説明

土嚢袋

【課題】運搬および設置が容易でありながら、傾斜地の土砂の崩壊を防止できる土嚢袋を提供する。
【解決手段】傾斜地の傾斜面に設置され、土砂が入れられることにより略L字状に形成される土嚢袋1であって、傾斜面に設置されたときに上方を向く開口部11が形成され、この開口部11から土砂が入れられる袋部10と、この袋部の開口部近傍から延出する布部20とを備え、布部20は、袋部10に接して配置され、土砂が裁置される裁置部21と、この裁置部21に裁置された土砂を被覆する被覆部22と、傾斜面に設置されたときに、土砂を被覆した被覆部22の上面および袋部10の開口部11を覆い、略水平面を形成する踏み面部23とから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土嚢袋に関する。詳しくは、傾斜地に設置される土嚢袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、送電線の巡視業務において、この送電線の巡視のために歩行する巡視路に、傾斜地が形成された山道がある場合には、この傾斜地に鍬入れを行い、その後に簡易階段を設置することで、歩行しやすい巡視路を確保している。
【0003】
このような簡易階段としては、例えば、プラスチックの板材により形成した各段を、踏み部と、蹴込部と、この蹴込部に対応して踏み部の後端辺に接続する取付部とを一体に形成し、複数の各段、およびこれら複数の各段と地表面とを鋼棒により固定するプレハブ式階段がある(特許文献1参照)。
この特許文献1のプレハブ式階段によれば、複数の各段を個々に運搬し、階段の設置場所に鍬入れをし、この鍬入れをした部分の先端部分に各段を設置し、鋼棒で地表面に固定することで、階段を形成できるので、容易に階段を設置できる。
【特許文献1】実公昭63−35072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各段をプラスチックの板材により形成すると、この各段の重量が重くなり、この各段を運搬する車輌が進入できず、人力で運搬することとなる山道には、持っていける各段の数量は限られる。
【0005】
また、この各段は、鍬入れをした部分の先端部分により支持されているので、この先端部分が天候や経年により劣化すると、この各段を支持する先端部分の土砂ごと崩壊するおそれがあった。
【0006】
さらに、この各段の設置は、地表面を鍬入れし、この鍬入れにより排出した土砂をならしてから、この鍬入れした部分の先端部分を整地し、この整地した先端部分に各段を固定するという手順で行われるため、この各段の設置を開始してから設置が終了するまでの時間が掛かっていた。
【0007】
本発明は、運搬および設置が容易でありながら、傾斜地の土砂の崩壊を防止できる土嚢袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)傾斜地の傾斜面に設置され、土砂が入れられることにより略L字状に形成される土嚢袋(例えば、実施の形態における土嚢袋1)であって、前記傾斜面に設置されたときに上方を向く開口部(例えば、実施の形態における開口部11)が形成され、この開口部から土砂が入れられる袋部(例えば、実施の形態における袋部10)と、この袋部の前記開口部近傍から延出する布部(例えば、実施の形態における布部20)とを備え、前記布部は、前記袋部に接して配置され、土砂が裁置される裁置部(例えば、実施の形態における裁置部21)と、この裁置部に裁置された土砂を被覆する被覆部(例えば、実施の形態における被覆部22)と、前記傾斜面に設置されたときに、土砂を被覆した前記被覆部の上面および前記袋部の前記開口部を覆い、略水平面を形成する踏み面部(例えば、実施の形態における踏み面部23)とから成ることを特徴とする土嚢袋。
【0009】
(1)の発明によれば、傾斜地の傾斜面に設置され、土砂が入れられることにより略L字状に形成される土嚢袋を、傾斜面に設置したときに上方を向く開口部を形成し、この開口部から土砂が入れる袋部と、この袋部の開口部近傍から延出する布部とで構成し、この布部を、袋部に接して配置し、土砂を裁置する裁置部と、この裁置部に裁置した土砂を被覆する被覆部と、傾斜面に設置したときに、土砂を被覆した被覆部の上面および袋部の開口部を覆い、略水平面を形成する踏み面部とで構成した。
