説明

土壌切り出し装置及び土壌移植工法

【課題】大規模で比較的深い根の植物を含む土壌の移植を容易に行うことができ、しかも、その植物を含む土壌の生態系や自然環境等の保全を図りながら移植することができる技術を提供すること。
【解決手段】植物等を含む土壌の移植に用いる土壌切り出し装置であって、上面及び下面が開放されて四角筒状に形成された切り出し枠2と、その切り出し枠2の下面開放部22に添ってスライド可能に配置される根切り部材3とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を含む移植対象土壌の生態系や自然環境等の保全を図りながら移植する技術として好適な土壌切り出し装置及びそれを用いた土壌移植工法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な植物の移植は、多くの場合、株単位で行われている。その際、スコップ等を使用し、根等を痛めないように慎重に行うため、人力による移植となることが多い。また、植物が群生しているような場合でも、手作業が可能な範囲で小分けした上で、人力による移植作業を実施することが多い。
【0003】
特許文献1には、表土の自然環境及び生態系を破壊しないように表土層を移植地に移転させる、表土移植工法及び表土移植具並びに表土剥ぎ取り機構の技術が開示されている。この技術では、底面を開放可能な表土移植具を用い、その表土移植具を表土層に沿って横方向に差し込んで表土層を剥ぎ取り、剥ぎ取った表土層を載せたままで表土移植具を移植地まで運搬した後、表土移植具の底面を開放して表土移植具を上方へ持ち上げることにより表土層を移植するものである。
【特許文献1】特開2003−314065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1に記載の技術は、表土層のように比較的薄い表面土壌の移植方法であり、例えば深さ50cm以上にも及ぶ厚さの土壌移植には適用することができない。即ち、特許文献1の表土移植具は、平面矩形の底板の3辺に沿って側板があり、残りの1辺が開放された形状であり、表土層に沿って横方向にスライドさせることで表土層を剥ぎ取る方法しか採用することができない。そのため、従来から、大規模(広範囲)で比較的深い根の群生植物を含む土壌の移植実績はほどんどなく、その移植手法についても確立されていない現状にある。
【0005】
よって、本発明の課題は、大規模で比較的深い根の植物を含む土壌の移植を容易に行うことができ、しかも、その植物を含む土壌の生態系や自然環境等の保全を図りながら移植することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明では以下の手段を採用した。
本発明は、植物等を含む土壌の移植に用いる土壌切り出し装置であって、上面及び下面が開放されて四角筒状に形成された切り出し枠と、その切り出し枠の下面開放部に添ってスライド可能に配置される根切り部材とを備える構成とした。
【0007】
本発明によれば、切り出し枠は上面及び下面が開放された四角筒状に形成されているので、例えば下面開放部を下にして、移植対象の土壌内に深く押し込むことができる。押し込む操作自体は例えばバックホー等の建設機械を用いて容易に行うことができるため、必要に応じて深く押し込むことも可能になる。押し込んだ切り出し枠内には植物等を含む土壌が充満される。従って、押し込んだ切り出し枠の下面開放部に沿ってスライド可能な根切り部材をスライドさせることで、切り出し枠直下の土壌を根切りすることができる。
【0008】
根切り後に切り出し枠と根切り部材を同時に持ち上げることにより、比較的深い根の植物を含む土壌を容易に切り出すことができる。その際、土壌は切り出し枠内に収まる分だ
け平面四角形状に区画して切り出すことができる。これにより、生息している植物の根を傷めることなく、かつ、周辺の土壌を極力傷めることなく採取することができる。土壌を切り出した後はこの切り出し枠と根切り部材をセットにして土壌の搬送及び移植作業にそのまま利用することができる。
【0009】
本発明において、前記切り出し枠の上下の開放部間の高さ寸法は、移植対象土壌の深さ寸法よりも大きいことが望ましい。このように構成すれば、切り出し枠の下端開放部が移植対象土壌の直下に至るまで、その切り出し枠を上からの加圧により押し込むことができる。
【0010】
