説明

土壌中の線虫を検出・定量する方法及びその方法に用いる土壌試料の圧密器具

【課題】 本発明は、短時間でしかも高い効率で土壌中の線虫から核酸を抽出し、簡便かつ正確に土壌中の線虫を検出又は定量する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、下記の(イ)及び(ロ)の工程を含むことを特徴とする、土壌中の線虫から核酸を抽出する方法を提供する。また、下記の(イ)〜(ハ)の工程を含むことを特徴とする、土壌中の線虫を検出又は定量する方法を提供する。
(イ)土壌から採取した土壌試料を圧密する工程;
(ロ)上記(イ)の工程により圧密した土壌試料から核酸を抽出する工程;
(ハ)上記(ロ)の工程により抽出した核酸を検出又は定量する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌中の線虫から核酸を抽出する方法、及び、作物病害に関与する土壌中の植物寄生性線虫を検出・定量する土壌診断方法に関する。より詳細には、土壌試料を圧密することにより、土壌試料中の線虫を破壊して、高い効率で核酸を抽出する方法、及び、抽出した核酸を検出又は定量することにより、土壌中の線虫を迅速かつ正確に検出・定量する方法に関する。また、本発明は、手動により土壌試料に強い圧力を加えることができる機構を備えた圧密器具に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物の栽培においては、農作物が土壌中の線虫に感染することによって発生する土壌病害が問題となる。土壌中に生息する線虫は、植物に有益な自活性線虫と、植物に有害な植物寄生性線虫とに大別され、後者の植物寄生性線虫が土壌病害を引き起こす。
自活性線虫には、原生動物や他の線虫等を捕食する捕食性線虫、落ち葉等の有機物を分解する腐食性線虫が挙げられ、これらの自活性線虫は、農作物にとって有益なものである。
これに対し、植物寄生性線虫は、農作物の根などに寄生して、農作物を枯らせ、あるいは商品価値を低下させるので、農作物にとって有害なものである。日本では、ネコブセンチュウ類、シストセンチュウ類及びネグサレセンチュウ類が、三大寄生性センチュウと呼ばれ、大きな被害をもたらしており問題となっている。
【0003】
植物寄生性線虫を駆除するためには、土壌燻蒸剤等が用いられるが、土壌燻蒸剤は、植物寄生性線虫のみを選択的に駆除できるわけではないので、土壌燻蒸剤の使用により、農作物にとって有益な自活性線虫やその他の土壌微生物をも駆除してしまうという問題がある。そのため、土壌燻蒸剤の使用は最小限度に抑えるのが好ましい。
土壌燻蒸剤の使用を抑制するためには、無駄な土壌燻蒸剤の使用回数を減らすために、予防的な使用はできるだけ避け、栽培する作物に寄生する線虫が土壌中にどれくらい生息するかを検出又は定量した上で、燻蒸剤を使用する必要がある。
土壌中に生息する線虫を同定する方法としては、光学顕微鏡による観察により、線虫の口頭部や尾部、あるいは口針の形状の違いを見分けて種類を同定し、その線虫の数をカウントする方法があるが、これは専門的な知識と熟練した技術が必要であるだけでなく多大な労力を要するものであり、容易に行えるものではなかった。
【0004】
本発明者らは以前に、土壌中の線虫を容易に検出又は定量する方法として、土壌から線虫を分離し、当該線虫の核酸をPCR法又はリアルタイムPCR法により増幅させて、検出又は定量する方法を開発した(特許文献1、非特許文献1及び非特許文献2)。
これらの方法では、土壌から直接核酸を抽出しようとすると、ほとんど核酸が得られないか極めて抽出効率が悪いため、まず、ベルマン法や二層遠心浮遊法等を用いて、土壌から線虫を分離する必要があった。
【0005】
ベルマン法は、線虫が土壌中から水中へと自らの活動力により移動する性質を利用した分離方法である。具体的には、(1)網皿に和紙フィルターを敷いて土壌試料をいれ、(2)ガラス漏斗に水を満たして、(3)ガラス漏斗の水に網皿の底面が浸るように、網皿をガラス漏斗にセットし、(4)線虫が活動しやすい温度にて3日間静置して、線虫が土壌中から水中に移動させることにより、土壌から線虫を分離するものである。
ベルマン法は、最も広く用いられている線虫の分離方法であるが、上記のように分離に2〜3日間も要するものであり、しかも、分離率が低く、線虫の運動性に影響する線虫の生理条件や土壌条件の影響を受けて分離率が変化してしまうという重大な欠点を有するものである(非特許文献3)。
【0006】
二層遠心浮遊法は、線虫と土壌粒子とを密度の差により分離する方法である。
具体的には、(1)土壌試料を遠心管に入れて、水を加えて懸濁し、(2)比重液を遠心管の底に静かに注入し、(3)遠心管を遠心することにより、比較的密度の高い土壌粒子は沈殿させて土壌粒子層を形成させ、比較的密度の低い線虫は水層と比重液層との界面付近に分離させ、(4)水層と比重液層をメッシュに通すことにより線虫を分離するものである。
二層遠心浮遊法は、ベルマン法よりも分離率の高い方法であるが、上記のように遠心装置と煩雑な操作を必要とするものである。また、供試できる土壌量が少なく、卵の形態で生存するシスト線虫は土壌粒子の付着によって沈殿しやすいため分離率が低く、有機物や粘土分の多い土壌では線虫の分離率が低下し、大型の線虫の分離率も悪いなど、さまざまな欠点を有するものである(非特許文献3)。
【0007】
