説明

土壌成分液濃度測定器

【課題】測定精度が高く、かつ、簡便な測定と測定値の後処理に便利な情報活用ができる土壌成分液濃度測定器の提供。
【解決手段】土壌養分に応じた被測定溶液を簡便に創生し、被測定溶液の濃度測定を行う。発光部と受光部の波長と光量を制御、計測する制御処理部を備えているので、測定時には、発色に最も適した方法即ち、吸収スペクトルを選択できるため、時間の短縮及び測定値に測定者の主観が入らない。測定に特別な熟練と技術を必要とせず、また、測定に要する時間は大幅に短縮できる。以上から、煩雑性と専業性を排除し、測定者の主観が全く入らない簡便な土壌成分液濃度測定器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌成分液濃度測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
実施例の一つとして、以下に農業用土壌成分分析測定の場合に関して記述する。
従来の農業用土壌成分分析測定システム装置は、多数の土壌検体を集中的に行う場合の装置として、研究機関、農業関連施設では使用されている。
このような農業用土壌成分分析測定システム装置は、分光光度計と炎光光度計から成りたち、装置は大きく、操作も複雑で専門性が高い。又、高価な分析測定システムが多い。又は、測定に多くの時間を掛けて測定している。
従って、装置の管理及び測定には、専門性が高いだけに専業性が要求される。このため、簡便性に欠ける。
一方、簡便な土壌成分分析測定器として市販されている測定器は、それぞれの農業用土壌成分液を複数の試験管にその都度、目盛り付のスポイトで計量しながら注入し、その後、土壌成分毎に決められた試薬及び希釈液を試験管に注入する方法で発色させ、比色表、比濁表を用いて数値換算する方式が行われている。
この方法は、繰り返し作業が多く、煩雑性が高く、かつ、比色表、比濁表を用いて数値換算する際に主観が入り測定値の信頼に課題がある。
【0003】
以下、図1、図2及び図3により従来の農業用の簡便な土壌成分分析測定器について概要を説明する。図1は、土壌抽出成分液1を示しこの土壌成分液を図示せぬ目盛り付きスポイトなどで各々の試験管2に計量した状態を示す。
【0004】
さらに、図2では各々の試験管2に計量した土壌抽出成分液に、それぞれ異なった試薬3をこれまた、図示せぬ目盛り付きスポイトなどで各々の試験管2に計量しながら入れることによって、各々の試験管2に注入された液は、各々の土壌成分色に発色し被測定溶液4が創生される。
【0005】
図3は、各試験管に創生した被測定溶液4に対して土壌成分毎に決められた比色表5あるいは、比濁表のイメージを示す。各試験管2の被測定溶液4の液濃度測定は、この比色表あるいは、比濁表を用いて目視で比較しながら最も近いと思われる色合いを決めなければならない。これにより、それぞれの表に記載の数値に置き換えることで、農業用土壌成分の種類と含有量を測定することができる。
【0006】
なお、本出願は、先に出願した特許願(出願番号 特願2005−228991)に記載されている事項の更なる改善を盛り込んいる。改善事項の詳細は、次項の「発明が解決しようとする課題」の中で記述する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施例の一つとして、以上に記述した従来の農業用簡易型土壌成分分析測定器では、土壌成分毎に異なる試薬3及び土壌抽出成分液1をその都度、図示せぬ目盛り付のスポイトなどで計量し、試験管2などに注入することで、試薬3と土壌抽出成分液1が反応して発色させている。
【0008】
この被測定溶液4の発色の度合い即ち、色合い、濃度などを数値に置き換える時には比色表5あるいは、比濁表5を使用しているので、比色表あるいは、比濁表の色合い、濃度と試験管2内の被測定溶液4とを目視にて比較し、それぞれの表に記載の数値に置き換えなければならず、当然、この数値化の作業時には、周辺の明るさなどの影響を受ける。
【0009】
