説明

土壌センサおよび土壌センシング方法

【課題】土壌の土質を簡単に判定すること。
【解決手段】土壌28と直接接触する第1電極12と、透水性および保水性を備える参照材16と、前記参照材16を介し前記土壌28と接触する第2電極14と、前記第1電極12を用い計測した前記土壌28の誘電率と、前記第2電極14を用い計測した前記参照材16の誘電率と、に基づき、前記土壌28の土質を判定する判定部36と、を具備する土壌センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌センサおよび土壌センシング方法に関し、例えば土壌の誘電率を計測することにより土質を判定する土壌センサおよび土壌センシング方法である。
【背景技術】
【0002】
例えば、防災を目的として、河川やダムなどの堤防決壊や土砂災害を迅速に検知し予測するために、土壌内の水分量等を計測することが有効であると考えられている。例えば、土壌内の水分量を時系列で計測することができれば、土壌内の水分の浸透の様子を知ることができる。これにより、堤防決壊や土砂災害を迅速に検知することができる。土壌センサとして、土壌の比誘電率や伝導率を計測し、土壌の水分含有量を計測するセンサが知られている(特許文献1および2)。このようなセンサを用い、土壌内の水分量を時系列で計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−62368号公報
【特許文献2】特開2003−329625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
土壌の誘電率と土壌内の水分量との関係は、土壌の土質により異なる。このため、土質が不明な土壌においては、ボーリング等の掘削により計測対象の土壌のサンプルを採取する。採取した土壌の分析した上で、土壌の誘電率と水分量との相関曲線を取得する。この相関曲線を用い、土壌の誘電率から土壌内の水分量を計測することとなる。この場合、土壌のサンプルを採取し分析するコストがかかってしまう。また、土壌の土質は、土壌サンプルの採取位置により変わってしまうこともあるため、土壌センサを設置した位置の正確な土質を判定することは難しい。土壌サンプルを採取せず、土壌の誘電率と水分量との相関曲線を推測することもある。しかし、この場合、正確なデータは取得できない。
【0005】
本土壌センサおよび土壌センシング方法は、土壌の土質を簡単に判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例えば、土壌と直接接触する第1電極と、透水性および保水性を備える参照材と、前記参照材を介し前記土壌と接触する第2電極と、前記第1電極を用い計測した前記土壌の誘電率と、前記第2電極を用い計測した前記参照材の誘電率と、に基づき、前記土壌の土質を判定する判定部と、を具備することを特徴とする土壌センサを用いる。
【0007】
例えば、土壌と直接接触する第1電極を用い前記土壌の誘電率を計測し、透水性および保水性を備える参照材を介し前記土壌と接触する第2電極を用い前記参照材の誘電率を計測し、前記土壌の誘電率と前記参照材の誘電率とに基づき、前記土壌の土質を判定することを特徴とする土壌センシング方法を用いる。
【発明の効果】
【0008】
本土壌センサおよび土壌センシング方法によれば、土壌の土質を簡単に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(a)および図1(b)は、実施例1に係る土壌センサを示す図である。
【図2】図2(a)および図2(b)は、実施例1に係る土壌センサの本体部のブロック図である。
【図3】図3(a)および図3(b)は、実施例1に係る本体部の動作を示すフローチャートである。
【図4】図4は、土壌の比誘電率と土壌中の水分量との関係の例を示す図である。
【図5】図5は、参照材の比誘電率ε0と土壌の比誘電率ε1との関係を示す測定結果の例である。
【図6】図6は、実施例2に係る土壌センサの本体部のブロック図である。
【図7】図7は、実施例2に係る判定部の動作を示すフローチャートである。
【図8】図8(a)および図8(b)は、それぞれ判定部および算出部の動作の例を説明する模式図である。
