説明

土壌中揮発性物質抽出装置

【課題】土壌中の石油系炭化水素成分含有量測定する方法を提供する。
【解決手段】気化・燃焼部1は、測定する試料の土壌をカプセル状の試料容器115と、前記試料用器115と試料投入室蓋145を2つの空間を持つ収容空間118へ収容させるために自動的に昇降させる収容昇降装置3と、前記試料容器115を収容する前記収容空間118の一方の加熱ガス通過空間119と、前記収容空間118のもう一方の酸素と窒素の混合ガスを導入する混合ガス入口2aを備えた常温ガス通過空間120と、前記常温ガス通過空間120とインラインヒーター113に接続されて前記混合ガスが通過する混合ガス配管2cを備えた土壌中揮発性物質抽出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌汚染調査現場で迅速・簡便な手法で、且つ、環境に悪影響を与えずに土壌中に含有する揮発性物質濃度を測定する方法と計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土壌汚染物質の揮発性物質には、例えば石油系炭化水素を含有するものがある。この石油系炭化水素とは、石油関連施設で扱っている石油製品に由来するものであり、例えば、ガソリン、灯油、軽油、A重油、C重油、潤滑油類(鉱油、合成油)、原油等を構成する炭化水素化合物類である。現在、土地の使用用途変更などの際に土壌汚染調査の結果報告が義務付けられており、その一環として土壌中の石油系炭化水素成分の含有量を調べる必要がある。
【0003】
これまでの分析法としては、土壌中の石油系炭化水素成分をn−ヘキサンで抽出・分離し、n−ヘキサンを加熱により蒸発させ、残渣物の重量を測定する方法(n−ヘキサン抽出−重量法)、土壌中の石油系炭化水素成分を四塩化炭素にて抽出・分離し、四塩化炭素抽出液の赤外吸収分光分析(IR)を行ない成分含有量を測定する方法(四塩化炭素抽出−IR法)、土壌中の石油系炭化水素成分を二硫化炭素にて抽出・分離し、二硫化炭素抽出液をガスクロマトグラフィー(GC、検出装置FID)にて、分析し、チャートの面積比より成分含有量を測定する方法(二硫化炭素抽出−GC法)等が知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、土壌中の石油系炭化水素成分をテトラクロロエチレンにて抽出し、その抽出液のIR分析を行ない、成分含有量を測定する方法(テトラクロロエチレン抽出−IR法)等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、土壌中の炭化水素簡易分析器として採取した土壌の炭化水素を抽出溶媒で抽出し、抽出液の濁度から炭化水素含有量を測定する器具が市販されている。
【0005】
他に、水中の油分を測定する方法として、水中の油分を抽出溶媒で抽出した後、油分抽出液から抽出溶媒を揮散させ、残留分を燃焼させることにより発生した二酸化炭素から油分を測定する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかし、これらの方法は何れも大気汚染或いは土壌汚染の原因となる抽出液を使用するものであり、したがってこれらの抽出液をそのまま排出すると、環境汚染の原因となり、またこれらの抽出液を無害化するには、多くの費用と労力を必要とする。
【0007】
これに対して抽出液を使用しない方法として、土壌中の軽質の炭化水素留分を加熱により蒸発させ、トラップし(パージアンドトラップ、PT)、それをGCにて分析し、チャートの面積比より油分量を測定する方法(PT−GC法)が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
しかし、この方法は土壌中に含まれる石油系炭化水素成分が軽質留分である場合に適用される方法であり、軽質留分以外に中重質留分を含む場合、中重質留分については前記した抽出液を使用する二硫化炭素抽出−GC法を適用する方法(PEC法)が採用されている。したがって軽質留分から中重質留分まで幅広い石油系炭化水素成分を含む土壌に対しては従来法では何れも大気汚染或いは土壌汚染の原因となる有機溶媒による抽出操作が用いられていた。
【0009】
また、軽質留分から中重質留分まで幅広い石油系炭化水素成分を含む土壌に対して有機溶媒による抽出操作を必要とせず、且つ簡便に石油系炭化水素成分の含有量を測定する方法として、石油系炭化水素成分を含む土壌を加熱部のサンプル室内に装填して加熱処理して土壌中に含有される該成分を気化させると共に、サンプル室に酸素と窒素の混合ガスを導入し気化された該成分を反応室に送り込んで燃焼させ、これにより発生した二酸化炭素量を測定し、土壌中に含まれる該成分の含有量を測定することを特徴とする土壌中の石油系炭化水素成分含有量を測定する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
さらに、これらの知見に基づき、石油系炭化水素成分を含む土壌を気化装置内に装填し加熱処理して土壌中に含有される該成分を気化させると共に、上記気化装置に酸素と窒素の混合ガスを導入し気化された該成分を、酸化触媒を充填した反応管に送り込んで燃焼させ、これにより発生した二酸化炭素量を測定し、該二酸化炭素量より土壌中に含まれる該成分の含有量を測定する方法において、上記酸化触媒としてプラチナ触媒を使用する土壌中の石油系炭化水素成分含有量測定する方法が開示されている(例えば、特許文献4及び特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−294617号公報