また、被測定溶液4の発色の度合いを目視で比較判断することは、比色表5あるいは、比濁表と整合しているか否か難しい作業で熟練を要する。即ち、数値化に置き換える工程において、目視で比較し判断するために主観が入り込み、測定者によって土壌に含有する成分量の読取り数値の誤差が生じることは避けられない。
【0010】
これらの発色の度合いを行う前準備として、土壌成分毎に異なる試薬3、希釈液及び土壌抽出成分液1をその都度、図示せぬ目盛り付のスポイトなどで計量し、試験管2に注入することは、同じような作業を繰返し行なわければならず、単純作業の連続で誤操作も発生しやすく、やり直すことなどで結果的に作業負担も大きくなる。
【0011】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題点すなわち、煩雑性を解決しようとするものである。さらに、数値化を行う時には、従来品のような主観の入り込む工程を排除し、測定者による読取り数値の誤差をなくすこと、そして、単純な繰返し作業を無くし且つ、測定時間の短縮と周辺の明るさなどの影響を受けないなどを狙ったものである。又、従来の高度な分析では、測定に一定の技術・知識などの専業性が必要であったが、このような専門的な技術・知識は必要としない。
【0012】
先に記述したが、本出願の前に出願した特許願(出願番号 特願2005−228991)内容と対比して改善・相違点を示す。出願番号 特願2005−228991では、カートリッジ9に試薬3を前もって注入しておくことを前提としていたが、カートリッジ9の取扱いを容易に行なうため、事前に試薬3の注入することを止め、その代わりにボトル40にあらかじめ注入することで、取扱いを容易にした。また、希釈液なども同様にボトル40にあらかじめ注入する方式を採用し、それぞれのボトル40は、ホルダー41でまとめることで、注入作業の煩雑性を解消しようとするものである。
詳細は、「発明の効果」の項による。
【0013】
更に、土壌抽出成分液1を計量し、それぞれのセル11に注入する場合、先に出願した出願番号 特願2005−228991では、カートリッジの底を打ち破る方式を採用しているが、本出願ではそれぞれの枡を図11〜13に示すような開口部38と液漏れを防ぐノズル39を設けた。これにより、計量枡36の再利用が可能でかつ、煩雑性の解消を実現した。詳細は、「発明の効果」の項による。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために、赤外線、可視光線領域の中から異なった所定の光波長を有する複数の光源からなる発光部7とこの発光部から所定の距離に固定されて、前記発光部から受光部8への光軸上に、光透過材からなるカートリッジ9を定位置移動可能に設置して、カートリッジ9と発光部7の発光色と受光部8の受光量を制御、計測する制御処理部10から構成されて、それぞれの被測定溶液4の光吸収スペクトル特性に合せた波長を発光部7側で選択を行っている。
【0015】
また、被測定溶液4の複数の色濃度と複数の白濁濃度を計測することが可能な構造を有しているので、測定精度向上を図ることができ、かつ、測定での主観的測定の排除を行い、測定精度上の課題を解決するものである。
【0016】
さらに、測定精度面の課題を解決する手段として、発光部7は赤外線及び可視光線の発光素子(図7)からなり、これら発光素子の1個あるいは複数個を選択的に発光させ、その光が光透過材からなるカートリッジ9とその中に収納した被測定液4を透過して受光された透過光量を表示する。あるいは保有するアルゴリズムによりその透過光量から被測定液4の発色あるいは白濁の濃度を特定化して表示する制御部10から構成されている
【0017】
そして、光透過材からなるカートリッジ9は複数のセル11に仕切られて、そのセル11の各々には異なった被測定液4が収納され、各々のセル11は順次、発光素子7と受光素子8の光軸をよぎって定位置移動可能に設置され、各々のセル11に収納された被測定液4の測定は、各々のセル11の略中央部を光軸が透過するように設置し、各々のセル11の被測定液4と事前に整合された発光素子7を選択的に発光するように制御して行うことによって、多色への対応と測定品質の安定への課題解決を図る。
