説明

土壌改良剤の製造方法及び土壌改良剤

【課題】 土壌改良機能を損なうことなく、土壌に対する分散性を向上させるとともに施肥効果を速効にし、施肥作業を容易にするとともに機能向上を図る。
【解決手段】 リンゴの果実を搾汁して得られた搾汁液を用い、この搾汁液を処理液とし、この処理液に酸化カルシウムを加えて反応させてカルシウム化合物を生成するとともに、液状にする。酸化カルシウムと処理液との混合重量比を、1:(7〜11)にし、処理液に、リンゴの繊維質を含むようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌改良剤の製造方法及び土壌改良剤に係り、特に、廃棄処理される果実や野菜等の植物を利用して作ることのできる土壌改良剤の製造方法及び土壌改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の土壌改良剤としては、例えば、本願出願人が先に提案し、特開平6−264057号公報(特許文献1)に掲載されているものが知られている。これは、植物の細状体としてリンゴの搾り滓を用い、このリンゴの搾り滓に水を加えるとともに、酸化カルシウムを加えて反応させ、反応によって得られたカルシウム化合物をリンゴの搾り滓の繊維と混合させ分散させたものである。これにより、水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機酸カルシウム等の有機カルシウム等が渾然となって植物の繊維と混合し、アルカリ性の性質が発揮されて、酸性土壌を確実に中性,アルカリ化していくとともに、消毒作用により植物に悪影響を及ぼす細菌やバクテリアの繁殖を抑制し、土壌を良質なものに改変していく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−264057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の土壌改良剤においては、土壌を良質なものに改変する機能は優れているが、土壌に良く混合して分散させなければならないことから分散性に劣り施肥作業を煩雑にしている。また、施肥効果が得られるのに比較的長時間を要する。
一方、植物として、例えばリンゴの場合には、リンゴを搾汁して搾汁液を得るが、この搾汁液は、飲料用のジュースとして使用されるものもあるが、廃棄処分されるものも相当量あり、その利用法が検討されているという実情もある。
本発明は上記の点に鑑みて為されたもので、土壌改良機能を損なうことなく、土壌に対する分散性を向上させるとともに施肥効果を速効にし、施肥作業を容易にするとともに機能向上を図った土壌改良剤の製造方法及び土壌改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するための本発明の土壌改良剤の製造方法は、カルシウム化合物を含む土壌改良剤の製造方法において、植物を搾汁して得られた搾汁液を用い、該搾汁液を処理液とし、該処理液に酸化カルシウムを加えて反応させてカルシウム化合物を生成するとともに、液状にした構成としている。
【0006】
これによれば、植物の搾汁液を処理液としているので、植物として、例えばリンゴの場合には、リンゴを搾汁して搾汁液を得るが、この搾汁液は、飲料用のジュースとして使用されるものもあるが、廃棄処分されるものも相当量あり、この廃棄処分するリンゴの搾汁液をそのまま利用することができるようになり、原材料調達が容易になるとともに無駄を防止することができる。絞り滓の方は、上記従来と同様の土壌改良剤の用に供することができる。
また、この製造方法によって製造された土壌改良剤によれば、水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機酸カルシウム等の有機カルシウム等が渾然となって植物の成分と混合し、異臭がなく、脂肪や塩分をほとんど含まず、また、窒素,燐酸,カリ成分が比較的少なく、アルカリ性の性質を呈する。
【0007】
この製造方法によって製造された土壌改良剤を土壌に施肥するときは、土壌に適宜量を散布する。この場合、本土壌改良剤は、植物の搾汁液を用いているので、植物成分を含み、石灰の匂が多少あるものの、異臭がなく使用時に不快になる事態が防止される。また、液状なので散布し易く、それだけ、施肥作業性が良いものとなる。また、液状なので土壌によく浸透していき、従来の固形のものと比較して、分散性が極めて良くなる。そして、これを施肥した場合には、カルシウム化合物が植物成分とともに、良く土壌に分散し、アルカリ性の性質が発揮されて、酸性土壌を確実に中性,アルカリ化していくとともに、消毒作用により植物に悪影響を及ぼす細菌やバクテリアの繁殖を抑制し、土壌を良質なものに改変していく。この場合、土壌改良剤は、液状なので、植物の根からの吸収が早くなる等、施肥効果が迅速に発揮され、生育への速効性が発揮される。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明の別の土壌改良剤の製造方法は、カルシウム化合物を含む土壌改良剤の製造方法において、植物を搾汁して得られた搾汁液の濃縮液を用い、該濃縮液に水を加えて処理液を生成し、該処理液に酸化カルシウムを加えて反応させてカルシウム化合物を生成するとともに、液状にした構成としている。
【0009】
これによれば、植物の搾汁液の濃縮液を用いているので、濃縮液は保存性が良いことから、植物の収穫期のみならずいつでも濃縮液を原材料として用いることができ、そのため、汎用性が増す。また、この製造方法によって製造された土壌改良剤によれば、水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機酸カルシウム等の有機カルシウム等が渾然となって植物の成分と混合し、異臭がなく、脂肪や塩分をほとんど含まず、また、窒素,燐酸,カリ成分が比較的少なく、アルカリ性の性質を呈する。他の作用,効果は上記と同様である。
