説明

園芸ハウスのプラスチック製エレメントおよび園芸ハウス

【課題】 部品点数が少なく耐久性があり、製造容易な園芸ハウスのプラスチック製エレメントおよびそれを用いた園芸ハウスの提供。
【解決手段】 熱可塑性の透明な硬質プラスチックシートを波形に曲折すると共に、その両端部を断面L字状に形成して埋設保持部1を造る。そして長手方向の中間部を弧状または台形状に曲折して屋根形に形成し、埋設保持部1を地中に埋設固定できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットボトル等の廃プラスチックを利用して製造することができる園芸ハウスのエレメントおよびそれを用いた園芸ハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
比較的簡易な園芸ハウスとして、多数のパイプフレームを定間隔に並列して立設し、その外周を軟質樹脂フィルムで被覆したものがある。
また、アルミサッシで骨組みを構成し、その骨組みにガラスまたは透明プラスチックを取り付けた園芸ハウスも知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
軟質樹脂フィルムを用いた園芸ハウスは、その樹脂フィルムの寿命が短く、プラスチック製廃棄物が多量にでる欠点がある。
また、本格的な骨組み構造の園芸ハウスは、その部品点数が多く、高コストであると共に、製作が面倒で迅速に園芸ハウスを作ることができない欠点がある。
そこで本発明は、寿命が長く、低コストで部品点数が少なく容易に園芸ハウスを作ることができるエレメントおよびそれを用いた園芸ハウスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の本発明は、硬質プラスチックシートの成形体よりなり、その幅方向に波が進行するように波形に曲折形成されると共に、その波の稜線方向の両端部が断面L字状に曲折された一対の埋設保持部(1) を有し、その稜線方向の中間部が弧状または台形状に曲折する屋根形に形成され、
前記一対の埋設保持部(1) を夫々地中に埋設固定できるように構成された園芸ハウスのプラスチック製エレメントである。
【0005】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
前記波形は横断面が台形状の山部(2) と谷部(3) とを交互に形成し、その幅方向の一方の縁部は実質的にその全長に渡り、前記谷部(3) の縁から表面側に楔状に折り曲げられた係合部(4) を有し、他方の縁部は実質的にその全長に渡り、山部(2) の縁から裏面側に楔状に折り曲げられた係止部(5) を有し、その係合部(4) と係止部(5) とが互いに整合するように構成された園芸ハウスのプラスチック製エレメントである。
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2において、
エレメントの一部に窓用開口(6) が形成され、その窓用開口(6) が窓扉(9) で開閉自在に閉塞される園芸ハウスのプラスチック製エレメントである。
【0006】
請求項4に記載の本発明は、請求項2に記載のエレメントが幅方向に複数並列され、隣接するエレメントの前記係合部(4) と係止部(5) とが互いに嵌着して、その継目が断面Z字状に係止接続されると共に、前記埋設保持部(1) が地中に埋設された園芸ハウスである。
請求項5に記載の本発明は、請求項4において、
弧状または台形状に曲折されたパイプフレーム(7) に前記エレメントが接触し、そのエレメントの接触部が加熱軟化によりパイプフレーム(7) を抱持するように被嵌した園芸ハウスである。
【0007】
請求項6に記載の本発明は、請求項4において、
弧状または台形状に曲折されたパイプフレーム(7) に前記エレメントが接触し、そのエレメントの接触部がパイプフレーム(7) を弾性的に抱持するように、予め抱持部(24)がエレメントに成形された園芸ハウスである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の園芸ハウスのプラスチック製エレメントは、硬質プラスチックシートの波形成形体からなり、その中間部が弧状または台形状に曲折する屋根形に形成されると共に、その両端部に断面L字状に曲折された一対の埋設保持部1を有する。そして、その埋設保持部1を夫々地中に埋設固定できるように構成したから、園芸ハウスの設置が容易でそれを迅速に作ることができる。しかも、丈夫で耐久性の高いものとなる。