上記のように、いずれの分離方法を用いた場合でも、土壌から全ての線虫を採取することはできず、しかも、採取した土壌の種類や線虫の運動能力の違いによって分離率が異なるため、正確に線虫を定量することはできなかった。また、これらの分離方法は、多大な労力と時間を要するものであり、簡便で安価な土壌診断方法を提供できるものではなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2007−74905号公報
【非特許文献1】豊田剛己(Koki TOYOTA)、外4名、日本土壌肥料学会欧文誌(Soil Science and Plant Nutrition)、2008年2月、第54巻、第1号、第72〜76頁
【非特許文献2】佐藤恵利華(Erika Sato)、外4名、日本線虫学会誌(Japanese Journal of Nematology)、2007年12月、第37巻、第2号、第87〜92頁
【非特許文献3】日本線虫学会編、「線虫学実験法」、2004年3月、第86〜95頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の状況に鑑み、短時間でしかも高い効率で土壌中の線虫から核酸を抽出し、簡便かつ正確に土壌中の線虫を検出又は定量する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、意外にも、土壌試料を圧密すると、線虫が生息できる孔隙が減少して線虫が破壊されるため、ベルマン法や二層遠心浮遊法の線虫を分離する工程を省いて、短時間でしかも高い効率で土壌から線虫の核酸を抽出できることを見出した。さらに、土壌試料を圧密すると、高い効率で線虫の核酸を抽出できるため、土壌の種類や線虫の運動性の違いに大きく影響されることなく、正確に土壌中の線虫を検出又は定量できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記(I)〜(XII)の土壌中の線虫を検出・定量する方法、その方法に用いる圧密器具及び該圧密器具を含むキットを提供する。
【0012】
(I)土壌中の線虫から核酸を抽出する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(イ)土壌から採取した土壌試料を圧密する工程;
(ロ)上記(イ)の工程により圧密した土壌試料から核酸を抽出する工程。
【0013】
(II)土壌中の線虫を検出又は定量する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(イ)土壌から採取した土壌試料を圧密する工程;
(ロ)上記(イ)の工程により圧密した土壌試料から核酸を抽出する工程;
(ハ)上記(ロ)の工程により抽出した核酸を検出又は定量する工程。
【0014】
(III)前記(イ)の工程において、土壌試料における直径30μm以上の孔隙の体積が30〜100%減少するまで土壌試料を圧密することを特徴とする、前記(I)又は(II)に記載の方法。
【0015】
(IV)前記(イ)の工程において、土壌試料の乾燥密度が0.85〜2.7g/cmになるまで土壌試料を圧密することを特徴とする、前記(I)又は(II)に記載の方法。
【0016】
(V)前記線虫が、植物寄生性線虫であり、前記(ハ)の工程における核酸が、当該植物寄生性線虫に特異的な塩基配列を有する核酸であることを特徴とする、前記(II)〜(IV)のいずれかに記載の方法。
【0017】
(VI)前記植物寄生性線虫と前記植物寄生性線虫に特異的な塩基配列を有する核酸が以下の3つの組み合わせのいずれかであることを特徴とする、前記(V)に記載の方法:
ジャガイモシストセンチュウ/配列番号1に記載の塩基配列のうちの100〜200残基の塩基配列を有する核酸;
サツマイモネコブセンチュウ/配列番号2に記載の塩基配列のうちの100〜200残基の塩基配列を有する核酸;
ダイズシストセンチュウ/配列番号3に記載の塩基配列のうちの100〜200残基の塩基配列を有する核酸。
キタネグサレセンチュウ/配列番号4に記載の塩基配列のうちの100〜200残基の塩基配列を有する核酸。
【0018】
(VII)前記(ハ)の工程において、抽出した核酸を増幅させて検出又は定量することを特徴とする、前記(II)〜(VI)のいずれかに記載の方法。
【0019】
(VIII)さらに、次の(ニ)の工程を含むことを特徴とする、前記(II)〜(VII)のいずれかに記載の方法:
(ニ)上記(ハ)の工程により定量した核酸の量と、線虫の量が既知の試料を用いて定量した核酸の量を比較することにより、土壌試料中の線虫を定量する工程。
【0020】
(IX)前記(I)〜(VIII)に記載の方法において土壌試料を圧密するために使用する器具であって、土壌試料を収納する試料容器を備えていることを特徴とする、圧密器具。
【0021】
(X)前記(IX)に記載の圧密器具において、試料容器(1)を設置できる支持台(3)と、支持台(3)に連結された本体(4)と、本体(4)上部との螺合により上下方向に摺動可能な締付具(5)と、締付具(5)の先端に取り付けられた圧迫部(2)とを備え、締付具(5)を下方に摺動させると、試料容器(1)内に圧迫部(2)が嵌入して、土壌試料に圧力を加えて締め固めることができることを特徴とする、請求項9に記載の圧密器具。
【0022】
(XI)前記(X)に記載の圧密器具において、本体(4)が略逆U字型であり、支持台(3)と本体(4)の連結部分の一端が、枢結部(6)を介して回転可能に連結され、支持台(3)と本体(4)の連結部分の他端が、あご部(7)と回転可能なフック(8)により固定可能にされていることを特徴とする圧密器具。
