説明

土を使う生ごみ処理容器

【課題】生ごみと土を交互に重ね、土の中に棲む土壌動物や微生物の生育環境を整え、生ごみを処理するための土を使う生ごみ処理器を提供する。
【解決手段】底面のない横長の容器1を3層に区切り、該容器各層の上部開口部にヒンジ部13でつなぐつまみ3の付いた上蓋2を設け、3層に区切られた容器の前面には、前蓋背面9を設けた凹みと、握る部分を外側へ緩いカーブを施している取っ手10の付いた、着脱できる前蓋4、前蓋5、前蓋6を設けた、土を使う生ごみ処理容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生ごみと土を交互に重ね、土壌動物(非特許文献〈1〉)や微生物の生育環境を整え、生ごみを処理するための土を使う生ごみ処理容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生ごみの減量を目的にした自家処理の方法として、釣鐘型のコンポスターや電動による醗酵、または、乾燥の処理機が使われている。
また、コンポスターの改良を試みた例(特許文献1)もある。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2006−110532号公報
【非特許文献1】 「ダニの話」青木惇一著 (北隆館)第5版106頁 昭和51年5月25日 5版発行
【非特許文献2】 「ごみゼロへの道」広瀬立成著(第三文明社)64頁 2009年4月24日 初版第1刷発行
【非特許文献3】 「エコピュア」43号(2002年9月)、53号(2005年3月)EM情報室発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これには次のような欠点があった。
(イ)コンポスターの場合、防虫剤や醗酵促進剤も付随して使用を促しているが、臭いや 小バエ等の発生を抑えきれないため使用をやめる例も多い。
(ロ)また、コンポスター内に生ごみが満杯になると上部空間が開くまで使用の中止や、 2個以上の該容器を必要とする。
(ハ)1個だけの容器では、満杯時に他場所への移設や摺り動かすのも煩わしい。
それに、ある程度の場所も必要になる。
(ニ)電動の処理機も電力を消費することと、発生する残渣は消えない。
本発明はこれらの問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
底面のない容器(1)の上部開口部に上蓋(2)を設け、該容器の下部に着脱できる取出し口を設ける。
本発明は、以上のような構成よりなる土を使う生ごみ処理容器である。
【発明の効果】
【0006】
生ごみを入れる都度、土で完全に覆うため小バエの発生や臭いも抑えられる。
土に挟まれた生ごみは、微生物の活動と共に過剰な水分は下降し、固形物は土壌動物に食べられ徐々に無くなる。
順を追って入れた層が満杯になり次第、ほぼ土だけになった最初の層を空になるまで掻き出し、繰り返し生ごみを入れることができる。
掻き出した土は予備の土として使うこともできるが、花壇等に利用すると育ちが良くなる。
したがって、本容器は固定したままで醗酵促進剤や電力を使わずに生ごみを処理できる。
本容器の使用により、家庭ごみ全量の約40%を減量に導くことができる。
図5に示した「生ごみ処理状況」から、一つの層に、2〜3カ月生ごみは留まるが、春から秋にかけて、竹の子の皮、細かい剪定枝やスイカの皮、とうもろこしの皮、雑草など、土中の生物活動が旺盛な時期は短期間に多くの生ごみを処理する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】 本発明の容器の斜視図である。
【図2】 本発明の他の実施例の斜視図である。
【図3】 本発明の他の実施例の斜視図である。
【図4】 本発明による実験データーを示したグラフである。
【図5】 本発明の応用事例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明(図1)の実施の形態を説明する。