【0009】
上記構成において、エレメントを台形波状に曲折形成し、その幅方向両縁に互いに整合する係合部4と係止部5とを設けたものにおいては、複数のエレメント19をその端部どうしで容易に嵌着固定することができる。それと共に、その接続部において雨水等による水漏れを防止できる。
上記構成において、エレメントの一部に窓用開口6を形成し、その窓用開口6に窓扉9を開閉自在に設けたものにおいては、構造が簡単で必要に応じて風通しの良い園芸ハウスとなり得る。
【0010】
上記構成のエレメントを複数並列し、その埋設保持部1を地中に埋設した園芸ハウスは、ハウスの構造が丈夫で耐久性があり、部品点数が少なく容易に園芸ハウスを製作し得る。
上記構成において、弧状または台形状に曲折したパイプフレーム7にエレメントを接触し、その接触部を加熱軟化してパイプフレーム7を抱持するように構成した場合には、園芸ハウスの強度を強く保ち、さらに耐久性の高いものとなる。
【0011】
上記構成において、エレメントに予め抱持部24を形成しておき、その抱持部24によってパイプフレーム7を弾性的に抱持するように構成した場合には、さらに園芸ハウスの製作を容易に行い得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、図面に基づいて本発明のエレメントおよび園芸ハウスにつき説明する。
図1は本発明の園芸ハウスのプラスチック製エレメントの斜視略図であり、図2はその窓用開口6およびそれに用いる窓扉9の拡大斜視説明図である。また、図3はその窓用開口6に窓扉9を設けたエレメントの斜視図であり、図4は図3のIV−IV線拡大断面略図である。さらに、図5は本発明のエレメントを用いた園芸ハンスの正面図であり、図6はその斜視略図、図7はエレメント19とハウスの骨組みであるパイプフレーム7との嵌着状態を示す拡大説明図である。
【0013】
本発明の園芸ハウスのプラスチック製エレメントは、一例として熱可塑性の透明な硬質プラスチックシートの成形体よりなる。その材料としては、ペットボトル等の廃プラスチックを用いることが好ましいが、本発明はそれに限定されるものではない。
このエレメントは、図3および図4に示す如く幅方向に波が進行するように波形に曲折形成されてなり、その波の稜線方向の中間部が弧状または図示しない台形状に曲折する屋根形に形成されている。そして、その波の稜線方向(長手方向)の両端部が断面L字状に曲折された一対の埋設保持部1を有する。
【0014】
このエレメント19の波形は、一例として、図4に示す如く、横断面が台形状の山部2と谷部3とが交互に形成されている。そしてその幅方向の両縁は楔状に形成された係合部4と係止部5とを有する。
係合部4は、エレメント19の裏面側から表面側に且つ、波の谷部3の縁から楔状に折り曲げられている。係止部5は、逆に表面側から裏面側に且つ、その波の山部2の縁から楔状に折り曲げられている。そして、その係合部4と係止部5とは互いに整合するように形成されている。その結果、並列して隣接するエレメント19の縁部どうしが係止されて、その継目が断面Z字状に接続される。
【0015】
このようなエレメント19は、一例として図11の如く製作することができる。
透明で平坦な熱可塑性の硬質プラスチックシートをバーナ等の加熱手段20により加熱して軟化させ、一対の第1成形ローラ21a,21b 間に供給する。この第1成形ローラ21a,21b は、同図(B)の如く、その軸に平行な断面外周が波形に形成されたものである。その一対の成形ローラは互いに僅かな隙間を空けて、互いの山部と谷部とが噛み合わされる。そして、それらの間に軟化した透明なプラスチックシートが供給されると、それを横断面が台形状の波形に曲折する。
【0016】
次いで、さらにそのプラスチックシートを第2成形ローラ22a,22b 、第3成形ローラ23a,23b に供給する。それら3対の成形ローラは目的とするエレメント19の湾曲軌跡上に調整配置されているため、成形されたエレメントがこの例では、図1または図3の如く弧状に湾曲される。なお、その湾曲の曲率半径は、3対の成形ローラの位置を調整することにより適宜変えることができる。
なお、エレメント19の製造方法は、上記の例に限るものではなく、波形で平坦に成形した後に、全体をバーナ等で加熱しつつ弧状または台形状に湾曲してもよい。その際に、エレメント19の両縁の係止部4、係合部5を折り曲げ形成してもよい。
【0017】
