説明

土中試料の採取装置、該採取装置を取り付けたヘッド、および該ヘッドを用いた土中試料の採取方法

【課題】土中試料を地盤内の原位置で、ピンポイントに採取でき、拡大根固め球根で土中試料を採取する場合、側壁付近や横方向の原位置での採取も可能とする土中試料の採取装置、該採取装置を設けたヘッド、および該ヘッドを用いた土中試料の採取方法を提供する。
【解決手段】採取装置1を、油圧シリンダ機構により径方向外側に伸縮可能な拡径翼15に対し、着脱可能に取り付けられるようにする。採取装置1は、外管2とその内側に収納される窓孔4付きの内管3からなる。外管2を拡径翼15の油圧シリンダのシリンダ15a部分の側面に取り付ける。内管3はその先端部を拡径翼15のロッド15b部分に取り付ける。拡径翼15を拡径させることで、内管3が外管2から突出し、原位置での土中試料を窓孔4から内管3内に取り込む。拡径翼15を縮径させることで、内管3を外管2内に収納し、内管3内の土中試料を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースオーガの下端に接続されるヘッドに着脱可能に取り付けて、地盤中の原位置(採取したい位置)の土中試料をピンポイントで採取するための土中試料の採取装置、該土中試料の採取装置を取り付けた拡大掘削可能な拡大ヘッド等のヘッド、および該ヘッドを用いた土中試料の採取方法に関するものである。
【0002】
本発明に係る土中試料の採取装置は、主として杭施工における根固め液または根固め液と掘削土砂との混合物の採取を目的としたものであるが、それに限定されず、地質調査等のための土中試料一般の採取にも利用可能である。
【背景技術】
【0003】
埋込み杭工法における支持力発現方法は、拡大根固め球根を築造し、この拡大根固め球根に杭先端部を設置することにより一体化を図ることが一般的である。
【0004】
最近の高支持力杭工法の開発はめざましく、特に大きな支持力を得るためには、より大きな拡大根固め球根を機械的に拡大掘削し、より品質の高い拡大根固め球根を築造することが重要となっている。
【0005】
ところが、拡大根固め球根は地下深く(例えば10m〜80m程度)、掘削孔が横方向に拡大されて築造されることから、該拡大根固め球根の様々な箇所(特に掘削孔の側壁の付近)で、決められた強度品質のものが築造できているかどうかを、直接確認できる有効な手法がなかった。
【0006】
すなわち、根固め球根に用いる根固め液(例えば、水セメント比=50%〜100%程度のセメントミルク)は、拡大掘削した該球根部に掘削ロッドやビット部分を介して所定量が注入される。その場合、原位置の一部土砂と根固め液とが攪拌混合されて拡大根固め球根として強度発現することになるが、これが必要強度を満足しているか否かが明確でなかった。
【0007】
強度確認における現状の品質管理としては、例えば、セメントと水とをプラントで混練して得られた根固め液としての注入前のセメントミルクを採取して強度確認用供試体を作成し、圧縮強度試験等を実施している。
【0008】
さらに、場合によっては、杭施工が完了し、根固め液の固化後、杭頭からコア採取するための掘削を行っている。しかし、杭長が深い場合、杭の中空部を掘削することから、掘削の鉛直度の問題や設置された杭自体の鉛直度の問題もあり、非常に難しい作業となり、コア採取できない場合も出てくる。しかも、球根自体にコアをあけることから、少なからず球根自体の健全性に問題を及ぼしかねない。
【0009】
また、コア採取できたとしても、鉛直方向の原位置のコアしか採取できず、拡大根固め球根における掘削孔の側壁付近のコアは採取できない。また、いずれも原位置の土中試料とはなり難い。
【0010】
上述のような問題を解決することを目的として、例えば特許文献1〜4に記載されるように、アースオーガなどの掘削機のロッド部分あるいは拡大ヘッド部分に、セメントミルクやソイルセメントなどの土中試料を取り込む採取器あるいは採取空間を形成したものも種々開発されている。
【0011】
一方、拡大根固め球根の築造に関しては、アースオーガの先端に接続される拡大ヘッドの拡径翼について、掘削時の回転抵抗を利用して拡縮させるものや、拡縮のためのリンク機構を有するもの、さらに油圧式の拡縮機構を有するものなど、種々の構造のものが開発されている。
【0012】
このうち、出願人が開発に関与したものとしては、特許文献5、6に記載されるように、内蔵させた油圧シリンダで、拡径翼を、直接、拡縮(伸縮)させるものがあり、油圧を必要とする反面、確実な拡縮ができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平08−049490号公報
【特許文献2】特開平08−135361号公報
【特許文献3】特開2001−073360号公報
【特許文献4】特開2006−241828号公報
【特許文献5】特開2007−009457号公報
【特許文献6】特開2001−073664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
背景技術の項で述べたように、従来は、品質の高い拡大根固め球根を築造するにあたり、地下深く、かつ幅広に築造される拡大根固め球根等について、隅々までその強度品質を直接確認できる有効な手法がなかった。
【0015】
また、前述した特許文献1〜3に記載されるものは、掘削機のロッドなど軸部分あるいは軸部分に近い位置での試料の採取しかできない上、採取器あるいは採取空間の開閉に別途、動力を必要としたり、ロッドの正回転、逆回転時の土圧を利用して開閉するものでは開閉動作に支障を来したり、逆回転時に土中試料に不要な土砂を混入させるなどの解決すべき課題が多く、正確な強度品質を確認する手段としては必ずしも有効ではなかった。
