説明

土壌採取装置

【課題】構成を簡略化できる土壌採取装置の提供を課題とする。
【解決手段】両端11,12が開口された円筒状の掘削管13と、この掘削管13の一端12側における外周縁に沿って設けられた掘削刃14と、掘削管13に回転力を伝達すべく、掘削管13の他端12側に着脱自在に設けられたキャップ状の回転伝達部材15と、掘削管13内における掘削刃14側の端部に、掘削管13に対して相対的に回転可能に挿入されると共に、掘削刃14側の端部が開口された円筒状の土壌採取管17と、一端18が土壌採取管17に固定され、他端19が回転伝達部材15に当接するシャフト20とを備えている。また、シャフト20と回転伝達部材15との間に設けられ、回転伝達部材15の回転力がシャフト20に伝達されるのを回避する回転伝達回避手段21を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌検査を行うため土壌を採取する際に使用される土壌採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
耕地土壌の肥沃(ひよく)性や農業害虫の発生状況を理化学的に判定したり、埋め立てた堆積物を分析して土壌の成因を調べるために、地質調査が行われる。この地質調査には、土壌における垂直断面形態の観察が含まれ、目的に応じて1m程度の深さの垂直断面を観察、分析実験するために試料の採取(サンプリング)が行われる。
【0003】
上記のように1m程度の試料を採取する際には、コアバレルを用いた回転式の土壌採取装置が使用されている。コアバレルは、掘削の目的や地層に応じて各種のタイプが使い分けられている。
【0004】
コアバレルの種類には、その構造により、シングルコアバレル、ダブルコアバレル、トリプルコアバレル、ワイヤラインコアバレルなどがある。
【0005】
このうち、ダブルコアバレルは、土壌に加わる圧縮力を小さくする必要がある場合に多用されるものであり、アウターチューブとインナーチューブとが二重に配置されている。ダブルコアバレルで土壌を採取する際には、ダブルコアバレルが土壌内に押し込まれ、インナーチューブ内に土壌が取り込まれる。
【0006】
更に、このダブルコアバレルには、アウターチューブとインナーチューブとが同時に回転するリジット形と、アウターチューブとインナーチューブとの間にボールベアリングが設けられ、土壌採取時にアウターチューブが回転し、インナーチューブが回転しないようにしたスイベル形とがある。
【0007】
スイベル形のダブルコアバレルは、土壌採取時にインナーチューブが回転しないので、インナーチューブ内に取り込まれた土壌が攪乱されず、採取前の状態と略同様の状態で土壌を採取できる。
【0008】
図8は、スイベル形のダブルコアバレルを使用した従来の土壌採取装置50を示す。この土壌採取装置50は、スイベル形のダブルコアバレル51と、このダブルコアバレル51に回転力を伝達するシャフト52とを備えている。
【0009】
ダブルコアバレル51は、アウターチューブ53と、このアウターチューブ53内に回転自在に挿入されたインナーチューブ54とを有している。アウターチューブ53の一端には、その外周縁に沿って掘削刃58が設けられている。
【0010】
インナーチューブ54のシャフト52側における端部には、段付き軸55が設けられている。アウターチューブ53におけるシャフト52側の端部には、シャフト取付部材56が設けられている。
【0011】
このシャフト取付部材56の一端には、上記のシャフト52が固定されている。また、シャフト取付部材56の他端には、アウターチューブ53内に配置された軸受け支持部材59が設けられている。
【0012】
この軸受け支持部材59の内側には、インナーチューブ54に設けられた段付き軸55
の一部分が挿入されている。段付き軸55と軸受け支持支持部材59との間に隙間が設けられ、この隙間に軸受け57が介装されている。これにより、インナーチューブ54がアウターチューブ53に対して、相対的に回転可能である。
【0013】
この土壌採取装置50を用いて土壌を採取する際には、採取すべき土壌の上に土壌採取装置50を略垂直に立てた状態で、シャフト52に回転力及び押圧力を加える。そうすると、掘削刃58の回転によって土壌が掘削され、土壌採取装置50の先端部が土の中に押し込まれる。このとき、インナーチューブ54内に土壌が取り込まれる。
【0014】
土壌採取装置50が土壌内に所定の深さまで進入した後、ダブルコアバレル51を土壌から抜き出して、インナーチューブ54内に取り込まれた土壌を取り出す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来のダブルコアバレル51を用いた土壌採取装置50は、アウターチューブ53とインナーチューブ54との間に、軸受け57を介装する必要があるため、アウターチューブ53側に軸受け支持部材59を設けると共に、インナーチューブ54に段付き軸55を設ける必要があり、構成が複雑になるという問題があった。
【0016】
本発明は、このような問題に鑑みなされたもので、構成を簡略化できる土壌採取装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。すなわち、本発明は、両端が開口された円筒状の掘削管と、前記掘削管の一端側における外周縁に沿って設けられた掘削刃と、前記掘削管に回転力を伝達すべく、前記掘削管における前記掘削刃と反対側の端部に着脱自在に設けられた回転伝達部材と、前記掘削管内における前記掘削刃側の端部に、前記掘削管に対して相対的に回転可能に挿入されると共に、前記掘削刃側の端部が開口された円筒状の土壌採取管と、一端が前記土壌採取管に固定され、他端が前記回転伝達部材に直接的又は間接的に当接するシャフトとを備え、前記シャフトと前記回転伝達部材との間に設けられ、前記回転伝達部材の回転力が前記シャフトに伝達されるのを回避する回転伝達回避手段を有することを特徴とする。