【0018】
被測定液4の測定は各々のセル11の被測定液4と事前に整合された発光素子7を選択的に発光するとともに、前記の発光による各セル11の被測定液4の測定を複数回おこない、受光された透過光量値が所定のバラツキ量以下の場合は決定としてその透過光量値、あるいは濃度値またはそれらの平均値を表示し、所定のバラツキ量以上の場合は再測定を表示するように制御して行うことを行い、作業効率の向上を図り測定時間を短縮と品質確保を図ることを可能にしている。
【0019】
光透過材からなるカートリッジ9の各セル11への試薬3及び希釈液等の注入を効率的に、かつ誤注入量及び誤注入試薬防止のために、図14と15に示すように複数の試薬3収納のボトル40をカートリッジ9の各セル11のピッチに略一致して着脱可能に配置保持するホルダー41を組合せた試薬3及び希釈液注入器を用いることで、作業効率の向上を図り測定時間の短縮と強いては、品質の確保を図る。
ボトル40には、事前に試薬3及び希釈液を決められた量注入してあると共に、決められた場所にセットしてある。
【0020】
光透過材からなるカートリッジ9の各セル11への土壌抽出成分液1の注入は、効率的にかつ誤注入量防止のために、図11〜13に示すように各セル11への注入量を事前に設定した容量の計量枡36を、注入すべきカートリッジ9の各セル11のピッチに略一致して、一列に連続配置して、それぞれの枡37の開口部38には、注入時の液漏れを防ぐノズル39を設けた計量枡36を用いる。異なった量の土壌抽出成分液1を図11の容積の大きい方から注ぎ入れることでゲート45の高い方から低い方にオーバフローする構造になっている。最後にオーバフローした余分な土壌抽出成分液1は余剰液枡43に溜まる。この作業で、各枡には自動的に定まった量の土壌抽出成分液1が計量できる。これは、各ゲート45の一部に容積設定のゲートの切り欠き44が設けてあり、高さを設定しているためである。
【0021】
このような構造であることから、土壌抽出成分液1の計量作業の煩雑性を解消することが可能となる。次に、計量枡36をカートリッジ9の複数の各セル11に合わせて、計量枡36を開口部38側が低くなる方向に傾けることで、一度にカートリッジ9の複数の各セル11に注入することができる。この状態を図13に示す。尚、図11は、図12のA−A断面図を示す。以上の構造が、作業効率の向上を図り測定時間の短縮と強いては品質の確保を図る。
【発明の効果】
【0022】
以上に記述したように本発明の土壌成分液濃度測定器は、今まで、比色表5あるいは、比濁表を用いて目視にて色合いを比較しながら、比色表5あるいは、比濁表値に記載の数値を読み取りその時の土壌成分液濃度に置き換えていた。本発明の土壌成分液濃度測定器は、赤外線、可視光線領域の中から異なった所定の光波長を有する複数の光源からなる発光部7とこの発光部7から所定の距離に固定されて、発光部7からの光を受光する受光部8と、前記発光部7から受光部8への光軸上に設置された被測定溶液4を収納した透明材からなるカートリッジ9と発光部7の発光色と受光部8の受光量を制御、計測する制御処理部10から構成されて、カートリッジ9内の被測定溶液4の複数色濃度と複数白濁濃度を計測することによって、測定者の主観が入らない客観的な測定ができる構造を有しているので測定精度が高く、かつ、簡便な測定と測定値の後処理に便利な情報活用ができる土壌成分液濃度測定器の提供が可能となる。
【0023】
また、発光部7の光源は、赤外線、可視光線領域の中から異なった所定の光波長を有する複数の異なる光源からなることは、先述しているが、この発光部7からの光が貫通するカートリッジ9は複数のセル11から構成されており、各々のセル11には異なった被測定溶液4が収納されており、各々の被測定溶液4の測定には、各々の液色測定に対応して発光部7の光源を切り替え制御して発光させ、その透過光を受光してその受光量から、被測定溶液4の濃度を判定するので、土壌成分分析のように多数の成分測定、即ち多色の被測定溶液4の濃度を測定するのに、濃度測定精度と測定時間の短縮などに効果を発揮する。