【図9】図9は、実施例2に係る土壌センサの算出部の動作を示すフローチャートである。
【図10】図10は、実施例3に係る判定部の動作を示すフローチャートである。
【図11】図11(a)および図11(b)は、実施例3の判定部の動作の例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照に本発明に係る実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
図1(a)および図1(b)は、実施例1に係る土壌センサを示す図である。図1(a)は、土壌センサ100の模式図であり、図1(b)は、土壌センサ100の埋没部26の断面図である。図1(a)および図1(b)のように、土壌センサ100は、埋没部26と本体部30とを備えている。埋没部26は、土壌28内に埋没されている。本体部30は、土壌28の外に設置される。埋没部26は、第1電極12、第2電極14、参照材16および支持体18を備えている。支持体18は、例えば非透水性の材料から形成されており、支持体18内部には浸水しないことが好ましい。また、支持体18は、第1電極12間、第2電極間、および、第1電極と第2電極14間が短絡しないように少なくとも表面が絶縁体であることが好ましい。支持体18としては、例えばアクリルまたはジュラコン等の樹脂を用いることができる。また、支持体18は、アルミニウムまたは鉄等の金属の表面を絶縁処理したものでもよい。支持体18の形状は、土壌28内に設置するため、先端が尖った円柱形である。支持体18の形状は、他の形状でもよい。
【0012】
支持体18の表面には、複数の第1電極12が設けられている。第1電極12は、土壌28と直接接触している。さらに、支持体18の表面には、複数の第2電極14が設けられている。第2電極14は、参照材16により覆われている。参照材16は、透水性および保水性を備える材料により形成される。参照材16としては、例えばセルロースを用いることができる。第2電極14は、参照材16を介し土壌28と接触している。第1電極12および第2電極14は、例えば金または銅等の金属により形成されている。第1電極12および第2電極14は、支持体18の周囲に設けられたリング形状をしている。また、第1電極12および第2電極14は、それぞれ1対設けられている。第1電極12および第2電極14の形状および数はこれらに限られない。第1電極12および第2電極は、それぞれ1または複数設けられていればよい。第1電極12と本体部30とはケーブル20により電気的に接続され、第2電極14と本体部30とはケーブル22により接続される。
【0013】
支持体18の直径は、例えば20mmから30mmとすることができる。第1電極12の間隔および第2電極14の上下方向の間隔は各々、5mm〜10mmとすることができる。第1電極12の間隔および第2電極14の上下方向の幅は各々、5mm〜10mmとすることができる。参照材16の左右方向の幅および上下方向の長さは、参照材16の誘電率を測定するのに十分な大きさとすることが好ましい。しかしながら、参照材16が大きすぎる場合、水分が参照材16内に十分浸透しなくなる可能性もある。参照材16の大きさは、上記を考慮して設計される。
【0014】
図2(a)および図2(b)は、実施例1に係る土壌センサの本体部の機能ブロック図である。図3(a)および図3(b)は、実施例1に係る本体部の動作を示すフローチャートである。図2(a)のように、本体部30は、土壌誘電率計測部32、参照誘電率計測部34および判定部36を備えている。例えば静電容量を測定する測定器とCPU(central
Processing Unit)とは、プログラム等により土壌誘電率計測部32および参照誘電率計測部34として機能する。また、CPU等は、判定部36として機能する。
【0015】