本発明においては、前記切り出し枠に前記根切り部材を装着するための装着手段を更に備えていることが望ましい。このように構成した場合、切り出し枠と根切り部材をセットで持ち上げたり移動させたりすることができ、その分、作業性を良くすることができる。なお、この装着手段は、根切り部材又は切り出し枠の何れか一方又は両方に設けることもできる。
【0011】
本発明においては、前記切り出し枠又は根切り部材の少なくとも一方に、釣索を連結する連結部が設けられていることが望ましい。このように構成すれば、切り出し枠と根切り部材をセットで吊り上げる作業を容易にすることができる。この連結部としては、作業性の点から、釣索自体を通す孔の他、釣索先端のフックの掛止め、あるいはシャックルによる連結等の方法を利用できる孔を備えたものが望ましい。
【0012】
本発明において、前記根切り部材は、前記切り出し枠の下面開放部を開閉可能な底板と、その底板に設けられ、前記切り出し枠の下面開放部に添って底板をスライド可能に案内するガイド部と、前記底板に設けられ、底板のスライド位置を規制する規制部とを備えていることが望ましい。ガイド部の存在によって根切り部材自体のスライド方向を規制し、規制部によって根切り部材自体のスライド量(スライド位置)を規制することができるからである。
【0013】
本発明において、前記底板は平面矩形であって、前記ガイド部は前記底板の相対する位置に設けられた一対の側板により形成され、それら一対の側板は前記切り出し枠の高さとほぼ等しく形成され、その一対の側板に前記釣索を連結する連結部が設けられている構成とすることもできる。このように構成した場合、根切り部材を釣索によって持ち上げるだけで、切り出し枠も同時に持ち上げることができる。また、根切り部材の一対の側板は高く形成されているので、一対の側板の上端に釣索の連結部を設けることで、連結部の位置が土壌内に埋没しない位置とすることができる。
【0014】
一方、本発明は、上記の土壌切り出し装置を用いて植物等を含む土壌を移植する方法であって、前記切り出し枠をその下面開放部を下にして、移植対象土壌内に押し込む第1工程と、移植対象土壌内に押し込んだ切り出し枠の下端よりも下の位置に前記根切り部材を配置し、前記切り出し枠の下面開放部に添ってスライドさせることで移植対象土壌を根切りする第2工程と、移植対象土壌を前記切り出し枠及び根切り部材と共に持ち上げてブロック状に切り出す第3工程と、切り出した土壌を切り出し枠及び根切り部材と共に運搬手段に積み込んで土壌移植先に移送する第4工程と、土壌移植先において、運搬手段上の切り出し土壌を前記切り出し枠及び根切り部材と共に持ち上げて土壌移植先の地盤上に設置する第5工程と、地盤上に設置された切り出し枠から前記根切り部材を引き出した後、前記切り出し枠を持ち上げる第6工程と、を行うことを特徴としている。
【0015】
その際、前記第1工程から第6工程のうちの少なくとも前記切り出し枠を土壌内に押し込む第1工程及び根切り部材をスライドさせて移植対象土壌を根切りする第2工程におい
てはバックホー等の建設機械を利用して行うことが望ましい。
【0016】
この土壌移植工法では、切り出し枠を土壌内に上から押し込み、根切り部材によって切り出し枠の下端の土壌を根切りする方法を採用しているので、生息している植物の根を傷めないように、かつ、周辺の土壌を極力傷めることなく採取することができる。また、この切り出し枠と根切り部材をセットで使用するので、採取、運搬及び移植作業時に土壌ブロックを崩したり、緩めるたりすることのないように作業を進めることができる。また、対象土壌の含水量の低下がないよう、作業効率が高く、速やかに移植作業を完了することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の土壌移植方法によれば、大規模で比較的深い根の植物を含む土壌の移植を容易に行うことができ、しかも、その植物を含む土壌の生態系や自然環境等の保全を図りながら移植することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施例について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の土壌移植工法を実施する際に利用する土壌切り出し装置の例を示す斜視図である。図2〜図5はその切り出し装置を用いた土壌移植工法例を示す工程図である。
【0019】
(実施例1)
<移植対象土壌>