【特許文献2】特開2003−302316号公報
【特許文献3】特開2007−171049号公報
【特許文献5】特開2008−281412号公報
【特許文献4】特開2008−304316号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】石油汚染土壌の浄化に関する技術開発報告書、財団法人石油産業活性化センター、平成15年3月、P8〜P28。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、これらの知見と、石油系炭化水素成分を含む土壌を気化装置内に装填し加熱処理して土壌中に含有される該成分を気化させると共に、上記気化装置に酸素と窒素の混合ガスを導入し気化された該成分を、酸化触媒を充填した反応管に送り込んで燃焼させ、これにより発生した二酸化炭素量を測定し、該二酸化炭素量より土壌中に含まれる該成分の含有量を測定する方法において、上記酸化触媒としてプラチナ触媒を使用する土壌中の石油系炭化水素成分含有量を測定する方法で開示された手法に基づき製品化しようとすると、土壌および土壌を加熱する空気を加熱するために大掛かりな加熱炉(電気炉等)が必要となる。そのため、加熱に必要な安定した温度に到達するまで数時間を要し、その間は測定を開始することが出来ない。また、加熱炉は常時300℃近い温度を保つ必要があり装置外部にまで熱が伝わり素手で装置に触れると熱傷の危険性があり、測定時には熱傷防止の防護手袋やゴーグルが必要となる。さらに、触媒により燃焼したガスは全て専用の袋に回収(採取)しなければならない。このように一連の測定の手順が煩雑化し汚染調査を行う現場で測定者の安全を確保しつつ、且つ短時間に計測することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、このような問題を解決しようとするもので、計測する土壌を収容する収容空間と、前記土壌に酸素と窒素の混合ガスを送入する送入手段と、前記混合ガスを加熱して前記収容空間に導入する加熱手段と、土壌内に含有する石油系炭化水素濃度が前記加熱手段により気化されたガスを触媒で燃焼させる燃焼手段と、該燃焼手段により燃焼したガスを再び常温状態のガスに冷却する冷却手段と、冷却された燃焼ガスの濃度を計測する燃焼ガス濃度計測手段と、土壌容器を自動的に前記収容空間に昇降させる昇降装置と、前記収容空間の温度制御と異常監視をする温度センサと、前記温度センサの情報により前記昇降装置の昇降を制御するロック制御装置を有する特徴を備えた土壌中揮発性物質抽出装置である。
【0015】
前記土壌は、カプセル状の容器に収容され、前記収容空間は前記カプセル状の容器を収容する特徴を備えた土壌中揮発性物質抽出装置である。
【0016】
前記カプセル状の容器は、入り口と出口を有して双方に金属のメッシュフィルタが取り付けられた特徴を備えた土壌中揮発性物質抽出装置である。
【0017】
前記カプセル状の容器を自動的に昇降させる昇降手段を備えた土壌中揮発性物質抽出装置である。
【0018】
前記昇降手段は、前記カプセル状の容器を取り付けるアーム部と、前記アーム部を支持するスライダー部と、前記カプセル状容器の保持部と、前記昇降装置の駆動部を備える土壌中揮発性物質抽出装置である。
【0019】
前記収容空間は、前記カプセル状の容器を収容するカプセル収容空間と、該収容空間の熱を断熱する断熱空間を備える土壌中揮発性物質抽出装置である。
【0020】
前記断熱空間は、前記加熱手段により予熱される予熱手段を備える土壌中揮発性物質抽出装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、土壌に含まれる揮発性物質成分を気化させるために用いる酸素と窒素の混合ガスは計測するときだけ急加熱することが可能で、電気炉のように加熱に必要な熱量を得る時間を要さず短時間で計測が可能となる。したがって、測定時の低エネルギー化が図られる。
【0022】
また、内壁で遮蔽された少なくとも2つの空間を有した計測する土壌を収容する収容空間の、収容空間が計測装置外部に露出する面をもつ一方に常温状態の前記混合ガスを通過させて、装置内部にある前記土壌を収容させた他方の空間には加熱手段により加熱された前記混合ガスを通過させることで、急加熱された前記混合ガスの熱を収容空間が露出する装置外部面に伝えにくくすることが可能で、収容空間が計測装置外部に露出する面を素手で触れても熱傷を負うことを防ぐことができ、測定作業者の安全が図られる。さらに、収容空間が計測装置外部に露出する面をもつ一方の収容空間に常温状態の前記混合ガスを通過させたのち、その前記混合ガスを加熱することに用いると、いわゆる予熱効果を得ることが可能となり測定時の低エネルギー化が図られる。
【0023】
計測する土壌を、フィルターを取り付けたカプセル状の容器を用いて測定することで土壌の微細な粉塵のカプセル外への排出を防止しながら測定試料を交換することが容易になり、さらに、加熱した前記混合ガスを通過させても土壌の微細な粉塵がカプセル外部に排出されないことで配管内部の詰まりを防ぐことが可能となり測定装置のメンテナンスの軽減が図られる。
【0024】
燃焼ガス濃度計測手段を備えており、加熱する前の前記混合ガスを燃焼ガス濃度計に通過させて、予め前記混合ガスに含有する二酸化炭素の濃度を計測しておくことで、燃焼ガスの濃度計測値から加熱前の前記混合ガスの二酸化炭素の濃度を差し引く演算処理をすることで、加熱前の混合ガスに含有する二酸化炭素の濃度(いわゆるバックグランド)の影響を取り除くことが可能となり測定精度の向上が図られる。さらに、灯油、軽油、A重油、C重油等の炭化水素化合物類はそれぞれ気化する温度が異なるため、前記混合ガスの流量を一定に制御し燃焼したガスの濃度変化を時系列で計測し土壌中揮発性物質濃度を計測する事で、土壌中に含有されていた炭化水素化合物類の種別も土壌中揮発性物質濃度と同時に判定することが可能となる。これにより、従来、測定試料を持ち帰り分析していた炭化水素化合物類の種別判定を汚染調査現場でできることで判定に要する時間の短縮が図られる。