【0023】
(XII)前記(IX)〜(XI)のいずれかに記載の圧密器具及び土壌試料中の核酸を抽出する試薬を含む、土壌中の線虫から核酸を抽出するキット。
【0024】
(XIII)前記(IX)〜(XI)のいずれかに記載の圧密器具、土壌試料中の核酸を抽出する試薬及び核酸を検出又は定量するための試薬を含む、土壌中の線虫を検出又は定量するキット。
【発明の効果】
【0025】
本発明の、土壌中の線虫から核酸を抽出する方法は、土壌を圧密することにより、線虫が生息できる孔隙を減らして線虫を破壊するため、高い効率で土壌から線虫の核酸を抽出できるという効果を奏するものである。そして、本発明の、土壌中の線虫を検出又は定量方法によれば、土壌試料を圧密させることにより高い効率で核酸を抽出できるため、ベルマン法や二層遠心浮遊法といった土壌から線虫を分離する工程を必要とせず、短時間で検出又は定量を行うことを可能にするものである。さらに、本発明の、土壌中の線虫を検出又は定量する方法によれば、土壌の種類によって抽出効率が異なるという問題が少なく、線虫の運動能力の違いにより抽出効率が異なることもないため、より正確に線虫を検出又は定量することができるものである。
【0026】
本発明の方法において、土壌試料における直径15μm以上の孔隙の数が30〜100%減少するまで土壌試料を圧密した場合、あるいは、土壌試料の乾燥密度が0.85〜2.7g/cmになるまで土壌試料を圧密した場合には、より確実に線虫を破壊して、核酸の抽出効率を1.2〜7倍以上に高めるという効果を奏するものであり(実施例2参照)、条件によっては100%近い効率で抽出できることも可能であるため(実施例5参照)、より正確に線虫を検出又は定量することが可能となる。
本発明の方法の(ハ)の工程において、植物寄生性線虫に特異的な配列を有する核酸を検出又は定量した場合には、特定の植物寄生性線虫、例えば栽培する予定の作物に寄生する線虫のみを正確かつ簡便に検出又は定量することができるため、土壌燻蒸剤の使用の適否を正確に判断することを可能とし、無駄な農薬の使用回数を減らして、土壌の微生物環境をできるだけ保つことを可能とする減農薬農法を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。本発明はこの形態に限定されるものではない。
本発明の土壌中の線虫から核酸を抽出する方法は、以下の(イ)及び(ロ)の工程を含むものである。
(イ)土壌から採取した土壌試料を圧密する工程;
(ロ)上記(イ)の工程により圧密した土壌試料から核酸を抽出する工程。
ここで、土壌から採取した土壌試料とは、単に耕作地等からサンプリングした土壌試料が好ましいが、サンプリングしたものにさらに、凍結保存などの物理的又は化学的な処理を加えた土壌試料であってもよい。
【0028】
ここで、圧密とは、圧力を加えて土壌の密度を高めることを意味する。圧密させる方法としては、線虫が生息できる土壌中の孔隙を減少させる態様のものであればいかなる方法であってもよいが、容器のような閉ざされた空間に土壌試料を詰め、圧力を加えて土壌試料を詰めた空間をさらに狭める方法が好ましい。圧密させる程度としては、線虫の生息する直径15μm以上の空隙の体積を30%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは90%ないし100%減少させる程度であればよい。直径15μm以上の空隙の体積は、実施例3に記載の方法により計測することができる。そのような圧密を行うために必要な圧力は、土壌試料によって異なるものである。
【0029】
土壌試料を圧密させる程度についての他の指標としては、土壌試料の乾燥密度が挙げられ、例えば、土壌試料の乾燥密度が0.85〜2.7g/cmになるまで圧密することが好ましい。より好ましくは、土壌試料の乾燥密度が0.95〜1.2g/cmになるまで圧密するのがよい。本発明において、乾燥密度の測定方法は、「土壌環境分析法」(日本土壌肥料学会、1997年発行)に記載された方法を基準とする。
また、他の指標としては、土壌試料の体積が挙げられ、土壌試料の体積が50〜80%減少するまで圧密するのが好ましい。より好ましくは、土壌試料の体積が60%以上減少するまで圧密するのがよい。
【0030】
本発明の(イ)の工程において、圧密した土壌試料から核酸を抽出する方法としては、土壌中の微生物から核酸を抽出する方法又はその改良法を用いることができる。特に、直接抽出法(Direct Lysis Method)と呼ばれる、土壌から直接に微生物の核酸を抽出する方法が好ましい。ここで、核酸とはDNA又はRNAである。
直接抽出法は、Ogramらが最初に開発した方法(Ogram et al., 1987, J.Microbiol.Methods, vol.7, pp.57-66)が基礎となっており、基本的には、(I)土壌中での細胞の破壊と(II)核酸の分離精製の2ステップからなる。
【0031】
(I)のステップには、(1)化学的処理、(2)物理的処理、(3)酵素的処理の3種類の方法がある。(1)化学的処理としては、SDS、LDS等の界面活性剤、フェノール・クロロホルム、塩化ベンジル、グアニジンチオアシアネート(GTC)等を用いることができる。中でも、界面活性剤、特にSDSを用いると抽出効率がよく好ましい。物理的処理としては、小さなガラスビーズ又はジルコニアビーズ等で激しく振とうすることにより細胞を破壊するビードビーティング(Bead-beating)、加熱、凍結・融解等を用いることができるが、中でも特にビードビーティング法を用いると様々な形態の細胞を破壊できるため好ましい。酵素的処理としては、リゾチーム、プロテイナーゼK、アクロモペプチターゼ、プロナーゼ等が用いられるが、特にリゾチームを用いることが好ましい。
