説明

土壌分析システム

【課題】本発明においては、圃場等において土壌中のアンモニア態窒素含有量の測定結果より該アンモニア態窒素の残存日数(硝酸態窒素に変化する日数)を予測演算し、次期施肥計画を出力する土壌分析システムの提供が課題である。
【解決手段】土壌中のアンモニア態窒素濃度を測定する土壌分析システム1であって、該土壌分析システム1にはデータベース10と演算処理部(処理手段3)と入力手段2と表示手段4を有し、該データベース10には、単位面積あたりの窒素系肥料施肥量に対応した経時的アンモニア態窒素の減少度合い情報が蓄積され、アンモニア態窒素濃度の測定値と、窒素系肥料の施肥量と、施肥日時を元に、前記処理手段3によって、次回の窒素系肥料の施肥量と時期を演算処理して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場等において土壌中のアンモニア態窒素含有量の測定結果より該アンモニア態窒素の減少度合いを演算し、次期施肥計画を出力する土壌分析システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、農作物を栽培する圃場等においては成長を促進し、収穫量が増加するように施肥作業が行われている。すなわち、農作物の成長には窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の元素が必要であり、自然状態と異なって同じ土壌で繰り返し農作物を栽培する圃場等では該農作物の吸収により、これら元素が不足するため、補給する必要がある。
前記元素のうち窒素、リン、カリウムは肥料の三要素とも呼ばれ、農作物の成長を助長し、開花結実、または、根の発育等に関して特に重要なものであり、施肥作業により大量に農作物に与える傾向にある。
【0003】
ここで、図5に示すように、窒素は亜硝酸菌、硝酸菌等による微生物43の作用により、アンモニア態窒素44、亜硝酸態窒素45、硝酸態窒素46へと順次性状を変化させていく。つまり、与えられる肥料としては有機肥料41、無機肥料42があり、施肥すると有機肥料41はアンモニア態窒素44に、また、無機肥料42は硝酸態窒素46にそれぞれ土壌中のバクテリア(菌)により変化する。
アンモニア態窒素44は土壌中に吸収、保持され易い性状を持つが栄養分としての利用範囲は限定され、イネやブルーベリー等の一部を除いて一般の農作物には吸収されにくい。また、大量の摂取はアンモニアガスの発生や悪臭を放つため、環境汚染に繋がる。
一方、硝酸態窒素46は土壌に吸収、保持されにくく、地下水や河川等により流亡しやすいが、多くの農作物に吸収され栄養源として利用される。しかし、前記アンモニア態窒素44と同じく、河川等による大量の流亡は硝酸汚染を招くため、適確な施肥量の管理が必要となる。
【0004】
このように、窒素は土壌中でバクテリアにより性状を変化させ、有毒なアンモニアガスを発生させたり、自身を有害物質に変化させたりするため、施肥量の管理が必要となる。この施肥量の管理において、最適な施肥計画の情報を提供するシステムとして「特許文献1」が公知となっている。
【特許文献1】特開2003−307515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記「特許文献1」によれば、土壌中のアンモニア態窒素や硝酸態窒素における濃度を測定し、該測定結果をもとに土壌中の窒素濃度分布を演算し、該窒素濃度分布の積分による計算結果から土壌中の窒素量を求め、該窒素量の目標値に対する過不足量を表示するため、前記システムの利用者は測定対象とする土壌の状態を定量的に把握することができ、能率的な施肥計画を実施することができる。
しかし、前記システムでは現状の土壌の状態を把握することは可能であっても、将来における土壌の状態を予測するまでには及ばない。
