備えたサンプル調整用の固相抽出装置が提供され、その装置では、この管のより狭い開口部が、機能化された一体の収着剤を含む固相抽出材を含んでおり、該固相抽出装置は、減圧、加圧および機械的な圧密の組み合わせによって作製されていることを特徴としている。好ましい実施形態においては、当該固相抽出装置は、より小さい開口部およびより大きい開口部と、ピペットのより小さな開口部(すなわち先端部)に配置されている機能化された一体の収着剤とを有するピペットである。この機能化された一体の収着剤は、減圧、加圧および機械的な圧密の組み合わせによってピペットのより小さな開口部中に配置されている。
【0024】
これらの装置およびこの装置を作製しかつ使用する方法を、より詳しく以下に記述する。
II.固相抽出装置
A.装置仕様
本固相抽出装置は、中空円錐状の管を含み、この管は様々な形態、形状および寸法をとることができる。通常は、この管は円形断面を有するが、該管に固相材料を配置して高い流動性を与えることができる限り、原則として、該管は楕円形、正方形、長方形、または不規則形状等であることができる。該中空管は、液体を保持し分配するのに適切ないかなる材料からでも作ることができ、通常その材料は、ポリオレフィン、フッ素化ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルフォン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリスチレン/アクリロニトリル共重合体、PVDF等の高分子材料である。ポリオレフィンの材料が好ましく、たとえば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)またはこれらの共重合体が挙げられる。非水性の液体については、この管は非水性の液体へ汚染物質を溶解しないかまたは浸出させない材料で作ることができる。この装置は、超清浄なポリマー、好ましくはポリプロピレンで作られるのが好ましい。
【0025】
好ましい実施形態においては、本固相抽出装置は、任意の従来の手動または自動ピペット操作装置と共に使用することができるピペット先端部の形態である。このピペット先端部は、いかなる特定の寸法、形状、または作製材料にも限定されるものではない。前記機能化された一体の収着剤は、このピペット先端部の容量の変化に応じて、たとえばこのピペット先端部の使用可能な容量の少なくとも約10%までを占めることができる。代表的な実施形態を図1および2に示す。
B.固相抽出材料
この固相抽出材は機能化された一体の収着剤であり、アルコキシシラン、アミノシラン、ヒドロキシシランまたはハロシラン等のシラン類と反応することができる反応性金属酸化物を有する金属酸化物またはメタロイド酸化物を含む結合相が埋め込まれたガラス繊維マトリックスを含む。適当な金属酸化物およびメタロイド酸化物としては、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ムライト、ジルコニア、バナジアもしくはチタニア、またはこれらの混合物もしくは複合体が挙げられる。また、ガラス繊維マトリックスは、金属またはメタロイド酸化物から構成される。シランと固相抽出材との反応の後に、このシランは、酸素結合によって無機基質に共有結合で結合し、この金属またはメタロイド酸化物は機能化されるが、この機能化はたとえば以下のもので行う:ヒドロカルビル、アミド、カルバミル、カルバメート、ウレタン、カルバミド、イソシアネート、ジオール、グリシドキシ、エトキシ、プロポキシ、カルボニル、カルボキシ、アセトニル、チオ、ジチオ、ヒドロキシ、エーテル、スルフィニル、スルフォニル、スルホン酸、スルフェート、スルホンアミド、アミノ、ニトリロ、イソニトリロ、エポキシ、グアニジノ、ニトロ、ニトロソおよびホスフェート。
【0026】
好ましい実施形態においては、機能化された一体の収着剤は結合シリカを含んでいる。シリカは、当該技術でこれまで知られているいかなる方法によってでも化学的に処理することができる(すなわち機能化することができる)。好ましい実施形態においては、シリカは、通常はC2〜30のアルキル基のアルキル基部分と結合されて疎水性になる。シリカを変成するために使用することができるいかなる結合相も使用でき、例えばアミノ、シアノ、グリシジル等、および上述の陰イオンまたは陽イオン交換基類を使用することができる。
【0027】
