土中水分水位検出装置及びこれを用いた斜面崩壊予知システム
【課題】 斜面の土中水分量と地下水位を測定することで斜面崩壊の発生を予知する斜面崩壊予知システムにおいて、設置作業やメンテナンス作業の負担を増すことなく、単一の装置で土中水分量と地下水位の両方を測定可能とする手段を提供する。
【解決手段】 本発明に係る土中水分水位検出装置3は、一端が密封され他端が開口された管状の部材で土中21に埋め込まれる超音波導波管6、及び超音波導波管6の密封側に設けられる超音波送受信素子を有する検出器5と、反射波32の最大振幅に基づいて土中水分量を検出する一方、超音波30の送信から反射波32の受信までに要する伝播時間に基づいて地下水位面33の位置を検出する制御部25と、を備えるものである。また、斜面崩壊予知システム1は、土中水分水位検出装置3が斜面2に設置され、制御部25が、反射波32の最大振幅及び伝播時間に基づいて、斜面2が崩壊する旨の警報を発するものである。
【解決手段】 本発明に係る土中水分水位検出装置3は、一端が密封され他端が開口された管状の部材で土中21に埋め込まれる超音波導波管6、及び超音波導波管6の密封側に設けられる超音波送受信素子を有する検出器5と、反射波32の最大振幅に基づいて土中水分量を検出する一方、超音波30の送信から反射波32の受信までに要する伝播時間に基づいて地下水位面33の位置を検出する制御部25と、を備えるものである。また、斜面崩壊予知システム1は、土中水分水位検出装置3が斜面2に設置され、制御部25が、反射波32の最大振幅及び伝播時間に基づいて、斜面2が崩壊する旨の警報を発するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の装置で土中水分量と地下水位の両方を検出可能な土中水分水位検出装置、及びこれを用いて検出した土中水分量と地下水位に基づいて斜面の崩壊を予知する斜面崩壊予知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年我が国では、梅雨期や台風襲来期の降雨によって斜面崩壊が多発しており、その被害を最小限に抑えるべく、斜面の崩壊危険度を評価して斜面崩壊の発生を予知する斜面崩壊予知システムが提唱されている。ここで、降雨による斜面崩壊の主たる発生原因としては、土中水分量の増加に伴って土の自重が増すこと、及び地下水位面の上昇に伴って斜面のせん断強度が低下することの2点が挙げられる。従って、斜面の崩壊危険度を評価する際には、土中水分量と地下水位の2つが有効な指標となる。
【0003】
土中水分量を測定する装置としては、土中の間隙水圧を計測するテンシオメータ(特許文献1参照)が従来用いられている。ここで、間隙水圧とは、土を土粒子と間隙流体とに分けた時、間隙流体である水の圧力のことを意味する。そして、特許文献1の図1に示されるように、テンシオメータの内部には、脱気水すなわち溶解した空気を人工的に除去した水が充填される。
【0004】
また、土中水分量を測定する他の装置としては、土中の誘電率変化を計測する誘電率土中水分計(特許文献2参照)も従来用いられている。この誘電率土中水分計は、例えば特許文献2の図1に示されるように、高周波信号を発する高周波発信器1と、発せられた高周波信号を伝達するケーブル30と、入力された高周波信号を共振させて出力するキャピティ共振器2と、出力された高周波信号を伝達するケーブル38と、出力された高周波信号を受信して共振点を検出する検出器3とから構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−58202号公報
【特許文献2】特開平09−243578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、テンシオメータは、上述のように内部に脱気水が充填される構造であるため、夏季には脱気水が乾燥した土に多量に吸収されやすく、また冬季には脱気水が凍結しやすいという特性を有している。従って、テンシオメータによる間隙水圧の正確な計測を年間を通じて行うためには、抜け出した脱気水を補充する或いは凍結した脱気水を解凍するといったメンテナンスが必要であり、斜面上での危険なメンテナンス作業が定期的に要求されるという問題がある。
【0007】
一方、誘電率水分計は、テンシオメータのように頻繁なメンテナンス作業は要求されない。しかし、特許文献2の図1に示さされるように、誘電率水分計の設置に際しては、設置しようとする深さまで斜面を掘削してキャピティ共振器2を埋め込んだ後、ケーブル30やケーブル38を地上まで引き出して高周波発信器1や検出器3と接続する必要があり、設置作業が面倒という問題がある。また、誘電率水分計は、土中の水分が塩分を含んでいる場合、その影響によって誘電率を正確に測定することができないという問題もある。
【0008】
また、テンシオメータや誘電率水分計は、土中水分量を測定することはできるが、斜面の危険度を評価する上でもう1つの重要な指標である地下水位を測定することはできない。従って、斜面崩壊予知システムを構築するためには、テンシオメータや誘電率水分計とは別に、地下水位を測定するための装置も斜面に設置する必要があり、装置数が多くなる分、その設置作業が面倒であるとともにコストアップにもつながるという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、斜面の土中水分量と地下水位を検出することで斜面崩壊の発生を予知する斜面崩壊予知システムにおいて、設置作業やメンテナンス作業の負担を増すことなく、単一の装置で土中水分量と地下水位の両方を検出可能とする手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る土中水分水位検出装置は、一端が密封され他端が開口された管状の部材であって、開口側を下にして内部に土が入らないように土中に埋め込まれる超音波導波管、該超音波導波管の内部における密封側に設けられ、開口側に向けて超音波を送信する超音波送信素子、及び前記超音波導波管の内部における密封側に設けられ、前記超音波送信素子から送信された超音波のうち、開口側端部の土表面で反射して或いは前記超音波導波管の内部に浸入した地下水位面で反射して戻ってきた反射波を受信する超音波受信素子、を有する検出器と、前記超音波導波管の開口側端部付近での土中水分量を、前記超音波受信素子が受信した反射波の最大振幅に基づいて検出する一方、土中の地下水位の位置を、前記超音波送信素子が超音波を送信してから前記超音波受信素子がその反射波を受信するまでに要する伝播時間に基づいて検出する制御部と、を備えるものである。
【0011】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置は、両端が密封された管状の部材であって、前記検出器の超音波導波管と略平行に同じ深さ位置まで土中に埋め込まれる超音波導波管、該超音波導波管の内部における上端側に設けられ、下端側に向けて超音波を送信する超音波送信素子、及び前記超音波導波管の内部における上端側に設けられ、前記超音波送信素子から送信された超音波のうち、前記超音波導波管の内部底面に予め敷き詰められた性状が既知である土の表面で反射して戻ってきた反射波を受信する超音波受信素子、を有する温度補正器を更に備え、前記制御部が、前記検出器で検出した前記反射波の最大振幅及び前記伝播時間を、前記温度補正器で検出した前記反射波の最大振幅及び前記伝播時間により温度補正するものである。
【0012】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置は、前記温度補正器が、前記検出器と一体的に構成されたものである。
【0013】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムは、前記検出器の超音波導波管に、内部の空気を外部へ排出するための空気排出孔が形成されたものである。
【0014】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムは、前記空気排出孔が、前記検出器の超音波導波管の外部から内部へ向かって上向きに傾斜するように形成されたものである。
【0015】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムは、土中水分水位検出装置が斜面に設置され、前記制御部が、前記反射波の最大振幅及び前記伝播時間の検出結果に基づいて、前記斜面が崩壊する危険性が高い旨の警報を発するものである。
【0016】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムは、前記土中水分水位検出装置が1個設置され、前記制御部が、前記反射波の最大振幅が所定値以上に達した状態が所定時間以上連続して継続した時に、前記斜面の崩壊危険性が危険度レベル1に達したと判定した後、前記伝播時間が減少し始めた時に、前記斜面の崩壊危険性が危険度レベル2に上がったと判定し、前記危険度レベル1が継続した時間と前記危険度レベル2に上がってからの経過時間との関係に基づいて、前記警報を発するものである。
【0017】
前記土中水分水位検出装置が複数個設置され、前記制御部が、前記反射波の最大振幅が所定値以上に達した状態が所定時間以上連続して継続した前記土中水分水位検出装置の数がN1個に達した時に、前記斜面の崩壊危険性が全体系危険度レベル1になったと判定し、その後、前記N1個のうち前記伝播時間が減少し始めた前記土中水分水位検出装置の数がN2個に達した時に、前記斜面の崩壊危険性が全体系危険度レベル1から全体系危険度レベル2に上がったと判定し、前記警報を発するものである。
【0018】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムは、前記検出器の超音波導波管が、その密封側端部を地表より上に露出させるようにして、土中に埋め込まれたものである。
【0019】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムは、前記検出器の超音波導波管が、その全体を地表より下に位置させるようにして、土中に埋め込まれたものである。
【0020】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムは、前記検出器の超音波導波管の開口側端部に、粒径分布が既知である標準土が敷き詰められたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る土中水分水位検出装置によれば、前記制御部が、超音波導波管の開口側端部付近での土中水分量を、超音波受信素子が受信した反射波の最大振幅に基づいて検出する一方、土中の地下水位の位置を、超音波送信素子が超音波を送信してから前記超音波受信素子がその反射波を受信するまでに要する伝播時間に基づいて検出するので、単一の土中水分水位検出装置によって土中水分量と地下水位の両方を検出することができる。従って、土中水分量を検出する装置と地下水位を検出する装置とを別々に設置する場合と比較して、装置設置作業の簡略化及びコストダウンを図ることができる。
【0022】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置によれば、検出器の超音波送信素子や超音波受信素子は送信特性や受信特性に大きな温度依存性を有しているが、検出器で検出した反射波の最大振幅や超音波の伝播時間が温度補正器によって補正されるので、温度変化の激しい環境下に土中水分水位検出装置を設置する場合でも、土中水分量や地下水位を正確に検出することができる。
【0023】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置によれば、温度補正器が検出器と一体的に構成されるので、検出器と温度補正器とを所定距離だけ離して設置する場合と比較して、検出器と温度補正器との間で設置場所の違いによる温度差が生じにくいので、より正確に検出器の温度補正を行うことができる。また、検出器と温度補正器とを一体構成した方が、検出器と温度補正器とを別々に土中に埋め込むのと比較して、設置作業を簡略化することができる。
【0024】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置によれば、検出器の超音波導波管に空気排出孔が形成されたことにより、地下水位面が超音波導波管の内部に浸入すると、押し出された超音波導波管の内部の空気が空気排出孔を通って外部へ排出される。これにより、超音波導波管の内部でも外部と同様に地下水位面が上昇するので、超音波導波管の内部において地下水位の正確な検出が可能となる。
【0025】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置によれば、空気排出孔が超音波導波管の外部から内部へ向かって上向きに傾斜するように形成されたことにより、降雨時に空気排出孔を通って超音波導波管の外部から内部へ水が浸入しにくく、地下水位を正確に検出することができる。