そこで、本発明においては、圃場等において土壌中のアンモニア態窒素含有量の測定結果より該アンモニア態窒素の残存日数(硝酸態窒素に変化する日数)を予測演算し、次期施肥計画を出力する土壌分析システムの提供が課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、土壌中のアンモニア態窒素濃度を測定する土壌分析システムであって、該土壌分析システムにはデータベースと演算処理部と入力手段と表示手段を有し、該データベースには、単位面積あたりの窒素系肥料施肥量に対応した経時的アンモニア態窒素の減少度合い情報が蓄積され、アンモニア態窒素濃度の測定値と、窒素系肥料の施肥量と、施肥日時を元に、前記演算処理部によって、次回の窒素系肥料の施肥量と時期を演算処理して出力するものである。
【0008】
請求項2においては、前記データベースに記憶する経時的アンモニア態窒素の減少度合い情報は、土質または圃場毎に作成するものである。
【0009】
請求項3においては、前記アンモニア態窒素濃度の測定は圃場毎に複数箇所測定するものである。
【0010】
請求項4においては、前記アンモニア態窒素濃度の測定値の最大値と最小値、または平均値をデータベースに蓄積するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
すなわち、単位面積あたりの窒素系肥料施肥量における、アンモニア態窒素の時間経過による減少度合い情報を予めデーターベースに蓄積した本土壌分析システムを用いることで、測定対象とする土壌中のアンモニア態窒素濃度の測定値、および、窒素系肥料の施肥量と、施肥日時に関する情報さえ入力すれば、これら情報を元にして、前記減少度合い情報を利用して、短時間で次回の窒素系肥料の施肥量と時期とを演算処理して出力することができるため、本システムの利用者は単にアンモニア態窒素濃度を測定し、前回の施肥量と施肥日時に関する情報を用いるだけで、効果的、かつ、無駄のない次期施肥計画を容易に企てることができる。
【0013】
また、アンモニア態窒素の減少度合い情報は、土質または圃場毎に作成するので、硬度や粘性等が異なる土質や日照や水はけ等が異なる圃場等であっても、正確にアンモニア態窒素の減少度合い情報が得られ、正確な施肥が可能となり、無駄に施肥したり肥料流亡を防ぐことができる。
【0014】
さらに、複数箇所測定するので、偏りをなくし平均的なンモニア態窒素濃度を測定できるうえ、アンモニア態窒素濃度の測定値の最大値と最小値、または平均値をデータベースに蓄積するので、大きくズレた数値が検出されても、誤差範囲か異常な値かどうかが判断でき、正確なデータを蓄積できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る土壌分析システムの構成を示したブロック図である。
図2は同じく採取した土壌の成分分析結果の入力から処方箋の発行までの一連の流れを示すフローチャートである。
図3は同じく初期情報(データ)の入力から処方箋の発行までの一連の流れを示すフローチャートである。
図4はアンモニア態窒素の減少度合いを示すグラフである。
図5は本発明の一実施例に係る土壌分析システムの出力画面を示す参考図である。
図6は一般的なアンモニア態窒素から硝酸態窒素への変換形態を示す状態図である。
【0016】
[土壌分析システム1の構成]
まず、本発明の一実施例に係る土壌分析システム1の構成について、図1を用いて説明をする。
【0017】
土壌分析システム1は該システムに各種情報を入力する入力手段2と、入力された情報を演算処理する処理手段3と、該処理手段3によって演算処理された結果を外部に出力表示する表示手段4と、により構成される。
ここで前記情報には測定対象とする土壌の圃場名称や、該圃場中の測定個所、あるいは、過去に施肥された肥料の名称・成分や、理想とする土壌中の各成分に関する基準範囲等からなる施肥・圃場情報6と、土壌分析装置22により測定されたアンモニア態窒素の土中含有量の測定結果7と、同じく、土壌分析装置22により測定されたP・K・Ca・Mg等の各種成分の土中含有量の測定結果13等を含むものである。
【0018】
