説明

土嚢袋ガイド枠および土嚢袋ガイド枠を用いた土嚢袋工法

【課題】 各土嚢袋の底に置かれ、複数の土嚢袋を整列して連結する土嚢袋ガイド枠を提供する。
【解決手段】 各土嚢袋40の底に置き各土嚢袋を整列させるために、板状リブ11で矩形の土嚢袋ガイド枠10を形成し、その土嚢袋40の外側から板状リブ11に設けられた小孔に固定片20のピン23a,23bを挿入し、その後固定片20の矩形孔22および板状リブ11の結合孔13を貫通して接続片30の爪33a,33bを挿入することによって、複数の土嚢袋ガイド枠10を格子状に結合する。その後、結合された土嚢袋40の各々に資材を袋詰めする。このような工法によって、土嚢袋40を敷設する時間が大幅に短縮され、経済的効果が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地盤の補強等に用いられる土嚢袋およびその土嚢袋を用いた土嚢袋工法に関する。特に、土、砂、砂利、ガラス紛他の粒状体(以下、資材という)を袋詰めする土嚢袋の底に置かれる土嚢袋ガイド枠およびその土嚢袋ガイド枠を用いた土嚢袋工法に関する。
【背景技術】
【0002】
資材を袋詰めにした土嚢袋は、近年、災害復旧工事、トンネル杭口災害復旧工事、急峻地形補強工事、水辺盛土工事、構造物の裏込め工事、構造物の基礎工事、軟弱地盤対策工事、液状化対策工事等に用いられている。このような土嚢袋は、工場で資材を袋詰めして工事現場に運ぶ方法、工事現場で資材を一袋ずつ袋詰めする方法等がある。
【0003】
前者の、工場で袋詰めして工事現場に運ぶ方法は、工場で袋詰めされた土嚢袋を現場まで運ぶために工事の種類によっては大型のトラックで何百回も運搬する必要が有り、運搬費用がかさみ工事費が高くなる欠点がある。一方、土嚢袋を工事現場で一袋ずつ袋詰めして作成する方法は、袋詰めに時間がかかり、工事が遅々として進まない欠点がある。
【0004】
上記の工場で袋詰めして工事現場に運ぶ方法は、
1)資材を工場で袋詰めするので、コストの問題、製品劣化、現場での移動手間(重い為)などの問題が生じる。
2)土嚢袋の重量が重い為、作業者の重労働となる。また、輸送中の振動による土嚢袋の形状変化や、積み下ろしの際土嚢袋が破けるなど、土嚢袋の大きさや、品質に若干の誤差が生じる為、希望した位置に格子状に正確に並べることが難しい。
3)土嚢袋を積層する際、一袋ずつ圧力を加え、土嚢袋に必要な張力を発生させ、かつ隣接する土嚢同士が接触するようにしなければならない。土嚢袋の最終形状は圧力を加えた後に決定されるために、従来の工法によれば、土嚢の細かな位置調整が絶えず必要となり、希望する位置に格子状に正確に並べるために多大な作業時間を要する。
以下に工事現場で一袋ずつ袋詰めする方法の従来例を示す。
【0005】
第1の従来例
工事現場で一袋ずつ袋詰めする第1の従来例として、例えば、特開昭58―16215(特許文献1)がある。この第1の従来例に開示された土嚢袋は、一定の土量を投入することが出来るように、フックのついた枠組みを土嚢袋に収容している。図9は特許文献1に開示された成型土嚢袋を示す図である。図9(A)は、土嚢袋に収容する枠組を示す斜視図である。図9(B)は、土嚢袋に枠組を収容している様子を示す図である。図9(C)は、土嚢袋が完成した様子を示す図である。図9(A)に開示された枠組61は鉄筋、番線等の金属線やプラスチックで造られるものである。このような枠組み61を図9(B)に示すように土嚢袋62に収容し、その中に資材を詰めることによって、図9(C)に示すような立方体の形状をした土嚢袋が得られる。このように、土嚢袋62中に枠組み61を入れてから、資材を袋詰めすることによって、従来2人で袋詰めしていたものが一人で袋詰め出来、労力の軽減が図れる。
【0006】