【0016】
また、特許文献4に記載されるものは、土砂採取口が横にあり、サンプル土砂が採取し難い。また、土砂採取口を閉じるための平板状のシャッターを設けているが、シャッターとパイプとの間に隙間が生じるなどして密閉されない場合が起きる。
【0017】
これに対し、本願の発明者は、特許文献5、6に記載されるような油圧シリンダ機構により径方向外側に伸縮可能な拡径翼を備えてなる拡大ヘッドについて、そのシリンダ機構を利用して、地下深くに充填された、また土砂と混合された拡大根固め球根における原位置の未硬化状態の根固め液、その他土中試料一般を原位置でのピンポイントで採取するための装置および方法の開発を行った。
【0018】
すなわち、本願発明は、アースオーガの先端に接続されるヘッドを用いた土中試料の採取装置と採取方法であって、土中試料を地盤内の原位置で、ピンポイントに採取でき、拡大根固め球根で土中試料を採取する場合、該球根部の中央や深さ方向からの採取だけでなく、側壁付近や横方向の原位置での採取も可能とする土中試料の採取装置、該採取装置を取り付けたヘッド、および該ヘッドを用いた土中試料の採取方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願の請求項1に係る土中試料の採取装置は、アースオーガの下端に接続され、径方向外側に伸縮可能な油圧シリンダ機構を備えてなるヘッドに設けられる土中試料の採取装置であって、外管と該外管の内側に収納される窓孔付きの内管を有し、前記油圧シリンダ機構の伸縮に連動して前記内管が前記外管から出入し、前記窓孔より土中試料が採取できるようになっていることを特徴とするものである。
【0020】
本発明では、ヘッドに設けられた油圧シリンダ機構により採取装置を作動させることを前提としており、具体的には、その油圧シリンダ機構を利用して二重管構造の採取装置の内管が外管から径方向外側に出入するようにしたものであり、別途、該出入のための動力等は必要としない。
【0021】
なお、上記の油圧シリンダ機構としては、従来、油圧シリンダ機構で拡縮する形式の拡径翼に用いられている油圧シリンダ機構をそのまま利用することができるが、拡径翼を構成せず上記のように内管を作動させるための専用の油圧シリンダ機構を設けてもよい。
【0022】
特許文献5に示すような油圧シリンダ機構により径方向外側に伸縮可能な拡径翼を利用する場合、拡径翼自体、内蔵される油圧シリンダ機構で伸縮する形式であるため、拡径時にアースオーガのロッドを逆回転させる必要がない。
【0023】
拡大根固め球根築造方法としての従来一般的な拡大ヘッドはアースオーガの逆転によって拡径翼が拡大する機構が多い。しかし、拡大ヘッドの直上にスパイラルロッドが装着されている場合などでは、逆転することによって掘削土砂が拡大根固め球根内に入り込み、拡大根固め球根内の根固め液に対する土砂の混合比率が増加することや、混ざり具合の悪さなどの影響で拡大根固め球根の強度低下を招くことがある。
【0024】
本発明で用いるヘッドでは、拡径翼を備える拡大ヘッド場合も、油圧シリンダ機構で伸縮する形式であるため、拡大掘削等も正回転で行うことができ、充填する根固め液に対し、不要な掘削土砂の混合が少なく、質の高い拡大根固め球根を得ることができる。
【0025】
本発明の土中試料の採取装置は、ヘッド自体に設けられるかヘッドに着脱可能に取り付けられる。これによって、拡大根固め球根からの土中試料の採取が容易となる。
【0026】
ヘッドに対する本発明の土中試料の採取装置の取り付けは、例えば該採取装置に設けた取付用鋼製板等の点溶接などによって行うことができる。点溶接の場合、接合部を特に加工する必要がなく、拡大ヘッドによる掘削時にも外れることがなく、該採取装置を拡大ヘッドから取り外す際にはバールなどの道具を用いて簡単に取り外すことができる。もちろん、接合部に加工を施し、ボルトなどで取り付けるようにすることもできる。
【0027】
本発明の土中試料の採取装置は、前述の通り、内管と外管からなる二重管構造となっており、内管には土中試料を採取するための窓孔は設けられている。そして、油圧シリンダ機構による伸縮動作に連動して、前記内管が前記外管から出入することにより、前記内管の窓孔が開いたり閉じたりするようになっている。このような構造とすることにより、土中試料をピンポイントで採取でき、また採取した土中試料を密閉状態で地上まで運び、確実に回収することができる。
【0028】
また、前記外管と内管は、それぞれがヘッドに別個に設けられている。これによって、ヘッドにおける油圧シリンダ機構による動作に連動させて前記内管を動作させることが容易となる。また、採取した土中試料を回収しやすく、採取装置の掃除もしやすい。なお、外管および内管は円筒管に限らず、両方または一方が角管であってもよい。
【0029】
本発明の主な適用対象である杭工事の場合、アースオーガによる掘削時には水あるいはベントナイト泥水などの掘削液を用いて掘削を行う場合が多く、その場合、掘削孔および拡大掘削による根固め球根部は掘削液が満たされた状態となる。
【0030】
根固め球根部については、根固め液として富配合のセメントミルクなどを用いることが多く、高い強度を必要とする場合は掘削泥水あるいは土砂の混合量を少なくすることが望ましい。例えば、地盤中(掘削孔内)に充填された土中試料を採取する場合、本発明では、油圧シリンダ機構による伸長動作に連動して原位置(採取位置)で採取装置の内管が外管から突出し、地盤中(掘削孔内)で攪拌された未硬化の状態の根固め液あるいは根固め液と土砂などの攪拌混合物(土中試料)が窓孔から内管内に侵入する。