図2(a)および図3(a)を用い、本体部30の動作について説明する。まず、土壌誘電率計測部32は、ケーブル20により第1電極12と接続されており、第1電極12を用い土壌28の誘電率を計測する(ステップS10)。参照誘電率計測部34は、ケーブル22により第2電極14と接続されており、第2電極14を用い参照材16の誘電率を計測する(ステップS12)。土壌誘電率計測部32および参照誘電率計測部34は、それぞれ第1電極12間および第2電極14間の静電容量を測定し、測定された静電容量より土壌28の誘電率および参照材16の誘電率を計測することができる。土壌28の誘電率および参照材16の誘電率は、それぞれ第1電極12および第2電極14を用い、他の方法により計測してもよい。また、ステップS10とステップS12とは同時に行なってもよく、ステップS12をステップS10より先に行なってもよい。判定部36は、第1電極12を用い計測した土壌28の誘電率ε1と、第2電極14を用い計測した参照材の誘電率ε0と、に基づき、土壌の土質を判定する(ステップS14)。その後終了する。
【0016】
図2(b)および図3(b)を用い、別の本体部30の動作について説明する。図2(b)のように、本体部30は、図2(a)の本体部30に加え算出部38を備えている。CPU等は、算出部38として機能する。図2(b)および図3(b)のように、算出部38は、判定部36の判定した土壌の土質と、土壌28の誘電率ε1と、に基づき、土壌28中の水分量を算出する(ステップS16)。その後、終了する。
【0017】
以上のように、図2(a)に示した本体部30を備える土壌センサは、土壌の土質を判定することができる。図2(b)に示した本体部30を備える土壌センサは、加えて土壌28の水分量を算出することができる。
【0018】
図4は、土壌の比誘電率と土壌中の水分量との関係の例を示す図である。図4において、土壌が黒土の場合を実線F1、土壌が川砂の場合を実線F2で示している。図4のように、黒土と、川砂とは、土壌の比誘電率ε1と土壌の水分量との関係が大きく異なる。
【0019】
未知の土壌の体積Vs中に含まれる水分の体積をVwとした場合、土壌中の水分の体積含有率(水分量)W1は、W1=Vw/Vsとなる。土壌の水分量W1は、誘電率(または比誘電率)ε1を用い、以下の相関曲線で表される。
W1=Fn(ε1)
ここで、Fnは土質ごとの相関曲線である。
【0020】
このように、誘電率(または比誘電率)に相関曲線Fnを適用することにより、土壌中の水分量を算出可能である。しかしながら、相関曲線Fnは土質ごとに異なる。このため、土質が不明な状態では体積水分量W1を算出できない。
【0021】
一方、既知の参照材16の体積Vs0中に含まれる水分の体積Vw0とした場合、参照材16の水分の体積含有率(水分量)W0は、W0=Vw0/Vs0となる。参照材16の水分量W0は、誘電率(または比誘電率)ε0を用い、以下の相関曲線を用い表される。
W0=F0(ε0)
相関曲線F0は既知のため、誘電率(または比誘電率)ε0を用い、参照材16内の水分量W0を算出できる。
【0022】
土壌の水分量W1と参照材16の水分量W0は、土壌と参照材16との吸水性の違いにより、土壌ごとに一定の相関がある。例えば、F1(ε1)とF0(ε0)との間には一定の相関がある。
【0023】
図5は、参照材の比誘電率ε0と土壌の比誘電率ε1との関係を示す測定結果の例である。図5において、土壌が黒土の測定点を黒丸、土壌が川砂の測定点を白丸で示している。実線は、各点から最小二乗法を用い計算した直線である。黒土の比誘電率ε0とε1の相関曲線E1(ε0、ε1)と、川砂の比誘電率ε0とε1の相関曲線E2(ε0、ε1)と、は異なる。
【0024】
したがって、土壌28の誘電率ε1と参照材16の誘電率ε0とを計測し、比較することにより、土壌の土質を推定することができる。土壌の土質が推定できれば、推定した土壌の誘電率と水分量との相関曲線Fnを用い、土壌の水分量を算出できる。
【0025】
実施例1によれば、図3(a)のステップS14のように、判定部36が第1電極12を用い計測した土壌28の誘電率と、第2電極14を用い計測した参照材16の誘電率と、に基づき、土壌28の土質を判定する。このように、土壌28の土質を判定することができる。
【0026】
また、図3(b)のステップS16のように、算出部38が判定部36の判定した土壌28の土質と、第1電極12を用い計測した土壌28の誘電率ε1と、に基づき、土壌28中の水分量を算出する。このように、土壌28中の水分量を算出することができる。
