土壌掘削工具および土壌改良工法
【課題】この発明は、硬い土壌などにおいても効果的に施工ができ、汎用性が高く、地上に排泥をほとんど出さない施工が可能な土壌掘削工具および土壌改良工法を提供することを目的とする。
【解決手段】上述の課題を解決するため、この発明の土壌掘削工具は、軸体と、軸体の外部に設けられた土壌撹拌羽根5と、土壌撹拌羽根5に設けられた土壌切削用爪11と、軸体から外部へ伸びたノズルを有し、土壌撹拌羽根5は板状の爪本体部11aを有し、爪本体部11aの両端には尖端部11cが形成されていることを特徴とする。
【解決手段】上述の課題を解決するため、この発明の土壌掘削工具は、軸体と、軸体の外部に設けられた土壌撹拌羽根5と、土壌撹拌羽根5に設けられた土壌切削用爪11と、軸体から外部へ伸びたノズルを有し、土壌撹拌羽根5は板状の爪本体部11aを有し、爪本体部11aの両端には尖端部11cが形成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る土壌掘削工具、土壌改良工法および土壌浄化工法は、軟弱な地盤の改良や汚染された土壌の浄化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には先導管と軸体と軸体の周囲に取り付けられたらせん状羽根を有し、この軸体でらせん状羽根が取り付けられる部分は軸方向に沿って中央部が太く両端部が細くなるように構成され、らせん状羽根の上面および下面に爪を設けた土壌掘削工具を回転させ、かつ先導管より圧縮空気を噴出しながら土壌を掘削し、所定の深さに達した後に土壌掘削工具を逆回転させて土壌を撹拌させながららせん状羽根部よりセメントミルクを注入して土壌とセメントミルクを混合させ、土壌中に改良体を造成することにより、地上にセメントミルクを含む排泥を発生させず、環境問題を引き起こすことなく軟弱地盤の改良工事を実現することが記載されている。特許文献2には、さらにらせん状羽根の外周部にも土壌切削用爪を設けて掘削能力を向上させ、土丹層や玉石混じりの土壌においても、短時間で土壌の掘削を実現することが記載されている。また、特許文献3および特許文献4には同様の装置を用いて土壌を撹拌しながら地中に浄化剤を注入して、土壌を浄化することが記載されている。
【0003】
特許文献1から特許文献4に記載された土壌掘削工具の爪は、略長方形の板材をらせん状羽根の上面および下面に立てた状態で設けられている。そして、1つの角部が切り取られた形状となっている。
【特許文献1】特開2003−90189
【特許文献2】特開2004−278034
【特許文献3】特開2003−251327
【特許文献4】特開2004−358420
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1から4に記載された土壌掘削工具は簡易な装置でありながら、効果的に施工することができるものである。地上に排泥をほとんど出さないので環境に対しても良好であり、排泥処理費用がかからないので低コストで土壌強化工事や土壌浄化が行える。
【0005】
上述の土壌掘削工具は、らせん状羽根に板状の金属の爪を備えており、土壌を強力に切削するものであり、さらに、土壌を撹拌して注入材と均一に混合し、強度の高い強化体を造成する。しかし、粘土層など切削しにくい土壌も存在する。このような硬い土壌においても効果的に切削ができ、広範な条件下で施工できる汎用性の高い土壌掘削工具が望まれる。
【0006】
また、強い切削力を長期間維持できる土壌掘削工具が望まれる。
【0007】
この発明は、硬い土壌などにおいても効果的に施工ができ、汎用性が高く、地上に排泥をほとんど出さない施工が可能な土壌掘削工具および土壌改良工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、この発明の土壌掘削工具は、軸体と、軸体の外部に設けられた土壌撹拌羽根と、土壌撹拌羽根に設けられた土壌切削用爪と、軸体から外部へ伸びたノズルを有し、土壌撹拌羽根は板状の爪本体部を有し、爪本体部の両端には尖端部が形成されていることを特徴とする。さらに、土壌撹拌羽根がらせん状であり、メートル単位で表わした最大径dと土壌切削用爪の本数nとが次の関係を満たすものであることが好ましい。
270×d×d<n<600×d×d
【0009】
そして、軸体の先端部より土壌撹拌羽根を見たときに見える部分を第1領域とし、前部の羽根に隠れる部分を第2領域とすると、実質的に第1領域のみに土壌撹拌羽根に設けられていることがより好ましい。前記軸体で土壌撹拌羽根が取り付けられる部分は軸方向に沿って中央部が太く両端部が細くなる形状であってもよく、また、軸方向に沿って実質的に同一の太さであってもよい。
【0010】
さらに、この発明の土壌改良工法は、軸体と、軸体の外部に設けられた土壌撹拌羽根と、土壌撹拌羽根に設けられた土壌切削用爪と、軸体から外部へ伸びたノズルを有し、土壌撹拌羽根は板状の爪本体部を有し、爪本体部の両端には尖端部が形成されていることを特徴とする土壌掘削工具を回転させて土壌を掘削し、所定の深さに達した後に土壌掘削工具を逆回転させて土壌を撹拌しながらノズルより注入材を注入して土壌中に改良体を造成するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明の土壌掘削工具では、土壌撹拌羽根は板状の爪本体部を有し、爪本体部の両端には尖端部が形成されているので、土壌を切削する能力が高く、硬い土質などを含め広範な土壌で、排泥をほとんど排出することなく軟弱地盤の強化や土壌の浄化工事が行えるという効果を有する。土壌と注入材を均一に混合することができ、強度の高く均質な地盤改良体を造成することができる。掘削の速度が向上し、また強い切削力を長期間維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。図1は土壌掘削工具を示す一部断面正面図で、図2は同底面図である。
