説明

固相抽出用分離剤

【課題】 親水性と疎水性を併せ持つとともに、粒子の粒子径分布が狭く、高収率、低コストで製造可能な固相抽出用分離剤及びその用途を提供すること。
【解決手段】 基材コア粒子、該粒子の表面に形成された親水性高分子層、及び該親水性高分子層の表面に形成された疎水性高分子層を有する固相抽出用分離剤;該固相抽出用分離剤を充填してなるカラム又はカートリッジ;該固相抽出用分離剤を使用することを特徴とする分離目的物の濃縮方法、夾雑物の除去方法、環境、医薬又は生体関連試料の固相抽出方法、蛋白成分含有試料の前処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相抽出用分離剤、それを用いた固相抽出用カラム又はカートリッジ、それを用いた分離目的物の濃縮方法、夾雑物の除去方法、環境、医薬又は生体関連試料の固相抽出方法、蛋白成分含有試料の前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固相抽出法とは、液体と固体とが関与する物理的な抽出過程のことである。固相抽出法においては、例えば分離したい物質に対する固相の親和力が、分離したい物質を溶かした溶媒に対する親和力よりも大きい場合、試料溶液が固相床を通過するとき、分離目的物質は固相表面に濃縮されるが、その他の溶液の成分は通過し、目的物質の分離を可能とする。また、これとは逆に分離目的物質を通過させ、その他の溶液の成分を固相床に抽出する方法もある。固相抽出に用いられる分離剤としては、無機系基材としては、シリカゲル又はシリカゲルの表面を化学修飾した化学結合型シリカゲル、有機系基材としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体に代表される合成高分子系及びこれらの表面を化学修飾したものが挙げられる。
【0003】
一般にクロマトグラフィーに用いる合成高分子系基材は、表面に多数の浅い細孔を有し、規則的な形状、好ましくは球形の多数の不連続粒子から構成されている。
合成高分子系基材の製造法については、操作が簡単であり再現性も優れている懸濁重合法が多い。通常は得られた高分子粒子を分級作業によってクロマトグラフィー用充填剤として適当な粒子径をもつ部分のみを分けて使用している(特許文献1〜10,非特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−139482
【特許文献2】特開2001−343378
【特許文献3】特開平6−258203
【特許文献4】特表2000−514704
【特許文献5】特表2000−517574
【特許文献6】特開平5−302917
【特許文献7】特開2001−558723
【特許文献8】特許第3055911号
【特許文献9】特開2000−26551
【特許文献10】特開平8−325428
【非特許文献1】KUNIO FURUSAWAら、「Syntheses of Composite Polystyrene Latices with Silica Particles in the Core」、Journal of Colloid and Interface Science,Vol.109,No.1,January 1986
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の合成高分子系基材として挙げられているスチレン−ジビニルベンゼン共重合体は疎水性が強いため水溶液を処理する際の作業性が悪くなるという問題点がある。また、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体は溶媒によって収縮したり膨潤したりするため、溶媒を多数替えなくてはならないような複雑な抽出が要求される。そのため親水性と疎水性を併せ持つ基材が求められている。
市販されている合成高分子系基材の多くは、基材そのものが高分子粒子である。再現性のあるクロマトグラフィーを得るには、規則的な表面を有する粒子であることが理想的である。
合成高分子系基材の分離剤は、懸濁重合法によって製造されることが一般的であるが、この方法で得られた粒子の粒子径分布は極めて広い。このためクロマトグラフィー用の分離剤として得られる粒子の収率は低く、高コストになりやすい。したがって高分子基材の性能を保持し低コストで製造することが望まれる。
従って本発明の目的は、親水性と疎水性を併せ持つとともに、粒子の粒子径分布が狭く、高収率、低コストで製造可能な固相抽出用分離剤を提供することである。
本発明の他の目的は、上記固相抽出用分離剤を充填してなるカラム又はカートリッジを提供することである。
本発明のさらに他の目的は、上記固相抽出用分離剤を使用することを特徴とする分離目的物の濃縮方法、夾雑物の除去方法、環境、医薬又は生体関連試料の固相抽出方法、蛋白成分含有試料の前処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示す固相抽出用分離剤、これを充填してなるカラム又はカートリッジ、これを使用した方法を提供するものである。
1.基材コア粒子、該粒子の表面に形成された親水性高分子層、及び該親水性高分子層の表面に形成された疎水性高分子層を有する固相抽出用分離剤。
2.親水性高分子が、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース及びエチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記1記載の固相抽出用分離剤。
3.疎水性高分子が、疎水性架橋性単量体(A)の重合体、疎水性架橋性単量体(A)と疎水性非架橋性単量体(B)の共重合体、疎水性架橋性単量体(A)と親水性単量体(C)の共重合体、又は疎水性架橋性単量体(A)と疎水性非架橋性単量体(B)と親水性単量体(C)の共重合体を含む上記1又は2記載の固相抽出用分離剤。
4.疎水性架橋性単量体(A)が、ジ(メタ)アクリル酸エステル、多価アルコールのポリ(メタ)アクリル酸エステル及び2個以上のビニル基を有する芳香族系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記3記載の固相抽出用分離剤。