【0026】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムによれば、土中水分水位検出装置が斜面に設置され、制御部が、斜面が崩壊する危険性が高い旨の警報を発するので、システム使用者は、斜面崩壊の発生を予知して事前に避難等の措置を取ることができる。また、単一の土中水分水位検出装置によって土中水分量と地下水位の両方を検出することができるので、土中水分量を検出する装置と地下水位を検出する装置とを別々に斜面に設置する場合と比較して、装置設置作業の簡略化及びコストダウンを図ることができる。また、斜面崩壊が発生する恐れの低い場合、すなわち土が乾燥状態や含水状態の時は、反射波の最大振幅や超音波の伝播時間の様子を常時監視することにより、システムが正常に動作していることを確認することができる。
【0027】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムによれば、土中水分水位検出装置が1個設置され、制御部が、斜面の崩壊危険性について危険度レベル1が継続した時間と危険度レベル2に上がってからの経過時間との関係に基づいて、警報を発するので、制御の簡略化及びコストダウンを図ることができる。
【0028】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムによれば、土中水分水位検出装置が複数個設置され、制御部が、斜面の崩壊危険性が全体系危険度レベル1になったと判定した後、全体系危険度レベル2に上がったと判定した時点で警報を発するので、ある1つの検出器に生じた誤作動等によって警報を発することがなく、検知精度を向上させることができる。
【0029】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムによれば、検出器の超音波導波管が、その密封側端部を地表より上に露出させるようにして土中に埋め込まれるので、検出器の超音波送信素子や超音波受信素子の配線を超音波導波管の密封側端部から外部へ引き出す場合に、配線も地表より上に露出した状態となるので、この配線を制御部等に接続する作業を行い易い。
【0030】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムによれば、検出器の超音波導波管が、その全体を地表より下に位置させるようにして、土中に埋め込まれるので、超音波導波管の長さによらず、地表から深い位置に検出器を設置することができる。
【0031】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムによれば、検出器の超音波導波管の開口側端部に標準土が敷き詰められるので、開口側端部における超音波の反射状態が安定し、超音波受信素子で十分な強度の反射波を受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施例における斜面崩壊予知システム1の構成を示す模式図。
【図2】土中水分水位検出装置3を構成する検出器5を示す概略縦断面図。
【図3】検出器5の変形例を示す概略縦断面図。
【図4】検出器5の変形例の効果を説明するための説明図。
【図5】検出器5の他の設置例を示す概略縦断面図。
【図6】検出器5の他の設置例を示す概略縦断面図。
【図7】土中水分水位検出装置3を構成する測定器6の構成を示すブロック図。
【図8】地下水位面33の上昇を説明するための概略縦断面図。
【図9】土の状態と反射波32の波形との関係を示す図。
【図10】雨が降り始めてからの経過時間と反射波32の最大振幅との関係の一例、及び当該経過時間と超音波30の伝播時間との関係の一例を示した図。
【図11】第2実施例に係る斜面崩壊予知システム40の構成を示す模式図。
【図12】図11の検出器5及び温度補正器43を拡大した部分拡大縦断面図。
【図13】検出器5及び温度補正器43の変形例を示す概略縦断面図。
【図14】第3実施例に係る斜面崩壊予知システム50の構成を示す模式図。
【図15】測定器53の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
まず、本発明の第1実施例に係る斜面崩壊予知システムについて説明する。図1は、第1実施例に係る斜面崩壊予知システム1の構成を示す模式図である。斜面崩壊予知システム1は、対象となる斜面2に設置されて土中水分量及び地下水位を検出する土中水分水位検出装置3と、この土中水分水位検出装置3の検出結果に基づいて斜面崩壊が発生する危険性が高い状態である旨の警報を発する警報装置4と、を備えるものである。尚、土中水分水位検出装置3を設置する斜面2は、山間部等の自然斜面はもちろん、人工的に造成された法面であってもよい。
【0034】
土中水分水位検出装置3は、図1に示すように、斜面2に埋め込んで設置された1個の検出器5と、この検出器5と電気的に接続された測定器6と、を有している。一方、警報装置4は、システム使用者の視覚,聴覚,嗅覚等に訴えることで危険な状態を認識させ得る手段であって、例えば、視覚に訴えるランプや液晶表示画面、聴覚に訴えるスピーカ等を用いることが可能である。
【0035】
図2は、土中水分水位検出装置3を構成する検出器5を示す概略縦断面図である。検出器5は、中空の超音波導波管6の内部における一端側に、ダンパー材7を介して超音波トランスデューサ8(超音波送信素子及び超音波受信素子)が設けられてなるものである。ここで、超音波導波管6は、両端が開口された管状の導波管本体9に、その一端側開口を塞いで蓋部材10を取り付けたものである。ここで、導波管本体9は、長さが30cm〜2m程度の真ちゅう製のパイプであって、その内径が略18mm、外径が略22mmである。そして、この導波管本体9の内周面は滑らかに形成され、内部を伝播する超音波がぶつかった時に散乱することなく一定方向に反射しやすくなっている。また、導波管本体9の前記一端側には、外部から内部へ向かって上向きに傾斜するようにして、超音波導波管6の内部の空気を外部へ排出するための空気排出孔34が貫通形成されている。尚、図2に詳細は示さないが、この空気排出孔34は導波管本体9の周方向に沿って複数個形成されており、いずれかの空気排出孔34に土等が詰まっても、他の空気排出孔34から空気が排出されるようになっている。一方、蓋部材10は、円柱形状を有する真ちゅう製の部材であって、その径は導波管本体9の外径と同程度に形成されている。そして、この蓋部材10には、その中心部を貫通して配線引き出し孔11が形成されるとともに、その内側面を覆ってアルミ板12が貼り付けられている。これにより、超音波導波管6の一端部は、配線引き出し孔11の存在に拘わらず、アルミ板12によって密封された状態となっている。尚、導波管本体9の材質,断面形状,及び長さ等は、本実施例に限定されず適宜設計変更が可能であり、それに合わせて蓋部材10やアルミ板12も設計変更が可能である。
【0036】
他方、検出器5を構成する超音波トランスデューサ8は、圧電効果によって電気信号と機械的振動とをエネルギー変換するデバイスであって、図2に示すように、超音波を送信または受信する送受信兼用素子部13と、この素子部から引き出された配線14とを有している。送受信兼用素子部13は、図に詳細は示さないが、半導体基板の上に超音波送信と超音波受信とを兼用する素子が配置されたものであって、ある周波数の電気信号を与えると、その周波数の超音波を超音波送信素子が出力する一方、ある周波数の超音波を超音波受信素子が受信すると、その周波数の電気信号を出力する。このように構成される超音波トランスデューサ8は、図2に示すように、その送受信兼用素子部13が、蓋部材10の内側面を覆うアルミ板12に対してダンパー材7を介して固定されている。このダンパー材7は、例えばシリコーンゴムからなるものであって、超音波トランスデューサ8の振動が超音波導波管6に伝達するのを防止し、或いは超音波導波管6の振動が超音波トランスデューサ8に伝達するのを防止するものである。そして、送受信兼用素子部13から伸びる配線14が、ダンパー材7とアルミ板12とを挿通され、蓋部材10の配線引き出し孔11を通して超音波導波管6の外部へと引き出されている。
【0037】
尚、本実施例では、超音波導波管6への取り付けスペース等を考慮して、送信機能と受信機能の両方を備えた1個の超音波トランスデューサ8を用いた。しかし、これに限られず、例えば図3に示すように、超音波導波管15の内部における一端側に、超音波送信素子(不図示)のみが配置された送信専用超音波トランスデューサ16と、超音波受信素子(不図示)のみが配置された受信専用超音波トランスデューサ17とを横並びに設けてもよい。この場合、送信専用超音波トランスデューサ16から超音波を送信し、その反射波を受信専用超音波トランスデューサ17で受信する。このように送信専用超音波トランスデューサ16と受信専用超音波トランスデューサ17とを別々に設けた場合、土中水分量や地下水位の検出が正確に行えるという利点がある。すなわち、送信専用と受信専用の超音波トランスデューサ16,17を別々に設けた場合、図4A及び図4Bに示すように、送信した超音波の波形(送信波形18)と受信した反射波の波形(受信波形19)とが重なり合うことなく別々に検出されるので、反射波の最大振幅や超音波の伝播時間を正確に測定することができる。これに対し、送受信兼用の超音波トランスデューサ8を使用する場合、送信から受信までの時間が短いと、受信波形19が原点寄りに検出されるので、図4Cに示すように、送信波形18と大きく重なってしまう。これにより、送信波形18と受信波形19との識別が困難になり、後述するように反射波の最大振幅や超音波の伝播時間を測定するのが難しい。
【0038】
このように構成される検出器5は、図2に示すように、その超音波導波管6の開口側端部20を下にして、土中21に埋め込まれた状態で斜面2に設置される。ここで、超音波導波管6は、その内部の空気を介して超音波を伝播させるものであるため、検出器5を土中21へ埋め込む際には、超音波導波管6の内部に土が入り込まないようにする必要がある。本実施例では、検出器5を土中21に埋め込む手順として、図に詳細は示さないが、検出器5の設置深さを考慮して、斜面2に設置用穴を予め掘削しておき、この設置用穴に検出器5を配置して掘り出した土を埋め戻すことによって、超音波導波管6を土中21に埋め込む。そして、超音波導波管6から蓋部材10を取り外し、長尺な棒状部材を導波管本体9の上端開口から差し込むことにより、導波管本体9の内部に入り込んだ土を下端開口から外部へと押し出す。そして、棒状部材を導波管本体9から引き抜いた後、蓋部材10を再度取り付ける。このような手順により、内部に土が入り込まないようにして、超音波導波管6を土中21に埋め込むことができる。
【0039】
また、検出器5を土中21に埋め込む際には、図2に示すように、超音波導波管6の上端部すなわち密封側端部23を地表22より上に若干露出させた状態にしておく。このようにすれば、配線引き出し孔11から引き出された配線14も地表22より上に露出した状態となるので、この配線14を図1に示す測定器6に接続する際に、土中21に埋まった状態の配線14を地上まで引き出してから測定器6に接続する場合と比較すると、接続作業が行い易いという利点がある。更に、導波管本体9に形成された空気排出孔34も地表22より上に露出させた状態にしておけば、超音波導波管6の内部の空気が外部に排出されやすく好適である。
【0040】
尚、検出器5を土中21に埋め込む際には、図5に示すように、超音波導波管6の密閉側端部23も地表22より下に位置させるようにして、超音波導波管6の全体を土中21に埋め込んでもよい。このようにすれば、超音波導波管6の長さによらず、地表22から深い位置に検出器5を設置することができるという利点がある。
【0041】
また、検出器5を土中21に埋め込む際には、図6に示すように、前記設置用穴の底部に標準土24を敷き詰め、超音波導波管6の下端開口を標準土24に密着させるようにして検出器5を配置するのが好適である。この標準土24とは、土粒子の粒径分布が既知である土、例えば粒径がほぼ一定であるような土を意味する。このように標準土24を敷き詰めるのは、超音波の反射状態を安定させるためである。すなわち、後述するように、超音波トランスデューサ8は、自らが送信した超音波のうち超音波導波管6の下端部で反射して戻ってきた反射波を受信する。ここで、超音波導波管6の下端開口部に位置するのが粒径が不規則であるような土塊であると、超音波の反射状態が安定せず、超音波トランスデューサ8が十分な強度の反射波を受信することができない。これに対し、標準土24を敷き詰めておくと、超音波の反射状態が安定するので、超音波トランスデューサ8で十分な強度の反射波を受信することができる。
【0042】
一方、図7は、土中水分水位検出装置3を構成する測定器6の構成を示すブロック図である。測定器6は、各部の動作を制御する制御部25に対して、超音波送信回路26と、超音波受信回路27と、信号処理回路28とがシステムバス29を介して接続されたものである。ここで、超音波送信回路26は、図2に示す超音波トランスデューサ8に対して所定周波数の電気信号を付与するものである。一方、超音波受信回路27は、超音波トランスデューサ8から所定周波数の電気信号を受け取って信号処理回路28へ出力するものである。また、信号処理回路28は、超音波受信回路27から入力された電気信号に基づいて土中水分量や地下水位を検出するものである。
【0043】