また、枠組み61を土嚢袋62に入れておけば、形状が一定しているので、全ての土嚢袋が一定の規格になるというメリットがある。図9(D)は、枠組の一部分にフックを設けた図である。このように、枠組み61にフック63を設けることによって、土嚢袋62を積むときにお互いのフックを絡ませていけば、土嚢袋62がお互いに引っ張り合うことになり、より以上の崩壊をふせぐことが出来る。
【0007】
第2の従来例
また、工事現場で一袋ずつ袋詰めする第2の従来例として、例えば、特公昭47−42301(特許文献2)がある。図10は、第2の従来例の土嚢袋用底体を有する土嚢袋を示す図である。この第2の従来例に開示された土嚢袋は、土嚢袋71の」底部に図10(A)に示すように、土嚢袋71の胴周囲長さと同じ長さの周囲長を有する長方形の底体72を挿入するものである。底体72は化学変化を起こさない、例えば、合成樹脂発泡体等の板に準じるものを用いている。また、この底体72は土嚢袋71の底の方向から土嚢袋71に挿入された後、底体72が土嚢袋71からはずれないように定着帯73を外部から巻き付け、さらに、土嚢袋71の底部の布を両端部で三角状の耳状部74をそれぞれ内側に折り曲げて底面に固着している。このようにして造られた土嚢袋71を底面が側方に向くようにして積み上げられた様子を図10(B)に示す。したがって、その効果として、ブロックを積み上げたような形状を得ることが出来るものである。
【特許文献1】特開昭58―16215
【特許文献2】特公昭47−42301
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記第1の従来例の土嚢袋工法では、土嚢袋62を立ててその中に枠組み61を入れて、その状態で資材を袋詰めするようになっている。このようにして造られた土嚢袋を横向きにして、袋詰めした場所とは異なるところまで運んで、複数の土嚢袋62を配列するものである。すなわち、土嚢袋を造ってから袋詰めした場所とは異なるところまで運ぶ必要があるために、運搬が必要でるので作業量は減少しないという欠点があった。また、フックを設けた枠組みを中に入れた土嚢袋においては、フックが土嚢袋の中に入り込んで、それを土嚢袋62から外に引き出した後にフックを絡み合わせるという行程が増えるために、やはり作業の軽減は図れない。
【0009】
第1の従来例の土嚢袋工法の欠点を述べる前に、土嚢袋工法の基本的な原理について説明する。土嚢袋に資材(粒状材料)を入れ、これに上から外力を加えると、密に詰められた中詰資材は土嚢袋を中から外に押す。この力に対して土嚢袋は横方向に広がるが、土嚢袋の張力によって粒子相互間に圧力がかかり、粒子間には摩擦力が働き、粒子同士はズレにくくなる。つまりこの摩擦力がノリの働きをし、コンクリートの塊を袋に入れたのと同じ状態となり、土嚢袋に驚異的な強度をもたらす。このように1つの土嚢袋においては、土嚢袋に上から外力をかけると内部が圧縮された大きな強度の土嚢袋が得られる。一方、地盤補強等をする際、土嚢袋をいくつも横方向に並べるとともに、必要段数を積層していくが、複数の土嚢袋を並べた横方向の強度は、各土嚢袋同士を並べたときに各土嚢間に適切な隙間があり、横方向に並べた状態で上から外圧を加えたときに隣接しあう土嚢袋同士が適切な接触状態を確保する必要がある。このように複数の土嚢袋が横方向に適切な接触状態で施工された土嚢袋は、一体性を増し、荷重分散、振動減衰などの優れた特性を示す。
【0010】
上述のように、1つの土嚢袋の強度は土嚢袋に圧力を加えることによって生じる。上記第1の従来例ではほぼ同様の大きさの土嚢袋が製造可能であるが、図9(A)に示されるように、全ての角部に枠材がある為、土嚢袋に圧力が加わった際、資材が十分に圧縮されず、資材間(粒子間)の摩擦が得られないために、土嚢の強度が強くならないという欠点がある。また、上記第1の従来例の土嚢袋工法では、フックがあるので、土嚢袋同士の連結は可能であるが、土嚢同士を個々に設置してから連結するので、連結された土嚢袋間の隙間を正確に調整出来ないため、土嚢袋同士が適切に接触するための隙間を開けて複数の土嚢袋を横方向に正確に並べていくことはできない。したがって、この第1の従来例では、複数の土嚢袋が適切な接触状態になるように施工することはできず、したがって、複数の土嚢袋が一体性を得られず、また荷重分散、振動減衰などの優れた特性を示すことはできない。