5.疎水性非架橋性単量体(B)が、(メタ)アクリル酸エステル、カルボン酸ビニル及びスチレン系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記3又は4記載の固相抽出用分離剤。
6.親水性単量体(C)が、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド、及びN−ビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記3〜5のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤。
7.疎水性架橋性単量体(A)が、ジビニルベンゼンである上記3〜6のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤。
【0007】
8.疎水性非架橋性単量体(B)が、スチレンである上記3〜6のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤。
9.基材コア粒子及び親水性高分子層の総量100質量部に対する、疎水性高分子層の総量が、5〜500質量部である上記1〜8のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤。
10.基材コア粒子が、シリカゲル、セルロース、アガロース、セラミック、カーボン及び合成高分子粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記1〜9のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤。
11.平均粒子径が1〜200μmである上記1〜10のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤。
12.上記1〜11のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤を充填してなるカラム又はカートリッジ。
13.上記1〜11のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤を使用することを特徴とする分離目的物の濃縮方法。
14.上記1〜11のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤を使用することを特徴とする夾雑物の除去方法。
15.上記1〜11のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤を使用することを特徴とする環境、医薬又は生体関連試料の固相抽出方法。
16.上記1〜11のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤を使用することを特徴とする蛋白成分含有試料の前処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の基材コア粒子、該粒子の表面に形成された親水性高分子層、及び該親水性高分子層の表面に形成された疎水性高分子層を有する固相抽出用分離剤は、親水性と疎水性の性能を併せ持っている。このため、水溶液を処理する際の作業性が優れており、溶媒による収縮や膨潤も少ない。また、基材コア粒子の表面に親水性高分子層及び疎水性高分子層を形成しているため、粒子径分布を制御し易くなり、収率も向上し、低コストで製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の基材コア粒子としては、シリカゲル、セルロース、アガロース、セラミック、カーボン、合成高分子等の粒子が挙げられる。基材コア粒子の粒子径は、好ましくは1〜200μm、さらに好ましくは30〜80μmである。
本発明に使用する親水性高分子としては、ヒドロキシル基等の親水性基を有する分子量1000〜2000000の高分子が挙げられる。具体的にはメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ヘキサジメチリンブロマイド(ポリブレン)等が挙げられる。
【0010】
本発明において、基材コア粒子の表面に対する親水性高分子の結合は、実質的に基材コア粒子の細孔中には親水性高分子が結合しておらず、基材コア粒子の外表面に親水性高分子が物理的又は化学的に結合していることを意味する。
本発明において、親水性高分子は、その官能基の一部又は全部が化学修飾されていてもよい。化学修飾とは例えば、ジオール化、還元化又はグルタール化である。ジオール化とは、メタクリロキシ環の環状部位を希硫酸等で酸処理することにより2つのヒドロキシル基を生成させる反応等を意味する。
本発明において、基材コア粒子100質量部に対する親水性高分子の被覆量は、好ましくは0.01〜1000質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部である。
【0011】
疎水性高分子層を形成する材料としては、疎水性架橋性単量体(A)の重合体、疎水性架橋性単量体(A)と疎水性非架橋性単量体(B)の共重合体、疎水性架橋性単量体(A)と親水性単量体(C)の共重合体、又は疎水性架橋性単量体(A)と疎水性非架橋性単量体(B)と親水性単量体(C)の共重合体を含む材料が挙げられる。
【0012】
疎水性架橋性単量体(A)としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなジ(メタ)アクリル酸エステル;テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールのポリ(メタ)アクリル酸エステル;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレンなど2個以上のビニル基を有する芳香族系化合物などが用いられる。
疎水性架橋性単量体(A)としては、ジビニルベンゼンが入手しやすく好ましい。疎水性架橋性単量体(A)は、疎水性を考慮すると単量体(A)、(B)及び(C)の総量に対し、仕込量で、好ましくは20〜95質量%、共重合体の膨潤と収縮を考慮するとさらに好ましくは40質量%以上含有した方がよい。また、ジビニルベンゼンは、純度80%以上のものを使用することが好ましい。