【実施例2】
【0027】
図6は、実施例2に係る土壌センサの本体部のブロック図である。図6のように、本体部30は、実施例1の図2に比べ第1記憶部37および第2記憶部39を備えている。第1記憶部37および第2記憶部39は、不揮発性メモリまたは揮発性メモリであり、例えばフラッシュメモリまたはハードディスクユニット等である。第1記憶部37は、土壌の複数の土質nに対応した相関曲線En(ε0、ε1)を記憶している。ここで、相関曲線En(ε0、ε1)は、土壌28の土質nに対応した土壌28の誘電率ε1と参照材16の誘電率ε0との相関曲線である。相関曲線En(ε0、ε1)は、複数の既知の土質に対し予め計測され、第1記憶部37に記憶されている。第2記憶部39は、土壌の土質nに対応した、土壌の誘電率ε1と水分量W1との相関曲線Fnを記憶している。相関曲線Fnは、複数の既知の土質に対し予め計測され、第2記憶部39に記憶されている。本体部30のその他の構成および埋没部26は、実施例1と同じであり説明を省略する。
【0028】
図7は、実施例2に係る判定部の動作を示すフローチャートである。図7のように、判定部36は、土壌誘電率計測部32から土壌28の誘電率ε1を取得する(ステップS20)。次に、判定部36は、参照誘電率計測部34から参照材16の誘電率を取得する(ステップS22)。ステップS20とステップS22とは同時に行なってもよく、ステップS22をステップS20より先に行なってもよい。判定部36は、終了か判定する(ステップS24)。例えば、判定部36は、所定時間ごとに所定回数、ステップS20およびS22を繰り返した場合、終了と判定する。所定回数は、例えば2回でもよい。3回以上でもよい。例えば、所定回数を2回とすることにより、より早く誘電率の計測を終了することができる。土質の判定の精度を向上させるためには、誘電率の計測は、より多く回数行なうことが好ましい。さらに、土質の判定の精度を向上させるためには、より異なる水分量について、誘電率の計測を行なうことが好ましい。また、例えば、判定部36は、水分量の差または誘電率の差が所定以上となった場合、Yesと判定してもよい。ステップS24においてNoの場合ステップS20に戻る。
【0029】
ステップS24においてYesの場合、判定部36は、取得した土壌28の誘電率ε1と参照材16の誘電体ε0とから、土壌28の誘電率ε1と参照材16の誘電体ε0との相関曲線E(ε0、ε1)を算出する(ステップS26)。判定部36は、第1記憶部37から複数の土質nに対応した相関曲線En(ε0、ε1)を取得する(ステップS28)。判定部36は、相関曲線En(ε0、ε1)のうち相関曲線E(ε0、ε1)と最も相関の高いEn(ε0、ε1)に対応する土質を、土壌28の土質と判定する(ステップS30)。
【0030】
図8(a)および図8(b)は、それぞれ判定部および算出部の動作の例を説明する模式図である。図8(a)の横軸は参照材16の誘電率ε0、縦軸は土壌28の誘電率ε1である。相関曲線E1からE3は、第1記憶部37に記憶された、土質1〜3に対応した誘電率ε1と誘電率ε0との相関曲線である。図7のステップS26において、判定部36は、未知の土質の土壌28について、第1電極12を用い計測した土壌28の誘電率ε1と第2電極14を用い計測した参照材16の誘電率ε0との相関曲線E(ε0、ε1)を算出する。ステップS30において、判定部36は、相関曲線E1からE3のうち相関曲線E(ε0、ε1)と最も相関の高い相関曲線E2を選択する。図8の例においては、相関曲線E2に対応する土質2を、土壌28の土質と判定する。最も相関の高い相関曲線は、例えば、相関曲線E1からE3と相関曲線E(ε0、ε1)との距離の平均が最も小さい相関曲線E1からE3を選択してもよい。また、相関曲線E1からE3が直線の場合、傾きが相関曲線E(ε0、ε1)に最も近い相関曲線を選択してもよい。
【0031】