これらの手法は、様々に組み合わせて用いることができるが、中でも、界面活性剤とビードビーティング法の組み合わせた方法が最も強力に細胞を破壊できる方法である。
尚、細胞破壊時に、核酸分子が、土壌粒子へ吸着したり分解酵素により消化されて、ロスすることを防ぐために、EDTAもしくはChelex100などのキレート剤、リン酸ナトリウムバッファー、又は、1M以上の高濃度の塩溶液などを添加することができる。
また、RNAを抽出する際には、チオシアン酸グアニジン、サルコシル、メルカプトエタノール等を使用することにより、RNAの分解を防いで抽出することができる(YU-Li et al., 1991, Applied and Environmental Microbiology, vol.57, pp.765~768)
【0032】
尚、本発明の方法では、土壌試料を圧密させる工程により、線虫が破壊されているため、(I)のステップが絶対に必要というわけではないが、(I)のステップと組み合わせた相乗効果により、高い効率で核酸を抽出することが可能となる。例えば土壌試料を圧密させる工程と(I)のステップを組み合わせることにより、(I)のステップのみの場合と比較して、1.2〜7倍以上も高い効率で核酸を抽出することが可能となる(実施例2及び5参照)。
【0033】
(II)のステップでは、様々な夾雑物を含んだままの土壌試料から核酸のみを抽出しなければならないため、複数段階の精製が必要となることが多い。
まず、変性したタンパク質や多糖、細胞残渣と複合体を形成する臭化セトリメチルアンモニウム(CTAB)やポリビニルポリピロリドン(PVPP)を添加することにより、土壌中の腐植物質を除去することができる。
そして、有機溶媒抽出などによる除タンパクと、アルコール沈殿などによる核酸の濃縮が行うことにより、核酸を精製することができる。除タンパクには、フェノール、フェノール−クロロホルム、クロロホルム−イソアミルアルコールなどの有機溶媒抽出のほかに、飽和塩溶液を用いた塩析によっても行うことができる。
核酸の濃縮には、エタノールやイソプロパノールによるアルコール沈殿や、ポリエチレングリコール(PEG)による沈殿を用いることができる。
【0034】
上記のようにして精製された核酸をさらに精製するためには、アガロース電気泳動、CsCl密度勾配遠心、ゲル濾過クロマトグラフィー等を用いることができる。また、市販のDNA精製用キットやカラムを用いることにより核酸を精製することもできる。
【0035】
上記の方法の他に、市販の土壌抽出キットを用いて、圧密した土壌試料から核酸を抽出することもできる。例えば、ISOIL for Beads Beating(ニッポンジーン)、Fast DNA spin kit for soil (登録商標、Qbio gene, USA)、UltraClean Soil DNA kit (登録商標、Mobio, USA)などが市販されている。また、RNAを抽出するキットとして、Bio101 FastRNA Pro Soil-Direct Kit(登録商標、Qbiogene, USA)が市販されている。
【0036】
上記の方法により抽出した核酸を検出又は定量することにより、土壌中の線虫を検出又は定量することが可能となる。
すなわち、本発明は、以下の(イ)〜(ハ)の工程を含むことを特徴とする、土壌中の線虫を検出又は定量する方法を提供する。
(イ)土壌から採取した土壌試料を圧密する工程;
(ロ)上記(イ)の工程により圧密した土壌試料から核酸を抽出する工程;
(ハ)上記(ロ)の工程により抽出した核酸を検出又は定量する工程。
【0037】
ここで、核酸を検出又は定量するには、抽出した核酸をそのまま検出又は定量してもよいが、線虫の核酸は微量であるため、抽出した核酸を増幅して検出又は定量を行うことが好ましい。核酸を増幅する方法としては、特に限定されず、PCR法、LAMP法、ICAN法などを用いることができる。
そして、核酸を検出又は定量する際に、ある特定の植物寄生性線虫に特異的な塩基配列を有する核酸を検出又は定量すれば、その特定の植物寄生性線虫が土壌中に存在するか否か、あるいはどれだけ存在するかを、検出・定量することができる。そのような塩基配列を有する核酸を検出又は定量するには、例えば、該塩基配列を有する核酸に相補的なプライマーを用いて特異的に増幅させ、及び/又は、該塩基配列を有する核酸に相補的なプローブをハイブリダイズさせることにより、検出又は定量することができる。
【0038】
抽出した核酸又はそれを増幅した核酸を検出する方法としては、これらに限定されるわけではないが、蛍光、化学発光、酵素若しくは放射性シグナル等により標識した相補的核酸とハイブリダイズさせる方法、リアルタイムPCR、電気泳動により分離する方法、標識した抗体と結合させる方法、標識したペプチド核酸とハイブリダイズさせる方法、電気化学的センサーを用いる方法、マイクロアレイ・遺伝子チップを用いる方法などが挙げられる。これらの中でも特に、リアルタイムPCRにより定量することが好ましい。
【0039】