よって、この土嚢袋を傾斜地の傾斜面に設置する手順は、以下のようになる。
まず、傾斜地の傾斜面に略鉛直方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分に袋部を配置し、鍬入れで排出した土砂をこの袋部に入れていく。次に、略水平方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分に布部の裁置部を配置し、鍬入れで排出した土砂を裁置部の上に裁置し、この裁置した土を布部の被覆部で被覆し、この被覆部の上面および袋部の開口部を布部の踏み面部で覆う。
【0010】
したがって、土砂が入れられていない状態の土嚢袋は、プラスチックの板材等に比べて軽量であるので、車輌が進入できない山道であっても、人力で容易に運搬できる。また、鍬入れで排出した土砂を袋部に入れ、裁置部の上に裁置し、この土砂を処理する必要がないので、土嚢袋を略L字状に形成して容易に設置できる。また、傾斜地の傾斜面に鍬入れした部分を土嚢袋で覆い、この鍬入れした部分が風雨に直接さらされることがないので、傾斜地の土砂の崩壊を防止できる。
【0011】
(2)(1)に記載の土嚢袋であって、前記被覆部は、互いに対向する第1被覆部(例えば、実施の形態における第1被覆部22a)と第2被覆部(例えば、実施の形態における第2被覆部22b)とから成り、これらの第1被覆部および第2被覆部を固縛する固縛部(例えば、実施の形態における固縛部31)を備えることを特徴とする土嚢袋。
【0012】
(2)の発明によれば、被覆部を、互いに対向する第1被覆部と第2被覆部とで構成し、これらの第1被覆部および第2被覆部を固縛する固縛部を備えた。
よって、裁置部の上に裁置した土砂を第1被覆部および第2被覆部により被覆し、これら第1被覆部および第2被覆部を互いに固縛部により固縛することで、裁置部の上に裁置した土砂を確実に保持できるので、長期間に亘り土嚢袋の略L字状の形状を維持できる。
【0013】
(3)(1)または(2)に記載の土嚢袋であって、前記袋部および前記布部は、網状の素材により形成され、前記袋部には、植物の種子を混入した土砂が入れられ、前記布部の前記裁置部には、植物の種子を混入した土砂が裁置されることを特徴とする土嚢袋。
【0014】
(3)の発明によれば、袋部および布部を、網状の素材により形成し、袋部には、植物の種子を混入した土砂を入れ、布部の裁置部に、植物の種子を混入した土砂を裁置したので、この土嚢袋を設置後に、自然雨水により、袋部の土砂に混入した植物の種子や、裁置部に裁置した土砂に混入した植物の種子が植生し、根を張ることで、長期間に亘り土嚢袋の略L字状の形状を維持できる。
【0015】
(4)(1)から(3)のいずれかに記載の土嚢袋であって、前記被覆部の前記上面以外の部分に、複数の前記土嚢袋を互いに連結する第1連結部(例えば、実施の形態における第1連結部35)が設けられ、前記傾斜面に設置されたときに、前記袋部の前記傾斜面の傾斜方向に対して略直交する部分に複数の前記土嚢袋を互いに連結する第2連結部(例えば、実施の形態における第2連結部36)が設けられることを特徴とする土嚢袋。
【0016】
(4)の発明によれば、被覆部の上面以外の部分に、複数の土嚢袋を互いに連結する第1連結部を設け、傾斜面に設置されたときに、袋部の傾斜面の傾斜方向に対して略直交する部分に複数の土嚢袋を互いに連結する第2連結部を設けた。
よって、複数の土嚢袋を互いに連結することで、土嚢袋が設置した位置からずれるのを防止できるので、傾斜地の土砂の崩壊をより確実に防止できる。
【0017】
(5)複数の(4)に記載の土嚢袋を前記傾斜面(例えば、実施の形態における傾斜面300)の傾斜方向に沿って順次並べて配置する階段システム(例えば、実施の形態における階段システム100)であって、前記傾斜面に設置されたときに、複数の前記土嚢袋のうちのいずれかである第1土嚢袋の前記第1連結部と、前記傾斜面の登り方向において前記第1土嚢袋の次に配置される第2土嚢袋の第2連結部とが連結されることを特徴とする階段システム。
【0018】