次に、図1および図3における窓用開口6は、図6示す如く、それが存在するエレメントと、それが無いエレメントとを造ることができる。勿論、全てのエレメントに窓用開口6を設けてもよい。窓用開口6を形成する場合には、予め平坦なプラスチックシートの状態でその中間部を方形に切断することが好ましい。次いで、それを波形の成形ローラに供給すればよい。
この窓用開口6には、窓扉9が取付けられる。この窓扉9を取付けるため、一例としてその窓用開口6の縁部を図2の如く内側に折り返して、そこに折返し縁部10を形成することができる。この折返し縁部10は、窓用開口6の両側に設けられる。そしてプラスチックシートの成形体よりなる窓扉9の両縁にも、逆向きの折返し縁部11を形成し、その折返し縁部11と、窓用開口6の折返し縁部10とを互いに摺動自在に嵌着すればよい。
【0018】
また、この例では、窓扉9の下端には延長部12が外側に段付状に突設され、窓扉9上の雨水を外側に導く。この例では図3に示す如く、窓扉9は延長部12を除いてエレメント19の内側に配置される。そして、延長部12はエレメント19の外側に突出する。この延長部12の下端縁が扉開閉用の取手を兼用する。
窓扉9と窓用開口6の縁部とは互いに接触抵抗を有して嵌着されるため、窓扉9を実線の状態から鎖線の状態に上方に移動し、窓用開口6を開口してもその状態を保持する。
なお、図2において折返し縁部11と折返し縁部10との間に板バネ等の抵抗体を設け、窓扉9が適宜位置で確実に止まるように支持させてもよい。
【0019】
次に、窓扉9の他の例としては図8および図9に示す如く、窓扉9をエレメント19の外側に配置し、中央位置の一以上のヒンジ18を介してそれを開閉自在にしてもよい。この場合には、窓用開口6の上縁部を折り曲げて樋部25を形成し、雨水が窓扉9の上端から浸入することを防止することが好ましい。
【0020】
次に、エレメント19の埋設保持部1は後加工により形成することができる。埋設保持部1のコーナー部は好ましくは、図12に示す如く波形の形状を保ったまま、断面L字状に形成することが好ましい。このようにするには、エレメントの下端部に図12の形状の表面側と裏面側とに夫々整合する金型を用意し、その金型間にプラスチックシートを加熱した状態、または金型自体を加熱した状態で挟持すればよい。
なお、簡便には加熱したアングル材等をエレメントの端部に押し当てて折り曲げてもよい。
【0021】
〔園芸ハウスの組立方法〕
このようにしてなる多数のエレメント19は、図5および図6の如く並列される。そして各エレメント19どうしの継目は、図4の如く互いに係止される。このとき、隣接するエレメント19どうしは互いに弾性的に引張り合うように引き延ばして配置することができる。これは、台形波状のプラスチック製のエレメント19が波の進行方向に弾性的に伸縮自在とすることができるからである。このように互いに引っ張り合うと、その係止部4と係合部5との隙間が無くなり、雨漏りを防止できる。それと共に、他の手段を用いることなく、接続状態を永続的に保持できる。
【0022】
各エレメント19の両下端部にある埋設保持部1は図5,図6に示す如く、グランドレベルGLより下方に埋設され、それによりエレメント19を所定位置に安定して立設固定できる。
また、園芸ハウスの内面側に一例として1mおきにパイプフレーム7を配置し、そのパイプフレーム7をエレメント19の波の頂部が被嵌するように抱持させることができる。例えば、断面円形のパイプフレーム7とエレメント19との接触部において、その外面側からエレメント19をバーナーで軟化させ、エレメント19の一部を変形することにより、パイプフレーム7に馴染んだ抱持部24をエレメント19に造ることができる。
なお、予めエレメント19自体で、適宜間隔毎に波の一部に抱持部24を形成してもよい。
【0023】
また、図6の例では一つおきのエレメント19に窓用開口6を形成し、そこに窓扉9を設けたが、本発明はこれに限定するものではない。
さらに、エレメント19の頂部に天窓用開口13を設け、その開口を開閉自在に天窓により閉塞してもよい。
さらには、図7において、抱持部24をエレメント19に予め形成しておき、抱持部24の両側を引き伸ばすことにより、パイプフレーム7を抱持部24内に収納し、次いで自由状態にすることにより、パイプフレーム7を抱持部24で弾性的に把持することもできる。
エレメント19の板厚としては、弾性変形可能な0.3mm〜2mm程度とすることが好ましいが、それに限定されるものではない。
【0024】