【0013】
土壌掘削工具1は先端部に先導管2を有し、この先導管2の先端部には土壌を切削するための切削チップ3が設けられている。この先導管2に続いて軸体4が設けられており、この軸体4の外部には土壌撹拌羽根5が設けられている。さらに軸体4の上部には接続部6が設けられている。
【0014】
軸体4は軸方向に沿って実質的に同一の太さでもよく、図1に示すように土壌撹拌羽根5が取り付けられる部分は軸方向に沿って中央部が太く両端部が細くなる形状でもよい。土壌撹拌羽根5の径が大きい場合には図1のように中央部を太くした方が強度が高くなる。
【0015】
土壌撹拌羽根5は軸体4の外部にらせん状に設けられている。本例においては、軸体4がテーパー状になっている範囲では土壌撹拌羽根5の外径は中央部に向かって一定の割合で大きくなっている。一方、軸体4の太さが一定である範囲では、土壌撹拌羽根5の外径も一定となっている。
【0016】
軸体4および接続部6の内部には注入剤通路7が設けられている。そして、軸体4の中央部付近はノズル8が外部に向けて設けられている。このノズル8は、土壌撹拌羽根5の径が最大となる位置に設けられている。そして、ノズル8の先端部は土壌撹拌羽根5の外縁近くに沿って設けられるが、土壌撹拌羽根5より突出している。そして、このノズル8の突出部分を覆うように保護材9が設けられている。
【0017】
ノズル8は1本でも複数本でもよいが、図1の例では2本であり、軸体4に対して相互に180度ずれた位置に配置されている。そして、土壌撹拌羽根5の径が最大となる部分の外周でノズル8より90度ずれた位置にも保護材9と同形状のプレート10が設けられている。
【0018】
土壌撹拌羽根5には多数の土壌切削用爪が設けられている。この土壌切削用爪について詳細に説明する。土壌切削用爪はいくつかの異なったタイプのものが使用されている。
【0019】
まず、土壌撹拌羽根5の外周部に設けられた土壌切削用爪11について説明する。図3は外周部の土壌切削用爪を示す正面図、図4は同平面図である。このタイプの土壌切削用爪11は、金属の爪本体部11aと、この爪本体部11aにとりつけられた切削チップ11bよりなる。切削チップ11bは硬度の高い特殊鋼で作られていて、先端は尖った形状であり、根元の部分が爪本体部11aにロー付け等で接続されている。爪本体部11aは板状の金属であり、両端に尖端部を有する。爪本体部11aの形状の一例を示すと、厚さtは19mm、長さLは60mmであり、両端の長さL0=20mmの部分は尖端部11cとなっており、二等辺三角形状に突き出した形状になっている。また、高さは50mmである。爪本体部11aは土壌撹拌羽根5の外周の接線方向に向けて取り付けられ、切削チップ11bは下向き(先導管方向)に設けられている。そして、この土壌掘削工具1が下向きに進行するときの回転方向に向いて傾斜させて切削チップ11bは取り付けられている。この土壌切削用爪11は、土壌撹拌羽根5の下端部から最大径部にかけて設けられており、それより上部には設けられていない。
【0020】
ついで、土壌撹拌羽根5の下面(先導管側に向いた面)に設けられる土壌切削用爪12について説明する。図5は土壌撹拌羽根5の下面に設けられた土壌切削用爪を示す正面図、図6は同平面図である。外周部に設けられた土壌切削用爪11と同様に、金属の爪本体部12aと、切削チップ12bよりなる。爪本体部12aの形状は外周部に設けられた土壌切削用爪11の爪本体部11aと同様の形状であり、両端部には、尖端部12cが形成されている。爪本体部12aは円周方向に沿って設けられ、切削チップ12bは下向きでしかもこの土壌掘削工具1が下向きに進行するときの回転方向に向いて若干傾斜させて設けられる。ここで、土壌切削用爪12は土壌撹拌羽根5の下面の内、先導管方向から見える領域に配置される。すわなち、軸体4の先端部より土壌撹拌羽根5を見たときに見える部分を第1領域とし、手前側の羽根に隠れる部分を第2領域とすると、土壌切削用爪12は第1領域に配置され、第2領域には設けられない。これは、第1領域に設けられた土壌切削用爪12が土壌の切削・撹拌において効果的に作用し、一方、第2領域に設けてもさほど効果のないことが判明したことに基く。
【0021】
土壌撹拌羽根5の上面(接続部側に向いた面)に設けられる土壌切削用爪13は爪本体部のみであり、切削チップを有しない。爪本体部には、やはり両端部に尖端部が形成されている。軸体4の接続部より土壌撹拌羽根5を見たときに見える部分を第1領域とし、手前側の羽根に隠れる部分を第2領域とすると、土壌切削用爪13も第1領域に配置され、第2領域には設られない。
【0022】
さらに、保護材9およびプレート10にも土壌切削用爪14が設けられている。これらの土壌切削用爪14は切削チップである。保護材9およびプレート10のそれぞれにおいて、外側の辺部に2個、側部の辺に2個ずつで計6個が設けられている。
【0023】
また、土壌切削用爪の個数について鋭意検討を行った結果、固い地盤においても高速で効率的に土壌を切削・撹拌するのに適した条件があることが判明した。
土壌撹拌羽根5の最大径dと土壌切削用爪の本数nとが
270×d×d<n<600×d×d
の関係を満たすとき、最も土壌切削用爪の効果が高い。ここで、最大径dはメートル単位で表示される値である。nは土壌切削用爪の本数であり、切削チップを有する土壌切削用爪11,12も切削チップを有しない土壌切削用爪13も含まれる。また、保護材9やプレート10に設けられる切削チップも本数nとして参入される。例えば、特許文献1や特許文献2において、土壌撹拌羽根の最大径が1mの土壌掘削工具を示す図には160本程度の爪が記載されているが、上式の条件では土壌切削用爪の本数が増加しており、これによって切削・撹拌する能力が向上している。なお、土壌切削用爪の本数nをこのように設けることは、特許文献1等に記載されているようなノズルが土壌撹拌羽根から突出していない壌掘削工具に適用した場合にも切削・撹拌する能力を向上させることができ、有効である。