発電所の建設に伴い、敷地内の一部を改変する計画としている。改変範囲は希少な動植物の生息・生育地となっている湿原が分布しており、改変に伴い、生息・生育地が消失することにより、周辺への影響を与える懸念がある。このことから、環境保全措置のひとつとして、群生している貴重植物を含む土壌を改変しない範囲に、面積600平方メートル、深さ50cm以上にも及ぶ大規模な移植をすることとした。なお、対象土壌は泥炭と呼ばれている動植物の枯死体が腐食することなく堆積したものである。また、移植にあたっては、以下の条件を満足させることにより、貴重植物の生育に影響を与えないようにする必要がある。
【0020】
1.生息している植物の根を傷めないように採取できること。
2.周辺の土壌を極力傷めることなく採取可能であること。
3.採取、運搬及び移植作業時に土壌ブロックを崩したり、緩めるたりすることのないように作業可能であること。
4.対象土壌の含水量の低下がないよう、作業効率が高く、速やかに移植作業が完了すること。
【0021】
<装置の構成>
上記の点に配慮して、この実施例では、図1(a)、(b)に示す土壌切り出し装置を採用した。まず、この土壌切り出し装置について説明する。
【0022】
この土壌切り出し装置1は、植物等を含む土壌の移植に用いるものであって、上面及び下面が開放されて四角筒状に形成された切り出し枠2と、その切り出し枠2の下面開放部に添ってスライド可能に配置される根切り部材3とを備えている。切り出し枠2及び根切り部材3は、共に鉄板等の金属板からなり、植物等を含む土壌の切り出し及び根切りに耐え得る強度及び切れ味を有する厚さに形成されている。
【0023】
切り出し枠2の上下の開放部21、22間の高さ寸法hは、移植対象土壌の深さ寸法よ
りも大きく設定されている。これは、切り出し枠2の下端開放部22が移植対象土壌の直下に至るまで、その切り出し枠2を上からの加圧により押し込むことができるようにするためである。切り出し枠2の高さ寸法hとしては、移植対象土壌の深さに応じて適宜に調整されるが、移植対象土壌の深さが50cm程度の場合、55cm程度に設定される。切り出し枠2の平面の大きさは作業性に配慮して一辺が60cm程度の正方形に形成されている。
【0024】
切り出し枠2の上縁には、釣索(図4,5参照)Tの連結部23が設けられている。連結部23は、吊り上げ時において切り出し枠2を水平状態に保持できるように複数(図では4個)設けられている。
【0025】
根切り部材3は、切り出し枠2の下面開放部を開閉可能な底板31と、その底板31に設けられ、切り出し枠2の下面開放部22に添って底板31をスライド可能に案内するガイド部32,32と、底板31に設けられ、底板31のスライド位置を規制する規制部33とを備えている。底板31は、切り出し枠2よりも大き目の矩形に形成されていて、その相対する2辺に添って設けられた高さの低い一対の側板により前記ガイド部32、32が構成されている。そして、他の相対する2辺のうちの1辺に添って設けられた高さの低い側板により前記規制部33が構成されている。
【0026】
根切り部材3には、切り出し枠2にその根切り部材3を装着するための装着手段5が設けられている。この装着手段5としては、種々の形態が考えられるが、ここでは、ガイド部32、32から立ち上がった帯板状の一対の掛止めプレート51、51と、掛止めプレート51、51の上部どうしを連結する第1連結材52と、一端を規制部33に、他端を切り出し枠2の上縁に掛止めする第2連結材53とにより構成されている。
【0027】
一対の掛止めプレート51、51の下端部はそれぞれ対応するガイド部32の外面側に溶接により固定されている。上端部は互いに向き合う方向にほぼ直角に折り曲げられ、切り出し枠2の上縁に引っ掛けるための掛止め部51a、51aとして形成されている。この掛止め部51a、51aの部分には、それぞれ貫通孔51b、51bが設けられている。第1連結材52は鉄筋等の金属棒の両端をほぼ直角に曲げてフック片52a、52aを形成したもので、双方のフック片52a、52aを貫通孔51b、51bにそれぞれ挿入することで、掛止めプレート51、51どうしをワンタッチで連結可能に構成している。
【0028】
第2連結材53も鉄筋等の金属棒の両端をほぼ直角に曲げてフック片53a、53bを形成したものであるが、下端側のフック片53aと上端側のフック片53bの向きが互いに異なっている。下端側のフック片53aは、規制部33に設けられた差し込み孔34に差し込み可能なように規制部33の長さ方向に向いている。上端側のフック片53bは切り出し枠2の上縁に掛止めできるように、下端側のフック片53aと直交する方向に向いている。