入力手段2はキーボード20やバーコードリーダー21等があり、前記情報を処理手段3に入力するものである。そして、前記土壌分析装置22を処理手段3に接続することにより、測定結果を直接、該処理手段3に入力することができる。つまり、土壌中の成分分析を土壌分析装置22によって実行することで、アンモニア態窒素の土中含有量7、および、P・K・Ca・Mg等の土中含有量13を測定し、その測定値を直接処理手段3へ送信するのである。
【0019】
処理手段3はRAMやROM等の記憶部8と演算処理装置(CPU)9等により構成される。演算処理装置9の命令により前記入力手段2からの情報は一時的に該記憶部8に保存され、データベース10の必要なデータを読み出して演算処理が実行され、アンモニア態窒素や硝酸態窒素の残存日数が演算結果として出力されデータベース10に蓄積(記憶)される。
【0020】
データベース10はハードディスクやコンパクトディスク等の記憶媒体から構成されており、データベース10の既存データには、土質または土性毎の、または、圃場毎の単位面積あたりの経過日数ごとに測定した土壌中のアンモニア態窒素濃度が蓄積されており、後述の『アンモニア態窒素の減少度合い情報』として蓄積される。
【0021】
表示手段4はモニター11やプリンター12等により構成されており、前記演算処理装置9により出力された演算結果を外部に可視可能としている。ここで、表示手段4により表示される内容は、後述のとおり、測定対象とする土壌の『アンモニア態窒素の残存日数』だけでなく、現状における土壌の成分分析や、予め設定した基準範囲内に土壌の各成分が収まるための次期肥料施肥計画等が表示される。
【0022】
ここで、測定対象は畑や田の土壌であり、土性や土質毎に測定しておくことが好ましい。そして、圃場毎に名称を付して測定される。測定方法は、複数の個所から採取し、例えば圃場の周囲の複数箇所と中央部の複数箇所で測定する。この測定箇所は多いほどよく、異なる日時で測定する場合は、その測定位置は同じ位置で測定する。これら試料の土壌分析装置22による測定値は、最大値と最小値、あるいは、平均値がデータベース10に記憶される。
【0023】
すなわち、前記データベース10に入力する土壌中のアンモニア態窒素濃度の測定値は、測定対象とする一つの圃場に対して、複数入力することとし、該複数の測定値のうち、最大値と最小値または平均値から単位面積あたりの窒素系肥料の施肥量に対応した経時的アンモニア態窒素の減少度合い情報としてデータベース化される。こうして、土壌の測定個所における、測定結果のムラを極力抑えることができ、以後、同じ土壌の土質を分析しても、確実に変化の割合を把握することができる。
【0024】
[土壌分析システム1による情報処理の流れ]
次に、土壌分析システム1の処理の流れについて、図2、および、図3を用いて説明をする。
まず、図2において、土壌を採取し(ステップS11)、測定を行い(ステップS12、S21)、アンモニア態窒素の土中含有量の測定結果7(以下、アンモニア態窒素測定含有量7と示す。)や、同じくP・K・Ca・Mg(必須元素)等の各種成分の土中含有量の測定結果13(以下、各種成分測定含有量13と示す。)等をデータベース10に蓄積する(ステップS13、S22)。
そして同時に、各種成分測定含有量13は基準値と比較し、不足していることや十分足りているなどの判定結果とともに(ステップS23)、測定値を表示手段に表示する(ステップS15)。アンモニア態窒素測定含有量7は、測定したアンモニア態窒素測定含有量7がデータベース10に蓄積されている『アンモニア態窒素の減少度合い情報』からどのくらいの日時で硝酸態窒素に変化するかが演算される(ステップS14)。この演算結果が予測値として表示手段4に表示される。なお、『アンモニア態窒素の減少度合い情報』は後述する。
【0025】
他方、図3において、その圃場の名称(割り当てた番号や記号等を含む)と、不足した場合に施肥する窒素系肥料の種類等を入力手段2により入力する(ステップS01)。なお、過去に施肥した窒素系肥料の種類や施肥量等が入力されていない場合にはこのときに入力する(ステップS02、S03)。この場合、肥料の種類と施肥量から現在のアンモニア態窒素量の予測値が演算され(ステップS04)、前記測定値と比較し(ステップS05)、両者の値が大きく異なっている場合には、データベース10におけるデータを現在の計測値に書き換えられて、減少予想傾度合いも書き換えられる(ステップS07)。