次に、土中水分水位検出装置3による土中水分量の検出、及び地下水位の検出について説明する。前記制御部25の制御を受け、測定器6の超音波送信回路26から検出器5の超音波トランスデューサ8に対して所定周波数の電気信号が付与されると、図2に示すように、超音波トランスデューサ8から所定周波数の超音波30が送信される。この超音波30は、超音波導波管6の内部を下方に向かって伝播し、超音波導波管6の下端に位置する土表面31にぶつかって反射される。この反射波32は、超音波導波管6の内部を上方に向かって伝播し、超音波トランスデューサ8によって受信される。そうすると、超音波トランスデューサ8が所定周波数の電気信号を出力し、測定器6の超音波受信回路27がこの電気信号を受け取って信号処理回路28へ出力する。そして、信号処理回路28が、制御部25による制御の下、入力された電気信号に基づいて、土中水分量及び地下水位をそれぞれ検出する。
【0044】
ここで、信号処理回路28は、斜面2の土中水分量を、反射波32の最大振幅に基づいて検出する。より詳細に説明すると、土は土粒子部分と間隙部分とから構成されるが、土が乾燥状態の時は間隙部分の多くが空気で占められる。従って、このような土に超音波30がぶつかると、土粒子部分にぶつかった超音波30は反射波32として戻ってくるが、間隙部分にぶつかった超音波30は当該部分を透過することによって反射波32としては戻ってこない。これにより、反射波32の最大振幅は小さくなる。一方、土が水分を多く含んだ状態の時は間隙部分の多くが水で占められる。従って、このような土に超音波30がぶつかると、土粒子部分にぶつかった超音波30のみならず間隙部分にぶつかった超音波30も反射波32として戻ってくる。これにより、反射波32の最大振幅が大きくなる。以上より、反射波32の最大振幅を検出することによって、土中水分量を検出することができる。
【0045】
一方、信号処理回路28は、斜面2の地下水位を、超音波30の伝播時間すなわち超音波トランスデューサ8が超音波30を送信してからその反射波32を受信するまでの時間に基づいて検出する。より詳細に説明すると、図2に示すように、地下水位面33が土表面31より低い位置にある間は、超音波トランスデューサ8から送信された超音波30は、前述のように土表面31によって反射される。しかし、降雨等によって地下水位面33が上昇し、図8に示すように土表面31を越えて高くなると、超音波トランスデューサ8から送信された超音波30は、土表面31ではなく地下水位面33によって反射される。従って、超音波導波管6の内部を地下水位面33が上昇するに伴って、超音波トランスデューサ8から地下水位面33までの距離が短くなるので、超音波30の伝播時間が徐々に短くなる。以上より、超音波30の伝播時間を検出することによって、地下水位を検出することができる。尚、地下水位面33が超音波導波管6の内部に浸入すると、押し出された超音波導波管6の内部の空気が前記空気排出孔34を通って外部へ排出される。これにより、超音波導波管6の内部でも外部と同様に地下水位面33が上昇するので、超音波導波管6の内部において地下水位を正確に検出することができる。また、空気排出孔34は前述のように超音波導波管6の外部から内部へ向かって上向きに傾斜しているので、降雨時に空気排出孔34を通って超音波導波管6の外部から内部へ水が浸入しにくく、地下水位面33の正確な検出が可能となっている。
【0046】
ここで、図9は、土の状態と反射波32の波形との関係を示す図であって、図9Aは土が乾燥状態での反射波32の波形の一例を、図9Bは土が含水状態での反射波32の波形の一例を、図9Cは土が浸水状態での反射波32の波形の一例をそれぞれ示している。尚、本明細書において「乾燥状態」とは降雨等がなく土が少量の水分しか含んでいない状態を、「含水状態」とは降雨等によって土が一定量以上の水分を含んでいるが地下水位面33は土表面31より低い位置にある状態を、「浸水状態」とは地下水位面33が土表面31を超えて高い位置にある状態を、それぞれ意味している。
【0047】
まず、この図9を用いて超音波30の伝播時間について説明すると、図9Aの乾燥状態と図9Bの含水状態では、時刻T0で送信を開始した超音波30が時刻T2で反射波32として戻ってきており、超音波30の伝播時間は(T2−T0)で同じである。一方、図9Cの浸水状態では、時刻T0で送信を開始した超音波30が時刻T2より早い時刻T1で反射波32として戻ってきており、超音波30の伝播時間は(T1−T0)となって、乾燥状態や含水状態の伝播時間より短くなっている。これは、上述のように、地下水位面33の上昇に伴って超音波トランスデューサ8から地下水位面33までの距離が短くなるからである。
【0048】
次に、この図9を用いて反射波32の最大振幅について説明すると、図9Bに示す含水状態における反射波32の最大振幅IBは、図9Aに示す乾燥状態における反射波32の最大振幅IAより大きい。これは、上述のように、乾燥状態では土の間隙部分を超音波30が透過するのに対し、含水状態では土の間隙部分でも超音波30が反射するからである。一方、図9Cに示す浸水状態における反射波32の最大振幅はICは、図9Bに示す含水状態における反射波32の最大振幅I2より更に大きい。これは、地下水位面33の上昇に伴って超音波30の伝播距離が短くなるので、例えば超音波導波管6内の空気に吸収される等して伝播経路上で減衰する超音波30の量が減るためである。
【0049】
次に、本実施例に係る斜面崩壊予知システム1が、土中水分水位検出装置3の検出結果に基づいて警報を発する手順について説明する。図10は、雨が降り始めてからの経過時間と反射波32の最大振幅との関係の一例、及び当該経過時間と超音波30の伝播時間との関係の一例を示した図である。尚、図10では、反射波32の最大振幅を一点鎖線で、超音波30の伝播時間を実線でそれぞれ示している。また、図10で反射波32の最大振幅は、最初の測定時点すなわち経過時間0分における測定値を1.0とした時の比率をプロットしたものである。
【0050】
まず、図10で経過時間が0分〜約180分の区間において、反射波32の最大振幅は約1.0でほぼ一定に推移する。これは、地表22に降り注いだ雨水が土中21へと徐々に染み込んでいく間、検出器5の下端の位置では土中水分量に変化が生じず、土の間隙部分で反射される超音波30の量が一定だからである。ここで、測定器6の制御部25は、反射波32の最大振幅が予め定めた閾値Sに達しない間は、土は乾燥状態であると判断する。一方、この乾燥状態の区間では、超音波30の伝播時間も約2.7でほぼ一定に推移する。これは、地下水位面33が未だ土表面31より低い位置にあり、超音波トランスデューサ8から送信された超音波30は常に土表面31で反射されるので、超音波30の伝播距離が一定だからである。
【0051】
その後、図10で経過時間が約180分を過ぎると、反射波32の最大振幅が増加し始める。これは、前述のように土の間隙部分が徐々に水分によって占められるに連れて、間隙部分で反射される超音波30の量が徐々に増えるからである。そして、測定器6の制御部25は、反射波32の最大振幅が予め定めた閾値Sに達すると、土が乾燥状態から含水状態へと移行したと判断する。一方、超音波30の伝播時間は、土が乾燥状態から含水状態へと移行しても、乾燥状態の区間と同様に約2.7で一定に推移し続ける。これは、地下水位面33が依然として図2に示す土表面31より低い位置にあるからである。
【0052】
その後、反射波32の最大振幅は、図10の経過時間約220分で約1.4に達するまで増加し続け、その後も僅かずつ増加する。ここで、制御部25は、斜面崩壊が発生する恐れの低い乾燥状態や含水状態においては、反射波32の最大振幅が増加する様子、及び超音波30の伝播時間が一定に推移する様子を常時監視することにより、斜面崩壊予知システム1が正常に動作していることを確認することができる。
【0053】
その後、図10で経過時間が約500分を過ぎると、超音波30の伝播時間が減少し始める。これは、地下水位面33が図8に示す土表面31を超えて高くなり、超音波トランスデューサ8から送信された超音波30が土表面31ではなく地下水位面33で反射されるようになるので、地下水位面33の上昇に伴って超音波30の伝播距離が徐々に短くなるからである。ここで、測定器6の制御部25は、超音波30の伝播時間が減少し始めた時点をもって、土が含水状態から浸水状態へと移行したと判断する。そして、制御部25は、この浸水状態への移行をもって、検出器5を設置した斜面2が崩壊する恐れがあると判断し、前記警報装置4を制御することにより、システム使用者に対して斜面崩壊の危険性がある旨を報知するための警報を発する。これにより、システム使用者は、斜面崩壊の発生を予知して事前に避難等の措置を取ることができる。
【0054】
一方、浸水状態への移行とともに、反射波32の最大振幅は移行前より増加し始める。これは、地下水位面33が上昇して伝播距離が短くなると、経路上での減衰量が減少するからである。
【0055】
その後、図10で経過時間が約560分に達するまで、超音波30の伝播時間は減少し続ける一方、反射波32の最大振幅は増加し続ける。そして、それ以降は、超音波30の伝播時間及び反射波32の最大振幅を共に検出しなくなる。これは、地下水位面33が上昇して超音波トランスデューサ8の位置の近くに到達すると、超音波トランスデューサ8が反射波32を受信しなくなるからである。尚、超音波30の伝播時間及び反射波32の最大振幅を共に検出しなくなった後も、土の浸水状態は継続するものとする。
【0056】
尚、本実施例では浸水状態への移行と同時に警報を発したが、警報を発するタイミングはこれに限られず、例えば「危険度レベル」という概念を導入して決定してもよい。より詳細に説明すると、制御部25は、含水状態のスタート時点から経過時間計測を行い、含水状態が連続して予め定めた時間t0だけ継続すると、斜面2の崩壊危険性が「危険度レベル1」になったと判定する。そして、制御部25は、斜面2が危険度レベル1になってからの経過時間計測を行う。その後、制御部25は、浸水状態への移行時点をもって斜面2の崩壊危険性が「危険度レベル2」に上がったと判定する。そして、制御部25は、斜面2が危険度レベル2になってからの経過時間t2を計測する。以上の計測に基づき、危険度レベル1が継続した時間t1、すなわち斜面2が危険度レベル1になってから危険度レベル2になるまでの継続時間t1と、危険度レベル2になってから現在までの経過時間t2との関係が、一定の関係になったと判断すると、制御部25は、警報装置4を制御して警報を発する。尚、危険度レベル1の継続時間t1と危険度レベル2の経過時間t2との関係としては、任意の関係を設定することができる。
【0057】
次に、本発明の第2実施例に係る斜面崩壊予知システム40について説明する。図11は、第2実施例に係る斜面崩壊予知システム40の構成を示す模式図である。斜面崩壊予知システム40は、対象となる斜面2に設置されて土中水分量及び地下水位を検出する土中水分水位検出装置41と、この土中水分水位検出装置41の検出結果に基づいて斜面崩壊が発生する危険性が高い状態である旨の警報を発する警報装置42と、を備えるものである。本実施例を第1実施例と比較すると、土中水分水位検出装置41の構成が異なっているが、警報装置42の構成は第1実施例の警報装置4と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0058】
土中水分水位検出装置41は、図11に示すように、斜面2に埋め込んで設置された1個の検出器5と、この検出器5に隣接した位置に同じく斜面2に埋め込んで設置された温度補正器43と、検出器5及び温度補正器43に電気的に接続された測定器6と、を有している。尚、検出器5及び測定器6は、第1実施例と同じ構成であるため、図11では図1と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0059】
図12は、図11の検出器5及び温度補正器43を拡大した部分拡大縦断面図である。温度補正器43は、検出器5を温度補正するためのものである。より詳細に説明すると、検出器5を構成する超音波トランスデューサ8は、前述のように超音波送受信を兼用する素子を有しているが、その送信特性及び受信特性には大きな温度依存性がある。従って、これらを温度変化の激しい野外で使用し、反射波32の最大振幅と超音波30の伝播時間とを検出する以上、送信特性及び受信特性を温度補正することが好適である。ここで、図12に示すように、温度補正器43は、中空の超音波導波管44の内部における一端側にダンパー材7を介して超音波トランスデューサ8が設けられてなる点では検出器5と同じ構成であるが、超音波導波管44の構成が検出器5とは異なっている。すなわち、温度補正器43の超音波導波管44は、検出器5の導波管本体9と同じ長さの導波管本体45に、その両端開口を塞いで蓋部材46がそれぞれ取り付けられたものである。また、導波管本体45には、検出器5の導波管本体9のように空気排出孔34を形成していないが、温度変化に伴う内部の気圧変動の影響を排除すべく、導波管本体45に空気排出孔34を形成してもよい。
【0060】