【0013】
疎水性非架橋性単量体(B)としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなカルボン酸ビニル;スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ブトキシスチレンのようなスチレン系単量体などが用いられる。
疎水性非架橋性単量体(B)としては、スチレンが入手しやすく好ましい。疎水性非架橋性単量体(B)は、単量体(A)、(B)及び(C)の総量に対し、仕込量で、好ましくは5〜80質量%、共重合体の膨潤と収縮を考慮すると5〜60質量%使用することがさらに好ましい。
【0014】
親水性単量体(C)としては、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸類;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2,3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリコシルエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等のヒドロキシル基、アミノ基、エーテル基等を有する(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アリルアルコール類、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール等のN−ビニルヘテロ環類、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニルラクタム類が挙げられる。中でも(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリコシルエチル、アリルアルコール等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類および(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム類等の親水性の高いものが好ましく、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類および(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン等がさらに好ましい。
親水性単量体(C)は、単量体(A)、(B)及び(C)の総量に対し、仕込量で、好ましくは5〜80質量%、共重合体の膨潤と収縮を考えると5〜60質量%がさらに好ましい。
【0015】
本発明において、親水性高分子を被覆した基材コア粒子100質量部に対する疎水性高分子層の量は、好ましくは5〜500質量部、さらに好ましくは30〜200質量部である。
本発明の固相抽出用分離剤は多孔質であり、その多孔質を付与する目的で疎水性高分子層を形成する単量体混合物に希釈溶媒を添加して重合される。
用いる希釈溶媒としては、単量体混合物に溶解するが重合反応には不活性で、さらに生成した重合体を溶解しない性質の有機溶媒が使用される。具体的には、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼンのような芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンのような飽和炭化水素類;イソアミルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコールのようなアルコール類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタンのような脂肪族ハロゲン化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルのような脂肪族あるいは芳香族エステル類などが挙げられる。これらの溶媒は、単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
これらの希釈溶媒の添加量は疎水性高分子層を形成する単量体の総量100質量部に対して好ましくは0.5〜500質量部、さらに好ましくは1〜300質量部である。
【0016】
本発明において、親水性高分子を被覆した基材コア粒子表面に疎水性高分子層を形成するには、親水性高分子を被覆した基材コア粒子の存在下、単量体(A)、単量体(A)と単量体(B)の混合物、単量体(A)と単量体(C)の混合物、又は単量体(A)と単量体(B)と単量体(C)の混合物を重合し、被覆すればよい。重合は、適当な分散剤を含んだ水性媒体中で懸濁重合により行うのが好ましい。この場合用いられる重合開始剤は、ラジカルを発生する公知のラジカル重合開始剤であれば特に限定されない。一例を挙げれば、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ジクミル、過酸化ジ−第3ブチル及び過安息香酸第3ブチル、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド等の有機過酸化物系開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)のようなアゾ系開始剤をあげることができる。
重合開始剤は単量体(A)、(B)及び(C)の総量100質量部に対して0.001〜5質量部使用することが好ましい。
【0017】
重合反応は適当な分散剤を含んだ水相と単量体、希釈溶媒、開始剤等を含む有機相を撹拌することにより行われる。分散剤としては、公知のものを使用することことができる。例えば、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物が用いられる。用いる分散剤の濃度は、水性媒体に対して0.001〜5質量%が好ましい。水性媒体は水を主体とする媒体であり、水のほかに塩類その他の水溶性成分が溶解していてもよい。
【0018】