(5)の発明によれば、土嚢袋を傾斜面の傾斜方向に沿って順次並べて配置する階段システムにおいて、傾斜面に設置されたときに、複数の土嚢袋のうちのいずれかである第1土嚢袋の第1連結部と、傾斜面の登り方向において第1土嚢袋の次に配置される第2土嚢袋の第2連結部とを連結した。
【0019】
よって、この階段システムを設置する手順は、以下のようになる。
まず、第1土嚢袋を設置するために、傾斜地の傾斜面に略鉛直方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分に袋部を配置し、鍬入れで排出した土砂をこの袋部に入れる。次に、略水平方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分に布部を配置し、鍬入れで排出した土砂を布部で覆う。
次に、第2土嚢袋を設置するために、第1土嚢袋より登り方向の傾斜地の傾斜面に略鉛直方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分であって第1土嚢袋の布部に接するように袋部を配置し、以降、第1土嚢袋と同様の手順で第2土嚢袋を設置する。
次に、第1土嚢袋の第1連結部と、第2土嚢袋の第2連結部とを連結する。
以上の手順を所定回数、繰り返すことで、所定回数に応じた段数を有する階段システムが設置できる。
【0020】
したがって、土砂の入っていない土嚢袋は軽量なので、車輌が進入できない山道であっても、複数の土嚢袋を人力で容易に運搬できる。また、鍬入れにより排出した土砂を土嚢袋に入れるという手順を繰り返すだけで、傾斜地の傾斜面に階段を設置できるので、傾斜面における歩行路の確保が容易になる。また、この複数の土嚢袋を設置した後に、これらを互いに連結するので、長期間に亘り階段の形状を維持できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、土砂が入れられていない状態の土嚢袋は、プラスチックの板材等に比べて軽量であるので、車輌が進入できない山道であっても、人力で容易に運搬できる。また、鍬入れで排出した土砂を袋部に入れ、裁置部の上に裁置し、この土砂を処理する必要がないので、土嚢袋を略L字状に形成して容易に設置できる。また、傾斜地の傾斜面に鍬入れした部分を土嚢袋で覆い、この鍬入れした部分が風雨に直接さらされることがないので、傾斜地の土砂の崩壊を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る土砂が入れられた状態の土嚢袋1の斜視図である。
土嚢袋1は、傾斜面に設置されたときに略鉛直方向に立設する略直方体状の袋部10と、この袋部10の上部から略水平方向に延出する略直方体状の布部20とを備える。すなわち、土嚢袋1は、土砂が入れられることにより略L字状に形成されている。
【0023】
袋部10および布部20は、網状の素材により形成されている。この網状の素材には、ナイロンの目が粗いものが用いられる。また、土嚢袋1に入れられる土砂には、植物の種子を混入した土砂が用いられる。
【0024】
袋部10には、この袋部10における傾斜面の傾斜方向に対して略直交する部分の2つの側面に、それぞれ、複数の土嚢袋1を互いに連結する第2連結部36が設けられている。
布部20には、この布部20における傾斜面の傾斜方向に対して略直交する部分の2つの側面に、それぞれ、複数の土嚢袋1を互いに連結する第1連結部35が設けられている。
【0025】
図2は、本発明の第1実施形態に係る土嚢袋1の展開図である。
図2を用いて、土嚢袋1の袋部10および布部20を詳細に説明する。
袋部10は、傾斜面に設置されたときに上方を向く開口部11が形成されている。
【0026】
布部20は、袋部10の開口部11に1辺が接続され、土砂が裁置される略矩形状の裁置部21と、この裁置部21に裁置された土砂を被覆し、この裁置部21の開口部11に接続された1辺に略直交する2辺にそれぞれ接続された略矩形状の第1被覆部22aおよび第2被覆部22bと、裁置部21の開口部11に接続された1辺に対向する1辺に接続された略矩形状の踏み面部23とから成る。この踏み面部23は、傾斜面に設置されたときに、土砂を被覆した第1被覆部22aおよび第2被覆部22bの上面および袋部10の開口部11を覆い、略水平面を形成する。