【0029】
<土壌移植工法>
次に、上記の土壌移植装置1を用いた土壌移植工法について、図2〜図5を参照して説明する。
まず、図2に示すように、切り出し枠2をその下面開放部を下にして移植対象土壌10の上に設置したのち、その切り出し枠2を移植対象土壌10内に押し込む(第1工程)。切り出し枠2を移植対象土壌10の上に設置する作業については、これを手作業で行ってもよいし、例えば図示のようにクレーン装置付きバックホーBHを用いて行っても良い。
【0030】
切り出し枠2を移植対象土壌10内に押し込む作業は図示のようにバックホーBHを利用して行うことが望ましい。例えばバックホーBHのバケット11の頭部を利用し、切り
出し枠2の上端を下方へ押し付ける作業によって行うことができる。図2において、12はバックホーBHの足場鉄板を示している。移植対象土壌が泥炭と呼ばれている動植物の枯死体が腐食することなく堆積した土壌である場合、バックホーBHのキャタピラ13の沈下量が大きくなるため、これを防止する必要があるからである。
【0031】
なお、改変しない土壌の移植対象範囲が大規模なため、移植対象範囲の貴重植物を含む土壌を移植先へブロック分けしてそっくり移設する際に間違いや混同が生じないようにする必要がある。この点に配慮し、切り出し枠2の側面に整理番号や記号を付しておくのが望ましい。図においては、説明の便宜上、A、B、C、D、…と付してある。
【0032】
次に、図3に示すように、移植対象土壌10内に押し込んだ切り出し枠2の下端よりも下の位置に根切り部材3を配置し、切り出し枠2の下面開放部22に添ってスライドさせることで移植対象土壌10を根切りする(第2工程)。
【0033】
根切り部材3のスライド作業に際してはバックホーBHのバケット11を利用して行う。根切り部材3のスライド時には、底板31の両側のガイド部32、32が切り出し枠2の側面に位置して、根切り部材3が図中矢印で示す方向に真っ直ぐにスライドするためのガイド機能を発揮する。さらに、規制部33は、根切り部材3の底板31がスライドし過ぎないようにするためのストッパ機能を発揮する。これにより、切り出し枠2内に充満している植物等を含む土壌は底板31によって根切りされる。
【0034】
ここで、切り出し枠2の下端よりも下の位置に根切り部材3を配置する場合、予め、押し込んだ切り出し枠2の片面側の土壌(移植対象土壌に含まれない土壌)を予めバックホーBHにより掘削しておき、そこから根切り部材3を差し込むことができる。なお、移植対象土壌を一度切り出した後は、その切り出し深さに対応する段部14が形成されるので、この掘削作業はほとんど不要になる場合が多い。
【0035】
次に、装着部材5の第1連結材52を利用して掛止めプレート51、51どうしを連結する。さらに、第2連結材53を利用して切り出し枠2と根切り部材3とを連結する。これにより、根切り部材3を切り出し枠2に装着する(図1(a)参照)。
【0036】
次に、図4に示すように、釣索Tを用い、根切りした移植対象土壌10を切り出し枠2及び根切り部材3と共に持ち上げてブロック状に切り出す(第3工程)。そして、切り出した土壌を切り出し枠2及び根切り部材3と共にトラック等の運搬手段15に積み込んで土壌移植先に移送する(第4工程)。
【0037】
次に、図5に示すように、土壌移植先において、運搬手段15上の切り出し土壌(土壌ブロック)を切り出し枠2及び根切り部材3と共に持ち上げて土壌移植先の地盤16上に設置する(第5工程)。そして、第1連結材52、第2連結材53を外し、地盤16上に設置された切り出し枠2から根切り部材3をロープ17等を利用した人力により引き出した後、切り出し枠を持ち上げる(第6工程)。次いで、必要に応じて、この土壌ブロックの位置を人力にて微調整し、隣接土壌と密着させる。また、土壌ブロック間に間隙が生じる場合は、採取箇所の土壌を使用して、間詰めをする。
【0038】
なお、土壌ブロックを切り出し枠2及び根切り部材3と共に持ち上げて土壌移植先の地盤16上に設置する第5工程では、図示のように土壌を切り出した順(D、C、BA、…の順)に並べて混同のないように移植する。
【0039】
このように、第1工程から第6工程のうちの少なくとも切り出し枠2を土壌内に押し込む第1工程及び根切り部材3をスライドさせて移植対象土壌を根切りする第2工程におい