本発明における重合反応は適当な乳化剤を添加し行われるが、乳化剤としては、公知のものを使用することができる。例えば、ドデシルベンゼン硫酸塩、ドデシル硫酸塩、ラウリル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物などのアニオン系界面活性剤を例示することができる。ここで、塩としてはナトリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。さらに、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル、ソルビタンモノステアレートなどのノニオン系界面活性剤を使用することも可能である。
【0019】
本発明において、親水性高分子を被覆した基材コア粒子表面に疎水性高分子層を形成するには、窒素雰囲気下、15〜35℃、例えば、室温において、疎水性高分子層形成用の単量体、有機溶媒、開始剤などを含む有機相と水性媒体分散相を含む液をホモジナイザーなどで300〜10000rpmで撹拌し、懸濁重合させればよい。エマルジョンが形成されていることを確認後、5〜200rpmに撹拌を落とし、親水性高分子を被覆した基材コア粒子を添加し、窒素雰囲気下70〜90℃で20時間以上重合反応を行う。以上のようにして得られた粒子は、必要により、粒子径1〜200μm、好ましくは30〜80μmに分級し、固相抽出用分離剤として使用される。
【0020】
本発明の固相抽出用分離剤は、微量成分の濃縮・除去などに幅広く応用可能であるが、特に図1に示すようなカラム又はカートリッジ等に充填して用いることができる。
カラムとは円筒状で両端をカラムエンドで止めているものである。カラムエンドはゲル流出防止の為のフリット又はフィルターが使用され、直接コネクターとカラムエンドを接続し液を流すことができる。カートリッジを使用の際は、単独では液を流す為に必要なアダプターを持たない。そのため専用のカートリッジホルダー、ガードホルダーまたはアダプターと呼ばれるものを容器に装着して用いる。
【0021】
これらカラム及びカートリッジの材質としては、例えば、ステンレス、ガラスのような無機材質、ポリエチレン、ポリプロピレンのような合成樹脂材質等が挙げられる。容積1〜500mL好ましくは1〜100mLの注射器型等が挙げられる。
固相抽出用カラム又はカートリッジは固相抽出操作中に充填した分離剤が流出しないようにカラム又はカートリッジの両端にフリット又はフィルターと呼ばれる多孔性の板状ものをセットして用いる。フリット又はフィルターの材質は特に限定されるものではなく、ステンレス、ガラス、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン製のものを挙げることができる。
固相抽出用分離剤のカラム又はカートリッジのリザーバーへの充填量は、粒子のかさ密度、試料の濃縮量によって異なるものの、通常、4mLの容積に対して30〜500mgである。
【0022】
本発明の固相抽出用分離剤が充填されているカラム又はカートリッジ等の使用用途に特に制限はないが、固相抽出用分離剤の性質上、環境関連試料、医薬関連試料等の分析処理の際に、微量含有する希薄な目的物質を濃縮する目的で、又は共存する夾雑物を容易に除去する目的等で用いることができる。さらに河川水中の農薬等有害物質の測定、農作物中の残留農薬の測定、血清中の薬物の測定等に好適に用いられ、例えば、タンパク質等の吸着除去に有効であるがこの限りではない。
本発明の環境又は医薬関連試料の処理方法は、上記固相抽出用分離剤を充填した固相抽出用カラム又は固相抽出用カートリッジを用いて目的成分を固相抽出する方法である。本発明の処理方法は、各種試料の分析の際に、微量含有する希薄な目的物質を濃縮、又は共存する夾雑物を除去するものであり、各種分析時の前処理又は後処理として、応用できるものである。
【実施例】
【0023】
以下、本発明によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
1Lの三頭フラスコに粒子径35〜65μm(平均粒子径50μm)のシリカゲル50g、0.2w/v%のヒドロキシプロピルセルロース水溶液(ヒドロキシプロピルセルロースはナカライテスク株式会社製)500mLを加え、室温にて120rpmで20時間撹拌した。撹拌終了後、脱イオン水900mL、次いでアセトン100mLで洗浄し、80℃で20時間減圧乾燥させヒドロキシプロピルセルロースが被覆されたシリカゲル(以後HPCシリカゲルと呼ぶ)を得た。
100mL四頭フラスコに窒素雰囲気下、室温にて、純度80%のジビニルベンゼン(アルドリッチ株式会社製)2.25g、スチレン(東京化成工業株式会社製)0.75g、トルエン(和光純薬工業株式会社製)3mLを加え溶解させた。さらに、0.2w/v%のメチルセルロース水溶液(メチルセルロースはナカライテスク株式会社製)60mL、10w/v%ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム水溶液(ドデシルベンゼン硫酸ナトリウムは和光純薬工業株式会社製)0.75mLを加え、500rpmにて10分撹拌した。撹拌後1w/v%2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを含むトルエン溶液(2,2’−アゾビスイソブチロニトリルは和光純薬工業株式会社製)1.5mLを加え500rpmにて10分撹拌した。エマルジョンを確認後100rpmにて撹拌し、上記のHPCシリカゲル4.0gを加え80℃で20時間反応を行った。
反応終了後、メタノール300mL、脱イオン水350mL、アセトン50mLで順次洗浄し、80℃にて20時間減圧乾燥した。得られた粒子は電磁式ふるい分け振とう機(セイシン企業 オクタゴンデジタル)で38〜75μmに分級した。
【0024】
比較例1
HPCシリカゲルとドデシルベンゼン硫酸ナトリウムを加えず、実施例1と同様の配合比で単量体を加え懸濁重合し、洗浄した後スチレン−ジビニルベンゼン粒子を得た。乾燥後38〜75μmに分級し、固相抽出用分離剤を得た。
【0025】
評価条件1による評価
実施例1及び比較例1で得られた38〜75μmに分級された粒子70mgを4mLのリザーバーに充填し、固相抽出用カートリッジとし、以下の手順で回収率測定を行った。