【0011】
上記第2の従来例の土嚢袋工法においては、個々の土嚢袋71の中に底体72を挿入して、定着帯73を取り付け、さらに土嚢袋71の底部の布を両端部で三角状の耳状部74をそれぞれ内側に折り曲げて底面に固着している。しかし、このように、個々の土嚢袋に対して底体72を取り付ける作業が必要となり、作業の軽減を図ることはできないという欠点がある。また、底体72を横にして使用するため、直線もしくは、垂直方向に対するゲージとはなるが、水平方向に対してのゲージ(基準)とはなり難く、また、土嚢の側面は、何らゲージの無い状態で置かれるため、土嚢袋を格子状に正確に並べる事が出来ない。さらに、底体72の材料は容易に変形しない物と記述されているが、硬質な材を使用すれば、土嚢袋に必要な張力を生じさせる妨げとなり、十分な強度が得られない。
【0012】
上述の課題を鑑み、本願発明は、各土嚢袋の底に土嚢袋ガイド枠を置き、複数の土嚢袋ガイド枠を接続片により、格子状に連結、整列した後に、資材を土嚢袋に袋詰めすることによって、設置後の土嚢袋の調整を不要とする土嚢袋ガイド枠および土嚢袋ガイド枠を用いた土嚢袋工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の課題を解決するために、請求項1の発明は、各土嚢袋の底に置き各土嚢袋を格子状に整列させるために用いられる、板状リブで矩形に形成される土嚢袋ガイド枠において、前記板状リブは、その中央部に形成された矩形孔と、その板状リブ上で前記矩形孔の長手方向の各外側に形成された小孔とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明は、前記土嚢袋ガイド枠は、前記相対応する板状リブの中央を相互に接続する梁を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、前記板状リブ上の前記小孔に挿入されるピンを有する固定片を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、前記固定片の中央に形成された矩形孔を貫通して前記板状リブ上の矩形孔に挿入される爪を有する接続片を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明は、前記土嚢袋中に置かれた土嚢袋ガイド枠を乗せるために、矩形状に形成された上枠および下枠からなり前記上枠の中間部分に前記接続片を結合するための切り欠きを有するベース枠を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明は、土嚢袋ガイド枠を中に入れた土嚢袋を複数個整列配置し、固定片のピンを土嚢袋の外側から前記ガイド枠の小孔に挿入し、前記固定片の内部の矩形孔を介して接続片の爪を板状リブの矩形孔に挿入することによって各ガイド枠を結合し、その後に、土嚢袋に資材を入れた後、土嚢袋の締め紐を引いて、土嚢袋の開口を締めることによって、複数の土嚢袋を格子状に整列配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、その中央部に形成された矩形孔と、その板状リブ上で矩形孔の長手方向の各外側に形成された小孔とを備えた板状リブで構成される土嚢袋ガイド枠を内部に置いた土嚢袋を基準ライン上の所定の位置に正確に並べる事ができる。また、土嚢袋を並べる作業において、土嚢袋に資材が入っていないため軽量な状態で作業ができる。また、袋上部より資材投入できるため、袋を資材投入した位置から動かさなくて済む他、袋の四辺に結び目がこない為、水平方向における密着性が上がり、強度が増す。
【0020】