【0024】
つぎに、この土壌掘削工具を用いた土壌改良工法について説明する。図7に本発明の土壌掘削工具を使用した建設機械の一例を示す。作業台車21は無限軌道22を備えて自走可能であり、工事現場において装置全体を容易に移動させることができるものである。作業台車21には上下動可能なアーム23を介してリーダー24が取り付けられている。リーダー24はチャック25を上下に移動可能に取り付けるスライド式の取り付け装置である。施工場所に作業台車21を移動させたら、アーム23の角度を調整してリーダー24を垂直に立てる。チャック25に最上段の中間ロッド26を通し、チャック25で中間ロッド26をつかむ。最上段の中間ロッド26の上にスィベル27がつながれ、最下段の中間ロッドの下に土壌掘削工具1が接続される。チャック25は油圧駆動により中間ロッド26を正逆両方向に回転させることができる。すなわち、中間ロッド26はチャック25の回転を先端の土壌掘削工具1に伝達する駆動軸の働きをする。スィベル27に注入剤ホース28と空気ホース29とが接続され、それぞれのホースは図示しないプラントのグラウトポンプとコンプレッサーにつながれる。スィベル27、中間ロッド26および土壌掘削工具1は、それぞれ二重管構造又は三重管構造であるが、空気および注入剤の通路がつながるよう接続される。
【0025】
土壌掘削工具1により掘り進めるときには、コンプレッサーで空気を送り土壌掘削工具1の先端より噴出するとともに、土壌掘削工具1の土壌撹拌羽根5が下向きに進行するよう回転させる。ある程度掘り進めたら、中間ロッド26を継ぎ足して、さらに深く掘り進める。土壌撹拌羽根5の外周および下面には切削チップ11b、12bを有する土壌切削用爪11,12が設けられているので、進行方向に向いて設けられた切削チップ11b、12bにより土壌が効果的に掘削される。切削した土砂を滑らかに後方に送るために、土壌撹拌羽根5の外周は先端から中央部に向かって径が広がり、また上部へ向かって径が小さくなる形状になっている。図1の例の土壌掘削工具1では、前記軸体4で土壌撹拌羽根5が取り付けられる部分は軸方向に沿って中央部が太く両端部が細くなっており、中央部においても土壌撹拌羽根5および軸体4は強固であり、また掘り進みながらスムーズに土砂を後方に送るため、施工中に土壌掘削工具1が地中で破損しにくくなり、比較的硬い地盤や粘土質の場所でも施工ができる。
【0026】
最終深さまで掘り進めたら、チャック25の回転方向を逆にして、土壌撹拌羽根5が上向きに進行するよう回転させながら、土壌掘削工具1を引き上げる。この際、注入剤ホース28より注入剤を導入し、土壌掘削工具1のノズル8より注入剤(例えばセメントミルク)を地中に注入する。引き上げ時には土壌撹拌羽根の上面の土壌切削用爪13が土砂を撹拌する。建設機械においては、土砂の機械的撹拌と注入剤の噴出による土砂の撹拌が同時に行われ、切削された土砂と注入剤は効率的に混合される上、切削された土砂が排泥として地上に排出されることがない。
【0027】
超高圧で注入剤を噴出しながら撹拌する場合は、注入剤を横方向に高圧噴射するために、土壌撹拌羽根の径よりも広い範囲の改良体の造成が可能であり、工期の短縮および経済性の向上が実現できるとともに、密着施工や改良体相互の施工が可能となり工事の全体的な一体化がはかれる。そして、本発明においてはノズルが土壌撹拌羽根よりも突出しており、より遠くまで注入剤を注入することができ、施工範囲をより広くすることができる。
【0028】
土壌切削用爪の爪本体部11a、12a、13aの両端に尖端部11c、12c、13cが設けられているので、どちらの方向に土壌掘削工具1が回転するときでもその進行方向に尖端部が向いており、土壌を効果的に切削することができる。したがって、粘土層のような固い土質であっても十分に切削することができる。また、土壌を十分に切削するので、土壌をセメントミルクなどの注入剤と均一に混合することができ、均質で強度の高い改良体を造成することができる。使用し続けることにより尖端部11c、12c、13cは徐々に磨耗するが、尖端部が完全に消失するまでには相当の期間を要するので、この強力な土壌切削能力は長期間維持される。
さらに、土壌撹拌羽根の最大径dに対して土壌切削用爪の本数nが
270×d×d<n<600×d×d
を満たすように十分に設けられているため、土壌の切削・撹拌能力が高く、固い地盤であっても短時間に施工することができる。
【0029】
引き上げるときは、掘り進めるときとは逆に、中間ロッドを順次取り外しながら作業を進める。所定の高さまで引き上げたら注入剤の注入を停止して、土壌掘削工具1を引き上げる。このようにして一つの穴の施工が完了したら、作業台車21を次の位置に移動させ、同様の施工を繰り返す。
【0030】
さらに、土壌掘削工具を使用した土壌浄化工法について説明する。土壌の浄化を行う場合も、図7に示す建築機械を使用することができる。土壌浄化を行う場所に作業台車を移動させ、必要な深さまで土壌掘削工具で掘削する。掘り進めるまでの工程は土壌改良工法と同様に行ってよい。所定の深さまで掘り下げたらチャック25の回転方向を逆にして、土壌撹拌羽根5が上向きに進行するよう回転させながら、土壌掘削工具1を引き上げる。この際、注入剤ホース28より土壌浄化に必要な薬剤を導入し、土壌掘削工具1のノズル8より地中に注入する。例えばダイオキシンなどの有機塩素化合物といった揮発性有機化合物やその他の有機化合物を分解・除去するために過酸化水素と鉄粉とを用いることができる。土壌撹拌羽根5よりも突出したノズル8によって遠くまで薬剤を注入することができる。十分な本数の土壌切削用爪を有し、しかも爪本体部に尖端部が形成されているので、土壌は地中で撹拌され、注入された薬剤は土壌に均一に混ぜ合わされる。この施工によって排泥が発生しない。したがって、汚染された土砂が地上に排出されたり、薬剤が地上に流れ出ないので周囲の環境に悪影響を与えることなく、地中の土壌を浄化することができる。