特定の実施形態においては、前記機能化された一体の収着剤は、変成シリカを含浸させたガラスマイクロファイバーを含み、この変成シリカは好ましくはオルガノシラン化学を使用して作製され、Varian, Inc., Lake Forest, Calif.(SPEC(登録商標)製品と同様)から入手可能である。この一体の結合シリカは非常に優れた流動性を与えるものである。充填床SPEカラムと比較して、膜を通過する一体の設計にすると、非常に効率的な物質移動が得られる。この一体設計では、空隙容量が非常に少なくなり、またサンプル処理において使用する溶媒はより少なくなる。この機能化された一体の収着剤の結合能力は、通常は0.1mgの収着剤につき被検体約1マイクログラムの範囲内である。
【0028】
本ガラス繊維マトリックスは多孔性の迷路を形成し、これが被検体を高度に確実に保持しつつ、高い流動性を与えている。このガラス繊維マトリクス材は、通常は無作為に分散した繊維から作製され、この繊維が呼称で等級化された大きさの曲がりくねった経路を形成する。ある実施形態においては、このガラス繊維マトリックスは、厚さが約0.1mm〜約2mmで、普通は厚さが約1mmである。
【0029】
本固相抽出ピペットの流動特性は、ピペットの先端部が真空源に連結されている場合に、より大きい開口部から先端部までピペット先端部を通る空気の流れを測定することによって評価することができるので好都合である。本明細書に記述する方法によって作製した固相抽出ピペットは、ピペットの先端部を真空源に接続したとき、より大きい開口部を有する端で真空の発生を測定している間に機能化された一体の収着剤を介して約2秒〜3秒間に水銀柱で約1インチの割合で真空を発生させる。この流速によって、粘稠性のサンプル溶液に対しても良好な性能を示すようになる。
【0030】
適切な流動特性を示さないピペット先端部の使用により、貴重なサンプルが失われる場合があるので、本固相抽出ピペットを作製する方法が再現可能な結果を出すことは重要なことである。本明細書に記述した方法を使用すれば、固相抽出ピペットは一体の収着剤を通して均一な流れを与え、これによって、より良好な再現性および優れた性能が得られる。
III.固相抽出装置を作製する方法
固相抽出用の装置を作製するため方法について述べる。ここでは、通常下記の工程を使用する。すなわち、1つのより広い開口部および1つのより狭い開口部を有する中空管に機能化された一体の収着剤を挿入する工程と、前記管のより狭い開口部を減圧(負圧に)して、この管に機能化された一体の収着剤を挿入する工程と、この管のより広い開口部を加圧(陽圧に)して、この管の前記狭い開口部に前記機能化された一体の収着剤を挿入する工程と、前記機能化された一体の収着剤を圧密する工程とである。
【0031】
好ましい実施形態においては、本固相抽出装置は固相抽出ピペットであり、より広い1つの開口部およびより狭い1つの開口部を有する中空管がピペット先端部である。通常、前記機能化された一体の収着剤は、ピペットの前記より小さな開口部の中に以下の工程によって配置する。すなわち、ピペットのより大きい開口部に前記機能化された一体の収着剤を挿入する工程と、このピペットのより小さな開口部を減圧(負圧に)して、機能化された一体の収着剤を挿入する工程と、このピペットのより大きい開口部を加圧(陽圧に)して、このピペット先端部にこの機能化された一体の収着剤を挿入する工程と、機能化された一体の収着剤を圧密する工程とである。前記減圧は、通常水銀柱で約25インチ(625torrすなわち12psi)であり、前記加圧は、約95psi(4,913torr)から約110psi(5,689torr)までであり、さらに通常は約100psi(5,171torr)である。
【0032】
固相抽出ピペット先端部を作製するための一般的な操作は以下に記載する通りである。
化学的に処理されたガラス繊維濾過材を、固相抽出マトリックスとして使用する。好ましいガラス繊維濾過材は、結合相シリカを含むガラスファイバー材料であり、Varian, Inc., Lake Forest, CAによって製造されているアルキル基で機能化された一体の収着剤である(商品名SPEC(登録商標)−C18の下で販売されている材料と同等)。
【0033】
このガラス繊維フィルターは、ピペット先端部または他の装置の寸法および求める固相抽出材の量によって適当な寸法のスラグに切断されている。固相材料の量は、通常ピペット先端部の利用可能な容量の少なくとも約10%を占めるように選択されるが、この量は決定的なものではなく、もし必要であればこれより多くとも少なくとも使用できる。通常は10μlピペット先端部には、このガラス繊維材は、幅の狭い細片(たとえば約2mm〜7mm)に切断し、各細片は次いで、それぞれピペット先端部の中へ挿入するためにより小さな部分(たとえば0.43mm〜0.50mm、または必要に応じて)に再度切断する。ガラス繊維材は、手によって、または所要のいかなる方法、たとえば機械的カッター(たとえばBiodot, Inc. Irvine, CA)を使用して切断することもできる。