また、固定片と接続片によって土嚢袋間に予め必要な張力が得られるための隙間を取ってあり、土嚢袋に資材を投入し、圧力を加えた後、格子状に最適な位置で収まるため、土嚢袋の微調整の必要なく、作業がスムーズに進められる。したがって、作業の効率化と正確さを確保でき、作業効率によるコストダウンをはかることができる。
【0021】
請求項2の発明によれば、土嚢袋ガイド枠は、相対応する板状リブの中央を相互に接続する梁を備ええるので、土嚢袋を平面上で格子状に整列させることができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、板状リブ上の小孔に挿入されるピンを有する固定片を備えるので、この固定片によって、ガイド枠と土嚢袋を固定する事が出来る。また現場で固定片を挿入する際のガイドにもなり、土嚢袋同士の接続を簡易に行う事が出来る。なお、このピンの取り付けは、工場で行ってもよく、現場でガイド枠を並べるときに行っても良い。
【0023】
請求項4の発明によれば、固定片の中央に形成された矩形孔を貫通して板状リブ上の矩形孔に挿入される爪を有する接続片を備えるので、土嚢袋同士が適切な圧力で接触するに必要な隙間を予め確保する事が出来る。またこの接続片によって隣り合うガイド枠同士が強固に固定されるので、土嚢袋同士が一体化し、強度が増す他、配列後の土嚢袋の位置調整が不要になる。
【0024】
請求項5の発明によれば、土嚢袋中に置かれた土嚢袋ガイド枠を乗せるために、矩形状に形成された上枠および下枠からなり前記上枠の中間部分に接続片を結合するための切り欠きを有するベース枠を備えるので、ぬかるみ等に土嚢袋を配列するときに、一番最下部の土嚢袋をゆがみなく整列させることができ、さらに一番下部に置かれるベース枠同士も確実に結合されるので、土嚢袋全体の一体化が増し、ぬかるみのような超軟弱地盤においても、強度補強の確実性が増す。
【0025】
請求項6の発明によれば、土嚢袋ガイド枠を中に入れた土嚢袋を複数個整列配置し、固定片のピンを土嚢袋の外側から前記ガイド枠の小孔に挿入し、前記固定片の内部の矩形孔を介して接続片の爪を板状リブの矩形孔に挿入することによって各ガイド枠及び土嚢袋を結合し、その後に、土嚢袋に資材を入れ、土嚢袋の締め紐を引いて、土嚢袋の開口を締めることによって、複数の土嚢袋を格子状に整列配置するので、土嚢袋ガイド枠を内部に置いた土嚢袋を基準ライン上の所定の位置に希望の強度が出るよう正確に並べる事ができ、また、土嚢袋を並べる作業において土嚢袋に資材が入っていないため軽量な状態で作業ができ、また、袋を資材投入した位置から動かさなくて済むために配列後の土嚢袋の位置調整が不要になる利点がある
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
第1実施形態
以下、本願発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本願発明の第1実施形態の土嚢袋ガイド枠の全体構成を示すものである。
【0027】
図1において、土嚢袋ガイド枠10は、土嚢袋の底に置いて複数の土嚢袋を整列させるためのガイドの働きをするものである。土嚢袋ガイド枠10は、4つの板状リブ11の各角を結合して形成され、各板状リブ11の中央には結合孔13が形成される。各板状リブ11の相対応する中央部には梁12が設けられ、土嚢袋を格子状に並べる際、ガイド枠の定型を維持する機能をはたす。この板状リブは、ポリプロピレン樹脂のような自立性はあるが、若干の外力で、容易に変形する材料を用いることができる。各板状リブ11上には結合孔13の長手方向の端に小孔14a、14bが形成される。なお、結合孔13は図面上では矩形形状をしているが、楕円、円等のその他の形状で形成してもよい。ここで、小孔14は、後で述べるように、固定片20に設けられたピン23を挿入するための孔であり、その形状は円、楕円、矩形等その他の形状でもよい。
【0028】