てはバックホーBH等の建設機械を利用して行うことが望ましい。勿論、他の建設機械を用いても良い。しかし、経済性、施工性、操作性等の点から、準備するのに容易なバックホーを利用するのが特に効果的である。
【0040】
この実施例の土壌移植工法では、切り出し枠2を土壌内に上から押し込み、根切り部材3によって切り出し枠2の下端の土壌を根切りする方法を採用しているので、生息している植物の根を傷めないように、かつ、周辺の土壌を極力傷めることなく採取することができる。また、この切り出し枠2と根切り部材3をセットで使用するので、採取、運搬及び移植作業時に土壌ブロックを崩したり、緩めるたりすることのないように作業を進めることができる。また、対象土壌の含水量の低下がないよう、作業効率が高く、速やかに移植作業を完了することができる。
【0041】
(実施例2)
<切り出し装置の他の構成>
図6(a)、(b)に、切り出し装置1の他の実施例を示す。なお、同実施例において、先の実施例1で示した構成要素と基本的に同一の構成要素については同一符号を付してその説明を簡略化する。
【0042】
この実施例2では、装着手段5のうちの、第2連結材53に代えて、一対の掛止めプレート51、51及び第1連結材52からなる装着部材を2対設けたものである。このように構成した場合、根切り部材3が切り出し枠2に対して4点支持で装着される形態となるので、安定性良くかつ十分な強度を有する構成とすることができる。また、二つの第1連結材52の何れも切り出し枠2の上方に位置するので、一対の掛止めプレート51、51どうしを連結する操作もより簡便にすることができる。
【0043】
(実施例3)
図7(a)、(b)は、切り出し装置1のさらに他の実施例を示すものである。なお、同実施例において、先の実施例1で示した構成要素と基本的に同一の構成要素については同一符号を付してその説明を簡略化する。
【0044】
この実施例3では、底板31は平面矩形であって、ガイド部32、32は底板31の相対する位置に設けられた一対の側板により形成されている。そして、それら一対の側板32,32は切り出し枠2の高さとほぼ等しく形成され、その一対の側板32,32の上端に釣索を連結する連結部35,35が設けられている。なお、規制部33も一対の側板と同様の高さに形成されている。
【0045】
このように構成した場合、根切り部材3を釣索によって持ち上げるだけで、切り出し枠2も同時に持ち上げることができる。また、根切り部材3の一対の側板32、32は高く形成されているので、一対の側板32、32の上端に釣索の連結部35を設けることで、連結部35の位置が土壌内に埋没しない位置とすることができる。
【0046】
(実施例4)
図8(a)、(b)は、切り出し装置1のさらに他の実施例を示すものである。なお、同実施例において、先の実施例1〜実施例3で示した構成要素と基本的に同一の構成要素については同一符号を付してその説明を簡略化する。
【0047】
この実施例4では、実施例3で示した切り出し枠の一対の側板32、32の上端に互いに向き合う内側への折り返し板36、36をそれぞれ設けると共に、その折り返し板36、36に、2つの第1連結材52、52により連結するための貫通孔37、37をそれぞれ設けたものである。さらに、切り出し枠2の上端に実施例1と同様に釣索を連結する連
結部23を設けたものである。連結部23は4つ設けられ、これらは図8(a)に示す装着状態において折り返し片36、36の内側に位置するように設定されている。
【0048】
このように構成した場合、2つの第1連結材52、52を図8(a)に示すようにセットした状態では、切り出した土壌の重量によって一対の側板32、32が外側へ開かないように確実に補強することができる。
【0049】
なお、以上の実施例における連結部23、35としては、作業性の点から、釣索自体を通す孔の他、釣索先端のフックの掛止め、あるいはシャックルによる連結等の方法を利用できる孔を備えたものであれば良く、図示例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例1に係る土壌切り出し装置を示すもので、(a)は全体構成の斜視図、(b)は分解斜視図。
【図2】本発明の実施例に係る土壌移植工法を示す工程図。
【図3】本発明の実施例に係る土壌移植工法を示す工程図。
【図4】本発明の実施例に係る土壌移植工法を示す工程図。
【図5】本発明の実施例に係る土壌移植工法を示す工程図。
【図6】本発明の実施例2に係る土壌切り出し装置を示すもので、(a)は全体構成の斜視図、(b)は分解斜視図。