このように構成される温度補正器43は、超音波トランスデューサ8を設けた側の端部を上にし、検出器5と所定距離を開けて平行するようにして、検出器5と同じ深さまで土中21に埋め込んだ状態で斜面2に設置される。そして、この時、超音波導波管44の下端に位置する蓋部材46の内側面には、性状が既知である土47を若干量だけ敷き詰めておく。これにより、超音波トランスデューサ8から送信される超音波30が蓋部材46ではなく敷き詰められた土47の表面によって反射される。尚、土47としては、例えば、検出器5の土表面31に存在する土と同じ組成の土を用いてもよい。このように、温度補正器43を検出器5とほぼ同じ状態で土中21に設置することにより、検出器5と同じ温度条件下で反射波32の最大振幅や超音波30の伝播時間を検出することができる。更に、温度補正器43は、超音波導波管44の下端に取り付けられた蓋部材46の存在により、周囲の土中水分量の変化や地下水位の変化には影響を受けない。従って、この温度補正器43によれば、反射波32の最大振幅や超音波30の伝播時間を、温度変化の影響だけを受けた状態で検出することができる。
【0061】
次に、温度補正器43による検出器5の温度補正について説明する。測定器6の制御部25による制御の下、測定器6の超音波送信回路26から温度補正器43の超音波トランスデューサ8に対して所定周波数の電気信号が付与されると、図12に示すように、超音波トランスデューサ8から所定周波数の超音波30が送信される。この超音波30は、超音波導波管44の内部を下方に向かって伝播し、蓋部材46の内側面に敷き詰められた土47によって反射される。この反射波32は、超音波導波管44の内部を上方に向かって伝播し、超音波トランスデューサ8によって受信される。そうすると、超音波トランスデューサ8が所定周波数の電気信号を出力し、測定器6の超音波受信回路27がこの電気信号を受け取って信号処理回路28へ出力する。そして、信号処理回路28が、制御部25による制御の下、例えば検出器5の出力値を温度補正器43の出力値で除算することにより、検出器5の出力値を温度補正する。このようにして、反射波32の最大振幅や超音波30の伝播時間を温度補正することができる。
【0062】
尚、本実施例では温度補正器43を検出器5とは別体として設けたが、図13に示すように、温度補正器43を検出器5と一体的に設けてもよい。このように検出器5と温度補正器43とを一体構成した場合、検出器5と温度補正器43とを所定距離だけ離して設置する場合と比較して、検出器5と温度補正器43との間で設置場所の違いによる温度差が生じにくいので、より正確に検出器5の温度補正が行えるという利点がある。また、検出器5と温度補正器43とを一体構成した方が、検出器5と温度補正器43とを別々に土中21に埋め込むのと比較して、設置作業が簡略化するという利点もある。
【0063】
次に、本発明の第3実施例に係る斜面崩壊予知システム50について説明する。図14は、第3実施例に係る斜面崩壊予知システム50の構成を示す模式図である。斜面崩壊予知システム50は、対象となる斜面2に設置されて土中水分量及び地下水位を検出する土中水分水位検出装置51と、この土中水分水位検出装置51の検出結果に基づいて斜面崩壊が発生する危険性が高い状態である旨の警報を発する警報装置52とを備えるものである。本実施例を第1実施例と比較すると、土中水分水位検出装置51の構成及び警報を発する手順が異なっているが、警報装置52の構成は第1実施例の警報装置4と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0064】
土中水分水位検出装置51は、斜面2の異なる位置にそれぞれ埋め込んで設置された複数個の検出器5と、各検出器5とそれぞれ電気的に接続された測定器53と、を有している。ここで、各検出器5の構成及び設置方法は、第1実施例と同じであるため、第1実施例と同じ符号を使用し、ここでは説明を省略する。尚、第2実施例と同様に、各検出器5を温度補正するための温度補正器43を別途設けてもよい。また、本実施例では、各検出器5の長さを種々変化させてその先端が地表22から異なる深さ位置にそれぞれ達するようにしており、各検出器5で異なる深さ位置の土中水分量及び地下水位を検出している。もちろん、これに限られず、各検出器5で同じ深さ位置の土中水分量及び地下水位を検出してもよい。
【0065】
一方、図15は、測定器53の構成を示すブロック図である。測定器53は、各部の動作を制御する制御部54に対して、超音波送信回路55と、超音波受信回路56と、マルチプレクサ57と、信号処理回路58とがシステムバス59を介して接続されたものである。ここで、超音波送信回路55は、図2に示す超音波トランスデューサ8に対して所定周波数の電気信号を付与するものである。一方、超音波受信回路56は、超音波トランスデューサ8から所定周波数の電気信号を受け取って信号処理回路58へ出力するものである。また、マルチプレクサ57は、複数の検出器5から入力された電気信号を適宜切り替えながら超音波受信回路56へ出力し、或いは超音波送信回路55から入力された複数の電気信号を適宜切り替えながら検出器5へ出力するものである。また、信号処理回路58は、超音波受信回路56から入力された電気信号に基づいて土中水分量や地下水位を検出するものである。
【0066】
次に、本実施例に係る斜面崩壊予知システム50が、土中水分水位検出装置51の検出結果に基づいて警報を発する手順について説明する。尚、各検出器5について、雨が降り始めてからの経過時間と反射波32の最大振幅との関係、及び当該経過時間と超音波30の伝播時間との関係は第1実施例と同じであるため、図10を用いて説明する。
【0067】
測定器53の制御部54は、1つの斜面2に設置した例えばN個の検出器5の動向を観察し、図10に示す含水状態が連続して時間t0以上に渡って継続している検出器5が徐々に増え、その数が予め定めたN1個に達したと判断すると、斜面2の崩壊危険性が「全体系危険度レベル1」になったと判定する。その後、制御部54は各検出器5の動向を引き続き観察し、前記N1個の検出器5のうち、図10に示す浸水状態へ移行した検出器5の数が予め定めたN2個に達したと判断すると、斜面2の崩壊危険性が「全体系危険度レベル2」に上がったと判定する。
【0068】
そして、制御部54は、斜面2の崩壊危険性が全体系危険度レベル1を経て、且つ、その後に全体系危険度レベル2に上がった時点をもって、その斜面2が崩壊する恐れがあると判断し、警報装置52を制御することによりシステム使用者に対して警報を発する。このように、複数個の検出器5の検出結果に基づいて斜面2の状態を判定することにより、ある1つの検出器5に生じた誤作動等によって警報を発することがなく、検知精度を向上させることができる。
【0069】
尚、本実施例では、斜面2の崩壊危険性が全体系危険度レベル1に達した後に全体系危険度レベル2に達したことをトリガとして警報を発したが、これに限られず、斜面2の崩壊危険性が全体系危険度レベル2に達したことのみをトリガとして警報を発してもよい。この場合、制御部54は、斜面2の崩壊危険性が全体系危険度レベル1になったか否かによらず、すなわち含水状態が連続して時間t0以上に渡って継続している検出器5の数がN1個に達したか否かによらず、斜面2の崩壊危険性が全体系危険度レベル2になったことのみをもって、すなわち浸水状態へ移行した検出器5の数がN2個に達したことのみをもって、警報を発する。このように全体系危険度レベル2に達したことのみをトリガとした方が制御部54による処理は簡略化できる点で好適であるが、含水状態を経ることなくいきなり浸水状態になるという検出器5の誤動作の影響を排除できる点では、前述のように全体系危険度レベル1に達したこともトリガに加えた方が好適である。
【0070】
以上のように、本発明に係る斜面崩壊予知システムによれば、単一の土中水分水位検出装置によって土中水分量と地下水位の両方を検出することができる。従って、土中水分量を検出する装置と地下水位を検出する装置とを別々に斜面に設置する場合と比較して、装置設置作業の簡略化及びコストダウンを図ることができる。また、斜面崩壊が発生する恐れの低い場合、すなわち土が乾燥状態や含水状態の時は、反射波の最大振幅や超音波の伝播時間の様子を常時監視することにより、システムが正常に動作していることを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
尚、本斜面崩壊予知システムは、降雨による斜面崩壊の予知に用いられるだけでなく、例えば融雪水による斜面崩壊、すなわち春先の好天の日に雪が溶け出した水が土に染み込むことによって起こる斜面崩壊の予知にも用いることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 斜面崩壊予知システム
3 土中水分水位検出装置
5 検出器
6 超音波導波管
8 超音波トランスデューサ(超音波送信素子及び超音波受信素子)
20 開口側端部
21 土中
25 制御部
30 超音波
31 土表面
32 反射波
33 地下水位面
34 空気排出孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の装置で土中水分量と地下水位の両方を検出可能な土中水分水位検出装置、及びこれを用いて検出した土中水分量と地下水位に基づいて斜面の崩壊を予知する斜面崩壊予知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年我が国では、梅雨期や台風襲来期の降雨によって斜面崩壊が多発しており、その被害を最小限に抑えるべく、斜面の崩壊危険度を評価して斜面崩壊の発生を予知する斜面崩壊予知システムが提唱されている。ここで、降雨による斜面崩壊の主たる発生原因としては、土中水分量の増加に伴って土の自重が増すこと、及び地下水位面の上昇に伴って斜面のせん断強度が低下することの2点が挙げられる。従って、斜面の崩壊危険度を評価する際には、土中水分量と地下水位の2つが有効な指標となる。
【0003】
土中水分量を測定する装置としては、土中の間隙水圧を計測するテンシオメータ(特許文献1参照)が従来用いられている。ここで、間隙水圧とは、土を土粒子と間隙流体とに分けた時、間隙流体である水の圧力のことを意味する。そして、特許文献1の図1に示されるように、テンシオメータの内部には、脱気水すなわち溶解した空気を人工的に除去した水が充填される。
【0004】
また、土中水分量を測定する他の装置としては、土中の誘電率変化を計測する誘電率土中水分計(特許文献2参照)も従来用いられている。この誘電率土中水分計は、例えば特許文献2の図1に示されるように、高周波信号を発する高周波発信器1と、発せられた高周波信号を伝達するケーブル30と、入力された高周波信号を共振させて出力するキャピティ共振器2と、出力された高周波信号を伝達するケーブル38と、出力された高周波信号を受信して共振点を検出する検出器3とから構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−58202号公報
【特許文献2】特開平09−243578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、テンシオメータは、上述のように内部に脱気水が充填される構造であるため、夏季には脱気水が乾燥した土に多量に吸収されやすく、また冬季には脱気水が凍結しやすいという特性を有している。従って、テンシオメータによる間隙水圧の正確な計測を年間を通じて行うためには、抜け出した脱気水を補充する或いは凍結した脱気水を解凍するといったメンテナンスが必要であり、斜面上での危険なメンテナンス作業が定期的に要求されるという問題がある。
【0007】
一方、誘電率水分計は、テンシオメータのように頻繁なメンテナンス作業は要求されない。しかし、特許文献2の図1に示さされるように、誘電率水分計の設置に際しては、設置しようとする深さまで斜面を掘削してキャピティ共振器2を埋め込んだ後、ケーブル30やケーブル38を地上まで引き出して高周波発信器1や検出器3と接続する必要があり、設置作業が面倒という問題がある。また、誘電率水分計は、土中の水分が塩分を含んでいる場合、その影響によって誘電率を正確に測定することができないという問題もある。
【0008】
また、テンシオメータや誘電率水分計は、土中水分量を測定することはできるが、斜面の危険度を評価する上でもう1つの重要な指標である地下水位を測定することはできない。従って、斜面崩壊予知システムを構築するためには、テンシオメータや誘電率水分計とは別に、地下水位を測定するための装置も斜面に設置する必要があり、装置数が多くなる分、その設置作業が面倒であるとともにコストアップにもつながるという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、斜面の土中水分量と地下水位を検出することで斜面崩壊の発生を予知する斜面崩壊予知システムにおいて、設置作業やメンテナンス作業の負担を増すことなく、単一の装置で土中水分量と地下水位の両方を検出可能とする手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る土中水分水位検出装置は、一端が密封され他端が開口された管状の部材であって、開口側を下にして内部に土が入らないように土中に埋め込まれる超音波導波管、該超音波導波管の内部における密封側に設けられ、開口側に向けて超音波を送信する超音波送信素子、及び前記超音波導波管の内部における密封側に設けられ、前記超音波送信素子から送信された超音波のうち、開口側端部の土表面で反射して或いは前記超音波導波管の内部に浸入した地下水位面で反射して戻ってきた反射波を受信する超音波受信素子、を有する検出器と、前記超音波導波管の開口側端部付近での土中水分量を、前記超音波受信素子が受信した反射波の最大振幅に基づいて検出する一方、土中の地下水位の位置を、前記超音波送信素子が超音波を送信してから前記超音波受信素子がその反射波を受信するまでに要する伝播時間に基づいて検出する制御部と、を備えるものである。