【0025】
計測装置内部は複数の温度センサを備えており、加熱−気化−燃焼−冷却−計測の各工程において最適な温度制御と異常監視をすることが可能で、異常加熱の防止、加熱中の収容空間開閉停止などの安全設計を施すことが可能となり、計測装置と計測作業及び計測作業者の安全を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る土壌中揮発性物質抽出装置の気化・燃焼部の構成図である。
【図2】土壌中揮発性物質抽出装置全体の構成図である。
【図3】収容空間に収容昇降装置が収容されている状態を示す断面図である。
【図4】収容空間から収容昇降装置が取り出された状態を示す断面図である。
【図5】カプセル状の試料容器を開いた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態に係る土壌中揮発性物質抽出装置の気化と燃焼に係る構造の詳細について図1で説明する。気化・燃焼部1は、内部に収容空間118を有する気化容器116と、測定する試料となる土壌を入れるカプセル状の試料容器115と、前記試料用器115と試料投入室蓋145を収容空間118へ収容させるために、試料用器115および試料投入室蓋145を自動的に昇降させる収容昇降装置3とを有している。また、気化容器116は、試料容器115と試料投入室蓋145を収容することにより、収容空間118を2つの空間に仕切られるようになっている。収容空間118の一端側(加熱された混合ガスが通過する側)には、前記試料容器115を収容するとともに、加熱された混合ガス(例えば、摂氏250度〜300度)を通過させる加熱ガス通過空間119と、前記収容空間118の他方側(常温の混合ガスが通過する側)には、常温(例えば、摂氏0度〜40度)の酸素と窒素の混合ガスを導入する混合ガス入口2aを備えた常温ガス通過空間120が形成される。なお、気化容器116には、前記常温ガス通過空間120とインラインヒーター113(詳細は後述)を接続し、前記常温の混合ガスを通過させる混合ガス配管2cを備える。
【0028】
更にこの気化・燃焼部1は、前記混合ガス配管2cを通過した常温の混合ガスを加熱するインラインヒーター113と、前記インラインヒーター113内の混合ガスの温度を計測するインラインヒーター温度計測センサ121と、前記インラインヒーター113と加熱ガス通過空間119に接続されて前記インラインヒーター113で加熱された前記混合ガスが通過する加熱混合ガス配管2dを備えている。
【0029】
前記インラインヒーター113とは、金属製の円管内に加熱用のヒーターが内蔵され円管内を通過する気体を急激(例えば数秒〜数分以内)に高温(例えば摂氏600度程度)に加熱することができる。また、内蔵ヒーターへの供給電源を制御(例えば電圧を調節)することで、発熱温度を制御することができる。
【0030】
この結果、加熱ガス通過空間119は、前記混合ガス配管2dを通過した前記加熱混合ガスにより高温状態(例えば、摂氏250度〜300度)となる。これにより、加熱ガス通過空間119に収容される前記試料容器115の土壌中に含有される炭化水素化合物成分が気化する。
【0031】
この気化・燃焼部1は、前記加熱ガス通過空間119の温度を気化ガス温度計測センサ147と、前記加熱ガス通過空間119と酸化触媒を充填した触媒容器117に接続された気化ガス配管2eと、前記気化ガス配管2eを通過した気化成分を含んだ前記加熱混合ガスを燃焼させる前記触媒容器117と、触媒容器117に充填した触媒158と、前記触媒158を予め加熱する前記触媒容器117に取り付けられた触媒加熱ヒーター157と、前記触媒容器117に前記触媒158を充填する時に開閉する触媒容器蓋149と、前記触媒加熱ヒーター157の温度を計測する触媒温度計測センサ159と、前記触媒容器117に取り付けられるとともに、触媒容器117で燃焼させ発生した二酸化炭素を含んだ前記加熱混合ガスを排出する燃焼ガス出口2bと、二酸化炭素を含んだ前記加熱混合ガスの温度を計測する燃焼ガス温度計測センサ161と、をさらに備えている。この触媒容器117により、気化混合ガスから測定対象となる二酸化炭素に置換することができる。
【0032】
次に、土壌中の揮発性物質抽出装置の全体に係る構造の詳細について図2で説明する。土壌中の揮発性物質抽出装置2(以下装置2という)は、空気供給系統として、前記装置2の筐体10と、前記筐体10に取り付けられた外気導入口101と、前記外気導入口101から前記気化・燃焼部1へ導入される常温の酸素と窒素の混合ガスを前記筐体10の内部に取り入れて送入するポンプ105と、送入する前記混合ガスから粉塵を取り除くエアーフィルター103と、送入された前記混合ガスの流量を一定に制御する流量制御装置107と、前記混合ガスの温度を計測する送入温度計測センサ108と、前記外気導入口101から取り入れられた前記混合ガスを前記気化・燃焼部1へ送入するか迂回させる流路を切り替える流路切替電磁弁109と、前記流路切替電磁弁109が前記気化・燃焼部1へ送入する方向に切り替えられて前記混合ガスが通過する空気配管155とを備える。
【0033】