(イ)横長の底面のない容器(1)を3層に区切り、それぞれの上部開口部には、ヒンジ 部(13)でつなぐつまみ(3)の付いた上蓋(2)を設ける。
(ロ)3層に区切られた容器(1)の前面には、取っ手(10)の付いた前蓋(4)前蓋 (5)前蓋(6)を設ける。
(ハ)前蓋(4)前蓋(5)前蓋(6)の中央部に設けた取っ手(10)部分は、前蓋背 面(9)を設けた凹みと、握る部分を外側へ緩いカーブを施している。
(ニ)容器(1)各層の前面下部開口部の両側は、前蓋(4)前蓋(5)前蓋(6)の両 サイドと重なるように蓋受部(11a、11b)を設けている。
(ホ)前蓋(4)前蓋(5)前蓋(6)の上下に、断面がクランク状の前蓋上部支え板( 7)と、前蓋下部支え板(8)を付し、容器(1)前面の上がわ内部、および、容器 下部固定板(12)の内側に潜り込むようにしている。
本発明は以上のような構造である。
本発明の使い方を説明する。
(イ)土の上に本容器(1)を設置し、傍に土を準備する。
生ごみを第1層(14)から投入して平らにし、十能等で隠れるまで完全に土で覆 う。
これを繰り返し、満杯になれば第1層(14)の使用は終わり、第2層(15)を 使い始める。
同じようにして、第3層(16)まで進める。
(ロ)第3層(16)が満杯になれば、第1層(14)の前蓋(4)をはずしてスコップ で全量の土を掻き出す。
掻き出した土は予備の土として、または、花壇等に供する。
空になった第1層(14)は最初に戻り前記イを繰り返す。
(ハ)水分の多い生ごみには、乾燥した雑草や枯葉等の同時投入が有効である。
それとは逆に、枯葉、枯れ草だけのときは適度に散水してから土を重ねる。
(ニ)水分と共に、温度も重要な条件である。
冬の温度低下は土壌動物の活動が鈍るため、容器保温のためのカバーや、ビニールハ ウス等の利用は効果を増す。
(ホ)容器下部より鼠等の侵入がある場合は、網や石など水分の透過する材料で防止措置 を施し、本容器を設置する。
【実施例1】
【0009】
(イ)図2の実施の形態は、庭先等で生ごみと併せ野菜屑や落ち葉を入れることで堆肥作 りにもなる。
さらに、季節や用途により該容器の増減は有効な使い方となる。
(ロ)図3の実施の形態は、敷地内段差のある所で使えるが、狭い場所での立体的な使い 方でもある。
上段に入れた土と生ごみを下段に移動させ、本発明の目的と同じ効果を得る。
先ず、第2枠(21)のストッパーをセットし、第1枠(20)から土、生ごみを 入れ始め、満杯になり次第、第2枠(21)のストッパーを抜いて、第3枠(22) のストッパーで止める。
空いた第1枠(20)に再び土、生ごみを入れ、満杯になれば第3枠(22)のト ッパーを先に抜き、第4枠(23)に落とし、続いて第2枠(21)のストッパーを 抜き第3枠(22)のストッパー上に落とす。
上記作業を繰り返し、第1枠(20)から第4枠(23)まで満杯になる頃、取出 し前蓋(32)をはずして土を掻き出す。
重ねた容器の安定を保つため、3辺、または、4辺の外側に適宜、棒を立てる。
【実施例2】
【0010】
(イ)大型の建築物(公共の建物やマンション等)に付随する道路、または、路地、或い は公園の敷地内は樹木が多く、清掃の対象は枯葉や枯枝が中心である。
小石や砂、道路端の土は塵取りへの混入が避けられないため、焼却灰への移行が考 えられる。
これを防ぐには、発生現場の要所に本容器を設置し、土砂の混じりがちな枯葉等( 枯枝は細かく切り)は設置した容器にいれて土を重ね、水分を補いながら保持する。
これにより外部への持ち出しを減らすことができる。
こうした容器の管理と活用で、ごみの減量と共に焼却炉の負担軽減や、輸送コスト の削減を図れる。
(ロ)台所で発生する割り箸や用済みの生け花、屋外で発生する少量の剪定枝や枯れ枝は 、表面積を大きく(チップ状に)して生ごみと共に容器に入れる。
さらに、枯葉、庭の雑草、室内から出る使用済みティッシュペーパーなど、廃棄し ようとするあらゆる有機物を容器の収容範囲内で土と重ねることで、土壌中の生物の ご馳走(非特許文献〈2〉)となり、ごみ減量に役立てることができる。