【0024】
ボトル40とホルダー41によって、試薬3及び希釈液の注入効率を向上できる。ボトル40には、事前に決められた関係位置に、決められた試薬3及び希釈液を注入してあり、ホルダー41にてキット扱いが可能である構造を有している。
また、試薬3及び希釈液が注入してあっても、蓋42を外し注ぎ口を下方に向けても注ぎ口が小さいために、液漏れは生じない。もちろん、ボトル40の底47を押したり、同部を親指と人指し指で押さえつければ、注入液は排出する。
カートリッジ9の外周を基準にして、ホルダー41のガイド46を沿って上方より被せることで、想定の関係位置が簡単に定まる。カートリッジ9とホルダー41が定まったら、ボトル40の底47を親指と人指し指で押さえることで、ボトル40に注入された液が、それぞれのセル11に注ぎ込まれる。このような、構造を有することで、測定精度向上と測定時間の短縮に効果を発揮する。
【0025】
一方、土壌抽出成分液1を計量し、それぞれのセル11に注入するのに同様に煩雑性を解消するために、前述の計量枡36を採用。カートリッジ9の各セル11への土壌抽出成分液1の注入を、効率的にかつ誤注入量防止のために、図11〜13に示すように各セル11への注入量を事前に設定した容量の計量枡36を、注入すべきカートリッジ9の各セル11のピッチに略一致して、一列に連続配置して、それぞれの枡37の開口部38には、注入時の液漏れを防ぐノズル39を設けた計量枡36を用いる。
【0026】
以上記述しているように、試薬3及び希釈液、土壌抽出成分液1などを各セル11に注ぎ込む時の繰り返し作業、すなわち煩雑性を解消する手段として、ボトル40、計量枡36の採用などにより煩雑性を解消することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態例を図4〜図15に基づいて説明する。
【実施例】
【0028】
図4に、本発明の実施のイメージ事例を示す。赤外線、可視光線領域の中から異なった所定の光波長を有する複数の異なる光源6からなる発光部7とこの発光部7から所定の距離に固定されて、発光部7からの光を受光する受光部8と、前記発光部7から受光部8への光軸上にそれぞれの被測定溶液4を収納した透明材からなるカートリッジ9と発光部7の発光色と受光部8の受光量を制御、計測する制御処理部10から構成されて、カートリッジ9内の被測定溶液4の複数色濃度と複数白濁濃度を計測する構成を有している。
【0029】
図5では、より実用的な実施例を示す。発光部7の光源6(図4)は、前述のように赤外線、可視光線領域の中から異なった所定の光波長を有する複数の異なる光源からなり、この発光部7からの光が貫通するカートリッジ9は複数のセル11から構成されており、各々のセル11には異なった被測定溶液4が収納されている。各々の被測定溶液4の測定には、各々の液色測定に対応して発光部7の光源6(図4)の色を切り替え制御して発光させ、その透過光を受光してその受光量から、被測定溶液色濃度を測定する。
【0030】
図5について、さらに詳細を記述する。土壌成分液濃度測定器12は、被測定溶液4を入れたカートリッジ9(図6)を挟むように構成されているが、発光部7とこの発光部8から所定の距離に固定されて、発光部7からの光を受光する受光部8と、前記発光部7から受光部8への光軸上にその一部を貫通するように設置されている。
【0031】
被測定溶液4を入れたカートリッジ9は、土壌成分液濃度測定器12に組み入れた時に隙間などで所定の距離の誤差が生じないために、ばね13又は、ハウジングの弾性変位を利用することで発光部7側に押し付けている。なお、図示せぬがカートリッジ9は一定範囲を移動し決められた場所に位置が定まるような構造を有して定位置移動する構造を有している。