図9は、実施例2に係る土壌センサの算出部の動作を示すフローチャートである。図9のように、算出部38は、参照誘電率計測部34から計測した土壌28の誘電率ε1を取得する(ステップS50)。算出部38は、判定部36が判定した土壌の土質を取得する(ステップS52)。ステップS50とS52との順番は逆でもよい。算出部38は、第2記憶部39から判定部36が判定した土質に対応する相関曲線Fnを取得する(ステップS54)。算出部38は、土質と相関曲線Fnとから土壌の水分量を算出する(ステップS56)
【0032】
図8(b)の横軸は土壌の誘電率ε1、縦軸は土壌の水分量W1である。相関曲線F1からF3は、第2記憶部39に記憶された土質1〜3に対応した誘電率ε1と水分量との相関曲線である。図9のステップS54において、算出部38は、判定部36が判定した土質の相関曲線F2を取得する(ステップS54)。ステップS56において、算出部38は相関曲線F2を用い、第1電極12を用い計測した土壌28の誘電率ε1´に対応する水分量W1´を算出する。
【0033】
実施例2によれば、図7のステップS30のように、判定部36は、第1電極12を用い計測した土壌28の誘電率ε1と、第2電極14を用い計測した参照材16の誘電率ε0と、相関曲線Enと、から土壌28の土質を判定する。これにより、相関曲線Enを用い土質を判定するため、土質をより正確に判定することができる。
【0034】
また、図8(a)のように、判定部36は、第1記憶部37に記憶された相関曲線Enのうち、計測した相関曲線E(ε0、ε1)と、最も相関関係がある相関曲線に対応した土質を、土壌28の土質と判定する。これにより、計測した相関曲線Eに最も相関の高い相関曲線Enの土質を土壌28の土質と判定するため、より正確に土質を判定することができる。
【0035】
さらに、図8(b)のように、算出部38は、第1電極12を用い計測した土壌28の誘電率ε1と、第2記憶部39に記憶された相関曲線Fnと、から土壌28中の水分量を算出する。これにより、より正確に判定された土質に基づき水分量を算出することにより、より正確な土壌28中の水分量を算出できる。
【実施例3】
【0036】
実施例3は、実施例2とは別の方法で、判定部36が土壌の土質を判定する例である。実施例3の土壌センサにおいて、埋没部26および本体部30の構成は実施例2と同じであり、説明を省略する。
【0037】
図10は、実施例3に係る判定部の動作を示すフローチャートである。図10のように、判定部36は、土壌誘電率計測部32から土壌28の誘電率ε1を取得する(ステップS40)。次に、判定部36は、参照誘電率計測部34から参照材16の誘電率ε0を取得する(ステップS42)。ステップS40とステップS42とは同時に行なってもよく、ステップS42をステップS40より先に行なってもよい。
【0038】
判定部36は、第1記憶部37から複数の土質nに対応した相関曲線En(ε0、ε1)を取得する(ステップS44)。判定部36は、相関曲線En(ε0、ε1)のうち、計測した土壌28の誘電率ε1および参照材16の誘電率ε0の少なくとも一方が範囲内の相関曲線E´(ε0、ε1)を抽出する(ステップS46)。判定部36は、抽出された相関曲線E´(ε0、ε1)のうち、点(ε0、ε1)と最も距離の近い相関曲線E´(ε0、ε1)に対応する土質を、土壌28の土質と判定する(ステップS48)。算出部38の動作は、実施例2と同じであり説明を省略する。
【0039】
図11(a)および図11(b)は、実施例3の判定部の動作の例を説明する模式図である。図11(a)および図11(b)の横軸は参照材の誘電率ε0、縦軸は土壌の誘電率ε1である。まず、図11(a)を用い、実施例3の判定部36の動作の第1の例を説明する。図11(a)の相関曲線E1からE3は、図8(a)と同じであり説明を省略する。相関曲線E1からE3のそれぞれにおいて誘電率ε1がとりうる範囲は、範囲R1からR3である。計測した土壌28の誘電率はε1´であり、参照材の誘電率はε0´である。図10のステップS46において、計測した土壌28の誘電率ε1´が範囲内の相関曲線はE2およびE3である。そこで、判定部36は、相関曲線E1およびE2を抽出する。ステップS48において、判定部36は、抽出された相関曲線E1およびE2のうち、最も計測された点(ε0´、ε1´)に近い相関曲線E3に対応する土質を、土壌28の土質と判定する。
【0040】