【0031】
その後、油圧シリンダ機構を短縮方向に作動させることで、それに連動して採取位置で内管が外管内に収納され窓孔が外管の内面で塞がれ、その状態でヘッドを地上まで引き上げることで、地盤中の必要位置の土中試料をピンポイントで採取することができる。この採取した土中試料について、硬化後の圧縮強度の測定、その他の試験を行うことで、実施工による地盤内の硬化体の強度、品質等を正確に求めることができる。
【0032】
なお、土中試料は、対象となる土中試料の種類や経過時間等によって異なるが、杭工事で採取しようとする未硬化の試料は比較的粘性の高いものが多く、逆に掘削液は流動性がよいので、必ずしも採取装置の窓を閉じた状態にする必要はない。逆に、閉じずに、透孔やスリットなどを設けることで、掘削液等の採取しようとする土中試料以外のものが採取装置に入ってきた場合は、そこから漏出させることで除去することもできる。
【0033】
請求項2は、請求項1に係る土中試料の採取装置において、前記外管は前記油圧シリンダ機構を構成するシリンダ部分の側面に取り付けられており、前記内管はその先端部が前記油圧シリンダ機構を構成するロッド部分に取り付けられており、前記油圧シリンダ機構を伸長方向に作動させることで、前記内管を前記外管から突出させ、前記ヘッドを回転させることで、土中試料を前記窓孔から前記内管内に取り込み、前記油圧シリンダ機構を短縮方向に作動させることで前記内管を前記外管内に収納し、取り込んだ前記土中試料を前記内管内に保持させて回収できるようにしたことを特徴とするものである。
【0034】
本発明の採取装置は、別途、動力等は必要とせずに、ヘッドの油圧シリンダ機構による伸縮動作を利用してヘッドに設けた二重管構造の採取装置の土中試料を採取するための窓孔のある内管が外管から出入するようにしたものであり、請求項2では内管と外管が別個に取り付けられている場合の具体的な形態として、外管が油圧シリンダ機構を構成するシリンダ部分の側面に取り付けられ、内管の先端部が油圧シリンダ機構を構成するロッド部分に取り付けられている場合を限定したものである。
【0035】
このようにすることで、内管の出入動作も、油圧シリンダ機構による伸縮動作の動力を利用することができる。また、窓孔を内管の先端部に設けることにより、今まで採取しにくかった拡大根固め球根側壁付近の土中試料も容易に採取することができる。
【0036】
なお、ここでいうシリンダ部分やロッド部分は、例えば油圧シリンダの保護のためのカバーを有する場合、カバー部分も含めたシリンダ部分やロッド部分である。
【0037】
請求項3は、請求項2に係る土中試料の採取装置において、前記ヘッドが、油圧シリンダ機構により作動する拡径翼を備えた拡大ヘッドであることを特徴とするものである。
【0038】
この場合、拡大ヘッドが拡大根固め球根の拡大掘削のための拡大ヘッドと土中試料の採取用のヘッドを兼ねるようにすることができる。また、油圧シリンダ機構で拡縮する形式の拡径翼に用いられている油圧シリンダ機構をそのまま利用することもできる。
【0039】
請求項4は、請求項1に係る土中試料の採取装置において、前記外管は前記ヘッドの本体部分に取り付けられており、前記内管はその先端部が前記油圧シリンダ機構を構成するロッド部分に取り付けられており、前記油圧シリンダ機構を伸長方向に作動させることで、前記内管を前記外管から突出させ、前記ヘッドを回転させることで、土中試料を前記窓孔から前記内管内に取り込み、前記油圧シリンダ機構を短縮方向に作動させることで前記内管を前記外管内に収納し、取り込んだ前記土中試料を前記内管内に保持させて回収できるようにしたことを特徴とするものである。
【0040】
請求項2では外管が油圧シリンダ機構を構成するシリンダ部分の側面に取り付けられている場合であるのに対し、請求項4では外管がヘッドの本体部分に取り付けられている場合を限定したものである。特許文献5に示されている拡径翼を改造して採取装置にする場合、シリンダ部分を外管として利用することもできる。
【0041】
内管の出入動作や、油圧シリンダ機構による伸縮動作の動力を利用する点、窓孔を内管の先端部に設けることにより、今まで採取しにくかった拡大根固め球根側壁付近の土中試料も容易に採取することができる点などは、請求項2の場合と同様であるが、外管をヘッドの径方向内側に近づけることで、ヘッド全体をよりコンパクトな構造とすることができる。
【0042】
請求項5は、請求項1〜4に係る土中試料の採取装置において、前記内管の後端部には、内管内に取り込まれた土中試料を取り出すための蓋が設けられていることを特徴とするものである。
【0043】
地上に引き上げられた採取装置の内管から、採取した土中試料を回収する際、ヘッドごと傾けて取り出すのは危険であり、またヘッドから採取装置を取り外すことも考えられるが、内管の後端部に開閉可能なあるいは取り外し可能な蓋を設けておけば、蓋を開けて内部の土中試料を簡単に取り出すことができる。
【0044】
請求項6は、請求項1〜4に係る土中試料の採取装置において、前記内管の後端部には、内管内への後からの流入物の侵入圧により先の流入物が抵抗を受けつつ、内管外へ流出可能な透孔またはスリットが設けられていることを特徴とするものである。
【0045】