図2は、固定片の構成を示す図である。図2(A)は固定片20の斜視図を示す図である。図2(B)は、固定片20の平面図、正面図、側面図、底面図を示す図である。この固定片20は、固定片枠21で形成され、固定片枠21の中央には矩形孔22を有し、その側面にはピン23a,23bを有する。ピン23a,23bは後で述べるように、テーパ状になり、先端が細くなっている。固定片20は土嚢袋40の底部に土嚢袋ガイド枠10を置いた後、土嚢袋40の外側から土嚢袋ガイド枠10と結合する。この固定片20は、土嚢袋ガイド枠10と、土嚢袋を固定する役割を持つ他、接続片30の現場での取付作業を容易にする役割を有する。固定片20を土嚢袋ガイド枠10に結合するには、図1の2点鎖線の矢印A,Bで示すように、図示されない土嚢袋40の外側から目測で小孔14a,14bの位置を推定し、ピン23a,23bをそれぞれ小孔14a,14bに挿入する。
【0029】
図2(C)は、固定片が板状リブ11に結合された様子を示す図である。図2(C)によれば、ピン23a,23bは土嚢袋40の上からそれぞれ板状リブ11の小孔14a,14bに挿入される。土嚢袋40は網状に構成されているので、土嚢袋40の上からピン23a,23bを容易に挿入することができる。後で述べるように、固定片20は接続片30によって固定されるので、板状リブ11に強固に嵌合する必要はない。抜けない程度に軽く嵌合していれば良いものである。
【0030】
図3は、本願発明の接続片の構成を示す図である。接続片30は、1つの土嚢袋ガイド枠10と隣の土嚢袋ガイド枠10を結合するために用いるものである。図3(A)は、接続片30を示す斜視図である。図3(A)において、接続片30は、固定部31とその両側面に形成されたアーム32a,32bと爪33a,33bおよびアーム34a,34bと爪35a,35bとから構成される。接続片30を土嚢袋ガイド枠10に挿入するには、図1の2点鎖線の矢印C,Dで示すように、まず、接続片30の爪33a,33bを固定片20の矩形孔22に貫通させ、さらに、爪33a,33bを結合孔13に貫通させる。結合孔13を貫通した爪33a,33bは、板状リブ11の内面に飛び出して、爪33a,33bの先端部が板状リブ11の内面と結合して抜けなくなるので、接続片30が板状リブ11と確実に結合される。図3(B)は、接続片30が板状リブ11と結合された様子を示す図である。図3(B)において、接続片30は、固定片20を貫通して、その先端の爪33a,33bは板状リブ11の結合孔13を飛び出して、爪33a,33bが板状リブ11の内面と係合し、爪33a,33bは板状リブ11から抜けなくなる。なお、爪35a,35bは他方の板状リブ11と結合するが、ここでは、結合の様子は省略してある。
【0031】
この接続片30は、土嚢袋同士を並べる際、隣接土嚢との間で必要強度が発生するように、適切な隙間を確保する役目を有する。また、この接続片30は、通常の場合は定型寸法の接続片が使用されるが、地盤条件により、土嚢袋間の隙間を狭くしたり、広くしたりする必要がある場合には、接続片30の幅を変えて土嚢間の間隔の調整をはかることができる。
【0032】
図4は、土嚢袋ガイド枠が複数個結合された様子を示す図である。図4(A)は、土嚢袋ガイド枠10を置いた複数の土嚢袋40を配列し、土嚢袋40の外側から各板状リブ11の各面に固定片20が取り付けられ、その固定片20間を接続片30で結合している様子を示す図である。なお、図4(A)においては、土嚢袋ガイド枠10の結合関係を明確に示すために土嚢袋40は一点鎖線で描いてある。このように、複数の土嚢袋40中に土嚢袋ガイド枠10を配置した後に、各土嚢袋の中に資材を封入していく。土嚢袋40の間隔は図4(B)、(C)、(D)に示すように大きく分けて3つの場合がある。図4(B)は、土嚢袋40を設置し、圧力をかけた後に土嚢袋40間に隙間ができた場合であり、このような状況では、土嚢同士の一体性が虚弱化し、強度が下がる。