【0026】
そして、前記測定した測定値と、基準値を比較演算して、不足する場合には、追加する施肥量と施肥日時を演算して(ステップS06)、表示手段4に表示する(ステップS15)。つまり、測定したアンモニア態窒素量を『アンモニア態窒素の減少度合い情報』から演算し、硝酸態窒素に変換される日時を演算し、その日時が短い場合には不足する日時分の単位面積あたりの肥料の量を算出し、更に、その圃場の面積に応じて必要な肥料の量を演算してこれらを表示手段4に表示させる。
【0027】
このようにして得られた、土壌中に含有するP・K・Ca・Mg等の各種成分における欠乏、あるいは、余剰する成分種とその量に関する情報や、アンモニア態窒素の消滅日数に関する情報は、前記施肥・圃場情報6とあわせてモニター11等により出力表示され、プリンター12等により処方箋として発行される(ステップS16)。
【0028】
また、栽培する作物の種類により窒素やその他の養分の吸収量が異なることも知られている。そこで更に、栽培する作物の種類と播種または移植する日時を入力することで、効率的な施肥を行うことも可能である。すなわち、作物毎の必要窒素量と、作付けする圃場毎に耕耘時期から収穫する時期までの『アンモニア態窒素の減少度合い情報』をデータベース10に蓄積しておく。そして、耕耘前にアンモニア態窒素量を測定し、耕耘時期に必要なアンモニア態窒素量を『アンモニア態窒素の減少度合い情報』から演算し、この必要なアンモニア態窒素量と測定値を比較して、この測定窒素量が必要窒素量よりも少ない場合には、追加施肥するための施肥量を演算する。この追加施肥量を表示手段4に表示することで、耕耘と同時に施肥、または耕耘前に施肥することができ、過剰施肥を防止し、作物に対応して適正な量の窒素が得られて良好な作物を収穫することが可能となる。
【0029】
[アンモニア態窒素の残存日数の演算方法]
次に、土壌分析システム1における、アンモニア態窒素の残存日数の演算方法について、図4を用いて説明をする。
データベース10には予め温度や天気等の気象情報や施肥量や肥料(有機肥料、無機肥料を含む)の種類とともに土質及び圃場毎にアンモニア態窒素の土壌中の含有量に関する測定データを蓄積しおく。該測定データを基にして既存の『アンモニア態窒素の減少度合い情報』が作成され、その後の『アンモニア態窒素の残存日数』の算出に利用される。
【0030】
前記測定データは各圃場ごとの施肥量別における施肥日からの経過日数ごとに採取し蓄積されており、たとえば、図4に示すように、ある圃場において、硫安を70Kg/10a施肥した場合の経過日数ごとの測定値と、硫安を48Kg/10a施肥した場合の経過日数ごとの測定値と、がデータベース10に蓄積されている。
【0031】
蓄積された個々の測定データは施肥量ごとにプロットされ、直線(あるいは曲線)のグラフ化を実行することにより『アンモニア態窒素の減少度合い情報』が作成され、該グラフ化された情報形式によりデータベース10に蓄積される。すなわち、前記『アンモニア態窒素の減少度合い情報』とは、土壌中のアンモニア態窒素の減少度合いを示したグラフを意味する。
なお、図4においては前記『アンモニア態窒素の減少度合い情報』として、説明の都合上、近似的に直線により示しているが、これに限られるものではなく、前記測定データの個数を増やして二次曲線、あるいは、三次曲線等によって表すことで、さらに精度を向上させることができることは言うまでもない。
【0032】
ここで測定対象として、初期情報5により硫安60Kg/10aの情報が入力されると、データベース10に蓄積される情報の中から該硫安60Kg/10aの上下値に最も近い硫安70Kg/10aと、硫安48Kg/10aとの『アンモニア態窒素の減少度合い情報』が選択され、これら減少度合い情報をもとにして硫安60Kg/10aに関する『アンモニア態窒素の減少度合い情報(以下新減少度合い情報と示す。)』が予測算出されることになる。