【0010】
そして、必要に応じ、上記酸化カルシウムと処理液との混合重量比を、1:(7〜11)にした構成としている。
これによれば、植物の成分が多く取り入れられるとともに、処理液によりカルシウム化合物が確実に液状になる。
【0011】
また、必要に応じ、上記処理液に、植物の繊維質を含む構成としている。植物の搾汁液をろ過することなく使用する。あるいは、ろ過するとしても粗い目の濾材を通し、繊維質が残るようにする。例えば、搾汁液100g中に0.1〜1重量%の繊維質(パルプ)が残るようにする。これにより、極めてきめ細かなパルプに生石灰がからむことになり、即ち、水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機酸カルシウム等の有機カルシウム等が渾然となって植物の繊維と混合し、植物繊維の混合物なので繊維間に空気を取り込み、土壌を良質なものに改変していく。
【0012】
更に、本発明の土壌改良剤は、上記の製造方法によって製造された土壌改良剤にある。上記と同様の作用,効果を奏する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、植物の搾汁液を用いているので、植物として、例えばリンゴの場合には、リンゴを搾汁して搾汁液を得るが、この搾汁液は、飲料用のジュースとして使用されるものもあるが、廃棄処分されるものも相当量あり、この廃棄処分するリンゴの搾汁液をそのまま利用することができるようになり、原材料調達が容易になるとともに無駄を防止することができる。また、本発明の土壌改良剤によれば、水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機酸カルシウム等の有機カルシウム等が渾然となって植物の成分と混合し、異臭がなく、脂肪や塩分をほとんど含まず、また、窒素,燐酸,カリ成分が比較的少なく、アルカリ性の性質を呈する。そして、この土壌改良剤を土壌に施肥すると、この土壌改良剤は、植物の搾汁液を用いているので、植物成分を含み、石灰の匂が多少あるものの、異臭がなく使用時に不快になる事態が防止される。また、液状なので散布し易く、それだけ、施肥作業性が良いものとなる。また、液状なので土壌によく浸透していき、従来の固形のものと比較して、分散性が極めて良くなる。そして、これを施肥した場合には、カルシウム化合物が植物成分とともに、良く土壌に分散し、アルカリ性の性質が発揮されて、酸性土壌を確実に中性,アルカリ化していくとともに、消毒作用により植物に悪影響を及ぼす細菌やバクテリアの繁殖を抑制し、土壌を良質なものに改変していく。また、土壌改良剤は、液状なので、植物の根からの吸収が早くなる等、施肥効果が迅速に発揮され、生育への速効性が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法を示す工程図である。
【図2】本発明の第二の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法及び土壌改良剤について詳細に説明する。
図1には、本発明の第一の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法を示している。本発明の第一の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法は、植物としてリンゴの果実を用いて製造するものであり、リンゴを搾汁して得られた搾汁液を用いる。リンゴの搾汁液は、飲料用のジュースとして使用されるものもあるが、廃棄処分されるものも相当量あり、この廃棄処分するリンゴの搾汁液をそのまま利用することができる。原材料調達が容易になるとともに無駄を防止することができる。
【0016】
この搾汁液を処理液とする。処理液には、植物としてのリンゴ果実の繊維質を含む。リンゴの搾汁液をろ過することなく使用する。あるいは、ろ過するとしても粗い目の濾材を通し、繊維質が残るようにする。例えば、搾汁液100g中に0.1〜1重量%の繊維質(パルプ)が残るようにする。実施の形態では0.2重量%含む。尚、実施の形態においては、処理液として、搾汁液の原液を用いるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、水を添加して水分調整を行っても良い。
【0017】
そして、この処理液に酸化カルシウムを加えて反応させてカルシウム化合物を生成するとともに、液状にする。酸化カルシウムと処理液との混合重量比は、1:(7〜11)にしている。実施の形態では、酸化カルシウムと処理液との混合重量比は、1:9にしている。この混合においては、処理液には繊維質が含有しているので、極めてきめ細かなパルプに生石灰がからむことになり、即ち、水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機酸カルシウム等の有機カルシウム等が渾然となって植物の繊維と混合して行く。
また、この製造方法によって製造された土壌改良剤によれば、カルシウム化合物は、酸化カルシウム(CaO)と処理液の水分との反応により生成される水酸化カルシウム(Ca(OH)2 )、液中や空気中等の二酸化炭素との反応により生成される炭酸カルシウム(CaCO3 )、リンゴに含まれるリンゴ酸,酢酸,コハク酸,クエン酸等の有機酸との反応により生成されるリンゴ酸カルシウムや酢酸カルシウム等の有機酸カルシウムをはじめとする各種の有機カルシウム等から構成され、これらの水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機カルシウム等が、渾然となってリンゴの成分と混合し、異臭がなく、脂肪や塩分をほとんど含まず、また、窒素,燐酸,カリ成分が比較的少なく、アルカリ性の性質を呈する。