ここで言う後からの流入物とは、比較的粘性の高い未硬化の採取試料等である。先の流入物とは、採取試料以外に、先に内管内に流入してくるものであり、掘削液や根固め液に不均一に掘削液や一部掘削土砂が混じった比較的流動性のよいものである。
【0046】
根固め液中、あるいは土中で拡径翼を伸長し、内管を外管から突出させて窓孔を開いた場合、例えば未硬化の根固め液と掘削液や掘削土砂からなる土中試料が不均一になっていると、流動性のある未硬化の根固め液等(先の流入物)は、内管の窓孔から直ちに内管内に侵入するが、施工終了後の均一に攪拌混合された状態の土中試料を採取するためには先の流入物で内管内が閉塞されないようにすることが望ましい。
【0047】
請求項6では、内管の後端部に透孔またはスリットを設けることで、先の流入物が抵抗を受けつつ、内管外へ流出し、内管の閉塞を防止することができる。
【0048】
請求項7に係る発明は、アースオーガの下端に接続され、径方向外側に伸縮可能な油圧シリンダ機構を備えてなる採取ヘッドであって、前記油圧シリンダ機構を構成する部分に、請求項1、4、5または6に係る土中試料の採取装置が設けられていることを特徴とするものである。
【0049】
ここで言う採取ヘッドとは、土中試料採取装置からなる土中試料採取専用のヘッドを言い、採取装置をヘッド本体に設けた状態では、ヘッドと採取装置とを一体に取り扱うことができる。この採取ヘッドは、未硬化の根固め液等が充填された拡大根固め球根から土中試料を採取するために専用に用いられる。発明の効果は請求項1〜6と同様である。
【0050】
請求項8に係る発明は、アースオーガの下端に接続され、アースオーガの下端に接続され、掘削刃と、油圧シリンダ機構により径方向外側に伸縮可能な拡大掘削するための拡径翼を備えてなる拡大ヘッドであって、前記拡径翼の前記油圧シリンダ機構を構成する部分に、請求項1、2、3、5または6に係る土中試料の採取装置が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0051】
この請求項8は、特に油圧シリンダ機構が拡大ヘッドの拡径翼を構成している場合であり、拡大ヘッドが拡大根固め球根の拡大掘削のための拡大ヘッドと土中試料の採取用の拡大ヘッドを兼ねている場合である。
【0052】
請求項9に係る土中試料の採取方法は、杭施工における既に充填されている未硬化状態の土中試料の採取方法であって、請求項7または8に係るヘッドを、所定の深度まで採取装置における内管を外管に収納したまま挿入し、該深度でアースオーガに接続された前記ヘッドの油圧シリンダ機構を伸長方向に作動させることで前記内管を前記外管から突出させ、前記窓孔より原位置での未硬化状態の土中試料を内管内に取り込み、その後、前記油圧シリンダ機構を短縮方向に作動させて前記内管を前記外管内に収納することにより、取り込んだ土中試料を内管内に保持したまま採取装置を地上に引き上げ、前記内管内の土中試料を回収することを特徴とするものである。
【0053】
請求項9は、主としてアースオーガによる杭孔の掘削、拡大根固め球根部の拡大掘削、根固め液の充填、根固め液と一部残った掘削液や掘削土砂との攪拌混合などが完了した後、一旦、アースオーガを引き上げ、アースオーガのヘッドを予め本発明に係る採取装置を備えた採取ヘッド等のヘッドに交換し、該ヘッドを所定の深さまでは外管内に内管を収納した状態で杭孔内に挿入し、試料を採取する所定の深さでヘッドの油圧シリンダ機構を伸長方向に作動させて内管を記外管から突出させ、原位置で窓孔より未硬化状態の根固め液あるいは根固め液と土砂等の混合物(土中試料)を内管内に取り込み、採取するというように、掘削孔への充填完了後に採取する場合の採取方法である。
【0054】
なお、前記杭孔の掘削、拡大根固め球根の拡大掘削、根固め液の充填、攪拌混合等は、他の装置、他の工法で行い、土中試料の採取だけのために、その杭孔にアースオーガに本発明の採取装置を設けたヘッドを挿入し、土中試料の採取を行うこともできる。
【0055】
この採取方法を用いれば、実施工で充填された原位置の採取試料を確実に採取することができる。また、採取装置を設けるヘッドの大きさを変えれば、拡大根固め球根における種々の位置での土中試料を採取することができる。さらには、拡大根固め球根位置に限らず、それより上方の杭周位置における杭周固定液や杭周固定液と掘削土砂との混合物についての原位置での土中試料の採取等にも用いることができる。採取する際、ヘッドはゆっくり回転させることが好ましい。
【0056】
請求項10に係る土中試料の採取方法は、杭施工における拡大根固め球根に充填しつつある、もしくは充填し終わった直後の未硬化状態の土中試料の採取方法であって、請求項8に係る拡大ヘッドをアースオーガに接続し、拡径翼を縮径させたまま拡大ヘッド回転させて掘進し、地盤内の所定の深度で前記拡大ヘッドの拡径翼を拡径させて拡大根固め球根の拡大掘削を行うとともに根固め液を充填し、充填中または充填直後の未硬化状態の根固め液または根固め液と土砂などの混合物からなる土中試料を、前記外管から突出している前記内管の窓孔より取り込み、その後、前記拡径翼を縮径させて前記内管を前記外管内に収納することにより、取り込んだ土中試料を内管内に保持したまま採取装置を地上に引き上げ、前記内管内の土中試料を回収することを特徴とするものである。
【0057】
請求項10は、主として、削孔するためのアースオーガに接続する拡大ヘッドの攪拌翼に、あらかじめ、本発明に係る土中試料採取装置を取り付けておき、アースオーガによる杭孔の掘削、拡大根固め球根の拡大掘削後に、根固め液の充填、もしくは一部残った掘削液や掘削土砂と攪拌混合しながら根固め液を充填すると同時に、もしくは充填が完了した直後に、外管から突出させた内管の窓孔より未硬化状態の根固め液あるいは根固め液と土砂等の混合物を内管内に取り込み、採取する場合である。