【実施例1】
【0031】
土壌掘削工具の第1の実施例について説明する。図8は土壌掘削工具の第1の実施例を示す一部断面正面図、図9は同。土壌撹拌羽根5の最大径は1500mmである。軸体4は両端部では直径が205mmであるが、土壌撹拌羽根が取り付けられる部分は軸方向に沿って中央部が太く両端部が細くなる形状になっている。軸体4の内部には三重管構造の配管が設けられており、ノズル8に注入剤を供給する通路のほか、エアの通路も設けられている。
【0032】
図9(a)の例では、ノズル8は土壌撹拌羽根5の最大径の部分の外周より50mm突出している。そして、このノズルの突出している場所の近くに保護材9を設け、ノズル8の突出部の上側または下側をカバーしている。さらに、この保護材9の外周部に掘削ビットを設けている。また、保護材9と同一形状のプレート10をやはり土壌撹拌羽根5の最大径の部分の外周で、ノズル8の位置より90度ずれた位置に設けている。従って、底面図において、保護材9およびプレート10は同一円周上に並ぶ。これらの保護材9およびプレート10は土壌の切削を行うとともに、ノズル8の先端部にかかる外力を減少させ、ノズル8を保護する。このようにノズル8を突出させることにより、より遠くまで注入剤を注入することができる。
【0033】
図9(b)ではノズル8は土壌撹拌羽根5の最大径の部分の外周より100mm突出している。したがって、ノズル8の先端の回転半径は850mmとなり、これまでの直径1700mmの土壌撹拌羽根を有する土壌掘削工具に匹敵する程度の広範囲の地盤強化や土壌浄化などを行うことができる。図9(c)では150mm、図9(d)では200mmノズル8が突出しており、それぞれ、直径1800mm、直径1900mmの土壌撹拌羽根を有する土壌掘削工具に近い能力を有する。しかし、土壌撹拌羽根5の直径は1500mmしかないので、費用の増加は比較的小さい。
【実施例2】
【0034】
さらに、土壌掘削工具の第2の実施例について説明する。図10は土壌掘削工具の第2の実施例を示す一部断面正面図、図11は同底面図である。土壌撹拌羽根5の最大径は400mmである。軸体4は全長に渡って直径が140mmである。軸体4の内部には三重管構造の配管が設けられており、ノズル8に注入剤を供給する通路のほか、エアの通路も設けられている。
【0035】
本例でも、ノズル8が土壌撹拌羽根5の最大径の部分の外周より突出している。そして、このノズルの突出している場所の近くに保護材9を設け、ノズル8の突出部の上側または下側をカバーしている。また、保護材9と同一形状のプレート10をやはり土壌撹拌羽根5の最大径の部分の外周で、ノズル8の位置より90度ずれた位置に設けている。図11(a)では50mm、図11(b)では50mm、それぞれノズル8が突出している。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、軟弱地盤の強化や汚染土壌の浄化などを行う土壌掘削工具として利用することができる。排泥をほとんど排出しないので、環境に悪影響を与えることがなく、また排泥処理の費用がかからず低コストで施工することができる。土壌撹拌羽根よりも突出したノズル先端から注入剤を注入しながら土壌を撹拌することにより、小型の装置で広範囲の施工を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】土壌掘削工具を示す一部断面正面図である。
【図2】同底面図である。
【図3】外周部の土壌切削用爪を示す正面図である。
【図4】同平面図である。
【図5】下面の土壌切削用爪を示す正面図である。
【図6】同平面図である。
【図7】土壌掘削工具を含む建設機械を示す説明図である。
【図8】土壌掘削工具の第1の実施例を示す一部断面正面図である。
【図9】同底面図である。
【図10】土壌掘削工具の第2の実施例を示す一部断面正面図である。
【図11】同底面図である。
【符号の説明】
【0038】
1.土壌掘削工具
2.先導管
3.切削ビット
4.軸体
5.土壌撹拌羽根
6.接続部
7.注入剤通路
8.ノズル
9.保護材
10.プレート
11、12、13,14.土壌切削用爪
21.作業台車
22.無限軌道
23.アーム
24.リーダー
25.チャック
26.中間パイプ
27.スイベル
28.注入剤ホース
29.空気ホース
【技術分野】
【0001】
本発明に係る土壌掘削工具、土壌改良工法および土壌浄化工法は、軟弱な地盤の改良や汚染された土壌の浄化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には先導管と軸体と軸体の周囲に取り付けられたらせん状羽根を有し、この軸体でらせん状羽根が取り付けられる部分は軸方向に沿って中央部が太く両端部が細くなるように構成され、らせん状羽根の上面および下面に爪を設けた土壌掘削工具を回転させ、かつ先導管より圧縮空気を噴出しながら土壌を掘削し、所定の深さに達した後に土壌掘削工具を逆回転させて土壌を撹拌させながららせん状羽根部よりセメントミルクを注入して土壌とセメントミルクを混合させ、土壌中に改良体を造成することにより、地上にセメントミルクを含む排泥を発生させず、環境問題を引き起こすことなく軟弱地盤の改良工事を実現することが記載されている。特許文献2には、さらにらせん状羽根の外周部にも土壌切削用爪を設けて掘削能力を向上させ、土丹層や玉石混じりの土壌においても、短時間で土壌の掘削を実現することが記載されている。また、特許文献3および特許文献4には同様の装置を用いて土壌を撹拌しながら地中に浄化剤を注入して、土壌を浄化することが記載されている。