(1)固相抽出用カートリッジを、シリンジアダプターにセットする。
(2)メタノール1mLを、1mL/minで通液する。
(3)50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)1mLを、1mL/minで通液する。
(4)BSA(牛血清アルブミン)10mgを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)1mLに、カフェイン10μg、ケトプロフェン10μg、及びp−トルイジン20μgを溶解したものを1mL/minで通液し、試料を固相抽出用カートリッジ中に吸着させる。
(5)メタノール5%を含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)1mLを、1mL/minで通液し洗浄する。
(6)メタノール1mLを、1mL/minで通液し溶出液を回収する。
(7)回収した溶出液から20μLを採取し、高速液体クロマトグラフィー装置(島津製作所製 LC−2010C HT)により分析しその面積値を求める。
(8)測定条件
カラム:STR ODS−II4.6mmφ×150mm(信和化工株式会社製)
移動相:20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)/アセトニトリル=80/20→ 5分後75/25
流速:1.0mL/min
検出器:紫外吸収検出器
波長:UV254nm
試料注入量:20μL
結果を表1に示す。
【0026】
表1(評価条件1)

【0027】
実施例1の分離剤では、回収率は85%以上であり優れた固相抽出用分離剤であることが分かった。比較例1の分離剤では、ケトプロフェンと比べ水に溶けやすいカフェインとp−トルイジンの回収率が若干低いことが分かった。なおBSAは実施例1、比較例1ともに99%以上除去されている。
【0028】
評価条件2による評価
実施例1及び比較例1で得られた38〜75μmに分級された粒子70mgを4mLのリザーバーに充填し、固相抽出用カートリッジとし、以下の手順で回収率測定を行った。
(1)固相抽出用カートリッジを、シリンジアダプターにセットする。
(2)メタノール1mLを、1mL/minで通液する。
(3)20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)1mLを、1mL/minで通液する。
(4)BSA(牛血清アルブミン)10mgを含む20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)1mLに、プロカインアミド10μg、及びテオフィリン20μgを溶解したものを1mL/minで通液し試料を固相抽出用カートリッジ中に吸着させる。
(5)20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)1mLを、1mL/minで通液し洗浄する。
(6)20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)/メタノール=50/50の溶出液1mLを、1mL/minで通液し回収する。
(7)回収した溶出液から20μLを採取し、高速液体クロマトグラフィー装置(島津製作所製 LC−2010C HT)により分析しその面積値を求める。
(8)測定条件
カラム:Asahipak ODP−50 4D 4.6mmφ×150mm(昭和電工株式会社製)
移動相:20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH10.0)/アセトニトリル=90/10→ 5分後70/30
流速:0.6mL/min
検出器:紫外吸収検出器
波長:UV273nm
試料注入量:20μL
結果を表2に示す。
【0029】
表2(評価条件2)

【0030】
実施例1の分離剤では、回収率は85%以上であり優れた固相抽出用分離剤であることが分かった。比較例1の分離剤では、水溶性薬物のテオフィリン、プロカインアミドの回収率が実施例1よりも低いことが分かった。なおBSAは実施例1、比較例1ともに99%以上除去されている。
【0031】
実施例2
1Lの三頭フラスコに平均粒子径50μmのシリカゲル50g、1.0w/v%のポリビニルアルコール水溶液(PVAはケン化度78.0〜80.5mol% 日本酢ビ・ポバール株式会社製)600mLを加え、室温にて20時間以上120rpmで撹拌した。撹拌終了後、脱イオン水1300mL、アセトン100mLで洗浄し80℃で減圧乾燥させポリビニルアルコールが被覆されたシリカゲル(以後PVAシリカゲルと呼ぶ)を得た。
収量:49.25g 収率:87.9%
【0032】
100mL四頭フラスコに窒素雰囲気下、室温にて、純度80%のジビニルベンゼン(アルドリッチ株式会社製)1.0g、エチレングリコールジメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)0.5g、N−ビニルピロリドン(ナカライテスク株式会社製)0.5g、トルエン(和光純薬工業株式会社製)2mLを加え溶解させた。さらに、1.0w/v%のポリビニルアルコール水溶液(PVAは日本酢ビ・ポバール株式会社製)40mL、10w/v%ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム水溶液(ドデシルベンゼン硫酸ナトリウムは和光純薬工業株式会社製)0.5mLを加え、500rpmにて10分撹拌した。撹拌後1w/v%2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを含むトルエン溶液(2,2’−アゾビスイソブチロニトリルは和光純薬工業株式会社製)1mLを加え500rpmにて10分撹拌した。エマルジョンを確認後100rpmにて撹拌し、上記のPVAシリカゲル8.0gを加え80℃で6時間以上反応を行った。
反応終了後、メタノール300mL、脱イオン水250mL、アセトン50mLで洗浄し、80℃にて減圧乾燥した。得られた粒子を38〜75μmに分級した。
【0033】
実施例3