【0011】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置は、両端が密封された管状の部材であって、前記検出器の超音波導波管と略平行に同じ深さ位置まで土中に埋め込まれる超音波導波管、該超音波導波管の内部における上端側に設けられ、下端側に向けて超音波を送信する超音波送信素子、及び前記超音波導波管の内部における上端側に設けられ、前記超音波送信素子から送信された超音波のうち、前記超音波導波管の内部底面に予め敷き詰められた性状が既知である土の表面で反射して戻ってきた反射波を受信する超音波受信素子、を有する温度補正器を更に備え、前記制御部が、前記検出器で検出した前記反射波の最大振幅及び前記伝播時間を、前記温度補正器で検出した前記反射波の最大振幅及び前記伝播時間により温度補正するものである。
【0012】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置は、前記温度補正器が、前記検出器と一体的に構成されたものである。
【0013】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムは、前記検出器の超音波導波管に、内部の空気を外部へ排出するための空気排出孔が形成されたものである。
【0014】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムは、前記空気排出孔が、前記検出器の超音波導波管の外部から内部へ向かって上向きに傾斜するように形成されたものである。
【0015】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムは、土中水分水位検出装置が斜面に設置され、前記制御部が、前記反射波の最大振幅及び前記伝播時間の検出結果に基づいて、前記斜面が崩壊する危険性が高い旨の警報を発するものである。
【0016】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムは、前記土中水分水位検出装置が1個設置され、前記制御部が、前記反射波の最大振幅が所定値以上に達した状態が所定時間以上連続して継続した時に、前記斜面の崩壊危険性が危険度レベル1に達したと判定した後、前記伝播時間が減少し始めた時に、前記斜面の崩壊危険性が危険度レベル2に上がったと判定し、前記危険度レベル1が継続した時間と前記危険度レベル2に上がってからの経過時間との関係に基づいて、前記警報を発するものである。
【0017】
前記土中水分水位検出装置が複数個設置され、前記制御部が、前記反射波の最大振幅が所定値以上に達した状態が所定時間以上連続して継続した前記土中水分水位検出装置の数がN1個に達した時に、前記斜面の崩壊危険性が全体系危険度レベル1になったと判定し、その後、前記N1個のうち前記伝播時間が減少し始めた前記土中水分水位検出装置の数がN2個に達した時に、前記斜面の崩壊危険性が全体系危険度レベル1から全体系危険度レベル2に上がったと判定し、前記警報を発するものである。
【0018】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムは、前記検出器の超音波導波管が、その密封側端部を地表より上に露出させるようにして、土中に埋め込まれたものである。
【0019】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムは、前記検出器の超音波導波管が、その全体を地表より下に位置させるようにして、土中に埋め込まれたものである。
【0020】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムは、前記検出器の超音波導波管の開口側端部に、粒径分布が既知である標準土が敷き詰められたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る土中水分水位検出装置によれば、前記制御部が、超音波導波管の開口側端部付近での土中水分量を、超音波受信素子が受信した反射波の最大振幅に基づいて検出する一方、土中の地下水位の位置を、超音波送信素子が超音波を送信してから前記超音波受信素子がその反射波を受信するまでに要する伝播時間に基づいて検出するので、単一の土中水分水位検出装置によって土中水分量と地下水位の両方を検出することができる。従って、土中水分量を検出する装置と地下水位を検出する装置とを別々に設置する場合と比較して、装置設置作業の簡略化及びコストダウンを図ることができる。
【0022】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置によれば、検出器の超音波送信素子や超音波受信素子は送信特性や受信特性に大きな温度依存性を有しているが、検出器で検出した反射波の最大振幅や超音波の伝播時間が温度補正器によって補正されるので、温度変化の激しい環境下に土中水分水位検出装置を設置する場合でも、土中水分量や地下水位を正確に検出することができる。
【0023】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置によれば、温度補正器が検出器と一体的に構成されるので、検出器と温度補正器とを所定距離だけ離して設置する場合と比較して、検出器と温度補正器との間で設置場所の違いによる温度差が生じにくいので、より正確に検出器の温度補正を行うことができる。また、検出器と温度補正器とを一体構成した方が、検出器と温度補正器とを別々に土中に埋め込むのと比較して、設置作業を簡略化することができる。
【0024】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置によれば、検出器の超音波導波管に空気排出孔が形成されたことにより、地下水位面が超音波導波管の内部に浸入すると、押し出された超音波導波管の内部の空気が空気排出孔を通って外部へ排出される。これにより、超音波導波管の内部でも外部と同様に地下水位面が上昇するので、超音波導波管の内部において地下水位の正確な検出が可能となる。
【0025】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置によれば、空気排出孔が超音波導波管の外部から内部へ向かって上向きに傾斜するように形成されたことにより、降雨時に空気排出孔を通って超音波導波管の外部から内部へ水が浸入しにくく、地下水位を正確に検出することができる。
【0026】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムによれば、土中水分水位検出装置が斜面に設置され、制御部が、斜面が崩壊する危険性が高い旨の警報を発するので、システム使用者は、斜面崩壊の発生を予知して事前に避難等の措置を取ることができる。また、単一の土中水分水位検出装置によって土中水分量と地下水位の両方を検出することができるので、土中水分量を検出する装置と地下水位を検出する装置とを別々に斜面に設置する場合と比較して、装置設置作業の簡略化及びコストダウンを図ることができる。また、斜面崩壊が発生する恐れの低い場合、すなわち土が乾燥状態や含水状態の時は、反射波の最大振幅や超音波の伝播時間の様子を常時監視することにより、システムが正常に動作していることを確認することができる。
【0027】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムによれば、土中水分水位検出装置が1個設置され、制御部が、斜面の崩壊危険性について危険度レベル1が継続した時間と危険度レベル2に上がってからの経過時間との関係に基づいて、警報を発するので、制御の簡略化及びコストダウンを図ることができる。
【0028】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムによれば、土中水分水位検出装置が複数個設置され、制御部が、斜面の崩壊危険性が全体系危険度レベル1になったと判定した後、全体系危険度レベル2に上がったと判定した時点で警報を発するので、ある1つの検出器に生じた誤作動等によって警報を発することがなく、検知精度を向上させることができる。
【0029】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムによれば、検出器の超音波導波管が、その密封側端部を地表より上に露出させるようにして土中に埋め込まれるので、検出器の超音波送信素子や超音波受信素子の配線を超音波導波管の密封側端部から外部へ引き出す場合に、配線も地表より上に露出した状態となるので、この配線を制御部等に接続する作業を行い易い。
【0030】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムによれば、検出器の超音波導波管が、その全体を地表より下に位置させるようにして、土中に埋め込まれるので、超音波導波管の長さによらず、地表から深い位置に検出器を設置することができる。
【0031】
また、本発明に係る土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システムによれば、検出器の超音波導波管の開口側端部に標準土が敷き詰められるので、開口側端部における超音波の反射状態が安定し、超音波受信素子で十分な強度の反射波を受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施例における斜面崩壊予知システム1の構成を示す模式図。
【図2】土中水分水位検出装置3を構成する検出器5を示す概略縦断面図。
【図3】検出器5の変形例を示す概略縦断面図。
【図4】検出器5の変形例の効果を説明するための説明図。
【図5】検出器5の他の設置例を示す概略縦断面図。
【図6】検出器5の他の設置例を示す概略縦断面図。
【図7】土中水分水位検出装置3を構成する測定器6の構成を示すブロック図。
【図8】地下水位面33の上昇を説明するための概略縦断面図。
【図9】土の状態と反射波32の波形との関係を示す図。
【図10】雨が降り始めてからの経過時間と反射波32の最大振幅との関係の一例、及び当該経過時間と超音波30の伝播時間との関係の一例を示した図。
【図11】第2実施例に係る斜面崩壊予知システム40の構成を示す模式図。
【図12】図11の検出器5及び温度補正器43を拡大した部分拡大縦断面図。
【図13】検出器5及び温度補正器43の変形例を示す概略縦断面図。
【図14】第3実施例に係る斜面崩壊予知システム50の構成を示す模式図。
【図15】測定器53の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
まず、本発明の第1実施例に係る斜面崩壊予知システムについて説明する。図1は、第1実施例に係る斜面崩壊予知システム1の構成を示す模式図である。斜面崩壊予知システム1は、対象となる斜面2に設置されて土中水分量及び地下水位を検出する土中水分水位検出装置3と、この土中水分水位検出装置3の検出結果に基づいて斜面崩壊が発生する危険性が高い状態である旨の警報を発する警報装置4と、を備えるものである。尚、土中水分水位検出装置3を設置する斜面2は、山間部等の自然斜面はもちろん、人工的に造成された法面であってもよい。
【0034】
土中水分水位検出装置3は、図1に示すように、斜面2に埋め込んで設置された1個の検出器5と、この検出器5と電気的に接続された測定器6と、を有している。一方、警報装置4は、システム使用者の視覚,聴覚,嗅覚等に訴えることで危険な状態を認識させ得る手段であって、例えば、視覚に訴えるランプや液晶表示画面、聴覚に訴えるスピーカ等を用いることが可能である。
【0035】
図2は、土中水分水位検出装置3を構成する検出器5を示す概略縦断面図である。検出器5は、中空の超音波導波管6の内部における一端側に、ダンパー材7を介して超音波トランスデューサ8(超音波送信素子及び超音波受信素子)が設けられてなるものである。ここで、超音波導波管6は、両端が開口された管状の導波管本体9に、その一端側開口を塞いで蓋部材10を取り付けたものである。ここで、導波管本体9は、長さが30cm〜2m程度の真ちゅう製のパイプであって、その内径が略18mm、外径が略22mmである。そして、この導波管本体9の内周面は滑らかに形成され、内部を伝播する超音波がぶつかった時に散乱することなく一定方向に反射しやすくなっている。また、導波管本体9の前記一端側には、外部から内部へ向かって上向きに傾斜するようにして、超音波導波管6の内部の空気を外部へ排出するための空気排出孔34が貫通形成されている。尚、図2に詳細は示さないが、この空気排出孔34は導波管本体9の周方向に沿って複数個形成されており、いずれかの空気排出孔34に土等が詰まっても、他の空気排出孔34から空気が排出されるようになっている。一方、蓋部材10は、円柱形状を有する真ちゅう製の部材であって、その径は導波管本体9の外径と同程度に形成されている。そして、この蓋部材10には、その中心部を貫通して配線引き出し孔11が形成されるとともに、その内側面を覆ってアルミ板12が貼り付けられている。これにより、超音波導波管6の一端部は、配線引き出し孔11の存在に拘わらず、アルミ板12によって密封された状態となっている。尚、導波管本体9の材質,断面形状,及び長さ等は、本実施例に限定されず適宜設計変更が可能であり、それに合わせて蓋部材10やアルミ板12も設計変更が可能である。