【0018】
本発明では、回転伝達回避手段によって回転伝達部材の回転力がシャフトを介して土壌採取管に伝達されるのを回避できるので、掘削管を回転させ土壌採取管の回転を停止させるために、掘削管と土壌採取管の間に軸受けを設ける必要がなくなる。
【0019】
ここで、前記回転伝達回避手段は、前記シャフトの先端部に設けられた点状接触部分と、前記鋭角部分を当接させるべく、前記回転伝達部材に設けられた平坦面とで構成するのが好ましい。
【0020】
この場合は、シャフトの鋭角部分と回転伝達部材との接触面積が非常に小さくなるので、その間の摩擦力も非常に小さくなる。
【0021】
また、前記回転伝達回避手段として、前記シャフトの先端と前記回転伝達部材との間に設けられた滑り部材を例示できる。この場合も、回転伝達部材とシャフトとの摩擦力が非常に小さくなる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、掘削管に回転力を伝達する回転伝達部材と、掘
削管内の土壌採取管に固定されたシャフトとの摩擦力が非常に小さくなるため、掘削管と土壌採取管との間に軸受けを設けることなく、回転伝達部材を回転させて土壌採取管の回転を停止させることができる。
【0023】
従って、掘削管と土壌採取管との間に、軸受け及びこの軸受けを支持するために必要な複数の部材を設ける必要がないので、構成を簡略化できると共に、コストダウンが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付した図1から図7に基づいて詳細に説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本発明に係る第1実施形態の土壌採取装置10は、両端11,12が開口され且つ所定の長さを有する円筒状の掘削管13と、この掘削管13の一端12における外周縁に沿って設けられた掘削刃14と、上記掘削管13に回転力を伝達すべく、この掘削管13における他端11側に着脱自在に設けられたキャップ状の回転伝達部材15とを備えている。
【0026】
また、この土壌採取装置10は、上記掘削管13における一端12側の内部に、掘削管13に対して相対的に回転可能に挿入されると共に、掘削刃14側の端部16が開口された円筒状の土壌採取管17と、一端18が土壌採取管17に固定され、他端19が回転伝達部材15に直接的又は間接的に当接するシャフト20とを備えている。
【0027】
更に、この土壌採取装置10は、上記シャフト20と回転伝達部材15との間に設けられ、回転伝達部材15の回転力がシャフト20に伝達されるのを回避する回転伝達回避手段21を有している。
【0028】
次に、上記の各構成要素について説明する。掘削管13の他端11側には、大径部分22が設けられている。この大径部分22には、回転伝達部材15が着脱自在に嵌め込まれている。また回転伝達部材15と大径部分22とは、ピン23によって係止されている。
【0029】
掘削管13の一端12側には、図2に示すように、土壌採取管17の外径より小径の開口26が設けられている。掘削管13の内周面25と開口26との間には、掘削管13の直径方向に延びる平坦面27が設けられている。この平坦面27によって、上記の土壌採取管17の抜け止めが行われている。
【0030】
土壌採取管17は、図3に示すように、シャフト20に固定された円盤状の保持部材28と、この保持部材28にピン29によって着脱自在に取り付けられた保護管30と、この保護管30内に挿入された透明な土壌収容管31とを有している。
【0031】
保護管30の先端には、土壌収容管31の脱落を防止するため内側に突出する係止部32が設けられている。この係止部32の内周面は、適宜な角度で先広がり状に形成されている。これにより、土壌採取装置10を土壌内に押し込んだときに、土壌収容管31内に土壌が入りやすくなる。
【0032】
上記の回転伝達回避手段21は、図4に示すように、シャフト20の先端に設けられた鋭角部分(点状接触部分)35と、この鋭角部分35を当接させるべく、回転伝達部材15に設けられた平坦面36とで構成されている。
【0033】
この回転伝達回避手段21においては、シャフト20の鋭角部分35の頂点が、回転伝
達部材15の平坦面36に直接当接している。鋭角部35と平坦面36との接触面積は非常に小さいため、その間の摩擦力が非常に小さくなる。これにより、回転伝達部材15の回転力がシャフト20に伝達されるの回避できる。
【0034】
また、シャフト20には、図1に示すように、掘削管13の大径部分22内に収まるハンドル39が設けられている。このハンドル39は、シャフト20及び土壌採取管17を掘削管13に対して出し入れする場合に使用される。
【0035】
次に、この土壌採取装置10の使用方法を説明する。土壌採取装置10を用いて土壌を採取する場合は、図5に示すように、土壌採取装置10を土壌40の上に略垂直に立てて、回転伝達部材15を例えば手動操作によって回転させる。同時に、回転伝達部材15を土壌40側に押圧する。
【0036】
そうすると、回転伝達部材15の回転力が掘削管13に伝達され、その先端の掘削刃14も回転する。これにより、土壌40が掘削されて掘削管13が土壌40内に進入する。
【0037】
