説明

固結を抑制し崩壊性を損なわない漢方顆粒剤

【課題】 本発明は、漢方エキスにショ糖脂肪酸エステルおよびステアリン酸マグネシウムを配合した顆粒剤における、径時的な顆粒同士の固結が抑制され、かつ、崩壊性を損なわない漢方顆粒剤を提供する。
【解決手段】本発明は漢方エキスにショ糖脂肪酸エステルおよびステアリン酸マグネシウムを組み合わせることにより、径時的な顆粒同士の固結が抑制され、かつ、崩壊性を損なわない漢方顆粒剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漢方エキスを配合した顆粒剤に関する。更に詳しくは漢方エキスにショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウムを配合することにより、服用し易い用量で、崩壊性を損なわず、径時的に顆粒同士の固結が生じない漢方顆粒剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
漢方処方の医薬品は、古くから東洋医学に基づいた考えより、多く使用されてきており、その服用される目的は疲労対策、感冒対策、高血圧対策、胃腸障害の改善、関節・筋肉痛対策、ストレス対策と多岐にわたっている。しかし、漢方処方の医薬品に使用する漢方エキスは、苦味や吸湿性を有する事が多く、特に径時的に顆粒同士が固結するという問題を有する。
【0003】
一般的に顆粒剤はその服用の容易さより、多くの製品が開発され服用されている。ただ、顆粒剤に配合する漢方エキスは、いくつかの生薬からエキスを抽出し、そのエキスを濃縮させて製造する事が多く、吸湿性を有する。漢方エキスのみを用いて顆粒を製造することは困難であり、顆粒剤の固結により崩壊性や吸収性が損なわれる結果となる。
【0004】
このような顆粒剤の固結を改善するために賦形剤や吸着剤等を単独であるいは組み合わせて大量に添加し、漢方エキスの添加濃度を抑える事が良く見受けられる。
【0005】
このため、顆粒剤の固結を改善するために、1回服用量を多く設定する必要が生じる。このような設計制限の中で、服用し易い用量で、崩壊性を損なわず、顆粒同士の固結が生じない顆粒剤を提供することは、非常に困難となる。
【0006】
また、その配合成分によっては、その漢方成分類の経時的な安定性を低下させる場合があり、十分に顆粒同士の固結を防止する事ができないことがある。
【0007】
したがって、漢方製剤では、服用し易い用量で、崩壊性を損なわず、径時的に顆粒同士の固結が生じない漢方顆粒剤が望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、漢方エキスを配合した顆粒剤における、径時的な顆粒同士の固結が抑制され、かつ、崩壊性を損なわない漢方顆粒剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の問題点を踏まえて鋭意研究を重ねた結果、漢方エキスにショ糖脂肪酸エステルおよびステアリン酸マグネシウムを組み合わせることにより、径時的な顆粒同士の固結が抑制され、かつ、崩壊性を損なわない漢方顆粒剤を提供することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
また、漢方エキスとしては竹茹温胆湯、防已黄耆湯、小青竜湯、温丹湯、桔梗湯、桂枝加黄蓍湯、柴胡桂枝乾姜湯、十味敗毒湯、小半夏加茯苓湯、疎経活血湯、大黄甘草湯、桃核承気湯、独活葛根湯、人参湯、白虎加人参湯、杞菊地黄丸があげられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、径時的な顆粒同士の固結が抑制され、かつ、崩壊性を損なわない漢方顆粒剤を提供する事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明における漢方エキスとは、竹茹温胆湯、防已黄耆湯、小青竜湯、温丹湯、桔梗湯、桂枝加黄蓍湯、柴胡桂枝乾姜湯、十味敗毒湯、小半夏加茯苓湯、疎経活血湯、大黄甘草湯、桃核承気湯、独活葛根湯、人参湯、白虎加人参湯、杞菊地黄丸があげられる。
【0013】
また、本発明において漢方エキスにショ糖脂肪酸エステルおよびステアリン酸マグネシウムを組み合わせることを特徴とする。
【0014】