【0033】
ここで、上述のステップS12により入力される情報、つまり、測定対象とする土壌のアンモニア態窒素測定含有量7が得られると図4のグラフより、消滅して硝酸態窒素となる日数から測定したアンモニア態窒素測定含有量7に相当する日数を減ずることにより『アンモニア態窒素の残存日数』が算出される。
【0034】
すなわち、図4において、土壌のアンモニア態窒素測定含有量7がBmg/100gである場合、新減少度合い情報では施肥後30日に該当し、かつ、アンモニア態窒素量が消滅するまでの日数は75日であることから、測定対象とする土壌の現状における『アンモニア態窒素の残存日数』は40日と算出される。
【0035】
このようなことから、土壌中のアンモニア態窒素濃度を測定する土壌分析システム1であって、該土壌分析システム1にはデータベース10と演算処理部(処理手段3)と入力手段2と表示手段4を有し、該データベース10には、単位面積あたりの窒素系肥料施肥量に対応した経時的アンモニア態窒素の減少度合い情報が蓄積され、アンモニア態窒素濃度の測定値と、窒素系肥料の施肥量と、施肥日時を元に、前記処理手段3によって、次回の窒素系肥料の施肥量と時期を演算処理して出力することで、本土壌分析システム1の利用者は現状の土壌に関する土質を適確に把握することができ、効果的、かつ、経済的な肥料の施肥作業を行うことができる。
【0036】
なお、上述のとおり、新たにデータベース10に入力されるアンモニア態窒素測定含有量7は全て該データベース10に蓄積されており、前記データベース10に記憶する経時的アンモニア態窒素の減少度合い情報は、土質または圃場毎に作成することで、常にデータベース10内における情報内容は補充されている。
【0037】
[出力画面30]
次に、土壌分析システム1の出力画面30について、図5を用いて説明をする。
出力画面30は例えば、土壌の診断結果を円グラフによって示すレーダーチャート31と、該診断結果を数値的に表で示す診断表32と、土壌中の各成分の含有量を示す成分分析表33と、初期情報5として入力された圃場名や肥料種等を表示するサンプル表34と前記診断結果に基付いて現状の土壌について見られる所見35と、今後の肥料の施肥に関する次期施肥計画36等により構成されている。これらは一度に表示することも可能であるが、一つずつ、または複数ずつ組み合わせて表示することも可能である。
【0038】
レーダーチャート31は土壌分析装置22によって分析された、土壌中の硝酸態窒素や石灰や苦土(Mg)等に関する含有量、および、現状の土壌のPH値等を円グラフによって表示したものであり、これにより、本土壌分析システム1の利用者は一目で現状の土壌の状態を把握することができる。
ここで、各測定項目に関しては、予め理想とする基準範囲が定められており、該基準範囲をグラフ上に「網掛け」によって示すことで、現状の土壌の良・否が瞬時に把握可能としており、また、表示設定を選択することで、前回の土壌の分析結果も合わせて表示可能であるため、土壌状態の変化が容易に把握できる。
【0039】
診断表32は前記レーダーチャート31によって示された各項目に関する測定結果を数値で表示した表であり、土壌状態の良・否を定量的に判断することができ、より詳細な土壌状態を把握することが可能である。また、前記診断表32においては上述した『アンモニア態窒素の残存日数』を合わせて表示することで、土壌状態との関係もについても一目瞭然としている。
【0040】
成分分析表33は土壌分析装置22によって分析された、土壌中の各成分の含有量を棒グラフによって表示したものであり、これにより、本土壌分析システム1の利用者は一目で現状の土質を把握することができる。
ここで、各成分に関しては、予め理想とする基準範囲が定められており、該基準範囲をグラフ上に「網掛け」によって示すことで、現状の土壌の土質が理想とする土質に対して、どのような傾向にあるかが瞬時に把握可能としている。
【0041】