更に、装置2は、排気系統として、燃焼ガス出口2bに接続され、気化・燃焼部1から排出された前記二酸化炭素を含んだ前記加熱混合ガスが通過する燃焼ガス配管135と、前記二酸化炭素を含んだ前記加熱混合ガスをガス濃度検出部133で計測できる温度(例えば、摂氏5度〜30度)にまで冷却する冷却装置123と、前記冷却装置123で前記二酸化炭素を含んだ前記加熱混合ガスを通過させる冷却部125と、前記冷却部125の入口を通過する前記二酸化炭素を含んだ前記加熱混合ガスの温度を計測する冷却部ガス入口温度計測センサ129と、前記冷却部125の出口を通過する前記二酸化炭素を含んだ冷却後の混合ガスの温度を計測する冷却部ガス出口温度計測センサ163と、前記流路切替電磁弁109で迂回されバイパス配管111を通過した前記常温の混合ガスが冷却部125へ逆流するのを防止する逆流防止電磁弁141と、冷却部ガス出口温度計測センサ163が冷却後の前記混合ガス温度を検出した結果、前記冷却後の加熱混合ガスがガス濃度検出部133で計測できる温度にまで冷却することが出来ない場合にガス濃度検出部133を保護するために前記加熱混合ガスを強制排気口139に接続された強制排気配管165へ流路切替する強制排気電磁弁131と、前記冷却部125でガス濃度検出部133が計測できる温度にまで冷却された前記二酸化炭素を含んだ混合ガスが通過するガス濃度計測配管167と、前記ガス濃度計測配管167を通過する前記二酸化炭素を含んだ混合ガスの湿度を調節する除湿部127と、前記二酸化炭素を含んだ混合ガスの濃度を計測するガス濃度検出部133と、ガス濃度検出部133で計測された前記二酸化炭素を含んだ混合ガスを外部へ排出する前記筐体10に取り付けられた排気口137を備える。
【0034】
更に、装置2は、制御系統として、装置2の測定に必要な操作をする操作部13と、操作に必要な項目と設定値及び測定結果などを表示する表示部14と、前記ポンプ105と前記流量制御装置107を制御する流量制御部17と、前記筐体10の内部に取り付けられた複数の温度計測センサの温度を計測する温度計測部19と、収容昇降装置3の開閉を制御するロック制御部23と、ガス濃度検出部133の濃度を計測制御する計測制御部21と、前記流量制御部17と温度計測部19と計測制御部21からの信号をもとに演算制御する演算制御部15と、前記流量制御部17と前記温度計測部19とロック制御部23と前記計測制御部21と前記演算制御部15と前記操作部13と前記表示部14の各部を接続する入出力信号線143を備える。
【0035】
尚、温度影響で計測制御に支障がでる装置(例えば、演算制御部15や温度計測部19などの計測部や制御部)を保護するために、前記気化・燃焼部1は遮熱壁11で囲われている。
【0036】
気化容器116の収容空間118に、試料容器115や試料投入室蓋145を挿入または挿抜する収容昇降装置3について図3および図4で説明する。図3は試料容器115が気化容器116内部に形成された収容空間118に収納された状態を表わしている。また、図4は試料容器115が前記収容空間118の外部に出ている状態を表わしている。収容昇降装置3は、前記試料用器115と試料投入室蓋145を収容空間118へ収容または取り出しをするために自動的に昇降または下降させるモーター153と、前記モーターに駆動されるモータープーリー303と、前記モータープーリー303の動力を軸プーリー307に伝えるベルト305と、前記ベルト305で伝えられた動力により前記軸プーリー307に取り付けられ回転するボールネジ309と、前記ボールネジ309の回転により前記軸プーリー307の取付側または逆方向に動くアーム取付台311と、前記アーム取付台311に取り付けられた前記スライドアーム151と、前記スライドアーム151に取り付けられた試料投入室蓋145と、前記試料投入室蓋145に連結棒313で取り付けられ、連結棒313が収容空間118に挿入されることで収容空間118を2つの空間(加熱ガス通過空間119および常温ガス通過空間120)に遮蔽する遮蔽壁315と、さらに前記連結棒313で取り付けられた試料容器取付台317を備える。
【0037】
更に収容昇降装置3は、筺体10に取り付けられた支柱301と、前記支柱301に取り付けられたスライドレール325と、前記スライドレール325に沿って移動するスライダー323と、前記支柱301または前記スライドレール325のいずれかに取り付けられた前記スライダー323の位置を検知する上部位置センサ319と、下部位置センサ321とを備える。尚、前記スライダー323は前記アーム取付台311に接続され前記アーム取付台311と連動して前記スライドレール325に沿って移動する。
【0038】
更に収容昇降装置3の前記試料容器取付台317には前記試料容器115がセットされる。
【0039】
更に収容昇降装置3の気化容器116の内部に形成される収容空間118は、前記遮蔽壁315により略真ん中の所定の位置で遮蔽され、前記常温ガス通過空間120と、前記加熱ガス通過空間119とが形成される。加熱ガス通過空間119は、高温の混合ガスにより高温状態にされ、試料容器115に入れられた土壌に含有される炭化水素化合物成分を気化させる。一方、遮蔽壁315により遮蔽された常温ガス通過空間120には、常温の混合ガスが通過される。つまり、気化容器116の内側(下部側)を高温の気化空間、外側(上部側)を常温の冷却空間の階層空間構造にすることで、高温状態の加熱ガス通過空間119の高温の熱は、遮蔽壁315及び常温ガス通過空間120により冷却され、気化容器116の外部に高温状態のまま伝わらないようになっている。これにより、測定者は高温の熱にさらされることなく安全に作業を行うことができる。
【0040】