図4(C)は、土嚢袋同士が接近しすぎている場合であり、圧力をかけても、互いの土嚢同士が障害となり、十分な張力が得られないため、必要な強度が得られない。したがって、このように、土嚢袋40同士があまりにも接近しすぎることはさけなければならない。図4(D)は、設置後に隣接しあう土嚢袋が互いに適切に接触した場合であり、このような状態のときに、土嚢袋40同士は十分な張力が発生し土嚢同士の一体性が得られ強度が最大になる。図4(E)は、本願の場合の結合状態を示す図であり、固定片20および接続片30を用いて隣接する土嚢袋40間を結合することによって、あらかじめ土嚢袋40間の間隔を適切に定めることができる。したがって、本願の構成によって、図4(B)と同様の状態を実現でき、さらに、接続片30があることによって各土嚢袋40間の一体化が強化される。
【0033】
図5(A)〜(F)は、資材を袋詰めし立方体または直方体に形成された土嚢袋40を地面に敷き詰め、その上に2段、3段に積み重ねた例を示す。図5(A)(B)は、各段を垂直に重ねながら積層していく例である。ただし、この工法は、土嚢袋同士が一体となった方が強度的に有利なため、振動のみの軽減や必要段数を得てかつ受ける構造物の大きさに対応したい時などの場合を除いては使用されない。また、図5(C)、(D)は、各段をずらしながら千鳥型に積層していく例であり、最も多く用いられている。図5(E)、(F)は、上記の(B)、(D)を組み合わせた工法であり、建築の基礎等で多く用いられている。従来の工法によれば、平地で一日あたり、1000袋/3人程度であるが、本願発明の土嚢袋ガイド枠を使えば、一日あたり、1500袋/3人以上の作業効率化が見込める。なお、土嚢袋40を敷き詰めるときには、敷き詰めた土嚢袋40毎に振動圧力装置等で圧力をかけ、各土嚢袋40に張力を発生させる。さらに、同じ段の土嚢袋40が横方向に並べられた後に、同一段全体の土嚢袋40に対してロードローラ等で圧力をかけ、各土嚢袋40に更なる張力を発生させ、内部資材間に十分な摩擦力が発生するようにする。
【0034】
図6は、本願発明の土嚢袋ガイド枠を土嚢袋の下部に置いた様子を示す図である。図6(A)は、土嚢袋ガイド枠を土嚢袋の下部に置き、土嚢袋40の上端の開口部が開いた様子を示す図である。図4に示すように、複数の土嚢袋40を整列配置した後、図6(A)に示すように、上端が開口した土嚢袋40の底部に土嚢袋ガイド枠10を置き、その後土嚢袋40の上部の開口部から図示しない計量スコップを使いて資材を入れて、その後締め紐41を引き、土嚢袋40の開口部を閉じ、そのまま締め紐41を手で縛るか、ストッパ42で締め紐41を固定する。図6(B)は、開口部を閉じて、その後ストッパ42で締め紐41を固定した様子を示した図である。図6(B)に示すように、本願発明においては、土嚢袋40を整列配置した後に、土嚢袋40に土を入れ、土嚢袋40の紐41を締めることによって、直方体形状の土嚢袋40を得ることができる。したがって、複数の土嚢袋40の紐41をそれぞれ締めるだけで、整列された直方体形状の土嚢袋40のおのおのの位置調整をすることが不要になる。
【0035】
第2実施形態
図7は、本願発明の第2実施形態のベース枠の構成を示す図である。このベース枠50は、地盤が特に柔らかいぬかるみ等の場所に土嚢袋40を置いた場合に、土嚢袋ガイド枠10の一部が沈んだりして土嚢袋ガイド枠10が傾くので、これを防止するために地盤と直接に触れる部分に敷くためのものである。ベース枠50は、矩形に形成された下枠51と、その下枠51に隣接して形成される上枠52から構成され、上枠52の中央部には固定片20を収納出来る大きさの切り欠き53が設けられる。図7(A)はベース枠50を上から見た平面図であり、図7(B)は、ベース枠50を側面から見た側面図であり、図7(C)は、ベース枠50を斜め上から見た斜視図である。図7(C)に示すように、ベース枠50の底部は開口になっており、下枠51が柔らかい地盤の中に食い込んでいくと、この開口54から下の土が下枠51の内部に入ってきて、その上に乗る土嚢袋40を支えることになる。