【0003】
特許文献1から特許文献4に記載された土壌掘削工具の爪は、略長方形の板材をらせん状羽根の上面および下面に立てた状態で設けられている。そして、1つの角部が切り取られた形状となっている。
【特許文献1】特開2003−90189
【特許文献2】特開2004−278034
【特許文献3】特開2003−251327
【特許文献4】特開2004−358420
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1から4に記載された土壌掘削工具は簡易な装置でありながら、効果的に施工することができるものである。地上に排泥をほとんど出さないので環境に対しても良好であり、排泥処理費用がかからないので低コストで土壌強化工事や土壌浄化が行える。
【0005】
上述の土壌掘削工具は、らせん状羽根に板状の金属の爪を備えており、土壌を強力に切削するものであり、さらに、土壌を撹拌して注入材と均一に混合し、強度の高い強化体を造成する。しかし、粘土層など切削しにくい土壌も存在する。このような硬い土壌においても効果的に切削ができ、広範な条件下で施工できる汎用性の高い土壌掘削工具が望まれる。
【0006】
また、強い切削力を長期間維持できる土壌掘削工具が望まれる。
【0007】
この発明は、硬い土壌などにおいても効果的に施工ができ、汎用性が高く、地上に排泥をほとんど出さない施工が可能な土壌掘削工具および土壌改良工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、この発明の土壌掘削工具は、軸体と、軸体の外部に設けられた土壌撹拌羽根と、土壌撹拌羽根に設けられた土壌切削用爪と、軸体から外部へ伸びたノズルを有し、土壌撹拌羽根は板状の爪本体部を有し、爪本体部の両端には尖端部が形成されていることを特徴とする。さらに、土壌撹拌羽根がらせん状であり、メートル単位で表わした最大径dと土壌切削用爪の本数nとが次の関係を満たすものであることが好ましい。
270×d×d<n<600×d×d
【0009】
そして、軸体の先端部より土壌撹拌羽根を見たときに見える部分を第1領域とし、前部の羽根に隠れる部分を第2領域とすると、実質的に第1領域のみに土壌撹拌羽根に設けられていることがより好ましい。前記軸体で土壌撹拌羽根が取り付けられる部分は軸方向に沿って中央部が太く両端部が細くなる形状であってもよく、また、軸方向に沿って実質的に同一の太さであってもよい。
【0010】
さらに、この発明の土壌改良工法は、軸体と、軸体の外部に設けられた土壌撹拌羽根と、土壌撹拌羽根に設けられた土壌切削用爪と、軸体から外部へ伸びたノズルを有し、土壌撹拌羽根は板状の爪本体部を有し、爪本体部の両端には尖端部が形成されていることを特徴とする土壌掘削工具を回転させて土壌を掘削し、所定の深さに達した後に土壌掘削工具を逆回転させて土壌を撹拌しながらノズルより注入材を注入して土壌中に改良体を造成するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明の土壌掘削工具では、土壌撹拌羽根は板状の爪本体部を有し、爪本体部の両端には尖端部が形成されているので、土壌を切削する能力が高く、硬い土質などを含め広範な土壌で、排泥をほとんど排出することなく軟弱地盤の強化や土壌の浄化工事が行えるという効果を有する。土壌と注入材を均一に混合することができ、強度の高く均質な地盤改良体を造成することができる。掘削の速度が向上し、また強い切削力を長期間維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。図1は土壌掘削工具を示す一部断面正面図で、図2は同底面図である。
【0013】
土壌掘削工具1は先端部に先導管2を有し、この先導管2の先端部には土壌を切削するための切削チップ3が設けられている。この先導管2に続いて軸体4が設けられており、この軸体4の外部には土壌撹拌羽根5が設けられている。さらに軸体4の上部には接続部6が設けられている。
【0014】
軸体4は軸方向に沿って実質的に同一の太さでもよく、図1に示すように土壌撹拌羽根5が取り付けられる部分は軸方向に沿って中央部が太く両端部が細くなる形状でもよい。土壌撹拌羽根5の径が大きい場合には図1のように中央部を太くした方が強度が高くなる。
【0015】
土壌撹拌羽根5は軸体4の外部にらせん状に設けられている。本例においては、軸体4がテーパー状になっている範囲では土壌撹拌羽根5の外径は中央部に向かって一定の割合で大きくなっている。一方、軸体4の太さが一定である範囲では、土壌撹拌羽根5の外径も一定となっている。
【0016】
軸体4および接続部6の内部には注入剤通路7が設けられている。そして、軸体4の中央部付近はノズル8が外部に向けて設けられている。このノズル8は、土壌撹拌羽根5の径が最大となる位置に設けられている。そして、ノズル8の先端部は土壌撹拌羽根5の外縁近くに沿って設けられるが、土壌撹拌羽根5より突出している。そして、このノズル8の突出部分を覆うように保護材9が設けられている。
【0017】
ノズル8は1本でも複数本でもよいが、図1の例では2本であり、軸体4に対して相互に180度ずれた位置に配置されている。そして、土壌撹拌羽根5の径が最大となる部分の外周でノズル8より90度ずれた位置にも保護材9と同形状のプレート10が設けられている。
【0018】
土壌撹拌羽根5には多数の土壌切削用爪が設けられている。この土壌切削用爪について詳細に説明する。土壌切削用爪はいくつかの異なったタイプのものが使用されている。
【0019】