従って、複数の被測定溶液4を入れたカートリッジ9を連続的に決められた距離を移動させる構造を有することで、安定した連続的な液濃度測定ができる。
【0032】
従来の簡易型土壌成分分析器は、この液濃度測定する場合周辺の明るさの影響を受けることは先述した通りであるが、本発明の液濃度測定器12は、周辺の明るさその他の環境に影響され難いため、測定環境及び場所などの制約が生じない。
【0033】
被測定溶液4は、試薬3と土壌抽出成分液1との混合液であって、これを収納する複数のセル11からなるカートリッジ9を図6に示す。各セル11には各々異なった試薬3と同一土壌抽出成分液の混合からなる被測定溶液4が収納される。各々の被測定溶液4は発色液あるいは白濁液であって、発光部7からの光透過量を受光部8で受光することができる構造を有している。
【0034】
ここで、発光部の詳細に触れる。発光部は、図7に示すように多色の発光素子チップを一体型にパッケージしているので、点光源に近い。又、発光する波長帯を自由に選択組合せできるため、被測定溶液4の多様色への整合性を高めることができる。
【0035】
多色の発光素子チップ14〜29を一体型にパッケージすることで、先述のように光軸が揃うため被測定液4の容器(図6のカートリッジ9など)を小型化できる。又、様々な、パッケージを組合せることで、紫外線から赤外線まで幅広い波長帯域をカバーできる。
【0036】
図7に示すように、多色の発光素子チップ14〜29を一体型にパッケージしているために、小型化、安価、長寿命、多波長の分光光度計が、実現できる。このことは、実施例の土壌成分液のように多発色の場合の濃度測定器に好都合である。
【0037】
上記の事例を図8に示す。図8は、多色発光素子チップ14〜29を一体化した実施例を示す。回折格子31を利用して発色の分類を行う実施例を示す。
【0038】
また、比較的色相が少ない場合は、発光素子7,35の組合せとして絞り込んで、図9に示すような構成にすることも出来る。
【0039】
発光部7から発色液又は、白濁液の濃度差でかつ、透過光量でもっとも差を生じる吸収スペクトル領域を持ち、異なる波長を選択発光させ受光部8で受光することは前述したが、アンモニア態窒素における具体的な吸収スペクトル線図例を図10に示す。
【0040】
次に、土壌抽出成分液1を試薬3などで発色させるまでの工程を説明する。先ず、土壌抽出成分液1を規定量それぞれのセル11に注入する方式を記述する。
【0041】
光透過材からなるカートリッジ9の各セル11への土壌抽出成分液1等の注入は、効率的にかつ誤注入量防止のために、各セル11への注入量を事前に設定した計量枡36を用いる。図11に、計量枡36を示す。注入すべきカートリッジ9の各セル11のピッチに略一致して、一列に連続配置して、それぞれの枡37には、図12に示すような開口部38と注入するノズル39が設けてある。このため、図13に示すように計量枡36全体を傾けても、ノズル53によって液漏れを防ぐことが出来る。又、土壌抽出成分液1の計量は、ゲート45の高さを変えることでゲートの切り欠き44を任意に設定可能である。このような、計量枡36を用いることにより、異なった量の土壌抽出成分液1を一度に計量し、さらに、図13に示すように計量枡36を傾けることで一度にカートリッジ9の複数の各セル11に注入することを可能にした。
【0042】
また、光透過材からなるカートリッジ9の各セル11への試薬3及び希釈液等の注入を効率的に、かつ誤注入量及び誤注入試薬防止のために、複数の試薬3注入済みと希釈液注入済みのボトル40と同ペットボトル40を配置保持するホルダー41を組合せた試薬3及び希釈液注入器を図14に示す。
【0043】
複数の試薬3及び希釈液注入済みのボトル40の蓋42を外し、光透過材からなるカートリッジ9の外周基準にホルダー41のガイド46を目安に上から被せることで、各セル11へ無理なくボトル40の先が差込まれる。その後、ボトル40の底47を親指と人指指で挟みこみ絞ることにより、ボトル40の中に注入してある試薬3及び希釈液が、カートリッジ9の各セル11に容易に注入できる。当然であるが、注入すべきセル11とボトル40の関係位置は、図示では割愛してあるが、誤注入が生じない位置にセットしてある。