次に、カプセル状の土壌試料容器の実施形態について図5で詳しく説明する。図5は測定土壌503をカプセル状の試料容器115に入れた状態を表わしている。カプセル状試料容器5は、測定する土壌503を入れる試料容器受115bと、前記試料容器115bに被せる形で蓋をする試料容器蓋115aから構成されている。
【0041】
更に、カプセル状試料容器5は、前記試料容器115に入れた前記土壌503へ前記収容空間118において前記インラインヒーター113で加熱された前記混合ガスを通過させ、且つ土壌503が前記試料容器115外部に流出しないように前記試料容器蓋115aと前記試料容器受115bには細目状のメッシュフィルタ501が取り付けられた構造を成している。
【0042】
次に、この装置2の使用方法(計測方法)について説明する。装置2の演算制御部15の所定の記憶装置(例えば、ROM)には、以下に説明する計測および操作に必要な各部の動作が予めプログラムとして内蔵されている。内蔵されたプログラムは測定者の操作部13からの操作命令を受けて実行される。また、内蔵されたプログラムは操作項目と測定中の状態や測定結果などを表示部14に表示する。これにより操作者はその表示される情報を見ることで適切な操作を適切なタイミングで行うことができ、短時間で高精度な計測を行うことができる。
【0043】
揮発性物質成分を含む土壌503をカプセル状の試料容器115の試料容器受115bに入れて、試料容器蓋115aを被せる。装置2の操作部13で収容昇降装置3を駆動させて図4で示すように試料容器115がセットできるように試料容器取付台317を収容空間118から筺体10の外部に出す。試料容器115をセットした後、図3で示すように再び操作部13で収容昇降装置3を駆動させて試料容器115を収容空間118の内部に収納する。尚、収容装置3ではモーター153やボールネジ309を使用して試料容器115を収容空間118から取り出す方法を開示しているが、手動でも他の駆動装置を使用しても構わない。
【0044】
図3で示すように試料容器115を収容空間118にセットし、装置2の操作部13で測定開始操作を行う。操作部13から演算制御部15に送られた命令により、演算制御部15は、予め記憶された制御プログラムに基づいて、以下の手順に従い装置2の制御動作を自動的に実行する。
【0045】
ポンプ105が駆動して筺体10に取り付けられた外気導入口101から常温の酸素と窒素の混合ガスが吸引され、エアーフィルター103で前記混合ガス中に含まれた塵や埃が取り除かれる。次に前記混合ガスは、ポンプ105に吸引された後に吐き出されて流量制御装置107に送入される。このとき、前記混合ガスは、流量制御部17からの信号により流量制御装置107で一定の流量に制御される。
【0046】
一定の流量に制御された前記混合ガスは、流路切替電磁弁109と逆流防止電磁弁141と強制排気電磁弁131で流路を制御されバイパス配管111からガス濃度計測配管167へと送入され、除湿部127で除湿された後にガス濃度検出部133へと送入される。このとき、前記混合ガスは流路を制御され空気配管155と強制排気配管165および燃焼ガス配管135には流れない。
【0047】
ガス濃度検出部133は、前記混合ガスの二酸化炭酸ガス濃度を計測する。計測された前記混合ガスの二酸化炭酸ガス濃度は前記混合ガスのバックグランド値として演算制御部15の所定の記憶領域に記憶される。
【0048】
前記バックグランド値として前記混合ガスの二酸化炭酸ガス濃度を計測している間に、気化・燃焼部1の触媒加温ヒーター157で触媒容器117に入れられた触媒158は加熱される。この時、演算制御部15は、触媒容器117の触媒温度を触媒効果に適した温度(例えば、摂氏250度〜300度)に制御するため触媒容器117に取り付けられた触媒温度計測センサ159により触媒容器117の温度を検出する。検出された触媒容器117の温度(温度信号)は温度計測部19で信号変換処理される。演算制御部15は、信号変換処理された温度信号に基づいて触媒加温ヒーター157を制御し、触媒容器117の温度を一定に制御する。
【0049】
前記触媒温度計測センサ159の温度が規定値に到達した後、前記ポンプ105から吐き出され一定の流量に制御された前記混合ガスは、前記流路切替電磁弁109で流路を制御されて前記バイパス配管111から空気配管155へ切り替わって送入される。この時前記混合ガスは前記バイパス配管111には流れない。送入された常温の前記混合ガスは、気化容器116に取り付けられた前記混合ガス入口2aからの遮蔽壁315で遮蔽された常温ガス通過空間120に送入され、さらに前記常温ガス通過空間120に接続された混合ガス配管2cを通過してヒーターが内蔵されたインラインヒーター113へと送入される。
【0050】
前記インラインヒーター113は前記混合ガスが前記空気配管155へ切り替わって送入されると同時に加熱を始め、常温の前記混合ガスは前記インラインヒーター113を通過するときに加熱される。加熱された前記混合ガスは加熱混合ガス配管2dを通過して前記遮蔽壁315で遮蔽された加熱ガス通過空間119へ送入される。この時のインラインヒーター113に内蔵されたヒーターの温度は含有された揮発性物質を気化させるために適した温度(例えば、摂氏250度〜300度)に制御される。具体的には、演算制御部15は、インラインヒーター温度計測センサ121で検出された温度信号を、さらに温度計測部19で信号変換処理した温度信号に基づいて、インラインヒーター113に内蔵されたヒーターの温度を所定の温度範囲内で一定に制御する。
【0051】