【0036】
他方、検出器5を構成する超音波トランスデューサ8は、圧電効果によって電気信号と機械的振動とをエネルギー変換するデバイスであって、図2に示すように、超音波を送信または受信する送受信兼用素子部13と、この素子部から引き出された配線14とを有している。送受信兼用素子部13は、図に詳細は示さないが、半導体基板の上に超音波送信と超音波受信とを兼用する素子が配置されたものであって、ある周波数の電気信号を与えると、その周波数の超音波を超音波送信素子が出力する一方、ある周波数の超音波を超音波受信素子が受信すると、その周波数の電気信号を出力する。このように構成される超音波トランスデューサ8は、図2に示すように、その送受信兼用素子部13が、蓋部材10の内側面を覆うアルミ板12に対してダンパー材7を介して固定されている。このダンパー材7は、例えばシリコーンゴムからなるものであって、超音波トランスデューサ8の振動が超音波導波管6に伝達するのを防止し、或いは超音波導波管6の振動が超音波トランスデューサ8に伝達するのを防止するものである。そして、送受信兼用素子部13から伸びる配線14が、ダンパー材7とアルミ板12とを挿通され、蓋部材10の配線引き出し孔11を通して超音波導波管6の外部へと引き出されている。
【0037】
尚、本実施例では、超音波導波管6への取り付けスペース等を考慮して、送信機能と受信機能の両方を備えた1個の超音波トランスデューサ8を用いた。しかし、これに限られず、例えば図3に示すように、超音波導波管15の内部における一端側に、超音波送信素子(不図示)のみが配置された送信専用超音波トランスデューサ16と、超音波受信素子(不図示)のみが配置された受信専用超音波トランスデューサ17とを横並びに設けてもよい。この場合、送信専用超音波トランスデューサ16から超音波を送信し、その反射波を受信専用超音波トランスデューサ17で受信する。このように送信専用超音波トランスデューサ16と受信専用超音波トランスデューサ17とを別々に設けた場合、土中水分量や地下水位の検出が正確に行えるという利点がある。すなわち、送信専用と受信専用の超音波トランスデューサ16,17を別々に設けた場合、図4A及び図4Bに示すように、送信した超音波の波形(送信波形18)と受信した反射波の波形(受信波形19)とが重なり合うことなく別々に検出されるので、反射波の最大振幅や超音波の伝播時間を正確に測定することができる。これに対し、送受信兼用の超音波トランスデューサ8を使用する場合、送信から受信までの時間が短いと、受信波形19が原点寄りに検出されるので、図4Cに示すように、送信波形18と大きく重なってしまう。これにより、送信波形18と受信波形19との識別が困難になり、後述するように反射波の最大振幅や超音波の伝播時間を測定するのが難しい。
【0038】
このように構成される検出器5は、図2に示すように、その超音波導波管6の開口側端部20を下にして、土中21に埋め込まれた状態で斜面2に設置される。ここで、超音波導波管6は、その内部の空気を介して超音波を伝播させるものであるため、検出器5を土中21へ埋め込む際には、超音波導波管6の内部に土が入り込まないようにする必要がある。本実施例では、検出器5を土中21に埋め込む手順として、図に詳細は示さないが、検出器5の設置深さを考慮して、斜面2に設置用穴を予め掘削しておき、この設置用穴に検出器5を配置して掘り出した土を埋め戻すことによって、超音波導波管6を土中21に埋め込む。そして、超音波導波管6から蓋部材10を取り外し、長尺な棒状部材を導波管本体9の上端開口から差し込むことにより、導波管本体9の内部に入り込んだ土を下端開口から外部へと押し出す。そして、棒状部材を導波管本体9から引き抜いた後、蓋部材10を再度取り付ける。このような手順により、内部に土が入り込まないようにして、超音波導波管6を土中21に埋め込むことができる。
【0039】
また、検出器5を土中21に埋め込む際には、図2に示すように、超音波導波管6の上端部すなわち密封側端部23を地表22より上に若干露出させた状態にしておく。このようにすれば、配線引き出し孔11から引き出された配線14も地表22より上に露出した状態となるので、この配線14を図1に示す測定器6に接続する際に、土中21に埋まった状態の配線14を地上まで引き出してから測定器6に接続する場合と比較すると、接続作業が行い易いという利点がある。更に、導波管本体9に形成された空気排出孔34も地表22より上に露出させた状態にしておけば、超音波導波管6の内部の空気が外部に排出されやすく好適である。
【0040】
尚、検出器5を土中21に埋め込む際には、図5に示すように、超音波導波管6の密閉側端部23も地表22より下に位置させるようにして、超音波導波管6の全体を土中21に埋め込んでもよい。このようにすれば、超音波導波管6の長さによらず、地表22から深い位置に検出器5を設置することができるという利点がある。
【0041】
また、検出器5を土中21に埋め込む際には、図6に示すように、前記設置用穴の底部に標準土24を敷き詰め、超音波導波管6の下端開口を標準土24に密着させるようにして検出器5を配置するのが好適である。この標準土24とは、土粒子の粒径分布が既知である土、例えば粒径がほぼ一定であるような土を意味する。このように標準土24を敷き詰めるのは、超音波の反射状態を安定させるためである。すなわち、後述するように、超音波トランスデューサ8は、自らが送信した超音波のうち超音波導波管6の下端部で反射して戻ってきた反射波を受信する。ここで、超音波導波管6の下端開口部に位置するのが粒径が不規則であるような土塊であると、超音波の反射状態が安定せず、超音波トランスデューサ8が十分な強度の反射波を受信することができない。これに対し、標準土24を敷き詰めておくと、超音波の反射状態が安定するので、超音波トランスデューサ8で十分な強度の反射波を受信することができる。
【0042】
一方、図7は、土中水分水位検出装置3を構成する測定器6の構成を示すブロック図である。測定器6は、各部の動作を制御する制御部25に対して、超音波送信回路26と、超音波受信回路27と、信号処理回路28とがシステムバス29を介して接続されたものである。ここで、超音波送信回路26は、図2に示す超音波トランスデューサ8に対して所定周波数の電気信号を付与するものである。一方、超音波受信回路27は、超音波トランスデューサ8から所定周波数の電気信号を受け取って信号処理回路28へ出力するものである。また、信号処理回路28は、超音波受信回路27から入力された電気信号に基づいて土中水分量や地下水位を検出するものである。
【0043】
次に、土中水分水位検出装置3による土中水分量の検出、及び地下水位の検出について説明する。前記制御部25の制御を受け、測定器6の超音波送信回路26から検出器5の超音波トランスデューサ8に対して所定周波数の電気信号が付与されると、図2に示すように、超音波トランスデューサ8から所定周波数の超音波30が送信される。この超音波30は、超音波導波管6の内部を下方に向かって伝播し、超音波導波管6の下端に位置する土表面31にぶつかって反射される。この反射波32は、超音波導波管6の内部を上方に向かって伝播し、超音波トランスデューサ8によって受信される。そうすると、超音波トランスデューサ8が所定周波数の電気信号を出力し、測定器6の超音波受信回路27がこの電気信号を受け取って信号処理回路28へ出力する。そして、信号処理回路28が、制御部25による制御の下、入力された電気信号に基づいて、土中水分量及び地下水位をそれぞれ検出する。
【0044】
ここで、信号処理回路28は、斜面2の土中水分量を、反射波32の最大振幅に基づいて検出する。より詳細に説明すると、土は土粒子部分と間隙部分とから構成されるが、土が乾燥状態の時は間隙部分の多くが空気で占められる。従って、このような土に超音波30がぶつかると、土粒子部分にぶつかった超音波30は反射波32として戻ってくるが、間隙部分にぶつかった超音波30は当該部分を透過することによって反射波32としては戻ってこない。これにより、反射波32の最大振幅は小さくなる。一方、土が水分を多く含んだ状態の時は間隙部分の多くが水で占められる。従って、このような土に超音波30がぶつかると、土粒子部分にぶつかった超音波30のみならず間隙部分にぶつかった超音波30も反射波32として戻ってくる。これにより、反射波32の最大振幅が大きくなる。以上より、反射波32の最大振幅を検出することによって、土中水分量を検出することができる。
【0045】
一方、信号処理回路28は、斜面2の地下水位を、超音波30の伝播時間すなわち超音波トランスデューサ8が超音波30を送信してからその反射波32を受信するまでの時間に基づいて検出する。より詳細に説明すると、図2に示すように、地下水位面33が土表面31より低い位置にある間は、超音波トランスデューサ8から送信された超音波30は、前述のように土表面31によって反射される。しかし、降雨等によって地下水位面33が上昇し、図8に示すように土表面31を越えて高くなると、超音波トランスデューサ8から送信された超音波30は、土表面31ではなく地下水位面33によって反射される。従って、超音波導波管6の内部を地下水位面33が上昇するに伴って、超音波トランスデューサ8から地下水位面33までの距離が短くなるので、超音波30の伝播時間が徐々に短くなる。以上より、超音波30の伝播時間を検出することによって、地下水位を検出することができる。尚、地下水位面33が超音波導波管6の内部に浸入すると、押し出された超音波導波管6の内部の空気が前記空気排出孔34を通って外部へ排出される。これにより、超音波導波管6の内部でも外部と同様に地下水位面33が上昇するので、超音波導波管6の内部において地下水位を正確に検出することができる。また、空気排出孔34は前述のように超音波導波管6の外部から内部へ向かって上向きに傾斜しているので、降雨時に空気排出孔34を通って超音波導波管6の外部から内部へ水が浸入しにくく、地下水位面33の正確な検出が可能となっている。
【0046】
ここで、図9は、土の状態と反射波32の波形との関係を示す図であって、図9Aは土が乾燥状態での反射波32の波形の一例を、図9Bは土が含水状態での反射波32の波形の一例を、図9Cは土が浸水状態での反射波32の波形の一例をそれぞれ示している。尚、本明細書において「乾燥状態」とは降雨等がなく土が少量の水分しか含んでいない状態を、「含水状態」とは降雨等によって土が一定量以上の水分を含んでいるが地下水位面33は土表面31より低い位置にある状態を、「浸水状態」とは地下水位面33が土表面31を超えて高い位置にある状態を、それぞれ意味している。
【0047】
まず、この図9を用いて超音波30の伝播時間について説明すると、図9Aの乾燥状態と図9Bの含水状態では、時刻T0で送信を開始した超音波30が時刻T2で反射波32として戻ってきており、超音波30の伝播時間は(T2−T0)で同じである。一方、図9Cの浸水状態では、時刻T0で送信を開始した超音波30が時刻T2より早い時刻T1で反射波32として戻ってきており、超音波30の伝播時間は(T1−T0)となって、乾燥状態や含水状態の伝播時間より短くなっている。これは、上述のように、地下水位面33の上昇に伴って超音波トランスデューサ8から地下水位面33までの距離が短くなるからである。
【0048】
次に、この図9を用いて反射波32の最大振幅について説明すると、図9Bに示す含水状態における反射波32の最大振幅IBは、図9Aに示す乾燥状態における反射波32の最大振幅IAより大きい。これは、上述のように、乾燥状態では土の間隙部分を超音波30が透過するのに対し、含水状態では土の間隙部分でも超音波30が反射するからである。一方、図9Cに示す浸水状態における反射波32の最大振幅はICは、図9Bに示す含水状態における反射波32の最大振幅I2より更に大きい。これは、地下水位面33の上昇に伴って超音波30の伝播距離が短くなるので、例えば超音波導波管6内の空気に吸収される等して伝播経路上で減衰する超音波30の量が減るためである。
【0049】
次に、本実施例に係る斜面崩壊予知システム1が、土中水分水位検出装置3の検出結果に基づいて警報を発する手順について説明する。図10は、雨が降り始めてからの経過時間と反射波32の最大振幅との関係の一例、及び当該経過時間と超音波30の伝播時間との関係の一例を示した図である。尚、図10では、反射波32の最大振幅を一点鎖線で、超音波30の伝播時間を実線でそれぞれ示している。また、図10で反射波32の最大振幅は、最初の測定時点すなわち経過時間0分における測定値を1.0とした時の比率をプロットしたものである。
【0050】