次に、図5において入口扉14は、一例として図10の如く開き扉型にすることができる。これは図5において、ハウスの内面側正面にガイドレール16を配置し、入口扉14の上端に突設されたガイドローラ17をガイドレール16に案内させればよい。この入口扉は公知の各種のものから適宜、選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の園芸ハウスのプラスチック製エレメントの斜視略図。
【図2】同エレメントの窓用開口6およびその窓用開口6に取付けられる窓扉9の拡大斜視説明図。
【図3】窓扉9を有するエレメント19の斜視略図。
【図4】図3のIV−IV線断面拡大略図。
【図5】多数のエレメント19を用いた園芸ハウス15の正面図。
【図6】同斜視略図。
【0026】
【図7】エレメント19とパイプフレーム7との関係を示す拡大説明図。
【図8】エレメント19に用いられる窓扉9の他の例を示す斜視図。
【図9】図8のIX−IX矢視断面拡大図。
【図10】園芸ハウス15の入口扉14の要部縦断面説明図。
【図11】エレメント19の製造方法の一例を示す説明図。
【図12】エレメント19の埋設保持部1の一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0027】
1 埋設保持部
2 山部
3 谷部
4 係合部
5 係止部
6 窓用開口
7 パイプフレーム
9 窓扉
10 折返し縁部
【0028】
11 折返し縁部
12 延長部
13 天窓用開口
14 入口扉
15 園芸ハウス
16 ガイドレール
17 ガイドローラ
GL グランドレベル
18 ヒンジ
19 エレメント
20 加熱手段
【0029】
21a,21b 第1成形ローラ
22a,22b 第2成形ローラ
23a,23b 第3成形ローラ
24 抱持部
25 樋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質プラスチックシートの成形体よりなり、その幅方向に波が進行するように波形に曲折形成されると共に、その波の稜線方向の両端部が断面L字状に曲折された一対の埋設保持部(1) を有し、その稜線方向の中間部が弧状または台形状に曲折する屋根形に形成され、
前記一対の埋設保持部(1) を夫々地中に埋設固定できるように構成された園芸ハウスのプラスチック製エレメント。
【請求項2】
請求項1において、
前記波形は横断面が台形状の山部(2) と谷部(3) とを交互に形成し、その幅方向の一方の縁部は実質的にその全長に渡り、前記谷部(3) の縁から表面側に楔状に折り曲げられた係合部(4) を有し、他方の縁部は実質的にその全長に渡り、山部(2) の縁から裏面側に楔状に折り曲げられた係止部(5) を有し、その係合部(4) と係止部(5) とが互いに整合するように構成された園芸ハウスのプラスチック製エレメント。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
エレメントの一部に窓用開口(6) が形成され、その窓用開口(6) が窓扉(9) で開閉自在に閉塞される園芸ハウスのプラスチック製エレメント。
【請求項4】
請求項2に記載のエレメントが幅方向に複数並列され、隣接するエレメントの前記係合部(4) と係止部(5) とが互いに嵌着して、その継目が断面Z字状に係止接続されると共に、前記埋設保持部(1) が地中に埋設された園芸ハウス。
【請求項5】
請求項4において、
弧状または台形状に曲折されたパイプフレーム(7) に前記エレメントが接触し、そのエレメントの接触部が加熱軟化によりパイプフレーム(7) を抱持するように被嵌した園芸ハウス。
【請求項6】
請求項4において、
弧状または台形状に曲折されたパイプフレーム(7) に前記エレメントが接触し、そのエレメントの接触部がパイプフレーム(7) を弾性的に抱持するように、エレメントに予め抱持部(24)が成形された園芸ハウス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−115703(P2006−115703A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303760(P2004−303760)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(504389337)株式会社カワノ技研 (1)
【Fターム(参考)】