まず、土壌撹拌羽根5の外周部に設けられた土壌切削用爪11について説明する。図3は外周部の土壌切削用爪を示す正面図、図4は同平面図である。このタイプの土壌切削用爪11は、金属の爪本体部11aと、この爪本体部11aにとりつけられた切削チップ11bよりなる。切削チップ11bは硬度の高い特殊鋼で作られていて、先端は尖った形状であり、根元の部分が爪本体部11aにロー付け等で接続されている。爪本体部11aは板状の金属であり、両端に尖端部を有する。爪本体部11aの形状の一例を示すと、厚さtは19mm、長さLは60mmであり、両端の長さL0=20mmの部分は尖端部11cとなっており、二等辺三角形状に突き出した形状になっている。また、高さは50mmである。爪本体部11aは土壌撹拌羽根5の外周の接線方向に向けて取り付けられ、切削チップ11bは下向き(先導管方向)に設けられている。そして、この土壌掘削工具1が下向きに進行するときの回転方向に向いて傾斜させて切削チップ11bは取り付けられている。この土壌切削用爪11は、土壌撹拌羽根5の下端部から最大径部にかけて設けられており、それより上部には設けられていない。
【0020】
ついで、土壌撹拌羽根5の下面(先導管側に向いた面)に設けられる土壌切削用爪12について説明する。図5は土壌撹拌羽根5の下面に設けられた土壌切削用爪を示す正面図、図6は同平面図である。外周部に設けられた土壌切削用爪11と同様に、金属の爪本体部12aと、切削チップ12bよりなる。爪本体部12aの形状は外周部に設けられた土壌切削用爪11の爪本体部11aと同様の形状であり、両端部には、尖端部12cが形成されている。爪本体部12aは円周方向に沿って設けられ、切削チップ12bは下向きでしかもこの土壌掘削工具1が下向きに進行するときの回転方向に向いて若干傾斜させて設けられる。ここで、土壌切削用爪12は土壌撹拌羽根5の下面の内、先導管方向から見える領域に配置される。すわなち、軸体4の先端部より土壌撹拌羽根5を見たときに見える部分を第1領域とし、手前側の羽根に隠れる部分を第2領域とすると、土壌切削用爪12は第1領域に配置され、第2領域には設けられない。これは、第1領域に設けられた土壌切削用爪12が土壌の切削・撹拌において効果的に作用し、一方、第2領域に設けてもさほど効果のないことが判明したことに基く。
【0021】
土壌撹拌羽根5の上面(接続部側に向いた面)に設けられる土壌切削用爪13は爪本体部のみであり、切削チップを有しない。爪本体部には、やはり両端部に尖端部が形成されている。軸体4の接続部より土壌撹拌羽根5を見たときに見える部分を第1領域とし、手前側の羽根に隠れる部分を第2領域とすると、土壌切削用爪13も第1領域に配置され、第2領域には設られない。
【0022】
さらに、保護材9およびプレート10にも土壌切削用爪14が設けられている。これらの土壌切削用爪14は切削チップである。保護材9およびプレート10のそれぞれにおいて、外側の辺部に2個、側部の辺に2個ずつで計6個が設けられている。
【0023】
また、土壌切削用爪の個数について鋭意検討を行った結果、固い地盤においても高速で効率的に土壌を切削・撹拌するのに適した条件があることが判明した。
土壌撹拌羽根5の最大径dと土壌切削用爪の本数nとが
270×d×d<n<600×d×d
の関係を満たすとき、最も土壌切削用爪の効果が高い。ここで、最大径dはメートル単位で表示される値である。nは土壌切削用爪の本数であり、切削チップを有する土壌切削用爪11,12も切削チップを有しない土壌切削用爪13も含まれる。また、保護材9やプレート10に設けられる切削チップも本数nとして参入される。例えば、特許文献1や特許文献2において、土壌撹拌羽根の最大径が1mの土壌掘削工具を示す図には160本程度の爪が記載されているが、上式の条件では土壌切削用爪の本数が増加しており、これによって切削・撹拌する能力が向上している。なお、土壌切削用爪の本数nをこのように設けることは、特許文献1等に記載されているようなノズルが土壌撹拌羽根から突出していない壌掘削工具に適用した場合にも切削・撹拌する能力を向上させることができ、有効である。
【0024】
つぎに、この土壌掘削工具を用いた土壌改良工法について説明する。図7に本発明の土壌掘削工具を使用した建設機械の一例を示す。作業台車21は無限軌道22を備えて自走可能であり、工事現場において装置全体を容易に移動させることができるものである。作業台車21には上下動可能なアーム23を介してリーダー24が取り付けられている。リーダー24はチャック25を上下に移動可能に取り付けるスライド式の取り付け装置である。施工場所に作業台車21を移動させたら、アーム23の角度を調整してリーダー24を垂直に立てる。チャック25に最上段の中間ロッド26を通し、チャック25で中間ロッド26をつかむ。最上段の中間ロッド26の上にスィベル27がつながれ、最下段の中間ロッドの下に土壌掘削工具1が接続される。チャック25は油圧駆動により中間ロッド26を正逆両方向に回転させることができる。すなわち、中間ロッド26はチャック25の回転を先端の土壌掘削工具1に伝達する駆動軸の働きをする。スィベル27に注入剤ホース28と空気ホース29とが接続され、それぞれのホースは図示しないプラントのグラウトポンプとコンプレッサーにつながれる。スィベル27、中間ロッド26および土壌掘削工具1は、それぞれ二重管構造又は三重管構造であるが、空気および注入剤の通路がつながるよう接続される。
【0025】
土壌掘削工具1により掘り進めるときには、コンプレッサーで空気を送り土壌掘削工具1の先端より噴出するとともに、土壌掘削工具1の土壌撹拌羽根5が下向きに進行するよう回転させる。ある程度掘り進めたら、中間ロッド26を継ぎ足して、さらに深く掘り進める。土壌撹拌羽根5の外周および下面には切削チップ11b、12bを有する土壌切削用爪11,12が設けられているので、進行方向に向いて設けられた切削チップ11b、12bにより土壌が効果的に掘削される。切削した土砂を滑らかに後方に送るために、土壌撹拌羽根5の外周は先端から中央部に向かって径が広がり、また上部へ向かって径が小さくなる形状になっている。図1の例の土壌掘削工具1では、前記軸体4で土壌撹拌羽根5が取り付けられる部分は軸方向に沿って中央部が太く両端部が細くなっており、中央部においても土壌撹拌羽根5および軸体4は強固であり、また掘り進みながらスムーズに土砂を後方に送るため、施工中に土壌掘削工具1が地中で破損しにくくなり、比較的硬い地盤や粘土質の場所でも施工ができる。