リアルタイムPCRとは、定量したい核酸をテンプレートとし、Fプライマー、Rプライマーと呼ばれる2つのPCRプライマー(プライマーセット)を用いて二本鎖DNAの合成反応を行う際に、蛍光物質を作用させることで、当該合成反応が起こると蛍光シグナルが発生するようにしたPCR法である。この方法では、PCR反応を続けながらリアルタイムにPCR産物の生成量をモニタリングでき、その増幅曲線をもとにテンプレートの定量が可能となる。
このようなリアルタイムPCR法は、各種の市販の機器及びシステムを使用して実施することができ、例えば、Applied Biosystems 7900HT Fast (Applied Biosystems)、LightCycler (登録商標、Roche Diagnostics)、iCycler iQ (登録商標、Bio-Rad Laboratories) 等を用いることができる。
【0040】
本発明の、土壌中の線虫を検出又は定量する方法においては、特定の線虫、例えば、ジャガイモシストセンチュウ、サツマイモネコブセンチュウ、ダイズシストセンチュウ又はキタネグサレセンチュウを検出又は定量することができる。 すなわち、ジャガイモシストセンチュウを検出又は定量するためには、本発明の(ハ)の工程において、配列番号1に記載の塩基配列のうちの100〜200残基の塩基配列を有する核酸を検出又は定量すればよく、例えば、配列番号5及び6に記載の塩基配列を有するプライマーを用いて該核酸を特異的に増幅させることにより検出又は定量することができる。
プライマーとしては、例えば、以下のプライマー対を用いることができる。
PCN280f(5´→3´): GCGTCGTTGAGCGGTTGTT(配列番号5)
PCN398r(5´→3´): CCACGGACGTAGCACACAAG(配列番号6)
【0041】
サツマイモネコブセンチュウを検出又は定量するためには、本発明の(ハ)の工程において、配列番号2に記載の塩基配列のうちの100〜200残基の塩基配列を有する核酸を検出又は定量すればよく、例えば、配列番号7及び8に記載の塩基配列を有するプライマーを用いて該核酸を特異的に増幅させることにより検出又は定量することができる。
プライマーとしては、例えば、以下のプライマー対を用いることができる。
RKNf(5´→3´): GCTGGTGTCTAAGTGTTGCTGATAC(配列番号7)
RKNr(5´→3´): GAGCCTAGTGATCCACCGATAAG(配列番号8)
上記のプライマー対は、ジャワネコブセンチュウやアレナリアネコブセンチュウをも検出できるため、ネコブセンチュウを検出するためのプライマーとして使用することもできる。
【0042】
ダイズシストセンチュウを検出又は定量するためには、本発明の(ハ)の工程において、配列番号3に記載の塩基配列のうちの100〜200残基の塩基配列を有する核酸を検出又は定量すればよく、例えば、配列番号9及び10に記載の塩基配列を有するプライマーを用いて該核酸を特異的に増幅させることにより検出又は定量することができる。
プライマーとしては、例えば、以下のプライマー対を用いることができる。
forward(5´→3´): CTAGCGTTGGCACCACCAA(配列番号9)
reverse(5´→3´): AATGTTGGGCAGCGTCCACA(配列番号10)
【0043】
キタネグサレセンチュウを検出又は定量するためには、本発明の(ハ)の工程において、配列番号4に記載の塩基配列のうちの100〜200残基の塩基配列を有する核酸を検出又は定量すればよく、例えば、配列番号11及び12に記載の塩基配列を有するプライマーを用いて該核酸を特異的に増幅させることにより検出又は定量することができる。
プライマーとしては、例えば、以下のプライマー対を用いることができる。
NEGf(5´→3´): ATTCCGTCCGTGGTTGCTATG(配列番号11)
NEGr(5´→3´): GCCGAGTGATCCACCGATAAG(配列番号12)
【0044】
本発明の方法においては、前記方法により定量した土壌中の線虫由来の核酸の量と、線虫の量が既知の試料を用いて定量した核酸の量を比較することにより、土壌試料中の線虫を定量することができる。ここで、線虫の量が既知の試料としては、例えば、土壌中の線虫を計数して線虫の量が既知である土壌試料や、土壌から分離して種類により選別した植物寄生性線虫そのもの、又は、植物寄生性線虫に特異的な配列を有する核酸を用いることができる。線虫の量が既知の試料の定量は、線虫を定量したい土壌試料とは別に定量してもよく、また、線虫を定量したい土壌試料に添加して内部標準としてもよい。内部標準とする場合には、定量したい線虫とは別の種類の線虫若しくはその核酸又は相同性の低い他の核酸を用いる必要がある。本発明の土壌中の線虫を定量する方法は、土壌試料を圧密させることにより高い効率で核酸を抽出でき、場合によっては100%近い効率で抽出できるものである。従って、線虫の量が既知の試料を、内部標準とはせずに、線虫を定量したい土壌とは別に定量したとしても、土壌の種類による抽出効率の違いを要因とする誤差が小さく、正確に定量することができる。
【0045】
本発明はまた、土壌試料を圧密するのに適した器具を提供するものである。本発明の圧密器具は、土壌試料を収納する試料容器と、該試料容器内の土壌試料に圧力を加える圧迫部を備えていることを特徴とする。