1本のピペット先端部には、固相抽出剤の1個のスラグを装填する。ガラス繊維マトリックスは、最初に先端部の一端に対して水銀柱でおよそ25インチの範囲内の真空(たとえば、真空ポンプを使用して)で挿入する。次いで、乾燥高圧空気を使用して(たとえば空気圧縮機を使用して)このガラス繊維マトリックスをさらに充填する。この高圧空気は、通常およそ95psi〜110psiの範囲であり、典型的には100psiである。最後に、ガラス繊維ベッドの最上部に、ピペット先端部の内径に一致する直径を有するステンレス鋼針を使用して抽出剤スラグの後端を押して圧密し、この媒体を適所に配置することができる。ピペットの内径と一致する直径を有する針を使用することにより、破壊することなく緩やかに圧密でき、さらにピペット先端部の内部の適所にガラス繊維マトリックスを固定することができる。かける圧縮力を制御するために針の寸法もまた選択することができる。
【0034】
上記の方法を使用して作製した固相抽出ピペット先端部は、逆相吸着能力を有しており、これは、水系のサンプルから医薬品または他の疎水性の化合物を吸着するのに有用である。以下に実施例3および4に記述するように、ピペット先端部をテストした。これらは、HPLCおよびMALDI−TOFの双方によって実証されたように、溶液から化合物を回収するのに優れており、汚染のない分析結果が得られた。
【0035】
これらの結果を図3および図4に示す。
もちろん、当業者であれば、当該技術において知られており、または将来見いだされるであろういかなる結合シリカをも含むガラス繊維マトリックスに対して、本方法を適用することができることを認識するであろう。作製することができる結合相のいくつかの非限定的な例としては、以下の機能化剤を含むものが挙げられる。ヒドロカルビル(たとえばC2〜30アルキル、アルケニル、アルキニル)、−NHC(O)(アミド)、−C(O)NH−(カルバミル)、−OC(O)NH−(カルバメート)、−NHC(O)O−(ウレタン)、−NHC(O)NH−(カルバミドまたはウレア)、−NCO(イソシアネート)、−CHOHCHOH−(ジオール)、CH2OCHCH2O−(グリシドキシ)、−(CH2CH2O)n−(エトキシ)、−(CH2CH2CH2O)n−(プロポキシ)、−C(O)−(カルボニル)、−C(O)O−(カルボキシ)、CH3C(O)CH2−(アセトニル)、−S−(チオ)、−SS−(ジチオ)、−CHOH−(ヒドロキシ)、−O−(エーテル)、−SO−(スルフィニル)、−SO2−(スルフォニル)、−SO3−(スルホン酸)、−OSO3−(スルフェート)、−SO2NH−、−SO2NMe−(スルホンアミド)、−NH−、−NMe−、−NMe2+−、−N[(CH2n2+−(アミノ)、−CN(ニトリロ)、−NC(イソニトリロ)、−CHOCH−(エポキシ)、−NHC(NH)NH−(グアニジノ)、−NO2(ニトロ)、−NO(ニトロソ)、−OPO3−(ホスフェート)、ここに、Meはメチレン基またはメチルを示し、nは30までの整数であり、通常は10未満である。また、他の多くの例が知られており、本明細書に開示する装置および方法に容易に応用される。
【0036】
これらの基本操作を使用すると、他の形態の装置を製作することができる。ピペット先端部を利用するSPE装置は好ましい実施形態であるが、当業者であれば、付加的な用途、ならびに本明細書に記述した方法に適応可能な装置の寸法および形態を容易に予見できるであろう。様々な寸法および形状のピペット先端部をこの方法を使用して作製することができ、同様にカラム、毛細管およびチューブを作製することができる。本方法は、円錐状等の先細の寸法を有するチューブおよび毛細管を使用するSPE装置の作製に特によく適合しており、これによりミクロの抽出装置を作製するのに必要な小スペースへ繊細な収着剤を挿入することへの挑戦となろう。
IV.分析のためのサンプルの調製に固相抽出装置を使用する方法。
【0037】
本発明の固相抽出装置は、さらなる分析のためにサンプルを作製する様々な方法において使用することができる。一実施形態では、本固相抽出装置は、被検体の混合物から、分析すべきサンプル中に含まれている汚染物質、塩類または他の化合物等の好ましくない成分を取り除くために使用することができる。本固相抽出材料は、一方では望まない成分を吸着せずに、望ましい吸着性の特性を有する被検体を保持し、これらはピペット先端部から外して格納することができ、さらに必要に応じてさらに分析したり、廃棄したりする。
【0038】