【0036】
水分を多量に含むような超軟弱地盤に於いては、最下部の土嚢袋を設置し、圧力をかけると、袋に張力が発生し、中の資材に摩擦が発生する前に、土嚢袋の下の土が逃げてしまい、いくら圧力をかけても必要な張力が発生せず、土嚢袋の強度が発生しない。そのため土嚢袋は軟弱な状態のままとなり、不規則な変形を起こしたり、そのまま沈下したりする。通常はある程度圧力をかけ、沈下や変形がとまらないようなら、そのまま次の段を積層してしまう。これを繰り返す事により、相当悪い地盤でも3段程度で安定するが、最下部の沈み具合がまちまちのため、垂直方向でのレベル管理が難しくなる。こうした超軟弱地盤の施工にベース枠50を用いると、ベース枠の底部の開口に土が進入し、ベース枠の51の側枠が、進入した土を区画し拘束する事により、若干の摩擦力を、進入した土の粒子間に発生させる事が出来る。結果として最下部の土嚢袋の下に、もう一段土嚢袋があるのと、同じ様な状態がつくられるため、かなりの軟弱地盤における工事においても安定したレベルと強度を確保できる。
【0037】
図8は、本願発明の第2実施形態の土嚢袋ガイド枠を有する土嚢袋をベース枠に載せる様子を示す図である。図8(A)は、板状リブ11を底部に配置し、資材を入れた土嚢袋40を示す図である。板状リブ11は土嚢袋40の内部に置かれるので点線で表されている。図8(B)は、ベース枠50を側面からみた様子を示す図である。土を入れた土嚢袋40は、図8(B)の矢印Eに示す方向に、ベース枠50の上に乗せられる。図8(C)は、ベース枠50の上に乗せられたベース枠50を示す側面図である。図8(C)の切り欠き53の部分には、図2に示す固定片20が嵌められる。図8(D)は土嚢袋40がベース枠50の上に乗せられた様子を示す斜視図である。このとき、土嚢袋40は、ガイド枠10の板状リブ11とベース枠50の上枠52間に挟まれしっかりと固定される。このように、ベース枠50の上に土嚢袋40を乗せることによって、下枠51の部分が柔らかい地盤の中に食い込むために、1段目の土嚢袋40の変形を最小限度に抑える事が出来るので、2段目以降の土嚢袋40の設置精度を確保できる。
【0038】
この工法においては、土嚢袋ガイド枠10を有する土嚢袋40とベース枠50との接続した後に、接続片30によって土嚢袋40を格子状に並べ、その後に各土嚢袋40に資材を投入する。しかしながら、人が歩けない等、すなわち足場が確保出来ない程の軟弱地盤の場合は、ベース枠50に固定片20を接続した土嚢袋40に予め資材を投入し、その後、設置可能な数量の土嚢袋40を接続片30で格子状に連結し、対象個所に設置する。なお、一度に設置できる土嚢袋の数は、人力のみか、機材の使用が可能か等によって変わる。
【0039】
以上述べた実施の形態は本願発明を説明するための一例であり、本願発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲で種々の変形が可能である。上記の実施形態では、正方形のガイド枠について説明したが、これに限ることはない。長方形、三角形等のガイド枠を用いることもできる。また、上記の実施の形態では、結合孔13やピン23a,23bは丸型で説明したが、もちろんこれらの形状も長方形、三角形等にすることもできる。固定片20、矩形孔22等も矩形のものについて説明したが、これに限ることはなく、円、楕円、正方形等のものでもよい。また、図3に描かれた爪33a,33b,35a,35bの形状は一例でありこの形状に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本願発明は、地盤の補強等に用いられる土嚢袋およびその土嚢袋を用いた土嚢工法に用いられる土嚢袋ガイド枠に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本願発明の第1実施形態の土嚢袋ガイド枠の構成を示す図である。