【産業上の利用可能性】
【0044】
実施例で記述している土壌成分液濃度測定器は、土壌成分分析結果を科学的に把握するために必須と言える測定器である。何故ならば、食の安全の基本は、土つくりであり、土壌養分がわからないで裏付けされた客観的な肥培管理、即ち、肥料の投入仕様は決まらない。肥培管理の基本データーである土壌養分分析結果は、安全で、かつ、美味しい農作物を作るのになくてはならない最小限の情報である。
【0045】
従来は、土壌分析する人と作物を実際作る人というように、分業が確立している仕組みが社会の中には定着していた。土壌養分の分析結果を十分に理解する農産物生産者の努力も必要だが、土壌分析者と農産物生産者の十分なコニュニケーションが取れない仕組みが、長年が続いている。このために、最適な肥培管理設計が難しく、肥料の過剰投入は、地下水の硝酸態窒素濃度の汚染がとなり大きな社会問題化している。例えば、地下水の硝酸態窒素の高濃度による飲料不敵が全国各地に広がり、とりわけ農村地帯での地下水の汚染は深刻である。また、野菜などの硝酸態窒素の増加は、人の健康被害、人工透析患者を拡大している要因にもなっている。また、野菜の美味しさ、鮮度保持にも影響を与えている。
【0046】
これらの要因は、農地に過剰な肥料を投入したことが主な要因であることは、周知の事実である。肥料の過剰投入は、農業生産者の経済的負担も増やす結果となり、これらの無駄をなくし最適な肥料を農地に投入するには、土壌養分分析が不可欠である。感による農業からデーターによる農業への取組みの基本は、先述のようにデーターに裏づけされた土つくりである。
【0047】
これらの環境・食・健康など課題を、解決する一つの手段として農業生産者自らが土壌養分分析を行える環境つくりが重要である。本発明の土壌成分液濃度測定器は、農業生産者に分析のための煩雑性と専門の知識など多くの難しい事項と作業などを取り除き、簡便に土壌分析ができる環境つくりへの測定器として効果が期待できる。
【0048】
さらに、土つくりを行いそこで育成した農産物の成長度合い、美味しさの定量的評価、硝酸態窒素含有濃度の測定、水質環境検査、堆肥完熟度評価、飼料の評価などに応用できるが詳細は、割愛する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】土壌抽出成分液1を試験管2に分配するイメージ図
【図2】土壌抽出成分液1に試薬3を注入した場合の被測定溶液4のイメージ図
【図3】被測定溶液4の発色濃度を換算時に使用する比色5及び比濁表イメージ図
【図4】本発明の土壌成分液濃度測定器12の全体構成を表すイメージ図
【図5】土壌成分液濃度測定器12にカートリッジ9をセットした図
【図6】カートリッジ9外観図
【図7】発光素子チップ14〜29を一体化した時のイメージ図
【図8】発光素子チップ14〜29を使用し、回折格子31を利用して分光し受光する実施例のイメージ図
【図9】発光素子7,35を組合せた時の事例のイメージ図
【図10】アンモニア態窒素の吸収スペクトル線図例
【図11】計量枡36
【図12】計量枡36の開口部38とノズル39
【図13】カートリッジ9に計量枡36で注入している状態図
【図14】ボトル40とホルダー41
【図15】カートリッジ9にボトル40より注入している状態図
【符号の説明】
【0050】
1 土壌から抽出した土壌抽出成分液
2 土壌抽出成分液を分配した時の試験管
3 試薬
4 試薬注入により発色した被測定溶液
5 被測定溶液の発色濃度を確認する時に使用する比色・比濁表
6 土壌成分液濃度測定器内臓の発光源
7 土壌成分液濃度測定器内臓の発光源を包含した発光部
8 土壌成分液濃度測定器内臓の受光部
9 カートリッジ
10 制御処理部
11 カートリッジのセル