本発明の圧密器具の好ましい態様の一つは、例えば、図1に示すような器具である。すなわち、試料容器(1)を設置できる支持台(3)と、支持台(3)に連結された本体(4)と、本体(4)上部との螺合により上下方向に摺動可能な締付具(5)と、締付具(5)の先端に取り付けられた圧迫部(2)とを備え、締付具(5)を下方に摺動させると、試料容器(1)内に圧迫部(2)が嵌入して、土壌試料に圧力を加えて締め固めることができることを特徴とする圧密器具である。
本発明の圧密器具において、螺合により本体(4)に取り付けられた締付具(5)を上下に摺動させた状態を図2に示す。本発明の圧密器具は、いかなる材料を用いて製造してもよいが、安定性の点などから鉄を材料とすることが好ましい。
この圧密器具は、手動により土壌試料に高い圧力を加えることが可能であり、また、コンパクトで持ち運びも容易であるため、本発明の方法を簡便に実施することを可能とするものである。
【0046】
また、本体(4)を略逆U字型とし、支持台(3)と本体(4)の連結部分の一端を、枢結部(6)を介して回転可能に連結し、支持台(3)と本体(4)の連結部分の他端が、あご部(7)と回転可能なフック(8)により固定可能にした場合には、フック(8)を回転させてあご部(7)からはずし、本体(4)を枢結部(6)を支点に回転させることにより、試料容器(1)を容易に取り外し又は設置することができる。
ここで、試料容器(1)は、円筒形状の金属容器とすることができ、支持台(3)、本体(4)、あご部(7)及びフック(8)は、により製造することができる。また、
【0047】
本発明は、また、上記圧密器具と土壌試料中の核酸を抽出する試薬を含む、土壌中の線虫から核酸を抽出するキットを提供する。ここで、土壌試料中の核酸を抽出する試薬としては、これらに限定されるものではないが、界面活性剤、ビーズ及び/又はリゾチーム等を含む細胞溶解試薬、フェノール、クロロホルム、アルコール、PEG、CTAB及び/又はPVPP等を含む核酸精製試薬、並びに、精製カラムなどが挙げられる。
【0048】
本発明は、また、上記圧密器具、土壌試料中の核酸を抽出する試薬及び核酸を検出又は定量するための試薬を含む、土壌中の線虫を検出又は定量するキットを提供する。ここで、核酸を検出又は定量するための試薬としては、これらに限定されるものではないが、ポリメラーゼ、逆転写酵素、反応バッファー、dNTPミックス、プライマー、蛍光色素若しくは放射性同位体等により標識されたプローブ、ハイブリダイゼーションバッファー等が挙げられる。
【0049】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの態様に限定されるものではない。
【実施例1】
【0050】
(土壌中の線虫の核酸の抽出)
(土壌試料の圧密)
図1に示される圧密器具を用い、100cm3の円筒形の試料容器に土壌(腐植質黒ボク土)を30g程度充填し、下記の3つの条件により圧密させた。ついで、スパチュラやマイナスドライバーを活用して円筒形の試料容器から土壌を取り出し、十分にほぐして、次の3種類のサンプルを作成した。
締め固めなし:圧密なし(乾燥密度0.5g/cm3
締め固めあり:圧密程度大(乾燥密度1.16g/cm3程度)
【0051】
(土壌試料の攪拌)
上記の2種類の土壌サンプルとTEバッファーを1:1(w/v)の割合で混合した。次に土壌各攪拌機(AUTO CELL MASTER CM-200 アズワン)に混合物を投入し、15000rpmで10分間攪拌した。
(土壌からのDNA抽出)
(1)上記攪拌により得られた線虫懸濁液をジルコニアビーズ(φ0.1mm)0.75g、ガラスビーズ(φ0.5mm)0.25gの入った滅菌済み蓋付きチューブに入れた。
(2)Lysis buffer(0.5%SDS,100mM Tris-HCl(pH8.0), 300mM EDTA(pH8.0))を0.7mL添加後、Bead beating 5000rpm(ビーズ式細胞破砕機 BS12 和研薬)で60秒を2回行った後、12000g室温で5分間遠心した。
(3)上清700μLを新しい2mLのエッペンチューブに移し、5M NaCl 377μLと10% CTAB 270μLを添加し、60℃・10分培養、途中数回振とうした。
(4)室温に放冷し、クロロホルム500μLを添加し,15秒間ボルテックス後、15000g、室温で20分間遠心後、水層を新しいエッペンに移した。
(5)水層にクロロホルムを再度添加し, 遠心分離後、(15000gで20分間)1200μLの水層を新しいエッペンに移した。
(6)720uLの20%PEG(20%POLYETHYLENEGLYCOL8000, 1.6M NaCl)を添加し、混合後、15000rpm、4℃で20分間遠心後、上清を除いた。
(7)1mLの70%エタノールを添加し、よく攪拌後、遠心分離(15000rpm、4℃、2分)した。
(8)溶液を除去した後、70%エタノールで再度洗浄(500μLを添加)
(9)沈殿を軽く乾かして, TE 100μLを添加し、DNA抽出サンプルを得た。
【0052】
(アガロースゲル電気泳動)
(1)1×TAEを20mLにアガロースを0.2g混合した。
(2)電子レンジで加熱し、アガロースを完全に溶解させた。
(3)型に流し込み1時間放置し、アガロースゲルを作成した。
(4)上記のDNA抽出サンプル10μLに6×ローディングバッファーを1μL混合し、ゲルにセットした。
(5)電気泳動装置(Mupid-exu TaKaRa)でゲルを20分間泳動した。
(6)エチジウムブロマイド溶液に20分間浸し、ゲルを染色し、土壌試料から核酸が抽出できていることを確認した。
【実施例2】
【0053】