【0027】
第1被覆部22aおよび第2被覆部22bと踏み面部23とは、長辺と短辺が互いに対向した略台形状に形成され、短辺が裁置部21と接続されている。
【0028】
袋部10の上部と踏み面部23の先端部分とには、これらを互いに固縛する踏み面固縛部32が設けられている。この踏み面固縛部32は、袋部10の上部に設けられた2つの第1踏み面固縛部32aと、踏み面部23の先端部分に設けられた2つの第2踏み面固縛部32bとから成る。
【0029】
第1被覆部22aの先端部分と第2被覆部22bの先端部分とには、これらを互いに固縛する固縛部31が設けられている。この固縛部31は、第1被覆部22aの先端部分に設けられた2つの第1固縛部31aと、この第2被覆部22bの先端部分に設けられ、2つの第1固縛部31aと互いに対向するように設けられた2つの第2固縛部31bとから成る。
【0030】
図3は、本発明の第1実施形態に係る土嚢袋1の設置手順を示す斜視図である。
土嚢袋1は、図3中の(a)、(b)、(c)、(d)の順で組み立てることにより、傾斜地の傾斜面に設置される。
【0031】
図3を用いて、土嚢袋1の設置手順を説明する。
まず、傾斜地の傾斜面に略鉛直方向に鍬入れを行う。次に、(a)に示すように、この鍬入れを行った部分に袋部10を配置し、鍬入れで排出した土砂をこの袋部10に開口部11から入れる。次に、略水平方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分に布部20の裁置部21を配置し、鍬入れで排出した土砂を裁置部21の上に裁置する。
【0032】
次に、(b)に示すように、裁置部21の上に裁置した土を第1被覆部22aおよび第2被覆部22bにより両側から被覆し、これら第1被覆部22aと第2被覆部22bとを互いに固縛部31により固縛する。
【0033】
次に、(c)に示すように、互いに固縛した第1被覆部22aおよび第2被覆部22bの上面と、袋部10の開口部11とを布部20の踏み面部23で覆い、袋部10と踏み面部23とを互いに踏み面固縛部32により固縛する。
以上の手順により、(d)に示すように、土嚢袋1の設置が完了する。
【0034】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)土砂が入れられていない状態の土嚢袋1は、プラスチックの板材等に比べて軽量であるので、車輌が進入できない山道であっても、人力で容易に運搬できる。また、鍬入れで排出した土砂を袋部10に入れ、裁置部21の上に裁置し、この土砂を処理する必要がないので、土嚢袋1を略L字状に形成して容易に設置できる。また、傾斜地の傾斜面に鍬入れした部分を土嚢袋1で覆い、この鍬入れした部分が風雨に直接さらされることがないので、傾斜地の土砂の崩壊を防止できる。
【0035】
(2)被覆部22を、互いに対向する第1被覆部22aと第2被覆部22bとで構成し、これらの第1被覆部22aおよび第2被覆部22bを固縛する固縛部31を備えた。
よって、裁置部21の上に裁置した土砂を第1被覆部22aおよび第2被覆部22bにより包み込み、これら第1被覆部22aおよび第2被覆部22bを互いに固縛部31により固縛することで、裁置部21の上に裁置した土砂を確実に保持できるので、長期間に亘り土嚢袋1の略L字状の形状を維持できる。
【0036】
(3)袋部10および布部20を、網状の素材により形成し、袋部10には、植物の種子を混入した土砂を入れ、布部20の裁置部21に、植物の種子を混入した土砂を裁置したので、この土嚢袋1を設置後に、自然雨水により、袋部10の土砂に混入した植物の種子や、裁置部21に裁置した土砂に混入した植物の種子が植生し、根を張ることで、長期間に亘り土嚢袋1の略L字状の形状を維持できる。
【0037】
(4)被覆部22の上面以外の部分に、複数の土嚢袋1を互いに連結する第1連結部35を設け、傾斜面に設置されたときに、袋部10の傾斜面の傾斜方向に対して略直交する部分に複数の土嚢袋1を互いに連結する第2連結部36を設けた。
よって、複数の土嚢袋1を互いに連結することで、土嚢袋1が設置した位置からずれるのを防止できるので、傾斜地の土砂の崩壊をより確実に防止できる。