12 土壌成分液濃度測定器外観
13 ばね
14〜29 発光素子チップ
30 発光素子チップ集合体
31 回折格子
32〜34 受光素子
35 受光素子
36 計量枡
37 枡
38 開口部
39 ノズル
40 ボトル
41 ホルダー
42 蓋
43 余剰液枡
44 ゲートの切り欠き
45 ゲート
46 ガイド
47 底

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線、可視光線領域の中から異なった所定の光波長を有する複数の光源からなる発光部とこの発光部から所定の距離を離して固定し、発光部からの光を受光する受光部と、前記発光部から受光部への光軸上に、光透過材からなるカートリッジを定位置移動可能に設置して、カートリッジと発光部の発光色と受光部の受光量を制御、計測する制御処理部から構成されて、それぞれの被測定溶液の光吸収スペクトル特性に合せた波長を発光部側で選定することにより、被測定溶液の複数色濃度と複数白濁濃度を高精度に計測することを特徴とする土壌成分液濃度測定器。
【請求項2】
請求項1の土壌成分液濃度測定器であって、その発光部は赤外線及び可視光線領域の発光素子からなり、これらの発光素子の1個あるいは複数個を選択的に発光させ、その光が光透過材からなるカートリッジとその中に収納した被測定液を透過して受光された透過光量を表示する。あるいは保有するアルゴリズムによりその透過光量から被測定液の発色あるいは白濁の濃度を特定化して表示する制御部から構成されていることを特徴とする。
【請求項3】
請求項1の土壌成分液濃度測定器であって、光透過材からなるカートリッジは複数のセルに仕切られて、そのセルの各々には異なった被測定液が収納され、各々のセルは順次、発光素子と受光素子の光軸をよぎって定位置の移動が可能に設置され、各々のセルに収納された被測定液の測定は、各々のセルの略中央部を光軸が透過するように設置し、各々のセルの被測定液と事前に整合された発光素子を選択的に発光するように制御して行うことを特徴とする。
【請求項4】
請求項3の土壌成分液濃度測定器であって、被測定液の測定は各々のセルの被測定液と事前に整合された発光素子を選択的に発光するとともに、前記の発光による各セルの被測定液の測定を複数回行ない、受光された透過光量値が所定のバラツキ量以下の場合は決定としてその透過光量値、あるいは濃度値またはそれらの平均値を表示し、所定バラツキ量以上の場合は再測定を表示するように制御して行うことを特徴とする。
【請求項5】
請求項1の土壌成分液濃度測定器であって、光透過材からなるカートリッジの各セルへの試薬及び希釈液等の注入を効率的に、かつ誤注入量及び誤注入試薬防止のために、複数の試薬収納のボトルをカートリッジの各セルのピッチに略一致して着脱可能に配置保持するホルダーを組合せた試薬及び希釈液注入器を用いることを特徴とする。
【請求項6】
請求項1の土壌成分液濃度測定器であって、光透過材からなるカートリッジの各セルへの土壌抽出成分液等の注入は、効率的にかつ誤注入量防止のために、各セルへの注入量を事前に設定した計量枡を、注入すべきカートリッジの各セルのピッチに略一致して、一列に連続配置して、それぞれの枡の開口部には、注入時の液漏れを防ぐノズルを設けた計量枡を用いることにより、異なった量の土壌抽出成分液等を一度に計量し、かつ、計量枡を傾けることで、一度にカートリッジの複数の各セルに注入することを可能にしたことを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−191116(P2008−191116A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28653(P2007−28653)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(305040802)
【出願人】(507043472)
【出願人】(597154450)
【Fターム(参考)】