(リアルタイムPCRによる定量)
(1)解析用ソフトウェアSmart Cycler(登録商標)software Version 2.0がインストールされているPCとSmart Cycler(登録商標)IISystemをUSBケーブルで接続させた。
(2)使用するプライマーに合わせたプログラムと反応させるチューブ数を選択した。
(3)Smart Cycler(登録商標)専用反応チューブを冷却済み金属製クーリングスタンドに立てた。(ビニール手袋をはめて、指紋などの汚れがチューブに残らないようにする。)
(4)滅菌水と下記の各プライマー(フォワード・リバース)、SYBR(登録商標) Premix Ex Taq(登録商標) (TaKaRaバイオ社)を下記の表1に従って混合し、マスターミックスを調整した。(SYBR(登録商標) Premix Ex Taq(登録商標)は要遮光)
ジャガイモシストセンチュウ
PCN280f(5´→3´): GCGTCGTTGAGCGGTTGTT
PCN280r(5´→3´): CCACGGACGTAGCACACAAG
ネコブセンチュウ
RKNf(5´→3´): GCTGGTGTCTAAGTGTTGCTGATAC
RKNr(5´→3´): GAGCCTAGTGATCCACCGATAAG
ダイズシストセンチュウ
forward(5´→3´): CTAGCGTTGGCACCACCAA
reverse(5´→3´): AATGTTGGGCAGCGTCCACA
キタネグサレセンチュウ
NEGf(5´→3´): ATTCCGTCCGTGGTTGCTATG
NEGr(5´→3´): GCCGAGTGATCCACCGATAAG
(5)各チューブに、100倍希釈した鋳型DNAを5μL入れ、遠心した。
(6)マスターミックスを各チューブに分注し、遠心した。
(7)Smart Cycler(登録商標)II System(Cephied社)にチューブをセットし、「Run」を始めた。
(8)Run終了後、チューブを回収し、ソフトウェアを閉じ、Smart Cycler(登録商標)II Systemの電源を切った。
【0054】
【表1】

【0055】
上記のリアルタイムPCRの結果を図3及び図4に示す。
図3に示すように、圧密処理有りの方がリアルタイムPCRの蛍光強度の立ち上がりが早く、また、メルトカーブから増幅されたDNA断片が目的とするダイズシストセンチュウ由来であることが確認できる。
また、図4から明らかなように、圧密サンプルでは、Ct値が27.1±0.17であったのに対し、圧密処理をしていないサンプルでは、Ct値が30.0±0.26と、有意に2.9回分早くなった。これは、圧密によりシストセンチュウ由来のDNAの抽出効率が約7.6倍高くなったことを意味する。
【実施例3】
【0056】
図5に異なる程度で(体積が3割、4割、5割、それぞれ減少するまで)圧密した土壌のpF-水分曲線を示す。pF1(1kPa=300μmの孔隙に相当)の水分のときには、圧密の有無で土壌の水分含量が大きく異なることがわかる。この水分量は孔隙量を表すので、圧密に伴い、水分量が減少=孔隙量が減少することがわかる。圧密の有無により水分量が異なる傾向はpF2.3(20kPa=15μmの孔隙に相当)まで続く、つまり15μm以上の大きさの孔隙量は圧密により減少することがわかる。ちなみに、この孔隙量は加圧版法(例えば、大起理化工業株式会社製DIK-3404広域土壌pF測定器)によって簡単に求めることができる。また、この図ではpF2.3よりも低い水分含量の所は、1本の曲線で示されているが、これは、15μm以下の孔隙量は圧密による影響を受けないことを示す。
【実施例4】
【0057】
図1の器具を用いると、土壌を任意の乾燥密度に圧密することができる。つまり、50g(乾燥重量)の土を100ccの円筒形の試料容器に充填すると、本実験で用いた黒ボク土では5cmの高さとなる。このときの乾燥密度は0.5g/cm3に相当する。これを順次圧密していき、高さを2.5cmにすると、1.0g/cm3となる。つまり、用いる土壌を一定にして、圧密の程度によって高さを調節することで、任意の乾燥密度に土壌を調整することが可能となる。
黒ボク土を各乾燥密度に圧密した場合の線虫減少量をプロットしたグラフを図6に示す。
【実施例5】
【0058】
ネグサレセンチュウを二分し、一方を土壌に添加、もう一方を土壌に添加せず、溶液中で完全に破壊した。ネグサレセンチュウを添加した土壌を圧密し、それからDNAを抽出し、リアルタイムPCRでキタネグサレセンチュウを定量した。その結果を図7に示す。コントロールとした溶液中で完全に破壊した溶液を用いてネグサレセンチュウを定量した値を100としたところ、土壌を圧密した場合には、溶液と同じ100となったが、土壌を圧密せず、通常の方法を用いて土壌からDNAを抽出したネグサレセンチュウを定量したところ、20にも満たなかった。つまり、圧密により効率が4倍増加すると共に、圧密により土壌に添加したすべてのキタネグサレセンチュウを回収・検出できるようになったことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の、土壌中の線虫から核酸を抽出する方法、土壌中の線虫を検出・定量する方法、及び、その方法に用いる圧密器具及び該圧密器具を含むキットは、耕作地の土壌診断の分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の圧密器具の各部構成を示した正面図である。