(ハ)アサリやシジミ、鶏の骨も、生ごみに混ぜると容器内の土の中に隙間ができ、土壌 動物が活動しやすい場となる。
掻き出したあと汚れの取れた殻類は、選別して砕き土に戻す。
(ニ)魚の内臓はハエを呼びやすいので熱処理をし、臭いを抑えてから他の生ごみと一緒 にするか、新聞紙に包み容器内で土を覆う。
万が一、ハエの産卵の場合は、覆った士の表面に光沢の動くものが表面に出るので 生石灰を撒きうじを殺す。
(ホ)竹の子の皮やとうもろこしの芯は、約2センチメートルに輪切りにし、表面積を大 きくする。
細かい剪定枝は、5〜10センチメートルに切り、他の生ごみと共に容器に入れる 。
【実施例3】
【0011】
(イ)二酸化炭素抑制に、焼却炉依存から土の持つ力に委ねることが望まれる。
都市部で排出される雑草、破砕した剪定枝、電動生ごみ処理機残渣、枯葉等有機廃 棄物は、圃場を耕起しながら前記処理物を斜めに敷き、土でサンドイッチ状(図5) に挟み処理を促して耕作に供する。
(ロ)遊休の焼却炉や工場建物を使い、大型回転筒を傾斜させて並列し、都市部で排出さ れる雑草、破砕した剪定枝、電動生ごみ処理機残渣、枯葉等有機廃棄物を回転筒に土 と混合して投入する。
投入から排出まで2カ月程度の緩い回転速度と筒内上部空間を保ち、土壌生物が活 動できる傾斜度とする。
並列した回転筒の下部排出部と上部投入口はベルトコンベアでつなぎ土の循環を行 なう。
(ハ)産業廃棄物(下水汚泥・畜糞)と一般廃棄物、および、EM醗酵液(非特許文献3 )を下記のようにまぜて混合産業廃棄物(33)とし、耕作機械により圃場の土(3 4)で挟み(図5)処理を促して耕作に供する。
「脱水前下水汚泥」±「畜糞:下水汚泥に不足するカリを補う」+「一般廃棄物:枯 葉や剪定枝(含間伐材)チップ」+「EM醗酵液:臭気の抑制と土壌改良を兼ねる」
(ニ)上記ロとハの手法を結合させ、焼却に頼らない土による廃棄物の処理を促進する。
【符号の説明】
【0012】
1 容器
2 上蓋
3 上蓋つまみ
4 第1前蓋
5 第2前蓋
6 第3前蓋
7 前蓋上部支え板
8 前蓋下部支え板
9 前蓋背面
10 前蓋取っ手
11a 前蓋受部
11b 前蓋受部
12 容器下部固定板
13 ヒンジ部
14 第1層
15 第2層
16 第3層
17 上蓋取っ手
18 前蓋つまみ
19a 前蓋ガイド
19b 前蓋ガイド
20 第1枠
21 第2枠
22 第3枠
23 第4枠
24 第2・3枠
25 ストッパー支え棒
26 ジョイント部
27 切かき部
28 ストッパー
29 通気孔
30 ストッパーつまみ
31 ストッパー挿入部
32 取出し前蓋
33 混合産業廃棄物
34 土
35 耕起斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面のない容器(1)の上部開口部に上蓋(2)を設け、該容器の下部に着脱できる取出し口を設けたことを特徴とする土を使う生ごごみ処理容器。
【請求項2】
底面のない横長の容器(1)を複数層に区切り、該容器各層の上部開口部に上蓋(2)を設けると共に、前面の下部に前蓋(4)前蓋(5)前蓋(6)を設けたことを特徴とする請求項1記載の土を使う生ごみ処理容器。
【請求項3】
複数の枠を重ねた容器(1)の最上部に上蓋(2)を設け、中間の枠内にストッパー(28)を設け、最下部に取出し前蓋(32)を設けたことを特徴とする請求項1記載の土を使う生ごみ処理容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−125748(P2012−125748A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294644(P2010−294644)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(397078136)
【Fターム(参考)】