【0018】
この製造方法によって製造された土壌改良剤を土壌に施肥するときは、土壌に適宜量を散布する。この場合、本土壌改良剤は、植物の搾汁液を用いているので、植物成分を含み、石灰の匂が多少あるものの、異臭がなく使用時に不快になる事態が防止される。また、液状なので散布し易く、それだけ、施肥作業性が良いものとなる。また、液状なので土壌によく浸透していき、従来の固形のものと比較して、分散性が極めて良くなる。そして、これを施肥した場合には、カルシウム化合物が植物成分とともに、良く土壌に分散し、アルカリ性の性質が発揮されて、酸性土壌を確実に中性,アルカリ化していくとともに、消毒作用により植物に悪影響を及ぼす細菌やバクテリアの繁殖を抑制し、土壌を良質なものに改変していく。この場合、土壌改良剤は、液状なので、植物の根からの吸収が早くなる等、施肥効果が迅速に発揮され、生育への速効性が発揮される。特に、処理液100g中に0.1〜1重量%の繊維質(パルプ)が残るようにしているので、極めてきめ細かなパルプに生石灰がからむことになり、即ち、水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機酸カルシウム等の有機カルシウム等が渾然となって植物の繊維と混合し、植物繊維の混合物なので繊維間に空気を取り込み、土壌を良質なものに改変していくことができる。
【0019】
次に、本発明の第二の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法について説明する。本発明の第二の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法は、植物を搾汁して得られた搾汁液の濃縮液を用いる。濃縮液は加熱されていても良い。そして、この濃縮液に水を加えて処理液を生成する。水の添加により、原料の搾汁液とほぼ同じ濃度に戻す。処理液には、植物としてのリンゴ果実の繊維質を含む。繊維質を含むようにするためには、リンゴの搾汁液をろ過することなく濃縮する。あるいは、ろ過するとしても粗い目の濾材を通し、繊維質が残るようにして濃縮する。例えば、処理液100g中に0.1〜1重量%の繊維質(パルプ)が残るようにする。実施の形態では0.2重量%含む。
【0020】
これによれば、植物の搾汁液の濃縮液を用いているので、濃縮液は保存性が良いことから、植物の収穫期のみならずいつでも濃縮液を原材料として用いることができ、そのため、汎用性が増す。また、この製造方法によって製造された土壌改良剤によれば、水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機酸カルシウム等の有機カルシウム等が渾然となって植物の成分と混合し、異臭がなく、脂肪や塩分をほとんど含まず、また、窒素,燐酸,カリ成分が比較的少なく、アルカリ性の性質を呈する。他の作用,効果は上記と同様である。
【0021】
尚、上記実施の形態においては、植物としてリンゴの果実に適用した例を説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、キウイ、パイナップル、イチゴ、マンゴー、パパイヤ、梨、桃、花梨、メロン、西瓜、サクランボ、葡萄、バナナ、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、レモン、ライチ、ザクロ、イチジク、杏、梅、プラム等どのような果実であっても、本発明を適用することができることは勿論である。また、果実以外の植物にも適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム化合物を含む土壌改良剤の製造方法において、
植物を搾汁して得られた搾汁液を用い、該搾汁液を処理液とし、該処理液に酸化カルシウムを加えて反応させてカルシウム化合物を生成するとともに、液状にしたことを特徴とする土壌改良剤の製造方法。
【請求項2】
カルシウム化合物を含む土壌改良剤の製造方法において、
植物を搾汁して得られた搾汁液の濃縮液を用い、該濃縮液に水を加えて処理液を生成し、該処理液に酸化カルシウムを加えて反応させてカルシウム化合物を生成するとともに、液状にしたことを特徴とする土壌改良剤の製造方法。
【請求項3】
上記酸化カルシウムと処理液との混合重量比を、1:(7〜11)にしたことを特徴とする請求項1または2記載の土壌改良剤の製造方法。
【請求項4】
上記処理液に、植物の繊維質を含むことを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の土壌改良剤の製造方法。
【請求項5】
上記請求項1乃至4何れかに記載の土壌改良剤の製造方法によって製造されたことを特徴とする土壌改良剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−17379(P2012−17379A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154613(P2010−154613)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(593051364)株式会社ヤマダイ (2)
【Fターム(参考)】