1Lの三頭フラスコに平均粒子径50μmのシリカゲル50g、0.2w/v%のメチルセルロース水溶液(メチルセルロースはナカライテスク株式会社製)600mLを加え、室温にて20時間以上120rpmで撹拌した。撹拌終了後、脱イオン水1300mL、アセトン100mLで洗浄し80℃で減圧乾燥させメチルセルロースが被覆されたシリカゲル(以後MCシリカゲルと呼ぶ)を得た。
収量:46.06g 収率:89.9%
100mL四頭フラスコに窒素雰囲気下、室温にて、純度80%のジビニルベンゼン(アルドリッチ株式会社製)1.0g、エチレングリコールジメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)0.5g、N−ビニルピロリドン(ナカライテスク株式会社製)0.5g、トルエン(和光純薬工業株式会社製)2mLを加え溶解させた。さらに、0.2w/v%のメチルセルロース水溶液40mL、10w/v%ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム水溶液(ドデシルベンゼン硫酸ナトリウムは和光純薬工業株式会社製)0.5mLを加え、500rpmにて10分撹拌した。撹拌後1w/v%2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを含むトルエン溶液(2,2’−アゾビスイソブチロニトリルは和光純薬工業株式会社製)1mLを加え500rpmにて10分撹拌した。エマルジョンを確認後100rpmにて撹拌し、上記のMCシリカゲル8.0gを加え80℃で6時間以上反応を行った。
反応終了後、メタノール500mL、脱イオン水500mL、アセトン100mLで洗浄し、80℃にて減圧乾燥した。得られた粒子を38〜75μmに分級した。
【0034】
実施例4
1Lの三頭フラスコに平均粒子径50μmのシリカゲル30g、0.2w/v%のエチルセルロースメタノール溶液(エチルセルロースはナカライテスク株式会社製)360mLを加え、室温にて20時間以上120rpmで撹拌した。撹拌終了後、脱イオン水600mL、メタノール200mL,アセトン50mLで洗浄し80℃で減圧乾燥させエチルセルロースが被覆されたシリカゲル(以後ECシリカゲルと呼ぶ)を得た。
収量:26.83g 収率:87.3%
100mL四頭フラスコに窒素雰囲気下、室温にて、純度80%のジビニルベンゼン(アルドリッチ株式会社製)1.0g、エチレングリコールジメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)0.5g、N−ビニルピロリドン(ナカライテスク株式会社製)0.5g、トルエン(和光純薬工業株式会社製)2mLを加え溶解させた。さらに、0.2w/v%のメチルセルロース水溶液40mL、10w/v%ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム水溶液(ドデシルベンゼン硫酸ナトリウムは和光純薬工業株式会社製)0.5mLを加え、500rpmにて10分撹拌した。撹拌後1w/v%2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを含むトルエン溶液(2,2’−アゾビスイソブチロニトリルは和光純薬工業株式会社製)1mLを加え500rpmにて10分撹拌した。エマルジョンを確認後100rpmにて撹拌し、上記のECシリカゲル8.0gを加え80℃で6時間以上反応を行った。
反応終了後、メタノール300mL、脱イオン水250mL、アセトン50mLで洗浄し、80℃にて減圧乾燥した。得られた粒子を38〜75μmに分級した。
【0035】
実施例5
1Lの三頭フラスコに平均粒子径50μmのシリカゲル30g、0.2w/v%のヒドロキシプロピルセルロース水溶液(ヒドロキシプロピルセルロースはナカライテスク株式会社製)360mLを加え、室温にて20時間以上120rpmで撹拌した。撹拌終了後、脱イオン水800mL、アセトン50mLで洗浄し80℃で減圧乾燥させヒドロキシプロピルセルロースが被覆されたシリカゲル(以後HPCシリカゲルと呼ぶ)を得た。
収量:27.50g 収率:89.5%
100mL四頭フラスコに窒素雰囲気下、室温にて、純度80%のジビニルベンゼン(アルドリッチ株式会社製)1.0g、エチレングリコールジメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)0.5g、N−ビニルピロリドン(ナカライテスク株式会社製)0.5g、トルエン(和光純薬工業株式会社製)2mLを加え溶解させた。さらに、0.2w/v%のメチルセルロース水溶液40mL、10w/v%ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム水溶液(ドデシルベンゼン硫酸ナトリウムは和光純薬工業株式会社製)0.5mLを加え、500rpmにて10分撹拌した。撹拌後1w/v%2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを含むトルエン溶液(2,2’−アゾビスイソブチロニトリルは和光純薬工業株式会社製)1mL加え500rpmにて10分撹拌した。エマルジョンを確認後100rpmにて撹拌し、上記のHPCシリカゲル8.0gを加え80℃で6時間以上反応を行った。
反応終了後、メタノール300mL、脱イオン水250mL、アセトン50mLで洗浄し、80℃にて減圧乾燥した。得られた粒子を38〜75μmに分級した。
【0036】
評価条件3による評価
実施例2〜5で得られた38〜75μmに分級された粒子70mgを4mLのリザーバーに充填し、固相抽出用カートリッジとした。以下の手順でそれぞれ回収率測定を行った。結果を表3に示す。
(1)固相抽出用カートリッジを、シリンジアダプターにセットする。
(2)メタノール1mLを、1mL/minで通液する。
(3)50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)1mLを、1mL/minで通液する。
(4)BSA(牛血清アルブミン)20mgを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)2mLに、プロカインアミド0.6μg、テオフィリン0.6μg溶解したものを1mL/minで通液し試料を固相抽出用カートリッジ中に吸着させる。