【0058】
この採取方法を用いれば、実施工で充填されている、もしくは充填された土中試料をピンポイントでタイムリーに採取できる。また、請求項8に係る採取方法のように、アースオーガを一旦引き上げ、拡大ヘッドを採取装置を設けたヘッドに交換する必要がないので、手間が省ける。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、土中試料を地盤内の原位置で、ピンポイントで採取でき、拡大根固め球根で土中試料を採取する場合、該球根部の中央や深さ方向からの採取だけでなく、側壁付近や横方向の原位置での採取ができる。
【0060】
また、本発明は拡大掘削が正回転で掘削可能な油圧シリンダ機構を有する拡大ヘッドを用いることで、これに採取装置を取り付ければ、杭工事における土中試料採取の場合でも正回転で掘削撹拌状態そのものの土中試料を採取することができ、実施工での充填物の正確な強度、品質を確認することができる。
【0061】
特許文献1〜3等、従来の提案されている多くの採取装置では、拡大根固め球根の中央付近の位置でしか土中試料の採取ができないのに対し、本発明によればヘッドの軸部から離れた位置の拡径翼先端付近(拡大根固め球根の側壁付近)の土中試料が採取可能であり、拡大根固め球根における位置の違いによる偏りやバラツキも確認できるので、より正確な判定が可能となる。
【0062】
ヘッドの油圧シリンダ機構を短縮方向に作動させることにより、採取装置の内管は外管内に収納され、内管に設けられた窓孔も閉塞され、採取試料が内管内に密閉される構造であるため、必要な箇所(原位置)の土中試料をピンポイントで採取できるとともに、採取した試料が採取してから回収するまでの間に他位置の土中物と混合されてしまう恐れがないので、各位置での土中試料の強度品質を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】(b)は本発明の実施例1における土中試料の採取装置が取り付けられるシリンダ機構により拡径翼が伸縮する拡大ヘッドの正面図、(c)は同じく側面図、(d)は同じく底面図、(a)は拡大ヘッドへの土中試料の採取装置の取付け状態を示す平面図である。
【図2】(a)は本発明の土中試料の採取装置の透視斜視図、(b)は内管から外管が出て窓孔が開いた状態の平面図、(c)は内管から外管が出て窓孔が開いた状態の正面図、(d)は内管が外管内に入り窓孔が閉じた状態の正面図である。
【図3】(a)〜(f)は、拡大根固め球根における本発明の土中試料の採取方法の実施形態における手順を示す断面図である。
【図4】(a)は本発明の実施例3における採取ヘッドに設けられた土中試料の採取装置の平面図、(b)は採取ヘッドの正面図、(c)は同じく側面図、(d)は同じく底面図である。
【図5】(a)は実施例3における採取ヘッドのより詳細な構造を示す水平断面図、(b)は油圧シリンダと採取装置先端の連結部分の詳細を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明の具体的な実施の形態について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0065】
実施例1は、拡大ヘッドを用いた採取装置の実施例である。
【0066】
図1は、本発明の土中試料の採取装置1(以下、単に採取装置という)が取り付けられるシリンダ機構により拡径翼15が伸縮する拡大ヘッド11の一実施形態(実施例1)を示したもので、図1(b)〜(d)は、それぞれ採取装置1を取り付けていない状態の拡大ヘッド11の正面図、側面図、底面図であり、図1(a)は拡大ヘッド11に採取装置1を取り付けた状態を示す平面図である。
【0067】
なお、図1では、軸部12を挟み水平方向に設けられた油圧シリンダを内蔵する1対の拡径翼15の一方が伸び、他方が縮んでいる状態を示しているが、実際には2つの拡径翼15が同時に伸び、同時に縮むように制御する。また、図1(a)の上方には拡径翼15の伸長に伴い、これに取り付けた二重管構造の採取装置1も伸び、内管3が外管2から突出している状態を示し、下方には、拡径翼15が縮んでいる状態に対応して、採取装置1も縮み、内管3が外管2内に収納されている状態を示している。採取装置1はこのように一つのヘッドに2個取り付けてもよい。
【0068】
図1に示した拡大ヘッド11の基本部分は既存のものであり、下端に先端ビット13aを複数備えた掘削刃13を有し、その上方に掘削土砂を上方へ押し上げる2枚の螺線翼14が設けられ、その2枚の螺線翼14間に軸部12を挟んで互いに逆方向へ伸縮可能な撹拌用の拡径翼15が設けられている。
【0069】
拡径翼15は、特許文献5、6に記載されたものと同様の機構を有するものであり、内蔵した油圧シリンダのロッド15bが油圧によりシリンダ15aから出入することで、径方向外側に伸縮するようになっている。また、ロッド15bの先端には主として拡大根固め球根の掘削のための掘削爪15cが設けられている。
【0070】
拡大ヘッド11の上端は雄継手16が形成されアースオーガ等のロッドに接続できるようになっている。また、軸部12にはアースオーガ等のロッドの配管と接続される配管が設けられており、下端部の吐出口17から掘削液や根固め液を吐出できるようになっている。
【0071】