他の実施形態においては、本固相抽出装置はサンプル溶液から、特定の成分を吸着し濃縮し、異なる化学的特性を有する他の成分を吸着しないようにするために使用することができる。たとえば、アルキル基が結合した相の一体の収着剤は、より極性の強い化合物を吸着せずに、疎水性の化合物を選択的にサンプルから吸着するために使用することができる。陰イオンまたは陽イオン交換部分を含んでいる結合相を使用して、サンプル内のより疎水性の高い化合物を吸着せずに極性化合物を選択的に吸着させることができる。両者の組み合わせもまた可能であり、サンプルから関心のあるすべての化合物を吸着させ、また異なる溶離剤を使用して、疎水性のメカニズムにより吸着された化合物を溶出するか、またはイオン交換メカニズムにより吸着された化合物を溶出させることができる。
【0039】
分析のためのサンプルを作製する方法は、通常以下の工程を含む。すなわち、固相抽出ピペットを活性化する工程と、固相抽出ピペット上へ分析すべきサンプルの成分を吸着させる工程と、吸着された(または保持された)被検体を固相抽出材から取り除かない溶媒で固相抽出ピペットを洗浄する工程と、吸着された(または保持された)被検体を固相抽出材から取り除く溶媒で固相抽出ピペットを洗浄する工程と、被検体を回収する工程とである。SPE装置を使用する典型的な方法は以下のことを含む。すなわち、(1)メタノールもしくはアセトニトリル等の有機溶媒、または有機溶媒と水との混合物、または場合によってはバッファーすなわちトリフルオロ酢酸またはギ酸等のイオン対形成剤を含む水と有機溶媒との混合物で、SPE装置を活性化またはコンディショニング(調整)すること、(2)ここでも場合によってはバッファーすなわちイオン対形成剤を含む水溶液でSPE装置を平衡させること、(3)SPE装置に、被検体(妨害成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい)を含むサンプルを添加すること、(4)SPE装置を水溶液で洗浄して望まない成分または吸着されなかった成分を取り除くこと、(5)適当な溶離液、通常は有機溶媒と水系溶媒との混合物で、吸着された被検体を溶出させること。たとえば、ある場合には、イオン交換能力を有するように機能化された一体の収着剤に対しては、初めの活性化工程は省略可能かもしれない。典型的なプロトコルを実施例に記述する。
【0040】
本明細書に記述するSPE装置は、分析用の少容量サンプルの調製に使用するのに好適である。しかしながら、出発時の容量は、特に少容量に限定せず、比較的大量の溶媒を機能化された一体の収着剤上へ吸着させることができ、次いで、必要であれば、はるかに小さな容量で溶出させることができる。通常は、本装置は、少容量サンプル、たとえば約数マイクロリットル以下から約1mlまでにおよぶ容量のサンプルの調製に適しているが、原則として、約103mlまでの容量のサンプルで使用することができる。
【0041】
本発明を、好ましい特定の実施形態で記述したが、その記述およびそれ続く実施例も、例示であり、本発明の範囲を限定する意図を有さないことと理解されたい。本発明は、別途特に指示しない限り、有機化学、高分子化学、生化学等の当該分野技術の範疇である従来の技術を使用して実施する。本発明の範囲内の他の態様、利点および変更は、本発明が関係する技術に熟練している当業者にとって明らかである。そのような技術は、文献から十分に明白である。
【0042】
以下の実施例において、使用する数量(たとえば量、温度等)に関して正確さを保証すべく努力がなされたが、実験誤差および偏差は考慮すべきである。別途特に指示しない限り、温度は℃であり、圧力は大気圧またはそれに近い圧力である。溶媒はすべてHPLC級として購入したものである。
略語:
SPEC(登録商標)−C18 炭素18の鎖長のアルキル基の鎖を使用している機能化された結合相シリカ(Varian, Inc., Lake Forest, CAより)
MALDI−TOF マトリックス支援レーザー脱離イオン化法飛行時間質量分析法
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
TFA トリフルオロ酢酸
【実施例1】
【0043】
固相抽出ピペット先端部を作製するための基本手順について記述する。ガラス繊維濾過材の化学的に処理されたシート(C−18変成シリカ)(Varian, Inc., Lake Forest, CA)を、狭い細片(約2mm〜7mm)に切断した。次いで、ピペット先端部の中へ挿入するために、各細片を媒体スラグ(0.43mm〜0.50mm)に再び切断した。単一のピペットの先端部に、固相抽出媒体の単一スラグを装填した。最初に、切断した先端部の一端を真空にして(水銀柱でおよそ25インチ)この媒体を挿入した。次いで、この媒体を、エアーコンプレッサー(およそ100psi)を用い、乾燥条件下の高圧空気を使用してさらに詰め込んだ。最後に、ガラス繊維ベッドの最上部のピペットの先端部の内径と一致する直径を有するステンレス鋼針を使用して、媒体スラグの後端を穏やかに押して圧密することにより、この媒体を適所に配置した。