(5)メタノール5%を含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)1mLを、1mL/minで通液し洗浄する。
(6)メタノール1mLを、1mL/minで通液し溶出液を回収する。
(7)回収した溶出液から20μLを採取し、高速液体クロマトグラフィー装置(島津製作所製 LC−2010C HT)により分析しその面積値を求める。
(8)測定条件
カラム:Asahipak ODP−50 4D 4.6mmφ×150mm(昭和電工株式会社製)
移動相:20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH10.0)/アセトニトリル=90/10→ 5分後70/30
流速:0.6mL/min
検出器:紫外吸収検出器
波長:UV273nm
試料注入量:20μL
【0037】
表3(評価条件3)

【0038】
PVA被覆したコア粒子の実施例2はテオフィリンの回収率が極端に低く、セルロース誘導体を被覆したコア粒子のものは実施例2と比較し回収率が高い。セルロース誘導体の中でもヒドロキシプロピルセルロースを被覆したコア粒子をもつ実施例5は実施例3及び実施例4と比較し回収率が高く、固相抽出媒体であるポリマーがよく被覆されていることが予想される。
【0039】
実施例6
100mL四頭フラスコに窒素雰囲気下、室温にて、純度80%のジビニルベンゼン(アルドリッチ株式会社製)1.5g、エチレングリコールジメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)0.75g、N−ビニルピロリドン(ナカライテスク株式会社製)0.75g、トルエン(和光純薬工業株式会社製)3mLを加え溶解させた。さらに、0.2w/v%のメチルセルロース水溶液60mL、10w/v%ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム水溶液(ドデシルベンゼン硫酸ナトリウムは和光純薬工業株式会社製)0.75mLを加え、500rpmにて10分撹拌した。撹拌後1w/v%2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを含むトルエン溶液(2,2’−アゾビスイソブチロニトリルは和光純薬工業株式会社製)1.5mLを加え500rpmにて10分撹拌した。エマルジョンを確認後100rpmにて撹拌し、実施例5で得られたHPCシリカゲル6.0gを加え80℃で20時間以上反応を行った。
反応終了後、メタノール300mL、脱イオン水250mL、アセトン50mLで洗浄し、80℃にて減圧乾燥した。得られた粒子を38〜75μmに分級した。
【0040】
実施例7
1Lの三頭フラスコに平均粒子径50μmのシリカゲル50g、0.2w/v%のヒドロキシプロピルセルロース水溶液(ヒドロキシプロピルセルロースはナカライテスク株式会社製)500mLを加え、室温にて20時間以上120rpmで撹拌した。撹拌終了後、脱イオン水900mL、アセトン100mLで洗浄し80℃で減圧乾燥させヒドロキシプロピルセルロースが被覆されたシリカゲル(以後HPCシリカゲルと呼ぶ)を得た。
収量:45.28g 収率:88.8%
【0041】
100mL四頭フラスコに窒素雰囲気下、室温にて、純度80%のジビニルベンゼン(アルドリッチ株式会社製)1.5g、エチレングリコールジメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)0.75g、N−ビニルピロリドン(ナカライテスク株式会社製)0.75g、トルエン(和光純薬工業株式会社製)3mLを加え溶解させた。さらに、0.2w/v%のメチルセルロース水溶液60mL、10w/v%ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム水溶液(ドデシルベンゼン硫酸ナトリウムは和光純薬工業株式会社製)0.75mLを加え、500rpmにて10分撹拌した。撹拌後1w/v%2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを含むトルエン溶液(2,2‘−アゾビスイソブチロニトリルは和光純薬工業株式会社製)1.5mLを加え500rpmにて10分撹拌した。エマルジョンを確認後100rpmにて撹拌し、得られた上記HPCシリカゲル4.0gを加え80℃で20時間以上反応を行った。
反応終了後、メタノール300mL、脱イオン水250mL、アセトン50mLで洗浄し、80℃にて減圧乾燥した。得られた粒子を38〜75μmに分級した。
分級前の収量:6.25g(収率=89.3%)
分級後の収量:5.14g(収率=73.4%)
【0042】
比較例2
シリカゲルとドデシルベンゼン硫酸ナトリウムを加えず、実施例3と同様の配合比で単量体を加え懸濁重合し、洗浄した後、エチレングリコールジメタクリレート−N−ビニルピロリドン−ジビニルベンゼン共重合体粒子を得た。洗浄後38〜75μmに分級した。
分級前の収量:14.71g(収率=73.5%)
分級後の収量:3.09g(収率=15.4%)
【0043】
評価条件4による評価
実施例3、実施例6及び実施例7で得られた38〜75μmに分級された粒子70mgを4mLのリザーバーに充填し固相抽出用カートリッジとした。また、比較例2で得られた38〜75μmに分級された粒子50mg(シリカゲルと比較するとポリマー単独粒子は嵩比重が小さいため充填量を減らしている。)を3mLのリザーバーに充填し固相抽出用カートリッジとした。以下の手順で回収率測定を行った。評価条件3と比較すると評価条件4は薬物濃度が高くなっている。結果を表4に示す。
(1)固相抽出用カートリッジを、シリンジアダプターにセットする。
(2)メタノール1mLを、1mL/minで通液する。
(3)50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)1mLを、1mL/minで通液する。
(4)BSA(牛血清アルブミン)20mgを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)2mLに、プロカインアミド20μg、テオフィリン40μg溶解したものを1mL/minで通液し試料を固相抽出用カートリッジ中に吸着させる。