この拡大ヘッド11は、拡径翼15が油圧により強制的に伸縮するため、拡大根固め球根の拡大掘削時にも逆回転させる必要がなく、常に正回転で施工できるため、螺線翼が土砂を押し下げて根固め液に土砂が大量に混ざってしまうことにより、根固めの強度を低下させるといった問題がない。
【0072】
採取装置1は、図2をもとに後に詳述するように、外管2の内側に内管3が収納される二重管構造になっており、これら外管2と内管3は拡径翼15に対し、別個に取り付けられている。図1の実施形態では、外管2は2枚の外管取付け板6a、6bにより、拡径翼15の油圧シリンダ機構を構成するシリンダ15a部分の側面に点溶接などで取り付けられ、また内管3の先端部が内管取付け板7により拡径翼15のロッド15bの先端部分側面に点溶接などで取り付けられている。
【0073】
油圧により拡径翼15を拡径させると、ロッド15bの伸長に連動して内管3が外管2から突出し、拡大ヘッド11の回転により、土中の撹拌された未硬化の根固め液あるいは根固め液と土砂の混合物(土中試料)が内管3に形成された窓孔4から内管3内に取り込まれ、拡径翼15を縮径させると、ロッド15bの移動に連動して内管3が外管2内に収納され、取り込んだ土中試料を内管3内に保持した状態で回収することができる。
【0074】
図2は、本発明の採取装置1の具体例を示したもので、(a)は採取装置1の構造を示す透視斜視図、(b)は採取装置1が伸びた状態の平面図、(c)は採取装置1の内管3が伸びた状態の正面図、(d)は採取装置1の内管3が縮まった状態の正面図である。
【0075】
採取装置1の寸法は特に限定されないが、例えば縮まった状態の長さが250〜800mm程度、伸びた状態の長さが400mm〜950mm程度、外管2の径が80〜250mm程度、内管3の外径が60〜220mm程度であり、内管3は外管2に対し、スムーズに出入できる隙間を残して、外管2内に収まる構造となっている。なお、外管2および内管3は、円管に限らず角管でもよい。
【0076】
前述したように、基本的には、採取装置1の外管2が2枚の外管取付け板6a、6bにより、拡径翼15のシリンダ15a部分の側面に点溶接などで取り付けられ、内管3の先端部が内管取付け板7により拡径翼15のロッド15aの先端部分側面に点溶接などで取り付けられるようになっているが、より具体的には図中、18a、18b、18cで示すシリンダ側取付け板と外管取付け板6a、6bおよび内管取付け板7とがボルトなどで接合され、シリンダ側取付け板18a、18b、18cを拡径翼15に点溶接している。
【0077】
本実施形態においては、円筒状の内管3の上面に土中試料を取り込むための窓孔4が形成され、先端側は蓋5で閉塞されている。先端側を蓋で閉塞しておいた方が採取試料を内管3の窓孔4に取り込みやすくなるので好ましい。窓孔4の寸法、形状、位置、数等は特に限定されない。図2では、先端近くに1つ設けてある。
【0078】
窓孔4は、内管3が外管2から出ている時(図2(b))に開口し、内管3が外管2内に引っ込んでいる時(図2(d))に閉口する。
【0079】
内管3の後端と中間の一箇所には、それぞれゴム板取付け板8a、8bを介して、ウレタン製のゴム板9a、9bが取り付けられている。ゴム板9a、9bにはそれぞれ複数の貫通孔(透孔)10が形成されており、未硬化の根固め液あるいは根固め液と土砂の混合物などの土中試料である後からの流入物を取り込む際、ゴム板9a、9bで抵抗を与えつつ、採取試料以外の先の流入物を内管3の外に放出させ、土中試料が確実に取り込めるようにしている。
【0080】
貫通孔10の形状はスリット状にしてもよく、大きさや数は特に限定されない。流動性の高い流入物は速やかに放出され、粘性が高く流動性の低い流入物は留まるようになっているのが好ましい。したがって、流動性の高い土中試料の採取には、この形状の採取装置は向かない。
【実施例2】
【0081】
実施例2は、拡大ヘッドを用いた採取装置による土中試料の採取方法の実施例である。
【0082】
図3は、本発明の土中試料の採取方法の一実施形態として、オプションとしての電気比抵抗測定を併用した場合の作業手順を示したもので、以下の手順で作業が行われる。
【0083】
(1) 所定深度まで掘削(図3(a))
アースオーガ21などの掘削機械を用い、先端に取り付けた拡大ヘッド11の拡径翼15を閉縮させた状態で、ロッドを正回転させて、所定深度まで杭孔22を掘削する。
【0084】
(2) 拡大根固め球根の拡大掘削(図3(b))
アースオーガ21に接続した拡大ヘッド11(拡大ヘッドA)の拡径翼15を油圧で拡径させ、ロッドを正回転させて、拡大根固め球根23の拡大掘削を行う。
【0085】
(3) 拡大ヘッドの交換、泥水の電気比抵抗測定(図3(c))
拡大ヘッド11(拡大ヘッドA)を、図1、図2に示した採取装置1と、拡径翼15(図1参照)の上部に電気比抵抗コーン(図示省略)を取り付けたもの(拡大ヘッドB)と交換し、拡大根固め球根23に挿入し、泥水の電気抵抗測定を行う。
【0086】
(4) 根固め液注入、根固め築造(図3(d))
再び、拡大ヘッド11(拡大ヘッドB)をもとの拡大ヘッド11(拡大ヘッドA)に交換し、拡大ヘッド11(拡大ヘッドA)を正回転させながら、拡大ヘッド11の先端部からセメントミルクなどの根固め液24を拡大根固め球根23に注入、充填し、拡大根固め球根の築造を行う。
【0087】
(5) 根固め液採取、電気比抵抗測定(図3(e))