【0044】
上記の方法を使用して作製した固相抽出ピペット先端部は、水系のサンプルから医薬品または他の疎水性の化合物を吸着するのに有用な逆相吸着能力を有していた。このピペット先端部を、実施例3および4で以下に記述するように試験した。
【実施例2】
【0045】
アミン部分を有するように化学的に変成されたガラス繊維濾過材(Varian, Inc., Lake Forest, CA)を使用して、実施例1の手順に従って、変成吸着能力を有する固相抽出ピペットを作製した。
【実施例3】
【0046】
実施例1に記述した方法を使用して作製した固相抽出ピペット先端部を使用して、ウシ血清アルブミンのタンパク分解(消化)によって生成されたペプチド混合物の質量分光分析用の混合物を調製した。
本固相抽出ピペット先端部をピペッターに組みこんで、50%のアセトニトリル10μlを2回ピペット操作し、0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)10μlを2回ピペット操作することにより活性化した。5μlのペプチド混合物(0.5pmole)と5μlの1%TFAとを試験管に添加し試験管内で簡単に渦流混合した。前記ペプチド混合物を含む前処理したサンプルは、10μlのサンプルをピペット操作することより固相抽出ピペットにロードし、ピペット先端部から該サンプルをゆっくり放出させた。10μlの0.1%TFAをピペット操作し、その溶液を放出することによりピペット先端部を洗浄した。最後に、この吸着した化合物を、2μlの50%アセトニトリル/0.1%TFAをピペット操作することにより溶出して、それ以上の処理なしでMALDI−TOFによって分析した。
【0047】
比較のために、未処理のペプチドのサンプル(0.5pmole)と、競合他社Zによって製造されたピペット先端部を使用して作製したペプチドのサンプル(0.5pmole)をMALDI−TOFによって分析した。図3に示す結果によれば、未処理のサンプルではイオン抑制によって引き起こされた挟雑物が見られ、実施例1に記述した方法によって作製した固相抽出ピペット先端部を使用したときには、ペプチドの回収が優れていることが見られた。実施例1に記述した方法によって作製した固相抽出ピペット先端部を使用したときには、競合他社Zによって作製したピペット先端部と比較すると、ペプチドの回収は少なくとも2〜3倍多かった。未処理のサンプルと比較すると、さらに大きな回収が観察された。
【実施例4】
【0048】
ウシのモデルを使用して、バルデナフィルおよびクエチアピンの血漿濃度の分析のための方法を開発した。簡便に言えば、バルデナフィルおよびクエチアピンの溶液の適当量を未処理(ブランク)のウシの血漿に添加した。濃度が既知のバルデナフィルおよびクエチアピンを、以下のように使用して標準曲線を作製した。1.0および10.0ng/mlの標準溶液をMeOH:10mMAq.HCOOHの50:50溶液中で調製した。適当量を試験管に入れて希釈し、各薬物の既知濃度溶液を作製した。各薬物の既知量を有するアリコートを分析のために取り出し、検出した信号を使用して標準曲線を作成した。
【0049】
試験管中で、50μlのウシの血漿と、10μl内部標準(25%の水メタノール中100ナノグラム/mlのノルフルオキセチン)を添加し、簡単に渦流混合した。40μl酢酸アンモニウム(pH9)を添加し、簡単に渦流混合した。100μlの100%メタノールを2回ピペット操作し、次いで100μlの5mM酢酸アンモニウム(pH−9)を2回ピペット操作することによってC−18逆相抽出相を含む固相抽出ピペット先端部を作製した。100μlの予め処理したサンプルをピペット操作し、ピペット先端部からサンプルを徐々に排出することによってサンプルを固相抽出ピペットにロードした。このピペット先端部を、100μlの5%水メタノールでピペット操作し、溶液を排出して洗浄した。先端部を通して迅速に2〜4回空気をピペット操作することにより固相を乾燥した。最後に、25μlの95:5のMeOH:10mMの水HCOOHを2回ピペット操作することによって吸着された化合物を溶出し、合計50μlの溶出容量を得て、それをHPLCによって直接分析した。結果を図4に示す。
【実施例5】
【0050】
本明細書に記述した方法を使用して作製した固相抽出ピペットと、競合他社によって作製されたピペットとの比較を行った。競合他社からのピペット先端部を含んでいる3ラックと、本明細書に記述した方法によって作製したピペット先端部とからランダムにピペット先端部をサンプリングし、被検体を抽出する能力をテストした。競合他社Zによって作製されたピペット先端部中に19例で不具合(回収0%)が検出された(テストした先端部中の18%が失敗)が、この発明の方法で作製したピペット先端部中では、不具合は全く検出されなかった、(テストされた先端部中の不具合0%)。