【0026】
最終深さまで掘り進めたら、チャック25の回転方向を逆にして、土壌撹拌羽根5が上向きに進行するよう回転させながら、土壌掘削工具1を引き上げる。この際、注入剤ホース28より注入剤を導入し、土壌掘削工具1のノズル8より注入剤(例えばセメントミルク)を地中に注入する。引き上げ時には土壌撹拌羽根の上面の土壌切削用爪13が土砂を撹拌する。建設機械においては、土砂の機械的撹拌と注入剤の噴出による土砂の撹拌が同時に行われ、切削された土砂と注入剤は効率的に混合される上、切削された土砂が排泥として地上に排出されることがない。
【0027】
超高圧で注入剤を噴出しながら撹拌する場合は、注入剤を横方向に高圧噴射するために、土壌撹拌羽根の径よりも広い範囲の改良体の造成が可能であり、工期の短縮および経済性の向上が実現できるとともに、密着施工や改良体相互の施工が可能となり工事の全体的な一体化がはかれる。そして、本発明においてはノズルが土壌撹拌羽根よりも突出しており、より遠くまで注入剤を注入することができ、施工範囲をより広くすることができる。
【0028】
土壌切削用爪の爪本体部11a、12a、13aの両端に尖端部11c、12c、13cが設けられているので、どちらの方向に土壌掘削工具1が回転するときでもその進行方向に尖端部が向いており、土壌を効果的に切削することができる。したがって、粘土層のような固い土質であっても十分に切削することができる。また、土壌を十分に切削するので、土壌をセメントミルクなどの注入剤と均一に混合することができ、均質で強度の高い改良体を造成することができる。使用し続けることにより尖端部11c、12c、13cは徐々に磨耗するが、尖端部が完全に消失するまでには相当の期間を要するので、この強力な土壌切削能力は長期間維持される。
さらに、土壌撹拌羽根の最大径dに対して土壌切削用爪の本数nが
270×d×d<n<600×d×d
を満たすように十分に設けられているため、土壌の切削・撹拌能力が高く、固い地盤であっても短時間に施工することができる。
【0029】
引き上げるときは、掘り進めるときとは逆に、中間ロッドを順次取り外しながら作業を進める。所定の高さまで引き上げたら注入剤の注入を停止して、土壌掘削工具1を引き上げる。このようにして一つの穴の施工が完了したら、作業台車21を次の位置に移動させ、同様の施工を繰り返す。
【0030】
さらに、土壌掘削工具を使用した土壌浄化工法について説明する。土壌の浄化を行う場合も、図7に示す建築機械を使用することができる。土壌浄化を行う場所に作業台車を移動させ、必要な深さまで土壌掘削工具で掘削する。掘り進めるまでの工程は土壌改良工法と同様に行ってよい。所定の深さまで掘り下げたらチャック25の回転方向を逆にして、土壌撹拌羽根5が上向きに進行するよう回転させながら、土壌掘削工具1を引き上げる。この際、注入剤ホース28より土壌浄化に必要な薬剤を導入し、土壌掘削工具1のノズル8より地中に注入する。例えばダイオキシンなどの有機塩素化合物といった揮発性有機化合物やその他の有機化合物を分解・除去するために過酸化水素と鉄粉とを用いることができる。土壌撹拌羽根5よりも突出したノズル8によって遠くまで薬剤を注入することができる。十分な本数の土壌切削用爪を有し、しかも爪本体部に尖端部が形成されているので、土壌は地中で撹拌され、注入された薬剤は土壌に均一に混ぜ合わされる。この施工によって排泥が発生しない。したがって、汚染された土砂が地上に排出されたり、薬剤が地上に流れ出ないので周囲の環境に悪影響を与えることなく、地中の土壌を浄化することができる。
【実施例1】
【0031】
土壌掘削工具の第1の実施例について説明する。図8は土壌掘削工具の第1の実施例を示す一部断面正面図、図9は同。土壌撹拌羽根5の最大径は1500mmである。軸体4は両端部では直径が205mmであるが、土壌撹拌羽根が取り付けられる部分は軸方向に沿って中央部が太く両端部が細くなる形状になっている。軸体4の内部には三重管構造の配管が設けられており、ノズル8に注入剤を供給する通路のほか、エアの通路も設けられている。
【0032】
図9(a)の例では、ノズル8は土壌撹拌羽根5の最大径の部分の外周より50mm突出している。そして、このノズルの突出している場所の近くに保護材9を設け、ノズル8の突出部の上側または下側をカバーしている。さらに、この保護材9の外周部に掘削ビットを設けている。また、保護材9と同一形状のプレート10をやはり土壌撹拌羽根5の最大径の部分の外周で、ノズル8の位置より90度ずれた位置に設けている。従って、底面図において、保護材9およびプレート10は同一円周上に並ぶ。これらの保護材9およびプレート10は土壌の切削を行うとともに、ノズル8の先端部にかかる外力を減少させ、ノズル8を保護する。このようにノズル8を突出させることにより、より遠くまで注入剤を注入することができる。
【0033】
図9(b)ではノズル8は土壌撹拌羽根5の最大径の部分の外周より100mm突出している。したがって、ノズル8の先端の回転半径は850mmとなり、これまでの直径1700mmの土壌撹拌羽根を有する土壌掘削工具に匹敵する程度の広範囲の地盤強化や土壌浄化などを行うことができる。図9(c)では150mm、図9(d)では200mmノズル8が突出しており、それぞれ、直径1800mm、直径1900mmの土壌撹拌羽根を有する土壌掘削工具に近い能力を有する。しかし、土壌撹拌羽根5の直径は1500mmしかないので、費用の増加は比較的小さい。
【実施例2】