再び、拡大ヘッド11(拡大ヘッドA)を、採取装置1を取り付けた拡大ヘッド11(拡大ヘッドB)に交換し、これを拡大根固め球根23に挿入し、例えば、根固め築造直後および1時間後というように、時間をおいて、拡大根固め球根23に充填されている原位置での未硬化状態の根固め液あるいは根固め液と土砂の混合物(土中試料)の採取および根固め液の電気比抵抗測定を行う。
【0088】
なお、採取は、拡大ヘッド11(拡大ヘッドB)の拡径翼15を縮径させた状態で、拡大根固め球根23の採取深さまで挿入し、拡大ヘッド11(拡大ヘッドB)を回転させながら拡径翼15を伸長し、窓孔を開いて採取する。
【0089】
(6) 引き上げ(図3(f))
予定の試料採取および電気比抵抗測定が完了したら、拡径翼15を縮径し、採取試料を内管3内に密閉保持したまま、アースオーガ21とともに拡大ヘッド11(拡大ヘッドB)を引き上げる。採取した土中試料は、圧縮強度試験、その他の試験を行い、強度、品質等を確認する。
【0090】
なお、本実施形態では本発明の採取装置による土中試料の採取と平行して、電気比抵抗測定を併用することで、泥水が逸水していないか、根固め液がきちんと充填されているか、掘削攪拌状況が均一であるかどうかなど、攪拌効果がその場で確認でき、トータルな拡大根固め球根の管理システムとなる。
【0091】
また、最初から拡大ヘッドB(ただし、電気比抵抗コーンはとりつけられていない)を用いて掘削と土中試料の採取を行う場合は、図3(c)と図3(d)に示されるヘッドの交換、図3(c)と図3(e)に示される電気比抵抗の測定は省力される。
【実施例3】
【0092】
実施例3は、土中試料の採取専用の採取ヘッドを用いた採取装置の実施例である。
【0093】
図4は、土中試料の採取装置が油圧シリンダ機構により径方向に伸縮するようにした採取ヘッド41の実施形態(実施例3)を示したもので、図4(a)は採取ヘッドにおける土中試料の採取装置の設置状態を示す平面図、図4(b)〜(d)は、それぞれ正面図、側面図、底面図である。
【0094】
また、図5(a)は実施例3における採取ヘッド41のより詳細な構造を示す水平断面図、図5(b)は油圧シリンダ45と採取装置31先端の連結部分の詳細を示す側面図である。
【0095】
なお、この実施例3の採取ヘッドは、特許文献5に示されるような従来の油圧シリンダ機構により径方向外側に伸縮可能な一対の拡径翼を備えてなる拡大ヘッドを基に加工し、土中試料の採取専用の採取ヘッド41としたものである。
【0096】
すなわち、一方の拡径翼については、拡径翼を構成していた油圧シリンダ45のロッド先端の掘削爪を外して、連結用フランジ45cを取り付け、他方の拡径翼については、油圧シリンダのシリンダ部分の筒を採取装置31の外管32として残し、外管32を貫通するように採取装置31の内管33を設けている。
【0097】
採取装置31の内管33の先端は、連結アーム37を介して、油圧シリンダ45のロッド先端に取り付けた連結用フランジ45cと連結され、油圧シリンダ45の伸縮に連動して、外管32から内管33が出入するようになっている。
【0098】
内管33には、実施例1と同様に窓孔44が形成されており、油圧シリンダ45を伸長させると、ロッド45bの伸長に連動して採取装置31の内管33が外管32から突出し、採取ヘッド41の回転により、土中の撹拌された未硬化の根固め液あるいは根固め液と土砂の混合物(土中試料)が内管33に形成された窓孔34から内管33内に取り込まれ、油圧シリンダ45を縮めると、ロッド45bの移動に連動して内管33が外管32内に収納され、取り込んだ土中試料を内管33内に保持した状態で回収することができる。
【0099】
また、実施例3においては、内管33の後端部には、内管33内に取り込まれた土中試料を取り出すための蓋35が設けられており、地上に引き上げられた採取装置31の内管33から、採取した土中試料を回収する際、この蓋35を開けて内部の土中試料を簡単に取り出すことができる。
【0100】
図示した例では蓋35がねじ式に取り付けられており、締め付け方向と反対方向に回転させることで、蓋35を取り外すことができるが、蓋35の開閉方式はこれに限定されるものではなく、種々考えられる。
【0101】
その他の構成や、使用方法は、実施例1と同様である。すなわち、図3に示す作業手順で、前記拡大ヘッドBに代えて採取ヘッド41を用いて土中試料を採取することができる。
【0102】
また、採取装置31の寸法も特に限定されず、実施例1の場合と同様、外管32の径が80〜250mm程度、内管33の外径が60〜220mm程度であり、内管33は外管32に対し、スムーズに出入できる隙間を残して、外管2内に収まる構造となっている。なお、外管32の内面と内管33の外面との間にはOリングを介在させるなどして土中試料の漏れなどを防ぐようにすることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明に係る土中試料の採取装置および採取方法は、主として杭施工における根固め液または根固め液と掘削土砂との混合物(土中試料)の採取を目的としたものであるが、それに限定されず、地質調査等のための土中試料一般の採取にも利用可能である。
【符号の説明】
【0104】
1…採取装置、2…外管、3…内管、4…窓孔、5…蓋、6a、6b…外管取付け板、7…内管取付け板、8a、8b…ゴム板取付け板、9a、9b…ゴム板、10…貫通孔、
11…拡大ヘッド、12…軸部、13…掘削刃、13a…先端ビット、14…螺線翼、15…拡径翼、15a…シリンダ、15b…ロッド、15c…掘削爪、16…雄継手、17…吐出口、18a、18b、18c…シリンダ側取付け板、