前記加熱ガス通過空間119送入された前記混合ガスは、試料容器取付台317にセットされた試料容器115に取り付けられたメッシュフィルタ501を通過して、前記試料容器115の中の土壌503を加熱する。そして土壌503に含有された揮発性物質が気化される。気化した揮発性物質は前記混合ガスと一緒に気化ガス配管2eを通過して前記触媒容器117の中の触媒158へと送入され触媒158で燃焼され、二酸化炭素ガスとなる。
【0052】
前記触媒158で燃焼されることで発生した二酸化炭素ガス(以下、燃焼ガスという)は、触媒容器117に取り付けられた燃焼ガス出口2bから燃焼ガス配管135を通過して冷却装置123に取り付けられた冷却部125で常温まで冷却されてから逆流防止電磁弁141と強制排気電磁弁131で流路を制御されガス濃度計測配管167へと送入され、除湿部127で除湿された後にガス濃度検出部133へと送入される。このとき、前記燃焼ガスは流路を制御されバイパス配管111と強制排気配管165には流れない。
【0053】
ガス濃度検出部133で計測された前記燃焼ガスの二酸化炭酸ガス濃度の計測値は計測開始時刻から終了時刻まで時系列に前記燃焼ガスの二酸化炭酸ガス濃度の値として演算制御部15に記憶される。計測は、装置2の操作部13で測定開始操作が行われ一定時間が経過した後に終了する。計測時間は任意に設定してもよいが、前記燃焼ガスの二酸化炭酸ガス濃度が、予め計測した前記混合ガスのバックグランド値として演算制御部15に記憶されている値と同等になった時点で計測を終了とすることもできる。これは、土壌503に含有された揮発性物質の気化が終了したと判断されるためである。
【0054】
土壌汚染物質の揮発性物質には、例えば石油系炭化水素を含有するものがある。例えば、石油系炭化水素が完全燃焼する場合には、前記演算制御部15にプログラムされた下記の反応式(1)を適用することで、前記演算制御部15は二酸化炭素の発生量により土壌中に含有されていた揮発性物質の含有量を算出して前記表示部14に測定結果を表示する。
【0055】
CmHn+(m+n/4)O→mCO+n/2HO・・・・(1)
【0056】
予め土壌に含有されている汚染物質成分が判明しているとき、例えば軽油等の場合は、m=1、n=1.8として測定者が前記操作部13から入力しておくと、前記演算制御部15は前記反応式(1)を使えば汚染物質の含有量をより正確に算出することできる。
【0057】
さらに、灯油、軽油、A重油、C重油等の炭化水素化合物類はそれぞれ気化する温度が異なるため、前記混合ガスの流量を一定に制御し燃焼したガスの濃度変化をガス濃度検出部133で時系列に計測する事で、前記演算制御部15は土壌中に含有されていた炭化水素化合物類の種別も土壌中揮発性物質濃度と同時に判定することが可能となり、その結果、測定者は測定後にmとnの正確な値を前記操作部13から入力すると前記演算制御部15は前記反応式(1)を使えば汚染物質の含有量をより正確に算出することできる。
【0058】
以上のようにして得られた測定データは、前記演算制御部15の所定の記憶領域(例えば、RAM)に保存することが可能である。さらに、その前記測定データは、前記演算制御部15から電子記憶媒体等に複写することも、前記演算制御部15に直接パーソナルコンピュータ等を接続して複写するもできる。
【0059】
前記演算制御部15は、内蔵されたプログラムに従い測定開始操作が行われ一定時間が経過したかあるいは土壌503に含有された揮発性物質の気化が終了したと判断したら測定を終了する。測定終了と同時に、前記演算制御部15は前記インラインヒーター113の加熱を停止する。加熱を停止された前記インラインヒーター113には常温状態の前記混合ガスが通過してインラインヒーター113に内蔵されたヒーターが急激に冷却される。さらに、インラインヒーター113を通過した前記混合ガスは、前記加熱ガス通過空間119と前記試料容器115と前記試料容器取付台317と連結棒313および遮蔽壁315も冷却される。このとき前記加熱ガス通過空間119に取り付けられた気化ガス温度計測センサ147と送入温度計測センサ108からの温度信号は温度計測部19で信号変換処理され演算制御部15により2つのセンサの温度が同等になれば、一定の流量に制御された前記混合ガスは、流路切替電磁弁109と逆流防止電磁弁141と強制排気電磁弁131で流路を制御され前記強制排気配管165を経由して前記筐体10に取り付けられた強制排気口139から前記混合ガスを排出する。このとき前記ガス濃度計測配管167および前記バイパ配管111に前記混合ガスは流れない。
【0060】
次に、別の土壌を計測する場合は、再び前記装置2の前記操作部13で前記収容昇降装置3を駆動させて図4で示すように前記試料容器115がセットできるように前記試料容器取付台317を前記収容空間118から前記筺体10の外部に出して、計測が終了した前記試料容器115を取り外し、次に計測する土壌503をカプセル状の前記試料容器115に入れて前記試料容器取付台317にセットした後、前回同様の操作を繰り返す。
【0061】
全ての計測が終了した場合、測定者は、再び前記装置2の前記操作部13で終了を入力する。終了命令を受けた前記演算制御部15は内蔵プログラムに従い以下の動作が自動的に実行される。まず前記演算制御部15は、前記インラインヒーター113と前記触媒加温ヒーター157の加熱を停止する。加熱を停止された前記インラインヒーター113には常温状態の前記混合ガスが通過してインラインヒーター113に内蔵されたヒーターが急激に冷却される。さらに、インラインヒーター113を通過した前記混合ガスにより、前記加熱ガス通過空間119と前記試料容器115と前記試料容器取付台317と連結棒313および遮蔽壁315も冷却される。さらに、前記混合ガスは触媒容器117と触媒158も冷却される。また、加熱を停止すると同時に、前記逆流防止電磁弁141と前記強制排気電磁弁131で流路を制御して前記強制排気配管165を経由して前記筐体10に取り付けられた強制排気口139から前記混合ガスを排出する。このとき前記ガス濃度計測配管167および前記バイパ配管111に前記混合ガスは流れない。