【図7】本発明の実施例3に係る土壌切り出し装置を示すもので、(a)は全体構成の斜視図、(b)は分解斜視図。
【図8】本発明の実施例4に係る土壌切り出し装置を示すもので、(a)は全体構成の斜視図、(b)は分解斜視図。
【符号の説明】
【0051】
1 土壌切り出し装置
10 移植対象土壌
11 バケット
15 運搬手段
2 切り出し枠
21 上面開放部
22 下面開放部
23 連結部
3 根切り装置
31 底板
32 ガイド部(側板)
33 規制部(側板)
35 連結部
5 装着手段
51 掛止めプレート
52 第1連結材
53 第2連結材
T 釣索

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物等を含む土壌の移植に用いる土壌切り出し装置であって、
上面及び下面が開放されて四角筒状に形成された切り出し枠と、
その切り出し枠の下面開放部に添ってスライド可能に配置される根切り部材と、を備えたことを特徴とする土壌切り出し装置。
【請求項2】
前記切り出し枠の上下の開放部間の高さ寸法が、移植対象土壌の深さ寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の土壌切り出し装置。
【請求項3】
前記切り出し枠に前記根切り部材を装着するための装着手段を更に備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の土壌切り出し装置。
【請求項4】
前記切り出し枠又は根切り部材の少なくとも一方に、釣索を連結する連結部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の土壌切り出し装置。
【請求項5】
前記根切り部材は、前記切り出し枠の下面開放部を開閉可能な底板と、その底板に設けられ、前記切り出し枠の下面開放部に添って底板をスライド可能に案内するガイド部と、前記底板に設けられ、底板のスライド位置を規制する規制部とを備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の土壌切り出し装置。
【請求項6】
前記底板は平面矩形であって、前記ガイド部は前記底板の相対する位置に設けられた一対の側板により形成され、それら一対の側板は前記切り出し枠の高さとほぼ等しく形成され、その一対の側板に前記釣索を連結する連結部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の土壌切り出し装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れかに記載の土壌切り出し装置を用いて植物等を含む土壌を移植する方法であって、
前記切り出し枠をその下面開放部を下にして、移植対象土壌内に押し込む第1工程と、
移植対象土壌内に押し込んだ切り出し枠の下端よりも下の位置に前記根切り部材を配置し、前記切り出し枠の下面開放部に添ってスライドさせることで移植対象土壌を根切りする第2工程と、
移植対象土壌を前記切り出し枠及び根切り部材と共に持ち上げてブロック状に切り出す第3工程と、
切り出した土壌を切り出し枠及び根切り部材と共に運搬手段に積み込んで土壌移植先に移送する第4工程と、
土壌移植先において、運搬手段上の切り出し土壌を前記切り出し枠及び根切り部材と共に持ち上げて土壌移植先の地盤上に設置する第5工程と、
地盤上に設置された切り出し枠から前記根切り部材を引き出した後、前記切り出し枠を持ち上げる第6工程と、
を行うことを特徴とする土壌移植工法。
【請求項8】
前記第1工程から第6工程のうち、少なくとも前記切り出し枠を土壌内に押し込む第1工程及び根切り部材をスライドさせて移植対象土壌を根切りする第2工程においてはバックホー等の建設機械を利用して行うことを特徴とする請求項7に記載の土壌移植工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−151509(P2007−151509A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354815(P2005−354815)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(593177701)イー・アンド・イー ソリューションズ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】