【0038】
<第2実施形態>
以下の第2実施形態の説明にあたって、第1実施形態と同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る階段システム100の斜視図である。
【0039】
第2実施形態の階段システム100は、第1実施形態の土嚢袋1と同一の構成を備える第1土嚢袋1a、第2土嚢袋1b、第3土嚢袋1c、第4土嚢袋1d、第5土嚢袋1eを傾斜面300の傾斜方向に沿って順次並べて配置したものである。
【0040】
階段システム100は、第1土嚢袋1aの第1連結部35と、傾斜面300の登り方向において第1土嚢袋1aの次に配置される第2土嚢袋1bの第2連結部36とが連結されている。また、第2土嚢袋1bの第1連結部35と、傾斜面300の登り方向において第2土嚢袋1bの次に配置される第3土嚢袋1cの第2連結部36とが連結されている。また、第3土嚢袋1cの第1連結部35と、傾斜面300の登り方向において第3土嚢袋1cの次に配置される第4土嚢袋1dの第2連結部36とが連結されている。また、第4土嚢袋1dの第1連結部35と、傾斜面300の登り方向において第4土嚢袋1dの次に配置される第5土嚢袋1eの第2連結部36とが連結されている。
【0041】
次に、階段システム100を設置する手順を説明する。
まず、第1土嚢袋1aを設置するために、傾斜地の傾斜面300に略鉛直方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分に袋部10を配置し、鍬入れで排出した土砂をこの袋部10に入れていく。次に、略水平方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分に布部20を配置し、鍬入れで排出した土砂を布部20で覆う。
次に、第2土嚢袋1bを設置するために、第1土嚢袋1aより登り方向の傾斜地の傾斜面300に略鉛直方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分であって第1土嚢袋1aの布部20に接するように第2土嚢袋1bの袋部10を配置し、以降、第1土嚢袋1aと同様の手順で第2土嚢袋1bを設置する。そして、第1土嚢袋1aの第1連結部35と、第2土嚢袋1bの第2連結部36とを連結する。
【0042】
次に、第3土嚢袋1cを設置するために、第2土嚢袋1bより登り方向の傾斜地の傾斜面300に略鉛直方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分であって第2土嚢袋1bの布部20に接するように第3土嚢袋1cの袋部10を配置し、以降、第1土嚢袋1aと同様の手順で第3土嚢袋1cを設置する。そして、第2土嚢袋1bの第1連結部35と、第3土嚢袋1cの第2連結部36とを連結する。
【0043】
次に、第4土嚢袋1dを設置するために、第3土嚢袋1cより登り方向の傾斜地の傾斜面300に略鉛直方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分であって第3土嚢袋1cの布部20に接するように第4土嚢袋1dの袋部10を配置し、以降、第1土嚢袋1aと同様の手順で第4土嚢袋1dを設置する。そして、第3土嚢袋1cの第1連結部35と、第4土嚢袋1dの第2連結部36とを連結する。
【0044】
次に、第5土嚢袋1eを設置するために、第4土嚢袋1dより登り方向の傾斜地の傾斜面300に略鉛直方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分であって第4土嚢袋1dの布部20に接するように第5土嚢袋1eの袋部10を配置し、以降、第1土嚢袋1aと同様の手順で第5土嚢袋1eを設置する。そして、第4土嚢袋1dの第1連結部35と、第5土嚢袋1eの第2連結部36とを連結する。
以上の手順により、5段の階段システム100が設置できる。