【0062】
次に、前記加熱ガス通過空間119に取り付けられた気化ガス温度計測センサ147と送入温度計測センサ108と燃焼ガス温度計測センサ161と触媒温度計測センサ159および冷却部ガス入口温度センサ129からの温度信号は温度計測部19で信号変換処理され演算制御部15によりこれら5つのセンサの温度が同等になれば、前記ポンプ105を停止させて前記表示部14に終了を表示させて測定者に知らせる。
【0063】
以上要するに、計測する土壌503を気化容器116(収容空間)にセットして、前記土壌にポンプ105(送入手段)により送入された酸素と窒素の混合ガスをインラインヒーター113(加熱手段)で急加熱して前記気化容器116(収容空間)に導入すると、土壌内に含有する揮発性物質が前記インラインヒーター113(加熱手段)により気化され、さらに気化した該ガスを触媒158(燃焼手段)で燃焼させた後、冷却装置123と冷却部125(冷却手段)で冷却して再び常温状態のガスにしてからガス濃度検出部133(ガス濃度計測手段)で該ガスの濃度を計測することで土壌中揮発性物質濃度を計測する事ができる。この手法によると計測時にのみ加熱・冷却をすればよいことになり電気炉を使用する必要がなく測定時の低エネルギー化が図れる。また、電気炉による計測では計測に必要な最適温度に到達するまで数時間程度を要するが、この手法では短時間(例えばひとつの試料を計測する時間は10分程度)で計測が可能となり、土壌汚染を調査したい現場で迅速に計測することが実現できる。
【0064】
前記土壌503は、前記試料容器115(カプセル状の容器)に収容して、該気化容器116(収容空間)に収容させることができる。これにより測定毎の試料交換が簡単に行なえる。
【0065】
前記試料容器115には細目状のメッシュフィルタ501が取り付けられており前記混合ガスが通過するときに前記土壌503の微細な粉塵が前記試料容器115の外部に流出することを防ぎ前記混合ガスが通過する該気化容器116(収容空間)や触媒158などを汚損することがなく、メンテナンス性の向上が図られ、短時間に数多くの試料を計測したい土壌汚染現場での利便性が向上できる。
【0066】
前記試料容器115(カプセル状の容器)を自動的に昇降させる収容昇降装置3(昇降手段)は、単に前記試料容器115(カプセル状の容器)を該気化容器116(収容空間)に収容させるだけでなく安全装置の役割も果たしている。例えば、前記土壌503に含有された揮発性物質を気化させるために、高温(例えば摂氏300度)の前記混合ガスを使用するが、収容昇降装置3により前記試料容器115(カプセル状の容器)は、該気化容器116(収容空間)に収容され、前記装置2の外部から直接触れることが出来なくなる。また、該気化容器116(収容空間)に取り付けられた気化ガス温度計測センサ147の温度が前記送入温度計測センサ108と同程度の温度であることを条件にして収容昇降装置3の上昇を可能にするプログラムを有しているので、測定者が高温状態の前記試料容器115(カプセル状の容器)に触れることを防ぎ測定者を熱傷から守ることができる。当然のことながら、前記装置2内にある他の温度センサの温度監視、上部位置センサ319と下部位置センサ321の信号や前記インラインヒーター113などの動作と複合的に条件設定をすることも可能である。
【0067】
収容昇降装置3(昇降手段)は、前記試料容器115(カプセル状の容器)を取り付ける前記スライドアーム151(アーム部)と、前記スライドアーム151(アーム部)を支持するアーム取付台311およびスライダー323(スライダ部)と、前記試料容器115(カプセル状の容器)をセットする試料容器取付台317および連結棒313と遮蔽壁315(保持部)はモーター153(駆動部)の駆動力に連動して動作して、前記試料容器115(カプセル状の容器)を該気化容器116(収容空間)から簡単に取り出すことが出来る。
【0068】
該気化容器116(収容空間)は、内壁で遮蔽された前記試料容器115(カプセル状の容器)を収容する加熱ガス通過空間119(カプセル収容空間)と、該気化容器116の熱を断熱する常温ガス通過空間120(断熱空間)の2つの空間を有しており、常温ガス通過空間120に常温状態の酸素と窒素の混合ガスを通過させ、加熱ガス通過空間119には該土壌503を収容させて前記インラインヒーター113(加熱手段)により加熱された前記混合ガスを通過させる。つまり、気化容器116の内側(下部側)を高温の気化空間、外側(上部側)を常温の冷却空間の階層空間構造にすることで、高温状態の加熱ガス通過空間119の高温の熱は、遮蔽壁315及び常温ガス通過空間120により冷却され、常温近辺まで冷却することができ、その結果、急加熱された前記混合ガスの熱を該気化容器116(収容空間)が露出する該装置2の外部面に伝えにくくすることが可能で、該気化容器116(収容空間)が該装置2の外部に露出する面を素手で触れても熱傷を負うことを防ぐことができ、測定作業者の安全が図られる。
【0069】
前記常温ガス通過空間120(断熱空間)は、前記インラインヒーター113(加熱手段)により、前記加熱ガス通過空間119の熱は、常温ガス通過空間120に伝わることになるが同時に、通過する前記混合ガスによりその熱は奪われることになる。つまり、常温ガス通過空間120に導入された常温状態の前記混合ガスは、常温ガス通過空間120を冷却する効果と同時に、いわゆる予熱効果を得ることが可能となり、測定時の低エネルギー化が図られる。