まず、図10で経過時間が0分〜約180分の区間において、反射波32の最大振幅は約1.0でほぼ一定に推移する。これは、地表22に降り注いだ雨水が土中21へと徐々に染み込んでいく間、検出器5の下端の位置では土中水分量に変化が生じず、土の間隙部分で反射される超音波30の量が一定だからである。ここで、測定器6の制御部25は、反射波32の最大振幅が予め定めた閾値Sに達しない間は、土は乾燥状態であると判断する。一方、この乾燥状態の区間では、超音波30の伝播時間も約2.7でほぼ一定に推移する。これは、地下水位面33が未だ土表面31より低い位置にあり、超音波トランスデューサ8から送信された超音波30は常に土表面31で反射されるので、超音波30の伝播距離が一定だからである。
【0051】
その後、図10で経過時間が約180分を過ぎると、反射波32の最大振幅が増加し始める。これは、前述のように土の間隙部分が徐々に水分によって占められるに連れて、間隙部分で反射される超音波30の量が徐々に増えるからである。そして、測定器6の制御部25は、反射波32の最大振幅が予め定めた閾値Sに達すると、土が乾燥状態から含水状態へと移行したと判断する。一方、超音波30の伝播時間は、土が乾燥状態から含水状態へと移行しても、乾燥状態の区間と同様に約2.7で一定に推移し続ける。これは、地下水位面33が依然として図2に示す土表面31より低い位置にあるからである。
【0052】
その後、反射波32の最大振幅は、図10の経過時間約220分で約1.4に達するまで増加し続け、その後も僅かずつ増加する。ここで、制御部25は、斜面崩壊が発生する恐れの低い乾燥状態や含水状態においては、反射波32の最大振幅が増加する様子、及び超音波30の伝播時間が一定に推移する様子を常時監視することにより、斜面崩壊予知システム1が正常に動作していることを確認することができる。
【0053】
その後、図10で経過時間が約500分を過ぎると、超音波30の伝播時間が減少し始める。これは、地下水位面33が図8に示す土表面31を超えて高くなり、超音波トランスデューサ8から送信された超音波30が土表面31ではなく地下水位面33で反射されるようになるので、地下水位面33の上昇に伴って超音波30の伝播距離が徐々に短くなるからである。ここで、測定器6の制御部25は、超音波30の伝播時間が減少し始めた時点をもって、土が含水状態から浸水状態へと移行したと判断する。そして、制御部25は、この浸水状態への移行をもって、検出器5を設置した斜面2が崩壊する恐れがあると判断し、前記警報装置4を制御することにより、システム使用者に対して斜面崩壊の危険性がある旨を報知するための警報を発する。これにより、システム使用者は、斜面崩壊の発生を予知して事前に避難等の措置を取ることができる。
【0054】
一方、浸水状態への移行とともに、反射波32の最大振幅は移行前より増加し始める。これは、地下水位面33が上昇して伝播距離が短くなると、経路上での減衰量が減少するからである。
【0055】
その後、図10で経過時間が約560分に達するまで、超音波30の伝播時間は減少し続ける一方、反射波32の最大振幅は増加し続ける。そして、それ以降は、超音波30の伝播時間及び反射波32の最大振幅を共に検出しなくなる。これは、地下水位面33が上昇して超音波トランスデューサ8の位置の近くに到達すると、超音波トランスデューサ8が反射波32を受信しなくなるからである。尚、超音波30の伝播時間及び反射波32の最大振幅を共に検出しなくなった後も、土の浸水状態は継続するものとする。
【0056】
尚、本実施例では浸水状態への移行と同時に警報を発したが、警報を発するタイミングはこれに限られず、例えば「危険度レベル」という概念を導入して決定してもよい。より詳細に説明すると、制御部25は、含水状態のスタート時点から経過時間計測を行い、含水状態が連続して予め定めた時間t0だけ継続すると、斜面2の崩壊危険性が「危険度レベル1」になったと判定する。そして、制御部25は、斜面2が危険度レベル1になってからの経過時間計測を行う。その後、制御部25は、浸水状態への移行時点をもって斜面2の崩壊危険性が「危険度レベル2」に上がったと判定する。そして、制御部25は、斜面2が危険度レベル2になってからの経過時間t2を計測する。以上の計測に基づき、危険度レベル1が継続した時間t1、すなわち斜面2が危険度レベル1になってから危険度レベル2になるまでの継続時間t1と、危険度レベル2になってから現在までの経過時間t2との関係が、一定の関係になったと判断すると、制御部25は、警報装置4を制御して警報を発する。尚、危険度レベル1の継続時間t1と危険度レベル2の経過時間t2との関係としては、任意の関係を設定することができる。
【0057】
次に、本発明の第2実施例に係る斜面崩壊予知システム40について説明する。図11は、第2実施例に係る斜面崩壊予知システム40の構成を示す模式図である。斜面崩壊予知システム40は、対象となる斜面2に設置されて土中水分量及び地下水位を検出する土中水分水位検出装置41と、この土中水分水位検出装置41の検出結果に基づいて斜面崩壊が発生する危険性が高い状態である旨の警報を発する警報装置42と、を備えるものである。本実施例を第1実施例と比較すると、土中水分水位検出装置41の構成が異なっているが、警報装置42の構成は第1実施例の警報装置4と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0058】
土中水分水位検出装置41は、図11に示すように、斜面2に埋め込んで設置された1個の検出器5と、この検出器5に隣接した位置に同じく斜面2に埋め込んで設置された温度補正器43と、検出器5及び温度補正器43に電気的に接続された測定器6と、を有している。尚、検出器5及び測定器6は、第1実施例と同じ構成であるため、図11では図1と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0059】
図12は、図11の検出器5及び温度補正器43を拡大した部分拡大縦断面図である。温度補正器43は、検出器5を温度補正するためのものである。より詳細に説明すると、検出器5を構成する超音波トランスデューサ8は、前述のように超音波送受信を兼用する素子を有しているが、その送信特性及び受信特性には大きな温度依存性がある。従って、これらを温度変化の激しい野外で使用し、反射波32の最大振幅と超音波30の伝播時間とを検出する以上、送信特性及び受信特性を温度補正することが好適である。ここで、図12に示すように、温度補正器43は、中空の超音波導波管44の内部における一端側にダンパー材7を介して超音波トランスデューサ8が設けられてなる点では検出器5と同じ構成であるが、超音波導波管44の構成が検出器5とは異なっている。すなわち、温度補正器43の超音波導波管44は、検出器5の導波管本体9と同じ長さの導波管本体45に、その両端開口を塞いで蓋部材46がそれぞれ取り付けられたものである。また、導波管本体45には、検出器5の導波管本体9のように空気排出孔34を形成していないが、温度変化に伴う内部の気圧変動の影響を排除すべく、導波管本体45に空気排出孔34を形成してもよい。
【0060】
このように構成される温度補正器43は、超音波トランスデューサ8を設けた側の端部を上にし、検出器5と所定距離を開けて平行するようにして、検出器5と同じ深さまで土中21に埋め込んだ状態で斜面2に設置される。そして、この時、超音波導波管44の下端に位置する蓋部材46の内側面には、性状が既知である土47を若干量だけ敷き詰めておく。これにより、超音波トランスデューサ8から送信される超音波30が蓋部材46ではなく敷き詰められた土47の表面によって反射される。尚、土47としては、例えば、検出器5の土表面31に存在する土と同じ組成の土を用いてもよい。このように、温度補正器43を検出器5とほぼ同じ状態で土中21に設置することにより、検出器5と同じ温度条件下で反射波32の最大振幅や超音波30の伝播時間を検出することができる。更に、温度補正器43は、超音波導波管44の下端に取り付けられた蓋部材46の存在により、周囲の土中水分量の変化や地下水位の変化には影響を受けない。従って、この温度補正器43によれば、反射波32の最大振幅や超音波30の伝播時間を、温度変化の影響だけを受けた状態で検出することができる。
【0061】
次に、温度補正器43による検出器5の温度補正について説明する。測定器6の制御部25による制御の下、測定器6の超音波送信回路26から温度補正器43の超音波トランスデューサ8に対して所定周波数の電気信号が付与されると、図12に示すように、超音波トランスデューサ8から所定周波数の超音波30が送信される。この超音波30は、超音波導波管44の内部を下方に向かって伝播し、蓋部材46の内側面に敷き詰められた土47によって反射される。この反射波32は、超音波導波管44の内部を上方に向かって伝播し、超音波トランスデューサ8によって受信される。そうすると、超音波トランスデューサ8が所定周波数の電気信号を出力し、測定器6の超音波受信回路27がこの電気信号を受け取って信号処理回路28へ出力する。そして、信号処理回路28が、制御部25による制御の下、例えば検出器5の出力値を温度補正器43の出力値で除算することにより、検出器5の出力値を温度補正する。このようにして、反射波32の最大振幅や超音波30の伝播時間を温度補正することができる。
【0062】
尚、本実施例では温度補正器43を検出器5とは別体として設けたが、図13に示すように、温度補正器43を検出器5と一体的に設けてもよい。このように検出器5と温度補正器43とを一体構成した場合、検出器5と温度補正器43とを所定距離だけ離して設置する場合と比較して、検出器5と温度補正器43との間で設置場所の違いによる温度差が生じにくいので、より正確に検出器5の温度補正が行えるという利点がある。また、検出器5と温度補正器43とを一体構成した方が、検出器5と温度補正器43とを別々に土中21に埋め込むのと比較して、設置作業が簡略化するという利点もある。
【0063】
次に、本発明の第3実施例に係る斜面崩壊予知システム50について説明する。図14は、第3実施例に係る斜面崩壊予知システム50の構成を示す模式図である。斜面崩壊予知システム50は、対象となる斜面2に設置されて土中水分量及び地下水位を検出する土中水分水位検出装置51と、この土中水分水位検出装置51の検出結果に基づいて斜面崩壊が発生する危険性が高い状態である旨の警報を発する警報装置52とを備えるものである。本実施例を第1実施例と比較すると、土中水分水位検出装置51の構成及び警報を発する手順が異なっているが、警報装置52の構成は第1実施例の警報装置4と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0064】
土中水分水位検出装置51は、斜面2の異なる位置にそれぞれ埋め込んで設置された複数個の検出器5と、各検出器5とそれぞれ電気的に接続された測定器53と、を有している。ここで、各検出器5の構成及び設置方法は、第1実施例と同じであるため、第1実施例と同じ符号を使用し、ここでは説明を省略する。尚、第2実施例と同様に、各検出器5を温度補正するための温度補正器43を別途設けてもよい。また、本実施例では、各検出器5の長さを種々変化させてその先端が地表22から異なる深さ位置にそれぞれ達するようにしており、各検出器5で異なる深さ位置の土中水分量及び地下水位を検出している。もちろん、これに限られず、各検出器5で同じ深さ位置の土中水分量及び地下水位を検出してもよい。
【0065】
一方、図15は、測定器53の構成を示すブロック図である。測定器53は、各部の動作を制御する制御部54に対して、超音波送信回路55と、超音波受信回路56と、マルチプレクサ57と、信号処理回路58とがシステムバス59を介して接続されたものである。ここで、超音波送信回路55は、図2に示す超音波トランスデューサ8に対して所定周波数の電気信号を付与するものである。一方、超音波受信回路56は、超音波トランスデューサ8から所定周波数の電気信号を受け取って信号処理回路58へ出力するものである。また、マルチプレクサ57は、複数の検出器5から入力された電気信号を適宜切り替えながら超音波受信回路56へ出力し、或いは超音波送信回路55から入力された複数の電気信号を適宜切り替えながら検出器5へ出力するものである。また、信号処理回路58は、超音波受信回路56から入力された電気信号に基づいて土中水分量や地下水位を検出するものである。
【0066】
次に、本実施例に係る斜面崩壊予知システム50が、土中水分水位検出装置51の検出結果に基づいて警報を発する手順について説明する。尚、各検出器5について、雨が降り始めてからの経過時間と反射波32の最大振幅との関係、及び当該経過時間と超音波30の伝播時間との関係は第1実施例と同じであるため、図10を用いて説明する。
【0067】
測定器53の制御部54は、1つの斜面2に設置した例えばN個の検出器5の動向を観察し、図10に示す含水状態が連続して時間t0以上に渡って継続している検出器5が徐々に増え、その数が予め定めたN1個に達したと判断すると、斜面2の崩壊危険性が「全体系危険度レベル1」になったと判定する。その後、制御部54は各検出器5の動向を引き続き観察し、前記N1個の検出器5のうち、図10に示す浸水状態へ移行した検出器5の数が予め定めたN2個に達したと判断すると、斜面2の崩壊危険性が「全体系危険度レベル2」に上がったと判定する。