【0045】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(5)土砂の入っていない土嚢袋は軽量なので、車輌が進入できない山道であっても、複数の土嚢袋を人力で容易に運搬できる。また、鍬入れにより排出した土砂を土嚢袋に入れるという手順を繰り返すだけで、傾斜地の傾斜面に階段を設置できるので、傾斜面における歩行路の確保が容易になる。また、この複数の土嚢袋を設置した後に、これらを互いに連結するので、長期間に亘り階段の形状を維持できる。
【0046】
<第3実施形態>
以下の第3実施形態の説明にあたって、第1実施形態と同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
図5は、本発明の第3実施形態に係る土留めシステム150の斜視図である。
【0047】
第3実施形態の土留めシステム150は、第1実施形態の土嚢袋1と同一の構成を備える第6土嚢袋1f、第7土嚢袋1g、第8土嚢袋1h、第9土嚢袋1i、第10土嚢袋1jを傾斜面300の傾斜方向と略直交する方向に沿って並べて配置したものである。
【0048】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
複数の略L字状に形成した土嚢袋を傾斜面の傾斜方向と略直交する方向に沿って並べて配置しただけで、傾斜面の法肩や法尻を保護できるので、傾斜地の土砂の崩壊を容易に防止できる。
【0049】
<第4実施形態>
以下の第4実施形態の説明にあたって、第1実施形態と同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
図6は、本発明の第4実施形態に係る土嚢袋2の斜視図である。
【0050】
第4実施形態の土嚢袋2は、第1実施形態の布部20の形態および接続位置が異なる布部220を備える点、および第1実施形態の第1連結部35に相当する第1連結部235が袋部210に設けられている点が、第1実施形態の土嚢袋1と異なる。
【0051】
土嚢袋2は、略直方体状に形成され略矩形の開口部211を有する袋部210と、この袋部10の上端部から略水平方向に延出する略台形状の布部220とを備える。
【0052】
袋部210には、2つの側面の上方に、それぞれ、複数の土嚢袋2を互いに連結する第1連結部235が設けられている。
また、袋部210には、2つの側面の下方に、それぞれ、複数の土嚢袋2を互いに連結する第2連結部236が設けられている。
【0053】
布部20は、長辺と短辺が互いに対向した略台形状に形成され、短辺が袋部210と接続されている。
【0054】
袋部210の上部と布部20の先端部分とには、これらを互いに固縛する踏み面固縛部232が設けられている。この踏み面固縛部232は、袋部210の上部に設けられた2つの第1踏み面固縛部232aと、布部20の先端部分に設けられた2つの第2踏み面固縛部232bとから成る。
【0055】
次に、袋部210に土砂を入れる手順を説明する。
まず、袋部210の開口部211から土砂を入れる。次に、この開口部211を布部220で覆い、袋部210と布部220とを互いに踏み面固縛部232により固縛する。
【0056】
図7は、本発明の第4実施形態に係る階段システム200の斜視図である。
階段システム200は、土嚢袋2(図6参照)に土砂を入れ、土嚢袋2の袋部210の長辺方向を略鉛直方向に向けたものと、土嚢袋2の袋部210の長辺方向を略水平方向に向けたものとを交互に、傾斜面300の登り方向に沿って配置したものである。
【0057】
階段システム200は、第1土嚢袋2aの第1連結部235と、傾斜面300の登り方向において第1土嚢袋2aの次に配置される第2土嚢袋2bの第2連結部236とが連結されている。また、第2土嚢袋2bの第1連結部235と、傾斜面300の登り方向において第2土嚢袋2bの次に配置される第3土嚢袋2cの第2連結部236とが連結されている。また、第3土嚢袋2cの第1連結部235と、傾斜面300の登り方向において第3土嚢袋2cの次に配置される第4土嚢袋2dの第2連結部236とが連結されている。また、第4土嚢袋2dの第1連結部235と、傾斜面300の登り方向において第4土嚢袋2dの次に配置される第5土嚢袋2eの第2連結部236とが連結されている。
【0058】
次に、階段システム200を設置する手順を説明する。
