説明

土壌攪拌装置

【課題】土壌表面のみを効率良く攪拌することが可能な土壌攪拌装置の提供。
【解決手段】土壌に水を導入し、当該水と土壌表面を攪拌して表面土壌を水中に懸濁状態にするための土壌攪拌機構であって、水平方向に延設された回転軸と、回転軸を中心として設置された円筒ドラムと、土壌方向に開口部を有し円筒ドラムと一定の隙間を有して設置された円筒ドラムカバーとを備えることを特徴とする土壌攪拌機構、および、当該土壌攪拌機構と牽引装置とで構成される土壌攪拌装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
福島原子力発電所における放射性物質流出事故に伴い、農用地の放射性セシウムが国の暫定基準値(5000Bq/kg)を超過した地域が広範囲に及ぶことが懸念され、汚染地の修復が喫緊の課題となっている。
【0003】
従来、重金属や放射性物質で汚染された土壌の浄化について種々検討がなされ、例えば、重金属汚染土壌の浄化には、種々の薬剤を用いて、重金属含有土壌から重金属を溶出させて除去することにより、汚染土壌を浄化する方法が検討され、それに用いられる土壌攪拌装置なども検討されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
一方、放射性物質汚染土壌については、放射性物質が、主に土壌の最表面に集積していることから、汚染土壌の表面のみを処理することにより、土壌を浄化することが検討されており、土壌表面を効率良く攪拌することが可能な土壌攪拌装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−319747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、放射性物質汚染土壌などを浄化するため、土壌表面を効率良く攪拌することが可能な土壌攪拌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、土壌に水を導入し、当該水と土壌表面を攪拌して表面土壌を水中に懸濁状態にするための土壌攪拌機構であって、水平方向に延設された回転軸と、回転軸を中心として設置された円筒ドラムと、土壌方向に開口部を有し円筒ドラムと一定の隙間を有して設置された円筒ドラムカバーとを備えることを特徴とする土壌攪拌機構を提供するものである。
また、本発明は、当該土壌攪拌機構と、これを牽引する牽引装置とで構成され、牽引装置の走行部駆動方式が、接地圧0.15kg/cm2以下のクローラーである土壌攪拌装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の土壌攪拌機構及び土壌攪拌装置は、土壌表面を効率良く攪拌することができ、これを用いれば、放射性物質汚染土壌などを、効率良く浄化することができる。その場合には、土壌表面のみを攪拌するため、作土全体に対する最終的な土壌損失量が少なく、浄化処理に伴う土壌排出量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の土壌攪拌装置の一例の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の土壌攪拌機構に用いられる円筒ドラムの一例を示す図である。
【図3】本発明の土壌攪拌機構の円筒ドラムカバーの一例を示す図(上面からみた図)である。
【図4】本発明の土壌攪拌装置であって、回転ドラムカバーに連結した攪拌ボックスと攪拌羽を有するものの一例の全体構成を示す概略図である。
【図5】攪拌ボックスと攪拌羽を有する円筒ドラムカバーの一例を示す図(上面からみた図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の土壌攪拌機構は、土壌に水を導入し、当該水と土壌表面を攪拌して表面土壌を水中に懸濁状態にするために用いられる。
本発明の土壌攪拌機構は、例えば、図2に示すような、水平方向に延設された回転軸と、回転軸を中心として設置された円筒ドラムを備える。円筒ドラムは、外周面に複数の突起状部材を有することができる。かかる突起状部材の形状や大きさは特に制限されないが、形状としては、直方体、三角柱等が好ましく、高さ5cm以下、特に2cm以下であるのが、攪拌を効率良く行うことができるので好ましい。
【0011】
また、円筒ドラムは、外周面の一部に開口部を設けることもでき、例えば、回転軸に並行に一定間隔になるような開口部を設けることもできる。この場合には、ドラム内部でも、土壌と水を攪拌することができる。
円筒ドラムの回転半径は、10cm以上、特に15〜30cmであるのが、ドラム円弧と土壌の接点が広がり、攪拌効率が高まるので好ましい。
【0012】
また、本発明の土壌攪拌機構は、上記のような円筒ドラムとともに、土壌方向に開口部を有し円筒ドラムと一定の隙間を有して設置された円筒ドラムカバーを備える。
円筒ドラムカバーは、例えば、図1及び図3に示したように、土壌方向の開口部を除き、円筒ドラムの全体を覆うように設置される。円筒ドラムと円筒ドラムカバーの間の隙間は、円筒ドラム外周面に突起状部材を配備した場合、突起状部材の高さの1.5〜3倍の間隔であるのが好ましい。