次に、図11(b)を用い、実施例3の判定部の動作の第2の例を説明する。図11(b)の相関曲線E4からE6は、それぞれ異なる土質の相関曲線である。相関曲線E4からE6のそれぞれにおいて参照材16の誘電率ε0がとりうる範囲は、範囲R4からR6である。計測した土壌28の誘電率はε1´であり、参照材の誘電率はε0´である。図10のステップS46において、計測した参照材16の誘電率ε0´が範囲内の相関曲線はE5およびE6である。そこで、判定部36は、相関曲線E5およびE6を抽出する。ステップS48において、判定部36は、抽出された相関曲線E5およびE6のうち、最も計測された点(ε0´、ε1´)に近い相関曲線E5に対応する土質を、土壌28の土質と判定する。
【0041】
さらに、判定部36は、第2記憶部39に記憶された相関曲線Enのうち、計測した土壌28の誘電率ε1´が所定の範囲内であり、かつ計測した参照材16の誘電率ε0´が所定の範囲内の相関曲線を抽出してもよい。
【0042】
実施例3によれば、図11(a)および図11(b)のように、判定部36は、第1記憶部37に記憶された相関曲線のうち、計測された土壌28の誘電率ε1´および参照材16の誘電率ε0´が所定範囲となる相関曲線を抽出する。抽出された相関曲線のうち、計測された点(ε0´、ε1´)との距離が最も近い相関曲線に対応する土質を土壌28の土質と判定する。これにより、土壌28の土質を判定することができる。実施例3によれば、第1電極12および第2電極14を用いた誘電率の測定が1回のため、短時間で土質を判定することができる。
【0043】
実施例2および実施例3の土壌センサにおいては、実施例1の図2(a)および図3(a)で説明したように、土壌の土質を判定し、土壌の水分量は算出しなくてもよい。
【0044】
実施例2から実施例3において、土壌の誘電率ε1と参照材の誘電率ε0との相関曲線Enから土壌28の土質を判定する例を説明した。当然のことながら、相関曲線Enは、土壌28の比誘電率ε1と参照材16の比誘電率ε0とで表すことができる。また、相関曲線Enは、第1電極12間の静電容量と第2電極14間の静電容量とで表すことができる。さらに、実施例2から実施例3において、土壌の誘電率ε1と土壌の水分量Vwとの相関曲線Fnから土壌28の水分量を判定する例を説明した。当然のことながら、相関曲線Fnは、土壌28の比誘電率ε1と水分量W1とで表すことができる。また、相関曲線Fnは、第1電極12間の静電容量と水分量W1とで表すことができる。
【0045】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0046】
実施例1〜3を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
付記1:
土壌と直接接触する第1電極と、透水性および保水性を備える参照材と、前記参照材を介し前記土壌と接触する第2電極と、前記第1電極を用い計測した前記土壌の誘電率と、前記第2電極を用い計測した前記参照材の誘電率と、に基づき、前記土壌の土質を判定する判定部と、を具備することを特徴とする土壌センサ。
付記2:
前記判定部の判定した前記土壌の土質と、前記第1電極を用い計測した前記土壌の誘電率と、に基づき、前記土壌中の水分量を算出する算出部を具備する付記1記載の土壌センサ。
付記3:
前記土壌の土質に対応した前記土壌の誘電率と前記参照材の誘電率との相関曲線を記憶する第1記憶部を具備し、前記判定部は、前記第1電極を用い計測した前記土壌の誘電率と前記第2電極を用い計測した前記参照材の誘電率と、前記第1記憶部に記憶された相関曲線と、から前記土壌の土質を判定することを特徴とする付記1または2記載の土壌センサ。
付記4:
前記判定部は、前記第1記憶部に記憶された相関曲線のうち、前記第1電極を用い計測した前記土壌の誘電率と前記第2電極を用い計測した前記参照材の誘電率との相関曲線と、最も相関関係がある相関曲線に対応した土質を、前記土壌の土質と判定することを特徴とする付記3記載の土壌センサ。
付記5:
前記判定部は、前記第1記憶部に記憶された相関曲線のうち、前記第1電極を用い計測した前記土壌の誘電率と前記第2電極を用い計測した前記参照材の誘電率と少なくとも一方が所定範囲となる相関曲線を抽出し、抽出された相関曲線のうち、前記第1電極を用い計測した前記土壌の誘電率と、前記第2電極を用い計測した前記参照材の誘電率とが示す点との距離が最も近い相関曲線に対応する土質を前記土壌の土質と判定することを特徴とする付記3記載の土壌センサ。
付記6:
前記土壌の土質に対応した前記土壌の誘電率と水分量との相関曲線を記憶する第2記憶部を具備し、前記算出部は、前記判定部が判定した土質と、前記第1電極を用い計測した前記土壌の誘電率と、前記相関曲線と、から前記土壌中の水分量を算出することを特徴とする付記2記載の土壌センサ。
付記7:
土壌と直接接触する第1電極を用い前記土壌の誘電率を計測し、透水性および保水性を備える参照材を介し前記土壌と接触する第2電極を用い前記参照材の誘電率を計測し、前記土壌の誘電率と前記参照材の誘電率とに基づき、前記土壌の土質を判定することを特徴とする土壌センシング方法。
付記8
判定された前記土壌の土質と、前記土壌の誘電率と、に基づき、前記土壌中の水分量を算出することを特徴とする付記7記載の土壌センシング方法。
【符号の説明】
【0047】
12 第1電極
14 第2電極
16 参照材
18 支持部
26 埋没部
28 土壌
30 本体部
32 土壌誘電率計測部
34 参照誘電率計測部
36 判定部
37 第1記憶部
38 算出部
39 第2記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌と直接接触する第1電極と、
透水性および保水性を備える参照材と、
前記参照材を介し前記土壌と接触する第2電極と、
前記第1電極を用い計測した前記土壌の誘電率と、前記第2電極を用い計測した前記参照材の誘電率と、に基づき、前記土壌の土質を判定する判定部と、
を具備することを特徴とする土壌センサ。
【請求項2】
前記判定部の判定した前記土壌の土質と、前記第1電極を用い計測した前記土壌の誘電率と、に基づき、前記土壌中の水分量を算出する算出部を具備する請求項1記載の土壌センサ。
【請求項3】
前記土壌の土質に対応した前記土壌の誘電率と前記参照材の誘電率との相関曲線を記憶する第1記憶部を具備し、
前記判定部は、前記第1電極を用い計測した前記土壌の誘電率と前記第2電極を用い計測した前記参照材の誘電率と、前記第1記憶部に記憶された相関曲線と、から前記土壌の土質を判定することを特徴とする請求項1または2記載の土壌センサ。
【請求項4】
前記判定部は、前記第1記憶部に記憶された相関曲線のうち、前記第1電極を用い計測した前記土壌の誘電率と前記第2電極を用い計測した前記参照材の誘電率との相関曲線と、最も相関関係がある相関曲線に対応した土質を、前記土壌の土質と判定することを特徴とする請求項3記載の土壌センサ。
【請求項5】
前記判定部は、前記第1記憶部に記憶された相関曲線のうち、前記第1電極を用い計測した前記土壌の誘電率と前記第2電極を用い計測した前記参照材の誘電率との少なくとも一方が所定範囲となる相関曲線を抽出し、抽出された相関曲線のうち、前記第1電極を用い計測した前記土壌の誘電率と、前記第2電極を用い計測した前記参照材の誘電率とが示す点との距離が最も近い相関曲線に対応する土質を前記土壌の土質と判定することを特徴とする請求項3記載の土壌センサ。
【請求項6】
前記土壌の土質に対応した前記土壌の誘電率と水分量との相関曲線を記憶する第2記憶部を具備し、
前記算出部は、前記判定部が判定した土質と、前記第1電極を用い計測した前記土壌の誘電率と、前記相関曲線と、から前記土壌中の水分量を算出することを特徴とする請求項2記載の土壌センサ。
【請求項7】
土壌と直接接触する第1電極を用い前記土壌の誘電率を計測し、
透水性および保水性を備える参照材を介し前記土壌と接触する第2電極を用い前記参照材の誘電率を計測し、
前記土壌の誘電率と前記参照材の誘電率とに基づき、前記土壌の土質を判定することを特徴とする土壌センシング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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