まず、第1土嚢袋2aを設置するために、傾斜地の傾斜面300に略鉛直方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分に袋部210を配置する。このとき、袋部210はこの袋部210の長辺方向が略鉛直方向に向くように配置する。その後、鍬入れで排出した土砂をこの袋部210に入れ、布部220で覆う。
【0059】
次に、第2土嚢袋2bを設置するために、第1土嚢袋2aより登り方向の傾斜地の傾斜面300に略水平方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分に袋部210を配置する。このとき、袋部210はこの袋部210の長辺方向が略鉛直方向に向くように配置する。その後、鍬入れで排出した土砂をこの袋部210に入れ、布部220で覆う。次に、袋部210の長辺方向が略水平方向に向くように、この第2土嚢袋2bを倒し、鍬入れを行った部分であって第1土嚢袋2aの袋部210に接するように、この第2土嚢袋2bを配置する。その後、第1土嚢袋2aの第1連結部235と、第2土嚢袋2bの第2連結部236とを連結する。
【0060】
次に、第3土嚢袋1cを設置するために、第2土嚢袋2bより登り方向の傾斜地の傾斜面300に略鉛直方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分であって第2土嚢袋2bに接するように第3土嚢袋2cの袋部210を配置する。このとき、袋部210はこの袋部210の長辺方向が略鉛直方向に向くように配置する。その後、鍬入れで排出した土砂をこの袋部210に入れ、布部220で覆う。その後、第2土嚢袋2bの第1連結部235と、第3土嚢袋2cの第2連結部236とを連結する。
【0061】
次に、第4土嚢袋2dを設置するために、第3土嚢袋2cより登り方向の傾斜地の傾斜面300に略水平方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分に袋部210を配置する。このとき、袋部210はこの袋部210の長辺方向が略鉛直方向に向くように配置する。その後、鍬入れで排出した土砂をこの袋部210に入れ、布部220で覆う。次に、袋部210の長辺方向が略水平方向に向くように、この第4土嚢袋2dを倒し、鍬入れを行った部分であって第3土嚢袋2cの袋部210に接するように、この第4土嚢袋2dを配置する。その後、第3土嚢袋2cの第1連結部235と、第4土嚢袋2dの第2連結部236とを連結する。
【0062】
次に、第5土嚢袋2eを設置するために、第4土嚢袋2dより登り方向の傾斜地の傾斜面300に略鉛直方向に鍬入れを行い、この鍬入れを行った部分であって第4土嚢袋2dに接するように第5土嚢袋2eの袋部210を配置する。このとき、袋部210はこの袋部210の長辺方向が略鉛直方向に向くように配置する。その後、鍬入れで排出した土砂をこの袋部210に入れ、布部220で覆う。その後、第4土嚢袋2dの第1連結部235と、第5土嚢袋2eの第2連結部236とを連結する。
以上の手順により、3段の階段システム200が設置できる。
【0063】
本実施形態によれば、略直方体状に形成され略矩形の開口部を有する土嚢袋を傾斜面の傾斜方向に沿って順次並べて配置する階段システムであって、前記土嚢袋は、前記土嚢袋の長辺方向を略鉛直方向に向けたものと、前記土嚢袋の長辺方向を略水平方向に向けたものとを交互に配置され、前記傾斜面に設置されたときに、複数の前記土嚢袋のうちのいずれかである第1土嚢袋の前記第1連結部と、前記傾斜面の登り方向において前記第1土嚢袋の次に配置される第2土嚢袋の前記第2連結部とが連結されることを特徴とする階段システムとして構成した。
【0064】
これにより、土嚢袋を略直方体状に形成したので、この土嚢袋が空の状態でも略直方体状の形状を維持できるので、この土嚢袋に土砂を入れる作業が容易になる。
また、土嚢袋の向きを交互に変えて、この土嚢袋を傾斜面の傾斜方向に沿って配置することで、階段を形成できる。したがって、同一の形態である略直方体状の土嚢袋を用いて、階段の蹴込み部と踏み面部とを形成できるので、複数種類の形態の土嚢袋や複雑な形態の土嚢袋を用意する場合に比べて、土嚢袋の製作費を抑えつつ、傾斜地の傾斜面に階段を設置できる。