21…アースオーガ、22…杭孔、23…拡大根固め球根、24…根固め液
31…採取装置、32…外管、33…内管、34…窓孔、35…蓋、37…連結アーム、
41…採取ヘッド、42…軸部、43…掘削刃、43a…先端ビット、44…螺線翼、45…油圧シリンダ、45a…シリンダ、45b…ロッド、45c…連結用フランジ、46…雄継手、47…吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アースオーガの下端に接続され、径方向外側に伸縮可能な油圧シリンダ機構を備えてなるヘッドに設けられる土中試料の採取装置であって、外管と該外管の内側に収納される窓孔付きの内管を有し、前記油圧シリンダ機構の伸縮に連動して前記内管が前記外管から出入し、前記窓孔より土中試料が採取できるようになっていることを特徴とする土中試料の採取装置。
【請求項2】
前記外管は前記油圧シリンダ機構を構成するシリンダ部分の側面に取り付けられており、前記内管はその先端部が前記油圧シリンダ機構を構成するロッド部分に取り付けられており、前記油圧シリンダ機構を伸長方向に作動させることで、前記内管を前記外管から突出させ、前記ヘッドを回転させることで、土中試料を前記窓孔から前記内管内に取り込み、前記油圧シリンダ機構を短縮方向に作動させることで前記内管を前記外管内に収納し、取り込んだ前記土中試料を前記内管内に保持させて回収できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の土中試料の採取装置。
【請求項3】
前記ヘッドは、油圧シリンダ機構により作動する拡径翼を備えた拡大ヘッドであることを特徴とする請求項2記載の土中試料の採取装置。
【請求項4】
前記外管は前記ヘッドの本体部分に取り付けられており、前記内管はその先端部が前記油圧シリンダ機構を構成するロッド部分に取り付けられており、前記油圧シリンダ機構を伸長方向に作動させることで、前記内管を前記外管から突出させ、前記ヘッドを回転させることで、土中試料を前記窓孔から前記内管内に取り込み、前記油圧シリンダ機構を短縮方向に作動させることで前記内管を前記外管内に収納し、取り込んだ前記土中試料を前記内管内に保持させて回収できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の土中試料の採取装置。
【請求項5】
前記内管の後端部には、内管内に取り込まれた土中試料を取り出すための蓋が設けられていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の土中試料の採取装置。
【請求項6】
前記内管の後端部には、内管内への後からの流入物の侵入圧により先の流入物が抵抗を受けつつ、内管外へ流出可能な透孔またはスリットが設けられていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の土中試料の採取装置。
【請求項7】
アースオーガの下端に接続され、径方向外側に伸縮可能な油圧シリンダ機構を備えてなる採取ヘッドであって、前記油圧シリンダ機構を構成する部分に、請求項1、4、5または6記載の土中試料の採取装置が設けられていることを特徴とする採取ヘッド。
【請求項8】
アースオーガの下端に接続され、掘削刃と、油圧シリンダ機構により径方向外側に伸縮可能な拡大掘削するための拡径翼を備えてなる拡大ヘッドであって、前記拡径翼の前記油圧シリンダ機構を構成する部分に、請求項1、2、3、5または6記載の土中試料の採取装置が取り付けられていることを特徴とする拡大ヘッド。
【請求項9】
杭施工における既に充填されている未硬化状態の土中試料の採取方法であって、請求項7または8記載のヘッドを、所定の深度まで採取装置における内管を外管に収納したまま挿入し、該深度でアースオーガに接続された前記ヘッドの油圧シリンダ機構を伸長方向に作動させることで前記内管を前記外管から突出させ、前記窓孔より原位置での未硬化状態の土中試料を内管内に取り込み、その後、前記油圧シリンダ機構を短縮方向に作動させて前記内管を前記外管内に収納することにより、取り込んだ土中試料を内管内に保持したまま採取装置を地上に引き上げ、前記内管内の土中試料を回収することを特徴とする土中試料の採取方法。
【請求項10】
杭施工における拡大根固め球根に充填しつつある、もしくは充填し終わった直後の未硬化状態の土中試料の採取方法であって、請求項8記載の拡大ヘッドをアースオーガに接続し、拡径翼を縮径させたまま拡大ヘッド回転させて掘進し、地盤内の所定の深度で前記拡大ヘッドの拡径翼を拡径させて拡大根固め球根の拡大掘削を行うとともに根固め液を充填し、充填中または充填直後の未硬化状態の根固め液または根固め液と土砂などの混合物からなる土中試料を、前記外管から突出している前記内管の窓孔より取り込み、その後、前記拡径翼を縮径させて前記内管を前記外管内に収納することにより、取り込んだ土中試料を内管内に保持したまま採取装置を地上に引き上げ、前記内管内の土中試料を回収することを特徴とする土中試料の採取方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−12534(P2011−12534A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244656(P2009−244656)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(597058664)株式会社トーヨーアサノ (24)
【Fターム(参考)】