【0034】
さらに、土壌掘削工具の第2の実施例について説明する。図10は土壌掘削工具の第2の実施例を示す一部断面正面図、図11は同底面図である。土壌撹拌羽根5の最大径は400mmである。軸体4は全長に渡って直径が140mmである。軸体4の内部には三重管構造の配管が設けられており、ノズル8に注入剤を供給する通路のほか、エアの通路も設けられている。
【0035】
本例でも、ノズル8が土壌撹拌羽根5の最大径の部分の外周より突出している。そして、このノズルの突出している場所の近くに保護材9を設け、ノズル8の突出部の上側または下側をカバーしている。また、保護材9と同一形状のプレート10をやはり土壌撹拌羽根5の最大径の部分の外周で、ノズル8の位置より90度ずれた位置に設けている。図11(a)では50mm、図11(b)では50mm、それぞれノズル8が突出している。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、軟弱地盤の強化や汚染土壌の浄化などを行う土壌掘削工具として利用することができる。排泥をほとんど排出しないので、環境に悪影響を与えることがなく、また排泥処理の費用がかからず低コストで施工することができる。土壌撹拌羽根よりも突出したノズル先端から注入剤を注入しながら土壌を撹拌することにより、小型の装置で広範囲の施工を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】土壌掘削工具を示す一部断面正面図である。
【図2】同底面図である。
【図3】外周部の土壌切削用爪を示す正面図である。
【図4】同平面図である。
【図5】下面の土壌切削用爪を示す正面図である。
【図6】同平面図である。
【図7】土壌掘削工具を含む建設機械を示す説明図である。
【図8】土壌掘削工具の第1の実施例を示す一部断面正面図である。
【図9】同底面図である。
【図10】土壌掘削工具の第2の実施例を示す一部断面正面図である。
【図11】同底面図である。
【符号の説明】
【0038】
1.土壌掘削工具
2.先導管
3.切削ビット
4.軸体
5.土壌撹拌羽根
6.接続部
7.注入剤通路
8.ノズル
9.保護材
10.プレート
11、12、13,14.土壌切削用爪
21.作業台車
22.無限軌道
23.アーム
24.リーダー
25.チャック
26.中間パイプ
27.スイベル
28.注入剤ホース
29.空気ホース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、軸体の外部に設けられた土壌撹拌羽根と、土壌撹拌羽根に設けられた土壌切削用爪と、軸体から外部へ伸びたノズルを有し、土壌撹拌羽根は板状の爪本体部を有し、爪本体部の両端には尖端部が形成されていることを特徴とする土壌掘削工具。
【請求項2】
土壌撹拌羽根がらせん状であり、最大径d(メートル単位で表わした値)と土壌切削用爪の本数nとが次の関係を満たすものである請求項1に記載の土壌掘削工具。
270×d×d<n<600×d×d
【請求項3】
軸体の先端部より土壌撹拌羽根を見たときに見える部分を第1領域とし、前部の羽根に隠れる部分を第2領域とすると、実質的に第1領域のみに土壌撹拌羽根に設けられている請求項2に記載の土壌掘削工具。
【請求項4】
軸体と、軸体の外部に設けられた土壌撹拌羽根と、土壌撹拌羽根に設けられた土壌切削用爪と、軸体から外部へ伸びたノズルを有し、土壌撹拌羽根は板状の爪本体部を有し、爪本体部の両端には尖端部が形成されていることを特徴とする土壌掘削工具を回転させて土壌を掘削し、所定の深さに達した後に土壌掘削工具を逆回転させて土壌を撹拌しながらノズルより注入材を注入して土壌中に改良体を造成する土壌改良工法。
【請求項1】
軸体と、軸体の外部に設けられた土壌撹拌羽根と、土壌撹拌羽根に設けられた土壌切削用爪と、軸体から外部へ伸びたノズルを有し、土壌撹拌羽根は板状の爪本体部を有し、爪本体部の両端には尖端部が形成されていることを特徴とする土壌掘削工具。
【請求項2】
土壌撹拌羽根がらせん状であり、最大径d(メートル単位で表わした値)と土壌切削用爪の本数nとが次の関係を満たすものである請求項1に記載の土壌掘削工具。
270×d×d<n<600×d×d
【請求項3】
軸体の先端部より土壌撹拌羽根を見たときに見える部分を第1領域とし、前部の羽根に隠れる部分を第2領域とすると、実質的に第1領域のみに土壌撹拌羽根に設けられている請求項2に記載の土壌掘削工具。
【請求項4】
軸体と、軸体の外部に設けられた土壌撹拌羽根と、土壌撹拌羽根に設けられた土壌切削用爪と、軸体から外部へ伸びたノズルを有し、土壌撹拌羽根は板状の爪本体部を有し、爪本体部の両端には尖端部が形成されていることを特徴とする土壌掘削工具を回転させて土壌を掘削し、所定の深さに達した後に土壌掘削工具を逆回転させて土壌を撹拌しながらノズルより注入材を注入して土壌中に改良体を造成する土壌改良工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−205144(P2007−205144A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28988(P2006−28988)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(399070228)山伸工業株式会社 (6)
【出願人】(302002535)有限会社さかわ土木工業 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(399070228)山伸工業株式会社 (6)
【出願人】(302002535)有限会社さかわ土木工業 (4)
【Fターム(参考)】
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