尚、通常の顆粒剤と同様に上記添加物のほか、必要時応じて、味、風味を良くするため、品質の担保のために、必要に応じて、以下のような添加剤を加える事ができる。すなわち、乳糖、でんぷん、結晶セルロースなどの賦形剤、嬌味剤、甘味剤、滑沢剤、結合剤、吸着剤そして、崩壊剤等が挙げられる。これらは1種単独での配合でも良いが、2種以上併用してもかまわない。これらの成分は、従来の顆粒剤で使用されている量で適宜配合される事が望ましい。
【0015】
本発明の漢方顆粒剤の調製方法は特に制限されず、通常の顆粒剤を調製するのに必要な各種成分を適宜選択、配合して、常法により調製する事ができる。
【0016】
通常、各漢方エキス及び添加成分を混合、アルコールや水で練合、造粒、整粒、乾燥、必要に応じて篩過して整粒する。甘味剤や香料と一部の顆粒を吸着混合し、全ての顆粒と混合後、必要に応じて篩過して混合することも良い。
【実施例】
【0017】
以下に実施例及び、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
混合機(株式会社品川工業所製、品川式混合機 5DM)に竹茹温胆湯乾燥エキス4142.86g、ヒドロキシプロピルセルロース260.0g、マクロゴール6000P150.0g、エリスリトール207.14g、ショ糖脂肪酸エステル140.0g及びステアリン酸マグネシウム140.0gを入れ、十分に混合した後、アルコールを加えて練合する。
【0019】
次に、押出造粒機(不二パウダル株式会社製、マルチグラン MG−55、スクリーンサイズ0.8mm)で上記練合物を造粒させ、造流終了物を整粒後、乾燥機(フロイント産業株式会社製、フローコーター FLO−5)に入れ、十分に乾燥させる。
乾燥終了品は、篩過後、篩過残品は、整粒機(不二パウダル株式会社製、フラッシュミルFl−200、スクリーンサイズ1.0mm)で整粒する。整粒終了品は、再度、篩過(14mesh)後、通過品を全て合わせて混合用顆粒を得た。
【0020】
得られた混合用顆粒の一部に、予めケイ酸カルシウム0.60g及び香料(ハッカ油)0.60gを十分に吸着混合させた香料吸着混合品及びアスパルテーム6.00gを加え十分に混合した後、篩過(14mesh)を行い、予混合品とする。その後、残りの混合用顆粒及び予混合品を加え混合後、得られた漢方顆粒剤を10号規格瓶に入れ、密栓保存した。
【0021】
(比較例1)
混合機(株式会社品川工業所製、品川式混合機 5DM)に竹茹温胆湯乾燥エキス4142.86g、ヒドロキシプロピルセルロース260.0g、マクロゴール6000P150.0g、エリスリトール207.14g、ケイ酸カルシウム140.0g及びステアリン酸マグネシウム140.0gを入れ、十分に混合した後、アルコールを加えて練合する。
【0022】
次に、押出造粒機(不二パウダル株式会社製、マルチグラン MG−55、スクリーンサイズ0.8mm)で上記練合物を造粒させ、造流終了物を整粒後、乾燥機(フロイント産業株式会社製、フローコーター FLO−5)に入れ、十分に乾燥させる。
乾燥終了品は、篩過後、篩過残品は、整粒機(不二パウダル株式会社製、フラッシュミルFl−200、スクリーンサイズ1.0mm)で整粒する。整粒終了品は、再度、篩過(14mesh)後、通過品を全て合わせて混合用顆粒を得た。
【0023】
得られた混合用顆粒の一部に、予めケイ酸カルシウム0.60g及び香料(ハッカ油)0.60gを十分に吸着混合させた香料吸着混合品及びアスパルテーム6.00gを加え十分に混合した後、篩過(14mesh)を行い、予混合品とする。その後、残りの混合用顆粒及び予混合品を加え混合後、得られた漢方顆粒剤を10号規格瓶に入れ、密栓保存した。
【0024】
(比較例2)
混合機(株式会社品川工業所製、品川式混合機 5DM)に竹茹温胆湯乾燥エキス4142.86g、ヒドロキシプロピルセルロース260.0g、マクロゴール6000P150.0g、エリスリトール207.14g、軽質無水ケイ酸140.0g及びステアリン酸マグネシウム140.0gを入れ、十分に混合した後、アルコールを加えて練合する。
【0025】
次に、押出造粒機(不二パウダル株式会社製、マルチグラン MG−55、スクリーンサイズ0.8mm)で上記練合物を造粒させ、造流終了物を整粒後、乾燥機(フロイント産業株式会社製、フローコーター FLO−5)に入れ、十分に乾燥させる。
乾燥終了品は、篩過後、篩過残品は、整粒機(不二パウダル株式会社製、フラッシュミルFl−200、スクリーンサイズ1.0mm)で整粒する。整粒終了品は、再度、篩過(14mesh)後、通過品を全て合わせて混合用顆粒を得た。