掘削管13が土壌40内へ進入するのに伴って、掘削管13の先端の開口26から、土壌収容管31内に土壌40が取り込まれる。
【0038】
このときには、掘削管13が回転するが、土壌採取管17及び土壌収容管31は回転しない。従って、土壌収容管31内の土壌40が攪乱されることはなく、土壌40が採取前の状態と略同様の状態で取り込まれる。
【0039】
掘削管13が土壌40内に一定の深さまで進入した後、土壌採取装置10を土壌40から引き抜く。そして、回転伝達部材15を掘削管13から外し、ハンドル39を引いてシャフト20及び土壌採取管17を掘削管13の外側に引き出す。
【0040】
そして、土壌採取管17内の土壌収容管31を取り出す。土壌収容管31は透明なので、その中の土壌40を目視で観察できる。
【0041】
このように、本発明に係る第1実施形態の土壌採取装置10によれば、回転伝達部材15とシャフト20との当接部分に、回転伝達回避手段21を設けたので、従来のように掘削管13と土壌採取管17との間に軸受けを設けることなく、掘削管13を回転させて、土壌採取管17の回転を停止させることができる。
【0042】
従って、軸受けのみならず、この軸受けを支持する貯めに必要な複数の部材を削減できるので、構成の簡略化及びコストダウンが可能になる。
【0043】
(第2の実施の形態)
図7は、本発明に係る第2実施形態の回転伝達回避手段である滑り部材45を示す。この滑り部材45は、例えばテフロン(登録商標)などの低摩擦部材で平板状に形成されている。
【0044】
上記の滑り部材45は、回転伝達部材15の内面46に貼り付けられてる。シャフト20の先端は平坦に形成され、滑り部材45に当接している。
【0045】
この第2実施形態においても、回転伝達部材15とシャフト20との摩擦力が非常に小さくなるため、回転伝達部材15の回転力がシャフト20に伝達されるのを回避できる。従って、第1実施形態と同様に構成の簡略化及びコストダウンが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る第1実施形態の土壌採取装置を示す断面図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態の土壌採取装置における先端部の構成を示す断面図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態の土壌採取管及び土壌収容管を示す断面図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態の回転伝達回避手段を示す断面図である。
【図5】本発明に係る第1実施形態の土壌採取装置の使用方法を示す断面図である。
【図6】本発明に係る第1実施形態の土壌採取管を取り出す方法を示す断面図である。
【図7】本発明に係る第2実施形態の回転伝達回避手段を示す断面図である。
【図8】従来例に係るダブルコアバレルを用いた土壌採取装置を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
10 土壌採取装置
11 掘削管の他端
12 掘削管の一端
13 掘削管
14 掘削刃
15 回転伝達部材
16 土壌採取管の端部
17 土壌採取管
18 シャフトの一端
19 シャフトの他端
20 シャフト
21 回転伝達回避手段
22 大径部分
23 ピン
25 内周面
26 開口
27 平坦面
28 保持部
29 ピン
30 保護管
31 土壌収容管
32 係止部
35 鋭角部分
36 平坦面
39 ハンドル
40 土壌
45 滑り部材
46 回転伝達部材の内面
50 土壌採取装置
51 ダブルコアバレル
52 シャフト
53 アウターチューブ
54 インナーチューブ
55 段付き軸
56 シャフト取付部材
57 軸受け
58 掘削刃
59 軸受け支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口された円筒状の掘削管と、
前記掘削管の一端側における外周縁に沿って設けられた掘削刃と、
前記掘削管に回転力を伝達すべく、前記掘削管における前記掘削刃と反対側の端部に着脱自在に設けられた回転伝達部材と、
前記掘削管内における前記掘削刃側の端部に、前記掘削管に対して相対的に回転可能に挿入されると共に、前記掘削刃側の端部が開口された円筒状の土壌採取部と、
一端が前記土壌採取部に固定され、他端が前記回転伝達部材に直接的又は間接的に当接するシャフトとを備え、
前記シャフトと前記回転伝達部材との間に設けられ、前記回転伝達部材の回転力が前記シャフトに伝達されるのを回避する回転伝達回避手段を有することを特徴とする土壌採取装置。
【請求項2】
前記回転伝達回避手段は、前記シャフトの先端に設けられた点状接触部分と、前記鋭角部分を当接させるべく前記回転伝達部材に設けられた平坦面とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の土壌採取装置。
【請求項3】
前記回転伝達回避手段は、前記シャフトの先端と前記回転伝達部材との間に設けられた滑り部材であることを特徴とする請求項1に記載の土壌採取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−45872(P2006−45872A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227453(P2004−227453)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000152011)株式会社藤原製作所 (6)
【Fターム(参考)】