【0051】
さらに、本明細書に記述した方法によって作製したピペット先端部の被検体の回収率および回収相対標準偏差を、競合他社Zによって作製されたピペット先端部と比較した。TFQAYPLREA、RTKRSGSVYEPLKIおよびLWMRFの3つの異なるペプチドに対して、2つの異なるピペット先端部による回収率および相対標準偏差を求めた。本明細書に記述した方法によって作製したピペット先端部を使用すると、競合他社Zによって作製されたピペット先端部と比較して、38%まで回収が向上し、相対標準偏差は3倍まで向上した(精度向上)。
【0052】
この比較によれば、本発明の固相抽出ピペットを作製する方法が再現性に優れ、かつ使用した優れた固相抽出材によって優秀な流動性および吸着特性がもたらされることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】固相抽出装置の一実施形態を示す図である。
【図2】種々の量の収着媒体を使用する固相抽出ピペットの付加的な実施形態を示す図である。
【図3】未処理の場合と、本発明の記載に従って作られた固相抽出ピペットとを用いて処理した場合と、代わりの製造業者によって作られた固相抽出ピペットを使用した場合とにおける、サンプルからのペプチドの回収状態を示す図である。
【図4】本明細書に記述するように作製した固相抽出ピペットを使用して回収した血漿からの薬剤の存在を示すHPLCクロマトグラムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル調製用の固相抽出装置であって、より狭い1つの開口部およびより広い1つの開口部を有する中空の円錐管を備え、前記管のより狭い開口部が、機能化された一体の収着剤を含む固相抽出材を含んでおり、当該固相抽出装置が、減圧、加圧および機械的な圧密の組み合わせによって作製された固相抽出装置。
【請求項2】
前記機能化された一体の収着剤が、金属またはメタロイドの酸化物の結合相を含む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記金属またはメタロイドの酸化物が、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ムライト、ジルコニア、バナジアもしくはチタニア、またはこれらの混合物もしくは複合体である請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記金属またはメタロイドの酸化物が、アルコキシシラン、アミノシラン、ヒドロキシシランまたはハロシランに対する反応性を有する反応性金属酸化物を含んでいる請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記一体の収着剤が、ヒドロカルビル、アミド、カルバミル、カルバメート、ウレタン、カルバミド、イソシアナート、ジオール、グリシドキシ、エトキシ、プロポキシ、カルボニル、カルボキシ、アセトニル、チオ、ジチオ、ヒドロキシ、エーテル、スルフィニル、スルフォニル、スルホン酸、スルフェート、スルホンアミド、アミノ、ニトリロ、イソニトリロ、エポキシ、グアニジノ、ニトロ、ニトロソおよびホスフェートによって機能化されている請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記装置が少容量サンプルの調製に適している請求項1に記載の装置。
【請求項7】
サンプル容積が、約10-3ml以下から約103mlまでである請求項6に記載の装置。
【請求項8】
より小さい開口部およびより大きい開口部と、前記より小さな開口部に配置されている機能化された一体の収着剤とを有するピペットを含むサンプル調製用の固相抽出ピペットであって、前記機能化された一体の収着剤が、減圧、加圧、および機械的な圧密の組み合わせによって、当該ピペットの前記より小さな開口部中に配置された固相抽出ピペット。
【請求項9】
減圧を当該ピペットの前記より小さな開口部に加えて、前記機能化された一体の収着剤を挿入し、かつ加圧を当該ピペットの前記より大きい開口部に加えて、前記ピペット先端部中へ機能化された一体の収着剤を挿入した請求項8に記載の固相抽出ピペット。
【請求項10】
前記減圧が約12psiである請求項8に記載の固相抽出ピペット。
【請求項11】
前記加圧が約95psi〜約110psiである請求項8に記載の固相抽出ピペット。
【請求項12】
前記機能化された一体の収着剤が、金属またはメタロイドの酸化物の結合相を含む請求項8に記載の固相抽出ピペット。