サンプル表34には、初期情報5として入力される施肥・圃場情報6の内容が表示され、本土壌分析システム1の利用者は測定対象とする土壌を容易に特定することができる。
【0042】
所見35には前記診断表32や成分分析表33等に示される結果を基に、現在の土壌の状態や、理想とする土壌の土質に近づけるべき対処法等が詳細に示される。これによって、本土壌分析システム1の利用者は後述の次期施肥計画36の内容と合わせて、今後の適切な肥料の施肥を行うことができる。
【0043】
次期施肥計画36には、前記診断表32等に示される結果を基にして、現状の土壌の土質を理想的なもの、すなわち、各診断項目に関する測定結果が基準範囲に収まるための施肥計画が詳細に示される。
すなわち、肥料の種類と、施肥量と、次回の施肥日に関する情報が実際に示され、本土壌分析システム1の利用者は、この情報に沿って施肥作業を行うことで、容易に土壌の土質を理想的なものに改善することができる。
【0044】
このような構成からなる出力画面30を、プリンター12等を介して処方箋として紙媒体として出力することで、本土壌分析システム1の利用者は容易に圃場等の土壌の土質に関する品質改善を行うことができる。
【0045】
すなわち、前記利用者は前記診断表32や所見35等に示される内容を、圃場等に直接持ち歩くことが可能となり、現地における施肥作業を前記処方箋の内容を確認しながら適確に行うことができ、また、管理番号等を付してファイル等にて保管することにより、誰もが容易に本土壌分析システム1における診断内容を確認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例に係る土壌分析システムの構成を示したブロック図。
【図2】同じく採取した土壌の成分分析結果の入力から処方箋の発行までの一連の流れを示すフローチャート。
【図3】同じく初期情報(データ)の入力から処方箋の発行までの一連の流れを示すフローチャート。
【図4】アンモニア態窒素の減少度合いを示すグラフ。
【図5】本発明の一実施例に係る土壌分析システムの出力画面を示す参考図。
【図6】一般的なアンモニア態窒素から硝酸態窒素への変換形態を示す状態図。
【符号の説明】
【0047】
1 土壌分析システム
2 入力手段
3 処理手段
4 表示手段
5 初期情報
6 施肥・圃場情報
7 アンモニア態窒素測定含有量
8 記憶部
9 演算処理装置
10 データベース
11 モニター
12 プリンター
13 各主成分測定含有量
20 キーボード
21 バーコードリーダー
22 土壌分析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌中のアンモニア態窒素濃度を測定する土壌分析システムであって、該土壌分析システムにはデータベースと演算処理部と入力手段と表示手段を有し、該データベースには、単位面積あたりの窒素系肥料施肥量に対応した経時的アンモニア態窒素の減少度合い情報が蓄積され、アンモニア態窒素濃度の測定値と、窒素系肥料の施肥量と、施肥日時を元に、前記演算処理部によって、次回の窒素系肥料の施肥量と時期を演算処理して出力することを特徴とする、土壌分析システム。
【請求項2】
前記データベースに記憶する経時的アンモニア態窒素の減少度合い情報は、土質または圃場毎に作成することを特徴とする、請求項1に記載の土壌分析システム。
【請求項3】
前記アンモニア態窒素濃度の測定は圃場毎に複数箇所測定することを特徴とする、請求項1に記載の土壌分析システム。
【請求項4】
前記アンモニア態窒素濃度の測定値の最大値と最小値、または平均値をデータベースに蓄積することを特徴とする、請求項3記載の土壌分析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−197017(P2008−197017A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34059(P2007−34059)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】