【図2】本願発明の第1実施形態の固定片の構成を示す図である。
【図3】本願発明の第1実施形態の接続片の構成を示す図である。
【図4】本願発明の第1実施形態の土嚢袋ガイド枠を複数個結合した様子を示す図である。
【図5】本願発明の第1実施形態の土嚢袋ガイド枠を複数個結合した様子を示す図である。
【図6】本願発明の第1実施形態の土嚢袋ガイド枠を土嚢袋の下部に置いた様子を示す図である。
【図7】本願発明の第2実施形態のベース枠の構成を示す図である。
【図8】本願発明の第2実施形態において、土嚢袋ガイド枠を有する土嚢袋をベース枠に載せる様子を示す図である。
【図9】第1の従来例の土嚢袋用枠組みを有する土嚢袋を示す図である。
【図10】第2の従来例の土嚢袋用底体を有する土嚢袋を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
10 土嚢袋ガイド枠
11 板状リブ
12 梁
13 結合孔
14,14a,14b 小孔
20 固定片
21 固定片枠
22 矩形孔
23,23a,23b ピン
30 接続片
31 固定部
32,32a,32b,34,34a,34b アーム
33,33a,33b,35,35a,35b 爪
40 土嚢袋
41 締め紐
42 ストッパ
50 ベース枠
51 下枠
52 上枠
53 切り欠き
54 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各土嚢袋の底に置き各土嚢袋を格子状に整列させるために用いられる、板状リブで矩形に形成される土嚢袋ガイド枠において、
前記板状リブは、その中央部に形成された矩形孔と、その板状リブ上で前記矩形孔の長手方向の各外側に形成された小孔とを備えたことを特徴とする土嚢袋ガイド枠。
を形成し、
【請求項2】
前記土嚢袋ガイド枠は、前記相対応する板状リブの中央を相互に接続する梁を備えたことを特徴とする請求項1に記載の土嚢袋ガイド枠。
【請求項3】
前記板状リブ上の前記小孔に挿入されるピンを有する固定片を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の土嚢袋ガイド枠。
【請求項4】
前記固定片の中央に形成された矩形孔を貫通して前記板状リブ上の矩形孔に挿入される爪を有する接続片を備えたことを特徴とする請求項3に記載の土嚢袋ガイド枠。
【請求項5】
前記土嚢袋中に置かれた土嚢袋ガイド枠を乗せるために、矩形状に形成された上枠および下枠からなり前記上枠の中間部分に前記接続片を結合するための切り欠きを有するベース枠を備えたことを特徴とする請求項4に記載の土嚢袋ガイド枠。
【請求項6】
前記請求項1における土嚢袋ガイド枠を中に入れた土嚢袋を複数個整列配置し、
前記請求項3における固定片のピンを土嚢袋の外側から前記ガイド枠の小孔に挿入し、
前記固定片の内部の矩形孔を介して、前記請求項4における接続片の爪を前記請求項1における板状リブの矩形孔に挿入することによって各ガイド枠を結合し、
その後に、土嚢袋に資材を入れた後、土嚢袋の締め紐を引いて、土嚢袋の開口を締めることによって、複数の土嚢袋を格子状に整列配置する、ことを特徴とする土嚢袋ガイド枠を用いた土嚢袋工法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−287165(P2009−287165A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243322(P2006−243322)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【特許番号】特許第4019100号(P4019100)
【特許公報発行日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(506304325)
【出願人】(592158844)
【Fターム(参考)】