【請求項13】
前記金属またはメタロイドの酸化物が、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ムライト、ジルコニア、バナジアもしくはチタニア、またはこれらの混合物もしくは複合体である請求項12に記載の固相抽出ピペット。
【請求項14】
前記金属またはメタロイドの酸化物がアルコキシシラン、アミノシラン、ヒドロキシシランまたはハロシランに対する反応性を有する反応性金属酸化物を含んでいる請求項2に記載の固相抽出ピペット。
【請求項15】
前記一体の収着剤が、ヒドロカルビル、アミド、カルバミル、カルバメート、ウレタン、カルバミド、イソシアネート、ジオール、グリシドキシ、エトキシ、プロポキシ、カルボニル、カルボキシ、アセトニル、チオ、ジチオ、ヒドロキシ、エーテル、スルフィニル、スルフォニル、スルホン酸、スルフェート、スルホンアミド、アミノ、ニトリロ、イソニトリロ、エポキシ、グアニジノ、ニトロ、ニトロソおよびホスフェートによって機能化されている請求項12に記載の固相抽出ピペット。
【請求項16】
固相抽出装置を作製する方法であって、
a)より広い1つの開口部およびより狭い1つの開口部を有する中空管に機能化された一体の収着剤を挿入する工程と、
b)前記管の前記より狭い開口部を減圧して、前記管に機能化された一体の収着剤を挿入する工程と、
c)前記管の前記より広い開口部を加圧して、前記管の前記狭い開口部に前記機能化された一体の収着剤を挿入する工程と、
d)前記機能化された一体の収着剤を圧密する工程とを含む方法。
【請求項17】
前記固相抽出装置が固相抽出ピペットである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記減圧が約12psiである請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記加圧が約95psi〜約110psiである請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記機能化された一体の収着剤が、金属またはメタロイドの酸化物の結合相を含む請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記金属またはメタロイドの酸化物が、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ムライト、ジルコニア、バナジアもしくはチタニア、またはこれらの混合物もしくは複合体である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記金属またはメタロイドの酸化物がアルコキシシラン、アミノシラン、ヒドロキシシランまたはハロシランに対する反応性を有する反応性金属酸化物を含んでいる請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記一体の収着剤が、ヒドロカルビル、アミド、カルバミル、カルバメート、ウレタン、カルバミド、イソシアネート、ジオール、グリシドキシ、エトキシ、プロポキシ、カルボニル、カルボキシ、アセトニル、チオ、ジチオ、ヒドロキシ、エーテル、スルフィニル、スルフォニル、スルホン酸、スルフェート、スルホンアミド、アミノ、ニトリロ、イソニトリロ、エポキシ、グアニジノ、ニトロ、ニトロソおよびホスフェートによって機能化されている請求項16に記載の方法。
【請求項24】
分析用のサンプルを作製する方法であって、
a)固相抽出ピペットを活性化する工程と、
b)分析するべきサンプルの成分を前記固相抽出ピペット上に吸着する工程と、
c)吸着された被検体を前記固相抽出材から取り除かない溶媒を用いて前記固相抽出ピペットを洗浄する工程と、
d)前記吸着された被検体を前記固相抽出材から取り除く溶媒を用いて前記固相抽出ピペットを洗浄する工程と、
e)被検体を回収する工程とを含む方法。
【請求項25】
請求項16の方法によって作製された固相抽出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−503595(P2007−503595A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533490(P2006−533490)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/016904
【国際公開番号】WO2004/106914
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(599060928)バリアン・インコーポレイテッド (81)
【Fターム(参考)】