【0068】
そして、制御部54は、斜面2の崩壊危険性が全体系危険度レベル1を経て、且つ、その後に全体系危険度レベル2に上がった時点をもって、その斜面2が崩壊する恐れがあると判断し、警報装置52を制御することによりシステム使用者に対して警報を発する。このように、複数個の検出器5の検出結果に基づいて斜面2の状態を判定することにより、ある1つの検出器5に生じた誤作動等によって警報を発することがなく、検知精度を向上させることができる。
【0069】
尚、本実施例では、斜面2の崩壊危険性が全体系危険度レベル1に達した後に全体系危険度レベル2に達したことをトリガとして警報を発したが、これに限られず、斜面2の崩壊危険性が全体系危険度レベル2に達したことのみをトリガとして警報を発してもよい。この場合、制御部54は、斜面2の崩壊危険性が全体系危険度レベル1になったか否かによらず、すなわち含水状態が連続して時間t0以上に渡って継続している検出器5の数がN1個に達したか否かによらず、斜面2の崩壊危険性が全体系危険度レベル2になったことのみをもって、すなわち浸水状態へ移行した検出器5の数がN2個に達したことのみをもって、警報を発する。このように全体系危険度レベル2に達したことのみをトリガとした方が制御部54による処理は簡略化できる点で好適であるが、含水状態を経ることなくいきなり浸水状態になるという検出器5の誤動作の影響を排除できる点では、前述のように全体系危険度レベル1に達したこともトリガに加えた方が好適である。
【0070】
以上のように、本発明に係る斜面崩壊予知システムによれば、単一の土中水分水位検出装置によって土中水分量と地下水位の両方を検出することができる。従って、土中水分量を検出する装置と地下水位を検出する装置とを別々に斜面に設置する場合と比較して、装置設置作業の簡略化及びコストダウンを図ることができる。また、斜面崩壊が発生する恐れの低い場合、すなわち土が乾燥状態や含水状態の時は、反射波の最大振幅や超音波の伝播時間の様子を常時監視することにより、システムが正常に動作していることを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
尚、本斜面崩壊予知システムは、降雨による斜面崩壊の予知に用いられるだけでなく、例えば融雪水による斜面崩壊、すなわち春先の好天の日に雪が溶け出した水が土に染み込むことによって起こる斜面崩壊の予知にも用いることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 斜面崩壊予知システム
3 土中水分水位検出装置
5 検出器
6 超音波導波管
8 超音波トランスデューサ(超音波送信素子及び超音波受信素子)
20 開口側端部
21 土中
25 制御部
30 超音波
31 土表面
32 反射波
33 地下水位面
34 空気排出孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が密封され他端が開口された管状の部材であって、開口側を下にして内部に土が入らないように土中に埋め込まれる超音波導波管、該超音波導波管の内部における密封側に設けられ、開口側に向けて超音波を送信する超音波送信素子、及び前記超音波導波管の内部における密封側に設けられ、前記超音波送信素子から送信された超音波のうち、開口側端部の土表面で反射して或いは前記超音波導波管の内部に浸入した地下水位面で反射して戻ってきた反射波を受信する超音波受信素子、を有する検出器と、
前記超音波導波管の開口側端部付近での土中水分量を、前記超音波受信素子が受信した反射波の最大振幅に基づいて検出する一方、土中の地下水位の位置を、前記超音波送信素子が超音波を送信してから前記超音波受信素子がその反射波を受信するまでに要する伝播時間に基づいて検出する制御部と、
を備えることを特徴とする土中水分水位検出装置。
【請求項2】
両端が密封された管状の部材であって、前記検出器の超音波導波管と略平行に同じ深さ位置まで土中に埋め込まれる超音波導波管、該超音波導波管の内部における上端側に設けられ、下端側に向けて超音波を送信する超音波送信素子、及び前記超音波導波管の内部における上端側に設けられ、前記超音波送信素子から送信された超音波のうち、前記超音波導波管の内部底面に予め敷き詰められた性状が既知である土の表面で反射して戻ってきた反射波を受信する超音波受信素子、を有する温度補正器を更に備え、
前記制御部が、前記検出器で検出した前記反射波の最大振幅及び前記伝播時間を、前記温度補正器で検出した前記反射波の最大振幅及び前記伝播時間により温度補正することを特徴とする請求項1に記載の土中水分水位検出装置。
【請求項3】
前記温度補正器が、前記検出器と一体的に構成されたことを特徴とする請求項2に記載の土中水分水位検出装置。
【請求項4】
前記検出器の超音波導波管に、内部の空気を外部へ排出するための空気排出孔が形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の土中水分水位検出装置。
【請求項5】
前記空気排出孔が、前記検出器の超音波導波管の外部から内部へ向かって上向きに傾斜するように形成されたことを特徴とする請求項4に記載の土中水分水位検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の土中水分水位検出装置が斜面に設置され、前記制御部が、前記反射波の最大振幅及び前記伝播時間の検出結果に基づいて、前記斜面が崩壊する危険性が高い旨の警報を発することを特徴とする土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システム。
【請求項7】
前記土中水分水位検出装置が1個設置され、前記制御部が、前記反射波の最大振幅が所定値以上に達した状態が所定時間以上連続して継続した時に、前記斜面の崩壊危険性が危険度レベル1に達したと判定した後、前記伝播時間が減少し始めた時に、前記斜面の崩壊危険性が危険度レベル2に上がったと判定し、前記危険度レベル1が継続した時間と前記危険度レベル2に上がってからの経過時間との関係に基づいて、前記警報を発することを特徴とする請求項6に記載の土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システム。
【請求項8】
前記土中水分水位検出装置が複数個設置され、前記制御部が、前記反射波の最大振幅が所定値以上に達した状態が所定時間以上連続して継続した前記土中水分水位検出装置の数がN1個に達した時に、前記斜面の崩壊危険性が全体系危険度レベル1になったと判定し、その後、前記N1個のうち前記伝播時間が減少し始めた前記土中水分水位検出装置の数がN2個に達した時に、前記斜面の崩壊危険性が全体系危険度レベル1から全体系危険度レベル2に上がったと判定し、前記警報を発することを特徴とする請求項6に記載の土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システム。
【請求項9】
前記検出器の超音波導波管が、その密封側端部を地表より上に露出させるようにして、土中に埋め込まれたことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システム。
【請求項10】
前記検出器の超音波導波管が、その全体を地表より下に位置させるようにして、土中に埋め込まれたことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システム。
【請求項11】
前記検出器の超音波導波管の開口側端部に、粒径分布が既知である標準土が敷き詰められたことを特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載の土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システム。
【請求項1】
一端が密封され他端が開口された管状の部材であって、開口側を下にして内部に土が入らないように土中に埋め込まれる超音波導波管、該超音波導波管の内部における密封側に設けられ、開口側に向けて超音波を送信する超音波送信素子、及び前記超音波導波管の内部における密封側に設けられ、前記超音波送信素子から送信された超音波のうち、開口側端部の土表面で反射して或いは前記超音波導波管の内部に浸入した地下水位面で反射して戻ってきた反射波を受信する超音波受信素子、を有する検出器と、
前記超音波導波管の開口側端部付近での土中水分量を、前記超音波受信素子が受信した反射波の最大振幅に基づいて検出する一方、土中の地下水位の位置を、前記超音波送信素子が超音波を送信してから前記超音波受信素子がその反射波を受信するまでに要する伝播時間に基づいて検出する制御部と、
を備えることを特徴とする土中水分水位検出装置。
【請求項2】
両端が密封された管状の部材であって、前記検出器の超音波導波管と略平行に同じ深さ位置まで土中に埋め込まれる超音波導波管、該超音波導波管の内部における上端側に設けられ、下端側に向けて超音波を送信する超音波送信素子、及び前記超音波導波管の内部における上端側に設けられ、前記超音波送信素子から送信された超音波のうち、前記超音波導波管の内部底面に予め敷き詰められた性状が既知である土の表面で反射して戻ってきた反射波を受信する超音波受信素子、を有する温度補正器を更に備え、
前記制御部が、前記検出器で検出した前記反射波の最大振幅及び前記伝播時間を、前記温度補正器で検出した前記反射波の最大振幅及び前記伝播時間により温度補正することを特徴とする請求項1に記載の土中水分水位検出装置。
【請求項3】
前記温度補正器が、前記検出器と一体的に構成されたことを特徴とする請求項2に記載の土中水分水位検出装置。
【請求項4】
前記検出器の超音波導波管に、内部の空気を外部へ排出するための空気排出孔が形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の土中水分水位検出装置。
【請求項5】
前記空気排出孔が、前記検出器の超音波導波管の外部から内部へ向かって上向きに傾斜するように形成されたことを特徴とする請求項4に記載の土中水分水位検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の土中水分水位検出装置が斜面に設置され、前記制御部が、前記反射波の最大振幅及び前記伝播時間の検出結果に基づいて、前記斜面が崩壊する危険性が高い旨の警報を発することを特徴とする土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システム。
【請求項7】
前記土中水分水位検出装置が1個設置され、前記制御部が、前記反射波の最大振幅が所定値以上に達した状態が所定時間以上連続して継続した時に、前記斜面の崩壊危険性が危険度レベル1に達したと判定した後、前記伝播時間が減少し始めた時に、前記斜面の崩壊危険性が危険度レベル2に上がったと判定し、前記危険度レベル1が継続した時間と前記危険度レベル2に上がってからの経過時間との関係に基づいて、前記警報を発することを特徴とする請求項6に記載の土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システム。
【請求項8】
前記土中水分水位検出装置が複数個設置され、前記制御部が、前記反射波の最大振幅が所定値以上に達した状態が所定時間以上連続して継続した前記土中水分水位検出装置の数がN1個に達した時に、前記斜面の崩壊危険性が全体系危険度レベル1になったと判定し、その後、前記N1個のうち前記伝播時間が減少し始めた前記土中水分水位検出装置の数がN2個に達した時に、前記斜面の崩壊危険性が全体系危険度レベル1から全体系危険度レベル2に上がったと判定し、前記警報を発することを特徴とする請求項6に記載の土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システム。
【請求項9】
前記検出器の超音波導波管が、その密封側端部を地表より上に露出させるようにして、土中に埋め込まれたことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システム。
【請求項10】
前記検出器の超音波導波管が、その全体を地表より下に位置させるようにして、土中に埋め込まれたことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システム。
【請求項11】
前記検出器の超音波導波管の開口側端部に、粒径分布が既知である標準土が敷き詰められたことを特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載の土中水分水位検出装置を用いた斜面崩壊予知システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−47676(P2011−47676A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194198(P2009−194198)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]