(5)メタノール5%を含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)1mLを、1mL/minで通液し洗浄する。
(6)メタノール1mLを、1mL/minで通液し溶出液を回収する。
(7)回収した溶出液から20μLを採取し、高速液体クロマトグラフィー装置(島津製作所製 LC−2010C HT)により分析しその面積値を求める。
(8)測定条件
カラム:Asahipak ODP−50 4D 4.6mmφ×150mm(昭和電工株式会社製)
移動相:20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH10.0)/アセトニトリル=90/10→ 5分後70/30
流速:0.6mL/min
検出器:紫外吸収検出器
波長:UV273nm
試料注入量:20μL
【0044】
表4(評価条件4)

【0045】
BSAは実施例3、実施例6、実施例7、比較例2ともに99%以上除去されている。
実施例3はメチルセルロースを被覆したコア粒子をもつが、シリカゲルに対する単量体の質量比は0.25である。実施例6は0.5、実施例7は0.75である。実施例3は固相抽出媒体であるポリマーの量は少ないためか回収率が低い。比較例2のポリマー単独粒子も回収率が良いが、実施例7も十分に薬物を回収している。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明の固相抽出用分離剤を充填して使用するのに好適なカラム(左側)及びカートリッジ(右側)の略側断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材コア粒子、該粒子の表面に形成された親水性高分子層、及び該親水性高分子層の表面に形成された疎水性高分子層を有する固相抽出用分離剤。
【請求項2】
親水性高分子が、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース及びエチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の固相抽出用分離剤。
【請求項3】
疎水性高分子が、疎水性架橋性単量体(A)の重合体、疎水性架橋性単量体(A)と疎水性非架橋性単量体(B)の共重合体、疎水性架橋性単量体(A)と親水性単量体(C)の共重合体、又は疎水性架橋性単量体(A)と疎水性非架橋性単量体(B)と親水性単量体(C)の共重合体を含む請求項1又は2記載の固相抽出用分離剤。
【請求項4】
疎水性架橋性単量体(A)が、ジ(メタ)アクリル酸エステル、多価アルコールのポリ(メタ)アクリル酸エステル及び2個以上のビニル基を有する芳香族系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3記載の固相抽出用分離剤。
【請求項5】
疎水性非架橋性単量体(B)が、(メタ)アクリル酸エステル、カルボン酸ビニル及びスチレン系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3又は4記載の固相抽出用分離剤。
【請求項6】
親水性単量体(C)が、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド、及びN−ビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3〜5のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤。
【請求項7】
疎水性架橋性単量体(A)が、ジビニルベンゼンである、請求項3〜6のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤。
【請求項8】
疎水性非架橋性単量体(B)が、スチレンである請求項3〜6のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤。
【請求項9】
基材コア粒子及び親水性高分子層の総量100質量部に対する、疎水性高分子層の総量が、5〜500質量部である請求項1〜8のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤。
【請求項10】
基材コア粒子が、シリカゲル、セルロース、アガロース、セラミック、カーボン及び合成高分子粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜9のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤。
【請求項11】
平均粒子径が1〜200μmである請求項1〜10のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤を充填してなるカラム又はカートリッジ。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤を使用することを特徴とする分離目的物の濃縮方法。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤を使用することを特徴とする夾雑物の除去方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤を使用することを特徴とする環境、医薬又は生体関連試料の固相抽出方法。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか1項記載の固相抽出用分離剤を使用することを特徴とする蛋白成分含有試料の前処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−68597(P2006−68597A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252612(P2004−252612)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(591159251)信和化工株式会社 (10)
【Fターム(参考)】