【0070】
上記のように本発明は、土壌に含まれる揮発性物質成分を気化させるために用いる酸素と窒素の混合ガスは、計測するときだけ急加熱することが可能で、電気炉のように加熱に必要な熱量を得る時間を要さず短時間で計測が可能となる。したがって、測定時の低エネルギー化が図られる。さらに、2つの空間に遮断された収容空間の一方の空間を通過した常温の前記混合ガスを急加熱して、土壌中を入れた他方の空間に導入することで、急加熱する他方の空間の熱を一方の空間で奪い装置外部に放出させない測定者の安全を確保できる。また、気化した揮発性物質成分を燃焼させたガスをガス濃度検出部で時系列的に計測することで、汚染濃度の検出と汚染物質成分の判別することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、土壌中に含有する揮発性物質濃度を測定する分野に幅広く利用することができる。特に土壌中の揮発性汚染物質の濃度計測の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 気化・燃焼部
2 土壌中揮発性物質抽出装置(装置)
2a 混合ガス入口
2b 燃焼ガス出口
2c 混合ガス配管
2d 加熱混合ガス配管
2e 気化ガス配管
3 収容昇降装置
5 カプセル状試料容器
10 筐体
11 遮熱壁
13 操作部
14 表示部
15 演算制御部
17 流量制御部
19 温度計測部
21 計測制御部
23 ロック制御部
101 外気導入口
103 エアーフィルター
105 ポンプ
107 流量制御装置
108 送入温度計測センサ
109 流路切替電磁弁
111 バイパス配管
113 インラインヒーター
115 試料容器
115a 試料容器蓋
115b 試料容器受
116 気化容器
117 触媒容器
118 収容空間
119 加熱ガス通過空間
120 常温ガス通過空間
121 インラインヒーター温度計測センサ
123 冷却装置
125 冷却部
127 除湿部
129 冷却部ガス入口温度センサ
131 強制排気電磁弁
133 ガス濃度検出部
135 燃焼ガス配管
137 排気口
139 強制排気口
141 逆流防止電磁弁
143 入出力信号線
145 試料投入室蓋
147 気化ガス温度計測センサ
149 触媒容器蓋
151 スライドアーム
153 モーター
155 空気配管
157 触媒加温ヒーター
158 触媒
159 触媒温度計測センサ
161 燃焼ガス温度計測センサ
163 冷却部ガス出口温度計測センサ
165 強制排気配管
167 ガス濃度計測配管
301 支柱
303 モータープーリー
305 ベルト
307 軸プーリー
309 ボールネジ
311 アーム取付台
313 連結棒
315 遮蔽壁
317 試料容器取付台
319 上部位置センサ
321 下部位置センサ
323 スライダー
325 スライドレール
501 メッシュフィルタ
503 土壌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測する土壌を収容する収容空間と、前記土壌に酸素と窒素の混合ガスを送入する送入手段と、前記混合ガスを加熱して前記収容空間に導入する加熱手段と、土壌内に含有する石油系炭化水素濃度が前記加熱手段により気化されたガスを触媒で燃焼させる燃焼手段と、該燃焼手段により燃焼したガスを再び常温状態のガスに冷却する冷却手段と、冷却された燃焼ガスの濃度を計測する燃焼ガス濃度計測手段と、土壌容器を自動的に前記収容空間に昇降させる昇降装置と、前記収容空間の温度制御と異常監視をする温度センサと、前記温度センサの情報により前記昇降装置の昇降を制御するロック制御装置を有することを特徴とする土壌中揮発性物質抽出装置。
【請求項2】
前記土壌は、カプセル状の容器に収容され、前記収容空間は前記カプセル状の容器を収容することを特徴とした請求項1に記載の土壌中揮発性物質抽出装置。
【請求項3】
前記カプセル状の容器は、入り口と出口を有して双方に金属のメッシュフィルタが取り付けられたことを特徴とした請求項2に記載の土壌中揮発性物質抽出装置。
【請求項4】
前記カプセル状の容器を自動的に昇降させる昇降手段を備えることを特徴とした請求項2または3に記載の土壌中揮発性物質抽出装置。
【請求項5】
前記昇降手段は、前記カプセル状の容器を取り付けるアーム部と、前記アーム部を支持するスライダー部と、前記カプセル状の容器の保持部と、前記昇降装置の駆動部を備えることを特徴とした請求項4に記載の土壌中揮発性物質抽出装置。
【請求項6】
前記収容空間は、前記カプセル状の容器を収容するカプセル収容空間と、該収容空間の熱を断熱する断熱空間を備えることを特徴とした請求項2〜5のいずれかに記載の土壌中揮発性物質抽出装置。
【請求項7】
前記断熱空間は、前記加熱手段により予熱される予熱手段を備えることを特徴とした請求項6に記載の土壌中揮発性物質抽出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−220985(P2011−220985A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99232(P2010−99232)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(394008846)大起理化工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】