【0065】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0066】
上記実施形態では、階段システム100、土留めシステム150および階段システム200に使用する土嚢袋を5つとしたが、これに限らない。
例えば、階段システム100、土留めシステム150および階段システム200では、傾斜面の傾斜角度や、傾斜面の長さ等の傾斜面の状況に応じて任意の数量の土嚢袋を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態に係る土砂が入れられた状態の土嚢袋の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る土嚢袋の展開図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る土嚢袋の設置手順(a)、(b)、(c)、(d)を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る階段システムの斜視図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る土留めシステムの斜視図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る土嚢袋の斜視図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る階段システムの斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
1、2 土嚢袋
10、210 袋部
11、211 開口部
20、220 布部
21 裁置部
22 被覆部
22a 第1被覆部
22b 第2被覆部
23 踏み面部
31 固縛部
35、235 第1連結部
36、236 第2連結部
100、200 階段システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜地の傾斜面に設置され、土砂が入れられることにより略L字状に形成される土嚢袋であって、
前記傾斜面に設置されたときに上方を向く開口部が形成され、この開口部から土砂が入れられる袋部と、
この袋部の前記開口部近傍から延出する布部とを備え、
前記布部は、前記袋部に接して配置され、土砂が裁置される裁置部と、
この裁置部に裁置された土砂を被覆する被覆部と、
前記傾斜面に設置されたときに、土砂を被覆した前記被覆部の上面および前記袋部の前記開口部を覆い、略水平面を形成する踏み面部とから成ることを特徴とする土嚢袋。
【請求項2】
請求項1に記載の土嚢袋であって、
前記被覆部は、互いに対向する第1被覆部と第2被覆部とから成り、これらの第1被覆部および第2被覆部を固縛する固縛部を備えることを特徴とする土嚢袋。
【請求項3】
請求項1または2に記載の土嚢袋であって、
前記袋部および前記布部は、網状の素材により形成され、
前記袋部には、植物の種子を混入した土砂が入れられ、
前記布部の前記裁置部には、植物の種子を混入した土砂が裁置されることを特徴とする土嚢袋。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の土嚢袋であって、
前記被覆部の前記上面以外の部分に、複数の前記土嚢袋を互いに連結する第1連結部が設けられ、
前記傾斜面に設置されたときに、前記袋部の前記傾斜面の傾斜方向に対して略直交する部分に複数の前記土嚢袋を互いに連結する第2連結部が設けられることを特徴とする土嚢袋。
【請求項5】
複数の請求項4に記載の土嚢袋を前記傾斜面の傾斜方向に沿って順次並べて配置する階段システムであって、
前記傾斜面に設置されたときに、複数の前記土嚢袋のうちのいずれかである第1土嚢袋の前記第1連結部と、前記傾斜面の登り方向において前記第1土嚢袋の次に配置される第2土嚢袋の前記第2連結部とが連結されることを特徴とする階段システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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