【図2】本発明の圧密器具の締付具を上下に摺動させた状態を示す図である。
【図3】リアルタイムPCRのメルトカーブ及び増幅曲線を示す図である。
【図4】リアルタイムPCRの結果を示す図である。
【図5】異なる程度で圧密した土壌のpF-水分曲線を示す図である。
【図6】土壌を圧密した際の乾燥密度と線虫減少量の関係を示した図である。
【図7】核酸の抽出効率を比較した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1・・・試料容器
2・・・圧迫部
3・・・支持台
4・・・本体
5・・・締付具
6・・・枢結部
7・・・あご部
8・・・フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌中の線虫から核酸を抽出する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(イ)土壌から採取した土壌試料を圧密する工程;
(ロ)上記(イ)の工程により圧密した土壌試料から核酸を抽出する工程。
【請求項2】
土壌中の線虫を検出又は定量する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(イ)土壌から採取した土壌試料を圧密する工程;
(ロ)上記(イ)の工程により圧密した土壌試料から核酸を抽出する工程;
(ハ)上記(ロ)の工程により抽出した核酸を検出又は定量する工程。
【請求項3】
前記(イ)の工程において、土壌試料における直径15μm以上の孔隙の体積が30〜100%減少するまで土壌試料を圧密することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記(イ)の工程において、土壌試料の乾燥密度が0.85〜2.7g/cmになるまで土壌試料を圧密することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記線虫が、植物寄生性線虫であり、前記(ハ)の工程における核酸が、当該植物寄生性線虫に特異的な塩基配列を有する核酸であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記植物寄生性線虫と前記植物寄生性線虫に特異的な塩基配列を有する核酸が以下の3つの組み合わせのいずれかであることを特徴とする、請求項5に記載の方法:
ジャガイモシストセンチュウ/配列番号1に記載の塩基配列のうちの100〜200残基の塩基配列を有する核酸;
サツマイモネコブセンチュウ/配列番号2に記載の塩基配列のうちの100〜200残基の塩基配列を有する核酸;
ダイズシストセンチュウ/配列番号3に記載の塩基配列のうちの100〜200残基の塩基配列を有する核酸。
キタネグサレセンチュウ/配列番号4に記載の塩基配列のうちの100〜200残基の塩基配列を有する核酸。
【請求項7】
前記(ハ)の工程において、抽出した核酸を増幅させて検出又は定量することを特徴とする、請求項2〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
さらに、次の(ニ)の工程を含むことを特徴とする、請求項2〜7のいずれかに記載の方法:
(ニ)上記(ハ)の工程により定量した核酸の量と、線虫の量が既知の試料を用いて定量した核酸の量を比較することにより、土壌試料中の線虫を定量する工程。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の方法において土壌試料を圧密するために使用する器具であって、土壌試料を収納する試料容器を備えていることを特徴とする、圧密器具。
【請求項10】
請求項9に記載の圧密器具において、試料容器(1)を設置できる支持台(3)と、支持台(3)に連結された本体(4)と、本体(4)上部との螺合により上下方向に摺動可能な締付具(5)と、締付具(5)の先端に取り付けられた圧迫部(2)とを備え、締付具(5)を下方に摺動させると、試料容器(1)内に圧迫部(2)が嵌入して、土壌試料に圧力を加えて締め固めることができることを特徴とする、請求項9に記載の圧密器具。
【請求項11】
請求項10に記載の圧密器具において、本体(4)が略逆U字型であり、支持台(3)と本体(4)の連結部分の一端が、枢結部(6)を介して回転可能に連結され、支持台(3)と本体(4)の連結部分の他端が、あご部(7)と回転可能なフック(8)により固定可能にされていることを特徴とする圧密器具。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかに記載の圧密器具及び土壌試料中の核酸を抽出する試薬を含む、土壌中の線虫から核酸を抽出するキット。
【請求項13】
請求項9〜11のいずれかに記載の圧密器具、土壌試料中の核酸を抽出する試薬及び核酸を検出又は定量するための試薬を含む、土壌中の線虫を検出又は定量するキット。

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−195147(P2009−195147A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39438(P2008−39438)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(394008846)大起理化工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】