円筒ドラムと円筒ドラムカバーの間の隙間では、回転する円筒ドラムにより持ち上げられた土壌と水が攪拌され、円筒ドラムの表面でスラリー化される。その攪拌を効率良く行うため、円筒ドラムの回転数は、60〜120rpm、特に80〜100rpmであるのが好ましい。
【0013】
また、円筒ドラムカバーは、進行方向の後ろ側に、当該カバーに連結しかつ混合された土壌スラリーを排出する開口部を有するボックス(攪拌ボックス)を有することができ、攪拌効果をより高めることができる。このボックスは、土壌と水を攪拌するためのものであり、そのための空間を備えていれば、大きさや形状等は特に制限されるものではない。更に、当該ボックス内には、土壌と水を混合させるための攪拌羽等の攪拌機を設置することもできる(図4及び5)。
【0014】
本発明の土壌攪拌機構は、例えば、図1に示すように、更に、底部と接地するガイドプレートを有することができる。かかるガイドプレートを有することにより、土壌攪拌機構がスムーズに走行できるとともに、土壌に含まれる石などをかみ込まないようにすることができる。
ガイドプレートは、円筒ドラムカバーの底部の開口部の一部に設置することができる。
【0015】
本発明の土壌攪拌装置は、上記のような土壌攪拌機構と、当該土壌攪拌機構を牽引するための牽引装置で構成される(例えば、図1、図4)。
牽引装置の走行部駆動方式は、クローラーであり、接地圧0.15kg/cm2以下、特に0.08〜0.1kg/cm2のゴムクローラーが、水田土壌や軟弱な土壌でも攪拌装置が沈み込まず、一定の速度で攪拌することができるので好ましい。
【0016】
本発明の土壌攪拌装置は、例えば、放射性物質が土壌の最表面(0−2cm程度)に集積している放射性物質汚染土壌において、水と土壌表面を攪拌して表面土壌を水中に懸濁状態にするのに好適に用いることができる。
導入される水は、土壌表面からの水深が5cm以上、特に5〜20cm、更に10〜20cmとなるのが好ましい。水がこのような深さに導入されると、土壌粒子が分散できる水厚を確保し、攪拌後に、土壌を粒径別に分級して粗粒子画分を沈降させ、細粒子画分を除去するのに好ましい。
また、本発明の攪拌機構は、土壌表面、特に土壌表面から5cm以下、更に1〜5cm程度の土壌を攪拌するのに好適である。
【0017】
土壌表面を攪拌することにより、土壌粒子を水中に分散させ、懸濁状態とした後、放置して、土壌を粒径別に分級させる。この間に、土壌粒子のうち、粗粒子画分の粒子が土壌表面に沈降する。このような粗粒子は、放射性物質含量が低いため、そのまま土壌に戻すとともに、放射性物質含量の高い細粒子画分のみを除去することにより、土壌損失量を低減することができる。細粒子画分が、細粒子画分を含む土壌懸濁液である場合には、それを排水すれば良い。
このように土壌表面のみを処理することができれば、放射性物質汚染土壌を、効率良く除去することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌に水を導入し、当該水と土壌表面を攪拌して表面土壌を水中に懸濁状態にするための土壌攪拌機構であって、水平方向に延設された回転軸と、回転軸を中心として設置された円筒ドラムと、土壌方向に開口部を有し円筒ドラムと一定の隙間を有して設置された円筒ドラムカバーとを備えることを特徴とする土壌攪拌機構。
【請求項2】
円筒ドラムが、外周面に複数の突起状部材を有する請求項1記載の土壌攪拌機構。
【請求項3】
円筒ドラムの回転半径が、10cm以上である請求項1又は2記載の土壌攪拌機構。
【請求項4】
円筒ドラムの外周面に設置される突起状部材が、高さ5cm以下である請求項2又は3記載の土壌攪拌機構。
【請求項5】
底部に土壌と接地するガイドプレートを有する請求項1〜4のいずれか1項記載の土壌攪拌機構。
【請求項6】
円筒ドラムカバーの進行方向の後ろ側に、当該カバーに連結しかつ混合された土壌スラリーを排出する開口部を有するボックスを有する請求項1〜5のいずれか1項記載の土壌攪拌機構。
【請求項7】
円筒ドラムカバーの進行方向の後ろ側に、当該カバーに連結しかつ混合された土壌スラリーを排出する開口部を有するボックスと、ボックス内で土壌と水を混合させるための攪拌機を有する請求項1〜6のいずれか1項記載の土壌攪拌機構。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の土壌攪拌機構と、当該土壌攪拌機構を牽引する牽引装置とで構成され、牽引装置の走行部駆動方式が、接地圧0.15kg/cm2以下のクローラーである土壌攪拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−56305(P2013−56305A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196697(P2011−196697)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(591172537)太平洋ソイル株式会社 (14)
【出願人】(597028287)埼玉八栄工業株式会社 (8)
【出願人】(501245414)独立行政法人農業環境技術研究所 (60)
【Fターム(参考)】