【0026】
得られた混合用顆粒の一部に、予めケイ酸カルシウム0.60g及び香料(ハッカ油)0.60gを十分に吸着混合させた香料吸着混合品及びアスパルテーム6.00gを加え十分に混合した後、篩過(14mesh)を行い、予混合品とする。その後、残りの混合用顆粒及び予混合品を加え混合後、得られた漢方顆粒剤を10号規格瓶に入れ、密栓保存した。
【0027】
(比較例3)
混合機(株式会社品川工業所製、品川式混合機 5DM)に竹茹温胆湯乾燥エキス4142.86g、ヒドロキシプロピルセルロース260.0g、マクロゴール6000P150.0g、エリスリトール207.14g、カルメロースカルシウム140.0g及びステアリン酸マグネシウム140.0gを入れ、十分に混合した後、アルコールを加えて練合する。
【0028】
次に、押出造粒機(不二パウダル株式会社製、マルチグラン MG−55、スクリーンサイズ0.8mm)で上記練合物を造粒させ、造流終了物を整粒後、乾燥機(フロイント産業株式会社製、フローコーター FLO−5)に入れ、十分に乾燥させる。
乾燥終了品は、篩過後、篩過残品は、整粒機(不二パウダル株式会社製、フラッシュミルFl−200、スクリーンサイズ1.0mm)で整粒する。整粒終了品は、再度、篩過(14mesh)後、通過品を全て合わせて混合用顆粒を得た。
【0029】
得られた混合用顆粒の一部に、予めケイ酸カルシウム0.60g及び香料(ハッカ油)0.60gを十分に吸着混合させた香料吸着混合品及びアスパルテーム6.00gを加え十分に混合した後、篩過(14mesh)を行い、予混合品とする。その後、残りの混合用顆粒及び予混合品を加え混合後、得られた漢方顆粒剤を10号規格瓶に入れ、密栓保存した。
【0030】
(試験例1)
前記実施例1及び比較例1〜3の漢方顆粒剤について、それぞれを約40℃絶対湿度75%で、1ヶ月、2ヶ月及び3ヶ月間、50℃で、2週間、1ヶ月及び2ヶ月間、60℃では、2週間、1ヶ月及び2ヶ月間の保存条件で安定性試験を実施した。
【0031】
前記実施例1及び比較例1〜3の漢方顆粒剤について、安定性試験開始時及び上記保存条件で径時的に顆粒同士の固結について評価した。固結の評価としては下記評価基準によるものとし、−から++の4段階の評価によって評価した。配合成分を表1に、固結の評価結果を表2に示した。
−固結の評価−
− :固結なし
± :僅かに固結を認める
+ :固結を認める
++:激しい固結を認める
【0032】
また、前記実施例1及び比較例1〜3の漢方顆粒剤について上記保存条件それぞれの試料5gについて水分計(メトラー・トレド株式会社製 ハロゲン水分計 HB43)を用いての乾燥減量を測定した。その結果を表3に示した。
【0033】
更に、前記実施例1及び比較例1〜3の漢方顆粒剤について、安定性試験開始時、40℃絶対湿度75%3ヶ月間、50℃2週間、60℃2週間及び60℃1ヶ月のそれぞれ保存品につき、崩壊試験機(富山産業株式会社製 崩壊試験機 NT−2HSF)を用いての顆粒の崩壊性を測定した。その結果を表4に示した。
【0034】
(試験結果)
表2〜表4からも明らかなように、固結の評価及び測定結果より、本発明の漢方顆粒剤は径時的な顆粒同士の固結が改善され、かつ、崩壊性を損なわないことが判明した。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
漢方エキスにショ糖脂肪酸エステルおよびステアリン酸マグネシウムを組み合わせることを特徴とし、径時的な顆粒同士の固結が抑制され、かつ崩壊性を損なわない漢方顆粒剤。
【請求項2】
漢方エキスが竹茹温胆湯、防已黄耆湯、小青竜湯、温丹湯、桔梗湯、桂枝加黄蓍湯、柴胡桂枝乾姜湯、十味敗毒湯、小半夏加茯苓湯、疎経活血湯、大黄甘草湯、桃核承気湯、独活葛根湯、人参湯、白虎加人参湯、杞菊地黄丸のいずれかである請求項1に記載の漢方顆粒剤。

【公開番号】特開2013−95748(P2013−95748A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250126(P2011−250126)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(596178408)滋賀県製薬株式会社 (5)
【Fターム(参考)】